神経ガイド
本発明の目的は、軸索が再生中に極めて自由に発生するのを可能にする神経ガイドを提供することである。これを目的として、神経ガイドは、架橋された吸収性のゼラチン系材料から形成された成形体をベースとして製造される。成形体は、外面と内面とを備えた、管腔を画定する壁を有する管状中空体である。神経ガイドは、管腔を取り囲む半透性層を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性材料から形成された成形体を含む神経ガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭に記載した種類の神経ガイドは、損傷された神経の端部を繋くため、そしてこれら2つの端部の間のギャップを橋渡しするために、神経系の損傷のために使用される。こうして、神経ガイドは、成長するためのスペースを神経線維(軸索)に提供し、理想的にはまた、瘢痕形成による結合組織細胞(線維芽細胞)の侵入に対する保護を提供する。
【0003】
神経ガイドの2つの端部は、この場合、損傷時に形成された2つの神経断端を受容し、そしてこれらの間に存在するギャップを橋渡しする。神経断端の間に残った神経ガイドの管腔は、軸索を再生するための方向を指定し、そして軸索の、いかなる間違って案内された成長をも回避し、目標となる再生がこれにより促進される。
【0004】
このためには、生物分解性又は吸収性の神経ガイドが、非吸収性の神経ガイドと比較して好ましい。それというのも、神経線維が修復された後、又は修復中に、神経ガイドは分解し、従って非吸収性神経ガイドとは対照的に、ガイドを除去するための更なる手術が回避されるからである。このような手術は、ある種の環境において必要であり、そしてそれ自体が、神経線維に損傷を与えるリスクをもたらす。他方において、吸収性神経ガイドは、吸収メカニズムに関して調節可能でなければならず、このことは難題である。
【0005】
神経ガイドによる神経再生の目的は、運動機能及び感覚機能を修復すること、並びに神経成長の誤った案内及び有痛性神経腫の形成を防止することである。
【0006】
再生医療は今までのところ、神経系の神経線維の損傷に対する満足できない療法しか提供することができない。大抵の成人のニューロンは原則的に軸索を再生する能力を有してはいるものの、補助の存在なしでは、末梢神経系において、制限された機能的再生しか見いだされず、また、中枢神経系においては全く見いだされないも同然である。
【0007】
これらの制限の理由は特に、元の神経経路との接触の損失、及び阻害瘢痕の形成である。
【0008】
損傷/阻害部位の手術による橋渡しは、原則的に、功を奏する治療戦略であるものの、この治療戦略のためには実際には今までは、自己神経移植(ほとんどの場合、下肢の腓腹神経)がほとんど例外なしに用いられた。
【0009】
これと結びついた欠点、例えばドナー部位における罹患率、及び制限された利用可能性は、合成神経ガイドの開発を相当に刺激している。種々異なる不活性且つ吸収性の純粋合成ポリマーと生物学的成分、例えば多糖、コラーゲン、又は特定の架橋型ゼラチン材料とから形成された、中空管の形態を成す神経ガイドが最近開発されている。
【0010】
本発明の目的は、できる限り妨害されない形で、再生中の軸索の発生を容易にするために、冒頭に記載された種類の神経ガイドをさらに改善することである。
【発明の開示】
【0011】
この目的は、本発明によれば、架橋された吸収性のゼラチン系材料から形成された成形体を含む、冒頭に記載された種類の神経ガイドであって、成形体が、細管の形態の中空体であり、そして外面と、管腔を画定する内面とを備えた壁を有しており、そして神経ガイドは、管腔を取り囲む半透性層を含む、神経ガイドによって達成される。
【0012】
容易に滅菌可能な神経ガイドを、ゼラチン系材料から成るインプラントとして形成することができ、このようなインプラントは、長時間にわたってでも、特に室温でも貯蔵することができる。また、この種類の神経ガイドは、長さに関して、そしてまた他の要件に関して、手術室内でも適合させることができる。
【0013】
ゼラチン系材料は、定義された方法で、そして組成及び吸収特性において再現可能に調製することもできる。また、この種類の材料は、(病態)生理学的反応に関して計算可能であることが判っている。さらに、材料は一般に、所要の生体適合性を有し、毒性でなく、感染性でもなく、しかも炎症性でもない。
【0014】
さらに、ゼラチン系材料は、インプラントの機械的要件を満たす神経ガイドを製造するのにも適している。同時に、手術過程における医師による取り扱い中に、そして術後に挿入済インプラントとして十分な可撓性を示すように材料を調製することもできるので、神経の圧迫が回避され、また治療を受けた患者の身体部位の運動に対する順応が可能である。
【0015】
他方において、成形体のために本発明に従って使用されるゼラチン系材料によって、十分な形状安定性を保証することができ、これは、挿入されたインプラントの圧潰を回避する。
【0016】
さらに、損傷時に形成された神経断端にインプラントを縫合するのを容易にするために、十分に強い神経ガイドを製造することができる。
本発明によれば、成形体の一部を形成することができる神経ガイドの層が、半透性であるように形成される。このことは、管腔と神経ガイドの周囲との間の栄養素及び気体の拡散を、できる限り妨害されない形で、半径方向において行うことができ、これに対して他方では、周囲の組織からの望ましくない物質の拡散、特に例えば線維芽細胞のような細胞の侵入が防止されることを意味する。
【0017】
半透性層のこの保護機能を実現するために、種々異なる可能性を利用することができ、これらの可能性は一部、互いに組み合わせることもできる。
このように、神経ガイドの半透性層は、例えば平均0.5μm未満の孔を有していてよい。細胞はこの種類のいわゆるナノ孔を通過することができないのに対して、他方では、この種類の孔を通る栄養素及び気体の拡散は、ほとんど妨害されることなしに行うことができる。
【0018】
この代わりとして、一方では上記栄養素及び気体の拡散を容易にし、そして他方では細胞バリヤとして作用するゲル構造を使用することもできる。
別の実施態様の場合、神経ガイドは、半透性層として、正電荷種、具体的には細胞、特に線維芽細胞が実質的に透過することができないバリヤ層を有している。それというのも細胞はしばしば表面上に正電荷を担持しており、従って正電荷表面に対する付着力が弱いからである。
【0019】
別の実施態様は、著しく親水性である半透性層を有しており、そしてこの場合、細胞拡散がこの種類の層によって大きく妨げられることも観察される。
疎水性である層によって、同様の効果を達成することもできる。この場合にも、細胞移動が著しく低減される。
【0020】
疎水性の層は例えば、脂肪酸エステルで改質されたゼラチンを含む材料から形成することができる。この例は、ドデセニルコハク酸処理ゼラチンである。
【0021】
好ましくは、この種類の材料に関して、ゼラチンは、リシン基のアミノ基で、特にリシン基の10〜80%で、脂肪酸エステルで改質されている。
【0022】
最後に、さらに別の実施態様として、神経ガイド又はその成形体は、半透性層として外面上に、固定化された反発タンパク質、例えばセマフォリンを有しており、これらのタンパク質は、細胞の内方移動を阻害する。
【0023】
既に上で詳しく論じたように、本発明による神経ガイドの機械強度は、適用中、すなわちインプラントとしての使用中に、縫合を可能にしなければならない。このために必要となる強度、具体的には、使用される縫合材料に対する引裂強さも、特に強化用材料の使用によって達成することができる。強化用材料は具体的にはゼラチン系材料中に埋め込まれる。強化用材料は、生理学的に適合可能であるべきであり、最良の場合には同様に吸収可能であるべきである。
【0024】
強化用材料の種類に応じて、機械特性の制御と共に或る程度まで、吸収メカニズムに関する安定性を制御することができる。具体的には、強化用材料の吸収安定性は、神経ガイドの他の成分、例えばゼラチン系材料とは独立して選択することができる。
強化用材料は、5重量%の比率(乾燥質量に関する)でさえ、神経ガイドの機械特性における顕著な改善を示す。
【0025】
比率が60重量%を上回ると、通常、達成される更なる顕著な改善はなく、且つ/又は、神経ガイドの所期吸収特性、又は所要可撓性を達成できるとしても、そのためには必ず困難が伴う。
【0026】
強化用材料は、粒子及び/又は分子強化用材料、並びにこれらの混合物から選択することができる。
【0027】
粒子強化用材料の場合、強化用繊維の使用が特に推奨される。このためには、具体的には多糖繊維及びタンパク質繊維、例えばコラーゲン繊維、絹及び綿繊維、並びにポリアクチド繊維、及び前記のもののうちのいずれかの混合物が推奨される。
【0028】
他方において、機械特性を改善するために、また所望の場合には、神経ガイドの吸収安定性をも改善するために、分子強化用材料も好適である。
好ましい分子強化用材料は、具体的にはポリアクチドポリマー及びこれらの誘導体、セルロース誘導体、並びにキトサン及びその誘導体である。また、分子強化用材料は混合物として使用することができる。
【0029】
好ましくは、神経ガイドの成形体は、強化用材料の少なくとも一部を含む。このために、強化用材料は、ゼラチン系材料のマトリックス中に埋め込まれるか、或いは、ゼラチン系材料を含む分子混合物中に存在する。
神経ガイドの好ましい実施態様は、多層成形体を有しており、さらに下でより詳細に説明するように、個々の層が特定の機能を備えることが可能である。例えば、これらの層のうちの1つが、半透性層として機能することができる。
【0030】
驚くべきことに、ゼラチン系材料、特に高分子量のゼラチンが、血管形成促進効果を有するので、本発明による神経ガイドを植え込むことによって神経の成長のための神経ガイドを提供するという実際の基本機能と同時に、毛細血管の形成も促進され、これにより神経ガイドの環境、すなわち新しく発生する軸索に栄養素が徐々に供給されることも明らかになってきている。
【0031】
本発明による神経ガイドの場合、ゼラチン系材料は好ましくは、ゼラチンを主成分として含む。このことは、ゼラチンが、可能な他の付加的な成分、例えば他の吸収性ポリマー(例えば多糖又はヒアルロン酸)と比較して、材料の最大比率を占めることを意味する。この計算のためには、以下の文に挙げたより具体的な推奨においても同様であるが、存在し得る強化用材料の比率は勘定に入れない。
より好ましくは、ゼラチンは、ゼラチン系材料の大部分の比率を占める。
さらにより好ましくは、ゼラチンは、ゼラチン系材料の実質的に全部を占める。
【0032】
ゼラチン系材料中に好ましく使用される高分子量のゼラチンのブルーム値は、約160g〜300gである。
低分子量のゼラチン部分を用いた試験は、血管形成促進効果が、高分子量のゼラチンの効果よりも著しく低いことを示している。
【0033】
高分子量のゼラチンはまた、ゼラチン系材料中の更なる利点を提供する。これらの利点は、架橋レベルを設定する問題に関して下記の文においてより詳細に論じる。
より好ましくはエンドトキシンが低いゼラチンが使用され、これには豚皮ゼラチンが特に適している。この種類のゼラチンは好ましくは、LAL試験(European Pharmacopoeia, Ph. Eur. 4の第4版参照)によって測定して、1,200 I.U./g以下、特に200 I.U./g以下であるエンドトキシン含有率を有する。特に注意深い作業によって、例えば140 I.U./gのエンドトキシン含有率、又は50 I.U./gまでのエンドトキシン含有率でさえ達成することができる。
【0034】
異なる起源を有する、又は他の方法によって調製されたゼラチンは、20,000 I.U./gを上回る値に至るまでのエンドトキシン値を有することがある。
本発明によれば、承認された原材料の中からの注意深い選択、特に分離され供給されたばかりの豚皮のみの選択、及び冷凍製品の使用の排除、長時間の搬送又は貯蔵を伴わない原材料の即時使用、特別バッチの製造開始前における生産設備全体(任意にはイオン交換体及びフィルタ・システムの使用を含む)の別個の清浄化が、エンドトキシン値の急激な低下に貢献する。
【0035】
本発明による神経ガイドの長さは、典型的には0.5〜50cmである。神経ガイドが成形体として単一の中空細管を有する場合には、その外径は約1〜30mmである。壁厚は、成形体が単層状であるか多層状であるかに応じて、例えば0.02〜5mmである。
神経ガイドが複数の中空細管/成形体を有する場合には、外径はそれぞれの場合において、好ましくは100〜800μmである。通常の神経において、小さな軸索群がいわゆる束(fascicle)内に存在する。上記好ましい直径を有する複数の成形体を備えた神経ガイドは、この構造を模倣している。
【0036】
ゼラチン系材料から形成された管形態の中空体の製造は、特別な難題である。具体的には、末梢神経系における神経再生のための神経ガイドの製造は、比較的小さな寸法を必要とする。同時に、寸法は再現可能に達成できるようにしなければならず、また、その製造方法は過度に高価であるべきではない。
【0037】
好ましい方法は、マンドレルをゼラチン系材料の溶液中に1回又は2回以上浸漬し、そしてその間、少なくとも部分的に乾燥させておく浸漬手順を含む。
しかし、本発明による神経ガイドのための成形体として使用するためにこうして製造された中空細管を取り出すことは、直径及び壁厚が小さいことにより難しい。
【0038】
従って、最初の工程において、より大きい直径及び壁厚を有する中空体を製造し、次いで、この中空体をその長手方向に延伸して所望の外径及び所期の壁厚を有する中空細管にすることが好ましい。
ゼラチン系材料の延伸に関しては、今までのところ、文献において有意な程度には記載されていない。ゼラチン系材料、特にゼラチン系材料自体を、改質なしにはうまく延伸することができないことも明らかである。
【0039】
従って、本発明によれば、ゼラチン系材料は好ましくは、12〜40重量%、特に16〜25重量%の比率の可塑剤とともに使用される。
同時に、可塑剤の使用は、期待通り、神経ガイドの可撓性をより大きくし、これによりインプラントとしての挿入中に取り扱いが単純化される。
【0040】
最も驚くべきことには、このレベルの可塑剤部分を含有するゼラチンは、比較的大きい延伸比で延伸することができ、この比は実際には1.4〜8である。
【0041】
ゼラチン系材料のための本発明による好ましい可塑剤は、具体的には、グリセリン、オリゴグリセリン、オリゴグリコール、及びソルバイトから選択される。 この種類の可塑剤は、ゼラチン系材料中に残り、そして神経ガイド又は成形体自体のゼラチン系材料と正に同様に、患者の体内に吸収される。
【0042】
非常に驚くべきことには、ゼラチン系材料を延伸するために可塑剤を使用することによって、神経ガイドの長手方向における引裂強さも高められ、引裂強さは、具体的には30%以上の値に、特に50%以上の値にさえ上昇する。
【0043】
神経再生のためのインプラントとして本発明による神経ガイドを使用する際に、これは外科医に特別な利点をもたらす。なぜならば、外科医は比較的感度の低いインプラントを自由に使えるからである。同様に、架橋された材料を延伸することにより、40N/mm2以上、特に60N/mm2以上の、長手方向における引裂強さを達成することができる。
好ましくは、ゼラチン系材料は、少なくとも部分的に架橋された状態で使用される。神経ガイド又は成形体の吸収安定性は、架橋度によって調節することができる。
架橋は、ゼラチン系材料中に含まれるゼラチンに関連する。
【0044】
中空体を製造するための推奨される浸漬法の場合、ゼラチン系材料は、溶液中で既に予め架橋される。これにより、ゼラチン系材料全体の架橋度が均一になる。
通常は延伸された完成済の成形体が、所望の吸収安定性を保証するために、第2工程においてさらに架橋されることが、さらに好ましい。この2段階架橋は、単一段階架橋よりも高い架橋レベルを可能にする。これにおいて、架橋度を漸次的に変化させる可能性もある。
