説明

神経再生を促進する材料および方法

本発明は、神経の修復および再生を促進するために、ある特定のGAG分解酵素および酵素の組み合わせを治療に使用することに関する。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
政府支援
本願の主題は一部、NICHD(助成金番号HD32571)による米国政府支援を受けている。従って、米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の参照
本願は、2004年1月30日に出願された米国仮特許出願第60/540,522号の恩典を主張する。
【0003】
発明の背景
神経損傷は慢性障害の主な原因である。神経損傷の不十分な対応は筋萎縮と関連し、切断された軸索が遠位神経と連続性を回復することができない場合、疼痛性神経腫につながることがある。神経には損傷後に再生する能力があるが、この能力は、再生しつつある神経線維(およびその軸索芽)が、切断された神経部分(およびその中にあるシュワン細胞基底層)と適切に接触していることに厳密に左右される。隙間または損傷部位を横断し、切断された遠位神経部分の基底層に入らない再生軸索は劣化して、ニューロン死、筋萎縮、および恒久的な機能欠陥の原因となる(Fawcett JW et al. [1990] Annu Rev Neurosci 13: 43-60(非特許文献1))。
【0004】
簡単に述べると、神経はニューロン末梢突起(または軸索)を有する。ニューロン細胞体は、脊髄(運動ニューロン)、脊柱に沿って配置されている神経節(脊柱知覚神経節)、または体の臓器全体に見られる神経節(自律神経節および腸神経節)に存在している。神経は、軸索、シュワン細胞、および広範囲にわたる結合組織鞘からなる(Dagum AB[1998] J Hand Ther 11: 111-117(非特許文献2))。外側被覆である神経上膜はコラーゲン性結合組織で作られ、神経束を外圧から守り、神経周膜を取り囲んでいる。神経周膜は神経束1本1本を取り囲み、神経内膜微小血管の中にある内皮細胞と一緒に血液-神経障壁として機能する。神経内膜は神経周膜の内側にあり、シュワン細胞および軸索を取り囲むコラーゲン性組織からなる。神経束の集まりは2本以上の神経束からなり、それぞれ神経束は神経周膜および神経上膜で取り囲まれている。神経の組織分布は遠位では一定であり、神経束の集まりは知覚神経束または運動神経束のいずれかである。ニューロンは神経細胞体(細胞体)と軸索からなり、軸索は長さが数フィートになることがある。
【0005】
軸索が壊れているが、神経内膜鞘の連続性は無傷のままである神経損傷(例えば、挫傷)では、軸索は元々ある基底層の中で再生し、完全に回復することが予想される。対照的に、神経が切断された後では、軸索の再成長は重大な支障を来すことがあり、外科的修復は前記の神経要素が再編成されるかどうかにかなり左右される(Dagum AB [1998]J Hand Ther 11: 111-117(非特許文献2))。
【0006】
損傷末梢神経の軸索が完全に再生するのは稀である。軸索が再生するために、再生軸索芽は、神経の遠位断端にある神経内膜管に入らなければならない(Tona A, Perides G, Rahemtulla F, Dahl D [1993] J Histochem Cytochem 41: 593-599(非特許文献3); Stoll G, Muller HW (1999) Brain Pathology 9: 313-325(非特許文献4))。神経内膜管において、再生軸索芽は、ラミニンおよびフィブロネクチンなどの成長促進分子(Tabb J. S. et al. (1994) J Neurosci 14: 763-773(非特許文献5); Gorio, A. et al. (1998) Neuroscience 82: 1029-1037(非特許文献6); Trigg, D. J. et al. (1998) Amer J Otolaryngol 19 : 29-32(非特許文献7); Ferguson, T. A. and D. Muir (2000) Mol Cell Neurosci 16 : 157-167(非特許文献8))、ならびに成長阻害分子と遭遇する。このようにニューロンが遠位断端と接触しなければ、神経腫を形成し、その成長は無秩序なものになる(Sunderland (1978)(非特許文献9) Fu SY, Gordon T (1997) Mol Neurobiol 14: 67-116.(非特許文献10))。
【0007】
軸索伸長を刺激するために成長因子を使用した中には実験動物に用いられたものもある。様々な成長因子が、ニューロン上にある特定の細胞表面受容体に結合することによって作用する。様々な受容体は末梢神経にあるニューロン全てに見られず、ニューロンの一部にしか見られない。軸索再生を促進するのに成長因子を使用する主な欠点はこの不均一性である。驚くべきことではないが、ある特定の成長因子を用いても、一番良見たところで、ニューロンの一部からしか軸索成長を促進しない。この点は、最近の臨床試験における神経成長因子(NGF)の使用によって実証されている。NGF受容体であるtrkAは、疼痛刺激の情報を伝達する知覚ニューロンに主に見られる。糖尿病性末梢ニューロパシー患者をNGFで治療すると、疼痛刺激に対する感度の増大である痛覚過敏が生じたが、他のニューロンタイプの機能は有意に回復しなかった。
【0008】
従って、末梢神経の軸索は損傷を受けた後でも再生することができるが、末梢神経系の最適な軸索再生は稀にしか起こらない。軸索1本1本を取り囲んでいる神経内膜管、および軸索の鞘となっているミエリンが修復できないほど損傷したら、多くの場合、軸索再生はほとんど起こらない。
【0009】
現時点では、末梢神経の軸索再生を増強する、臨床に用いられる治療法はない。
【0010】
【非特許文献1】Fawcett JW et al. [1990] Annu Rev Neurosci 13: 43-60
【非特許文献2】Dagum AB[1998] J Hand Ther 11: 111-117
【非特許文献3】Tona A, Perides G, Rahemtulla F, Dahl D [1993] J Histochem Cytochem 41: 593-599
【非特許文献4】Stoll G, Muller HW (1999) Brain Pathology 9: 313-325
【非特許文献5】Tabb J. S. et al. (1994) J Neurosci 14: 763-773
【非特許文献6】Gorio, A. et al. (1998) Neuroscience 82: 1029-1037
【非特許文献7】Trigg, D. J. et al. (1998) Amer J Otolaryngol 19 : 29-32
【非特許文献8】Ferguson, T. A. and D. Muir (2000) Mol Cell Neurosci 16 : 157-167
【非特許文献9】Sunderland (1978)
【非特許文献10】Fu SY, Gordon T (1997) Mol Neurobiol 14: 67-116
【発明の開示】
【0011】
発明の簡単な概要
本発明は、神経組織の修復および/または成長を促進する組成物および方法を提供する。好ましい態様において、本発明の方法は、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)分解酵素を損傷神経に投与する工程を含む。
【0012】
本発明の方法は、1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素を、神経修復組織、接合組織、移植組織、または損傷神経組織に投与する工程を含む。本発明の方法は、再生軸索が神経-神経または神経-移植片の境界面を横断する能力および軸索成長を強化する能力を改善する。
【0013】
本発明の1つの態様は、神経修復のためにHSPG分解酵素(例えば、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼIII、ヘパラナーゼ、もしくはマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、またはその組み合わせ)を使用することを含む。本発明は、さらに、HSPG分解酵素(例えば、ヘパリナーゼ)と1種類またはそれ以上の他の酵素を組み合わせて神経またはその原位置に投与する工程を含む、神経再生を増強する方法を提供する。例えば、本発明の1つの態様は、HSPG分解酵素とコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(CSPG)分解酵素の併用を意図する。CSPG分解酵素は、例えば,コンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼA、コンドロイチナーゼC、コンドロイチナーゼAC、ヒアルロニダーゼ、MMP-2もしくはMMP-9、またはその組み合わせでもよい。HSPGの生物学的活性に影響を及ぼす他の薬剤(例えば、ヒアルロニダーゼ)も本発明に従って使用することができる。
【0014】
好ましい態様において、本発明は、ヘパリナーゼと、1種類またはそれ以上のCSPG分解酵素および/または他のGAG分解酵素の組み合わせを投与することによって、末梢神経再生を増強する方法を提供する。例えば、本発明は、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼIII、およびコンドロイチナーゼABCを末梢神経に投与することによって、末梢神経再生を増強する方法を提供する。本発明はまた、ヘパリナーゼと1種類またはそれ以上のマトリックスメタロプロテアーゼの組み合わせを投与する工程を含む、神経再生を増強する方法を意図する。
【0015】
本発明はまた、HSPG分解酵素処理によって神経移植片を調製する方法に関する。本発明はまた、神経移植片としてヒトまたは動物に後で移植するために、新鮮な(または輸送のために短時間保存された)神経組織を培養する方法に関する。さらに、本発明は、ヒトまたは動物に移植するための神経移植片を作成する方法に関する。
【0016】
ヘパリナーゼは当業者に周知であり、市販されている。本発明に従って有用な他の酵素も市販されている。本発明の方法および組成物は野生型酵素ならびに変異体の両方を意図している。本発明の方法および組成物は、例えば、任意の植物、動物、微生物供給源(菌類、酵母、および細菌を含む)に由来するヘパリナーゼの使用を意図する。特に、本発明の方法および組成物は、EC番号4.2.2.7および4.2.2.8に分類されるヘパリナーゼを含む。
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、神経組織の修復および/または成長を促進する組成物および方法を提供する。本発明の組成物および方法は、疾患、外傷性の出来事、または外科的処置によって遮断された神経の連続性を元通りにするのに使用することができる。本発明の組成物および方法は、損傷神経組織または移植した神経移植片を首尾よく貫通する軸索の数を増やすことによって神経組織の修復を促進して、機能回復を高める。
