説明

神経変性疾患におけるタンパク質凝集に関する材料および方法

【課題】安定した細胞系において、前駆体タンパク質が病理学的に凝集する(例えばタウオパチー)病態に伴う前駆体タンパク質(例えばタウ)を産生物フラグメント(例えば12kDフラグメント)にタンパク質分解的に変換する方法の提供。
【解決手段】以下の方法。(a)(i)鋳型フラグメントが細胞に対して有毒でないレベルで細胞において構成的に発現されるような前駆体タンパク質の鋳型フラグメント;および(ii)刺激に応答してタンパク質が細胞において誘導的に発現される前駆体タンパク質;をコードする核酸でトランスフェクトされた安定した細胞系を提供することを含み、それにより鋳型フラグメントと前駆体タンパク質との相互作用が、前駆体タンパク質における立体配座変化を引き起こし、前駆体タンパク質の産生物フラグメントへの凝集およびタンパク質分解性プロセシングを引き起こす方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞ベースのモデルおよび神経変性疾患に伴うタンパク質の凝集をモデル化するその他の試験系に関する。更に本発明は、かかる凝集を調整できる化合物に関する。
【0002】
痴呆、例えばアルツハイマー病(AD)の状態は、患う患者の脳におけるタンパク質様構造、例えばβ−アミロイドプラークおよび神経原繊維濃縮体の細胞内および/または細胞外沈着の蓄積の進行をしばしば特徴とする。これらの損傷の外観は、主に病理学的神経原繊維変性および脳萎縮症並びに認識障害に相関する(Mukaetova−Ladinska,E.B.ら、Am.J.Pathol.157(2):623〜636(2000)。
【0003】
神経炎プラークおよび神経原繊維濃縮体の双方は、ペアードヘリカルフィラメント(PHF)を含有し、その主要な構成要素は、微小管関連タンパク質タウである(Wischikら、PNAS USA85;4506(1988))。プラークは、またアミロイド前駆体タンパク質のプロセシング異常から誘導される細胞外β−アミロイド筋原繊維をも含有する(APP;Kangら、Nature 325:733(1987))。Wischikらの論文(「Neurobiology of Alzheimer’s Disease」第2版(2000年)、Dawbarn,D.およびAllen,S.J.編、分子および細胞神経生物学シリーズ、バイオス・サイエンティフィック・パブリッシャーズ、オックスフォード)では、神経変性痴呆の病因におけるタウタンパク質の推定される役割が詳細に論じられている。
【0004】
アルツハイマー病の研究によりタウの正常の形態の喪失(Mukaetova−Ladinskaら、Am.J.Pathol.143:565(1993);Wischikら、Neurobiol.Ageing 16:409(1995a));Laiら、Neurobiol.Ageing 16:433(1995b))、病理学的なPHFの蓄積(Mukaetova−Ladinskaら、前出(1993);Harringtonら、Dementia 5:215(1994a);Harringtonら、Am.J.Pathol.145:1472(1994b);Wischikら、前出(1995a))および中前頭皮質のシナプス喪失(Terryら、Ann.Neurol.30:572(1991))が、随伴認識障害と相関することが示されている。更に、シナプスの喪失(Terryら、前出)および錐体細胞の喪失(Bondareffら、Arch.Gen.Psychiatry 50:350(1993))の双方は、タウ反応性神経原繊維病理の形態測定に相関し、これは、分子レベルではアルツハイマー病におけるタウタンパク質プールの可溶性形態から重合形態(PHF)にほとんどすべてが再配分されることと並行している(Mukaetova−Ladinskaら、前出(1993);Laiら、前出(1995))。
【0005】
タウは、選択的スプライシングアイソフォームに存在し、これは、微小管結合ドメインに対応する反復配列の三つまたは四つのコピーを含有する(Gordert,M.ら、EMBO J.8:393〜399(1989);Goedert,Mら、Neuron 3:519〜526(1989))。PHFのタウは、タンパク質分解的にプロセシングされて反復ドメインの位相変化したものから構成されるコアドメインになり(Wischik,C.M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:4884〜4888(1988);Wischik,ら、PNAS USA 85:4506〜4510(1988);Novac,M.ら、EMBO J.12:365〜370(1993));三つの反復のみが安定したタウ−タウ相互作用に関係する(Jakes,R.ら、EMBO J.10:2725〜2729(1991))。一度形成されると、PHF様タウ凝集物は、さらなる捕捉の種として作用し、全長タウタンパク質のタンパク質分解性プロセシングの鋳型を提供する。(Wischikら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:11213〜11218(1996))。
【0006】
ペアードヘリカルフィラメント(PHF)は、その形成および蓄積中に最初に細胞質内で集合し、おそらく、PHF集合の前または集合中に断端されるようになる初期のタウオリゴマーから無晶形凝集物を形成する(Mena,R.ら、Acta Neuropathol.89:50〜56(1996);(Mena,R.ら、Acta Neuropathol.91:633〜641(1996))。次いでこれらのフィラメントは、典型的な細胞内神経原繊維濃縮体を形成し続ける。この状態では、PHFは、断端されたタウのコアおよび全長タウを含有する微毛性外被から成る。(Wischik,C.M.ら、前出(1996))。集合過程は、指数関数的であり、正常な機能のタウの細胞性プールを消費し、そして欠損を補うために新規タウの合成を誘起する。(Lai,R.Y.K.ら、Neurobiology of Ageing 16(3):433〜445(1995))。実際に、ニューロンの作動可能障害は、細胞外濃縮体を残して、細胞死に至るまで発達する。細胞死は、細胞外濃縮体の数と高度に相関する(Wischikら、前出(2000))。濃縮体は、細胞外空間まで押し出されるので、対応するN−末端タウ免疫反応性の損失を伴うニューロンの微毛性外被の進行性の損失があるが、タウ免疫反応性の保存は、PHFコアに伴う(図1;Bondareff,W.ら、J.Neuropath.Exper.Neurol.53(2):158〜164(1994))。
【0007】
PHFに組み込まれたタウの反復ドメインにおいて認められた位相変化は、反復ドメインが、フィラメントへの組み込みの間に誘起される立体配座変化を被ることを示唆している。アルツハイマー病の発症の間に、この立体配座変化が、病理学的基質、例えば損傷を受けたか、または突然変異した膜タンパク質へのタウの結合により開始され得ることが認識されている。(図2−またWischik,C.M.ら、Microtubule−associated proteins:modifications in disease、Avila,J.、Brandt,R.およびKosik,K.S.編(ハーウッド・アカデミック・パブリッシャーズ、アムステルダム)185〜241頁)をも参照)。
【0008】
アルツハイマー病の場合、現在の医薬的治療は、神経変性の結果であるコリン作動性伝達の喪失の症状の処置に焦点が置かれている(Mayeux,R.ら、New Eng.J.Med.341:1670〜1679(1999))。しかしながら、利用可能な処置は、疾患の進行を最大6〜8カ月遅らせるが、それを防御することはない。神経変性に至るタウの凝集を防御する薬物の発見により、凝集を開始する多様な上流の事象の即座な知識を必要としない、予防または疾患の進行の阻害のための更に効果的な計画が提供されるであろう(図3参照)。
【0009】
モデルおよびアッセイ
WO96/30766は、固相基質に吸収されているコア反復ドメインに対応するタウフラグメントが可溶性全長タウを捕捉し、高親和性でタウと結合できる、タウ凝集に関するインビトロアッセイについて記載している(図4参照)。この結合は、凝集したタウ分子の反復ドメインにおけるタンパク質分解性消化に対する安定性を付与する。過程は、自己伝播性であり、典型的な医薬品により選択的に遮断され得る(Wischikら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:11213〜11218(1996))。
【0010】
WO96/30766に記載されたインビトロアッセイによりタウ−タウ結合のインヒビターまたはモジュレーターの同定が可能になるが、本発明は、アルツハイマー病様タンパク質凝集の細胞ベースのモデルが有用であるとも認識している。かかる細胞性モデルを、タウ−タウ凝集のモジュレーター候補物質の1次スクリーニング、およびWO96/30766のインビトロアッセイにおいて既に同定された化合物の2次スクリーニングの双方において用いることができる。更に、細胞におけるタウ凝集の実証により、病理学的なタウ凝集の開始に関与する正常な細胞基質の同定も助けられ、その基質は、それ自体医薬的介入の標的になり得る。
【0011】
しかしながら、多くの文献により、組織培養モデルにおける種々のタウ構築物の発現は、凝集の実証に失敗したと報告されている(例えばBaum,L.ら、Mol.Brain Res.34:1〜17(1995))。例えば、3T3マウス繊維芽細胞は、タウタンパク質を有さず、したがって組換えタウが、内因性マウスタウとは独立して発現され得る細胞環境を提示する。種々細胞系のトランスフェクションが、以前に報告されている(Kanaiら(1989);GoedertおよびJakes(1990);Knopsら(1991);LeeおよびRook(1992);Galloら(1992);Loら(1993);Montejo de Garciniら(1994);Fasuloら(1996))。しかしながら、かかる細胞系の断端されたタウの安定した長期間の発現は、達成されなかった。例えば、164または173〜338または352までの残基のためのタウ構築物は、タンパク質を発現しなかった(LeeおよびRook(1992))。
【0012】
Fasuloら(Alzheimer’s Research 2:195〜200(1996))は、COS細胞における断端されたタウの一過性の発現について報告したが、このタウの安定した長期間の発現に関するデータは、示されていなかった。これらの研究者は、一過性のトランスフェクション系の使用から、断端されたタウ単独の発現が薬物を試験するのに適した様式でタウ凝集を誘起するのに十分ではなかった、と結論づけた。
【0013】
これまでのところ、インビトロでの可溶性タウの凝集は、非生理学的条件下で、および高濃度で達成されただけである。(Wischik、前出(2000)を再考されたい)
WO96/30766は、また細胞環境におけるタウ凝集を研究するための二つの研究法をも記載している。第1の研究法では、全長タウまたはタウのフラグメントが、細胞において安定して発現された。第2の研究法では、リポフェクチンの使用により凝集したタウが一過的に細胞にトランスフェクトされた。
【0014】
これらの研究法は、共にタウ−タウ凝集の研究に関して有用であるが、これらには、ある限界がある。リポフェクションを用いる、凝集したタウの細胞へのトランスフェクションは、凝集したタウそのもののインビトロ産生と同様に効率が変化しやすい。更に、タウ凝集のための最も有効な種であるコアタウフラグメントは、細胞において安定して発現される場合、有毒であることが見出され、低レベル発現に導かれる。このように、真核細胞におけるPHFコアの断端されたタウフラグメントの構成的発現は、達成するのが困難である。一過性発現系によりタウ発現の最適化が可能になるが、フラグメントの固有の有毒によりこれらの系が信頼性のないものになっている。タウのより長いフラグメントは有毒が低いが、これらは、細胞において発現される場合に凝集が不確実である。
【0015】
したがって、例えばタウ分子等の間の相互作用が、安定した、そして制御可能な細胞系において生理学的条件下で調査され得る、そしてアルツハイマー病のごとき症状の可能性のある診断、予後または治療用物質に関するスクリーニングに用いることができる代替のモデル系が開発されるのが望ましい。
【0016】
発明の開示
本発明者らは、その凝集が、神経変性疾患に伴うタンパク質の鋳型発動タンパク質分解性プロセシングをモデル化するために用いることができる安定した細胞試験系を考案した。タウタンパク質を実例に挙げた一つの試験系では、タウタンパク質のフラグメントの非常に低レベルの構成的発現を全長タウの誘導発現と組み合わせた。全長タウの誘導により、タンパク質分解性変換が導かれ、プロセシングされたフラグメントに至り、これによりタウの「鋳型によるタンパク質分解性プロセシング」が生じたことが確認される。誘導された全長タウからプロセシングされた12kDのフラグメントの産生の阻害によるタウ凝集インヒビターの影響の実証が、系により容易に可能になる。
【0017】
12kDフラグメントの固有の毒性特性にかかわらず、かかる安定した系が達成され得るということは特に驚くべきことである。例えば、以下の実施例で実証されるように、全長タウのN−末端またはC−末端のいずれかでの部分的なトランケーションが結果的に安定した発現が維持される細胞系をもたらし、これらのより長い構築物は、微小管ネットワークへの結合よりもむしろ凝集に対する弱い性向のみを示す。タウフラグメントの組み合わせの安定した発現は、細胞の細胞質内で凝集を生じるが、この系は、再現性を維持することはできない。12kDフラグメントの誘導発現に基づく系は、フラグメントの予測できない細胞内凝集の結果として有毒をもたらす。
【0018】
したがって、生存可能又は生存不能のいずれかである細胞系を産生する、凝集を誘導することそして一方では毒性と、タウが低い凝集に対する性向を有する生存可能細胞を維持することとの間には、二律背反があると思われる。これにもかかわらず、本発明の誘導タウ発現系は、安定で、そしてしかもスクリーニング等で用いるための制御されたタンパク質の凝集を提供できる。
【0019】
加えて、アッセイの使用によりタンパク質凝集の特定のインヒビター(例えばフェノチアジン)の作用メカニズムは、先行技術に基づいて推測されていたように、実質的な酸化還元よりもむしろ主に自然状態での立体構造であるという証拠が提供されている。この発見は、本明細書で論じられる疾患という面で、かかる化合物の使用の選択、評価、処方および使用に関する予期しなかった含蓄を有している。拡散係数を測定することにより生得的固有に評価されたパラメーターは、インヒビターの可能性に高度に相関し得るので、とりわけ、拡散係数の評価により推定されるインヒビターを同定するか、または公知のインヒビターの構造または状態を最適化するための有用なスクリーニングが提供され得る。
【0020】
更に還元形態のフェノチアジンの使用は、その阻害特性を増強するのに有利であることがアッセイにより示される。これらの観察は、本発明のさらなる側面の基礎を成すものである。
【0021】
概して本発明は、安定した細胞系でタンパク質分解性プロセシングを介して前駆体タンパク質を前駆体タンパク質のフラグメント産生物に変換するための方法を提供し、該方法は、(a)(i)鋳型フラグメントが、細胞に対して有毒でないレベルで細胞において構成的に発現されるような前駆体タンパク質の鋳型フラグメント;および(ii)刺激に応答して細胞においてタンパク質の発現が誘導される前駆体タンパク質をコードする核酸でトランスフェクトされた安定した細胞系を提供することの工程を含み、それにより鋳型フラグメントと前駆体タンパク質との相互作用が、前駆体タンパク質において、例えば凝集および前駆体タンパク質のフラグメント産生物へのタンパク質分解性プロセシングを引き起こすような立体配座変化を引き起こす。
【0022】
この方法は、前駆体タンパク質が細胞内で発現されるように、細胞を刺激物質に供することを含んでよい。しかしながら刺激の不在下でさえ、低レベルであるが検出可能なレベルの発現が引き起こされる誘導プロモーターを用いる態様では、次の刺激工程を排除できる。
【0023】
概して、前駆体タンパク質は、インビボで立体配座の重合化相互作用(自己伝播様式で)を被ることができるものであり、最終的には、産生物フラグメントを含み、そして病態に伴う凝集物の形成に至る。本明細書で提供される方法で得られる産生物フラグメントは、病理学的凝集および、インビボで一つまたはそれ以上の有毒産生物の産生および病態に至るタンパク質分解産生物プロセシングの測定である。本発明の方法の産生物フラグメント(または一つ以上のフラグメント)は、有毒でよいか、または単純に病理学的な凝集過程の指標として用いることができる。
【0024】
この方法が根拠とするタンパク質および相互作用について以下でより詳細に論じる。
本発明者らは、細胞系に対して有毒でない、すなわち細胞系が、生存可能である(第1の)濃度で鋳型フラグメントを構成的に発現することは、思いがけずに可能であることを実証した。例えば、WO96/30766の図29で示される種類の細胞異常をも示さない。
【0025】
それにもかかわらず(例えば規定の時間での刺激の添加により)、細胞に対して有毒であり、病態に対応する(第2の、より高度な)濃度まで、このように蓄積できる産生物フラグメント(これは鋳型フラグメントと同一、広義には等価、または全く異なる)まで前駆体タンパク質をプロセシングする種をまくことができる。今度は、これにより産生物フラグメントの影響に伴う病態をモデル化し、そして産生物フラグメントの作製に及ぼすモジュレーターの影響を評価するための便利な方法が提供される。
【0026】
種々のその他の別個の態様では、本発明により前駆体タンパク質のタンパク質分解性プロセシングおよび場合によっては前駆体タンパク質の産生物フラグメントへの凝集の開始、種まき、または制御のいずれかのための対応する方法が提供される。
各々の場合、方法は、前駆体タンパク質のタンパク質分解性プロセシングのレベルを(直接的または間接的に)モニターすることを含んでよい。
【0027】
本発明の一つの態様では、繊維芽細胞(3T6)は、誘導プロモーターの制御下で全長タウ(「T40」)および構成レベルの低いPHFコアタウフラグメント(12kDフラグメント)を発現する。T40発現が、この系で誘導される場合、これは、細胞内でN−末端ではアミノ酸295〜およびC−末端ではアミノ酸390〜で凝集依存的トランケーションを受け、それにより、高レベルの12kD PHFコアドメインフラグメントが産生される。12kDフラグメントの産生は、タウ凝集インヒビターにより容量依存的な様式で遮断され得る。実際に、細胞内における12kDフラグメントのタンパク質分解的産生に関する化合物の阻害活性の定量化を、インビトロでタウ−タウ結合性の阻害を記載する同一のパラメーターという形で完全に記載することができる。すなわち、細胞内での12kDフラグメントのタンパク質分解的産生の程度は、反復ドメインによるタウ−タウ結合の程度により完全に決定される。細胞内の関連するプロテアーゼの有用性は無制限である。
【0028】
前駆体タンパク質および疾患(タウオパチーを含む)
前記したように、本発明は、タンパク質が誘導された立体配座重合相互作用を受ける、すなわちタンパク質またはそのフラグメントにおける立体配座変化が、自己伝播の様式で別の(前駆体)タンパク質分子の鋳型結合および凝集を生じる疾患に伴ういずれかのタンパク質の使用周辺を根拠としてもよい。
一度核形成が開始されると、立体配座変化が凝集物に、別のタンパク質分解に対するさらなる抵抗性を与え得る、別のタンパク質分子の立体配座重合の誘起に関与する凝集カスケードが続いて起こり、さらなるタンパク質分解に対して実質的に抵抗する凝集物における有毒産生物フラグメントの形成に至る。このように形成されたタンパク質凝集物は、神経変性、臨床痴呆およびこの群の疾患のその他の病理学的症状の最も近い原因であると考えられる。