【0045】
例えば、ゼラチン系材料の架橋度は、外面に隣接する成形体の壁内において、管腔に隣接する壁領域内よりも高くてよい。
一方では成形体の外面と、他方では成形体の管腔に隣接する側とで異なる架橋度を選ぶことに基づいて、神経線維の再生時、すなわち軸索発生中に、第1の事例において、ゼラチン系材料が徐々に吸収されるため神経成長の途中でサイズが大きくなり得る管腔形態の保護容積が、一方では提供されることが可能である。それにもかかわらず、神経ガイドの保護機能はまだ維持される。なぜならば、成形体の壁の、外方に向かって配置された領域がよりゆっくりと吸収され、従って線維芽細胞の内方移動に対する、より長い時間にわたる保護を提供することができるからである。
【0046】
このことは、再生しつつある軸索が、徐々に厚くなる層を形成し、そして再生中の軸索に損傷を及ぼすおそれのある神経ガイド内の圧力増大なしに単離を可能にするミエリン層を形成することを可能にする。
溶液中の少なくとも部分的な架橋は、第2の架橋工程のように、化学的架橋及び酵素的架橋の両方で行われてよい。
【0047】
化学的架橋のために、架橋剤として、具体的にはアルデヒド、ジアルデヒド、イソシアネート、ジイソシアネート、カルボジイミド、及びハロゲン化アルキルを使用することができる。
特に好ましいのは、ホルムアルデヒドを使用する架橋である。それというのも、それぞれの架橋工程において、ゼラチン系材料と成形体とが同時に滅菌されるからである。
酵素的架橋の場合、トランスグルタミナーゼが使用されるのが好ましい。
【0048】
神経ガイドを使用するために、神経ガイド、特にその成形体が、標準的な生理学的条件(PBS緩衝剤、pH7.2;37℃)下で4週間にわたって最大約20重量%の乾燥重量低減を示すように、架橋度は選択される。
成形体の管腔は、自然発生する個々の神経線維の寸法と比較して著しく大きい。軸索は僅か約1μm厚であるのに対して、神経ガイドによって提供される管腔は、最大で10mmの直径を有することができる。数個の管が神経ガイド内で使用されるときにも、これらのそれぞれの管腔は、軸索の厚さを約2桁以上だけ上回る内法幅を提供する。
【0049】
再生中、目標の配向を有する軸索成長をさらに促進するために、また再生のための時間をできる限り短く保つために、1つ又は2つ以上のガイド要素が好ましくは成形体の管腔内に配置され、その長手方向に対して平行に整列されている。ガイド要素はこの場合好ましくは、実質的に管腔の全長にわたって延びている。
【0050】
ガイド要素はこの場合、既に補助細胞、特にシュワン細胞の集団を備えていてよく、これらは軸索の成長を促進する。
【0051】
シュワン細胞は、天然の神経内に見いだされ、これらは、制御されたフィードバック・ループによって成長因子を放出し、血管の形成及び軸索の再生の両方を促進する。これらの細胞は、例えば患者の損傷した神経から単離し、そしてin vitroの培養に続いて、本発明による神経ガイドによって再植え込みすることができる。シュワン細胞が神経ガイドの管腔内で生じ得る最も均一な分布を成して配列されるように、シュワン細胞は好ましくは、ゼラチン・ゲルのマトリックス中に配置されている。ゼラチン・ゲルは高温(例えば40℃)で液化され、そして体温まで冷却している間に再びゲル化され、そしてより高い温度で混和された細胞が固定化される。このようにして、シュワン細胞は均一に分布された形で、ガイド要素に被着することができ、そして室温まで冷却した後このような状態で、インプラントが患者に使用されるまで保たれ続ける。
【0052】
軸索の成長、及び神経組織の分化を妨げないように、ガイド要素は、好ましくは管腔の最大約30容積%を占めるべきである。
管腔内で利用可能な内法幅に応じて、平均厚が約10〜100μmのマイクロフィラメントがガイド要素として特に好適である。
管腔内に均一に分布された形で複数のマイクロ要素を配列できるように、要素は好ましくはマトリックス中で、又はスペーサによって互いに所定の間隔を置いて安定させられる。
【0053】
ガイド溝を有するガイド要素の場合には、特に効果的なガイド機能が観察される。その結果として、屈触性効果が生じ、そしていわゆるビュングナー帯(Buengner bands)におけるような、任意に使用される補助細胞を、極めて良好な長手方向整列状態を有するように定着させることができる。この後、同様に、高品位の、長手方向に配向された軸索成長が得られる。幾何学的寸法は特に重要というわけではなく、例えば深さ0.5〜50μmを有してよい。さらに重要なのは、ガイド溝を仕切るエッジの存在である。
【0054】
マイクロフィラメントを互いに固定するためにマトリックスを使用する場合、マトリックスの材料は好ましくは、軸索成長が専らマイクロフィラメント上で配向される程度まで軸索の成長を阻害する材料から形成されているべきである。軸索成長を阻害する材料は、例えばヒアルロン酸、又は疎水性ゼラチン・ゲルである。
【0055】
或いは、ガイド要素は、巻き上げられた平面状材料から形成することもできる。巻き上げられた平面状材料は、上記マイクロフィラメントのガイド溝と同様に、ロールの層間にマイクロチャネルを提供する。必要とされる構造は、平面状材料を型内に流し込み、又は続いてこれにスタンピングなどを施すことにより、平面状材料に与えることができる。平面状材料のための巻軸は、神経ガイドの長手方向に対して平行である。
平面状材料の好適な形態によって、この材料は同時に、神経ガイドの成形体を形成することができる。
【0056】
既に上で詳細に論じたように、神経ガイドは複数の成形体を含有することができ、これらの複数の成形体は好ましくは、マトリックス材料によって互いに結合されている。このマトリックス材料は好ましくは、非ニューロン・マトリックス中の天然の束においても発生する様式と同様に、軸索間の血管発生を容易にするために、血管形成促進成分を含有する。このマトリックス材料は好ましくは、ゼラチン系材料であり、そして好ましくは開放孔付き構造を有している。
【0057】
マトリックス材料は、例えば、神経ガイドの容積の30〜60%の容積比率を占める。マトリックス材料はさらに好ましくは吸収性である。
本発明のさらなる好ましい実施態様の場合、神経ガイドは、成形体を取り囲み、そして吸収性材料から同様に形成された外側スリーブ又はマトリックス・マントルを有している。多孔質の構造、具体的には開放孔付きの構造が、マトリックス・マントルのために特に推奨される。平均孔サイズは好ましくは100〜300μmである。
マトリックス・マントルは、例えば成形体の周りを発泡することにより製造することができる。
【0058】
或いは、マトリックス・マントルは、予め調製された材料固形ブロック、具体的にはスポンジから打ち抜くか、又はコア・ドリルによって得ることもできる。任意には半透性層を予め備えた成形体を導入するための貫通孔は、穿孔工具によって容易に形成することができる(コア・ドリルで作業する場合、これは好ましくは、マトリックス・マントルが製造されるのと同時に行われる)。
【0059】
成形体は、このように形成されたマトリックス・マントル内に押し込むことができる。神経ガイドの安全な取り扱いを可能にするには、マトリックス・マントルと成形体との間を軽くプレス嵌めすることで、通常は十分である。
【0060】
好ましくは、マトリックス・マントルは、さらに神経ガイドの周り、及び具体的には神経ガイドのための成形体まで、及び成形体上への血管の形成を促進するために、血管形成促進成分を含む。この刺激作用は、好ましくは成形体の管腔内での軸索の形成の前に、又は少なくともこれらの形成中に、血管の発芽が生じるように実現される。これに適した材料は、ここでもまた、ゼラチン系材料、具体的には上で広範囲にわたって既に詳細に説明したような、高分子量のゼラチンを基剤とする材料である。外側スリーブ又はマトリックス・マントルの厚さは好ましくは1〜2mmである。
【0061】
神経ガイドにおいて複数の成形体が使用されるときには、マトリックス・マントルは1つにまとまって、成形体を互いに結合するマトリックスになってよい。両マトリックスは同じ材料、具体的には血管形成を促進する材料から形成することができる。
この場合、軸索成長を阻害するか又はこれを完全に防止する細胞の内方移動が管腔内で発生できないことを保証するために、半透性層は各成形体の部分であり、これは軸索成長のために取っておかれる。
【0062】
このために、マトリックス・マントルの吸収速度は、成形体の吸収速度よりも高い。
インプラントによって2つの神経断端の間を橋渡しされるべき距離が長ければ長いほど、ゼラチンを基剤とする成形体の材料の吸収時間は長くなるべきである。すなわち、インプラント、具体的には成形体、特に半透性層の吸収特性は、神経損傷の長さに基づいて決定されるべきである。
【0063】
末梢神経系のためのインプラントとして使用される神経ガイドの場合、神経ガイドの吸収特性は、インプラント吸収が一方の端部で始まり、そして軸索成長に従って、また好ましくは軸索成長によって決定されて、他方の端部に向かって進行するように選択することができる。ミエリン形成、そしてこれによる神経線維の肥厚化も、軸索発生が始まるインプラント端部から始まる。神経線維の潰れが回避されるのに必要なスペースは、インプラントの時間によって決定される吸収によって形成される。
【0064】
この種類の所望の特性は、神経ガイドの長手方向に沿ってゼラチン系材料の架橋度を変化させることによって、達成することもできる。すなわち架橋度は、神経ガイドの一方の端部で、他方の端部よりも高く、そして架橋度の段階的な変化、又は架橋度の実質的に連続的な増大が可能である。
【0065】
これに対してインプラントが中枢神経系内に使用されるときには、好ましくは、神経断端の両方から外方に向かって軸索成長が生じる環境が考慮に入れられる。この場合、吸収がインプラントの両端でほぼ同時に始まり、そしてインプラントの両端の間の中央領域は、所定の時間遅れ後にだけ吸収される、漸次的に変化する吸収挙動が推奨される。
またこの吸収は、架橋度の対応する漸次的変化によって、神経ガイドの長手方向に沿って生じさせることもできる。この場合も、架橋度の段階的変化、又は実質的に連続的な変化を選択することができる。
【0066】
実際の考察のために、神経ガイドの2つの端部における管腔の内法幅が、領域の残りの内法幅よりも大きく、これにより、損傷の神経断端を神経ガイド内により容易に導入できることが有利であり得る。
図1は、符号10によって全体が示された神経ガイドを示し、神経ガイドは架橋型ゼラチン系材料から形成された成形体12を有している。成形体12は、壁14を備えた管状中空体を有しており、壁は、外面16と、管腔と呼ばれる中空スペース20を画定する内面18とを有している。
【0067】
神経ガイドはさらに、成形体12(これは図1に詳細には示されていない)と一体的に形成された半透性層を有している。半透性層の位置は、好ましくは外面16に隣接した、壁14のすぐ内側である。
【0068】
成形体12の外面は、外側スリーブ22によって取り囲まれている。外側スリーブ22は、開放孔を有するように形成されており、そして血管形成を促進する成分、具体的にはスポンジ構造を有する高分子量の架橋型ゼラチンを含む。
【0069】
外側スリーブ22は、架橋型ゼラチンから形成されたスポンジ材料から製造することができ、これについては下記例3において詳細に説明する。最初に、(仕上げ済神経ガイドの長さに相当するのに)十分な厚さを有するこの種類のスポンジ材料ブロックが調製される。外側スリーブ22は、このブロックから、例えばスタンピングによって、又はコア・ドリルによって中空円筒体として製造される。成形体12は次いで、この中空円筒体を通って延びる開口内に押し込むことができ、成形体は好ましくは、軽いプレス嵌めで外側スリーブ22内に保持される。
【0070】
図2は、成形体42として管状中空体を有する本発明による別の神経ガイド40を示す。成形体42は、ゼラチン系材料から形成された壁44を有し、壁は外面46と、管腔50を画定する内面48とを有する。
成形体42の外面46に隣接して、別個の半透性層52が配置されており、この半透性層は、栄養素及び気体がこれを通って拡散するのを許すがしかし、細胞、特に線維芽細胞の侵入をブロックする。
【0071】
半透性層52を有する成形体42はこの場合、外方に向かって外側スリーブ54によって取り囲まれており、この外側スリーブ54は、図1の実施態様に関して説明したのと同様に形成されている。外側スリーブ54は、図1の実施態様との関連において記載されているように形成し、そして成形体42上にスライドさせることができる。
図2は、外側スリーブ内への血管56の、内方に向かう発芽を概略的に示している。この発芽は既に発生しており、そして外側スリーブ54の血管形成促進成分によって促進されている。
【実施例】
【0072】
例
例1:本発明による神経ガイドの製造
管状中空体の製造
以下の文では、先ず第一に、本発明による神経ガイドの基本的な構成要件である、管形状を成す中空体の製造について説明する。製造される種々異なるタイプは、内径約2,000μm、1,100μm、及び150μmを有し、そして本発明に基づいて好ましい浸漬法によってこれらのタイプを製造し、そして続いて延伸する。
このために、100gの豚皮ゼラチン(ブルーム強度300g)を先ず、可塑剤としての260gの水と40gのグリセリンとの混合物中に60℃で溶解し、そして溶液を超音波によって脱ガスした。これは、ゼラチン及びグリセリンの重量を基準として、材料中の可塑剤の比率約29重量%に相当する。
【0073】
2.0重量%のホルムアルデヒドの水溶液4g(ゼラチン系架橋剤800ppm)を添加した後、溶液を均質化し、再び脱ガスし、そして表面から発泡体を除去した。予め離型ワックスで噴霧されている、成形要素として役立つ直径2mmのステンレス鋼マンドレルを、溶液中に短時間浸漬し、ひいては長さ約3cmになるように製造した。マンドレルを溶液から引き出した後、付着している溶液ができる限り均一な層として形成されるように、これを回転させた。
【0074】
ほぼ1日間にわたって25℃及び相対湿度30%で乾燥させた後、形成された中空細管をマンドレルから取り外した。
このようにして製造された中空細管は、光学顕微鏡によって立証されたように、マンドレルの直径に相当する内径2mmと、平均壁厚300μmとを有した。
【0075】
中空細管を一層小さな内径にするために、これを23℃及び相対湿度45%で5日間にわたって保存し、そして次いで延伸した。
延伸のために、細管の両端を把持し、そして細管を熱蒸気作用によって軟化させ、これを延伸比約1.4で伸ばし、この条件で固定し、そして23℃及び相対湿度45%で16時間にわたって乾燥させた。
【0076】
こうして得られた中空細管の内径は約1,100μmであり、壁厚は約200μmであった。光学顕微鏡による試験は、極めて規則的であるように形成された断面形状を示し、また、細管の壁厚がその全周及び全長にわたって見て極めて均一であることを示した。
【0077】
より大きい延伸比を用いると、最小150μmの内径を有する中空細管が得られた。
細管の生理学的崩壊のための時間を長くするために、細管内に含有されたゼラチンに、さらなる架橋工程を施した。このために、細管を17時間にわたって乾燥器内で、室温の17重量%のホルムアルデヒド溶液の平衡蒸気圧に曝した。
【0078】
このために、架橋が外面から内方に向かってだけ生じるように、細管の端部を閉じることができる。この場合、細管の管腔を画定する内面と比較して、外面においてより高い架橋度が見いだされ、そしてこれに相応して、より高い吸収安定性が見いだされる。
【0079】
管腔に隣接する壁領域においてより高い架橋度を有する中空細管は、例えば専ら中空細管の管腔を通って案内されるホルムアルデヒド蒸気によって得ることができる。
これに代わるものとして、又はこれに加えて、種々異なる濃度の架橋剤を有する溶液中に浸漬されたマンドレルによって、異なる架橋度を実現することもできる。こうして、中空細管の壁厚全体にわたって相応に漸次的に変化する架橋度が生じる。