【0018】
末梢神経が損傷した後に、近位断端にある軸索が再生し、首尾よく標的を神経再支配する場合、成長する経路を選択する必要がある。この経路選択プロセスには、近位断端にある再生軸索が外科的修復部位を通り越して遠位断端にある神経内膜管に進むことが必要である。
【0019】
本明細書においてさらに的確に説明される特定の態様において、損傷神経を治療し、神経修復を促進するために、ヘパリナーゼを本発明に従って使用することができる。本発明によれば、損傷時に切断末梢神経の修復部位にヘパリナーゼを適用すると、軸索再生が著しく増強する。特に好ましい態様において、ヘパリナーゼは1種類またはそれ以上のさらなる酵素と共に適用される。本明細書において具体例として示されるのは、末梢神経の修復を促進するために、ヘパリナーゼとコンドロイチナーゼABCを併用することである。
【0020】
本明細書に記載のように、末梢軸索の再生に対する酵素処理の効果を比較した。活性が説明され、本明細書において例示される特定の酵素は、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼIII、コンドロイチナーゼABC、およびケラタナーゼである。thy-1-YFP-Hマウスの総腓骨(CF)神経が切断され、短いCF神経部分(野生型同腹仔から採取され、神経修復の前に1時間、GAG分解酵素で前処理されている)を用いて修復された。軸索再生は、1週間後に、移植神経の光学切片にある軸索断面長を測定することによってアッセイされた。ケラタナーゼ処理移植片以外の酵素処理移植片において、500μmより長い軸索断面の数は対照移植片より多かった。
【0021】
この分析において、1週間の生存期間に軸索が移植片の中に少なくとも500μm成長した場合に、再生経路選択プロセスは成功したと考えた。切断末梢神経を修復するのに用いられた神経移植片において、再生軸索が成長する経路がコンドロイチナーゼABC、ヘパリナーゼI、またはヘパリナーゼIIIで処理された場合に、有意な数の軸索がこの距離だけ成長した。
【0022】
従って、本発明によれば、切断末梢神経を修復するのに用いられた神経移植片において、修復の1週間後に500μmより長く成長した軸索の数は、再生軸索が成長する経路が規定食塩液に浸漬された場合または未処理の場合より、ヘパリナーゼまたはコンドロイチナーゼで処理された場合で有意に多かった。ヘパリナーゼIとコンドロイチナーゼABCの併用処理は、再生軸索が適切な成長環境を見つけ出すのを助けるのに特に有効であった。
【0023】
4種類全ての酵素(ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼIII、コンドロイチナーゼABC、およびケラタナーゼ)の混合物で処理すると軸索再生が増強された。これは、これらの任意の酵素で個々に処理した後に観察される軸索再生より大きかった。
【0024】
コンドロイチナーゼABC、ヘパリナーゼI、およびヘパリナーゼIIIによる処理はそれぞれ軸索再生を増強するが、この増強が現れる形は、それぞれの処理についてわずかに異なる。
【0025】
末梢神経が損傷した後、軸索再生プロセスの最初期の局面の1つは、再生芽の形成である。近位断端にある個々の切断軸索が新しい神経突起 (neuritic process)を生じる。ヘパリナーゼI処理された移植片において、ヘパリナーゼI処理後に形成した再生芽の数は他の処理のほぼ2倍であった。
【0026】
再生するように経路が選択されたら、軸索はその経路に伸長しなければならない。コンドロイチナーゼ処理移植片およびヘパリナーゼI処理移植片において測定された、500μmより長い軸索断面長の平均は、ケラタナーゼ、ヘパリナーゼIII、もしくは食塩水で処理された移植片、または未処理移植片において見られた長さの平均より有意に大きかった。従って、ヘパリナーゼIIIは、軸索を迅速に伸長するように刺激することによって軸索再生を増強するようには見えず、単に、軸索が移植片の再生経路に入る能力を増強することによって軸索再生を増強するのにすぎないように見える。
【0027】
ヘパリナーゼIおよびヘパリナーゼIIIは、HSPGのGAGを分解する細菌性リアーゼである。ヘパリナーゼIII処理によって暴露されるHSPGコア糖タンパク質の連結領域に結合する抗体3G10(David G, Bai XM, Van der Schueren B, Cassiman JJ, Van den Berghe H (1992) 「Developmental changes in heparan sulfate expression: in situ detection with mAbs」J Cell Biol 119: 961-975)を使用すると、強い神経内膜免疫反応がヘパリナーゼIII処理の後に見出されたが、ヘパリナーゼI処理後では見い出されなかった。
【0028】
本発明によれば、GAGの酵素的除去は、再生軸索が遠位断端(または神経移植片)における経路を選択する能力を促進するのに特に有効であり、コンドロイチナーゼABCまたはヘパリナーゼIの場合、経路内部の成長を促進することもできる。従って、1つの態様において、本発明は、HSPG分解酵素と他のGAG分解酵素(例えば、KSPG分解酵素またはDSPG分解酵素)を併用して神経を再生する材料および方法を提供する。従って、ケラタナーゼおよび/またはエンド-b-ガラクトシダーゼを本発明に従って使用することができる。
【0029】
本発明に従って用いられるHSPG分解酵素は、ヒト、動物、または細菌に由来してもよく、天然のものでも組換えのものでもよい。本明細書で使用する用語「HSPG分解酵素」はまた、このような酵素の生物学的に活性な断片および変異体(例えば、HSPG分解活性を保持している断片および変異体)を含むことが意図される。この同じ定義がCSPG分解酵素に当てはまる。これに関して、US-2003-0072749-A1;US-2003-0077258-A1;US-2003-0040112-A1;US-2004-0180434-A1;およびWO2003/015612 A3の開示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。本発明の組成物は適切な薬学的担体および他の活性薬剤を含んでもよい。
【0030】
1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素の他に、本発明の組成物は、生物学的または薬理学的に活性な分子(例えば、成長因子)をさらに含んでもよい。このような成長因子として、神経成長因子(NGF)、線維芽細胞成長因子(FGF-1および2)、上皮細胞成長因子(EGF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、および-5(NT-3、-4、および-5)、インシュリン様成長因子-Iおよび-II(IGF-I、II)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、グリア成長因子-2(GGF-2)、血管内皮増殖因子(VEGF)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、およびリンパ球浸潤因子(lymphocyte infiltrating factor)/コリン作動性分化因子(cholinergic differentiating factor)(LIF/CDF)が挙げられるが、これに限定されない。このような分子は、天然に、または組換えDNA法によって入手することができる。生物学的活性または薬理学的活性を保持している、このような分子の断片または変異体も使用することができる。
【0031】
損傷神経へのHSPG分解酵素の適用
1つの態様において、HSPG分解酵素は、損傷神経、神経損傷部位、または神経損傷修復部位に適用される。好ましい態様において、HSPG分解酵素は、分断された神経または切り取られた神経の接合(すなわち、端と端をくっつける神経接合)を伴う、一次神経修復部位に適用される。神経損傷は、神経が部分的もしくは完全に分断されているか、小さな領域が傷つけられているか、もしくは外科的に取り除かれている神経離断(神経断裂)でもよく、神経上膜接合(神経縫合)が損傷神経を修復する一次的な方法である。例えば、本発明の組成物および方法は、損傷神経の神経鞘(例えば、基底層、神経周膜、または神経上膜)の少なくとも1つの連続性の破壊を伴う神経損傷の修復を促進するのに使用することができる。好ましくは、外科的修復によって神経要素の再編成が試みられる。
【0032】
ある特定の態様において、神経損傷は、神経挫傷(軸索断裂)であるか、またはさらにひどい損傷である。この場合、軸索は切断されているが、鞘の連続性は無傷のままである、またはいくらか損なわれている。軸索断裂の場合、一般的に、軸索は外科的処置がなくても再生する。
【0033】
場合によっては、神経のある部分が病気にかかっていたり、修復できないほど傷つけられていたり、または無くなっていたり、手術により取り除かれたりする。修復は、空隙を埋めるために移植片またはプロテーゼの移植を伴うことがある。移植片は、天然のものでもよく(例えば、神経移植片もしくは血管移植片)、天然に由来するものでもよく(例えば、生体高分子チューブ)、または合成導管(例えば、シリコーンチューブ)でもよい。これらは切断神経末端に接続される。ある特定の態様において、1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素が接続部位の一端または両端に適用される。例えば、1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素は、内部位置移植片(interpositional graft)にある宿主-移植片境界面の一端または両端に適用することができる。1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素は、損傷神経組織の外科的修復の前、間、もしくは後に、またはレシピエントへの移植片の移植の前、間、もしくは後に適用することができる。1つの態様において、1種類またはそれ以上の酵素はインプラントを用いて損傷領域に適用される。インプラントは、例えば、神経移植片でもよく、さらには合成神経導管でもよい。
【0034】
神経移植片へのHSPG分解酵素の適用
1つの態様において、HSPG分解酵素は神経移植片に適用される。1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素が神経移植片に適用される時に、移植片全体を処理することができる。HSPG分解酵素は、まるごと神経移植片全体に適用することができる。この適用は前処理または移植前インキュベーションであり、適用された酵素を取り除く手順を伴っても、伴わなくてもよい。
【0035】
