説明

神経刺激パラメータ検出装置および神経刺激装置

【課題】心臓や心臓事象の検出に悪影響を与えることなく必要量の神経刺激を決定する。
【解決手段】心電信号の変化を検出する心電信号変化検出部4と、パラメータPを切り替えて神経刺激装置2に神経刺激を行わせる刺激指令部3に接続され、心電信号変化検出部4により検出された心電信号の変化が、自発脱分極であるか否かを判定する判定部5とを備え、該判定部5が、自発脱分極以外の心電信号の変化であると判定した場合に、刺激指令部3が直近に指令したパラメータPによる神経刺激より低い強度の神経刺激を与えるパラメータPを出力する神経刺激パラメータ検出装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経刺激パラメータ検出装置および神経刺激装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、心臓の近傍に配されている神経に刺激を与えて、心臓再同期併用治療を行う方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この方法では、心臓の近傍に配されている神経に刺激を与える際に、心臓自体を刺激しないように、心臓不応期期間中に神経刺激を与えることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−532638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、神経に刺激を与える期間を心臓不応期期間中に限ると、必要量の刺激を与えることができない場合があるという不都合がある。
一方で、心臓不応期期間外に、強い刺激を神経に与えると、心臓に悪影響を与える可能性がある。
また、心臓の近傍に配置されている神経に刺激を与える場合、心臓に設置された心臓治療装置によって、神経刺激が心臓事象として検出されてしまう不都合がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、心臓や心臓事象の検出に悪影響を与えることのない神経刺激を決定することができる神経刺激パラメータ検出装置および神経刺激装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、心電信号の変化を検出する心電信号変化検出部と、パラメータを切り替えて神経刺激装置に神経刺激を行わせる刺激指令部に接続され、心電信号変化検出部により検出された心電信号の変化が、自発脱分極であるか否かを判定する判定部とを備え、該判定部は、自発脱分極以外の心電信号の変化であると判定した場合に、前記刺激指令部が直近に指令したパラメータによる神経刺激より低い強度の神経刺激を与えるパラメータを出力する神経刺激パラメータ検出装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、心電信号変化検出部が、心臓において発生した心電信号の変化を検出し、判定部によって、検出された心電信号変化が自発脱分極か否かが判定される。ここで、判定部は、パラメータを切り替えて神経刺激装置に神経刺激を行わせる刺激指令部に接続されている。判定部が、自発脱分極以外の心電信号の変化であると判定した場合には、刺激指令部が直近に指令したパラメータに応じた神経刺激は心臓に悪影響を及ぼすもの、または、心臓事象の検出に悪影響を及ぼすものであると考えられる。したがって、自発脱分極以外の心電信号変化を発生させる神経刺激より低い強度の神経刺激を与えるパラメータが判定部によって出力されることにより、心臓や心臓事象の検出に悪影響を与えることなく必要量の神経刺激を与えることができるパラメータを提供することができる。
【0008】
また、本発明は、神経刺激装置に接続され、パラメータを切り替えて神経刺激を行わせる刺激指令部と、心電信号の変化を検出する心電信号変化検出部と、前記刺激指令部に接続され、該心電信号変化検出部により検出された心電信号の変化が、自発脱分極であるか否かを判定する判定部とを備え、前記判定部は、自発脱分極以外の心電信号の変化であると判定した場合に、前記刺激指令部が直近に指令したパラメータによる神経刺激より低い強度の神経刺激を与えるパラメータを出力する神経刺激パラメータ検出装置を提供する。
【0009】