【0080】
言うまでもなく、具体的にはマンドレルのサイズ及び形状、溶液中のゼラチン、可塑剤、及び架橋剤の比率、浸漬工程数、並びに後続の架橋の強度を特定の要件に合わせることができる点で、多くの種々異なる方法で、ここに記載した中空細管の特性を改変することができる。
【0081】
半透性層の製造
上記中空細管の外面は、例えば、管腔を取り囲む、中空細管と一体的な半透性層を形成するために、化学的に改質することができる。
こうして例えば、リシン残基のアミノ基は、無水コハク酸によってコハク酸形に変換することができ、ゼラチン材料のpKs値は、未改質材料に対して見いだされた値である8〜9から約4に低下する。
【0082】
ゼラチンを改質する更なる可能性は、リシン残基のアミノ基をドデセニルスクシニル基に変換させることにある。この場合のpKs値は、約5に低下し、そして同時にゼラチンの僅かな疎水化が生じる。
【0083】
両方の場合において、下記の文で図3及び4と関連して記載する試験においてより詳細に説明するように、このように処理された表面に対する線維芽細胞の細胞付着力は著しく低減される。
【0084】
先ず第一に完全を期すために述べるならば、上記のように製造された中空細管の場合、細管は、外面のゼラチンを改質する代わりに、別個の半透性層を備えてもよい。上記例の条件の中にとどまるように、この層は、コハク酸処理又はドデセニルコハク酸処理されたゼラチン、又は他のバイオポリマー、具体的には水溶液中の未改質ゼラチンとのこれらの混合物を被着することにより生じさせることができる。この手順は、ここでは中空細管の製造に関して上に詳しく説明した浸漬法に従って行われてよい。
【0085】
改質ゼラチンのためのリシン基の変換度は、好ましくは30%以上になる。
ドデセニルコハク酸処理ゼラチンの場合、40〜50%の変換度でしばしば十分であるのに対して、コハク酸処理ゼラチンの場合には、約80%からほとんど完全なリシン基変換度で、最良の結果をもたらす。
【0086】
図3及び4は、ガラス表面に試験目的で被着されたゼラチン材料の試験表面に関する細胞付着結果を示す。ゼラチン材料は、豚皮ゼラチン(MW119kDa)、及び約95%までのリシン基でコハク酸処理されたゼラチン(図3)、又は同じタイプの約45%のドデセニルコハク酸処理ゼラチン(図4)から始めて製造されている。それぞれの事例において、100:0、80:20、50:50、及び0:100の比の、未改質ゼラチンと改質ゼラチンとの混合物を試験した。
【0087】
試験に際しては、それぞれの事例において、20,000個の豚軟骨細胞を37℃で4時間にわたって試験表面上でインキュベートした。過剰分を除去し、表面を洗浄し、そして表面上に残った細胞を、これらが続いて光学顕微鏡によって評価されるように固定した。ヒトの軟骨細胞と同等の結果を得た。
【0088】
ダイヤグラムにおけるパーセンテージ値は、上記手順が実施された後、インキュベーションのために使用された数と比較した、膜試験表面上に見いだされた細胞の比率を表す。
両タイプの改質ゼラチンに関して、改質ゼラチンが専ら使用される場合、集団効果はゼロに近かった。
このことから、中空細管の表面が改質されている場合、外面上でアクセス可能なリシン基の相応に高い変換度に対応して、同等の効果を達成できると結論づけることができる。
中空細管の外面に別個の改質ゼラチン層を被着する場合にも、相応の結果が当然当てはまる。
【0089】
中空細管の壁内に細胞が移動するためには、まず外面に細胞が付着することが必要となるので、細胞に対するブロック作用の条件が、半透性層によって本発明に従って、期待通りに極めて十分に満たされる。
【0090】
例2:平面状材料をベースとするゼラチン膜の半透性/ブロック層機能の試験
上記試験膜の拡散特性を試験するために、図5から判るように、膜を2チャンバ試験装置60内の2つのブロック62及び64の間に張った。試験膜66の両側には、キャビティ68,70がブロック62及び64内に設けられており、キャビティには、試験段階中に異なる媒質がフラッシュされた。
【0091】
上側チャンバ68には、栄養素溶液の代替物としてフェノール・レッド溶液が満たされており、純粋PBS溶液が下側チャンバ70内で使用される。2時間毎に、フェノール・レッド及びPBS溶液の吸収を測定した。測定値は、未改質ゼラチン膜に関して図6の曲線に示されている。
【0092】
先ず第一に10,000細胞/cm2の集団を有する膜で、この試行を繰り返した。これらの細胞の付着のために2時間を与えた。付着された細胞を培地中で1週間にわたって膜上で増殖させ、その後、上記と同じ測定を実施した。測定値を図7に示す。
結果として、上側チャンバ68内のフェノール・レッド濃度が低減し、そして、膜を通る栄養素の拡散に応じて、下側チャンバ70内のフェノール・レッド濃度が相応に増大することが見いだされる。細胞集団を有する膜の場合、結果としてフェノール・レッドの拡散が加速する傾向が生じる。
【0093】
これと平行して、カーボン粒子(75重量%の粒子のサイズが45μm未満である)の懸濁液の膜通過は、どのようなものであれ見いだされなかった。このことは、細胞集団が存在しても、膜は依然として細胞及び粒子による侵入に対する活性ブロック層を提供し、そして細胞プロテアーゼによる作用を失わないことを意味する。
この結果は、2週間及び3週間継続する培養試験において裏付けることもできる。
【0094】
例3:血管形成効果
架橋型ゼラチンを基剤とするセル構造を有する成形体の製造及び特性
60℃でゼラチンを溶解することによって、豚皮ゼラチン(ブルーム強度300g、平均分子量140kDa)の12重量%の水溶液の5種の配合物を調製し、これらを超音波によって脱ガスし、そしてそれぞれの事例において、(ゼラチンに対して)1,500ppmのホルムアルデヒドが存在するように、適量のホルムアルデヒド水溶液を添加した(1.0重量%、室温)。第6の配合物の事例では、ホルムアルデヒドを添加しなかった。
均質化された混合物を45℃まで加熱し、そして10分間の反応時間後に、これらを空気で機械的に発泡した。約30分の継続時間の発泡工程を、空気とゼラチン溶液との異なる比で、6種の配合物に関して行い、異なる湿潤密度及び孔サイズを有するセル構造が表1に示すように得られた。
【0095】
26.5℃の温度を有する発泡済ゼラチン溶液を、40 x 20 x 6cmの寸法の型内に注ぎ込み、そして約4日間にわたって26℃及び相対湿度10%で乾燥させた。
6種の全ての配合物に対応する乾燥済の成形体は、スポンジ状セル構造(以下の文ではスポンジと呼ぶ)を有する。これらをカットして2mm厚の層にし、そして第2の架橋工程のために、17時間にわたって乾燥器内で、室温で17重量%のホルムアルデヒド水溶液の平衡蒸気圧に曝した。第6の配合物に関しては、これは第1の(そして唯一の)架橋工程であった。成形体の容積全体の均一なパージを達成するために、乾燥器をそれぞれの事例において2〜3回排気し、そしてこれに空気を再充填した。
スポンジの孔構造は、光学顕微鏡によって確かめられ、これは走査電子顕微鏡によって裏付けることができた。
【0096】
【表1】
【0097】
スポンジの安定性を測定するために、30 x 30 x 2mmの小片を秤量し、それぞれを75mlのPBS緩衝剤中に入れ、そして37℃で保存した。それぞれの保存時間後、小片を水中で洗浄し、乾燥させ、そして秤量した。
【0098】
スポンジ1−6は3日後にすでに完全に溶けたのに対して、2段階架橋を施されたスポンジの全ては、14日後にさえ最大80%を上回る分だけまだ残っていた。しかしながら、さらなる分解挙動にはかなりの差が現れた。これは、材料の異なる発泡密度に帰せしめられる。このように、スポンジ1−1は21日後に、そしてスポンジ1−2は28日後に完全に溶解されるのに対して、スポンジ1−4及び1−5は、35日後にも大部分がまだ残される。このように、これらのスポンジ又はセル構造材料の分解挙動を、他のパラメーターとは独立して、目標を定めて制御する更なる可能性がもたらされる。
【0099】
しかしながら、セル構造材料の特性は、出発溶液のゼラチン濃度を変化させることにより顕著に改変することもできる。
ゼラチン濃度が高ければ高いほど、個々の孔の間のセル壁又は仕切りは広く(厚く)なり、これは、対応スポンジの極限強度の増大を示す。
成形体の、具体的にはタンパク質分解に関する安定性は、これとは対照的に架橋度によって、すなわち、架橋溶液の濃度を選択することによって制御することができる。
【0100】
血管形成促進効果の証拠
前記のものと同様の手順によって得られた成形体から、15 x 15 x 2mmの寸法を有する試料を製造し、そして2回架橋した(乾燥密度22mg/ml、平均孔直径約250μm)。これらを以下、インプラントと呼ぶ。
これらのインプラントの血管形成促進特性を、図8a及び8bに概略的に示す、受精鶏卵に対する試験によって調べた。
【0101】
図8aは、鶏卵の構造の断面を概略的に示す。殻80の下側に、漿尿膜82(以下、短くCAMと呼ぶ)がある。卵黄84の縁に位置する胚86から出発して、胚外血管88の形成が生じ、血管はCAMに沿って広がる。卵白の一部をカニューレによって取り出す場合には、(図8bに示すように)CAM82を損傷することなしに殻80から窓90を切り取ることができる。ここでCAM82上にインプラント92を置いて、血管形成に対するインプラントの作用を調べることができる(J. Borges他(2004) Der Chirurg 75, 284-290参照)。
【0102】
3,5及び7日後に光学顕微鏡を使用して撮影した画像から、血管の再配向及び新しい血管の出現が観察された。
基準例として、本発明による基材と共に、コラーゲン(復元ウシ・コラーゲン、密度5.6mg/cm3、Innocoll Companyから入手可能)及びポリ-DL-ラクチド(製造元ITV Denkendorf)から成る同等のスポンジ状材料を試験した。
全てのインプラントをCAM上に置き、そして3,4,5,6及び7日後にインプラントのすぐ近くで発生した血管の数を測定した。数日以内に、血管は血管形成促進基材上、又はスポンジ状コラーゲン及びポリ-DL-ラクチドから成る基準試料上に極めて明らかに整列した。
【0103】
3種全ての試料の事例において、ヌル値(インプラントが配置されていないCAM)と比較して極めて多数の血管が存在するように見え、具体的にはヌル値と比較して見て、同様の効果が3種の全ての試料に関して達成される。
【0104】
このことは、被験材料の全ての、これらの環境における血管形成促進作用の増大レベルがほぼ同じであることを意味する。観察される効果は、かなりの距離にわたってもたらされ、したがって恐らくいわゆる拡散性因子に依存する。
CAMは、空気と卵液との間の境界面を表す組織である。場合によっては、CAM上に置かれた基材の機械的刺激だけから、受容体の活性化が生じ、この刺激によって、血管形成促進因子、例えばVEGFを細胞に放出することができる。これにより、内皮細胞が引き付けられ、その結果、インプラント上に向けられた血管形成が生じることになる。
【0105】
別の可能な説明は、空気から上皮組織への酸素の侵入が、インプラントの配置によって妨げられることである。上皮組織内で利用可能な酸素は少ないので、いわゆる酸素欠乏がインプラントの領域内に発生する。酸素欠乏に対して、細胞が典型的にはVEGFの放出によって反応し、このVEGFの放出によって、血管の変化又は新しい血管の形成が誘発される。これは、細胞の酸素供給不足部分が新しい酸素供給チャネルを組織化することを意味する。この生物学的現象は恐らく、臨界的に酸素供給不足の(変形した)組織表面の上方に発生する。
【0106】
このことは、CAM上に細いゴム輪を置くだけの試行では(極めて小さな被覆面)、なぜ血管形成効果が観察されなかったのかの説明になる。
図9の場合、比較材料から成る基材又はインプラント内部、及び本発明の血管形成促進基材内部の、3,5及び7日後の血管の面積(μm2)が示されている。ゼラチン試料、コラーゲン試料、ポリ-DL-ラクチド試料の順番が、図示の一連のカラムに当てはまる。
【0107】
図9から判るように、3日後には、本発明による血管形成促進基材の場合にのみ、インプラント自体に測定可能な血管部分があるのに対して、コラーゲン・スポンジ及びポリ-DL-ラクチド・スポンジには、測定可能な血管部分は存在しない。
5日後の測定可能な血管は、本発明による血管形成促進基材に対応する極めて大幅な増大を示すのに対して、ポリ-DL-ラクチド試料及びコラーゲン・スポンジに関しては、効果が全く観察されない。
【0108】
7日後、本発明による血管形成促進基材に対応するインプラント内の血管部分は、著しく低下したが、しかし効果の大きさは3日後の約2倍ある。この時点で、コラーゲン・スポンジに関しては、測定可能な結果がまだ生じず、これに対してポリ-DL-ラクチド・スポンジに関しては、本発明によるゼラチン・スポンジのインプラントに対してたった3日後に既に立証されたような効果が今現れる。
【0109】
試料を評価し、インプラント内の血管の数を測定するために、試料のそれぞれから冷凍切片を調製し、そして、試料内部の血管の表面を分析するためにDAPIで着色した。次いで、切片の中央領域から画像を形成し、次いで画像処理法によって定量的に評価した。コラーゲン・スポンジに関しては、中央領域内に血管形成を観察することは全くできなかった。ポリ-DL-ラクチド・スポンジに関しては、7日後に、結合組織の細胞による漸進的な集団形成と結びついた血管形成を検出することができたにすぎない。しかし全体として見れば、細胞の集団形成は、この比較試料において、本発明によるインプラントよりも著しく低速で進行した。
【0110】
本発明によるインプラントに対応する、7日後の血管の退行は、測定表面の減少によって明らかにされる。このことは、例えば酸素供給されるのを必要とする比較的僅かな他のタイプの細胞が移入しているため、インプラント領域のために実際に必要とされる程度まで、血管網状構造が再び低減されることに起因し得る。これは、炎症が鎮静するやいなや血管網状構造が再形成されるような感染の場合に既に見いだされたプロセスに等しい。
【0111】
例4:ゼラチン細管の半透性が、カプセル化細胞の生き残りを可能にする
ゼラチンから成る閉じられた管状成形体(例1に従って製造、内径1,100μm、壁厚200μm、2回の架橋)において細胞が生き残るかどうかを調べることができた。このために、成形体を、これを洗浄するためにPBS中に1週間にわたって保存した。次いでシュワン細胞を、0.9mm幅の透明不活性プラスチック・ストリップ(Folex Imaging Companyから入手した0.1mmの厚さを有する無塗膜X−70コピー用フィルム)上に播種した。プラスチック・ストリップをPlasmaCleanerで予め清浄化し、そしてポリリシン及びラミニン(33μg/ml、37℃で1時間)で塗布した。ラットの座骨神経から単離したシュワン細胞(25,000細胞/cm2)を、次いでフィルム上に播種し、そして24時間にわたって培地内に保持した。この後、末梢神経系の後根神経節からの個々のニューロンを調製し、そしてシュワン細胞とともに10,000細胞/cm2の密度でプラスチック・ストリップ上に播種した。ニューロンを、4時間にわたって付着させておき、その後、細胞を有するプラスチック・ストリップを、ゼラチンから成る成形体内に導入した。細胞を成形体内に直接的にではなく、透明プラスチック・ストリップ上で導入することは、顕微鏡を使用して細胞活力を見極めるために後で困難なしにプラスチック・ストリップを回収できるという大きい利点を有する。次いで、管状成形体を、歯科用ワックスの栓(Rosa Dura, Kem-Dent, 英国)によって端部で閉じ、そして5日間にわたって培地内に置いた。これらの条件下では、栄養素及び酸素は、成形体の壁を通ってのみ細胞に達することができる。5日間にわたって培地に曝した後、プラスチック・ストリップを管から取り出し、そして、軸索の検出のための抗体SM131(Sternberger Monoclonals、米国)及び細胞核の証拠としてのDAPIでマーキングした。対照としては、まさに同じように処理されるがしかしカプセル化はされず、むしろ同じ培地(DMEM、10%FCS、グルタミン、ゲンタマイシン)中で開放条件で培養された、細胞集団を有するプラスチック・ストリップが役立った。光学顕微鏡を使用して撮影された図10の画像上で見られるように、細胞/ニューロンは、成形体の内側及び外側で等しく良好に生き延びる(画像A及びC)。このことは明るい点で見ることができる。軸索が両事例において等しく良好に形成される(画像B及びDの明るい線維)。画像A及びBは、カプセル化された同じ培地のシュワン細胞、及び後根神経節の軸索を示す。画像C及びDは、カプセル化されていない培地に関連する。従って、ゼラチン管の透過性が、カプセル化細胞の生き残りを可能にするのに十分であることが示された。