本発明の方法によれば、1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素は、神経移植片もしくは損傷神経組織またはその両方に適用することができる。1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素は、移植の前、間、または後に神経移植片に適用することができる。1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素は、神経移植片に適用する前に培地に入れることができる。
【0036】
本明細書で使用する用語「移植片」は、ヒトまたは動物への移植を目的とした任意の組織を意味する。自家移植片、同種移植片、同種異系移植片、および異種移植片などの様々な種類の移植片が本発明に含まれる。移植片の大きさ(例えば、長さおよび直径)は本発明にとって重要ではない。移植片は、生きた(細胞)移植片でもよく、例えば、化学的方法または熱細胞除去法によって、無細胞にされている移植片でもよい。
【0037】
任意に、HSPG分解酵素は、生物学的接着剤(biological glue)などの組織接着剤と共に損傷神経または神経移植片に適用することができる。好ましくは、生物学的接着剤は、フィブリン含有接着剤(例えば、フィブリン接着剤、フィブリン密封材、または血小板ゲル)である。本明細書で使用する用語「フィブリン接着剤」、「フィブリン密封材」、および「フィブリン組織接着剤」は、適用部位でのフィブリンクロットの形成を引き起こす、フィブリノゲンおよびトロンビンを含有する製剤の一群を言うために同義に用いられる。組織接着剤は、HSPG分解酵素と同時に、またはHSPG分解酵素に続けて適用することができる。
【0038】
本発明において用いられるHSPG分解酵素は、様々な手段によって、および様々な処方で、神経移植片または損傷神経組織に適用することができる。本明細書で使用する用語「適用された」、「投与された」、「接触された」、および「処理された」は同義に用いられる。例えば、HSPG分解酵素は、神経移植片または損傷神経組織に局所的に(例えば、液滴で)適用されてもよく、注射によって投与されてもよい。より厳密な管理のために、局所適用または注射による局所投与が好ましい。さらに、HSPG分解酵素またはこのような酵素を含む組成物は、好ましくは、液状の流動可能な処方物として適用される。1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素はまた多孔性物質に吸着されてもよく、例えば、軟膏、膏薬、ゲル、クリーム、またはフォームに処方されてもよい。
【0039】
本発明はまた、損傷神経組織の修復を促進するキットを含む。本発明のキットは、少なくとも1種類のHSPG分解酵素を含む第1の区画と、組織接着剤(例えば、本明細書に記載の組織接着剤)を含む第2の区画を備える。任意に、キットは、1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素と組織接着剤を混合するための第3の区画を備えてもよい。キットは、損傷神経組織の修復に直接使用してもよく、神経移植片を介して間接的に使用してもよい。キットは、当技術分野において公知の様々な材料(例えば、プラスチック、ガラス、および/または紙製品)からなる包装を備えてもよい。
【0040】
薬学的組成物
患者(例えば、ヒトまたは動物)への投与に適した薬学的組成物に、1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素を取り入れることができる。このような組成物は、一般的に、少なくとも1種類のHSPG分解酵素および薬学的に許容される担体を含む。本明細書で使用する用語「薬学的に許容される担体」は、薬学的投与と適合する任意のまたは全ての種類の溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含むことが意図される。薬学的に活性な物質に、このような媒体および薬剤を使用することは当技術分野において周知である。
【0041】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に有用な組成物を調製する公知の方法に従って処方することができる。さらなる詳細については、例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、WO2003/015612を参照。当業者に周知であり、かつ容易に入手可能な多くの資料に、処方が述べられている。例えば、Remington's Pharmaceutical Science (Martin EW[1995] Easton Pennsylavania, Mack Publishing Company,19thed.)は、本発明に関して使用することができる処方物について述べている。
【0042】
HSPG分解酵素は、投与方法に適した担体(例えば、食塩水または水性緩衝液)に溶解して処方することができる。HSPG分解酵素はまた徐放性処方物の中に入れられてもよく、徐放性処方物と結合されてもよい。
【0043】
HSPG分解酵素は、酵素が体外に急速に排出されるのを防ぐ担体(例えば、インプラントおよびマイクロカプセル送達システムを含む徐放性処方物)を用いて調製されてもよい。
【0044】
米国特許第5,320,837号は、アミノ基を有する酵素(例えば、ヒアルロニダーゼまたはコンドロイチナーゼ)と、無水マレイン酸および共重合性ポリアルキレングリコールエーテルのコポリマーを反応させることによって得られた徐放性調製物について述べている。
【0045】
米国特許第4,933,185号は、酵素(例えば、ヒアルロニダーゼ)からなる生物学的に活性な物質を送達するための徐放システムについて述べている。酵素は、ポリマー(イオンによって架橋された多糖)で形成されたコアと、速度制御外殻(rate controlling skin)を有するマイクロカプセルの中に入れられ、コアは酵素によって特異的に分解される。コアが分解されると、外殻の完全性が失われ、生物学的に活性な物質がカプセルから急激に放出される。‘185特許の徐放システムは、1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素を送達するのに使用することができる。例えば、1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素は生物学的に活性な物質として機能してもよく、コア分解酵素として機能してもよく、その両方として機能してもよい。
【0046】
徐放性処方物は、1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素の初回暴露を行い、それに続いて、ある特定の時間の後に、1回またはそれ以上の遅延暴露を行うことができる。または、徐放性処方物は、1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素の遅延放出を1回だけ行うことができる。または、連続放出処方物を用いると、1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素を連続して放出することができる。任意に、1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素の連続放出は、1回またはそれ以上のパルス放出を伴ってもよい。
【0047】
インプラントなどのHSPG分解酵素の担体は、特定の適用に適した大きさおよび形状のものでよい。従って、担体は、使用するために担体が配置される生体部位を十分に考慮して設計された、望ましい体積または望ましい形状のものでよい。
【0048】
担体から放出される1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素の量および放出期間は適切な範囲で制御することができる。担体は、移植片もしくは損傷神経に、または移植片もしくは損傷神経に隣接する組織に取り付ける、または固定することができる。担体は、神経損傷部位で、ある期間にわたって(例えば、24時間〜3ヶ月)、1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素を連続放出することができる。
【0049】
使用される特定の担体に応じて、1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素は、製造中または製造後に担体の中に含めることができる、担体にコーティングすることができる、または別の方法で担体と結合することができる。例えば、1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素と市販製品を結合させてもよい。
【0050】
担体はまた、HSPG分解酵素と一緒に、細胞(例えば、シュワン細胞)または成長因子などの他の生物学的に活性な薬剤を送達するように機能してもよい。担体によって送達される細胞は患者に由来してもよく、同種または異種の別の供給源に由来してもよい。担体によって送達される細胞は、生物学的に活性な薬剤を生産するように遺伝子組換えされていてもよい。
【0051】
1つの態様において、担体は、神経移植片または損傷神経のすぐ隣に(例えば、損傷部位に)移植することができる、外科用カフ(surgical cuff)(例えば、米国特許第4,602,624号、米国特許第5,487,756号、および公開済みの米国特許出願第2002/0071828号に記載の外科用カフ)である。任意に、カフは、神経移植片もしくは損傷神経を電気刺激する手段、および/または神経移植片もしくは損傷神経の中の神経電気活性を記録する手段(例えば、米国特許第5,487,756号に記載のもの)を備えてもよい。好ましくは、1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素はカフの内面(すなわち、神経移植片または損傷神経に接する面)から放出されるか、または別の方法で動作する。
【0052】
外科用カフは、送達システム(例えば、リザーバーまたは発現系(例えば、公開済みの米国特許出願第2002/0071828号に記載のアデノウイルス構築物))を介して1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素を神経移植片または損傷神経に供給することができる。コンドロイチンリアーゼ酵素の発現系は当技術分野において公知であり、その一部は、米国特許第6,054,569号;米国特許第6,093,563号;公開済みの米国特許出願第2001/0034043号;およびTralec, A. L. [2000] Appl. Environ. Microbiol. 66: 29-35で述べられている。
【0053】