【0029】
本発明の好ましい態様では、本発明は、タウタンパク質に基づく。本明細書で用いる「タウタンパク質」なる用語は、一般にタウタンパク質ファミリーのいずれかのタンパク質を意味する。タウタンパク質は、集合および分解の反復サイクル中に微小管と同時精製される多くのタンパク質ファミリーのなかの一つとして特徴付けられ(Shelanskiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 70:765〜768(1973))、微小管関連タンパク質(MAP)として公知である。タウファミリーのメンバーは、特徴的なN−末端セグメント、脳において発達中に制御されるN−末端セグメントに挿入されたおよそ50個のアミノ酸の配列、31〜32個のアミノ酸の3または4タンデム反復から成る特徴的なタンデム反復領域、およびC−末端テールを共有する。
【0030】
MAP2は、細胞体樹状突起区画における主要な微小管関連タンパク質である(Matus,A.、「Microtubules」(HyamsおよびLloyd編)155〜166頁、ジョン・ウィレイ・アンド・サンズ、ニューヨーク)。MAP2アイソフォームは、タンデム反復領域ではタウタンパク質とほとんど同一であるが、N−末端ドメインの配列および範囲で、双方は、実質的に異なる(KindlerおよびGarner、Mol.Brain Res.26:218〜224(1994))。それにもかかわらず、タンデム反復領域における凝集は、タウ反応ドメインに選択的ではない。したがって本明細書におけるタウタンパク質またはタウ−タウ凝集に関連するいずれかの論考は、タウ−MAP2凝集およびMAP2−MAP2凝集等にも関連すると考えるべきであることは理解されよう。
【0031】
図5は、本発明で用いることができる種々のその他の疾患随伴凝集タンパク質を列挙する表を示す。各々の場合で、(複数の)タンパク質の凝集および/または突然変異の開始が、役割を果たし得る疾患または複数の疾患もまた列挙される。疾患の活性の原因となるドメインまたは突然変異が列挙され、そして好ましくは、少なくともタンパク質のこの最小部分のすべてまたは一部が、本発明において用いられる鋳型フラグメントに含まれる。
表から見られるように、病理学的タンパク質凝集により特徴づけられる疾患の実例には運動ニューロン疾患およびレビ小体疾患が含まれる。
【0032】
タウタンパク質(およびその機能またはプロセシング異常)が役割を果たし得るのはアルツハイマー病のみではないことは注目される。ニューロン変性性障害、例えばピック病および進行性核上性麻痺(PSP)の病因は、各々新皮質の歯状回および星状錐体細胞における病理学的に断端されたタウ凝集物の蓄積に相関するようである。その他の痴呆症には前頭側頭性痴呆(FTD);染色体17に関連したパーキンソン症候群(FTDP−17);脱抑制パーキンソン痴呆筋萎縮症候群(DDPAC);淡蒼球・橋・黒質変性(PPND);グアム−ALS症候群;淡蒼球・黒質・ルイジアン変性(PNLD);皮質基底変性(CBD)およびその他のものなどがある(Wischikら、前出(2000)、詳細な論議に関してはとりわけ表5.1参照)。これらの疾患は、すべてタウ凝集異常により主にまたは部分的に特徴づけられ、本明細書では「タウオパチー」と称する。
【0033】
したがって、タウタンパク質またはタウ様タンパク質(例えばMAP2)に関して本発明の態様が記載される前記の論考を鑑みて(そしてそれ以外を要求する状況は除く)、記載は、前記で論じた別のタンパク質(例えばβアミロイド、シヌクレイン、プリオン等)または凝集の伝播に必須であるドメインにおける立体配座変化により類似の病理学的凝集が開始または行われ得る、またはこの形成された凝集物にタンパク質分解安定性を与えるその他のタンパク質に同等に適用されると考えるべきであると理解されよう(Wischikら、による文献(「Neurobiology of Arzheimer’s Disease」第2版(2000)、Dawbarn,D.およびAllen,S.J.編、分子および細胞神経生物学シリーズ、バイオス・サイエンティフィック・パブリッシャーズ、オックスフォード))。すべてのかかるタンパク質を本明細書では「凝集疾患タンパク質」と称し得る。
【0034】
本明細書で「タウ−タウ凝集」等の記載を行ったのと同様に、これはまた別の「凝集タンパク質凝集」、例えばβアミロイド凝集、プリオン凝集およびシヌクレイン等にも適用できると考えられる。「タウタンパク質分解性分解」等も同様である。
【0035】
鋳型フラグメント
本発明の好ましい態様では、鋳型フラグメントが前駆体タンパク質の「コアフラグメント」を含む、実質的に「コアフラグメント」からなるか、または「コアフラグメント」からなり、この用語は、前駆体タンパク質に結合して前記したタンパク質分解および凝集を開始または伝播できるタンパク質のその部分を意味する。
凝集する疾患タンパク質の場合、かかるコアフラグメントは、また凝集のタンパク質分解安定性に寄与するものである可能性がある。
【0036】
したがって、例えば「タウコアフラグメント」は、タンデム反復領域から誘導される断端されたタウタンパク質配列を含むタウフラグメントであり、これは適当な条件下で、別のタウタンパク質またはMAP2タンパク質のタンデム反復領域に高い親和性で結合できる。したがってタウの場合、好ましいフラグメントは、実例を挙げると、非限定例としてはアルツハイマー病の脳のPHF(および、究極的には神経原繊維濃縮体)に存在するタウフラグメントがある。
【0037】
したがって好ましいタウフラグメントは、約(およそ)295〜297から約390〜391に伸びてよいが(図6の「dGAE」参照)、以下で論じるように、かかるフラグメントの変種をもまた用いることができる。
APP(アミロイド前駆体タンパク質)の場合、例えば融合タンパク質として1〜40または1〜42アミノ酸のAβドメインを含むAPPのフラグメントの発現が好ましい。
【0038】
その他のコアフラグメントは、例えば図5に関して論じられたドメインに基づいてよい。鋳型フラグメントは、これらのタンパク質の二つまたは二つ以上(例えば融合体として)からのドメインを含んでよい。
鋳型フラグメントの全長は、アッセイおよび用いられている凝集疾患タンパク質コアフラグメントに適しているいずれの長さでもよいが、一般に、約20、30、40、50、60、70、80、90個などのアミノ酸の長さ以上である。しかしながら、望ましい場合、100、200または更には500個以上でもよい態様もある。
【0039】
誘導体
指定したタンパク質(例えば前駆体タンパク質、鋳型またはコアフラグメント)または列挙した核酸配列について論じる本明細書の全例において、対応する参照タンパク質(または核酸)の誘導体またはその他の変種が、参照配列の適当な特性を保持する場合、必要に応じてそれを用いてよい。かかる誘導体は、また参照配列と配列同一性を共有する。
例えば用いたタンパク質には、N−またはC−末端伸長が含まれ、その伸長は、タンパク質配列に対して異種性でよい。同様に、誘導体は、参照配列のアミノ酸挿入、欠失または付加の方法によるものである。例えば、タウタンパク質またはタウコアフラグメント、誘導体は、少なくともタウタンパク質のタンデム反復領域に類似する部分アミノ酸配列を含むが、天然のタウもしくはそのフラグメントの一つ以上のアミノ酸が置換されているか、もしくは削除されているか、または別のアミノ酸が挿入されている。
【0040】
結合活性を増強するか、または除去するために、かかる変化を行うことができる(後者の場合は対照実験に有用である)。対照は、配列またはドメインの欠失を含有し、これらが有する凝集に及ぼす影響を調べることができる。
好ましい誘導体は、病態に伴うことが解っているか、または推測されるものに対応する突然変異を組み込むものでよい。これらは、タウ配列内のP301Sに対応する変化を含有できる(図7参照)。別の突然変異には、G272V、G389R、P301L、N279K、S305N、V337M、G272V、K280Δ、R406W(Wischikら、前出(2000)をも参照)などがある。
【0041】
別の好ましい誘導体には、前記で論じたコアフラグメントのタンデム反復、またはこれらのフラグメント内の結合ドメインなどがある。
更に別の誘導体は、配列が混合されているか、または組み合わされている複数の関連する疾患タンパク質に基づくキメラ産生物に基づくことができる。例えばタウの制限酵素フラグメントは、MAP2のフラグメントまたは関連性のない遺伝子のフラグメントとでさえライゲートして組換え誘導体を作製することができる。コアフラグメントを修飾するための代替の試験計画は、Hoら、Gene 77:51〜59(1989)に記載されるようなPCR、またはDNA混ぜ合わせ(Crameriら、Nature 391(1998))を用いる。
【0042】
核酸構築物の使用
本発明の核酸、または本発明で使用するための核酸は、実質的に純粋もしくは均質な形態で、または元来の種の別の核酸を含まずに、もしくは実質的に含まずに、その天然の環境から単離および/または精製された形態で提供され得る。本明細書で用いる場合、「単離された」なる用語は、これらの可能性をすべて含む。例えば鋳型フラグメントをコードする核酸は、それが天然で一緒に見出されない(隣接して作動しない)が、人工的にライゲートされているかそうでなければ組み合わされている核酸配列を含むという点で、少なくとも部分的に合成性である。
【0043】
本発明による核酸は、cDNA、RNA、ゲノムDNAおよび修飾された核酸または核酸アナログの形態であるか、またはそこから誘導され得る。DNA配列が、例えば図を参照して指定されている場合、側面がそれ以外を要求するのでなければ、そこでTがUに置換されているRNA等価物は含まれる。
【0044】
前記したように、核酸は、問題の参照配列と相同性を共有する誘導体またはその他の変種をコードできる。好ましくは、問題の核酸および/またはアミノ酸配列は、変種が基づく配列の約50%、または60%、または70%、または80%、最も好ましくは少なくとも約90%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を共有する。類似性または相同性は、技術分野で標準使用であるAltschulら、J.Mol.Biol.215:403〜410(1990)のTBLASTNプログラム、または、そしてこれが好ましいのであるが、デフォルト・パラメーターを用いる標準的なプログラムBestFit(ウィスコンシン・パッケージ、バージョン8、1994年11月(ジェネティクス・コンピューター・グループ、575 サイエンス・ドライブ、マジソン、ウィスコンシン、米国、ウィスコンシン53711)の一部である)により定義および決定できる。特定の配列相同性の核酸分子間のハイブリダイゼーションを達成するのに必要なストリンジェンシー条件を計算するための一般式は:T=81.5℃+16.6Log[Na]+0.41(% G+C)−0.63(%ホルムアミド)−600/二重鎖の#bp。
【0045】
本明細書に含まれる情報および参照並びに技術分野で公知の技術(例えばSambrook、FritschおよびManiatis、「Molecular Cloning、A Laboratory Manual」(1989)、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス、並びにAusubelら、Short Protocols in Molecular Biology(1992)、ジョン・ウェレイ・アンド・サンズ、参照)を用いて技術者は、適当なタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸配列を容易に調製できる。これらの技術には、(i)関連する核酸、例えばゲノム供給源からのサンプルを増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用、(ii)化学的合成、または(iii)cDNA配列の調製などがある。
【0046】
例えばタウコアフラグメントをコードするDNAを作製でき、これを、コード化DNAを取ること、発現されるべき部分のいずれかの側の適当な制限酵素認識部位を同定すること、およびこのDNAから上記部分を切り取ることによることを含む、当業者に公知のいずれかの適当な方法に用いることができる。タンパク質(例えばタウ)コード化配列への修飾を、例えば特定部位突然変異誘発を用いて作製することができる。
【0047】
構築物
したがって、別の側面では、本発明はまた適当な前駆体および鋳型フラグメントタンパク質をコードする核酸分子にも関する。以下で論じるように、これらは、同一のまたは異なる構築物に存在してよく、そして後者の場合、組成物は、二つまたは二つ以上の型の構築物を含む組成物もまた提供される。
【0048】
ベクターが一つまたはそれ以上の選択された宿主細胞において複製されることを可能にする核酸配列は、種々の細菌、酵母およびウイルスに関して公知である。例えば、種々のウイルス起源(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSVまたはBPV)は、哺乳動物細胞におけるクローニングベクターとして有用である。本明細書で記載する核酸を含む発現ベクター、例えば細胞により取り込まれ得るプラスミド、コスミド、ウイルス粒子、ファージ、またはいずれかその他の適当なベクターもしくは構築物の形態でよく、そしてこれを適当に発現させる。
【0049】
発現ベクターは、mRNA合成を指向するように、通常目的のタンパク質コード化核酸配列に作動可能に連結されるプロモーターを含有する。種々の可能性のある宿主細胞により認識されるプロモーターは、公知である。「作動可能に連結された」とは、同一の核酸分子の一部として結合され、適当に配置され、そして転写が、プロモーターから開始されるように指向されていることを意味する。プロモーターに作動可能に連結されたDNAは、プロモーターの「転写制御下」にある。哺乳動物宿主細胞におけるベクターからの転写は、ウイルス、例えばポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例えばアデノウイルス2)、ウシ乳頭腫ウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよびシミアンウイルス40(SV40)のゲノムから、異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーターまたは免疫グロブリンプロモーターから、および熱ショックプロモーターから得られるプロモーターにより、かかるプロモーターが宿主細胞に適合する場合に制御される。真核宿主細胞(酵母、菌類、昆虫、植物、動物、ヒト、またはその他の多細胞生物からの有核細胞)において用いられる発現ベクターは、転写の終止およびmRNAの安定化に必要な配列をも含有する。
【0050】
鋳型フラグメントに用いるプロモーターは、「構成性」である。このプロモーターは、十分弱く、その凝集およびタンパク質分解性プロセシングに至る前駆体タンパク質に及ぼすその影響による(間接的に)以外は、細胞で発現される鋳型フラグメントのレベルは、慣用される技術を用いてそれ自体(直接的に)検出できない(すなわち、上記凝集が阻害される場合、有効に検出できない)。当業者は、本開示を鑑みて上記のような過度な負担なしにかかるプロモーターを選択できる。
前駆体タンパク質の場合、プロモーターは、当業者によりよく理解されている、いわゆる「誘導可能」でよく、発現は、適用された刺激に応答して「スイッチ・オン」または増加する。刺激の特性は、プロモーター間で変化する。ある誘導プロモーターは、適当な刺激の不在下では、わずか、または検出不能なレベルの発現(または発現しない)しか引き起こさない。また別の誘導プロモーターは、刺激の不在下で検出可能な構成的発現を引き起こす。刺激の不在下での発現のレベルにかかわらず、いずれかの誘導プロモーターからの発現は、正しい刺激の存在下で増加する。以下の実験では、Lac誘導プロモーターを使用している。
【0051】
本発明の発現ベクターは、一つ以上の選択遺伝子をも含有できる。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質またはその他の毒素、例えばアンピシリン、ネオマイシン、メソトレキセート、またはテトラサイクリンに対する抵抗性を付与する、(b)栄養要求欠損を補足する、または(c)複合培地から利用できない必須栄養を供給するタンパク質をコードし、例えばバチルスのD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子である。哺乳動物細胞に適した選択マーカーの実例は、所望のタンパク質コード化核酸を取り込む受容能力のある細胞の同定を可能にするもの、例えばDHFRまたはチミジンキナーゼである。野生型DHFRを用いる場合、適当な宿主細胞は、DHFR作用が欠如したCHO細胞系であり、Urlaubら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980)に記載されるように調製および増殖される。酵母での使用に適した選択遺伝子は、酵母プラスミドRp7に存在するtrp1遺伝子である[Stinchcombら、Nature 282:39(1979);Kingsmanら、Gene 7:141(1979);Tschemperら、Gene 10:157(1980)]。trp1遺伝子は、トリプトファン中で成長する能力を欠いた酵母の突然変異株のための選択マーカー、例えばATCC:44076またはPEP4−1を提供する[Jones,Genetics 85:12(1977)]。
【0052】
したがって、本発明で用いるための典型的なベクターには、複製起点、必要に応じて構成または誘導プロモーターに作動可能に連結された一つまたはそれ以上のタンパク質配列、転写終止配列、エンハンサーエレメント、マーカー遺伝子などが含まれ得る。種々のこれらの成分を含有する適当なベクターの構築には、技術者に公知の標準的なライゲーション技術を用いる。
【0053】
形質転換
本発明は、また前記した方法において用いるための安定した細胞を産生する方法をも提供し、この方法は:(a)(i)鋳型フラグメントが、細胞に対して有毒でないレベルで細胞において構成的に発現されるような前駆体タンパク質の鋳型フラグメント;および(ii)刺激に応答して疾患の細胞においてタンパク質の発現が誘導されるような前駆体タンパク質をコードする核酸を細胞に導入すること、の工程を含む。
【0054】
一般に「形質転換」として限定されないで言及され得る導入は、いずれか利用可能な技術を用いることができる。真核細胞では、適当な技術には、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAEデキストラン、電気泳動、リポソーム媒介トランスフェクションおよびレトロウイルスもしくはその他のウイルス、例えばワクシニアまたは昆虫細胞に関してはバキュロウイルスを用いる形質導入などがある。Sambrookら、前出に記載された塩化カルシウムを用いるカルシウム処置、またはエレクトロポレーションは、一般に原核細胞または実質的な細胞壁を含有するその他の細胞に関して用いられる。アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)での感染は、Shawら、Gene 23:315(1983)および1989年6月29日発行のWO89/05859に記載されるように、特定の植物細胞の形質転換に関して用いられる。
【0055】