【0112】
図面及び下記例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】図1:本発明による神経ガイドの第1実施態様を示す概略図である。
【図2】図2:本発明による神経ガイドの第2実施態様を示す概略図である。
【図3】基材の細胞集団に対する、本発明に従って改質されたゼラチンの効果に関連するダイアグラムである。
【図4】基材の細胞集団に対する、本発明に従って改質されたゼラチンの効果に関連するダイアグラムである。
【図5】図5:本発明による半透性層の拡散特性を試験するための試験設備を示す概略図である。
【図6】本発明による半透性層の拡散特性試験の実験結果を示すダイヤグラムである。
【図7】本発明による半透性層の拡散特性試験の実験結果を示すダイヤグラムである。
【図8】図8a及び8b:漿尿膜によって血管形成を調べるための試験配置を示す概略図である。
【図9】図9は、血管形成を促進するための材料中の血管の発生を示すダイヤグラムである。
【図10】図10は、不活性プラスチック・フィルム上に培養されたシュワン細胞及び軸索を、光学顕微鏡を使用して撮影した画像である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性材料から形成された成形体を含む神経ガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭に記載した種類の神経ガイドは、損傷された神経の端部を繋くため、そしてこれら2つの端部の間のギャップを橋渡しするために、神経系の損傷のために使用される。こうして、神経ガイドは、成長するためのスペースを神経線維(軸索)に提供し、理想的にはまた、瘢痕形成による結合組織細胞(線維芽細胞)の侵入に対する保護を提供する。
【0003】
神経ガイドの2つの端部は、この場合、損傷時に形成された2つの神経断端を受容し、そしてこれらの間に存在するギャップを橋渡しする。神経断端の間に残った神経ガイドの管腔は、軸索を再生するための方向を指定し、そして軸索の、いかなる間違って案内された成長をも回避し、目標となる再生がこれにより促進される。
【0004】
このためには、生物分解性又は吸収性の神経ガイドが、非吸収性の神経ガイドと比較して好ましい。それというのも、神経線維が修復された後、又は修復中に、神経ガイドは分解し、従って非吸収性神経ガイドとは対照的に、ガイドを除去するための更なる手術が回避されるからである。このような手術は、ある種の環境において必要であり、そしてそれ自体が、神経線維に損傷を与えるリスクをもたらす。他方において、吸収性神経ガイドは、吸収メカニズムに関して調節可能でなければならず、このことは難題である。
【0005】
神経ガイドによる神経再生の目的は、運動機能及び感覚機能を修復すること、並びに神経成長の誤った案内及び有痛性神経腫の形成を防止することである。
【0006】
再生医療は今までのところ、神経系の神経線維の損傷に対する満足できない療法しか提供することができない。大抵の成人のニューロンは原則的に軸索を再生する能力を有してはいるものの、補助の存在なしでは、末梢神経系において、制限された機能的再生しか見いだされず、また、中枢神経系においては全く見いだされないも同然である。
【0007】
これらの制限の理由は特に、元の神経経路との接触の損失、及び阻害瘢痕の形成である。
【0008】
損傷/阻害部位の手術による橋渡しは、原則的に、功を奏する治療戦略であるものの、この治療戦略のためには実際には今までは、自己神経移植(ほとんどの場合、下肢の腓腹神経)がほとんど例外なしに用いられた。
【0009】
これと結びついた欠点、例えばドナー部位における罹患率、及び制限された利用可能性は、合成神経ガイドの開発を相当に刺激している。種々異なる不活性且つ吸収性の純粋合成ポリマーと生物学的成分、例えば多糖、コラーゲン、又は特定の架橋型ゼラチン材料とから形成された、中空管の形態を成す神経ガイドが最近開発されている。
【0010】
本発明の目的は、できる限り妨害されない形で、再生中の軸索の発生を容易にするために、冒頭に記載された種類の神経ガイドをさらに改善することである。
【発明の開示】
【0011】
この目的は、本発明によれば、架橋された吸収性のゼラチン系材料から形成された成形体を含む、冒頭に記載された種類の神経ガイドであって、成形体が、細管の形態の中空体であり、そして外面と、管腔を画定する内面とを備えた壁を有しており、そして神経ガイドは、管腔を取り囲む半透性層を含む、神経ガイドによって達成される。
【0012】
容易に滅菌可能な神経ガイドを、ゼラチン系材料から成るインプラントとして形成することができ、このようなインプラントは、長時間にわたってでも、特に室温でも貯蔵することができる。また、この種類の神経ガイドは、長さに関して、そしてまた他の要件に関して、手術室内でも適合させることができる。
【0013】
ゼラチン系材料は、定義された方法で、そして組成及び吸収特性において再現可能に調製することもできる。また、この種類の材料は、(病態)生理学的反応に関して計算可能であることが判っている。さらに、材料は一般に、所要の生体適合性を有し、毒性でなく、感染性でもなく、しかも炎症性でもない。
【0014】
さらに、ゼラチン系材料は、インプラントの機械的要件を満たす神経ガイドを製造するのにも適している。同時に、手術過程における医師による取り扱い中に、そして術後に挿入済インプラントとして十分な可撓性を示すように材料を調製することもできるので、神経の圧迫が回避され、また治療を受けた患者の身体部位の運動に対する順応が可能である。
【0015】
他方において、成形体のために本発明に従って使用されるゼラチン系材料によって、十分な形状安定性を保証することができ、これは、挿入されたインプラントの圧潰を回避する。
【0016】
さらに、損傷時に形成された神経断端にインプラントを縫合するのを容易にするために、十分に強い神経ガイドを製造することができる。
本発明によれば、成形体の一部を形成することができる神経ガイドの層が、半透性であるように形成される。このことは、管腔と神経ガイドの周囲との間の栄養素及び気体の拡散を、できる限り妨害されない形で、半径方向において行うことができ、これに対して他方では、周囲の組織からの望ましくない物質の拡散、特に例えば線維芽細胞のような細胞の侵入が防止されることを意味する。
【0017】
半透性層のこの保護機能を実現するために、種々異なる可能性を利用することができ、これらの可能性は一部、互いに組み合わせることもできる。
このように、神経ガイドの半透性層は、例えば平均0.5μm未満の孔を有していてよい。細胞はこの種類のいわゆるナノ孔を通過することができないのに対して、他方では、この種類の孔を通る栄養素及び気体の拡散は、ほとんど妨害されることなしに行うことができる。
【0018】
この代わりとして、一方では上記栄養素及び気体の拡散を容易にし、そして他方では細胞バリヤとして作用するゲル構造を使用することもできる。
別の実施態様の場合、神経ガイドは、半透性層として、正電荷種、具体的には細胞、特に線維芽細胞が実質的に透過することができないバリヤ層を有している。それというのも細胞はしばしば表面上に正電荷を担持しており、従って正電荷表面に対する付着力が弱いからである。
【0019】
別の実施態様は、著しく親水性である半透性層を有しており、そしてこの場合、細胞拡散がこの種類の層によって大きく妨げられることも観察される。
疎水性である層によって、同様の効果を達成することもできる。この場合にも、細胞移動が著しく低減される。
【0020】
疎水性の層は例えば、脂肪酸エステルで改質されたゼラチンを含む材料から形成することができる。この例は、ドデセニルコハク酸処理ゼラチンである。
【0021】
好ましくは、この種類の材料に関して、ゼラチンは、リシン基のアミノ基で、特にリシン基の10〜80%で、脂肪酸エステルで改質されている。
【0022】
最後に、さらに別の実施態様として、神経ガイド又はその成形体は、半透性層として外面上に、固定化された反発タンパク質、例えばセマフォリンを有しており、これらのタンパク質は、細胞の内方移動を阻害する。
【0023】
既に上で詳しく論じたように、本発明による神経ガイドの機械強度は、適用中、すなわちインプラントとしての使用中に、縫合を可能にしなければならない。このために必要となる強度、具体的には、使用される縫合材料に対する引裂強さも、特に強化用材料の使用によって達成することができる。強化用材料は具体的にはゼラチン系材料中に埋め込まれる。強化用材料は、生理学的に適合可能であるべきであり、最良の場合には同様に吸収可能であるべきである。
【0024】
強化用材料の種類に応じて、機械特性の制御と共に或る程度まで、吸収メカニズムに関する安定性を制御することができる。具体的には、強化用材料の吸収安定性は、神経ガイドの他の成分、例えばゼラチン系材料とは独立して選択することができる。
強化用材料は、5重量%の比率(乾燥質量に関する)でさえ、神経ガイドの機械特性における顕著な改善を示す。
【0025】
比率が60重量%を上回ると、通常、達成される更なる顕著な改善はなく、且つ/又は、神経ガイドの所期吸収特性、又は所要可撓性を達成できるとしても、そのためには必ず困難が伴う。
【0026】
強化用材料は、粒子及び/又は分子強化用材料、並びにこれらの混合物から選択することができる。
【0027】
粒子強化用材料の場合、強化用繊維の使用が特に推奨される。このためには、具体的には多糖繊維及びタンパク質繊維、例えばコラーゲン繊維、絹及び綿繊維、並びにポリアクチド繊維、及び前記のもののうちのいずれかの混合物が推奨される。
【0028】
他方において、機械特性を改善するために、また所望の場合には、神経ガイドの吸収安定性をも改善するために、分子強化用材料も好適である。
好ましい分子強化用材料は、具体的にはポリアクチドポリマー及びこれらの誘導体、セルロース誘導体、並びにキトサン及びその誘導体である。また、分子強化用材料は混合物として使用することができる。
【0029】
好ましくは、神経ガイドの成形体は、強化用材料の少なくとも一部を含む。このために、強化用材料は、ゼラチン系材料のマトリックス中に埋め込まれるか、或いは、ゼラチン系材料を含む分子混合物中に存在する。
神経ガイドの好ましい実施態様は、多層成形体を有しており、さらに下でより詳細に説明するように、個々の層が特定の機能を備えることが可能である。例えば、これらの層のうちの1つが、半透性層として機能することができる。
【0030】
驚くべきことに、ゼラチン系材料、特に高分子量のゼラチンが、血管形成促進効果を有するので、本発明による神経ガイドを植え込むことによって神経の成長のための神経ガイドを提供するという実際の基本機能と同時に、毛細血管の形成も促進され、これにより神経ガイドの環境、すなわち新しく発生する軸索に栄養素が徐々に供給されることも明らかになってきている。
【0031】
本発明による神経ガイドの場合、ゼラチン系材料は好ましくは、ゼラチンを主成分として含む。このことは、ゼラチンが、可能な他の付加的な成分、例えば他の吸収性ポリマー(例えば多糖又はヒアルロン酸)と比較して、材料の最大比率を占めることを意味する。この計算のためには、以下の文に挙げたより具体的な推奨においても同様であるが、存在し得る強化用材料の比率は勘定に入れない。
より好ましくは、ゼラチンは、ゼラチン系材料の大部分の比率を占める。
さらにより好ましくは、ゼラチンは、ゼラチン系材料の実質的に全部を占める。
【0032】
ゼラチン系材料中に好ましく使用される高分子量のゼラチンのブルーム値は、約160g〜300gである。
低分子量のゼラチン部分を用いた試験は、血管形成促進効果が、高分子量のゼラチンの効果よりも著しく低いことを示している。
【0033】
高分子量のゼラチンはまた、ゼラチン系材料中の更なる利点を提供する。これらの利点は、架橋レベルを設定する問題に関して下記の文においてより詳細に論じる。
より好ましくはエンドトキシンが低いゼラチンが使用され、これには豚皮ゼラチンが特に適している。この種類のゼラチンは好ましくは、LAL試験(European Pharmacopoeia, Ph. Eur. 4の第4版参照)によって測定して、1,200 I.U./g以下、特に200 I.U./g以下であるエンドトキシン含有率を有する。特に注意深い作業によって、例えば140 I.U./gのエンドトキシン含有率、又は50 I.U./gまでのエンドトキシン含有率でさえ達成することができる。
【0034】
異なる起源を有する、又は他の方法によって調製されたゼラチンは、20,000 I.U./gを上回る値に至るまでのエンドトキシン値を有することがある。
本発明によれば、承認された原材料の中からの注意深い選択、特に分離され供給されたばかりの豚皮のみの選択、及び冷凍製品の使用の排除、長時間の搬送又は貯蔵を伴わない原材料の即時使用、特別バッチの製造開始前における生産設備全体(任意にはイオン交換体及びフィルタ・システムの使用を含む)の別個の清浄化が、エンドトキシン値の急激な低下に貢献する。
【0035】
本発明による神経ガイドの長さは、典型的には0.5〜50cmである。神経ガイドが成形体として単一の中空細管を有する場合には、その外径は約1〜30mmである。壁厚は、成形体が単層状であるか多層状であるかに応じて、例えば0.02〜5mmである。
神経ガイドが複数の中空細管/成形体を有する場合には、外径はそれぞれの場合において、好ましくは100〜800μmである。通常の神経において、小さな軸索群がいわゆる束(fascicle)内に存在する。上記好ましい直径を有する複数の成形体を備えた神経ガイドは、この構造を模倣している。
【0036】
ゼラチン系材料から形成された管形態の中空体の製造は、特別な難題である。具体的には、末梢神経系における神経再生のための神経ガイドの製造は、比較的小さな寸法を必要とする。同時に、寸法は再現可能に達成できるようにしなければならず、また、その製造方法は過度に高価であるべきではない。
【0037】
好ましい方法は、マンドレルをゼラチン系材料の溶液中に1回又は2回以上浸漬し、そしてその間、少なくとも部分的に乾燥させておく浸漬手順を含む。
しかし、本発明による神経ガイドのための成形体として使用するためにこうして製造された中空細管を取り出すことは、直径及び壁厚が小さいことにより難しい。
【0038】
従って、最初の工程において、より大きい直径及び壁厚を有する中空体を製造し、次いで、この中空体をその長手方向に延伸して所望の外径及び所期の壁厚を有する中空細管にすることが好ましい。
ゼラチン系材料の延伸に関しては、今までのところ、文献において有意な程度には記載されていない。ゼラチン系材料、特にゼラチン系材料自体を、改質なしにはうまく延伸することができないことも明らかである。
【0039】
従って、本発明によれば、ゼラチン系材料は好ましくは、12〜40重量%、特に16〜25重量%の比率の可塑剤とともに使用される。
同時に、可塑剤の使用は、期待通り、神経ガイドの可撓性をより大きくし、これによりインプラントとしての挿入中に取り扱いが単純化される。
【0040】
最も驚くべきことには、このレベルの可塑剤部分を含有するゼラチンは、比較的大きい延伸比で延伸することができ、この比は実際には1.4〜8である。