HSPG分解酵素は、様々な濃度で神経移植片または損傷神経組織に適用することができるが、好ましくは、濃縮された形で適用される。理想的な濃度は神経の大きさおよび酵素によって異なる。ヘパリナーゼは、約10units/mL〜約100units/mLの濃度で適用することができる。好ましくは、ヘパリナーゼは、約10units/mL〜約50units/mLの濃度範囲で神経移植片または損傷神経組織に適用される。例えば、コンドロイチナーゼは、約10units/mL〜約1000units/mLの濃度で適用することができる。好ましくは、コンドロイチナーゼは、約100units/mL〜約500units/mLの濃度範囲で神経移植片または損傷神経組織に適用される。MMPは、約0.1μg/mL〜約100μg/mLの濃度で適用することができる。好ましくは、MMPは、約10μg/mL〜約50μg/mLの濃度で適用される。
【0054】
前記のように、本発明の方法によれば、1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素は、成長因子などの生物学的に活性な分子と共に、神経移植片または損傷神経組織に投与することができる。HSPG分解酵素と一緒に投与することができる他の生物学的に活性な薬剤として、遺伝子組換えされた細胞または遺伝子組換えされていない細胞が挙げられる。従って、本発明の組成物は、このような細胞を含んでもよい。細胞は、非幹細胞(成熟したおよび/もしくは分化した細胞、またはその前駆細胞もしくは始原細胞)でもよく、幹細胞でもよい。さらなる詳細については、例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられるWO2003/015612を参照。
【0055】
幹細胞は、例えば、胎児組織、成人組織、臍帯血細胞(cord cell blood)、末梢血、骨髄、および脳を含む様々な供給源から入手することができる。幹細胞ならびに非幹細胞(例えば、分化したまたは成熟した細胞、および前駆細胞または始原細胞)を分化および/または遺伝子組換えすることができる。
【0056】
本発明の方法によれば、遺伝子組換えされた宿主(例えば、組換え細胞)を、神経移植片または損傷神経組織に投与することができる。宿主は、1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素を生産するように遺伝子組換えすることができる。好ましくは、HSPG分解酵素は組換え細胞から分泌される。例えば、酵素の発現系が当技術分野において公知であり、その一部は、米国特許第6,054,569号;米国特許第6,093,563号;公開済みの米国特許出願第2001/0034043号;およびTralec, A. L. [2000] Appl. Environ. Microbiol. 66: 29-35で述べられている。任意に、組換え宿主は、HSPG分解酵素の他に、他の生物学的に活性な薬剤を組換え生産するように遺伝子組換えされる。
【0057】
1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素をコードする核酸分子をベクターに挿入し、遺伝子治療ベクターとして使用することができる。遺伝子治療ベクターは、例えば、静脈内注射、局所投与、または定位注射によって患者に送達することができる。遺伝子治療ベクターの薬学的調製物は、許容可能な希釈液の中に遺伝子治療ベクターを含んでもよく、遺伝子送達ビヒクルが埋め込まれている、または他の方法で結合されている徐放担体を含んでもよい。さらに、薬学的調製物は、HSPG分解酵素を組換え生産する治療有効量の細胞を含んでもよい。
【0058】
宿主細胞の遺伝子組換えにおいて用いられる様々な方法は当技術分野において周知であり、例えば、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, second edition, volumes 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, New YorkおよびGloves, D. M. (1985) DNA Cloning, Vol, I: A Practical Approach, IRL Press, Oxfordにおいて述べられている。従って、供給源からのDNAの抽出、制限酵素消化の実施、DNA断片の電気泳動、プラスミドおよびインサートDNAのテーリングおよびアニーリング、DNAの連結、細胞(例えば、原核細胞および真核細胞)の形質転換、プラスミドDNAの調製、タンパク質の電気泳動、ならびにDNAの配列決定は、遺伝子工学における当業者の技術の範囲内である。
【0059】
免疫原性を少なくするために、本発明において用いられる神経移植片は、当業者に知られている様々な方法によって無細胞にすることができる。例えば、神経組織は、材料および方法の項に記載のように凍結死滅によって、または界面活性剤による化学抽出によって(Sondell M et al. [1998] Brain Res 795: 44-54)、無細胞にすることができる。神経移植片は、1種類またはそれ以上のHSPG分解酵素を適用する前、適用する間、または適用した後に無細胞にすることができる。
【0060】
インビトロ神経培養
本発明はまた、ヒトまたは動物に移植するための神経組織を培養する方法に関する。本発明の培養方法は、インビトロで神経組織を「予め変性させる(predegenerating)」ことを伴ってもよい。これによって、移植後に、移植片と宿主神経組織との間の境界面を横断する再生軸索の能力が改善される。さらなる詳細については、例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、WO2003/015612を参照。このような文脈で、「予め変性させる」はHSPG分解酵素を(単独でまたは他の酵素と組み合わせて)移植片に適用することを含むことが理解されるはずである。
【0061】
インビトロ培養方法は、インビトロでの神経組織の成長を可能にし、後で移植片として移植された時に神経組織の神経突起促進活性を高める条件下で、神経組織を培養することを伴う。神経突起促進活性の増大は、神経組織のインビトロ神経突起成長アッセイによって測定することができる。
【0062】
または、神経組織のインビボ神経突起成長アッセイも使用することができる。神経突起成長をアッセイする方法は当技術分野において公知であり、一般的に、固体支持体(例えば、マイクロプレートまたは顕微鏡スライド)上での神経突起成長の程度を定性的または定量的に求めることを伴う。標準的な蛍光を使用することができる。
【0063】
本発明の方法および組成物は中枢神経系(CNS)および末梢神経系(PNS)の両方の神経組織に適用することができる。例えば、本発明の神経移植片は、PNSにおける内部位置神経移植片として使用してもよく、脳および脊髄におけるブリッジ(bridge)、ならびにその任意の拡張部分として使用してもよい。損傷神経または神経移植片は末梢神経(例えば、坐骨神経、正中神経など)でもよく、中枢神経(例えば、脊髄神経、視神経など)でもよい。
【0064】
本発明において用いられるHSPG分解酵素およびCSPG分解酵素は、様々な供給源(酵素を天然に生産する生物、または酵素を遺伝子組換えによって生産する(もしくは過剰発現する)生物(組換え酵素を生産する生物)を含む)から入手することができる。例えば、HSPG分解酵素は、細菌供給源(酵素を天然に生産する細菌、または酵素を生産 (もしくは過剰発現)するように遺伝子組換えされている細菌を含む)から入手することができる。HSPG分解酵素はまた、哺乳動物供給源(酵素を天然に生産する哺乳動物、または酵素を生産 (もしくは過剰発現)するように遺伝子組換えされている哺乳動物を含む)から入手することができる。または、HSPG分解酵素は化学合成することができる。
【0065】
本明細書で使用する「近位」部分は、ニューロン細胞体との連続性を保っている軸索の部分、またはこれらの軸索を含んでいる神経の部分を意味することが意図される。「遠位」部分は、ニューロン細胞体から切り離されている軸索の部分、またはこれらの切り離されている軸索を含んでいる神経の部分を意味することが意図される。
【0066】
末梢神経損傷の場合、その近位部分は、神経節または脊髄とつながっている部分である。末梢神経の遠位部分は、運動終板(神経筋接合部)または知覚器官とつながっている、神経の最も末梢にある部分を意味することが意図される。脊髄損傷の場合、近位部分は、核と接触しているか、前方にある部分である。遠位部分は、終末シナプスに達する部分を意味することが意図される。
【0067】
本明細書で使用する用語「治療する」または「治療」は、患者がこおむっている特定の神経損傷に関連する少なくとも1つの副作用または症状の軽減または緩和を意味する。
【0068】
本明細書で使用する用語「幹細胞」は、複製または自己複製することができ、様々な細胞タイプの分化した細胞に発生することができる未分化な細胞である。本明細書で使用する用語「始原細胞」(「前駆細胞」とも知られる)は分化していないか、または細胞分裂し、2つの分化した細胞を生み出すことができるという分化した細胞の部分的な特徴を有する。例えば、骨髄球系始原細胞/前駆細胞は、細胞分裂して、2つの分化した細胞(好中球および赤血球)を生み出すことができる。
【0069】
本明細書で使用する用語「同時投与」およびそのバリエーションは、2種類以上の薬剤を(1種類またはそれ以上の調製物にして)同時に、または連続して投与することを意味する。
【0070】
本明細書で使用する用語「生物学的活性」または「生物学的に活性な」は、特定の薬剤、分子、化合物などに関連した活性を意味することが意図される。
【0071】
本発明による遺伝子組換えを実施するために、様々なベクターを使用することができる。ベクターは、ワクチンベクターでもよく、複製ベクターでもよく、増幅ベクターでもよい。
【0072】
遺伝子組換えを実施するために用いられるベクターはまた、本発明のヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド(例えば、HSPG分解酵素、またはその生物学的に活性な断片もしくは変異体)を、ある特定の宿主細胞において発現および/または分泌させるのに必要なエレメントを含んでもよい。発現を制御するのに使用することができるプロモーターは当技術分野において周知である。さらなる詳細については、例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、WO2003/015612を参照。
【0073】
材料および方法
動物