本発明によれば、刺激指令部において切り替えられたパラメータが神経刺激装置に入力され、入力されたパラメータに応じた神経刺激が神経刺激装置から心臓近傍の神経に対して行われると、心電信号変化検出部が、心臓において発生した心電信号の変化を検出し、判定部によって、検出された心電信号変化が自発脱分極か否かが判定される。判定部が、自発脱分極以外の心電信号の変化であると判定した場合には、刺激指令部が直近に指令したパラメータに応じた神経刺激は心臓に悪影響を及ぼすもの、または、心臓事象の検出に悪影響を及ぼすものであると考えられる。したがって、自発脱分極以外の心電信号変化を発生させる神経刺激より低い強度の神経刺激を与えるパラメータが判定部によって出力されることにより、心臓や心臓事象の検出に悪影響を与えることなく必要量の神経刺激を与えることができるパラメータを提供することができる。
【0010】
上記発明においては、前記刺激指令部が、神経刺激の強度を漸次増大させるようにパラメータを切り替えて前記神経刺激装置に指令し、前記判定部は、自発脱分極以外の心電信号の変化であると判定した場合に、前記刺激指令部が直近に指令したパラメータの1つ前に前記刺激指令部が指令したパラメータを出力してもよい。
このようにすることで、判定部により、心臓や心臓事象の検出に悪影響を与えることなく最大量の神経刺激を与えることができるパラメータを決定することができる。
【0011】
上記発明においては、前記刺激指令部は、前記判定部により自発脱分極以外の心電信号の変化であると判定された場合に、当該パラメータによる神経刺激より低い強度の神経刺激を与えるパラメータを最大刺激パラメータとして、前記神経刺激信号を出力する刺激信号出力部に設定することとしてもよい。
このようにすることで、神経刺激指令部が、自発脱分極以外の心電信号の変化を発生させる神経刺激より低い強度の神経刺激を与えるパラメータを最大刺激パラメータとして、神経刺激信号を出力する刺激信号出力部に設定することにより、心臓や心臓事象の検出に悪影響を与えることなく必要量の神経刺激を与えることができる。
【0012】
また、本発明は、設定されたパラメータに従って神経刺激信号を出力する刺激信号出力部と、前記パラメータを切り替えて前記刺激信号出力部から神経刺激を行わせる刺激指令部と、心電信号の変化を検出する心電信号変化検出部と、前記刺激指令部に接続され、該心電信号変化検出部により検出された心電信号の変化が、自発脱分極であるか否かを判定する判定部と、を備え、前記刺激指令部は、前記判定部により自発脱分極以外の心電信号の変化であると判定された場合に、当該パラメータによる神経刺激より低い強度の神経刺激を与えるパラメータを最大刺激パラメータとして刺激信号出力部に設定する神経刺激装置を提供する。
【0013】
本発明によれば、刺激指令部において切り替えられたパラメータが神経刺激装置に入力され、入力されたパラメータに応じた神経刺激信号が刺激信号出力部から心臓近傍の神経に対して行われると、心電信号変化検出部が、心臓において発生した心電信号変化を検出し、判定部によって、検出された心電信号変化が自発脱分極か否かが判定される。判定部によって自発脱分極以外の心電信号変化が発生したと判定された場合には、当該パラメータに応じた神経刺激は心臓に悪影響を及ぼすもの、または、心臓事象の検出に悪影響を及ぼすものであると考えられる。したがって、神経刺激指令部が、自発脱分極以外の心電信号変化を発生させる神経刺激より低い強度の神経刺激を与えるパラメータを最大刺激パラメータとして刺激信号出力部に設定することにより、心臓や心臓事象の検出に悪影響を与えることなく必要量の神経刺激を与えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、心臓や心臓事象の検出に悪影響を与えることなく必要量の神経刺激を決定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る神経刺激パラメータ検出装置を示す全体構成図である。
【図2】図1の神経刺激パラメータ検出装置によるパラメータ検出の動作を説明するためのタイムチャートを示す図である。
【図3】図1の神経刺激パラメータ検出装置の第1の変形例を示す全体構成図である。
【図4】図1の神経刺激パラメータ検出装置の第2の変形例を示す全体構成図である。
【図5】図1の神経刺激パラメータ検出装置の第3の変形例を示す全体構成図である。
【図6】図1の神経刺激パラメータ検出装置の第4の変形例を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る神経刺激パラメータ検出装置について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る神経刺激パラメータ検出装置1は、図1に示されるように、神経刺激装置2に接続される装置であって、神経刺激のパラメータPを切り替えて神経刺激装置2に出力し、神経刺激装置2に神経刺激を行わせる刺激指令部3と、心臓Hの脱分極を検出する脱分極検出部(心電信号変化検出部)4と、該脱分極検出部4により検出された心臓Hの脱分極(心電信号変化)が、自発脱分極であるか否かを判定し、判定結果に応じて、パラメータPを出力するする判定部5と、該判定部5による出力されたパラメータPを表示する表示部6とを備えている。