かかる細胞壁を有さない哺乳動物細胞に関しては、Grahamおよびvan der Eb、Virology 52:456〜457(1978)のリン酸カルシウム沈殿法を用いることができる。哺乳動物細胞宿主系形質転換の一般的な側面は、米国特許第4,399,216号に記載されている。酵母への形質転換は典型的には、Van Solingenら、J.Bact.130:946(1977)およびHsiaoら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA) 76:3829(1979)の方法に従って実施する。しかしながら、細胞へのDNAの導入のためのその他の方法、例えば核マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、無傷細胞との細菌性プロトプラスト融合、またはポリカチオン、例えばポリブレン、ポリオルニチンによる方法をも用いることができる。哺乳動物を形質転換するための種々技術に関しては、Keownら、Methods in Enzymology 185:527(1990)およびMansourら、Nature 336:348〜352(1988)を参照されたい。
【0056】
宿主細胞
本発明に用いるのに適当な宿主細胞には、細菌、真核細胞、例えば哺乳動物および酵母細胞、並びにバキュロウイルス系などがある。
異種性ポリペプチドの発現のために技術分野で利用可能な哺乳動物細胞系には、繊維芽細胞3T6細胞、HeLa細胞、ベビー・ハムスター腎臓細胞、COS細胞、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1系(COS−7、ATCC CRL1651)、チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、UrlaubおよびChasin、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol.Reprod.23:243〜251(1980));ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB8065);マウス乳腺癌細胞(MMT 060562、ATCC CCL51);および多くのその他のものなどがある。
【0057】
適当な原核細胞宿主には、非限定例としては、真性細菌、例えばグラム陰性またはグラム陽性生物、例えばエンテロバクテリアーシー(Enterobacteriaceae)、例えば大腸菌(E.coli)などがある。種々の大腸菌株は、公に入手可能であり、例えば大腸菌K12 MM294株(ATCC 31,446);大腸菌X1776(ATCC 31,537);大腸菌W3110(ATCC 27325)およびK5 772(ATCC 53635)である。真核性微生物、例えば糸状菌または酵母もまたベクターに適したクローニングまたは発現宿主である。サッカロミセス・セルビジエ(Saccharomyces cerevisiae)は、一般に用いられる下等真核性宿主微生物である。適当な宿主細胞の選択は、技術分野の技術範囲内であると考えられる。
【0058】
別の側面では、本発明は、前記で記載された本発明の異種性核酸を含有する宿主細胞を提供する。本発明の核酸を宿主細胞のゲノム(例えば染色体)に組み込むことができる。標準的な技術に従ってゲノムとの組換えを促進する配列を封入することにより組み込みを促進できる。また別に、核酸を細胞内の染色体外ベクター上にあるか、またはそうでなければ細胞に対して認識可能な異種性もしくは外来性であってよい。
【0059】
細胞は、前記した方法(核酸構築物の導入)により産生されるか、またはかかる細胞の祖先でよい。対応する細胞系もまた提供される。好ましい細胞系は、繊維芽細胞系、例えば3T6をベースにすることができる。
【0060】
本明細書で記載した発現またはクローニングベクターでトランスフェクトまたは形質転換された宿主細胞を、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、または望ましい配列をコードする遺伝子を増幅するために適当に修飾された、慣用される栄養培地中で培養することができる。培養条件、例えば培地、温度、pH等は、過度な実験を行わないで技術者により選択され得る。概して、細胞培養の生産性を最大にするための原理、プロトコル、および実施技術を「Mammalian Cell Biotechnology:a Practical Approach」M.Butler編、JRLプレス(1991)およびSambrookら(前出)に見出すことができる。
【0061】
遺伝子発現を、例えばサザン・ブロッティング、mRNAの転写を定量化するための慣用されるノーザン・ブロッティング[Thomas、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:5201〜5205(1980)]、ドットブロッティング(DNA分析)、またはインサイチュー・ハイブリダイゼーションにより、凝集疾患タンパク質の配列に基づいて、適当に標識されたプローブを用いてサンプル中で直接確認することができる。また別に、DNA二重鎖、RNA二重鎖、およびDNA−RNAハイブリッド二重鎖またはDNA−タンパク質二重鎖などの特異的二重鎖を認識できる抗体を用いることができる。
【0062】
あるいは、遺伝子発現を免疫学的方法、例えば細胞または組織切片の免疫組織学的染色により、および細胞培養のアッセイにより測定して、遺伝子産生物の発現を直接定量化することができる。サンプル液の免疫組織学的染色および/またはアッセイに有用な抗体はモノクローナルまたはポリクローナルのいずれかでよく、いずれかの哺乳動物において調製することができる。便利なことには、凝集疾患ポリペプチドの元来の配列に対する抗体を調製することができる。
【0063】
このように本発明の一つの側面は、例えば遺伝子発現のための条件下で(刺激の存在下)産生物フラグメントが産生されるように宿主細胞を培養することにより、本明細書で論じられた核酸からの発現を引き起こすか、または可能にする必要がある。本発明は、また産生物フラグメントを産生する方法をも包含し、方法は、前記した核酸からの発現を含む。
【0064】
本発明の別の側面は、本明細書で前記した形質転換された細胞または細胞系に少なくとも一つの別の成分、例えば前駆体タンパク質の産生を刺激するための作用物質、または前駆体タンパク質と以下のセクションで記載する鋳型フラグメントとの相互作用を検出するための作用物質を加えたものを含むキットである。
【0065】
凝集および/またはタンパク質分解性プロセシングおよび/または有毒フラグメントの検出
種々の態様では、以下の種のいずれか一つまたはそれ以上の濃度またはレベルをモニターすることにより、タンパク質分解性プロセシングまたは凝集の進行(またはその調整;以下を参照)を直接または間接的に検出することができる:前駆体タンパク質;産生物フラグメント;過程中に形成された副産物フラグメント;これらのいずれかの凝集(例えば沈降係数に基づいて)。
したがって、特定のタウタンパク質およびフラグメント(297〜351フラグメントおよびT40に基づく)で実例を示すように、主に前駆体タンパク質から誘導される12kDのプロセシングされた種のレベル増加に基づいて凝集をモニターできる。
【0066】
前記の遺伝子発現に関していくつかのタンパク質検出法について論じる。本発明の方法の態様において抗体またはそのフラグメントを用いる場合、慣用される技術により産生することができる。ポリクローナル抗体を、例えば対応するタウ抗原を動物、好ましくはウサギに注射し、イムノアフィニティ精製により抗血清を回収することにより集めることができ、ここでポリクローナル抗体は、抗原が結合するカラムに通され、次いで、慣用される様式で溶出される。好ましくは、本発明は、タウエピトープに選択的であり、KohlerおよびMilsteinの方法により調製できるモノクローナル抗体を使用する。タウエピトープに対する適当なモノクローナル抗体を公知の方法により修飾して、Fabフラグメントまたは(Fab’)2フラグメント、キメラ、ヒト化または一本鎖抗体態様を提供することができる。
【0067】
本発明による抗体を、多くの方法で修飾することができる。実際に、「抗体」なる用語は、結合ドメインを有するいずれかの結合物質を必要な特異性で補っていると解釈すべきである。このように本発明は、抗体フラグメント、誘導体、作動可能等価物および、その形状が抗原またはエピトープに結合するのを可能にする抗体の形状を擬似する合成分子および分子などの抗体の相同体に及ぶ。
【0068】
概して、抗体が、検出に用いられる場合、抗体は、レポーター分子を担持できる。また別に、未標識のタウ特異的1次抗体に結合できる2次抗体の使用により結合の検出を実施できる。この場合、2次抗体は、レポーター分子に連結されている。
【0069】
非限定例としてラジオイムノアッセイ、「サンドウィッチ」アッセイ、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA);蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイ等の技術分野で公知のいずれかのイムノアッセイにおいて抗体を用いることができる。典型的には、イムノブロット法を使用される。好ましくは、イムノアッセイは、技術者に公知であるように、固相で実施される。例えば、抗体を、例えばアッセイカラムに吸収させ、そして、目的のタンパク質のいずれかの凝集、例えばタウ−タウ凝集の固相抗体への結合を可能にするのに適した条件下で、細胞サンプルをカラムを通して洗浄することができる。過剰の試薬を洗い流し、例えば前記および後記で実例を示すようないずれか適当な手段により、凝集タンパク質のカラムへの結合を検出することができる。
【0070】
好ましいモノクローナル抗体は、以下のとおりである:
・断端されたタウ種および全長のタウ種間の結合の測定を可能にするタウエピトープのN−末端またはC−末端を認識するもの。とりわけ有用なものは、ヒト特異的エピトープを認識する抗体である。かかるモノクローナル抗体の一つ(27/499と称する)は、タウのGly−16およびGln−26間の領域に位置するヒト特異的エピトープを認識し、そしてヒト以外の供給源から誘導される場合、それにより全長のタウ種間の結合の測定が可能になる(「アルツハイマー病の神経原繊維病理の進行におけるタウタンパク質のリン酸化異常の役割」PhD Thesis、ケンブリッジ大学)。
【0071】
・Glu−391で断端されたコアタウフラグメントを認識するもの。実例は、mAb423(Novakら、前出(1993))である。この抗体は、mAb423により認識されない、Glu−391で終止する断端されたコアタウフラグメントの、Ala−390で終止する類似のフラグメントへの結合の検出を可能にする。このトランケーションは、アルツハイマー病のPHF集合の過程で自然に生じる(Menaら、前出(1995)、(1996);Novakら、前出(1993);Menaら、前出(1991))。更に、タウが、インビトロで反復ドメインを介して結合する場合、プロテアーゼ(例えばプロマーゼ)での消化によりmAb423で検出可能なフラグメントを生じる(Wischikら、前出(1996))。本発明の好ましい側面では、この抗体を用いて鋳型フラグメントの構成的発現(Ala−390)からタンパク質分解的に切断された産生物フラグメント(Glu−391終止)の作製を区別することができる。
【0072】
・反復ドメインにおける一般的なタウエピトープを認識するもの。好ましい態様は、抗体(例えばMAb7.51)を利用する。タウ−MAP2またはMAP2−MAP2凝集を検出すべき場合、一般的なMAP−2エピトープを検出する抗体を用いることができる。抗体7.51は、終わりから3番目のタウの反復に位置する一般的なタウエピトープを認識し(Novakら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:5837〜5841(1991))、これは、タウがPHF様免疫化学的立体配座で結合する場合に塞がれるが、ギ酸処理の後暴露され得る(Harringtonら、前出(1990)、(1991);Wischikら、前出(1995a))。正常な可溶性タウまたは微小管に結合したタウを、ギ酸処理を行わずにmAb7.51を用いて検出することができる(Harringtonら、前出(1991);Wischikら、前出(1995a))。タウ−タウ結合アッセイにおける全長タウの結合は、mAb7.51エピトープの部分的閉塞に伴う。
【0073】
抗体27/342は、タウ−タウ相互作用の過程で部分的に塞がれるSer−208およびSer−238間に位置する種非特異的一般的タウエピトープを認識する(Lai、前出)。
いくつかのモノクローナル抗体の結合部位を図6に示す。
【0074】
モジュレーターおよびインヒビターに関するスクリーニング
前記したように、本発明は、好ましくは、モデル化および、本明細書にて論じた疾患の処置のための治療用物質を同定する方法における、本明細書で提供されるようなシステムの使用に関する。
【0075】
鋳型フラグメントとの相互作用に応答して、凝集および/または前駆体タンパク質の産生物へのタンパク質分解性プロセシングを調整する作用物質の能力を評価するための典型的な方法は:
(a)前記で論じた安定した細胞または細胞系を提供することと、
(b)細胞を刺激に供し、前駆体タンパク質が、細胞において発現されるようにし、そしてそれにより、鋳型フラグメントと前駆体タンパク質との相互作用がタンパク質における立体配座変化を引き起こし、例えば凝集および前駆体タンパク質の産生物フラグメントへのタンパク質分解性プロセシングを引き起こすことと、
(c)作用物質の存在下、産生物フラグメントの産生をモニターすることと、
(d)場合によって工程(c)で得られた値を参考値と比較することと、
を含む。
【0076】
基準値は歴史的観察に基づくか、または並行して実施した対照実験に基づいてよく、例えばここでアッセイのうちの一部(鋳型フラグメント、前駆体タンパク質、刺激、作用物質)を修飾するかまたは欠如する。
前記した種々の方法は、更に工程(d)の結果を作用物質の調整活性と相関させる工程を含むことができる。
【0077】
したがって、タンパク質が誘起される立体配座相互作用を被る疾患に伴うタンパク質の凝集のモジュレーターを同定する方法は、凝集を調整(阻害または逆転)できることが推測される一つまたはそれ以上の作用物質の存在下で前記した凝集を誘起する方法を実施することを含むことができる。作用物質の存在下または不在下で凝集の程度(および場合によってはタンパク質分解性プロセシング)を観察でき、相対値は、モジュレーターとしてのその活性に相関した。
【0078】
例えば被検物質を前記した細胞の系に添加し、そして結合を可能にし、そして結合の阻害を実証するのに十分な時間、細胞をインキュベートしてよい。次いで、例えば適当に標識した抗体、例えばMAb7.51を全細胞抽出物のイムノブロットで用いることにより、またはいずれかその他の適当な検出方法を用いることにより結合タウ複合体を検出することができる。
【0079】
スクリーニング法がこの目的で、すなわち、調整/阻害化合物の同定のために用いられる場合、非競合または競合アッセイを用いることができる。例えば、技術分野で公知の型の競合アッセイでは、公知のインヒビターまたはモジュレーターの影響を別の被検物質または作用物質の存在下または不在下で比較して、被検物質が目的のタンパク質に対する結合に関して公知のインヒビター/モジュレーターと競合する能力を決定することができる。
前記したモジュレーター(例えばインヒビター)を精製する方法もまた提供されるが、これは、更にこの同定されたモジュレーターを産生する工程を含む。
【0080】
阻害の特異性
本発明のこの側面によるスクリーニング法を用いて、疾患関連タンパク質凝集(例えばタウ−タウ、タウ−MAP2またはその他のタンパク質結合)の選択的競合阻害の特性を実証する化合物に関して、前駆体タンパク質が関わるいずれかの「正常な」(例えばタウまたはMAP2のチューブリンへの、または相似による、その他の前駆体タンパク質と解っている限りのその結合パートナーとの)結合と干渉することなく、スクリーニングすることができる。
【0081】
とりわけタウの場合、可能性のあるインヒビター/モジュレーターにより、タウ、MAP2またはその誘導体のチューブリンへの結合のいずれか可能な干渉を決定するための適当な方法は、脱重合化チューブリンまたはタクソール安定化微小管の調製物を作用物質と接触させ、続いてタウ−チューブリンまたはMAP2−チューブリン結合を検出することを含む。またタウ−チューブリン結合を、例えばWO96/30766に記載されるように、例えば正常な細胞骨格分布により実証することもできる。チューブリンタンパク質またはそのフラグメントの調製方法を結合パートナーと組み合わせることが可能であり、これは、技術分野で公知であり、そして例えばSlobadaら(Cell Mobility(1976)(R.Goldman、T.PollardおよびJ.Rosenbaum編)コールド・スプリング・ラボラトリー、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク、1171〜1212頁)により記載されている。
「疾患」および「正常な」機能を有する別のタンパク質のための類似の方法は、本発明の開示に鑑みて当業者に想定されよう。
【0082】
細胞生存性
所望する場合、本発明の方法は、更に、例えば乳酸デヒドロゲナーゼアッセイキット(シグマ)を用いることによる、鋳型タンパク質および場合によっては前駆体タンパク質を発現する細胞の生存性を試験する工程を含むことができる。
タウ−タウ、タウ−MAP2またはMAP2−MAP2凝集が、研究される場合(前記の「特異性」の項目を参照)、タウ−チューブリンまたはMAP2−チューブリン結合の阻害または干渉が、細胞が分割する能力の低下、そしてしたがって細胞生存性の低下とある程度相関するので、この工程は、タウまたはMAP2のチューブリンへの結合の、被検物質によるいずれかの干渉の指数をも提供できる。
細胞生存性は、作用物質のLD50値を得るために使用されてもよい。
好ましい阻害は、少なくとも2、5、10または20の治療指数を有する(LD50/B50、図9の論考を参照)。
【0083】
被験物質の選択
試験される化合物は、適切な活性に関して評価するのが望ましいいずれかのものでよい。
方法を新規インヒビター/モジュレーターを同定するための1次スクリーニングとして、または公知のインヒビター/モジュレーターを更に詳細に研究するための2次スクリーニングとして提供することができる。
【0084】
作用物質は、天然または合成化学化合物でよい。アルツハイマー病様タンパク質凝集を認識する、および/またはアルツハイマー病様タンパク質凝集を調整する抗体は、凝集過程に関して、推定阻害または調整化合物の一つのクラスを形成する。より通常的には、相対的に小型の、好ましくは血液脳関門通過できる化学化合物が試験される。本発明の使用と組み合わせて(前に、同時に、または後に)確立するのが望ましいその他の特性には:骨髄に対する無有毒、血管活性の有害性の最小化;肝臓および腎臓の有毒の最小化;良好な経口吸収;不活性形態に代謝されないこと等がある。当業者は知っているように、これらの試験を、この方法で試験するのが望ましい化合物に関する十分に確立された方法によりコマーシャルベースで実施することができる。
【0085】
典型的な被験物質および推定されるモジュレーターに関しては、可能な場合、例えばメルク・インデックスから溶解性を最初に決定する。物質が、水溶液中で可溶性である場合、濃縮された貯蔵溶液を、例えばPBS中5〜20mMで調製できる。使用の直前にこれを組織培養培地で希釈し、例えば100μMの作業用貯蔵溶液を得ることができ、そして細胞に導入して、ほとんどの化合物に関して最終濃度を0〜10μMにすることができる。当然、被験化合物が10μM以上の濃度であるのが望ましい場合、作業用貯蔵溶液の濃度を必要に応じて増加させることができる。
【0086】