使用した実験動物は、thy-1-YFP-H系統のトランスジェニックマウスであった(Feng G, Mellor RH, Bernstein M, Keller-Peck C, Nguyen QT, Wallace M,Nerbonne JM, Lichtman JW, Sanes JR[2000]「Imaging neuronal subsets in transgenic mice expressing multiple spectral variants of GFP」Neuron 28: 41-51)。これらのマウスでは、黄色蛍光タンパク質(YFP)がthy-1プロモーターの制御下で発現される。このプロモーターは、thy-1遺伝子産物が運動ニューロンの軸索において正常に発現されるという理由で選択された(Vidal M, Morris R, Grosveld F, Spanopoulou E [1990]「Tissue-specific control elements of the Thy-1 gene」Embo J 9: 833-840)。使用した特定の系統(H)において、YFPは末梢神経の軸索の一部にしか発現しないが、発現すると、軸索ドメイン全体に満ち溢れる(Feng et al. , 2000, 前記)。これらの動物はヘテロ接合体として用いられ、野生型であるC57B/6Jの雌とヘテロ接合体thy-1-YFP-Hの雄を交配させることで得られた(Jackson Laboratories, Bar Harbor, MEから入手した)。組織ドナーとして使用した、これらの交配のF1世代の野生型動物は、thy-1-YFP-Hヘテロ接合体の同腹仔であった。全実験を2〜6ヶ月齢の動物に対して行った。動物は、Emory IACUCが認可したガイドラインを用いて、エモリー大学の動物施設において飼育した。神経科学会-神経科学研究における動物使用方針(Policy on the Use of Animals in Neuroscience Research of the Society for Neuroscience)に従って、全実験を行った。
【0074】
これらのマウスにおいて軸索がYFPの存在によって標識されているニューロンの構成を調べるために、本発明者らは3匹の未処置マウスから脊髄神経および後根神経節を採取した(5つの標本を研究した)。動物をペントバルビタール(150mg/kg,IP)で安楽死させ、規定食塩液を経心的に灌流させ、続いて、過ヨウ素酸-溶解産物-パラホルムアルデヒド(periodate-lysate-paraformaldehyde)固定液(McLean and Nakane, 1974)を経心的に灌流させた。L4およびL5後根神経節を椎弓切除によって暴露し、これらの結合している後根および前根と一緒に取り出した。採取した組織を顕微鏡スライドの上に置き、後根および前根を引き離した。次いで、Vectashield(Vector Laboratories, Burlingame, CA)を用いてスライドの上にカバーガラスを載せた。
【0075】
後根および前根にあるYFP+軸索を視覚化するために、共焦点顕微鏡(Zeiss LSM-510)を用いて、これらのホールマウントから画像を入手した。標本の全厚に及ぶ厚さ10μmの光学切片の積み重なりを比較的低い倍率10Xで入手した。根全体を捕らえるために、積み重なりをいくつかの連続した顕微鏡視野から入手した。次いで、Adobe Photoshopを用いて、これらの画像を縫い合わせた。これらの縫い合わされた画像の積み重なりを用いて、標識された軸索1本1本の断面を特定し、数を数えた。
【0076】
もう3匹のマウスにおいて、安楽死させ、灌流を行った動物から、L4およびL5DRGを採取し、クリオスタットで厚さ40μmの連続切片を作成した。切片は全て、下塗りをしたスライドの上に載せ、Entellan(Electron Microscopy Sciences)を用いてカバーガラスを載せた。それぞれのYFP+ニューロンの細胞体を通る、厚さ2μmの光学切片を63X倍率で入手した。特定可能な核を含む切片を用いて、核が見える視野においてYFP+ニューロンおよび他の任意のニューロンの細胞体断面積を測定した。測定はImage Pro-Plusソフトウェアを用いて行った。この分析の最終結果は、これらの神経節におけるYFP+ニューロン全ての細胞体の大きさを求めることであり、隣接するYFP-ニューロンの大きさを求めることでもあった。これらの2つの群の間の細胞体の大きさの平均の違いを、独立したt検定を用いて評価した。
【0077】
酵素
プロテアーゼフリーコンドロイチナーゼABC(Proteus vulgaris由来,E.C.4.2.2.4)はSeikagaku(Tokyo,Japan)から入手した。ケラタナーゼ(E.C.3.2.1.103)、ヘパリナーゼI(E.C.4.2.2.7)、およびヘパリナーゼIII(ヘパリチナーゼ)(E.C.4.2.2.8)はSigma-Aldrich(St. Louis, MO)から入手した。
【0078】
使用したコンドロイチナーゼABCはプロテアーゼフリーであることが保証されていたが、他の酵素については保証されていなかった。本発明者らが使用したケラタナーゼ、ヘパリナーゼI、およびヘパリナーゼIII調製物もプロテアーゼフリーであるかどうか確かめるために、本発明者らはRediPlate 96 EnzChek Protease Assayキット(Molecular Probes(Eugene, Oregon))を使用した。このキットは広範囲の様々なプロテアーゼを検出することができ、製造業者の指示に従って用いられた。神経移植片を処理するのに使用した条件に可能な限り近い条件下で、酵素調製物を1つ1つ評価した。反応は、80Units/ml濃度の酵素溶液2.5μlを用いて、室温で2時間、3回繰り返して行った。プロテアーゼ活性は蛍光強度として読み取られた。本発明者らの酵素調製物に存在するプロテアーゼ活性は全てトリプシンのプロテアーゼ活性と比較した。
【0079】
神経修復
thy-1-YFP-Hマウスを用いた予備実験において、本発明者らは、少なくとも2週間、かなりの蛍光が切断神経の遠位断端に残っていたために、再生しつつあるYFP+軸索と順行性変性を受けている軸索を区別できないことを見出した。従って、thy-1-YFP-Hマウスにある離断神経は全て、野生型同腹仔からの移植片を用いて修復した。全実験において、まず最初に、ペントバルビタールナトリウム(90mg/kg,IP)を用いて野生型ドナーマウスに麻酔をかけた。麻酔が深く入ったら、両側にある坐骨神経の終枝を暴露した。予備研究において、坐骨神経の脛骨枝より、総腓骨(CF)神経の枝においてYFP標識ニューロンの数が多いことが分かったので、本発明者らの実験では総腓骨神経を使用した。次いで、坐骨神経からCF神経が分かれる点の遠位側にある、CF神経の3〜5mm長の部分を取り出した。これらの移植片は、再生軸索の観察を可能にする暗い背景となり、再生を増強するための潜在的な治療処置を適用するためのビヒクルともなる。ほとんどの実験において、野生型C57BL/6Jマウスからの左CF神経移植片を室温(23℃)の規定食塩液10μlに浸漬し、1時間の浸漬の間に食塩水が蒸発しないように、プラスチックチャンバーの中に入っている印をつけたカバーガラスの上に置いた。右神経の部分を同様に処理したが、10μlのコンドロイチナーゼABC(20U/ml)、ケラタナーゼ(20U/ml)、またはヘパリナーゼI(20U/ml)に1時間浸漬した。神経を取り出した後、野生型動物を安楽死させた。神経を浸漬している間に、thy-1-YFP-Hマウスに麻酔をかけ、CF神経を暴露した。動物の両側にあるCF神経を、CF神経が坐骨神経から分かれる点の約1mm遠位側で切断した。次いで、野生型ドナーマウスからの移植片を近位断端と遠位断端との間に挿入し、フィブリン接着剤で固定した。フィブリン(E.C.2325986)およびフィブロネクチン(E.C.2891492)の1:1混合物と等量のトロンビン(E.C.3.4.21.5)を一緒にした。これらの試薬は全てSigma-Aldrichから入手した。一緒に混合したら、接着剤を部位に適用し、少なくとも5分間放置した。神経が正しく並べられていなかった場合、またはこの領域が極度に湿っていた場合は、接着剤を再適用することが必要であったが、移植片の近位末端および遠位末端がしっかり留まり、thy-1-YFP-H神経の末端と正しく並ぶまで、手術部位は塞がなかった。一組11匹のさらなるマウスにおいて、未処理移植片を用いて切断神経を両側修復した(n=3)、または移植片をヘパリナーゼIII(20U/ml)溶液(n=4)もしくは4種類全ての酵素が等量含まれている混合物(それぞれ20U/ml,開始濃度)(n=4)で両側処理した後に切断神経の修復に使用した以外は前記のように、CF神経を切断および修復した。
【0080】
1週間の生存期間の後に、ペントバルビタールナトリウム(150mg/kg)を用いて宿主マウスを安楽死させた。CF神経領域を暴露し、PLP溶液に30分間浸漬させることで固定した。固定されたら、移植片を含むCF神経を動物から取り出し、前記のように顕微鏡スライドの上に置いた。
【0081】
軸索断面の追跡
神経の全厚に及ぶ厚さ10μmの光学切片の積み重なりを、前記のように共焦点顕微鏡観を用いて入手した。再生軸索の全長を捕らえるために、積み重なりを、いくつかの連続した顕微鏡視野から入手し、Adobe Photoshopを用いて縫い合わせた。これらの縫い合わされた画像の積み重なりを用いて、移植片における再生軸索1本1本の断面を完全な形で再構築した。Image Pro-Plusソフトウェアを用いて、これらの軸索断面長(外科的修復部位(近位断端)から遠位末端までの長さ)を測定した。軸索断面が2個以上の光学切片で見られても、軸索断面を完全な形で測定した。
【0082】
研究した各動物において、外科的修復部位の近位側にある軸索断面の数を数え、移植片において測定された軸索断面の数と比較した。これらの数の比(遠位断面の数/近位断面の数)を出芽指数(sprouting index)として計算した。この指数は、1週間の生存期間で生じた再生芽の量の全体尺度(global measure)とみなした。異なる処理群における出芽指数の差異の有意性を、分散分析(ANOVA)および適切な事後検定を用いて評価した。
【0083】
研究した全ての事例において、軸索断面長の分布は二峰性であった。これは、異なる群のデータが正規分布になると仮定するパラメトリックな統計手法(例えば、t検定またはANOVA)を用いて、対照(食塩水処理)処理神経と酵素処理神経の間の軸索断面長の差異の有意性が容易に評価できなかったことを意味している。処理群間の差異の有意性の3つの尺度を評価した。ノンパラメトリックな統計手法(Kolmogorov-Smirnov(KS)二標本検定)を用いて、未処理移植片および食塩水処理移植片または酵素処理移植片において測定された軸索断面長の分布の違いを評価した。この方法は、2つの群から得られた軸索断面長の標本が同じ集団の一部であった確率を検定する。得られた二峰分布において、一方の最頻値はほとんど再生しなかった軸索に相当し、軸索の長さはほぼ0である。第2の分析形式として、本発明者らは、長さが500μmを超える軸索断面のみを考慮することによって、分析の前に、これらの短い軸索断面長を分布から効果的に取り除いた。研究した動物について、>500μmの軸索断面の長さの平均は正規分布になっており、本発明者らは一元配置ANOVAを用いて群間の差異の有意性を評価した。最後に、本発明者らは、長さが500μmを超える、研究した軸索断面長全ての割合を比較した。これらの研究群における、これらの割合の分布も正規分布であり、その結果、ANOVAを用いて差異の有意性を評価した。これらの後ろ2つの比較において両方とも、有意な差異が見出された。これらの有意な差異の原因を特定するために、事後検定をペアワイズで行った。本発明者の標本の大きさは比較的小さかったので(一般的に、N=3〜6)、本発明者らは、全ての比較について最も保守的でない手法(Fisher LSD)を使用した。