【0017】
神経刺激装置2は、例えば、迷走神経等の心臓H近傍の神経Nに取り付けられる電極7と、設定されたパラメータPで刺激パルスを出力する刺激パルス出力部8とを備えている。パラメータPとしては、例えば、刺激パルスの電圧値、パルス幅、パルス周期およびパルス出力時間等を挙げることができる。神経刺激装置2は、設定されたパラメータPで神経Nに対して刺激パルスを出力する一方、その刺激パルスの出力タイミングTを判定部5に対して出力するようになっている。
【0018】
刺激指令部3は、該パラメータPに応じて神経Nに与えられる刺激の強度を徐々に上げるようにパラメータPを、予め定められたパラメータPから徐々に切り替えて神経刺激装置2に出力するようになっている。
また、刺激指令部3は、神経刺激装置2に出力したパラメータPを判定部5にも出力するようになっている。
【0019】
脱分極検出部4は、心臓Hの各部位(例えば、図1に示す例では右心房RAと右心室RV)に接触状態に留置されている2以上の電極9と、該2以上の電極9間に現れる電位差を心電信号として検出する信号検出部10と、該信号検出部10により検出された信号が所定の閾値を超えた場合に、その時点で心臓Hの脱分極であると判定する脱分極判定部11とを備えている。図中、符号LAは左心房、符号LVは左心室である。
【0020】
脱分極判定部11は、心臓Hの脱分極が発生したと判定した場合には、判定部5に対して、脱分極が発生した旨の信号を出力するようになっている。
判定部5は、まず、神経刺激装置2から出力されてきた各刺激パルスの出力タイミングTにおける脱分極判定部11から入力される信号の有無を判定するようになっている。そして、判定部5は、刺激パルスの出力タイミングTの時刻に脱分極判定部11から信号が入力されない場合には、その出力タイミングTの時刻に刺激指令部3から送られてきたパラメータPを更新して記憶するようになっている。
【0021】
また、判定部5は、脱分極判定部11により心臓Hの脱分極が発生した旨の信号が入力された場合には、その脱分極と判定された心臓事象の時刻と刺激パルスの出力タイミングTとを比較するようになっている。
判定部5は、刺激パルスの出力タイミングTとは異なる時刻に脱分極と判定された心臓事象が発生した場合には、その心臓事象を自発脱分極であるとして、直前の自発脱分極の時刻との差により、自発脱分極の発生時間間隔を算出して記憶するようになっている。
【0022】
自発脱分極の発生時間間隔は、一定の範囲で変動するので、それ以前に記憶されていた発生時間間隔との平均を算出して記憶されている発生時間間隔の値を更新することにしてもよい。
【0023】
さらに、判定部5は、刺激パルスの出力タイミングTと同じ時刻に、脱分極と判定された心臓事象が自発脱分極であるか否かを判定するようになっている。
具体的には、自発脱分極は記憶されているその発生時間間隔から大きく外れて発生することはないことから、脱分極であると判定された心臓事象が、その発生時間間隔から大きく外れている場合(例えば、自発脱分極の発生時間間隔に対して±20%以上ずれている場合)には、自発脱分極ではないと判定するようになっている。
【0024】
脱分極であると判定された心臓事象が、その発生時間間隔に一致して発生している場合には、判定部5は当該心臓事象が自発脱分極であると判定し、その出力タイミングTの時刻に刺激指令部3から送られてきたパラメータPを更新して記憶するようになっている。すなわち、判定部5は、刺激指令部3が直近に指令したパラメータPを記憶するようになっている。
一方、脱分極であると判定された心臓事象が、その発生時間間隔から大きく外れて発生している場合には、判定部5はその心臓事象が自発脱分極ではないと判定し、記憶していた、1つ前のパラメータPを表示部6に出力し、刺激指令部3に対して、神経刺激装置2への刺激指令を停止するように指令するようになっている。
【0025】
このように構成された本実施形態に係る神経刺激パラメータ検出装置1の作用について説明する。
本実施形態に係る神経刺激パラメータ検出装置1を用いて、神経刺激装置2に用いられるパラメータPを検出するには、脱分極検出部4に設けられた電極9を患者の体内の心臓Hの各部あるいは患者の体表に接触状態に配置するとともに、神経Nに電極7を接触させた状態で患者に取り付けられている神経刺激装置2のパラメータ入力端子2aに刺激指令部3からの信号線を接続し、神経刺激装置2の刺激タイミング出力端子2bに判定部5からの信号線を接続する。