物質が水溶液中で可溶性でない場合、貯蔵溶液を(メルク・インデックスから、または実験的に決定される)適当な溶媒、例えばエタノールで5〜29nMに作製することができる。これを再度使用直前に組織培養培地で希釈し、例えば100μMの作業用貯蔵溶液を得ることができ、そして細胞に導入して、ほとんどの被験化合物に関して最終濃度を0〜10μMにすることができる。前記のように、化合物を10μM以上の濃度で試験すべきである場合、作業用貯蔵溶液の濃度を必要に応じて増加させることができる。
【0087】
本発明のこの側面によるスクリーニングアッセイにおいて添加される被検物質または化合物の量、および実際に、それが導入される様式を、必要な場合、一連の試行を行うことにより当業者に決定できることは、技術者には理解されよう。投与された化合物および細胞系が矛盾する最適条件を有している(例えばpH、またはイオン強度等に関して)場合、種々の条件を試みて最適な、妥協した、レベルを見出すべきである。初期濃度を選択して、治療の側面において現実的に用いることができる、すなわち患者に対して非致死的であるレベルにすることができる(以下の用量に関する論評を参照)。本発明の開示に鑑みて、かかる研究法は当業者になんら過度な負担を提示していない。
【0088】
フェノチアジンのスクリーニング
本発明は別の側面で、本明細書にて提供されるスクリーニング法により同定される化合物にまで広げられ、そしてタンパク質の立体配座重合化の誘起のかかるインヒビター/モジュレーターを含む組成物にまで広げられる。
【0089】
例えばWO96/30766に記載されるように、病理学的に誘起されたタウのようなタンパク質の立体配座重合化を阻害できることが見出されている作用物質の中で、特定のジアミノフェノチアジンである。実例には、例えば、疾患例えばアルツハイマー病におけるタウ−タウ凝集の防御に使用するための強力な治療薬として特に興味深いチオニン、メチレンブルー(MB)、塩化トロニウム、およびジメチルメチレンブルー(DMMB)などが挙げられる。
【0090】
興味深いことに、実施例においてより詳細に記載するように、本発明者らは、本明細書に記載する方法を用いて、化合物、例えばMBの立体配座重合化の誘起、例えばタウ−タウ凝集に及ぼす作用メカニズムが、主に天然の立体構造であることを実証した。加えて、例えばタウ−タウ結合に及ぼすジアミノフェノチアジンの強力な立体構造的な阻害効果が化合物の拡散係数に依存することが示されている。化合物のスクリーニングおよび処方に関するこれらの観察の様々な意味を以下でより詳細に論じる。
【0091】
先行技術におけるかかる化合物の使用に関する記載を考慮する場合、この知見はとりわけ予想外のものである。したがって、例えばかかる化合物はメトヘモグロビン血症の処置において、この場合その作用は、還元ピリジンヌクレオチドの細胞の内因性供給からの電子の移動による、酸化ヘモグロビンの触媒的還元により媒介されることが示されており(例えばHauschild,F.、Arch.Exp.Pathol.Pharmacol.182:118(1936);「Pharmacological Basis of Therapeutics」第1版(1941)、GoodmanおよびGilman;Hrgovic,Z.、Anasth.Intensivther.Notfallmed.25:172(1990);およびCudd,L.ら、Vet Human Toxicol.38(5):329(1996)参照)、そして躁鬱病の予防(Narsapur,S.L.、Journal of Affective Disorders 5:155(1983);Nayor,G.J.、Biol.Psychiatry 21:915(1986))において有用であることが以前から解っていた。これにもかかわらず、MB、チオニンおよび塩化トロニウムは実際に本来弱い酸化物質であり、そして還元ピリジンヌクレオチドを供給しない場合、これは、タンパク質、例えばヘモグロビンを酸化する(Morse,E.、Annals of Clin.Lab.Sci.18(1):13(1988))。この有毒効果を用いてウイルスを不活性化することができ、そして血液製剤からHIVおよび肝炎ウイルスを除去する方法においてMBを結果的に利用している(Chapman,J.、Transfusion Today 20:2(1994);Wagner,S.J.、Transfusion 35(5):407(1995))。この効果の作用メカニズムは、MBのDNAへの介在に関係すると考えられている。化合物は、光活性化により更に高度な酸化還元状態に高められ、そしてそれがその基底状態に戻ったときにDNAを酸化し、それを不活性化する一重項酸素を産生する(Ben−Hur,E.ら、Transfusion Medicine Reviews Vol.X(1):15(1996);Margolis−Nunno,H.ら、Transfusion 34(9):802(1994))。癌の処置に関する光活性化されたジアミノフェノチアジンの有毒効果の利用もまた示唆されている。細胞内では、酸化形態にまで光活性化された化合物は、ミトコンドリア(Darzynkiewicz,Z.ら、Cancer Research 48:1295(1988))および/または微小管(Stockert,J.ら、Cancer Chemother.Pharmacol.39:167(1996))を損傷し得る。
【0092】
したがって、先行技術に鑑みて、化合物、例えばMBおよびチオニンの実体、例えばDNAまたはタンパク質に及ぼす作用の原因となる二つの可能なメカニズムが提示されていることは明らかである。第1は、細胞内の還元ピリジンヌクレオチドからの電子の移動による、例えば酸化されたタンパク質の触媒的還元である。第2の提示されたメカニズムは、酸化および結果的に、化合物例えば光活性化されたMBの酸化形態による例えばDNAの不活性化である。したがって、これらの二つのメカニズムを考慮して、化合物、例えばMB等の化合物のタウ−タウ会合の阻害効果もまた酸化還元活性に起因することが合理的に想定され得る。
【0093】
すなわち、かかる化合物は、弱い酸化剤として、または触媒性還元剤として作用することにより立体配座重合化、例えばタウ−タウ会合の誘起を阻害すると想定されよう。
したがって本発明者らの研究は、作用のメカニズムが天然の本来の立体構造であることを実証することで、本明細書にて論じる疾患の側面においてかかる化合物の選択、評価、処方および使用のための予想外の意味を有している。
【0094】
とりわけ、特定の化合物は、先行技術のアッセイの結果に基づいて却下されていた治療に可能性があると見なされた。具体的には、Wischikら(1996)(前出)は、阻害に必要なMBの濃度が臨床上達成され得る濃度よりも高かったことを1217頁で報告した。しかしながら、本明細書の結果は、MBの還元によりそのスタッキング能力が、その阻害能力が、例えばタウ凝集随伴疾患の処置に関して臨床上適切になるレベルまで増強されるように調整されることを示している。これについては、拡散係数の測定に関連する本発明の態様に関連して以下でより詳細に論じている(これは、また部分的に化合物の「スタック」能力によって決定される)。
【0095】
図8は、細胞ベースのアッセイにおいて試験された化合物のいくつかの部分のみの構造を示す。図9〜16は、還元形態の特定の化合物にいくつかの対照化合物を加えたものの可能性の増加を実証する。
【0096】
したがって、本発明の一つの側面では、式:
(I)
【0097】
【化2】

【0098】
(式中、R1、R3、R4、R6、R7およびR9は、独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、置換されたまたは置換されていないアルキル、ハロアルキルまたはアルコキシから選択され;
5は、水素、ヒドロキシ、カルボキシ、置換されたまたは置換されていないアルキル、ハロアルキルまたはアルコキシから選択され;並びにR10およびR11は、独立して水素、ヒドロキシ、カルボキシ、置換されたまたは置換されていないアルキル、ハロアルキルまたはアルコキシから選択される)
の還元(「ロイコ」)フェノチアジンまたは医薬的に許容されるその塩の、本明細書で開示された疾患の処置における使用が開示される。
【0099】
好ましくは、R1、R3、R4、R6、R7およびR9は、独立して水素、−CH3、−C25または−C37から選択され;
10およびR11は、独立して水素、−CH3、−C25または−C37から選択され;そして
5は、水素、−CH3、−C25または−C37から選択される。
【0100】
好ましくは、化合物は、ジアミノフェノチアジン核の周りに0、2、3または4個のメチル基を有しているジアミノフェノチアジンである。好ましくは、ジアミノフェノチアジンは、非対称的にメチル化されている(例えば塩化トロニウム、アズールA、アズールBおよびチオニン)。
好ましくは、化合物はメチレンブルー、塩化トロニウム、チオニン、アズールA、アズールBまたは1,9−ジメチルメチレンブルーから選択される。
【0101】
本発明で用いるためのフェノチアジンを標準的な参考書(例えばMerck Manual、Houben−Weyl、Beilstein,E.III/IV 27、1214 ff、J.Heterocycl.Chem.21:613(1984))から引用される方法により製造することができる。
これらの化合物を直接投与する代わりに、これらを前駆体の形態で投与して、処置される細胞で産生されるかまたはその細胞に標的化される活性化物質により活性化形態に変換することができる。例えばメチレンブルーを前駆体の形態で投与できるか、またはそれ自体を化合物アズールAの前駆体として提供できる。
【0102】
還元形態の安定化
目的のこれらの化合物のいくつかは、還元形態で優先的に体内を循環することが知られている。例えばMBの薬物動態の論考に関しては、例えばDiSanto,A.ら、Journal Pharm.Sci.61(7):1086(1972)およびDiSanto,A.ら、Journal Pharm.Sci.61(7):1090(1972)を参照のこと。第3に、化合物例えばMBの還元形態のみが、血液脳関門を通過することが見出されている(Chapman,D.M.、Tissue and Cell 14(3):475(1982);Muller,T.、Acta Anat.144:39(1992);Muller,T.、J.Anat.184:419(1994);Becker,H.ら、Zeitschrift fur Naturforschung 7:493(1952);Muller,T.、It.J.Anat.Embryol.100(3):179(1995);Muller,T.、Histol.Histopathol.13:1019(1998))。
【0103】
このような参照文献は、化合物、例えばMBの還元形態が対象に投与するための可能な、そして医薬上許容される処方に相当することを説明している。MBは、以前は臨床で経口用製剤に用いられていた。しかしながら、その臨床許容性が達成される前は、さらなる有毒試験が必要とされている。MBおよび関連化合物(例えば塩化トロニウム)の血中の半減期は、およそ100分である。このような比較的短い半減期を有する化合物の徐放性処方により、実質的に化合物の利用性、およびしたがって治療効率が改善されるのは明らかである。
【0104】
図17は、化合物、例えば本明細書で論じた化合物は、アッセイ条件で還元の程度が大きく異なることを示している(120分で、およそ500:1 DTT過剰)。この図は、これらの条件下でチオニンが完全に還元され、塩化トロニウムが中程度レベルで還元され、そしてMBおよびDMMBが相対的にほとんど還元されないことを示している。酸化形態のおよそ90%の還元を10分間で達成するのに必要な共通して用いられる還元剤の量は、投与/吸収の前には実行不能である(例えばDTTのMBに対する比率は、2000:1)。
【0105】
図18で説明するように、生理学的条件下でのMBの還元の程度は、一晩還元させ、そして還元形態を凍結乾燥することにより大きく加速され得る。凍結乾燥物は、胃液酸度を擬似する条件(HCl 5mM)で可溶化した後、10分間で90%還元されるようになる。1.5〜2のmg比率で、アスコルビン酸で前還元されたジアミノフェノチアジンの形態を含有するカプセルは、最適でないとしても、治療用途に適した処方に相当する。
【0106】
同一の条件をその他の化合物、例えばチオニンおよび塩化トロニウムに適用し、これは、MBよりも容易に還元されるが、その還元の程度は、例えば前記したような様式で加速できる。
したがって好ましい形態では、本発明のフェノチアジン物質は、場合によっては安定化剤の存在下、例えば凍結乾燥製剤で前還元化合物として提供される。
【0107】
活性化合物の好ましい形態(すなわち拡散係数が低い化合物の形態、例えば化合物の十分に還元された形態)を安定化するための作用物質は、還元剤または抗酸化剤でよい。阻害化合物の一つの形態(例えば酸化形態)をその好ましい形態(例えば還元形態)に変換するため、およびその好ましい(例えば還元)形態を安定化するために作用物質を提供できる。また別に、阻害化合物をその好ましい(例えば既に還元された)形態で組成物に加えることができ、作用物質は、単にこの形態の化合物を維持するために提供する。
【0108】
とりわけ本発明の処方に含まれる、活性物質(例えばジアミノフェノチアジン)の還元形態に変換する、および/またはそれを安定化するのに使用するのに特に適したものは、抗酸化アスコルビン酸塩である。アスコルビン酸塩は、以前はタンパク質の酸化的損傷を最低限にするために用いられていた(Parkkinen J.「Thrombosis and Haemostasis」75(2):292(1996))。本明細書で提供される処方は、ジアミノフェノチアジン、とりわけMB、塩化トロニウム、DMMBまたはチオニンをアスコルビン酸塩と組み合わせて適当な比率、濃度および用量で含むのが有利である。
【0109】
別の態様では、適当な成分群の添加または選択は還元(ロイコ)形態に都合よい。
したがって、本発明の側面は更に前記した疾患の処置または予防に用いるための医薬品の調製方法を含み、この方法は化合物を還元し(これが少なくともおよそ50、60、70、好ましくは80、90、95、または99%還元されるように)、そして同一物を必要とする患者に適当な用量を投与する前に、還元形態で凍結乾燥された組成物においてそれを安定化する工程を含む。
【0110】
治療用量
「予防的に有効な量」または「治療的に有効な量」で投与するのが好ましく(場合によっては、予防が治療であると考えられることもある)、これは、個体に利益を示すのに十分である。実際に投与された量および投与の割合および時間経過は、処置すべき疾患の特性および重篤度に依存する。処置の指示書、例えば投与量の決定等は、一般的な開業医およびその他の医師の責任範囲内であり、そして典型的には処置される障害、個々の患者の症状、分配部位、投与方法および開業医に公知のその他の因子を考慮に入れる。
【0111】
Muller(Acta Anat.144:39(1992))は、全身投与後のMBのCNS透過について記載している。アズールAおよびBはMBの正常な代謝分解産生物として生じることが解っている(DisantoおよびWagner、J.Pharm.Sci.61:598(1972a);DisantoおよびWagner、J.Pharm.Sci.61:1086(1972b)。Cuddら、Vet Human Toxic 38(5)329〜332(1996)は、ヒツジにおける塩化トロニウムの薬物動態および有毒について論じている。
【0112】
チオニンに関しては、本明細書にて具体例を示すように、一日量は、1〜1000mgが適当であり、好ましくはこれを1〜8単位用量に分割し、例えば同量の単位用量にできる。しかしながら、必要な場合、より高いまたは低い活性または生物学的利用率を有する、チオニン以外の本発明の化合物に相応しいように、前記で示したこれらの制限から逸脱できることは理解されよう。
図19は、MB対IV用量の組織レベルの変化を示す。
【0113】
メチレンブルーの薬物動態は、DiSantoおよびWagner、J.Pharm.Sci.61:1086〜1090(1972)および61:1090〜1094(1972)によりヒト、イヌおよびラットにおいて研究されている。ヒトにおける尿排泄に関するデータは、またMoodyら、Biol.Psych.26:847〜858(1989)からも利用可能である。ヒトにおけるMBの尿排泄に関するデータを組み合わせることにより、70kgの対象における一回で100mg投与の後のMBの分配に関する全体モデルを誘導することができ、これは即時吸収と想定される(図19B)。尿排泄は、摂取された用量の54〜98%になる。この変動は、吸収における変動のためである可能性が最も高いが、代謝における変動は排除できない。尿排泄データから、全身クリアランスは、56mg/kg/時間であると計算できる。したがって、有効標的組織濃度4μMを達成するのに必要な用量は、完全に吸収された場合、1.73mg/kg/日(全溶解固形物0.58mg/kg)である。しかしながら、Moodyらによると、全尿排泄、およびしたがって有効生物学的利用率は、それ自体用量の関数であることは明らかである。1.73mg/kg/日を分配するのに必要な経口用量は、全身クリアランスに基づいて計算された用量のおよそ2倍である。したがって、実際に必要な用量は、3.2mg/kg/日のオーダーにのる。これは、ヒトにおいて臨床的に用いられる、例えば慢性尿路感染症の処置における最小の通常の経口用量に近い(390mg/日)。したがってヒトにおける経口維持用量は、およそ225mg/日または全溶解固形物75mgである。およそ1時間で組織レベルのピークに到達し、組織半減期は、約12時間である。
【0114】
メチレンブルーは、荷電した青色酸化形態、および非荷電性の無色の還元ロイコメチレンブルー形態で存在する。我々は、タウ凝集を50%防御するのに必要な細胞における標的組織濃度(すなわちEC50)標的組織濃度が、還元型メチレンブルー形態では4μMであり、そして優先的に活性であるのはロイコ形態であることを細胞において実験的に示した。尿において回収されたメチレンブルーのおよそ78%が還元形態であり、そして静脈内投与の後の解剖学的研究より、組織に結合している形態のみが無色の還元形態であり、これは、死後切開の後空気に暴露したときに青色に酸化されることがDiSantoおよびWagner(1972)により示されている。静脈内投与後に血液脳関門を通過するメチレンブルーの形態のみが還元形態である(Muller、Acta Anat 144:39〜44(1992)並びにBeckerおよびQuadbeck(1952))。したがって、経口吸収されたメチレンブルーは、非常に急速に対内で還元され、排泄までそのまま維持され、ことによると還元形態でそれを安定化させる別の化学的修飾を被る。
【0115】
経口吸収における変動が、胃腸管における最初の還元の効率により大きく左右される可能性が高い。したがって、より信頼性の高い吸収を達成するための一つの方法は、アスコルビン酸で前還元されたメチレンブルーにすることである。我々は、インビトロ研究から、この変換は、相当に時間がかかり、そしてアスコルビン酸2x mgの比率の存在下で水中のメチレンブルーの90%の還元を達成するのに3時間かかることを示した。したがって、信頼できる吸収を確実にする可能性が最も高いメチレンブルーの用量は、アスコルビン酸7mg/kg/日の存在下、少なくとも3時間前還元したメチレンブルー3.5mg/kg/日である。
【0116】
MBが、ヒトにおいて低い濃度で活性であり、したがって臨床上可能である用量範囲は、消化前に90%以上の還元が達成されるような様式でアスコルビン酸の2x mg比率と組み合わせた、全溶解固形物20mg、全溶解固形物50mgまたは全溶解固形物100mgである。
【0117】
治療の処方および投与