【0084】
免疫組織化学
コンドロイチナーゼABCはCSPGのタンパク質コアからGAG側鎖を分解するので、GAG側鎖が消化されたら小さな連結領域がコアタンパク質に残る。これらの連結領域は、コンドロイチン硫酸の4-硫酸化部分を認識する抗体(抗体2B6)またはコンドロイチン硫酸の6-硫酸化部分を認識する抗体(抗体3B3)のネオエピトープを形成する(Caterson B, Christner JE, Baker JR,Couchman JR [1985]「Production and characterization of monoclonal antibodies directed against connective tissue proteoglycans」Fed Proc 44: 386-393)。従って、これらの抗体を用いた陽性免疫反応は、CSPGが完全に分解されたことを示すアッセイとなる。本発明者らは、ケラタナーゼまたはヘパリナーゼの一方で神経を処理することによってCSPGが分解されたかどうかを調べるために、このアッセイを用いた。抗体3G10は、HSPGの連結領域にあるネオエピトープを認識する。このネオエピトープは、ヘパリナーゼIII消化後に現れるが、コンドロイチナーゼABC消化後では現れず、ヘパリナーゼI消化後でも現れない(David G, Bai XM, Van der Schueren B, Cassiman JJ, Van den Berghe H [1992]「Developmental changes in heparan sulfate expression: in situ detection with mAbs」J Cell Biol 119: 961-975)。様々なヘパリナーゼを用いた本発明者らの処理によって、切断末梢神経の修復に用いられた移植片においてHSPGの糖鎖除去(de-glycanation)が生じたかどうか調べるために、本発明者らは、マウスCF神経部分の組織切片と、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼIII、コンドロイチナーゼABC、または食塩水を反応させた。3G10免疫反応の正の対照として、本発明者らはマウス腎臓の連続切片を同様に処理した。
【0085】
安楽死させた野生型マウスから3〜5mm長の坐骨神経部分を採取し、前記のように4種類の酵素溶液の1つまたは食塩水に浸漬した。次いで、坐骨神経部分を30分間PLPで固定し、組織学に使用するまで10%スクロース溶液に入れて保存した。神経部分の組織断片を、縦断面または前頭面において10μmの厚さでクリオスタットで切断し、下塗りをしたスライドの上に載せた。次いで、これらの切片を、緩衝液(0.1Mリン酸緩衝液(PBS)、2%全ヤギ血清(WGS)、および0.03%Triton)に入れて室温で1時間インキュベートした。次いで、組織を、1:100に希釈した抗体3B3または2B6と4℃で一晩インキュベートした。各スライドを、0.1M PBSで4回リンスした(リンスの間隔は5分)。次いで、切片を、1:1000に希釈したフルオロフォアAlexa594結合ヤギ抗マウス二次抗体(Molecular Probes, Eugene, OR)に入れて室温で30分間インキュベートした。次いで、Entellanを用いてスライドにカバーガラスを載せ、共焦点顕微鏡を用いて観察した。
【0086】
以下は、本発明を実施するための最良の態様を含む手順を例示した実施例である。本実施例は限定するものと解釈してはならない。特別の定めのない限り、パーセントは全て重量パーセントであり、溶媒混合物の比は全て体積比である。
【0087】
実施例1-thy-1-YFP-Hマウスにおける標識軸索の組成
thy-1-YFPマウスのH系統では、黄色蛍光タンパク質の存在によって末梢神経の軸索の一部が標識されるが(Feng G, Mellor RH, Bernstein M, Keller-Peck C, Nguyen QT, Wallace M, Nerbonne JM, Lichtman JW, Sanes JR[2000]「Imaging neuronal subsets in transgenic mice expressing multiple spectral variants of GFP」Neuron 28: 41-51)、標識された全ての軸索の割合(知覚軸索でも運動軸索でも)は分かっていない。CF神経に寄与する主要な体節神経(L4およびL5)の後根および前根にあるYFP+軸索の数を、3匹のマウスからの脊髄神経(5組の神経)のホールマウントを通る光学切片において数えた(図1A)。知覚軸索および運動軸索の数の平均(±SEM)を表Iに示した。
【0088】
【表1】

【0089】
L4脊髄神経における標識された知覚軸索の数の平均(122.6)と、この神経節において概算されたニューロンの総数(4625) (Liebl DJ, Tessarollo L, Palko ME, Parada LF [1997]「Absence of sensory neurons before target innervation in brain-derived neurotrophic factor-, neurotrophin 3-, and TrkC-deficient embryonic mice」Journal of Neuroscience 17: 9113-9121)を比較すると、全知覚軸索の約2.6%が標識されている。両体節神経において、YFP蛍光によって標識された知覚軸索の数は運動軸索の数より有意に多かった(t検定,p<0.001)。前記と同じ手法を用いて、損傷の近位側にあるCF神経にあるYFP+軸索断面の数を数えた。平均して、各神経において36.03(±2.35SEM)個の標識軸索が見出された。従って、本発明者らは、これらのうち58%(21個)がDRG細胞の軸索であり、42%(15個)が運動ニューロンの軸索であると考えた。
【0090】
L4およびL5神経節を通る組織切片におけるYFP+DRGニューロンおよびYFP+DRGニューロンを取り囲んでいる非蛍光ニューロンの断面積を計算した。核を含む細胞の断面に対して、全ての測定を行った。YFP+ニューロンおよびYFP-DRGニューロンの細胞体断面積の分布を図1Bに示した。両群の細胞において、大きなニューロンと小さなニューロンが両方ともあったが、周囲のYFP-ニューロンよりYFP+細胞の分布の方で、大きなニューロンが多く、小さなニューロンが少なかった。YFP+ニューロンの大きさの平均は、YFP-細胞の大きさの平均より有意に大きかった(t検定,p<0.01)(図1B,右)。
【0091】
実施例2-thy-1-YFP-Hマウスにおける軸索再生
野生型同腹仔からの未処理移植片または食塩水処理移植片を用いてCF神経の外科的切断を修復した1週間後のthy-1-YFP-Hマウスにおいて(図2A)、軸索が再生した証拠はほとんど認められない(図2B:食塩水)。神経修復の1週間後、標識軸索の蛍光断面の大部分は、切断神経の近位断端と移植片との境界面である外科的修復部位の近くに見られた。わずかな軸索が移植片に貫通し、成長して移植片の中に入っていたが、観察された大部分の軸索断面は成長していなかった。このような未処理移植片への成長の乏しさは、軸索断面の測定長の分布に反映されている(図3A)。これらの神経における蛍光軸索断面の90%超が500μmより短かった。
【0092】
実施例3-コンドロイチナーゼABC処理は軸索再生を増強する
野生型マウスからのコンドロイチナーゼABC処理移植片を用いて切断CF神経を修復した1週間後のthy-1-YFP-Hマウスでは、結果はかなり異なっている(図2B,コンドロイチナーゼ ABC)。食塩水処理移植片または未処理移植片における軸索断面の大部分の末端は、膜状物(lamellopodia)含有成長円錐または収縮バルブ(retraction bulb)に似た大きく平らな終末であったのに対して(図2C)、コンドロイチナーゼ処理移植片の中に入り、成長した軸索断面の終末は紡錘状をしていた(図2D〜F)。強い蛍光を発する多くの軸索が移植片の中に成長していることが見出され、かなり長く成長しているものもあった。この観察は、蛍光を発する再生軸索の断面長の分布に反映されている。1匹のマウスの右神経および左神経からの軸索断面長の測定値のヒストグラムである図3Aに示したように、食塩水処理移植片およびコンドロイチナーゼABC処理移植片では両方とも、多くの軸索断面長は非常に短い。
【0093】
軸索断面長が長い第2の集団(括弧)は、このマウスのコンドロイチナーゼ処理移植片にしか見出されなかった。食塩水処理移植片の軸索断面長とコンドロイチナーゼABC処理移植片の軸索断面長との間のこれらの差異は、図3Bに示した6匹のマウスの分析に基づく累積度数分布でも認められた。このグラフにおいて、コンドロイチナーゼABC処理神経のデータが右に(または下に)移動しているのは、軸索断面がコンドロイチナーゼABC処理移植片にあった場合、任意の軸索断面長について、移動した分だけの数の軸索断面がその長さであるか、またはそれより長いことを意味している。ノンパラメトリック統計検定を用いて比較すると、コンドロイチナーゼABC処理において測定された軸索断面長の分布と食塩水処理移植片において測定された軸索断面長の分布は有意に異なる(KS,p<0.001)。
【0094】
実施例4-ヘパリナーゼ処理は軸索再生を増強するが、ケラタナーゼ処理は軸索再生を増強しない
HSPGのGAGは、ヘキスロン酸(D-グルクロン酸(GlcA)またはそのエピマー、L-イズロン酸(IdoA))とD-グルコサミン(GlcN)からなる二糖のポリマーからなる。ヘパリンに含まれるGlcNは大部分がN-硫酸化されているのに対して、ヘパランに含まれるGlcNは一様でなく、N-アセチル化およびN-硫酸化が両方ともなされている(Lindahl U, Kusche-Gullberg M, Kjellen L (1998)「Regulated diversity of heparan sulfate」J Biol Chem 273: 24979-24982)。2種類の細菌ヘパリンリアーゼを用いて、HSPGのGAGを分解した。両方とも糖対間のα-1,4結合を分解する。ヘパリナーゼIは、高度に硫酸化された糖(例えば、ヘパリン)に含まれるグリコシド結合の分解に最も有効である。ヘパリナーゼIはHSPGのあまり硫酸化されていないヘパラン硫酸含有GAG側鎖を除去することもできるが、ヘパリナーゼIIIの方が有効である(Desai UR, Wang H, Linhardt RJ [1993]「Substrate specificity of the heparin lyases from Flavobacterium heparinum」Arch Biochem Biophys 306: 461-468)。