【0041】
ゼラチン系材料のための本発明による好ましい可塑剤は、具体的には、グリセリン、オリゴグリセリン、オリゴグリコール、及びソルバイトから選択される。 この種類の可塑剤は、ゼラチン系材料中に残り、そして神経ガイド又は成形体自体のゼラチン系材料と正に同様に、患者の体内に吸収される。
【0042】
非常に驚くべきことには、ゼラチン系材料を延伸するために可塑剤を使用することによって、神経ガイドの長手方向における引裂強さも高められ、引裂強さは、具体的には30%以上の値に、特に50%以上の値にさえ上昇する。
【0043】
神経再生のためのインプラントとして本発明による神経ガイドを使用する際に、これは外科医に特別な利点をもたらす。なぜならば、外科医は比較的感度の低いインプラントを自由に使えるからである。同様に、架橋された材料を延伸することにより、40N/mm2以上、特に60N/mm2以上の、長手方向における引裂強さを達成することができる。
好ましくは、ゼラチン系材料は、少なくとも部分的に架橋された状態で使用される。神経ガイド又は成形体の吸収安定性は、架橋度によって調節することができる。
架橋は、ゼラチン系材料中に含まれるゼラチンに関連する。
【0044】
中空体を製造するための推奨される浸漬法の場合、ゼラチン系材料は、溶液中で既に予め架橋される。これにより、ゼラチン系材料全体の架橋度が均一になる。
通常は延伸された完成済の成形体が、所望の吸収安定性を保証するために、第2工程においてさらに架橋されることが、さらに好ましい。この2段階架橋は、単一段階架橋よりも高い架橋レベルを可能にする。これにおいて、架橋度を漸次的に変化させる可能性もある。
【0045】
例えば、ゼラチン系材料の架橋度は、外面に隣接する成形体の壁内において、管腔に隣接する壁領域内よりも高くてよい。
一方では成形体の外面と、他方では成形体の管腔に隣接する側とで異なる架橋度を選ぶことに基づいて、神経線維の再生時、すなわち軸索発生中に、第1の事例において、ゼラチン系材料が徐々に吸収されるため神経成長の途中でサイズが大きくなり得る管腔形態の保護容積が、一方では提供されることが可能である。それにもかかわらず、神経ガイドの保護機能はまだ維持される。なぜならば、成形体の壁の、外方に向かって配置された領域がよりゆっくりと吸収され、従って線維芽細胞の内方移動に対する、より長い時間にわたる保護を提供することができるからである。
【0046】
このことは、再生しつつある軸索が、徐々に厚くなる層を形成し、そして再生中の軸索に損傷を及ぼすおそれのある神経ガイド内の圧力増大なしに単離を可能にするミエリン層を形成することを可能にする。
溶液中の少なくとも部分的な架橋は、第2の架橋工程のように、化学的架橋及び酵素的架橋の両方で行われてよい。
【0047】
化学的架橋のために、架橋剤として、具体的にはアルデヒド、ジアルデヒド、イソシアネート、ジイソシアネート、カルボジイミド、及びハロゲン化アルキルを使用することができる。
特に好ましいのは、ホルムアルデヒドを使用する架橋である。それというのも、それぞれの架橋工程において、ゼラチン系材料と成形体とが同時に滅菌されるからである。
酵素的架橋の場合、トランスグルタミナーゼが使用されるのが好ましい。
【0048】
神経ガイドを使用するために、神経ガイド、特にその成形体が、標準的な生理学的条件(PBS緩衝剤、pH7.2;37℃)下で4週間にわたって最大約20重量%の乾燥重量低減を示すように、架橋度は選択される。
成形体の管腔は、自然発生する個々の神経線維の寸法と比較して著しく大きい。軸索は僅か約1μm厚であるのに対して、神経ガイドによって提供される管腔は、最大で10mmの直径を有することができる。数個の管が神経ガイド内で使用されるときにも、これらのそれぞれの管腔は、軸索の厚さを約2桁以上だけ上回る内法幅を提供する。
【0049】
再生中、目標の配向を有する軸索成長をさらに促進するために、また再生のための時間をできる限り短く保つために、1つ又は2つ以上のガイド要素が好ましくは成形体の管腔内に配置され、その長手方向に対して平行に整列されている。ガイド要素はこの場合好ましくは、実質的に管腔の全長にわたって延びている。
【0050】
ガイド要素はこの場合、既に補助細胞、特にシュワン細胞の集団を備えていてよく、これらは軸索の成長を促進する。
【0051】
シュワン細胞は、天然の神経内に見いだされ、これらは、制御されたフィードバック・ループによって成長因子を放出し、血管の形成及び軸索の再生の両方を促進する。これらの細胞は、例えば患者の損傷した神経から単離し、そしてin vitroの培養に続いて、本発明による神経ガイドによって再植え込みすることができる。シュワン細胞が神経ガイドの管腔内で生じ得る最も均一な分布を成して配列されるように、シュワン細胞は好ましくは、ゼラチン・ゲルのマトリックス中に配置されている。ゼラチン・ゲルは高温(例えば40℃)で液化され、そして体温まで冷却している間に再びゲル化され、そしてより高い温度で混和された細胞が固定化される。このようにして、シュワン細胞は均一に分布された形で、ガイド要素に被着することができ、そして室温まで冷却した後このような状態で、インプラントが患者に使用されるまで保たれ続ける。
【0052】
軸索の成長、及び神経組織の分化を妨げないように、ガイド要素は、好ましくは管腔の最大約30容積%を占めるべきである。
管腔内で利用可能な内法幅に応じて、平均厚が約10〜100μmのマイクロフィラメントがガイド要素として特に好適である。
管腔内に均一に分布された形で複数のマイクロ要素を配列できるように、要素は好ましくはマトリックス中で、又はスペーサによって互いに所定の間隔を置いて安定させられる。
【0053】
ガイド溝を有するガイド要素の場合には、特に効果的なガイド機能が観察される。その結果として、屈触性効果が生じ、そしていわゆるビュングナー帯(Buengner bands)におけるような、任意に使用される補助細胞を、極めて良好な長手方向整列状態を有するように定着させることができる。この後、同様に、高品位の、長手方向に配向された軸索成長が得られる。幾何学的寸法は特に重要というわけではなく、例えば深さ0.5〜50μmを有してよい。さらに重要なのは、ガイド溝を仕切るエッジの存在である。
【0054】
マイクロフィラメントを互いに固定するためにマトリックスを使用する場合、マトリックスの材料は好ましくは、軸索成長が専らマイクロフィラメント上で配向される程度まで軸索の成長を阻害する材料から形成されているべきである。軸索成長を阻害する材料は、例えばヒアルロン酸、又は疎水性ゼラチン・ゲルである。
【0055】
或いは、ガイド要素は、巻き上げられた平面状材料から形成することもできる。巻き上げられた平面状材料は、上記マイクロフィラメントのガイド溝と同様に、ロールの層間にマイクロチャネルを提供する。必要とされる構造は、平面状材料を型内に流し込み、又は続いてこれにスタンピングなどを施すことにより、平面状材料に与えることができる。平面状材料のための巻軸は、神経ガイドの長手方向に対して平行である。
平面状材料の好適な形態によって、この材料は同時に、神経ガイドの成形体を形成することができる。
【0056】
既に上で詳細に論じたように、神経ガイドは複数の成形体を含有することができ、これらの複数の成形体は好ましくは、マトリックス材料によって互いに結合されている。このマトリックス材料は好ましくは、非ニューロン・マトリックス中の天然の束においても発生する様式と同様に、軸索間の血管発生を容易にするために、血管形成促進成分を含有する。このマトリックス材料は好ましくは、ゼラチン系材料であり、そして好ましくは開放孔付き構造を有している。
【0057】
マトリックス材料は、例えば、神経ガイドの容積の30〜60%の容積比率を占める。マトリックス材料はさらに好ましくは吸収性である。
本発明のさらなる好ましい実施態様の場合、神経ガイドは、成形体を取り囲み、そして吸収性材料から同様に形成された外側スリーブ又はマトリックス・マントルを有している。多孔質の構造、具体的には開放孔付きの構造が、マトリックス・マントルのために特に推奨される。平均孔サイズは好ましくは100〜300μmである。
マトリックス・マントルは、例えば成形体の周りを発泡することにより製造することができる。
【0058】
或いは、マトリックス・マントルは、予め調製された材料固形ブロック、具体的にはスポンジから打ち抜くか、又はコア・ドリルによって得ることもできる。任意には半透性層を予め備えた成形体を導入するための貫通孔は、穿孔工具によって容易に形成することができる(コア・ドリルで作業する場合、これは好ましくは、マトリックス・マントルが製造されるのと同時に行われる)。
【0059】
成形体は、このように形成されたマトリックス・マントル内に押し込むことができる。神経ガイドの安全な取り扱いを可能にするには、マトリックス・マントルと成形体との間を軽くプレス嵌めすることで、通常は十分である。
【0060】
好ましくは、マトリックス・マントルは、さらに神経ガイドの周り、及び具体的には神経ガイドのための成形体まで、及び成形体上への血管の形成を促進するために、血管形成促進成分を含む。この刺激作用は、好ましくは成形体の管腔内での軸索の形成の前に、又は少なくともこれらの形成中に、血管の発芽が生じるように実現される。これに適した材料は、ここでもまた、ゼラチン系材料、具体的には上で広範囲にわたって既に詳細に説明したような、高分子量のゼラチンを基剤とする材料である。外側スリーブ又はマトリックス・マントルの厚さは好ましくは1〜2mmである。
【0061】
神経ガイドにおいて複数の成形体が使用されるときには、マトリックス・マントルは1つにまとまって、成形体を互いに結合するマトリックスになってよい。両マトリックスは同じ材料、具体的には血管形成を促進する材料から形成することができる。
この場合、軸索成長を阻害するか又はこれを完全に防止する細胞の内方移動が管腔内で発生できないことを保証するために、半透性層は各成形体の部分であり、これは軸索成長のために取っておかれる。
【0062】
このために、マトリックス・マントルの吸収速度は、成形体の吸収速度よりも高い。
インプラントによって2つの神経断端の間を橋渡しされるべき距離が長ければ長いほど、ゼラチンを基剤とする成形体の材料の吸収時間は長くなるべきである。すなわち、インプラント、具体的には成形体、特に半透性層の吸収特性は、神経損傷の長さに基づいて決定されるべきである。
【0063】
末梢神経系のためのインプラントとして使用される神経ガイドの場合、神経ガイドの吸収特性は、インプラント吸収が一方の端部で始まり、そして軸索成長に従って、また好ましくは軸索成長によって決定されて、他方の端部に向かって進行するように選択することができる。ミエリン形成、そしてこれによる神経線維の肥厚化も、軸索発生が始まるインプラント端部から始まる。神経線維の潰れが回避されるのに必要なスペースは、インプラントの時間によって決定される吸収によって形成される。
【0064】
この種類の所望の特性は、神経ガイドの長手方向に沿ってゼラチン系材料の架橋度を変化させることによって、達成することもできる。すなわち架橋度は、神経ガイドの一方の端部で、他方の端部よりも高く、そして架橋度の段階的な変化、又は架橋度の実質的に連続的な増大が可能である。
【0065】
これに対してインプラントが中枢神経系内に使用されるときには、好ましくは、神経断端の両方から外方に向かって軸索成長が生じる環境が考慮に入れられる。この場合、吸収がインプラントの両端でほぼ同時に始まり、そしてインプラントの両端の間の中央領域は、所定の時間遅れ後にだけ吸収される、漸次的に変化する吸収挙動が推奨される。
またこの吸収は、架橋度の対応する漸次的変化によって、神経ガイドの長手方向に沿って生じさせることもできる。この場合も、架橋度の段階的変化、又は実質的に連続的な変化を選択することができる。
【0066】
実際の考察のために、神経ガイドの2つの端部における管腔の内法幅が、領域の残りの内法幅よりも大きく、これにより、損傷の神経断端を神経ガイド内により容易に導入できることが有利であり得る。
図1は、符号10によって全体が示された神経ガイドを示し、神経ガイドは架橋型ゼラチン系材料から形成された成形体12を有している。成形体12は、壁14を備えた管状中空体を有しており、壁は、外面16と、管腔と呼ばれる中空スペース20を画定する内面18とを有している。
【0067】
神経ガイドはさらに、成形体12(これは図1に詳細には示されていない)と一体的に形成された半透性層を有している。半透性層の位置は、好ましくは外面16に隣接した、壁14のすぐ内側である。
【0068】
成形体12の外面は、外側スリーブ22によって取り囲まれている。外側スリーブ22は、開放孔を有するように形成されており、そして血管形成を促進する成分、具体的にはスポンジ構造を有する高分子量の架橋型ゼラチンを含む。
【0069】
外側スリーブ22は、架橋型ゼラチンから形成されたスポンジ材料から製造することができ、これについては下記例3において詳細に説明する。最初に、(仕上げ済神経ガイドの長さに相当するのに)十分な厚さを有するこの種類のスポンジ材料ブロックが調製される。外側スリーブ22は、このブロックから、例えばスタンピングによって、又はコア・ドリルによって中空円筒体として製造される。成形体12は次いで、この中空円筒体を通って延びる開口内に押し込むことができ、成形体は好ましくは、軽いプレス嵌めで外側スリーブ22内に保持される。
【0070】
図2は、成形体42として管状中空体を有する本発明による別の神経ガイド40を示す。成形体42は、ゼラチン系材料から形成された壁44を有し、壁は外面46と、管腔50を画定する内面48とを有する。
成形体42の外面46に隣接して、別個の半透性層52が配置されており、この半透性層は、栄養素及び気体がこれを通って拡散するのを許すがしかし、細胞、特に線維芽細胞の侵入をブロックする。
【0071】
半透性層52を有する成形体42はこの場合、外方に向かって外側スリーブ54によって取り囲まれており、この外側スリーブ54は、図1の実施態様に関して説明したのと同様に形成されている。外側スリーブ54は、図1の実施態様との関連において記載されているように形成し、そして成形体42上にスライドさせることができる。
図2は、外側スリーブ内への血管56の、内方に向かう発芽を概略的に示している。この発芽は既に発生しており、そして外側スリーブ54の血管形成促進成分によって促進されている。
【実施例】
【0072】
例
例1:本発明による神経ガイドの製造
管状中空体の製造
以下の文では、先ず第一に、本発明による神経ガイドの基本的な構成要件である、管形状を成す中空体の製造について説明する。製造される種々異なるタイプは、内径約2,000μm、1,100μm、及び150μmを有し、そして本発明に基づいて好ましい浸漬法によってこれらのタイプを製造し、そして続いて延伸する。
このために、100gの豚皮ゼラチン(ブルーム強度300g)を先ず、可塑剤としての260gの水と40gのグリセリンとの混合物中に60℃で溶解し、そして溶液を超音波によって脱ガスした。これは、ゼラチン及びグリセリンの重量を基準として、材料中の可塑剤の比率約29重量%に相当する。
【0073】
2.0重量%のホルムアルデヒドの水溶液4g(ゼラチン系架橋剤800ppm)を添加した後、溶液を均質化し、再び脱ガスし、そして表面から発泡体を除去した。予め離型ワックスで噴霧されている、成形要素として役立つ直径2mmのステンレス鋼マンドレルを、溶液中に短時間浸漬し、ひいては長さ約3cmになるように製造した。マンドレルを溶液から引き出した後、付着している溶液ができる限り均一な層として形成されるように、これを回転させた。
【0074】
ほぼ1日間にわたって25℃及び相対湿度30%で乾燥させた後、形成された中空細管をマンドレルから取り外した。
このようにして製造された中空細管は、光学顕微鏡によって立証されたように、マンドレルの直径に相当する内径2mmと、平均壁厚300μmとを有した。
【0075】