【0026】
この状態で、本実施形態に係る神経刺激パラメータ検出装置1を作動させると、図2に示されるように、刺激指令部3から、神経刺激強度Aの刺激パルスを出力するための所定のパラメータPが神経刺激装置2および判定部5に出力される。これにより、神経刺激装置2からは、当該パラメータPに応じた神経刺激強度Aの刺激パルスが、神経刺激装置2が発生する出力タイミングT1〜T2で、神経Nに対して出力される。
【0027】
脱分極検出部4では、電極9間に現れる心電信号が信号検出部10により検出され、脱分極判定部11において、検出された心電信号に存在する心臓事象が、脱分極であるか否かが判定される。
【0028】
判定部5には、図2に示される時刻T0以前の自発脱分極の平均時間間隔(例えば、図2に示される例では1000ms)が記憶されている。
判定部5においては、神経刺激装置2から送られてくる刺激パルスの出力タイミングT1〜T2に対応する時刻に、脱分極検出部4からの入力信号が存在しないので、神経刺激の回り込みによる心臓Hへの悪影響が与えられていないものと判定して、刺激指令部3から直近に入力されたその出力タイミングT1〜T2におけるパラメータPを記憶する。
【0029】
そして、時刻T3において脱分極検出部4から脱分極が発生した旨の信号が判定部5に入力されるので、判定部5は、刺激パルスの出力タイミングT1〜T2に対応しない自発脱分極であると判定して、時刻T0〜T3までの時間間隔1020msを用いて自発脱分極の平均時間間隔を算出し、記憶されている自発脱分極の平均時間間隔を更新する。
【0030】
次に、刺激指令部3は、神経刺激強度Aより高い神経刺激強度Bの刺激パルスを出力するための所定のパラメータPを神経刺激装置2および判定部5に出力する。これにより、神経刺激装置2からは、当該パラメータPに応じた神経刺激強度Bの刺激パルスが、神経刺激装置2が発生する出力タイミングT4〜T5で、神経Nに対して出力される。
【0031】
この場合においても、出力タイミングT1〜T2の場合と同様に、判定部5において、神経刺激装置2から送られてくる刺激パルスの出力タイミングT4〜T5に対応する時刻に、脱分極検出部4からの入力信号が存在しないので、神経刺激の回り込みによる心臓Hへの悪影響が与えられていないものと判定して、刺激指令部3から直近に入力されたその出力タイミングT4〜T5におけるパラメータPを記憶する。
【0032】
そして、時刻T6において脱分極検出部4から脱分極が発生した旨の信号が判定部5に入力されるので、判定部5は、刺激パルスの出力タイミングT4〜T5に対応しない自発脱分極であると判定して、時刻T3〜T6までの時間間隔1000msを用いて自発脱分極の平均時間間隔を算出し、記憶されている自発脱分極の平均時間間隔を更新する。
【0033】
さらに、刺激指令部3は、神経刺激強度Bより高い神経刺激強度Cの刺激パルスを出力するための所定のパラメータPを神経刺激装置2および判定部5に出力する。これにより、神経刺激装置2からは、当該パラメータPに応じた神経刺激強度Cの刺激パルスが、神経刺激装置2が発生する出力タイミングT7〜T8で、神経Nに対して出力される。
【0034】
このとき、出力タイミングT7〜T8に対応する時刻に脱分極が発生している。
判定部5には、神経刺激装置2から送られてくる出力タイミングTに対応する時刻に脱分極検出部4からの脱分極が発生した旨の信号が入力されるので、判定部5は、その脱分極が自発脱分極であるか否かを判定する。
【0035】
このときの脱分極は、1つ前の自発脱分極の発生時刻から700msの時刻に発生しており、判定部5が記憶している時間間隔(1000ms前後)に対して±20%より大きく変動しているため、判定部5は、この脱分極が自発脱分極ではない(非自発脱分極である)と判定する。
【0036】
判定部5により自発脱分極ではないと判定された場合には、判定部5は、刺激指令部3から直近に入力されたその出力タイミングTにおけるパラメータPは記憶せず、最後に記憶されているパラメータPを表示部6に出力する。これにより、操作者は、心臓Hに悪影響を与えずに神経に最も強い刺激を与えることができるパラメータPを表示部6の表示によって知ることができる。
【0037】
すなわち、本実施形態に係る神経刺激パラメータ検出装置1によれば、心臓Hに悪影響を与えずに神経に最も強い刺激を与えることができるパラメータPを正確に検出することができ、検出されたパラメータPを神経刺激装置2に設定することにより、神経刺激による自発的でない脱分極が発生することを抑制することができる。従って、神経刺激が心臓事象として検出される不都合を抑制することができる。その結果、心臓Hに悪影響を与えることなく効果的に神経刺激を与えることができるという利点がある。