【0095】
ヘパリナーゼI処理移植片およびヘパリナーゼIII処理移植片において測定された軸索断面長の分布を図4Aに示した。これらの分布は、食塩水処理移植片において測定された軸索断面長の分布と有意に異なる(KS,p<0.01)。
【0096】
再生軸索の経路にある任意のKSPGのGAG側鎖を除去するために、神経移植片のケラタナーゼ処理を使用した。食塩水処理移植片およびケラタナーゼ(20U/ml)処理移植片において測定された再生軸索断面長の分布を図4Bに示した。CS分解酵素またはHS分解酵素で処理した後の結果とは異なり、ケラタナーゼ処理後のこれらの分布の差異は統計的に有意でなかった(KS,p<0.35)。
【0097】
実施例5-酵素混合物による処理
4つの神経移植片を、等濃度の4種類全ての酵素(ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼIII、コンドロイチナーゼABC、およびケラチナーゼ)からなる混合物で処理した後に、これらの神経移植片を用いて切断CF神経を修復した。これらの動物における軸索断面長の分析結果を図4Cに示した。異なる酵素からなる混合物で処理すると軸索断面長の分布が変化した。この変化は、食塩水処理移植片において見られるものより有意に大きく(p<0.01)、また、これらの酵素のいずれか一種類だけで処理された移植片において見られるものより大きかった。
【0098】
個々の処理の算術和によって生じる軸索断面長の分布の変化を概算した。それぞれの処理について、食塩水処理移植片を用いて観察された軸索断面長の分布に対する軸索断面長の分布のパーセント変化を求めた。次いで、これらのパーセントの差異を合計し、食塩水処理移植片において測定された軸索断面長の分布から差し引いて、シミュレーションによる軸索断面長分布を得た。合計したパーセントが食塩水処理移植片において測定された軸索断面長の分布における対応値より大きかった場合、シミュレーション分布における値は0にした。結果として生じたシミュレーション分布を図4Cの灰色の線で示した。このシミュレーション分布は、酵素混合物処理移植片において測定された軸索断面長の分布の95%信頼限界の中にほぼ完全にあることに留意のこと。
【0099】
実施例6-軸索再生に対する様々な酵素処理の効果の比較
移植片をコンドロイチナーゼABC、ヘパリナーゼI、またはヘパリナーゼIIIに浸漬した場合、移植片の中に500μmより長く伸長した軸索断面の割合は、移植片を食塩水もしくはケラタナーゼの中でインキュベートするか、または全くインキュベートしなかった場合より有意に多かった(図5A)。近位修復部位から500μm超えて伸長したのは、平均して、食塩水処理移植片において測定された軸索断面では5.64%(±2.37,SEM)しかなかったのに対して、コンドロイチナーゼABC処理移植片における軸索断面では31.28%(±6.06)であった(Fisher LSD,p<0.017)。これらの差異はまた、3つの未処理移植片において測定された500μmを超える軸索断面長のパーセント(9.55%±3.69)より有意に大きかった (LSD,p<0.05)。ケラタナーゼ処理移植片において500μmより長かったのは、平均して、全ての軸索断面の15.64%(±2.37,SEM)しかなかった(LSD,p<0.51)。500μmを超える軸索断面長の有意に大きな割合が、ヘパリナーゼI処理移植片(38.93%±16.51,SEM)(LSD,p<0.007)およびヘパリナーゼIII処理移植片(63.96%±8.74 SEM)(LSD,p<0.0001)において測定された。
【0100】
酵素混合物によって移植片を処理すると再生軸索の伸長が促進され、長さ500μmを超える再生軸索の数はコンドロイチナーゼABC処理後のほぼ4倍(p<0.0005)、ヘパリナーゼI処理後のほぼ2倍(p<0.007)になった。ヘパリナーゼIII処理を行うと、500μmより長い軸索断面の数は、コンドロイチナーゼABC(p<0.01)処理またはヘパリナーゼI(p<0.05)処理より比例的に多くなった。
【0101】
異なる処理群における500μmより長い軸索断面長の平均(±SEM)を図5Bに示した。移植片の中に500μmより長く伸長した軸索のうち、コンドロイチナーゼ処理移植片の中に成長した軸索の長さの平均(1766.22μm±171.19,SEM)は、食塩水処理移植片の中に再生した軸索の長さの平均(662.40μm±191.83)(LSD,p<0.002)または未処理移植片の中に再生した軸索の長さの平均(619.62μm±110.34)(LSD,p<0.009)のほぼ3倍であった。ヘパリナーゼI処理移植片において、500μmより長い軸索断面長の平均(1466.93μm±250.85 SEM)は、食塩水処理移植片(p<0.04)または未処理移植片(p<0.01)において観察されたものより有意に大きかったが、コンドロイチナーゼABC処理移植片において観察されたものと有意な違いはなかった。対照的に、ケラタナーゼ処理移植片における500μmより長い軸索断面長の平均(800.28μm±170.83,SEM)(LSD,p<0.39)またはヘパリナーゼIII処理移植片における500μmより長い軸索断面長の平均(755.89μm±75.67 SEM)は、食塩水処理移植片(p<0.71)または未処理移植片(p<0.67)において測定されたものと有意な違いはなかった。酵素混合物で処理された移植片において、500μmより長い軸索断面長の平均は、食塩水処理(p<0.05)または未処理移植片(p<0.01)において観察されたものより有意に大きかったが、コンドロイチナーゼABCまたはヘパリナーゼIのいずれかで処理された移植片において観察されたもと有意な違いはなかった。
【0102】
実施例7-再生出芽に対する酵素の効果
切断末梢神経の近位断端にある軸索は、再生の最初期の局面の1つとして芽を形成する。プロテオグリカン糖鎖除去が軸索再生に影響を及ぼし得るやり方の1つは、このような再生芽の形成の刺激によるものである。この可能性をアッセイするために、各動物における神経切断の近位側にあるCF神経のYFP+軸索断面の数を数え、この数と、移植片において測定された軸索断面の数を比較した。後者は、軸索断面が非常に短くても、外科的修復部位の遠位側で測定することができた全ての軸索断面を含んでいる。遠位数と近位数の比は出芽指数である。異なる処理群の出芽指数の平均(±SEM)を図6に示した。大部分の群の間で有意な違いは見られなかったが、ヘパリナーゼIで処理された神経移植片において見られた軸索の枝の数は他の群のほぼ2倍であった(LSD,p<0.01)。
【0103】
実施例8-コンドロイチナーゼABC処理およびヘパリナーゼ処理の特異性
コンドロイチナーゼABC活性によってCSPGからGAG側鎖が除去されていると、この酵素の糖鎖除去活性によって生じたCSPGコア糖タンパク質上のGAG結合部位にあるネオエピトープに、抗体3B3および2B6が結合する(Caterson B, Christner JE, Baker JR, Couchman JR [1985] 「Production and characterization of monoclonal antibodies directed against connective tissue proteoglycans」Fed Proc 44: 386-393)。これらの抗体の両方に対する陽性免疫反応が、インサイチューでコンドロイチナーゼABC処理された末梢神経切片の神経内膜管の位置に見出された(図7:A,B)。この免疫反応は神経切片全体において見出された。食塩水、ケラタナーゼ(図7:C,D)、ヘパリナーゼI(図7:E,F)、またはヘパリナーゼIII(図7:G,H)に浸漬された神経の切片では、免疫反応(すなわち、コンドロイチナーゼ活性)は観察されなかった。従って、前記のヘパリナーゼI処理およびヘパリナーゼIII処理の成長促進効果は、これらの酵素が移植片にあるCSPGの糖鎖除去を誘導したことによるものではなかった。
【0104】
同様に、抗体3G10は、ヘパリナーゼIII処理によって現れるネオエピトープに結合するが、コンドロイチナーゼABC処理によって現れるネオエピトープにもヘパリナーゼI処理によって現れるネオエピトープにも結合しない(David G, Bai XM, Van der Schueren B, Cassiman JJ, Van den Berghe H [1992]「Developmental changes in heparan sulfate expression: in situ detection with mAbs」J Cell Biol 119: 961-975)。マウスCF神経の切片を、食塩水、コンドロイチナーゼABC、ヘパリナーゼI、またはヘパリナーゼIIIで、神経移植片を処理するのに使用したものと同じ濃度および同じ条件下で処理した。次いで、これらの切片を抗体3G10で処理した。この実験の結果を図8に示した。
【0105】
ヘパリナーゼIIIで処理した後、抗体3G10に対する著しい免疫反応が神経の神経内膜管領域において見出された(図8:A)。同じことが、コンドロイチナーゼABC処理後にヘパリナーゼIIIで処理された切片において見出された。ヘパリナーゼIで処理された切片では、3G10に対する免疫反応は見出されず(図8:B)、同じことが、コンドロイチナーゼABCまたは食塩水で前処理された切片で認められた(図8:C,D)。
【0106】
本明細書において言及または引用された全ての特許、特許出願、仮出願、および刊行物は、本明細書の明白な開示と矛盾しない程度まで、全ての図面および表を含めて全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0107】
本明細書に記載の実施例および態様は例示にすぎず、本明細書に記載の実施例および態様を考慮すれば、様々な修正または変更が当業者に示唆され、本願の精神および範囲の中に含まれることが理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】図1Aは、thy-1-YFP-HマウスのL4後根神経節を通る、同じ光学切片面にある6枚の画像から構築されている。この神経節の近位末端にある後根および前根と、神経節の遠位末端にあるL4脊髄神経に、蛍光を発する軸索が見える。図1Bでは、1匹のマウスのL4後根神経節についての、YFP+ニューロンおよび周囲のYFP-ニューロンの細胞体断面積の分布を示した(左)。研究した全ての神経節からの、これらの2群の細胞体面積の平均(±SEM)を右に示した。