中空細管を一層小さな内径にするために、これを23℃及び相対湿度45%で5日間にわたって保存し、そして次いで延伸した。
延伸のために、細管の両端を把持し、そして細管を熱蒸気作用によって軟化させ、これを延伸比約1.4で伸ばし、この条件で固定し、そして23℃及び相対湿度45%で16時間にわたって乾燥させた。
【0076】
こうして得られた中空細管の内径は約1,100μmであり、壁厚は約200μmであった。光学顕微鏡による試験は、極めて規則的であるように形成された断面形状を示し、また、細管の壁厚がその全周及び全長にわたって見て極めて均一であることを示した。
【0077】
より大きい延伸比を用いると、最小150μmの内径を有する中空細管が得られた。
細管の生理学的崩壊のための時間を長くするために、細管内に含有されたゼラチンに、さらなる架橋工程を施した。このために、細管を17時間にわたって乾燥器内で、室温の17重量%のホルムアルデヒド溶液の平衡蒸気圧に曝した。
【0078】
このために、架橋が外面から内方に向かってだけ生じるように、細管の端部を閉じることができる。この場合、細管の管腔を画定する内面と比較して、外面においてより高い架橋度が見いだされ、そしてこれに相応して、より高い吸収安定性が見いだされる。
【0079】
管腔に隣接する壁領域においてより高い架橋度を有する中空細管は、例えば専ら中空細管の管腔を通って案内されるホルムアルデヒド蒸気によって得ることができる。
これに代わるものとして、又はこれに加えて、種々異なる濃度の架橋剤を有する溶液中に浸漬されたマンドレルによって、異なる架橋度を実現することもできる。こうして、中空細管の壁厚全体にわたって相応に漸次的に変化する架橋度が生じる。
【0080】
言うまでもなく、具体的にはマンドレルのサイズ及び形状、溶液中のゼラチン、可塑剤、及び架橋剤の比率、浸漬工程数、並びに後続の架橋の強度を特定の要件に合わせることができる点で、多くの種々異なる方法で、ここに記載した中空細管の特性を改変することができる。
【0081】
半透性層の製造
上記中空細管の外面は、例えば、管腔を取り囲む、中空細管と一体的な半透性層を形成するために、化学的に改質することができる。
こうして例えば、リシン残基のアミノ基は、無水コハク酸によってコハク酸形に変換することができ、ゼラチン材料のpKs値は、未改質材料に対して見いだされた値である8〜9から約4に低下する。
【0082】
ゼラチンを改質する更なる可能性は、リシン残基のアミノ基をドデセニルスクシニル基に変換させることにある。この場合のpKs値は、約5に低下し、そして同時にゼラチンの僅かな疎水化が生じる。
【0083】
両方の場合において、下記の文で図3及び4と関連して記載する試験においてより詳細に説明するように、このように処理された表面に対する線維芽細胞の細胞付着力は著しく低減される。
【0084】
先ず第一に完全を期すために述べるならば、上記のように製造された中空細管の場合、細管は、外面のゼラチンを改質する代わりに、別個の半透性層を備えてもよい。上記例の条件の中にとどまるように、この層は、コハク酸処理又はドデセニルコハク酸処理されたゼラチン、又は他のバイオポリマー、具体的には水溶液中の未改質ゼラチンとのこれらの混合物を被着することにより生じさせることができる。この手順は、ここでは中空細管の製造に関して上に詳しく説明した浸漬法に従って行われてよい。
【0085】
改質ゼラチンのためのリシン基の変換度は、好ましくは30%以上になる。
ドデセニルコハク酸処理ゼラチンの場合、40〜50%の変換度でしばしば十分であるのに対して、コハク酸処理ゼラチンの場合には、約80%からほとんど完全なリシン基変換度で、最良の結果をもたらす。
【0086】
図3及び4は、ガラス表面に試験目的で被着されたゼラチン材料の試験表面に関する細胞付着結果を示す。ゼラチン材料は、豚皮ゼラチン(MW119kDa)、及び約95%までのリシン基でコハク酸処理されたゼラチン(図3)、又は同じタイプの約45%のドデセニルコハク酸処理ゼラチン(図4)から始めて製造されている。それぞれの事例において、100:0、80:20、50:50、及び0:100の比の、未改質ゼラチンと改質ゼラチンとの混合物を試験した。
【0087】
試験に際しては、それぞれの事例において、20,000個の豚軟骨細胞を37℃で4時間にわたって試験表面上でインキュベートした。過剰分を除去し、表面を洗浄し、そして表面上に残った細胞を、これらが続いて光学顕微鏡によって評価されるように固定した。ヒトの軟骨細胞と同等の結果を得た。
【0088】
ダイヤグラムにおけるパーセンテージ値は、上記手順が実施された後、インキュベーションのために使用された数と比較した、膜試験表面上に見いだされた細胞の比率を表す。
両タイプの改質ゼラチンに関して、改質ゼラチンが専ら使用される場合、集団効果はゼロに近かった。
このことから、中空細管の表面が改質されている場合、外面上でアクセス可能なリシン基の相応に高い変換度に対応して、同等の効果を達成できると結論づけることができる。
中空細管の外面に別個の改質ゼラチン層を被着する場合にも、相応の結果が当然当てはまる。
【0089】
中空細管の壁内に細胞が移動するためには、まず外面に細胞が付着することが必要となるので、細胞に対するブロック作用の条件が、半透性層によって本発明に従って、期待通りに極めて十分に満たされる。
【0090】
例2:平面状材料をベースとするゼラチン膜の半透性/ブロック層機能の試験
上記試験膜の拡散特性を試験するために、図5から判るように、膜を2チャンバ試験装置60内の2つのブロック62及び64の間に張った。試験膜66の両側には、キャビティ68,70がブロック62及び64内に設けられており、キャビティには、試験段階中に異なる媒質がフラッシュされた。
【0091】
上側チャンバ68には、栄養素溶液の代替物としてフェノール・レッド溶液が満たされており、純粋PBS溶液が下側チャンバ70内で使用される。2時間毎に、フェノール・レッド及びPBS溶液の吸収を測定した。測定値は、未改質ゼラチン膜に関して図6の曲線に示されている。
【0092】
先ず第一に10,000細胞/cm2の集団を有する膜で、この試行を繰り返した。これらの細胞の付着のために2時間を与えた。付着された細胞を培地中で1週間にわたって膜上で増殖させ、その後、上記と同じ測定を実施した。測定値を図7に示す。
結果として、上側チャンバ68内のフェノール・レッド濃度が低減し、そして、膜を通る栄養素の拡散に応じて、下側チャンバ70内のフェノール・レッド濃度が相応に増大することが見いだされる。細胞集団を有する膜の場合、結果としてフェノール・レッドの拡散が加速する傾向が生じる。
【0093】
これと平行して、カーボン粒子(75重量%の粒子のサイズが45μm未満である)の懸濁液の膜通過は、どのようなものであれ見いだされなかった。このことは、細胞集団が存在しても、膜は依然として細胞及び粒子による侵入に対する活性ブロック層を提供し、そして細胞プロテアーゼによる作用を失わないことを意味する。
この結果は、2週間及び3週間継続する培養試験において裏付けることもできる。
【0094】
例3:血管形成効果
架橋型ゼラチンを基剤とするセル構造を有する成形体の製造及び特性
60℃でゼラチンを溶解することによって、豚皮ゼラチン(ブルーム強度300g、平均分子量140kDa)の12重量%の水溶液の5種の配合物を調製し、これらを超音波によって脱ガスし、そしてそれぞれの事例において、(ゼラチンに対して)1,500ppmのホルムアルデヒドが存在するように、適量のホルムアルデヒド水溶液を添加した(1.0重量%、室温)。第6の配合物の事例では、ホルムアルデヒドを添加しなかった。
均質化された混合物を45℃まで加熱し、そして10分間の反応時間後に、これらを空気で機械的に発泡した。約30分の継続時間の発泡工程を、空気とゼラチン溶液との異なる比で、6種の配合物に関して行い、異なる湿潤密度及び孔サイズを有するセル構造が表1に示すように得られた。
【0095】
26.5℃の温度を有する発泡済ゼラチン溶液を、40 x 20 x 6cmの寸法の型内に注ぎ込み、そして約4日間にわたって26℃及び相対湿度10%で乾燥させた。
6種の全ての配合物に対応する乾燥済の成形体は、スポンジ状セル構造(以下の文ではスポンジと呼ぶ)を有する。これらをカットして2mm厚の層にし、そして第2の架橋工程のために、17時間にわたって乾燥器内で、室温で17重量%のホルムアルデヒド水溶液の平衡蒸気圧に曝した。第6の配合物に関しては、これは第1の(そして唯一の)架橋工程であった。成形体の容積全体の均一なパージを達成するために、乾燥器をそれぞれの事例において2〜3回排気し、そしてこれに空気を再充填した。
スポンジの孔構造は、光学顕微鏡によって確かめられ、これは走査電子顕微鏡によって裏付けることができた。
【0096】
【表1】
【0097】
スポンジの安定性を測定するために、30 x 30 x 2mmの小片を秤量し、それぞれを75mlのPBS緩衝剤中に入れ、そして37℃で保存した。それぞれの保存時間後、小片を水中で洗浄し、乾燥させ、そして秤量した。
【0098】
スポンジ1−6は3日後にすでに完全に溶けたのに対して、2段階架橋を施されたスポンジの全ては、14日後にさえ最大80%を上回る分だけまだ残っていた。しかしながら、さらなる分解挙動にはかなりの差が現れた。これは、材料の異なる発泡密度に帰せしめられる。このように、スポンジ1−1は21日後に、そしてスポンジ1−2は28日後に完全に溶解されるのに対して、スポンジ1−4及び1−5は、35日後にも大部分がまだ残される。このように、これらのスポンジ又はセル構造材料の分解挙動を、他のパラメーターとは独立して、目標を定めて制御する更なる可能性がもたらされる。
【0099】
しかしながら、セル構造材料の特性は、出発溶液のゼラチン濃度を変化させることにより顕著に改変することもできる。
ゼラチン濃度が高ければ高いほど、個々の孔の間のセル壁又は仕切りは広く(厚く)なり、これは、対応スポンジの極限強度の増大を示す。
成形体の、具体的にはタンパク質分解に関する安定性は、これとは対照的に架橋度によって、すなわち、架橋溶液の濃度を選択することによって制御することができる。
【0100】
血管形成促進効果の証拠
前記のものと同様の手順によって得られた成形体から、15 x 15 x 2mmの寸法を有する試料を製造し、そして2回架橋した(乾燥密度22mg/ml、平均孔直径約250μm)。これらを以下、インプラントと呼ぶ。
これらのインプラントの血管形成促進特性を、図8a及び8bに概略的に示す、受精鶏卵に対する試験によって調べた。
【0101】
図8aは、鶏卵の構造の断面を概略的に示す。殻80の下側に、漿尿膜82(以下、短くCAMと呼ぶ)がある。卵黄84の縁に位置する胚86から出発して、胚外血管88の形成が生じ、血管はCAMに沿って広がる。卵白の一部をカニューレによって取り出す場合には、(図8bに示すように)CAM82を損傷することなしに殻80から窓90を切り取ることができる。ここでCAM82上にインプラント92を置いて、血管形成に対するインプラントの作用を調べることができる(J. Borges他(2004) Der Chirurg 75, 284-290参照)。
【0102】
3,5及び7日後に光学顕微鏡を使用して撮影した画像から、血管の再配向及び新しい血管の出現が観察された。
基準例として、本発明による基材と共に、コラーゲン(復元ウシ・コラーゲン、密度5.6mg/cm3、Innocoll Companyから入手可能)及びポリ-DL-ラクチド(製造元ITV Denkendorf)から成る同等のスポンジ状材料を試験した。
全てのインプラントをCAM上に置き、そして3,4,5,6及び7日後にインプラントのすぐ近くで発生した血管の数を測定した。数日以内に、血管は血管形成促進基材上、又はスポンジ状コラーゲン及びポリ-DL-ラクチドから成る基準試料上に極めて明らかに整列した。
【0103】
3種全ての試料の事例において、ヌル値(インプラントが配置されていないCAM)と比較して極めて多数の血管が存在するように見え、具体的にはヌル値と比較して見て、同様の効果が3種の全ての試料に関して達成される。
【0104】
このことは、被験材料の全ての、これらの環境における血管形成促進作用の増大レベルがほぼ同じであることを意味する。観察される効果は、かなりの距離にわたってもたらされ、したがって恐らくいわゆる拡散性因子に依存する。
CAMは、空気と卵液との間の境界面を表す組織である。場合によっては、CAM上に置かれた基材の機械的刺激だけから、受容体の活性化が生じ、この刺激によって、血管形成促進因子、例えばVEGFを細胞に放出することができる。これにより、内皮細胞が引き付けられ、その結果、インプラント上に向けられた血管形成が生じることになる。
【0105】
別の可能な説明は、空気から上皮組織への酸素の侵入が、インプラントの配置によって妨げられることである。上皮組織内で利用可能な酸素は少ないので、いわゆる酸素欠乏がインプラントの領域内に発生する。酸素欠乏に対して、細胞が典型的にはVEGFの放出によって反応し、このVEGFの放出によって、血管の変化又は新しい血管の形成が誘発される。これは、細胞の酸素供給不足部分が新しい酸素供給チャネルを組織化することを意味する。この生物学的現象は恐らく、臨界的に酸素供給不足の(変形した)組織表面の上方に発生する。
【0106】
このことは、CAM上に細いゴム輪を置くだけの試行では(極めて小さな被覆面)、なぜ血管形成効果が観察されなかったのかの説明になる。
図9の場合、比較材料から成る基材又はインプラント内部、及び本発明の血管形成促進基材内部の、3,5及び7日後の血管の面積(μm2)が示されている。ゼラチン試料、コラーゲン試料、ポリ-DL-ラクチド試料の順番が、図示の一連のカラムに当てはまる。
【0107】
図9から判るように、3日後には、本発明による血管形成促進基材の場合にのみ、インプラント自体に測定可能な血管部分があるのに対して、コラーゲン・スポンジ及びポリ-DL-ラクチド・スポンジには、測定可能な血管部分は存在しない。
5日後の測定可能な血管は、本発明による血管形成促進基材に対応する極めて大幅な増大を示すのに対して、ポリ-DL-ラクチド試料及びコラーゲン・スポンジに関しては、効果が全く観察されない。
【0108】
7日後、本発明による血管形成促進基材に対応するインプラント内の血管部分は、著しく低下したが、しかし効果の大きさは3日後の約2倍ある。この時点で、コラーゲン・スポンジに関しては、測定可能な結果がまだ生じず、これに対してポリ-DL-ラクチド・スポンジに関しては、本発明によるゼラチン・スポンジのインプラントに対してたった3日後に既に立証されたような効果が今現れる。
【0109】
試料を評価し、インプラント内の血管の数を測定するために、試料のそれぞれから冷凍切片を調製し、そして、試料内部の血管の表面を分析するためにDAPIで着色した。次いで、切片の中央領域から画像を形成し、次いで画像処理法によって定量的に評価した。コラーゲン・スポンジに関しては、中央領域内に血管形成を観察することは全くできなかった。ポリ-DL-ラクチド・スポンジに関しては、7日後に、結合組織の細胞による漸進的な集団形成と結びついた血管形成を検出することができたにすぎない。しかし全体として見れば、細胞の集団形成は、この比較試料において、本発明によるインプラントよりも著しく低速で進行した。
【0110】
本発明によるインプラントに対応する、7日後の血管の退行は、測定表面の減少によって明らかにされる。このことは、例えば酸素供給されるのを必要とする比較的僅かな他のタイプの細胞が移入しているため、インプラント領域のために実際に必要とされる程度まで、血管網状構造が再び低減されることに起因し得る。これは、炎症が鎮静するやいなや血管網状構造が再形成されるような感染の場合に既に見いだされたプロセスに等しい。
【0111】
例4:ゼラチン細管の半透性が、カプセル化細胞の生き残りを可能にする