適当な化合物、例えば前記で示した式を有するもの、またはその薬学的に許容される塩を、更に有毒に関して試験した後、本発明のこの側面の組成物に組み込むことができる。組成物には、前記の構成成分に加えて、薬学的に許容される賦形剤、担体、バッファー、安定剤または当業者に公知のその他の材料を含むことができる。かかる材料は、無有毒であり、そして活性成分の有効性に干渉しないものでなければならない。担体またはその他の材料の正確な特性は、投与経路に依存し得る。
【0118】
組成物を医薬組成物に処方する場合、その投与を、例えば経口的に、粉末、錠剤、コーティング錠剤、糖衣錠、硬質および軟質ゼラチンカプセル、溶液、乳液または懸濁液、鼻用(例えば鼻用スプレイの形態で)または直腸用(例えば坐剤の形態で)で行うことができる。しかしながら、非経口的に、例えば筋肉内、静脈内、皮膚、皮下、または腹腔内で(例えば注射溶液の形態で)投与を行うこともできる。
【0119】
医薬用組成物が、錠剤の形態である場合、これは、固体担体、例えばゼラチンまたはアジュバントを含んでよい。錠剤、コーティング錠剤、糖衣錠および硬質ゼラチンカプセルの製造に関しては、活性化合物およびその薬学的に許容される酸添加塩を薬学的に不活性な無機または有機賦形剤で加工することができる。ラクトース、トウモロコシ、デンプンまたはその誘導体、タルク、ステアリン酸またはその塩等、例えば錠剤、糖衣錠および硬質ゼラチンカプセルを用いることができる。軟質ゼラチンカプセルに適した賦形剤は、例えば植物油、ワックス、脂肪、半固体および液体ポリオール等である。
【0120】
組成物が、液体医薬用処方の形態である場合、これは、一般に液体担体、例えば水、石油、動物または植物油、鉱油または合成油を含む。生理学的食塩水、デキストロースまたはその他の糖類溶液またはグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどをも含んでよい。溶液およびシロップの製造に適したその他の適当な賦形剤は、例えば水、ポリオール、サッカロース、転化糖、グルコース、トリハロース、等である。注射溶液に適した賦形剤は、例えば水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油等である。
坐剤に適した賦形剤は、例えば天然または硬化油、ワックス、脂肪、半固体または液体ポリオール等である。
【0121】
更に、医薬用製剤は保存剤、可溶化剤、粘性増強物質、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、着香剤、浸透圧を変化させる塩、バッファー、またはコーティング剤を含有できる。
【0122】
静脈内、皮膚もしくは皮下注射、または脳へのカテーテル内注入用には、活性成分は、非経口的に許容される、パイロジェン不含で、そして適当なpH、等張性および安定性を有している水性溶液の形態である。適切な当業者は、例えば等張賦形剤、例えば塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、乳酸塩リンガー注射液を用いて適当な溶液を十分調製できる。保存剤、安定剤、バッファー、および/またはその他の添加剤を必要に応じて含むことができる。
【0123】
本発明による組成物を、処置すべき症状または疾患に依存して、単独で、またはその他の処置を同時に、または連続的のいずれかで組み合わせて投与することができる。
本発明に従って、本明細書で提供される処方を、アルツハイマー病、運動ニューロン疾患、レビ小体疾患、ピック病または進行性核上麻痺、またはタンパク質の立体配座重合の誘起が関係するいずれかその他の症状もしくは疾患の予防または処置に用いることができる(図5参照)。とりわけ、以下に詳細に記載するように、処方を、病理学的タウ−タウ会合の遮断、調整および阻害に用いることができる。
前記した技術およびプロトコルの実例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第16版、Osol,A.(編)(1980)において見出すことができる。
【0124】
さらなる側面では、本発明は、タンパク質の立体配座重合の誘起が関係する症状の診断、予後または処置における先行の側面の組成物の使用に関する。症状は、疾患、例えばアルツハイマー病、または本明細書に記載した型のいずれかその他の症状でよい。
【0125】
スクリーニングとしての拡散定数の使用
前記するように、化合物をその還元形態に変換すること、および/またはその還元形態を安定化することにより、化合物の阻害可能性を最適化することができる。
しかしながら、本明細書後記の実施例にてより詳細に記載するように、驚くべきことに、化合物の酸化還元能力は、タンパク質の立体配座重合の誘起に関するその阻害活性を直接決定せず、そして、したがって酸化モデルも触媒還元モデルもタウ−タウ凝集インヒビターとしての化合物の活性の理解に関連しない。
【0126】
本発明者らは、化合物のタウ−タウ結合に対する阻害能力およびその拡散係数の2または3乗の間に強い逆相関があることを見出した。
拡散係数は、陰極での放電した分子のスタッキングの量により決定される。実験的には、還元電位で酸化還元セルでの電流を測定することによりこれを評価することができる。拡散係数は、陰極で形成するヘルムホルツ層内の放電した(すなわち還元)種の凝集の程度と逆相関する。これらの凝集は、フェノール環系を通ってパイ結合したスタッキング相互作用により形成される。
【0127】
一つのモデルでは、拡散係数が低いほど、スタックする傾向が高くなり、そして低いKを反映するようなタンパク質の立体配座重合の誘起の阻害、例えばタウ−タウ結合において化合物がより強力になる。
【0128】
酸化形態は荷電しており、そして分子と同様、他方と反発すると考えられ得るので、ジアミノフェノチアジンのスタッキングは、分子が酸化形態であるときにはあまり好都合でない。したがってこの現象により、タウ凝集の阻害におけるジアミノフェノチアジンの還元形態の大きな有効性が説明され得る(例えば図9参照)。
【0129】
したがって、拡散係数の評価(「スタッキング能力」に依存し、今度は形状および荷電に依存する)は、有効なモジュレーターの開発における有用な工程であり得る。かかる立体化学に関連するパラメーターの一つは、ジアミノフェノチアジンのその還元形態での提供により低減され得る拡散係数である。
【0130】
したがって、本発明者らは、本明細書にてタンパク質の立体配座重合の誘起の遮断、調整または阻害における化合物の有効性(本明細書では以後「阻害可能性」と称する)を、化合物の拡散係数を測定する工程を含むアッセイ方法において試験するできることを教示する。
【0131】
したがって、本発明は、その最も一般的な形態で、タンパク質の立体配座重合の誘起を遮断、調整または阻害する作用物質をスクリーニングする方法を提供し、この方法は、作用物質の拡散係数を測定する工程を含む。拡散係数値、および、とりわけその拡散係数の2乗または3乗の使用は、本明細書で記載するような疾患の処置に関するフェノチアジン(例えば前記したような)の阻害可能性の評価において、本発明のさらなる側面を成す。
【0132】
推定されるまたは確立されたモジュレーターを同定または最適化するための、拡張したスクリーニングプログラムのいずれかの段階で、被験物質の拡散係数を測定する工程を組み込むことができる。拡張した方法は、典型的には更に本明細書で記載するか、または先行技術(例えばWO96/30766)のアッセイ工程を含む。したがって、例えば後者の場合、タウ−タウ凝集を遮断、調整または阻害する作用物質に関してスクリーニングしたい場合、方法は:
(a)タウタンパク質またはタウコアフラグメントを含有するその誘導体を;
(b)タウ−タウ凝集を遮断、調整または阻害するその能力に関して試験すべき物質;並びに
(c)工程(a)のタウタンパク質に結合できる標識されたタウタンパク質もしくは標識されたその誘導体、または工程(a)のタウタンパク質から区別され、そして工程(a)のタウタンパク質に結合することもできるタウタンパク質もしくはその誘導体;
と接触させる工程を含む。
【0133】
拡散係数をいずれか適当な手段、例えばMurthyおよびReddy(J.Chem.Soc.,Faraday Trans J 80:2745〜2750(1984))により測定することができる。この文献は、またフェノチアジン染料に関する拡散係数のいくつかの測定値をも含み、そしてその内容を特に参照として本明細書に組み入れられる。
【0134】
したがって、拡散係数は、酸性水性溶媒におけるサイクリックボルタンメトリーにより適当に測定でき、それにより酸化還元セルの電流の大きさを化合物の還元電位で試験する。
【0135】
方法は、特定のタンパク質(例えばタウ)の立体配座重合の誘起のインヒビターもしくはモジュレーターとしてのその特異性を確認するため、または動物に投与するための作用物質としての薬学的許容性もしくは適性を決定するために作用物質に関してさらなる試験を実施する工程を含んでよい。
【0136】
本明細書にて提供される、タンパク質の立体配座重合の誘起の遮断、調整または阻害における作用物質の可能性が、少なくとも部分的に作用物質の拡散係数に依存するという驚くべき教示を作用物質の可能性の最適化に利用することができる。本発明者らは、タンパク質の立体配座重合の誘起に対する作用物質の阻害可能性がその拡散係数の2乗または3乗に逆相関することを確立した。換言すると、作用物質の阻害可能性は、その拡散係数が最小化された形態の作用物質を提供することにより最適化することができる。
【0137】
したがって、別の側面では、本発明は、タンパク質の立体配座重合の誘起の遮断、調整または阻害における作用物質の可能性を最適化する方法に関し、その方法は作用物質の拡散係数を最適化する工程を含む。
【0138】
別の側面では、本発明は、タンパク質の立体配座重合の誘起を生じる症状の予防または処置のための医薬用組成物を提供し、その組成物はその拡散係数が最小化された形態で提供されるか、またはその形態に変換される化合物を含む。
【0139】
本発明のこの、および別の側面は、以下の図および実施例によってのみ提供される実験データを参照することにより、よりよく理解されよう。
【0140】
実施例
一般的な材料および方法
3T6H細胞系の産生
3T6細胞は、ECACC番号:86120801マウススイスアルビノ胚繊維芽細胞であった。
【0141】
誘導系に関しては、Lacレプレッサータンパク質を発現するp3’SSベクターを用いてストラッタジーンのLacスイッチ(商標)を実験で用いて、Lacレプレッサータンパク質を発現し、pOPRSVICATを用いてLacレプレッサーの制御下で全長タウを発現した。発現は、IPTGの添加により誘導される。
【0142】
最初に3T6細胞をエレクトロポレーションによりp3’SSプラスミドおよびヒグロマイシン抵抗産生により選択されたコロニーでトランスフェクトした。種々レベルのLacレプレッサータンパク質(免疫細胞化学により決定)を発現した5個のクローンをとり、そしてまた非クローン化細胞を比較のために保持した。
【0143】
pOPRSVT40ベクターの産生
NotI部位および必要に応じて出発または停止コドンを含むプライマー(以下に示す)を用いてベントポリメラーゼ(NEB)でPCRにより、pOPRSVICATベクターへのクローニングのためのT40インサートを調製した。PCR産生物およびpOPRSVICATベクターをNotIで切断し、精製した。ベクターを脱リン酸化して再ライゲーションを防御し、そしてインサートを標準的なプロトコルを用いてベクターにライゲートした。
【0144】
得られたライゲーションミックスをコンピテント大腸菌(E.coli)細胞にトランスフェクトし、そして細胞をampプレートに載せた。コロニーを取り、新たなampプレート上でグリッド化した。コロニーの盛り上がりをハイボンド−N0.45μmナイロン膜(アマシャム)に取り、そして(α−32P)dCTP(アマシャム)で標識したdGAを用いるコロニーハイブリダイゼーションにより可能な陽性を選択した(オリゴ標識キット(ファルマシア・バイオテック)を用い、そしてNap−10カラム(ファルマシア・バイオテック)で精製した)。ハイブリダイゼーションをチャーチバッファー中65℃で一晩実施し、続いてチャーチ洗浄液で2x20分間洗浄した。ブロットを−70℃で一晩X線フィルムに暴露することにより放射活性プローブで標識した陽性コロニーを検出した。
【0145】
陽性コロニーを選択し、成長させ、次いでPCRおよび制限消化により調べてインサートの存在を確認した。クローニング手段のための単一の制限部位の使用はT40をいずれかの配向でベクターに挿入できることを意味する。インサートの配向を決定して、発現のために正確な配向でT40を含有するベクターを伴うコロニーを選択した。
【0146】
使用したプライマー
【表1】

【0147】
T40配列に相補的な配列を大文字で示し、出発および停止コドンに印を付けた。加えられるNotI部位を下線で示す。小文字で示す残りの配列は、NotI酵素に効果的に切断させることができる13塩基対の張り出しである。これは、プライマーを効果的に結合させることができるhTau40プラスミドベクターの配列に相補的であった。
【0148】
インサート配向の決定
インサートを一回およびベクターを最大で数回切断し、そして各々の配向で異なる制限消化パターンが得られる制限酵素を用いて配向を決定した。HindIIIは、pOPRSVT40のためのこれらの基準に適合する。インサートが存在しない場合、二つの制限バンドが産生される。インサートが存在する場合、三つのバンドが産生され、そしてバンドの大きさは、以下に示すようなインサートの配向に依存する。
正(正しい)配向 5385bp 1030bp 381bp
逆配向 6101bp 381bp 314bp
【0149】
誘導プロモーターの制御化でT40を発現する細胞の産生
pOPRSVT40プラスミドを産生し、CsClグラジエント遠心により精製した。これを前記のように産生した3T6H細胞(Lacレプレッサータンパク質を発現する)にトランスフェクトした(エレクトロポレーションによる)。陽性細胞をG418に対する抵抗性(500μg/mlで)により選択した。抵抗性コロニーを取り、成長させた。IPTGの添加を伴うおよび伴わないT40全長の発現レベルを免疫細胞化学およびウェスタンブロットの双方により抗タウ抗体で決定した。
【0150】
pZeo295〜391の産生
プラスミドpZeo295〜391をタウの断端されたフラグメント(295〜391残基、以下参照)に対応するタンパク質を発現するように設計した。構成系(インビトローゲン、オランダのpcDNA3.1)を使用した(プラスミドは、抗生物質ゼオシンに対する抵抗性を付与する)。この領域に対するcDNAを特異的オリゴヌクレオチドプライマー(センスおよびアンチセンス;以下参照)を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅した。センスプライマーは、EcoRI部位およびアンチセンス、BamHI部位を含有した。フラグメントをEcoRIおよびBamHIで消化したpcDNA3.1(−)ゼオ(インビトローゲン、オランダ)にサブクローニングした。挿入したDNAは、サイトメガロウイルスプロモーター配列から下流で、そしてポリアデニル化シグナルの上流である。プラスミドは、細菌および真核細胞の各々で選択するためのアンピシリンおよびゼオシン抵抗産生を発現するためのDNA配列を含有する。挿入されたDNAの確実性を、双方の鎖の全長シークエンシングにより確認した。
【0151】
断端されたタウフラグメント295〜391のヌクレオチドおよびアミノ酸配列
【表2】

【0152】
出発および停止コドンは、太字であり、そして加えられるEcoRIおよびBamHI制限部位の下線を付す。
【0153】
アッセイのための細胞の組織培養
使用した培地は、ライフ・テクノロジーズ、スコットランドのDEM(グルタマックスI、ピルビンサン塩、グルコース4.5g/lを伴う)であった。FCS10%(ヘレナ・バイオサイエンシズ)、ペニシリン50U/ml、ストレプトマイシン50μg/ml、および関連するプラスミドの選択および維持に適当な別の抗生物質でこれを補充した。抗生物質濃度は、ヒグロマイシン200μg/ml(p3’SS選択および維持)、G418 500μg/ml(pOPRSVT40選択および維持)、ゼオシン400または200μg/ml(pZeo295〜391選択および維持)であった。
【0154】
細胞を37℃で、CO25%の加湿環境下で成長させる。細胞を10cm皿中に保持し、全面成長に近づいたときに分ける。培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、そして細胞は、トリプシン/EDTA溶液1ml/10cm皿でトリプシン処理することにより細胞を遊離させる。新鮮培地中1:10希釈で、または場合によっては1:5〜1:20(およそ5000〜20000セル/cm2)の希釈範囲で細胞を懸濁する。
【0155】
薬物を試験するために、細胞を24時間以内に全面成長の50〜80%まで成長できる初期密度で6ウェルまたは24ウェルプレートに載せる。薬物を種々濃度でウェルに加えて、IPTG 0〜50μMの添加により全長タウの発現を誘起する。細胞を更に24時間成長させ、次いで収集し、SDS PAGE/ウェスタンブロッティングにより分析する。
【0156】
タウタンパク質の調製
組換えタウ(クローンhtau40)並びに、ラットおよびヒトから抽出した過塩素酸可溶性タウを以前に記載されたように調製した(Goedert,M.およびJakes,R.、EMBO J.9:4225;Goedert,M.ら、Proc.Natl.Adad.Sci. USA 90:5066)。
【0157】
ゲル電気泳動およびブロッティング
前記で概要を示すように成長させた細胞をPBSで一回洗浄し、次いでラエムリバッファー50μl(24ウェルプレート)または100μl(6ウェルプレート)で溶解する。サンプルを−20℃で貯蔵し、4分間煮沸してからバイオラッド・ミニプロティーンIIIミニゲル系を用いてアクリルアミドゲル15%上を走らせる。CAPバッファー系を用いてウェスタンブロッティングによりタンパク質をPVDF膜に移す。膜を遮断バッファー(PBS中脱脂粉乳5%(マーベル)、トゥイーン20 0.1%)中1時間から一晩インキュベートする。遮断バッファーで1:5に希釈したmAb7.51で膜をインキュベートすることによりタウタンパク質を検出し、ウェルをPBS/0.1% トゥイーン20で洗浄し、遮断バッファーで1:5000希釈した抗マウスHRPと共に1時間インキュベートし、そしてウェルをPBS/0.1% トゥイーン20で洗浄する。ECLハイパーフィルムに検出されるECL反応により結合抗体を検出する(アマシャム)。
【0158】
ブロットをヒューレット・パッカード・スキャンゼット6100Cフラットベッドスキャナーで600dpiでコンピューターにスキャンし、tiffファイルとして保存する。アップルパワーマックG3でスキャナ分析プログラムでT40およびdGAEバンドの濃度計測を実施する。
【0159】
薬物調製
チオニン、メチレンブルー、DMMB、および塩化トロニウムをすべてddH2O中のストック1mMとして調製する。使用前に希釈ストック100μMをHBSSで調製し、これを細胞の培地に直接添加する。
酸化薬物に関しては、ストック1mMをHBSSで希釈することにより、これを簡単に調製し、そして滅菌濾過する。
【0160】
還元薬物に関しては、1mMをアスコルビン酸およびDTTで処理して薬物0.5mM、アスコルビン酸50mM、DTT50mMを得、これを15分間放置した(青色が無色に変化する)後、希釈ストックを作成する。これをHBSSで希釈して薬物100μM、アスコルビン酸10mM、DTT10mMを得、そして滅菌濾過する。還元ストック100μM、酸化ストック100μMおよびアスコルビン酸10mMの適量を用いることにより、細胞を種々濃度の薬物で処理するが、還元薬物に関してはアスコルビン酸およびDTTは、ずっと400μMを維持する。