【図2】図2Aに、使用した実験パラダイムを示す。thy-1-YFP-Hマウスの総腓骨神経を切断し(左)、野生型同腹仔の同じ神経からの移植片を用いて修復した。一方の各動物には、移植片を室温(23℃)で1時間酵素溶液に浸漬した。もう一方の各マウスには、移植片を規定食塩液に浸漬した。図2Bに、神経と食塩水処理(上)移植片またはコンドロイチナーゼABC処理(下)移植片が通るように撮影した、1枚の光学切片からの画像を示した。この画像は隣接する顕微鏡視野から入手し、神経および移植片を再構築するために縫い合わせた。2つの図にある矢印は、移植片の近位接合位置を示している。食塩水処理移植片では、この光学切片は再生軸索をもはや含まなかった。図2C〜Fに、食塩水処理(2C)移植片およびコンドロイチナーゼ処理(2D〜F)移植片における、軸索断面の終末の高倍率画像を示した。
【図3】図3Aに、食塩水処理(黒色棒)移植片およびコンドロイチナーゼABC処理(白色棒)移植片において測定された軸索断面長の分布を示した。総腓骨神経を切断および外科的修復をした1週間後の、一匹のマウスのデータを示す。1500μmより長い軸索断面長の集団は、コンドロイチナーゼ処理移植片において成長している軸索(括弧)の間でしか見られないことに留意のこと。図3Bに、軸索断面長の分布を累積度数プロットとして示した。このグラフのデータ点は、食塩水(太線)またはコンドロイチナーゼABC(細線)で処理された6匹のマウスの平均(±SEM)に相当する。
【図4】(A)食塩水処理移植片(太線)、およびヘパリナーゼI処理移植片(黒色の細線)もしくはヘパリナーゼIII処理移植片(灰色の細線)を用いて、または(B)コンドロイチナーゼABC処理移植片(黒色の細線)もしくはケラタナーゼ処理移植片(灰色の細線)を用いて修復された神経についての、軸索断面長の累積度数分布を示す。図4Cに、酵素の全ての組み合わせを用いて処理した移植片において測定された軸索断面長の分布(黒色の細線)を示した(食塩水処理移植片からのデータ(太線)および個々の酵素による処理の効果の算術和(灰色の細線)と比較した)。各線にある各データ点は5匹のマウスからの平均に相当する。エラーバーは、パネルAおよびBではSEMであり、パネルCでは95%信頼限界である。
【図5】異なる処理の相対効力の2種類の尺度を示す。図5Aにおいて、棒は、使用した4種類の各酵素処理、総腓骨神経が未処理移植片で修復されたマウス群、および移植片の食塩水処理について見出された500μmより長い軸索断面の平均(±SEM)パーセントを表す。図5Bにおいて、棒は、同じ群における>500μm長の軸索の長さの平均(±SEM)を表す。
【図6】本発明者らは、CF神経の損傷部位上にあるYFP+軸索断面の数(近位数)を数え、これと、移植片において測定された軸索断面の総数(遠位数)と比較した。遠位数と近位数の比は再生芽の量の指数(出芽指数)であり、軸索1本あたりの芽の数の全体平均(global average)(±SEM)に相当する。
【図7】本発明者らは、酵素による神経移植片の処理の効果がCSPGからのGAGの除去によるものであるかどうか調べるために、酵素処理後にしか現れないエピトープであるネオエピトープに対する抗体を使用した。抗体3B3および2B6は、大規模なコンドロイチナーゼABC消化の後に残る「短い突出部(stub)」を認識する。インサイチューで様々な酵素と反応させた総腓骨神経の組織学的断面を、これらの抗体のいずれかとスライド上でインキュベートした。各図(A〜H)は、前処理および抗体結合の異なる組み合わせの結果を示している。示した図は全て同じ倍率である。
【図8】ヘパリナーゼIII処理によってHSPGのGAGが除去される。図8Aに、ヘパリナーゼIIIで前処理したマウス総腓骨神経を通る横断面における抗体3G10に対する免疫反応を示した。ヘパリナーゼI(図8B)、コンドロイチナーゼABC(図8C)、食塩水(図8D)による前処理の後では、免疫反応は見られなかった。スケールバー=20μm。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
損傷神経に少なくとも1種類のヘパラン硫酸プロテオグリカン分解酵素を適用する工程を含む、損傷神経の再生を促進する方法。
【請求項2】
ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼIII、ヘパラナーゼ、およびマトリックスメタロプロテイナーゼからなる群より選択されるヘパラン硫酸プロテオグリカン分解酵素を投与する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
酵素がヘパリナーゼIまたはヘパリナーゼIIIである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
神経に少なくとも1種類の他のGAG分解酵素を投与する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
神経に少なくとも1種類のコンドロイチン硫酸プロテオグリカン分解酵素を投与する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
コンドロイチン硫酸プロテオグリカン分解酵素が、コンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼA、コンドロイチナーゼC、およびコンドロイチナーゼACからなる群より選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
神経に少なくとも1種類のケラタン硫酸プロテオグリカン分解酵素を投与する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
ケラチン硫酸プロテオグリカン分解酵素がケラタナーゼまたはエンド-b-ガラクトシダーゼである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
損傷神経に組織接着剤を同時適用する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
損傷神経に生物学的に活性な薬剤を適用する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
生物学的に活性な薬剤が成長因子である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
損傷神経に細胞を適用する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
細胞が幹細胞またはシュワン細胞である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
損傷神経が損傷末梢神経である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
損傷神経が損傷中枢神経である、請求項1記載の方法。
【請求項16】
損傷神経がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1種類のヘパラン硫酸プロテオグリカン分解酵素および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項18】
ヘパリン硫酸プロテオグリカン分解酵素が、ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼIII、ヘパラナーゼ、およびマトリックスメタロプロテイナーゼからなる群より選択される、請求項17記載の薬学的組成物。
【請求項19】
酵素がヘパリナーゼIまたはヘパリナーゼIIIである、請求項18記載の薬学的組成物。
【請求項20】
少なくとも1種類の他のGAG分解酵素をさらに含む、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項21】
少なくとも1種類のコンドロイチン硫酸プロテオグリカン分解酵素をさらに含む、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項22】
コンドロイチン硫酸プロテオグリカン分解酵素が、コンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼA、コンドロイチナーゼC、およびコンドロイチナーゼACからなる群より選択される、請求項21記載の薬学的組成物。
【請求項23】
少なくとも1種類のケラタン硫酸プロテオグリカン分解酵素をさらに含む、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項24】
ケラチン硫酸プロテオグリカン分解酵素がケラタナーゼまたはエンド-b-ガラクトシダーゼである、請求項23記載の薬学的組成物。
【請求項25】
神経移植片に少なくとも1種類のヘパリン硫酸プロテオグリカン分解酵素を適用する工程を含む、移植用神経移植片を調製する方法。
【請求項26】
ヘパリナーゼI、ヘパリナーゼIII、ヘパラナーゼ、およびマトリックスメタロプロテイナーゼからなる群より選択されるヘパラン硫酸プロテオグリカン分解酵素を投与する工程を含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
酵素がヘパリナーゼIまたはヘパリナーゼIIIである、請求項26記載の方法。
【請求項28】
神経に少なくとも1種類の他のGAG分解酵素を投与する工程をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項29】
神経に少なくとも1種類のコンドロイチン硫酸プロテオグリカン分解酵素を投与する工程をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項30】
コンドロイチン硫酸プロテオグリカン分解酵素が、コンドロイチナーゼABC、コンドロイチナーゼA、コンドロイチナーゼC、およびコンドロイチナーゼACからなる群より選択される、請求項29記載の方法。
【請求項31】
神経に少なくとも1種類のケラタン硫酸プロテオグリカン分解酵素を投与する工程をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項32】
ケラチン硫酸プロテオグリカン分解酵素がケラタナーゼまたはエンド-b-ガラクトシダーゼである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
神経組織に少なくとも1種類のヘパリン硫酸プロテオグリカン分解酵素を適用する工程を含む方法によって調製された神経組織を含む、移植用神経移植片。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−519755(P2007−519755A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551641(P2006−551641)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2005/003687
【国際公開番号】WO2005/074655
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(504397147)エモリー ユニバーシティー (2)
【Fターム(参考)】