【0038】
なお、本実施形態においては、神経刺激の出力タイミングT7〜T8に対応する時刻に発生した脱分極が、自発脱分極の発生時間間隔に対して±20%以上ずれている場合に、自発脱分極ではないと判定することとしたが、これに代えて、以下の判定方法を採用してもよい。
まず第1に、神経刺激の出力タイミングTを自発脱分極のタイミングと完全に(例えば、±20%以上)ずらしている場合には、神経刺激の出力タイミングTに対応する時刻に脱分極が発生した場合には、常に、自発脱分極ではないと判定してもよい。
【0039】
第2に、神経刺激を行うことにより、単位時間当たりの脱分極の発生数が増えた場合に、自発脱分極ではないと判定してもよい
第3に、神経刺激パルスを複数連続して出力することにより、自発脱分極の発生時間間隔から±20%以上離れた時刻に複数回連続して脱分極が発生したか否かによって自発脱分極ではないと判定してもよい。
【0040】
第4に、自発脱分極の電位に対して大きく(例えば、±20%以上)異なる電位の脱分極が発生した場合に自発脱分極ではないと判定してもよい。
第5に、自発脱分極の心電波形とは異なる(類似度が低い)心電波形の脱分極が発生した場合に、自発脱分極ではないと判定してもよい。
【0041】
また、本実施形態においては、判定部5はその心臓事象が自発脱分極ではないと判定した場合には、刺激指令部3から判定部5に1つ前に入力されたパラメータPを表示部6に出力するとしたが、必ずしも、1つ前である必要はない。
【0042】
また、本実施形態においては、神経刺激パラメータ検出装置1は、刺激指令部3を備えることとしたが、これに代えて、図3に示すように、神経刺激装置2が、刺激指令部3を備えていることとしてもよい。
この場合、神経刺激装置2の入力端子2cおよび出力端子2dに判定部5からの信号線を接続する。そして、刺激指令部3からは、神経刺激の刺激タイミングTおよびパラメータPが判定部5に出力され、判定部5からは、判定部5による判定結果が、刺激指令部3に出力される。
【0043】
そして、判定部5により脱分極であると判定された心臓事象が、その発生時間間隔に一致して発生している場合には、判定部5は当該心臓事象が自発脱分極であると判定し、その出力タイミングTの時刻に刺激指令部3から送られてきたパラメータPを更新して記憶するようになっている。
一方、脱分極であると判定された心臓事象が、その発生時間間隔から大きく外れて発生している場合には、判定部5はその心臓事象が自発脱分極ではないと判定し、記憶していた、1つ前のパラメータPを表示部6に出力し、刺激指令部3に対して、神経刺激装置2への刺激指令を停止するように指令するようになっている。
【0044】
また、本実施形態においては、神経刺激装置2とは別体として、神経刺激装置2に接続される神経刺激パラメータ検出装置1について説明したが、これに代えて、図4に示されるように、神経刺激パラメータ検出機能を備えた神経刺激装置20を採用してもよい。
すなわち、この神経刺激装置20は、迷走神経等の心臓H近傍の神経Nに取り付けられる電極21と、設定されたパラメータPで刺激パルスを出力する刺激パルス出力部22とからなる神経刺激出力部23に加えて、上述した神経刺激パラメータ検出装置1の各構成要素を一体的に備えている。
【0045】
この神経刺激装置20によれば、上述した神経刺激パラメータ検出装置1と同様に、心臓Hに悪影響を与えることなく迷走神経等の神経Nを刺激することができるパラメータPを設定して、効果的に神経刺激を行うことができるという利点がある。
【0046】
また、図5に示されるように、神経刺激パラメータ検出装置1と神経刺激装置2とを別体として神経刺激パラメータ検出装置1および神経刺激装置2の両方に、相互に通信可能な通信部25,26を設け、パラメータPや刺激タイミングT等の信号のやりとりを通信部25を介して行うことにしてもよい。
【0047】
また、神経刺激パラメータ検出装置1と神経刺激装置2とが、直接的に通信を行うことに代えて、図6に示されるように、体外に配置したプログラマ装置27を介して通信することにしてもよい。この場合、判定部5は、パラメータPをプログラマ装置27に出力することができる。従って、プログラム装置27が、表示部を備えていれば、プログラム装置27は、パラメータPを表示することができるため、神経刺激パラメータ検出装置1は、表示部6を備えていなくてもよい。
【0048】