【0161】
SDSゲル電気泳動およびイムノブロッティング
標準的な電気泳動およびイムノブロッティング手順を以前に記載されたように用いた(Wischik,C.M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:4506(1988);Novak,M.ら、EMBO J.12:365(1993);Jakes,R.ら、EMBO J.10:2725(1991))。イムノブロットをABCキットで展開した(ベクター・ラボラトリーズ)。モノクローナル抗体(mAb)7.51、21.D10、499および342を希釈していないハイブリドーマ培養上澄液として用いた。mAb AT8(イノジェネティクス、ベルギー)を1/1000希釈で用いた。抗タウmAb7.51(これは、最後の反復のエピトープを認識する;Novak,M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:5837(1991)参照)、423(これは、残基Glu−391で断端されたタウC−末端を認識する;Wischik,C.M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:4506(1988);Novak,M.ら、EMBO J.12:365(1993)参照)、499(これは、残基Gly−14およびGln−26の間のヒト特異的タウセグメントを認識する;Wischik,C.M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:11213(1996)参照)、および342(これは、残基Ser−208およびPro−251の間のセグメントを認識する)。mAb21.D10は、A68−タウ脳抽出物に対して上昇した(Lee,V.M.−Y.ら、Science 251:675(1991))。
【0162】
タウ結合アッセイ
これは基本的にWischik,C.M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:11213(1996)に記載されるように実施した。炭酸塩バッファー50mM中37℃で1時間、96ウェルポリ(塩化ビニル)マイクロタイタープレート上で固相タウ(0〜20μg/ml)を被覆した。プレートをトゥイーン20 0.05%で二回洗浄し、次いでPBST中マルベル2%で37℃で1時間遮断した。再度洗浄した後、プレートを水相タウ(ゼラチン1%を含有するPBST中0〜300μg/ml)と共に37℃で1時間インキュベートした。本出願では、DTT1mMをも添加した。
【0163】
プレートを二回洗浄し、mAb499または342と共に37℃で1時間インキュベートし、PBST中マルベル2%と同容量で希釈した。洗浄後、西洋ワサビペルオキシダーゼ抱合ヤギ抗マウス抗体(PBST中1/1000)を37℃で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、テトラメチルベンジジンおよびH22を含有する基質溶液と共にインキュベートし、そして吸収の変化の速度を以前に記載されるように、Vmaxプレートリーダー(モレキュラー・ディアグノースティックス、カリフォルニア州)を用いて測定した(Harrington,C.R.ら、J.Immunol.Meth.134:261(1990))。各実験は3検体ずつ実施し、そして固相および水相タウの双方が存在しない対照、および二つの不在のうちのいずれか一つを伴う対照を含む。
【0164】
データ分析
これは、Wischikら、(前出)に記載されたように実施し、そしてクアシ−ニュートン近似値を用いてカレイダグラフ(シナージー、フィラデルフィア)またはシスタット(SPSS Inc.、シカゴ)プログラムでラングムイア等式曲線に従って曲線が適合された。曲線適合相関係数を図に示す。
【0165】
実施例1
全長、断端されたおよび突然変異タウの構成発現
真核細胞系におけるタウの発現は、リポフェクチンベースの研究法の制限を受けない生理学的条件下でタウ凝集の細胞モデルを作製することが求められていた。これには、正常なタウおよび病原性突然変異を担持するタウの双方に関する全長タウおよび断端されたタウフラグメントの発現が関係する。
【0166】
全長タウ
正常な全長タウ(T40)は、細胞(3T3およびNIE−115)にトランスフェクトされた場合、発現され、そして細胞内の微小管ネットワークの集合に関係した。
【0167】
断端されたタウ
最初に、フラグメント297〜391に対応するPHFのコアからの断端されたタウフラグメントのcDNAを非ニューロン性3T3繊維芽細胞にトランスフェクトした:この断端されたタウは:(i)PHF−コアに存在する;(ii)疾患の初期段階でAD脳組織における沈着として検出される;(iii)触媒性捕捉およびインビトロでのタウ捕捉の伝播を支持することができる;ので、これを選択した。続いて、タウ分子の免疫化学特性に部分的に依存した、N−またはC−末端のいずれかでのトランケーションの程度が変化した一連のトランスフェクションを実施した。N−末端で(186〜441;297〜441)、C−およびN−末端で(186〜391;297〜391)およびC−末端(1〜391)でのトランケーションを伴う6つの構築物を作製した。限定された抗体のパネルを伴う6つの構築物に関する免疫反応性のパターンにより、このように作製されたタウフラグメントのすべてを識別することができた。
【0168】
構築物を真核細胞において一過性(ベクターとしてpSG5を使用)および安定して(ベクターとしてpIF2およびpZeoを使用)の双方で発現した。pIF2およびpZeoに関して各々抗生物質ゲンチシンおよびゼオシンに対する抵抗性に基づいて安定したトランスフェクト体を選択する。ベクターとしてpRK172を用いて細菌により発現されたタンパク質でエピトープ分析を実施した。図20で3T3およびCOS−7細胞における種々フラグメントに関する結果を要約する。別の結果により、同一細胞におけるタウの二つの形態の発現が免疫反応性パターンに影響し得ることが示された。例えば、1〜391および295〜391の安定した発現が細胞内に異常な束の発現に至る。しかしながら、安定したおよび再現性のある状態でのかかる細胞の維持は困難であることが判明した。
【0169】
突然変異したタウ
全長タウの突然変異誘発を用いて臨床的に公知である突然変異を作製した。これらをpIF2にサブクローニングし、そしてタウの微小管集合特性に影響するもの(G272V、V337M、P301S、R406W)、およびタウ遺伝子のインビボ選択的スプライシングに影響するS305Nを含む多くの突然変異体に関して安定したトランスフェクト体を3T3およびNIE細胞において作製した。概して、突然変異を担持する全長タウを発現する細胞は、微小管ネットワークの標識化を呈し、野生型タウでトランスフェクトした細胞から区別できなかった。突然変異を含む、特定の断端されたタウフラグメントを発現する細胞系は、安定でないことが判明した。
【0170】
結論
要約すると、真核細胞内での断端されたタウの構成的発現は、達成するのが困難であると判明した。297−タウの開始コドンを取り囲むコザックコンセンサスを操作することにより、一過性のトランスフェクション系によるタウの発現の最適化が可能になったが、例えば297〜391の発現は、依然わずかであり、これは、フラグメントのいくつかの固有の有毒特性を示唆している。安定したトランスフェクションによりこの結論が繰り返された。この後者の系は、N−またはC−末端のいずれかでのトランケーションにより、タウが微小管ネットワークにおいてよりもむしろ無晶形沈着において集合する傾向がわずかに大きくなることを実証した。またタウフラグメントの組み合わせの安定した発現により細胞の細胞質内での凝集をも生じたが、この系は、容易に再現されなかった。
【0171】
実施例2
断端されたタウの誘導発現
構成的発現に伴う有毒を伴わない、安定した、再現性のある系を作製する別の試みでは、PHFのコアタウフラグメントの誘導発現(すなわち12kDの297〜391)を試みた。
【0172】
真核細胞におけるタンパク質の発現のためのいくつかの誘導系を試みたが、好ましい系は、「lacスイッチ」系であった。この系では、典型的には内因性タウタンパク質はまったく発現しない3T3または3T6繊維芽細胞である二つのベクターを細胞に組み込む。第1のp3’SSベクターは、lac I遺伝子の構成発現をコードし、そしてヒグロマイシン抵抗性に基づいてエクスプレッサーを選択する。第2のpOPRSVICATは、Lacオペロンからのオペレーター配列を含有する強力なRSVプロモーターの制御下で、タウタンパク質フラグメントをコードするDNAを組み込む。このベクターを組み込む細胞をネオマイシン抵抗性に基づいて選択する。双方のベクターを組み込んだ細胞は、lac Iの構成的発現がLacオペロンにより制御される組み込まれたタンパク質(すなわちタウ)の発現を防御するという特性を有する。糖IPTGの添加は、lac IのLacオペロンへの結合と競合し、それでタウタンパク質の発現が可能になる。
【0173】
12kDフラグメントの誘導発現を二つの細胞系において実施した。これは、IPTGでの処置の3日後までに、その段階で高レベルの12kDが突然現れ、細胞を即座に殺す細胞内凝集を形成し、タウタンパク質発現のレベルが適用可能でないことを示した。予想されるに、凝集の過程は、低レベルからなんらかの明確な漸次移行を伴わない有毒凝集の突然の蓄積まで非直線的に進行し、凝集および有毒を制御不能にした。この非直線的な進行は、系の適切な制御を防御した。
【0174】
実施例3
発明による安定した細胞系におけるタウの発現
前記の結果に鑑みて、以下のような別の系を用いた。組織培養細胞系DH19.4.1.4.およびそのクローンは、全長タウ、誘導プロモーターの制御下の四つの反復ヒトタウおよび構成プロモーターの制御下の断端されたヒトタウ(295〜391)を発現する3T6細胞(ECACC番号:86120801 スイス・アルビノマウス胚繊維芽細胞)に基にした。
【0175】
誘導プロモーター、T40.22.10の制御下でT40を発現する細胞をpZeo295〜391プラスミドでトランスフェクトした(リポフェクションによる)。陽性細胞を400μg/mlでのゼオシンに対する抵抗性に関して選択した。全長タウの誘導発現のバックグラウンドでの断端されたタウの発現を、Mab7.51でのウェスタンブロット分析により確認した。
【0176】
図21は、二つの細胞系での3T6繊維芽細胞のみにおける全長ヒトタウの誘導発現を説明する。T40.22は、非誘導状態(「U」)およびIPTGの添加後の高レベル発現(すなわち誘導された「I」)での全長タウの低レベルバックグラウンド漏れを示す。T40.37は、同一であるが、より低レベルの誘導を行わない発現を示す。図22は、3重ベクター系の結果を示す。ベクターにより非常に低レベルの12kDフラグメントの構成発現を可能にするベクターを、全長タウの誘導発現が既に達成されている細胞系に導入した(図21で示されるT40.22)。図22は、低レベルのIPTGを導入して全長タウの発現を誘導する場合、何が起こっているのかを示している。IPTG 0μMでは、非常に低レベルの12kDバンドの発現および全長タウの低い「バックグラウンド漏れ」発現がある。IPTGの高レベルの導入によりより多くの全長タウが漸増的に誘導されるので、より多くの全長タウが12kD種に変換されるほど、より多くの中間の高分子量フラグメント(図43および44により詳細に記載されている)が産生される。
【0177】
12kDフラグメントの構成発現のためのベクターを含有しなかった元のT40誘導細胞系(T40.22.10)の試験により、12kD種が全長タウ誘導のトランケーション副産物として産生されないことが示される。T40の誘導の後の12kDバンドの発現の増強は、12kDフラグメントの発現前に低レベルを伴った細胞においてのみ認められた(DH19.4.1.4.6)。すなわち、既存の12kDにより全長タウの誘導後に、より多くの12kDの産生のための鋳型が提供される。細胞を非誘導状態にした場合(例えばDH19.4.1.4A.B2と称する細胞系にて)、〜25/27kDの見かけのゲル可動性を伴う別のダブレットも現れ得る。IPTGでの誘導の後、〜30/32kD、〜36/38kDおよび〜42/44kDのゲル可動性を伴う別の一連のダブレットが現れ得る。
【0178】
これらの種を、誘導なし(「U」)および誘導後(「I」)の双方で図40で示す。mAb342および残基Ser422およびLeu441間に位置するエピトープを認識するC−末端ポリクローナル抗体T46で認められるこれらのフラグメントの免疫反応性のパターンをも示す。
【0179】
非誘導状態で認められるフラグメントの派生(すなわち12/14kDおよび25/27kD)を図41を参照して説明できる。
図41(a)は、矢頭で示されるおおよその位置で全長タウ分子の鋳型誘起タンパク質溶解性プロセシングによりどのように12kDフラグメントを生じるかを示している。
【0180】
25/27kD種の場合、これらのフラグメントは、T46と免疫反応するので、これらのフラグメントは12/14kD種の二量体を呈することができない。したがって、図41(b)の矢頭で示されるおおよその位置で生じる切断により、全長凝集タウの別のタンパク質分解産生物を生じるはずである。
【0181】
誘導後(図40、I)、別の一連のダブレットが認められる。これらの別のフラグメントの派生は、図42〜44を参照にしてよりよく理解できる。
図42は、これらのフラグメントの見かけのゲル可動性のプロットおよびアミノ酸残基におけるその長さを示し、これは、フラグメントの長さの特徴的なセットから見かけのゲル可動性を理解できることを示している。
【0182】
図43で説明されるように、これらのフラグメントは、すべて〜34残基または〜17残基のいずれかの区間にあり、これは、単一のタウ反復またはその半分に等しい。したがって作製されたフラグメント、はすべて、図で示されるように形成された基本的な七量体凝集物から、図43の矢頭で示される位置で生じるタンパク質分解性切断の単純なセットから生じると理解することができる。この概略図では、フラグメントは、凝集物のいずれかの末端で矢頭により示される三つの可能なおおよその位置で生じる提示された切断の全組み合わせのセットとして生じる。mAb342およびこれらのフラグメントに伴うT46で認められる対応する予測される免疫反応性パターンをも表にする。
【0183】
図44は、長さが低下する順およびゲル可動性が増す順でこれらの同一のフラグメントを示す。七量体の凝集は、便宜上、全長タウ分子から専ら生じるとして示されるが、12/14kDフラグメントが提示された凝集内に挿入されて、結合パートナーのいくつかと置換でき、そしてフルセットからの正確なフラグメントが示された実例において優勢である、凝集内のこれらの短いフラグメントの封入の正確なパターンが決定されることは理解されよう。したがって、このタンパク質分解性フラグメントのファミリーは、細胞内で種々の方法で例示され得る可能なレパートリーとしてよりよく理解される。
【0184】
実施例4
タンパク質分解性フラグメントの産生における化合物の阻害効果
12kDのフラグメント(およびその他のもの)の産生が制御され得る安定した細胞系を達成したので、モデルを用いて低減されたチオニンの阻害効果を試験した。これを図23に示す。レーンの各セットでは、より高レベルのT40を誘導する漸増濃度のIPTGの存在下で12kDのバンドの産生が誘導される。チオニン濃度が増加するので、T40からの12kDバンドの産生が、抑制される。これを図24で定量的に示す。チオニンの不在下では、漸増濃度のIPTGでのT40の誘導により、対応する12kDフラグメントの産生の増加が導かれる。チオニン2μMの存在下では、T40は、依然誘導されるが、12kDフラグメントに変換されない。
【0185】
還元チオニン自体が、有毒であるので、高レベルのチオニンで対応するIPTG用量により誘導されるT40のレベルでの還元に関して制御する必要がある。これは、12kD:T40の比率を決定することにより達成でき、これによりIPTGレベルと交わるデータを平均化することが可能になり、そして全長タウに相対して12kDのレベルの用量依存的低下が示される。
T40/12kDアッセイにおける種々化合物の作用を図9〜16に示す。
【0186】
還元物質(DTT/アスコルビン酸塩200μM)の存在下、示される濃度で導入されたチオニンもしくは塩化トロニウム、または還元物質を伴わないで導入されたクロロルプロマジンもしくはタクリンの存在下、IPTG(0、10、25、50μM)で細胞を処置することにより全長タウ(T40)を誘導した後、12kD:T40の比率に関する結果を表す。認められるように、チオニンおよび塩化トロニウムは、実質的に同等な阻害を生み出し、一方クロルプロマジンおよびタクリンは同一の濃度範囲で阻害しない。還元剤単独の効果を対照実験で試験し、還元剤単独の存在下では12kD:T40比に著明な差異は認められなかった。
【0187】
高分子量分解産生物を産生する細胞系の特性もまたMBおよびDMMB(ジメチルメチレンブルー)で試験した。
【0188】
図45で認められるように、DMMBは、細胞モデルにおいて驚くほど可能性があるであることが判明した。IPTG誘導の不在下および誘導後の双方でその阻害活性が認められ得る。DMMB1μMでの処理により、細胞内のすべての分解産生物が、効果的に排除された。MBおよびDMMBを用いる別の実験で、12/14kD種の見かけの基礎産生でさえ凝集により大きく決定されることが示されている。すなわち、295〜391フラグメントの構成的産生自体は、イムノブロットによる検出レベル以下であるか、またはそうでなければイムノブロットにより検出され得る細胞内レベルに到達するように自発的な凝集により安定化される。また別に、IPTG誘導せずに、およびタウ凝集インヒビターでの処置を行わずに認められる12/14kDフラグメントの見かけの基礎レベルは、それ自体、誘導なしで産生されたT40の漏れレベルからの鋳型化凝集依存性産生により決定づけられ得る。基礎条件での12/14kDフラグメントのレベルを決定する因子の組み合わせにかかわらず、強力な凝集インヒビター、例えばDMMBにより、その見かけの発現が、高分子量凝集産生物と共に実質的に排除され得る。これらの結果により更に、図41、43および44に示すように、高分子量タンパク質分解性フラグメント(すなわち30/32、36/38、42/44kD)が、反復ドメインを介して生じる重大なタウ−タウ結合相互作用に依存することが確認される。
【0189】
図46は、細胞内タウ濃度および図10〜16で用いられるインビトロタウ−タウ結合親和性に関する同一の一連の仮説を用いて、12/14kD種の基礎発現に及ぼすDMMBの作用を示す。この場合、DMMBは、細胞4.4nM内での見かけのKIを有することが見出され、そして細胞性B50値は〜100nMである。これは、DMMBが細胞環境内で非常に強力であることを示している。
【0190】
実施例5
還元および酸化化合物の阻害効果の比較
インビトロデータに関して使用するための数学的モデルを用いて、T40:12kD細胞アッセイにおける被験物質の効果を分析した。インビトロデータからのKdおよびKIに関する公知の値を用いて、示された発現を用いて全長タウの細胞内濃度を解釈した(例えば図10参照)。
【0191】
これは約500nMであることが見出されたが、これは、脳および細胞系におけるタウの実験から予測される範囲内である。実験データに対する良好な適合性が得られ、これは、いくつかの化合物に関して、細胞内での断端されたタウ産生の阻害が、実験的にインビトロで決定されたおよそのKdおよびKI値から予測され得ることを意味している。
【0192】
実施例6
ジアミノフェノチアジンの阻害特性の試験