ゼラチンから成る閉じられた管状成形体(例1に従って製造、内径1,100μm、壁厚200μm、2回の架橋)において細胞が生き残るかどうかを調べることができた。このために、成形体を、これを洗浄するためにPBS中に1週間にわたって保存した。次いでシュワン細胞を、0.9mm幅の透明不活性プラスチック・ストリップ(Folex Imaging Companyから入手した0.1mmの厚さを有する無塗膜X−70コピー用フィルム)上に播種した。プラスチック・ストリップをPlasmaCleanerで予め清浄化し、そしてポリリシン及びラミニン(33μg/ml、37℃で1時間)で塗布した。ラットの座骨神経から単離したシュワン細胞(25,000細胞/cm2)を、次いでフィルム上に播種し、そして24時間にわたって培地内に保持した。この後、末梢神経系の後根神経節からの個々のニューロンを調製し、そしてシュワン細胞とともに10,000細胞/cm2の密度でプラスチック・ストリップ上に播種した。ニューロンを、4時間にわたって付着させておき、その後、細胞を有するプラスチック・ストリップを、ゼラチンから成る成形体内に導入した。細胞を成形体内に直接的にではなく、透明プラスチック・ストリップ上で導入することは、顕微鏡を使用して細胞活力を見極めるために後で困難なしにプラスチック・ストリップを回収できるという大きい利点を有する。次いで、管状成形体を、歯科用ワックスの栓(Rosa Dura, Kem-Dent, 英国)によって端部で閉じ、そして5日間にわたって培地内に置いた。これらの条件下では、栄養素及び酸素は、成形体の壁を通ってのみ細胞に達することができる。5日間にわたって培地に曝した後、プラスチック・ストリップを管から取り出し、そして、軸索の検出のための抗体SM131(Sternberger Monoclonals、米国)及び細胞核の証拠としてのDAPIでマーキングした。対照としては、まさに同じように処理されるがしかしカプセル化はされず、むしろ同じ培地(DMEM、10%FCS、グルタミン、ゲンタマイシン)中で開放条件で培養された、細胞集団を有するプラスチック・ストリップが役立った。光学顕微鏡を使用して撮影された図10の画像上で見られるように、細胞/ニューロンは、成形体の内側及び外側で等しく良好に生き延びる(画像A及びC)。このことは明るい点で見ることができる。軸索が両事例において等しく良好に形成される(画像B及びDの明るい線維)。画像A及びBは、カプセル化された同じ培地のシュワン細胞、及び後根神経節の軸索を示す。画像C及びDは、カプセル化されていない培地に関連する。従って、ゼラチン管の透過性が、カプセル化細胞の生き残りを可能にするのに十分であることが示された。
【0112】
図面及び下記例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】図1:本発明による神経ガイドの第1実施態様を示す概略図である。
【図2】図2:本発明による神経ガイドの第2実施態様を示す概略図である。
【図3】基材の細胞集団に対する、本発明に従って改質されたゼラチンの効果に関連するダイアグラムである。
【図4】基材の細胞集団に対する、本発明に従って改質されたゼラチンの効果に関連するダイアグラムである。
【図5】図5:本発明による半透性層の拡散特性を試験するための試験設備を示す概略図である。
【図6】本発明による半透性層の拡散特性試験の実験結果を示すダイヤグラムである。
【図7】本発明による半透性層の拡散特性試験の実験結果を示すダイヤグラムである。
【図8】図8a及び8b:漿尿膜によって血管形成を調べるための試験配置を示す概略図である。
【図9】図9は、血管形成を促進するための材料中の血管の発生を示すダイヤグラムである。
【図10】図10は、不活性プラスチック・フィルム上に培養されたシュワン細胞及び軸索を、光学顕微鏡を使用して撮影した画像である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋された吸収性のゼラチン系材料から形成された成形体を含む神経ガイドであって、該成形体が、細管の形態の中空体であり、そして外面と、管腔を画定する内面とを備えた壁を有しており、そして神経ガイドは、該管腔を取り囲む半透性層を含む、神経ガイド。
【請求項2】
該半透性層が、細胞バリヤとしてゲル構造を有していることを特徴とする、請求項1に記載の神経ガイド。
【請求項3】
該ゲル構造が、更なるゼラチン系材料に基づいて製造されていることを特徴とする、請求項2に記載の神経ガイド。
【請求項4】
該神経ガイドの該半透性層が、平均0.5μm未満の孔を有していることを特徴とする、請求項1に記載の神経ガイド。
【請求項5】
該半透性層は、正電荷種、特に細胞のためのバリヤ層として実質的に不透過性であるように形成されている、請求項1に記載の神経ガイド。
【請求項6】
該半透性層が、著しく親水性であることを特徴とする、請求項1に記載の神経ガイド。
【請求項7】
該半透性層が、僅かに疎水性であるように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の神経ガイド。
【請求項8】
該僅かに疎水性の半透性層が、脂肪酸エステルで改質されたゼラチンを含むことを特徴とする、請求項7に記載の神経ガイド。
【請求項9】
脂肪酸エステルで改質された該ゼラチンが、リシン基の10〜80%のアミノ基で、脂肪酸エステルで改質されていることを特徴とする、請求項8に記載の神経ガイド。
【請求項10】
該神経ガイド又はその成形体が、該外面上に、固定化された反発タンパク質を有していることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項11】
該神経ガイドが強化用材料を含むことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項12】
該神経ガイド内の強化用材料が、5重量%以上の乾燥質量比率を有していることを特徴とする、請求項11に記載の神経ガイド。
【請求項13】
該強化用材料が、神経ガイドの最大60重量%の乾燥質量比率を有していることを特徴とする、請求項11又は12に記載の神経ガイド。
【請求項14】
該強化用材料が、粒子及び/又は分子強化用材料から選択されていることを特徴とする、請求項11から13までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項15】
該粒子強化用材料が強化用繊維を含むことを特徴とする、請求項14に記載の神経ガイド。
【請求項16】
該強化用繊維が、多糖繊維及びタンパク質繊維、特にコラーゲン繊維、絹及び綿繊維、並びにポリアクチド繊維、及び前記のもののうちのいずれかの混合物から選択されていることを特徴とする、請求項15に記載の神経ガイド。
【請求項17】
該分子強化用材料が、ポリアクチドポリマー及びこれらの誘導体、セルロース誘導体、並びにキトサン及びその誘導体から選択されていることを特徴とする、請求項14に記載の神経ガイド。
【請求項18】
該成形体が、該強化用材料の少なくとも一部を含むことを特徴とする、請求項11から17までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項19】
該成形体が、複数の層を有するように形成されていることを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項20】
該成形体が該半透性層を含むことを特徴とする、請求項19に記載の神経ガイド。
【請求項21】
該ゼラチン系材料が、ゼラチンを主成分として含むことを特徴とする、請求項1から20までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項22】
該ゼラチン系材料は大部分が、ゼラチンから形成されていることを特徴とする、請求項21に記載の神経ガイド。
【請求項23】
該ゼラチン系材料は、実質的にゼラチンから成っていることを特徴とする、請求項22に記載の神経ガイド。
【請求項24】
該ゼラチン系材料の部分が、高分子量のゼラチンを含むことを特徴とする、請求項1から23までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項25】
該高分子量のゼラチンのブルーム値が、約160g〜300gであることを特徴とする、請求項24に記載の神経ガイド。
【請求項26】
該ゼラチンのエンドトキシン含有率が、LAL試験によって測定して、1,200 I.U./g以下、特に200 I.U./g以下であることを特徴とする、請求項1から25までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項27】
該成形体のゼラチン系材料が、特にグリセリン、オリゴグリセリン、オリゴグリコール、及びソルバイトから選択された可塑剤を含むことを特徴とする、請求項1から26までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項28】
該ゼラチン系材料中の可塑剤の比率が、12〜40重量%、特に16〜25重量%であることを特徴とする、請求項27に記載の神経ガイド。
【請求項29】
該成形体が、その長手方向軸の方向に延伸されていることを特徴とする、請求項20又は21に記載の神経ガイド。
【請求項30】
該延伸比が1.4〜8であることを特徴とする、請求項29に記載の神経ガイド。
【請求項31】
該神経ガイドの長手方向における極限伸びが、30%以上、特に50%以上であることを特徴とする、請求項1から30までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項32】
該神経ガイドの長手方向における引裂強さが、40N/mm2以上、特に60N/mm2以上であることを特徴とする、請求項1から31までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項33】
該ゼラチン系材料が、少なくとも部分的に架橋されていることを特徴とする、請求項1から32までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項34】
該ゼラチン系材料のゼラチン部分が、少なくとも部分的に架橋されていることを特徴とする、請求項26に記載の神経ガイド。
【請求項35】
架橋剤が、アルデヒド、ジアルデヒド、イソシアネート、ジイソシアネート、カルボジイミド、及びハロゲン化アルキルから選択されていることを特徴とする、請求項33又は34に記載の神経ガイド。
【請求項36】
該架橋剤がホルムアルデヒドを含むことを特徴とする、請求項35に記載の神経ガイド。
【請求項37】
該架橋が酵素的に行われることを特徴とする、請求項33又は34に記載の神経ガイド。
【請求項38】
該ゼラチン系材料が、トランスグルタミナーゼを使用して架橋されていることを特徴とする、請求項37に記載の神経ガイド。
【請求項39】
該成形体が標準的な生理学的条件下で少なくとも4週間にわたって安定であるように、架橋度が選択されていることを特徴とする、請求項33から38までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項40】
該外面に隣接する該成形体の壁内のゼラチン系材料の架橋度が、該管腔に隣接する壁領域内のゼラチン系材料の架橋度よりも高いことを特徴とする、請求項33から39までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項41】
該成形体の管腔が、該成形体の長手方向において整列された1つ又は2つ以上のガイド要素を有していることを特徴とする、請求項1から40までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項42】
該ガイド要素が、補助細胞、特にシュワン細胞の集団を備えていることを特徴とする、請求項41に記載の神経ガイド。
【請求項43】
該ガイド要素が、管腔の最大30容積%を占めていることを特徴とする、請求項41又は42に記載の神経ガイド。
【請求項44】
該ガイド要素が、マイクロフィラメントを含むことを特徴とする、請求項41から43までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項45】
該マイクロフィラメントの平均厚が、10μm〜100μmであることを特徴とする、請求項44に記載の神経ガイド。
【請求項46】
該マイクロフィラメントが、これらの外面上に長手方向溝を有していることを特徴とする、請求項44又は45に記載の神経ガイド。
【請求項47】
該成形体の管腔内のマイクロフィラメントが、断面全体にわたって見て、吸収性の材料から成るマトリックスによって、実質的に均一に分布された状態で保持されていることを特徴とする、請求項44から46までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項48】
該マトリックスが、疎水性のゼラチン系材料から形成されていることを特徴とする、請求項47に記載の神経ガイド。
【請求項49】
該成形体の長手方向に対して平行に延びる巻軸を有する平面状材料から成るロールの形態を成すガイド要素が、該管腔内に配置されており、該巻軸に対して平行に、該ロール内に複数のマイクロチャネルが形成されていることを特徴とする、請求項41から43までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項50】
該神経ガイドが、並列に配置された複数の成形体を含むことを特徴とする、請求項1から49までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項51】
該複数の成形体が、吸収性のマトリックス材料によって互いに結合されていることを特徴とする、請求項50に記載の神経ガイド。
【請求項52】
該マトリックス材料が、開放孔付き構造を有していることを特徴とする、請求項51に記載の神経ガイド。
【請求項53】
該神経ガイドが、該成形体を取り囲む吸収性の外側スリーブを含み、該スリーブが、特に多孔質構造を有していることを特徴とする、請求項1から52までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項54】
該外側スリーブが、血管形成促進成分を含むことを特徴とする、請求項53に記載の神経ガイド。
【請求項55】
該血管形成促進成分が、高分子量のゼラチンを含むことを特徴とする、請求項54に記載の神経ガイド。
【請求項56】
該外側スリーブが、開放孔付き構造を有していることを特徴とする、請求項53から55までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項57】
該外側スリーブが、標準的な生理学的条件下で、該成形体よりも高い吸収速度を有していることを特徴とする、請求項53から56までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項58】
該神経ガイド又はその成分部分、特にその成形部分の架橋度が、該神経ガイドの一方の端部で、他方の端部よりも高く、そして他方の端部に向かって複数の段階を経て又は連続的に低減していることを特徴とする、請求項1から57までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項59】
該神経ガイド又はその成分部分、特にその成形部分の架橋度がその端部で、端部間の領域内よりも低いことを特徴とする、請求項1から57までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項60】
該成形体の2つの端部における管腔の直径が、該成形体の端部間の領域よりも大きいことを特徴とする、請求項1から59までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項61】
該神経ガイドが、ヒトに対する医療のための神経ガイドであることを特徴とする、請求項1から60までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項62】