また、本実施形態においては、心電信号が所定の閾値を超えた場合に、脱分極であると判定したが、実際には脱分極は発生していないが、信号検出部10に閾値より大きな心電信号が検出される場合もある。本実施形態によれば、心電信号を変化させる神経刺激よりも低い神経刺激を与えるパラメータを検出または設定でき、心臓Hまたは心臓事象の検出に悪影響を与えることなく効果的に神経刺激を与えることができるという利点がある。
【0049】
また、本実施形態においては、神経刺激パラメータ検出装置1は、表示部6を備えることとしたが、これに代えて、表示部6が、神経刺激パラメータ検出装置1と別体であってもよい。
【0050】
また、本実施形態においては、神経刺激パラメータ検出装置1は、表示部6を備えることとしたが、これに代えて、音声出力部を備えていてもよい。この場合、脱分極であると判定された心臓事象が、その発生時間間隔から大きく外れて発生している場合には、判定部5はその心臓事象が自発脱分極ではないと判定し、記憶していた、1つ前のパラメータPを音声出力部に出力し、音声出力部は、パラメータPを示す音声を出力してもよい。このように、表示部6は、パラメータPを操作者に知らせる機能を奏すればよい。したがって、表示部6は、パラメータPを出力するパラメータ出力部であれば、他の態様であってもよい。この場合も、上述と同様に、音声出力部が、神経刺激パラメータ検出装置1と別体であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
H 心臓
P パラメータ
1 神経刺激パラメータ検出装置
2,20 神経刺激装置
3 刺激指令部
4 脱分極検出部(心電信号変化検出部)
5 判定部
8,22 刺激パルス出力部(刺激信号出力部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電信号の変化を検出する心電信号変化検出部と、
パラメータを切り替えて神経刺激装置に神経刺激を行わせる刺激指令部に接続され、前記心電信号変化検出部により検出された心電信号の変化が、自発脱分極であるか否かを判定する判定部とを備え、
該判定部が、自発脱分極以外の心電信号の変化であると判定した場合に、前記刺激指令部が直近に指令したパラメータによる神経刺激より低い強度の神経刺激を与えるパラメータを出力する神経刺激パラメータ検出装置。
【請求項2】
神経刺激装置に接続され、パラメータを切り替えて神経刺激を行わせる刺激指令部と、
心電信号の変化を検出する心電信号変化検出部と、
前記刺激指令部に接続され、該心電信号変化検出部により検出された心電信号の変化が、自発脱分極であるか否かを判定する判定部とを備え、
前記判定部が、自発脱分極以外の心電信号の変化であると判定した場合に、前記刺激指令部が直近に指令したパラメータによる神経刺激より低い強度の神経刺激を与えるパラメータを出力する神経刺激パラメータ検出装置。
【請求項3】
前記刺激指令部が、神経刺激の強度を漸次増大させるようにパラメータを切り替えて前記神経刺激装置に指令し、
前記判定部は、自発脱分極以外の心電信号の変化であると判定した場合に、前記刺激指令部が直近に指令したパラメータの1つ前に前記刺激指令部が指令したパラメータを出力する請求項2に記載の神経刺激パラメータ検出装置。
【請求項4】
前記刺激指令部が、前記判定部により自発脱分極以外の心電信号の変化であると判定された場合に、当該パラメータによる神経刺激より低い強度の神経刺激を与えるパラメータを最大刺激パラメータとして、前記神経刺激信号を出力する刺激信号出力部に設定する請求項2または請求項3に記載の神経刺激パラメータ検出装置。
【請求項5】
設定されたパラメータに従って神経刺激信号を出力する刺激信号出力部と、
前記パラメータを切り替えて前記刺激信号出力部から神経刺激を行わせる刺激指令部と、
心電信号の変化を検出する心電信号変化検出部と、
前記刺激指令部に接続され、該心電信号変化検出部により検出された心電信号の変化が、自発脱分極であるか否かを判定する判定部とを備え、
前記刺激指令部が、前記判定部により自発脱分極以外の心電信号の変化であると判定された場合に、当該パラメータによる神経刺激より低い強度の神経刺激を与えるパラメータを最大刺激パラメータとして刺激信号出力部に設定する神経刺激装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−65710(P2012−65710A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210886(P2010−210886)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】