インビトロ研究では、同定された最も活性なタウ−タウ結合インヒビターは、0、2、または3個のメチル基を有するジアミノフェノチアジンの還元形態であった。図25は、かかる化合物の還元形態を示す。図26および27で対応するタウ−タウ結合曲線は、タウに関するモル比の関数として示される。示したように、「脱メチルシリーズ」(0、2または3個のメチル基)化合物は、化合物:タウ「AMR」の3:1〜4:1のモル比(横軸で対数目盛りで示す)でタウ−タウ結合(縦軸で示す)のおよそ50%阻害を生み出す。この群の化合物に関するタウ−タウ結合の50%阻害の平均モル比は、4:1である。
【0193】
4または6個のメチル基(メチル化基)を有するジアミノフェノチアジンは、2相性作用を有し、低濃度でタウ−タウ結合を増強し、高濃度でタウ−タウ結合を阻害する(図27)。したがってこれらの化合物は、タウ−タウ結合を50%阻害するのにより多くのモル比を必要とする。
【0194】
ジアミノフェノチアジン化合物の別の特徴の実験をも行った。ヘテロ環式窒素またはイオウ原子の置換は、化合物の阻害可能性に重篤に干渉することが見出された。同様に、ジアミノ基の除去は、阻害活性に不利益であることが見出された。したがってジアミノおよびヘテロ環式NBおよびS−構造はタウ−タウ結合の阻害における分子の活性に重要であると思われる。
【0195】
比較のために、二つの方法を用いてタウ−タウアッセイにおける阻害活性を決定した:STBは、標準的なタウ濃度448nMで、化合物1および10μg/mlで観察される平均タウ−タウ結合である;LB50は、タウ−タウ結合の50%阻害を生み出す化合物:タウのlog10 モル比である(図28)。図29に示すように、様々な化合物に関するSTBおよびLB50値間に強力な相関性があり、クロルプロマジンおよびリボフラビンは二つの外れ値である(図30および31をも参照)。
【0196】
実施例7
阻害活性および拡散能力
図32は、被験化合物におけるメチル基の数(NMETH)並びに還元電位(E)および拡散係数(DIF)の双方の間に相関性があることを示している。全比較でスピアマンの順位相関を用いた。図32に示すように、メチレンブルーを排除する場合のみ、メチル基の数(NMETH)および還元電位の間に強力な逆関係が認められる(標準体:メチレンブルーを含む相関値;イタリック体:メチレンブルーを排除した相関値)
【0197】
これはメチレンブルーが、このシリーズのメチル基の数(NMETH)に相対して不釣合いに高い還元電位を有していることを示している。メチル基の数および拡散係数(DIF、図32)間にも強力な正相関が存在する。
【0198】
メチル基の数および還元電位間に相関性が観察されない(図33)のと同様に、還元電位および阻害電位間に相関性が観察されなかった(図34b)が、アッセイ条件におけるジアミノフェノチアジンの還元の程度は、還元電位に高度に相関する(図33)。そして実際に、これらの化合物の還元の程度および阻害可能性の間に相関性は存在しない(図34a)。一方、化合物の阻害可能性およびその拡散係数間に強力な逆相関が存在し、そしてより大きな重量が拡散係数に与えられる場合、還元係数および拡散係数の1次関数として推定LB50およびSTB値を予測することが可能である(図35、36および37)。LB50およびSTB値の双方は、3を含んで3までのNMETH値に関して一様に低いことが見出されるが、より高いNMETH値に関しては(とりわけメチレンブルー、NMETH=4)、メチル基の数に相対して阻害可能性は不釣合いに低い。これは、拡散係数により測定されるように、分子のスタッキング能力に干渉するメチル基の対称的な配置に関係し得る。これは、例えばメチレンブルーの結晶性構造において認められる(図38参照)。ジアミノフェノチアジン分子は、実質的に平面的でスタッキングアレイを形成する。分子における荷電の存在は、酸化形態と同様に、かかるスタッキングアレイの形成を防御し、そしてこの化合物の還元形態が、シリーズの阻害可能性を決定するかようなスタッキング関係を形成する傾向があるように思われる。
【0199】
本発明者らにより実施された実験は、WO96/30766に更に詳細に記載されるように、水相における全長タウの、固相におけるタウの断端された反復ドメインフラグメントに対する結合を試験した。mAb342またはmAb499のいずれかで結合を検出した。図39に示すように、大過量の標準的な還元剤ジチオスレイトール(DTT、1mM)の存在下、典型的なタウ濃度依存的タウ−タウ結合が存在する。しかしながら、前記したアッセイの標準的な形態において、フェノチアジンの阻害活性もまたDTT(1mM)の存在下で実証される(すなわちSTBおよびLB50に関するデータ)。本発明者らは、阻害活性は、DTTそのものに起因し得るものではなく、むしろ過剰のDTTによる還元形態でのフェノチアジンの存在に起因すると結論付ける。
【0200】
要約すると、本発明者らは本明細書にて、タンパク質の立体配座重合が誘起されるアルツハイマー病のごとき、例えばアルツハイマー病の場合で病理学的なタウ−タウ結合により説明されるような疾患の処置および予防のための強力で著明に改善された系を提供する。本出願の重要な教示、すなわち化合物の拡散係数が、この立体配座タンパク質重合の誘起に対するその阻害可能性の決定において重要であり得るということは、アルツハイマー病のごとき疾患の理解の進歩、およびその治療を提供する能力において大きな利益がある可能性がある。最後に、MBの還元形態の嗜好性に関する知見、および単にインビトロデータに基づいて予測された値よりも実質的に低い濃度での細胞ベースのアッセイにおけるその活性の実証を組み合わせることにより、本発明者らはこの化合物および同様のその他のものをADおよび関連障害の予防または処置に適当な還元処方として使用できることを示している。
【0201】
【表3】







【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】対になったらせんフィラメントの構造(上)およびアルツハイマー病の進行中の神経原繊維濃縮体の免疫化学(下)の概略図を示す。
【図2】重要な核形成因子がタウ捕捉を開始し、次いで自己触媒性になる「種」を提供する概念図を示す。
【図3】アルツハイマー病の推定される病原モデルを示す。タウ凝集は、軸索輸送の失敗およびその結果であるニューロン死に先行する最も近い過程である。タウ凝集カスケードは、タウ遺伝子の上流の変化から、または1次突然変異から生じる種まき/核形成事象のいずれかにより誘発される。
【図4】細胞中にいくつかの既存の12kDタウがある場合、全長タウの誘導がどのようにその12kDフラグメントへの変換に至り得るかを示す。
【図5a】タンパク質凝集の疾患において役割を果たすタンパク質を列挙する表を示す。疾患そのもの、関与すると考えられる凝集ドメインおよび/または突然変異、および推定(最大)フィブリルサブユニットの大きさをも列挙している。各タンパク質に関する一つまたはそれ以上の文献参照を提示する。
【図5b】タンパク質凝集の疾患において役割を果たすタンパク質を列挙する表を示す。疾患そのもの、関与すると考えられる凝集ドメインおよび/または突然変異、および推定(最大)フィブリルサブユニットの大きさをも列挙している。各タンパク質に関する一つまたはそれ以上の文献参照を提示する。
【図6】N−およびC−断端されたタウの異なる形態に対する種々モノクローナル抗体の結合部位の概略図を示す。
【図7a】ヒトタウタンパク質アイソフォームのヌクレオチドおよび予測されるアミノ酸配列を示す。配列はcDNAクローンhtau40から導いた。
【図7b】ヒトタウタンパク質アイソフォームのヌクレオチドおよび予測されるアミノ酸配列を示す。配列はcDNAクローンhtau40から導いた。
【図8】チオニン、塩化トロニウム、クロロプロマジンおよびタクリンの構造を示す。
【図9】ジアミノフェノチアジンに関する細胞アッセイデータ、および構造的に関連するアンスロキノンを本明細書で記載するように決定した見かけのKI値と共に提示する。本明細書の図および実施例では、別のパラメーターB50を計算して細胞ベースのアッセイの条件に直接関連する様式で活性を発現し、そしてしたがって対応するインビボ活性を達成するのに必要な組織濃度の指数を提供した。B50値は、細胞アッセイで用いられた被験化合物の濃度であり、そのアッセイでは、全長タウからの12kDバンドの相対的産生が、化合物不在で観察された値の50%まで低減した。見かけのKI値およびB50値間には以下のような単純な直線的関係がある: 細胞性B50=0.0217 x KI 治療用化合物の相対的な有用性を比較するために、LD50値を計算するのが望ましい。阻害特性が、類似する場合、臨床使用に好ましい化合物は、LD50値が最も高い化合物でよい。治療指数(Rxインデックス)を以下のように細胞アッセイにおいて試験された各化合物に関して計算できる: Rxインデックス=LD50/B50 残存細胞の溶解の後、乳酸塩デヒドロゲナーゼアッセイキットTOX−7(シグマ・バイオサイエンシズ)を用いて製造者の指示書に従って、化合物に24時間暴露した後の細胞数により化合物の有毒を測定できる。また別に、プロメガUK(CytoTox 96)のキットを製造者の指示書に従って用いることができる。
【図10】7つの実験の一連のデータに基づく、本発明の還元チオニンを用いた結果を示す。12kDバンドの産生に関して観察された細胞データを、インビトロのタウ−タウ結合の阻害を記載する標準関数に密接に適合させることができる(すなわち観察された相関係数対予測された相関係数>0.9)。この適合を得るために、別の細胞ベースの研究およびインビトロ研究からの結果と一致する二つの仮説: 1)タウの細胞内濃度は、およそ500nMである; 2)タウ−タウ結合親和性は、22nMである。を作る必要があり、これらの仮説を用いて標準阻害モデルにより予測される細胞活性に関する関数: 活性=[タウ]/[タウ]Kd(1+[チオニン]/KI)を見かけのKIの値を誘導する標準的な数的方法により解くことができる。示したように、チオニンの還元形態の値は、100nMであり、これはタウ濃度500nMでインビトロのタウ−タウ結合に関して観察された値と実質的に同一であり、この場合、タウ−タウ結合に関するKd値は、22nMであることが解っている。したがって、チオニンの活性は、この場合読み出しは全長タウからの12kDトランケーション産生物の産生であり、細胞内の反復ドメインを通って生じるタウ−タウ結合の阻害の程度に基づいて定量的に説明できる。これによりタウ−タウ結合の程度が、細胞内PHFのタンパク質分解的に安定したコアタウユニットの産生を決定することが確認される。 タウ細胞内濃度(500nM)および反復ドメインを介するタウ−タウ結合親和性(22nM)に関する同一の仮説を用いて、その他の化合物の活性の後続のすべての細胞分析を同一の標準化された様式で報告する。
【図11】還元剤を省略した条件に関する結果を示す(すなわち酸化チオニン、図10参照)。 再度細胞活性を標準阻害モデルにより予測する: 活性=[タウ]/[タウ]Kd(1+[酸化チオニン]/KI) この場合、チオニンは、ここで1200nMの見かけのKI値を有する。これにより、ジアミノフェノチアジンが、活性のために還元形態を必要とすることが確認される。同様の結論が、インビトロ結合データかの分析から誘導された(結果は示していない)。
【図12】還元または部分的還元条件を用いることにより、メチレンブルーが、細胞ベースアッセイにおいて、アッセイの時間経過(1〜2時間)が、還元を達成するのに十分ではないインビトロ研究から予測されるものよりも更に活性なようであることを示している。 細胞活性は、再度、標準阻害モデルにより予測される: 活性=[タウ]/[タウ]Kd(1+[MB]/KI) 細胞活性では、メチレンブルーの見かけのKI値は、123nMであり、これはチオニンおよび塩化トロニウムと同一の範囲内である。図9で示すように、タウ凝集を阻害するのに必要とされる対応する脳組織濃度(すなわちB50値)は2〜3μMである。
【図13】還元塩化トロニウムの対応する細胞ベースの活性データを示し、これは、再度、インビトロ研究から誘導された予測されるKI値を用いて、細胞内の全長タウからの12kDフラグメントの産生について記載することができる。 細胞活性は、標準阻害モデルにより予測される: 活性=[タウ]/[タウ]Kd(1+[TC]/KI) これにより用いた数学的分析手順の正当性が更に確認される。
【図14】構造的にジアミノフェノチアジンに関連するDH12が、アッセイ条件において不活性であることを示している。
【図15】クロルプロマジンおよびタクリンは各々別にして、前記の図9〜14で提示されたものに対する類似の分析を示す。同一の仮説(タウ濃度415nM、およびタウ−タウ結合Kd 22nM)、および標準阻害モデルにより予測される細胞活性: 活性=[タウ]/[タウ]Kd(1+[cpz]/KI)を用いると、クロロプロマジンおよびタクリンの見かけのKI値(各々2117nMおよび802nM)は、インビトロ研究から予期されたものよりも大きい。
【図16】クロルプロマジンおよびタクリンは各々別にして、前記の図9〜14で提示されたものに対する類似の分析を示す。同一の仮説(タウ濃度415nM、およびタウ−タウ結合Kd 22nM)、および標準阻害モデルにより予測される細胞活性: 活性=[タウ]/[タウ]Kd(1+[cpz]/KI)を用いると、クロロプロマジンおよびタクリンの見かけのKI値(各々2117nMおよび802nM)は、インビトロ研究から予期されたものよりも大きい。
【図17】DTT存在下での種々化合物の還元の程度を示す。
【図18】MB:ビタミンCの比率に対してプロットされたMBの還元パーセントを示す。
【図19a】標的組織濃度を4μM(すなわち1.5μg/g)と想定することにより、このオーダーの組織濃度が、IV投与量0.11mg/kgで達成されるというDiSantoおよびWagner(1972)のデータから決定することが可能であることを示している。
【図19b】70kgの対象に一回で100mg投与の後のMBの分布に関するモデルを示し、即時的吸収が想定される。
【図20】顕微鏡的および生化学的実験の双方のデータに基づいて、3T3およびCOS−7細胞におけるタウフラグメントの一過性発現の結果を要約する。 真核細胞における組換えタウフラグメントの発現を以下のように実施した。3T3細胞およびCOS−7細胞において一過性に発現された8個のタウ構築物を、免疫細胞化学およびイムノブロットにより試験した。各細胞型における発現の程度を、双方の一連の結果に基づいて半定量的に提示した:−、発現検出不能;±、非常に弱い免疫反応性;+から++++、免疫反応陽性の増加レベル。すべての場合で、mAb7.51を各構築物と共に用いて結果を得た。加えて、タウタンパク質の異なるドメインに対する抗体パネルを用いることにより特異性を各構築物に関して確認した(mAb 499、T14、タウ1、342、7.51、423およびT46)。コザック配列は、最初の6個の構築物には存在しなかったが、cDNA構築物7および8には存在した。
【図21】二つの細胞系の3T6繊維芽細胞における全長ヒトタウの発現誘導を説明する。T40.22は、非誘導状態の全長タウ(「U」)の低レベルバックグラウンド漏れおよび、IPTG添加後の高レベル発現(すなわち誘導「I」)を示す。T40.37は、同一であるが、誘導なしでは発現レベルが低いことを示している。
【図22】3重ベクター系の結果を示す。12kDフラグメントの非常に低レベルの構成発現が可能なベクターを、全長タウの発現誘導が既に達成されている細胞系に導入した(実際に、細胞系T40.22は、前記の図21に示される)。低レベルのIPTGを導入して全長タウの発現を誘導する。IPTG 0μMでは、12kDバンドの非常に低レベルの発現、および全長タウの低い「バックグラウンド漏れ」発現がある。より高レベルのIPTGを導入することにより、累進的に多くの全長タウが誘導され、より多くの全長タウが12kD種に変換される。
【図23】還元チオニンの阻害効果を示す。各々のレーンのセットで、漸増濃度のIPTGの存在下、12kDのバンドの産生が誘導され、より高レベルのT40が誘導される。チオニンの濃度が増加するので、T40からの12kDバンドの産生が抑制される。
【図24】図23mの定量的な結果を示す。チオニンの不在下では、漸増濃度のIPTGでのT40の誘導により12kDフラグメントの対応する産生増加が導かれる。チオニン2μMの存在下では、T40の誘導が依然存在するが、12kDフラグメントには変換されない。
【図25】種々化合物に関するインビトロKI値をnMで比較として示す。KI値は、用いた特定のアッセイ条件に関連する(500:1 DTT:化合物。120分、図17参照)。
【図26】各々0、2、3または0、4、6個のメチル基を有するフェノチアジンのタウ−タウ結合に及ぼす阻害効果を示す。
【図27】各々0、2、3または0、4、6個のメチル基を有するフェノチアジンのタウ−タウ結合に及ぼす阻害効果を示す。
【図28】被験化合物によるタウ−タウ会合の阻害を測定するのに有用な二つのパラメーターの導出を示す。STBは、化合物の不在下で認められるものに相対して標準化された結合であり、1および10μg/mlで観察された平均と見なす。WO96/30766に記載されるように、1.0のSTB値は、化合物の不在下で観察される値に等価の結合を示すが、一方0.2の値は、被験化合物濃度1および10μg/mlで結合が平均20%まで低減したことを示している。LB50は、化合物不在下で認められる値と比較して50%タウ−タウ結合を産生する化合物:タウのモル比(B50)のlog10である。
【図29】STBおよびLB50パラメーター間の関係を示す。STBは、LB50の一次関数であることを示すことができる。 STBは、タウ−タウ結合が、50%低減している化合物:タウのモル比の対数関数である。 LB50は、タウ−タウ結合が化合物の不在下で観察された値の50%であるタウに関する化合物のモル比のlogである: LB50=0.05+(2.65 x STB) r=0.95 インビトロB50の決定には、ある程度のタウ−タウ結合の阻害が存在し、そして50%の値が外挿法により得られることが必要である。STBの決定には、かかる外挿手順を必要としない。
【図30】STBおよびB50値の双方が決定された化合物を示す。細胞における全タウ濃度がおよそ500nMである(すなわちアッセイで用いたタウの濃度)と仮定すると、B50値は、インビトロアッセイにおいて細胞系で活性が予測され得る濃度(すなわち[500 x B50]nM)に対する近似値を提供する。
【図31】一連のジアミノフェノチアジンに関するインビトロLB50値およびlog KI値間の形式的な関係を示す。
【図32】ジアミノフェノチアジンにおけるメチル基の数(NMETH)並びに酸化還元可能性(E)および拡散係数(DIF)間の関係を示す。イタリックの文字は、MBを排除した後の相関係数(R)およびp値を示す。
【図33】実験的に決定された還元されている化合物のパーセント、および化合物の公知の還元可能性間の関係を示す。還元電位により、観察されたジアミノフェノチアジンの還元の程度が予測される。
【図34a】阻害可能性および化合物の還元の程度の間に明白な関係がないことを示している。
【図34b】阻害可能性が単純に還元電位により決定されないことを示している。
【図35】阻害可能性が直接、拡散係数に関係し得ることを示している(これは、還元形態のスタックおよび凝集の傾向を測定する)。
【図36】各々推測されたLB50(「ESTLB50」)およびSTB(「ESTSTB」)値、並びに還元電位および拡散係数間の予測された関係を示し、ここで拡散係数は、大きく増量されている。
【図37】各々推測されたLB50(「ESTLB50」)およびSTB(「ESTSTB」)値、並びに還元電位および拡散係数間の予測された関係を示し、ここで拡散係数は、大きく増量されている。
【図38】メチレンブルーの結晶構造を示す。