該神経ガイドが、獣医学医療のための神経ガイドであることを特徴とする、請求項1から60までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項63】
特に前立腺摘除後の欠陥、抜歯の結果としての顔面神経の損傷、及び脊髄の損傷を患う神経区分を橋渡しするのに使用可能であることを特徴とする、請求項1から62までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項64】
新しい神経経路を誘発するのに、特に、有痛性神経腫の形成を回避するために神経を筋肉内に迂回させるのに使用可能であることを特徴とする、請求項1から62までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項65】
長さが0.5〜50cmであることを特徴とする、請求項1から62までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項66】
内径が約1〜30mmであることを特徴とする、請求項1から63までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項1】
架橋された吸収性のゼラチン系材料から形成された成形体を含む神経ガイドであって、該成形体が、細管の形態の中空体であり、そして外面と、管腔を画定する内面とを備えた壁を有しており、そして神経ガイドは、該管腔を取り囲む半透性層を含む、神経ガイド。
【請求項2】
該半透性層が、細胞バリヤとしてゲル構造を有していることを特徴とする、請求項1に記載の神経ガイド。
【請求項3】
該ゲル構造が、更なるゼラチン系材料に基づいて製造されていることを特徴とする、請求項2に記載の神経ガイド。
【請求項4】
該神経ガイドの該半透性層が、平均0.5μm未満の孔を有していることを特徴とする、請求項1に記載の神経ガイド。
【請求項5】
該半透性層は、正電荷種、特に細胞のためのバリヤ層として実質的に不透過性であるように形成されている、請求項1に記載の神経ガイド。
【請求項6】
該半透性層が、著しく親水性であることを特徴とする、請求項1に記載の神経ガイド。
【請求項7】
該半透性層が、僅かに疎水性であるように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の神経ガイド。
【請求項8】
該僅かに疎水性の半透性層が、脂肪酸エステルで改質されたゼラチンを含むことを特徴とする、請求項7に記載の神経ガイド。
【請求項9】
脂肪酸エステルで改質された該ゼラチンが、リシン基の10〜80%のアミノ基で、脂肪酸エステルで改質されていることを特徴とする、請求項8に記載の神経ガイド。
【請求項10】
該神経ガイド又はその成形体が、該外面上に、固定化された反発タンパク質を有していることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項11】
該神経ガイドが強化用材料を含むことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項12】
該神経ガイド内の強化用材料が、5重量%以上の乾燥質量比率を有していることを特徴とする、請求項11に記載の神経ガイド。
【請求項13】
該強化用材料が、神経ガイドの最大60重量%の乾燥質量比率を有していることを特徴とする、請求項11又は12に記載の神経ガイド。
【請求項14】
該強化用材料が、粒子及び/又は分子強化用材料から選択されていることを特徴とする、請求項11から13までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項15】
該粒子強化用材料が強化用繊維を含むことを特徴とする、請求項14に記載の神経ガイド。
【請求項16】
該強化用繊維が、多糖繊維及びタンパク質繊維、特にコラーゲン繊維、絹及び綿繊維、並びにポリアクチド繊維、及び前記のもののうちのいずれかの混合物から選択されていることを特徴とする、請求項15に記載の神経ガイド。
【請求項17】
該分子強化用材料が、ポリアクチドポリマー及びこれらの誘導体、セルロース誘導体、並びにキトサン及びその誘導体から選択されていることを特徴とする、請求項14に記載の神経ガイド。
【請求項18】
該成形体が、該強化用材料の少なくとも一部を含むことを特徴とする、請求項11から17までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項19】
該成形体が、複数の層を有するように形成されていることを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項20】
該成形体が該半透性層を含むことを特徴とする、請求項19に記載の神経ガイド。
【請求項21】
該ゼラチン系材料が、ゼラチンを主成分として含むことを特徴とする、請求項1から20までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項22】
該ゼラチン系材料は大部分が、ゼラチンから形成されていることを特徴とする、請求項21に記載の神経ガイド。
【請求項23】
該ゼラチン系材料は、実質的にゼラチンから成っていることを特徴とする、請求項22に記載の神経ガイド。
【請求項24】
該ゼラチン系材料の部分が、高分子量のゼラチンを含むことを特徴とする、請求項1から23までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項25】
該高分子量のゼラチンのブルーム値が、約160g〜300gであることを特徴とする、請求項24に記載の神経ガイド。
【請求項26】
該ゼラチンのエンドトキシン含有率が、LAL試験によって測定して、1,200 I.U./g以下、特に200 I.U./g以下であることを特徴とする、請求項1から25までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項27】
該成形体のゼラチン系材料が、特にグリセリン、オリゴグリセリン、オリゴグリコール、及びソルバイトから選択された可塑剤を含むことを特徴とする、請求項1から26までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項28】
該ゼラチン系材料中の可塑剤の比率が、12〜40重量%、特に16〜25重量%であることを特徴とする、請求項27に記載の神経ガイド。
【請求項29】
該成形体が、その長手方向軸の方向に延伸されていることを特徴とする、請求項20又は21に記載の神経ガイド。
【請求項30】
該延伸比が1.4〜8であることを特徴とする、請求項29に記載の神経ガイド。
【請求項31】
該神経ガイドの長手方向における極限伸びが、30%以上、特に50%以上であることを特徴とする、請求項1から30までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項32】
該神経ガイドの長手方向における引裂強さが、40N/mm2以上、特に60N/mm2以上であることを特徴とする、請求項1から31までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項33】
該ゼラチン系材料が、少なくとも部分的に架橋されていることを特徴とする、請求項1から32までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項34】
該ゼラチン系材料のゼラチン部分が、少なくとも部分的に架橋されていることを特徴とする、請求項26に記載の神経ガイド。
【請求項35】
架橋剤が、アルデヒド、ジアルデヒド、イソシアネート、ジイソシアネート、カルボジイミド、及びハロゲン化アルキルから選択されていることを特徴とする、請求項33又は34に記載の神経ガイド。
【請求項36】
該架橋剤がホルムアルデヒドを含むことを特徴とする、請求項35に記載の神経ガイド。
【請求項37】
該架橋が酵素的に行われることを特徴とする、請求項33又は34に記載の神経ガイド。
【請求項38】
該ゼラチン系材料が、トランスグルタミナーゼを使用して架橋されていることを特徴とする、請求項37に記載の神経ガイド。
【請求項39】
該成形体が標準的な生理学的条件下で少なくとも4週間にわたって安定であるように、架橋度が選択されていることを特徴とする、請求項33から38までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項40】
該外面に隣接する該成形体の壁内のゼラチン系材料の架橋度が、該管腔に隣接する壁領域内のゼラチン系材料の架橋度よりも高いことを特徴とする、請求項33から39までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項41】
該成形体の管腔が、該成形体の長手方向において整列された1つ又は2つ以上のガイド要素を有していることを特徴とする、請求項1から40までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項42】
該ガイド要素が、補助細胞、特にシュワン細胞の集団を備えていることを特徴とする、請求項41に記載の神経ガイド。
【請求項43】
該ガイド要素が、管腔の最大30容積%を占めていることを特徴とする、請求項41又は42に記載の神経ガイド。
【請求項44】
該ガイド要素が、マイクロフィラメントを含むことを特徴とする、請求項41から43までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項45】
該マイクロフィラメントの平均厚が、10μm〜100μmであることを特徴とする、請求項44に記載の神経ガイド。
【請求項46】
該マイクロフィラメントが、これらの外面上に長手方向溝を有していることを特徴とする、請求項44又は45に記載の神経ガイド。
【請求項47】
該成形体の管腔内のマイクロフィラメントが、断面全体にわたって見て、吸収性の材料から成るマトリックスによって、実質的に均一に分布された状態で保持されていることを特徴とする、請求項44から46までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項48】
該マトリックスが、疎水性のゼラチン系材料から形成されていることを特徴とする、請求項47に記載の神経ガイド。
【請求項49】
該成形体の長手方向に対して平行に延びる巻軸を有する平面状材料から成るロールの形態を成すガイド要素が、該管腔内に配置されており、該巻軸に対して平行に、該ロール内に複数のマイクロチャネルが形成されていることを特徴とする、請求項41から43までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項50】
該神経ガイドが、並列に配置された複数の成形体を含むことを特徴とする、請求項1から49までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項51】
該複数の成形体が、吸収性のマトリックス材料によって互いに結合されていることを特徴とする、請求項50に記載の神経ガイド。
【請求項52】
該マトリックス材料が、開放孔付き構造を有していることを特徴とする、請求項51に記載の神経ガイド。
【請求項53】
該神経ガイドが、該成形体を取り囲む吸収性の外側スリーブを含み、該スリーブが、特に多孔質構造を有していることを特徴とする、請求項1から52までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項54】
該外側スリーブが、血管形成促進成分を含むことを特徴とする、請求項53に記載の神経ガイド。
【請求項55】
該血管形成促進成分が、高分子量のゼラチンを含むことを特徴とする、請求項54に記載の神経ガイド。
【請求項56】
該外側スリーブが、開放孔付き構造を有していることを特徴とする、請求項53から55までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項57】
該外側スリーブが、標準的な生理学的条件下で、該成形体よりも高い吸収速度を有していることを特徴とする、請求項53から56までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項58】
該神経ガイド又はその成分部分、特にその成形部分の架橋度が、該神経ガイドの一方の端部で、他方の端部よりも高く、そして他方の端部に向かって複数の段階を経て又は連続的に低減していることを特徴とする、請求項1から57までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項59】
該神経ガイド又はその成分部分、特にその成形部分の架橋度がその端部で、端部間の領域内よりも低いことを特徴とする、請求項1から57までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項60】
該成形体の2つの端部における管腔の直径が、該成形体の端部間の領域よりも大きいことを特徴とする、請求項1から59までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項61】
該神経ガイドが、ヒトに対する医療のための神経ガイドであることを特徴とする、請求項1から60までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項62】
該神経ガイドが、獣医学医療のための神経ガイドであることを特徴とする、請求項1から60までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項63】
特に前立腺摘除後の欠陥、抜歯の結果としての顔面神経の損傷、及び脊髄の損傷を患う神経区分を橋渡しするのに使用可能であることを特徴とする、請求項1から62までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項64】
新しい神経経路を誘発するのに、特に、有痛性神経腫の形成を回避するために神経を筋肉内に迂回させるのに使用可能であることを特徴とする、請求項1から62までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項65】
長さが0.5〜50cmであることを特徴とする、請求項1から62までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【請求項66】
内径が約1〜30mmであることを特徴とする、請求項1から63までのいずれか1項に記載の神経ガイド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2009−515620(P2009−515620A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540512(P2008−540512)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010976
【国際公開番号】WO2007/057177
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(502084056)ゲリタ アクチェンゲゼルシャフト (25)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010976
【国際公開番号】WO2007/057177
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(502084056)ゲリタ アクチェンゲゼルシャフト (25)
【Fターム(参考)】
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