【図39】WO96/30766の固相アッセイで測定される1mM DTTの存在下のタウ−タウ結合を示す。二つの異なる抗体、すなわちmAb 342(上)および499(下)を用いてタウ−タウ結合を検出した。縦軸は、タウ−タウ結合を表し、横軸は、水層における全長タウの濃度を示し、そして記号表は、固相タウの濃度変化を示す。見られるように、タウ−タウ結合は、DTT存在下で依然生じている。
【図40】本発明の細胞系で誘導なし(「U」)および誘導後(「I」)に存在する様々な種のタウフラグメントおよびダブレットを示す。これには12/14kD、〜25/27kD、〜30/32kD、〜36/38kDおよび〜42/44kDに等価な可動性を有する種が含まれる(実施例3参照)。
【図41】Aは、どのように矢頭で示されるおおよその位置でタウ分子全長の鋳型誘起のタンパク質分解性プロセシングにより12kDフラグメントを生じるかを示している。Bは、どのように矢頭で示されるおおよその位置でタウ分子全長の鋳型誘起のタンパク質分解性プロセシングにより25/27kD種を生じるかを示している。
【図42】図40〜41の種の見かけのゲル可動性のプロットおよびアミノ酸残基におけるその長さを示す。
【図43】図40〜42のフラグメントが一回のタウ反復またはその半分と等価である〜34残基または〜17残基のいずれかの間隔であることを示している。矢頭で示す位置で生じたタンパク質分解性切断の単純なセットとして基本的な七量体凝集からすべてのフラグメントを生じることができる。
【図44】これらの同一のフラグメントを長さが下降する順およびゲル可動性が増加する順で示している。
【図45】DMMBが細胞モデルにおいて驚くほど強力であることを示している。その阻害活性はIPTG誘導の不在下、および誘導後の双方で認められた(実施例4参照)。
【図46】図10〜16で用いた細胞内タウ濃度およびインビトロタウ−タウ結合親和性に関する同一の一連の仮説を用いて、12/14kD種の基底発現におけるDMMB活性を示す。 細胞活性は、標準的な阻害モデルにより予測される: 活性=[タウ]/([タウ]Kd*(1+[DMMB]/Ki)) DMMBは、細胞内で4.4nMの見かけのKIを有し、細胞B50値は〜100nMである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定した細胞系における前駆体タンパク質を産生物フラグメントにタンパク質分解的に変換する方法であって、前駆体タンパク質は、前駆体タンパク質が病理学的に凝集する病態に伴い、
下記工程:
(a)下記:
(i)鋳型フラグメントが、細胞に対して有毒でないレベルで、細胞において構成的に発現されるような前駆体タンパク質の鋳型フラグメント;および
(ii)タンパク質が刺激に応答して細胞において誘導的に発現される、前駆体タンパク質;
をコードする核酸でトランスフェクションされた安定した細胞系を提供すること
を含み、それにより鋳型フラグメントと前駆体タンパク質との相互作用が、前駆体タンパク質の産生物フラグメントへの凝集およびタンパク質分解性プロセシングのような前駆体タンパク質における立体配座変化を引き起こす方法。
【請求項2】
病理学的凝集が、神経変性および/または臨床痴呆に伴う病態における前駆体タンパク質のタンパク質分解性プロセシングを導く、請求項1記載の方法。
【請求項3】
病態における前駆体タンパク質の病理学的凝集が、コアドメインフラグメントおよび少なくとも鋳型タンパク質のコアフラグメントを含む鋳型フラグメントへのタンパク質分解性プロセシングを導く、請求項1または請求項2記載の方法。
【請求項4】
鋳型フラグメントが、実質的にコアフラグメントからなる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
細胞において産生される産生物フラグメントが有毒である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
産生物フラグメントが、鋳型フラグメントと同一である、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
複数の異なる産生物フラグメントが産生される、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
細胞において前駆体タンパク質を誘導的に発現させるような刺激に細胞を供する工程を含む、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
少なくとも一つの産生物フラグメントの産生をモニターする、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
病態に伴う前駆体タンパク質の凝集および/またはタンパク質分解性プロセシングのモジュレーターを同定する方法であって、下記:
(a)凝集を調整することができることが推測される作用物質を提供すること、
(b)作用物質の存在下で請求項9記載の方法を実施すること、
(c)モニターされた産生物または各々の産生物フラグメントの産生を作用物質の調整活性と相関させること
を含む方法。
【請求項11】
工程(b)が、
(a)細胞を一つ以上のプレート上で培養すること、
(b)作用物質が、細胞内に入るのに十分な時間、細胞を作用物質と共にインキュベーションすること
により実施される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
作用物質を細胞に導入して最終濃度を1〜50μMにする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
複数の異なる産生物フラグメントの産生をモニターする、請求項10〜12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
モニターされたその産生物または各々の産生物フラグメントの産生を基準値と比較する、請求項10〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
作用物質の不在下でこの方法を実施することにより基準値が得られる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
提供される作用物質が、血液脳関門を通過することができるように選択される、請求項10〜15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
作用物質の拡散係数を測定し、そして拡散係数を作用物質阻止可能性と相関させることにより、提供される作用物質を選択する工程を含む、請求項10〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
更に作用物質に関してB50を計算する工程を含む、請求項10〜17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
更に作用物質の細胞生存性に及ぼす影響を評価する工程を含む、請求項10〜18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
更に作用物質に関してLD50を計算する工程を含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
作用物質に関して治療指数を計算する工程を含む、請求項18および20記載の方法。
【請求項22】
前駆体タンパク質が、タウタンパク質である、請求項1〜21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
鋳型フラグメントが、タウのコアフラグメントを含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
鋳型フラグメントが、図7に示す全長タウタンパク質のアミノ酸186〜297から390〜441に広がるタウのフラグメントを含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
鋳型フラグメントが、図7に示す全長タウタンパク質のアミノ酸295、296または297からアミノ酸残基390または391に広がるタウのフラグメントからなる、請求項24記載の方法。
【請求項26】
タウのおよそ12、14、25、27、30、32、36、38、42または44kDaの産生物フラグメントの産生をモニターする、請求項22〜25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
タウのおよそ12kDaの産生物フラグメントの産生をモニターする、請求項26記載の方法。
【請求項28】
その産生物または各々の有毒産生物フラグメントの産生をSDS PAGEでモニターする、請求項22〜27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
その産生物または各々の有毒産生物フラグメントの産生を免疫学的にモニターする、請求項22〜28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
(i)タウのGly−16およびGln−26の間の領域に位置するヒト特異的エピトープに特異的であるか、(ii)Glu−391で断端されたコアタウフラグメントに特異的であるか、(iii)反復ドメインの一般的タウエピトープに特異的であるか、または
(iv)Ser−208〜Ser−238の間に位置する種非特異的一般的タウエピトープに特異的である、モノクローナル抗体から選択される抗体をモニターで用いる、請求項29記載の方法。
【請求項31】
可溶性全長タウを捕捉するために固相基質に吸収されているコア反復ドメインに対応するタウのフラグメントの能力を調整する作用物質の能力を決定することにより提供される作用物質を選択する工程を含む、請求項22〜30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
作用物質が、フェノチアジンである、請求項22〜31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
作用物質が、還元型フェノチアジンである、請求項32記載の方法。
【請求項34】
(a)請求項22〜32のいずれか一項記載の方法を実施すること、
(b)2を越える治療指数を有するモジュレーターを選択すること
を含むタウオパチーの処置のための治療用または予後用物質として使用するための医薬品をスクリーニングする方法。
【請求項35】
「疾患」が、アルツハイマー病、運動ニューロン病、レビ小体疾患、ピック病または進行性核上性麻痺から選択される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
(a)請求項34または請求項35記載の方法を実施して医薬品を同定すること、
(b)単離された形態の医薬用物質を提供すること
を含むタウオパチーの処置のための治療用または予後用モジュレーターとして使用するための医薬品を製造する方法。
【請求項37】
更にタウオパチーの処置に使用するための医薬用組成物として作用物質を処方することを含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
更にタウオパチーの処置の方法における医薬用組成物の使用を含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
調製が少なくとも80、90、95、または99%還元(ロイコ)形態で存在するようにフェノチアジンを前還元する工程を含む、タウオパチーの処置または予防に使用するための医薬用組成物の調製におけるフェノチアジンの使用。
【請求項40】
フェノチアジンが、外来性還元剤を添加することにより前還元される、請求項39記載の使用。
【請求項41】
還元形態が、安定剤の添加により還元状態で安定化される、請求項40記載の使用。
【請求項42】
還元形態が、安定剤と共に凍結乾燥されている、請求項41記載の使用。
【請求項43】
タウオパチーの処置または予防において使用するための医薬用組成物の調製における前還元されたフェノチアジンの使用であって、ここで医薬品が、少なくとも80、90、95、または99%のフェノチアジンの還元(ロイコ)形態を含む、前還元されたフェノチアジンの使用。
【請求項44】
医薬用組成物が、更に下記:
医薬上許容される賦形剤、担体またはバッファーの1つ以上を含む、請求項39〜43のいずれか一項記載の使用。
【請求項45】
医薬用組成物が、徐放性処方として調製される、請求項44記載の使用。
【請求項46】
フェノチアジンが、ジアミノフェノチアジンである、請求項39〜45のいずれか一項記載の使用。
【請求項47】
前還元された(ロイコ)フェノチアジンが、式:
【化1】


(式中、R1、R3、R4、R6、R7およびR9は、独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、置換されたまたは置換されていないアルキル、ハロアルキルまたはアルコキシから選択され;R5は、水素、ヒドロキシ、カルボキシ、置換されたまたは置換されていないアルキル、ハロアルキルまたはアルコキシから選択され;並びにR10およびR11は、独立して水素、ヒドロキシ、カルボキシ、置換されたまたは置換されていないアルキル、ハロアルキルまたはアルコキシから選択される)
を有するか、またはその医薬上許容される塩である、請求項39〜46のいずれか一項記載の使用。
【請求項48】
R1、R3、R4、R6、R7およびR9は、独立して水素、−CH3、−C25または−C37から選択され;R10およびR11は、独立して水素、−CH3、−C25または−C37から選択され;そして
R5は、水素、−CH3、−C25または−C37である、請求項47記載の使用。
【請求項49】
フェノチアジンが、ジアミノフェノチアジン核の回りに0、2、3、または4個のメチル基を有しているジアミノフェノチアジンである、請求項46〜48のいずれか一項記載の使用。
【請求項50】
フェノチアジンが、非対称的にメチル化されているジアミノフェノチアジンである、請求項46から49のいずれか一項記載の使用。
【請求項51】
フェノチアジンが、塩化トロニウム、アズールA、アズールBおよびチオニンである、請求項50記載の使用。
【請求項52】
フェノチアジンが、メチレンブルー、トルイジンブルーOまたは1,9−ジメチルメチレンブルーから選択される、請求項46〜49のいずれか一項記載の使用。
【請求項53】
フェノチアジンが、少なくとも80、90、95、または99%の還元(ロイコ)形態である、請求項47〜52のいずれか一項記載の前還元されたフェノチアジンを安定剤と組み合わせて含む、医薬用組成物。
【請求項54】
安定剤と共に凍結乾燥されている、請求項53記載の医薬用組成物。
【請求項55】
安定剤が、アスコルビン酸塩である、請求項53または請求項54記載の医薬用組成物。
【請求項56】
タウオパチーの処置または予防に使用するための、請求項53〜55のいずれか一項記載の医薬用組成物。
【請求項57】
請求項53〜55のいずれか一項記載の医薬用組成物の使用を含むタウオパチーの処置方法。
【請求項58】
治療または予防が、予防的有効量または治療的有効量の医薬用組成物を同一物を必要とする患者に与えることを含む、請求項34〜52、請求項56または請求項57のいずれか一項記載の方法、使用または組成物。
【請求項59】
治療または予防が、同一物を必要とする患者に全溶解固形物20mg、全溶解固形物50mg、または全溶解固形物100mgを2倍のmg比率のアスコルビン酸と組み合わせて、摂取前にフェノチアジンが90%を超える還元を達成するような様式で与えることを含む、請求項39〜52、請求項56または請求項57のいずれか一項記載の方法、使用または組成物。
【請求項60】
治療または予防が、チオニンであるフェノチアジンを患者に与えることを含み、そしてこれを患者に一日当たりの用量で1〜1000mgを、場合によっては1〜8単位に分割して与える、請求項39〜52、請求項56または請求項57のいずれか一項記載の方法、使用または医薬用組成物。
【請求項61】
治療または予防が患者にメチレンブルーであるフェノチアジンを患者に与えることを含み、そして一日当たりの用量がおよそ3.2〜3.5mg/kgである、請求項39〜52、請求項56または請求項57のいずれか一項記載の方法、使用または医薬用組成物。
【請求項62】
方法が、(i)鋳型フラグメントが、細胞に対して有毒でないレベルで構成的に細胞において発現されるような前駆体タンパク質の鋳型フラグメント;および
(ii)タンパク質が、刺激に応答して細胞において誘導的に発現される前駆体タンパク質;
をコードする核酸を細胞に導入する工程を含む、請求項1〜38のいずれか一項記載の方法において使用するための安定した細胞を産生する方法。
【請求項63】
前駆体タンパク質をコードする核酸が、lac誘導性プロモーターに作動可能に連結されている、請求項62記載の方法。
【請求項64】
前駆体タンパク質の発現が、IPTGを1〜50mMで添加することにより誘導される、請求項63記載の方法。
【請求項65】
鋳型フラグメントをコードする核酸が、サイトメガロウイルスプロモーター配列に作動可能に連結されている、請求項62〜64のいずれか一項記載の方法。
【請求項66】
鋳型フラグメントをコードする核酸が、鋳型ベクターとして導入され、そして前駆体タンパク質をコードする核酸が、別個の前駆体タンパク質ベクターとして導入される、請求項62〜65のいずれか一項記載の方法。
【請求項67】
前駆体タンパク質ベクターが、前駆体タンパク質をコードする核酸がクローン化されているpOPRSVICATベクターに由来する、請求項66記載の方法。
【請求項68】
鋳型フラグメントベクターが、前駆体タンパク質をコードする核酸がクローン化されているプラスミドpZeo295〜391ベクターに由来する、請求項66または請求項67記載の方法。
【請求項69】
前駆体タンパク質が、タウである、請求項62〜68のいずれか一項記載の方法。
【請求項70】
鋳型フラグメントをコードする核酸が、タウのコアフラグメントをコードする、請求項69記載の方法。
【請求項71】
鋳型フラグメントをコードする核酸が、全長タンパク質のアミノ酸186〜296から390〜441の間に広がるタウのフラグメントをコードする、請求項70記載の方法。
【請求項72】
鋳型フラグメントをコードする核酸が、図7で示す全長タウタンパク質のアミノ酸295、296または297からアミノ酸残基390または391に広がるタウのフラグメントをコードする、請求項71記載の方法。
【請求項73】
鋳型フラグメントをコードする核酸が、図7で示すアミノ酸残基295〜391に広がるタウのフラグメントをコードする、請求項72記載の方法。
【請求項74】
(i)鋳型フラグメントが、細胞に対して有毒でないレベルで細胞において構成的に発現されるような前駆体タンパク質の鋳型フラグメント;および
(ii)疾患タンパク質が、刺激に応答して細胞において誘導的に発現される前駆体タンパク質;
をコードする核酸を含む物質の組成物であって、その核酸は、請求項62〜72のいずれか一項に記載されている、組成物。
【請求項75】
(i)鋳型フラグメントが、細胞に対して有毒でないレベルで細胞において構成的に発現されるような前駆体タンパク質の鋳型フラグメント;および
(ii)疾患タンパク質が、刺激に応答して細胞において誘導的に発現される前駆体タンパク質;
を発現するように、請求項74の核酸で形質転換された哺乳動物宿主細胞。
【請求項76】
ニューロン細胞系または繊維芽細胞系に由来する、請求項75記載の細胞。
【請求項77】
以下の細胞系:3T3;NIE−115;3T6;N2A;SY5Y;COS−7から選択される、請求項76記載の細胞。
【請求項78】
前駆体タンパク質の刺激性産生のための作用物質または前駆体タンパク質の鋳型フラグメントとの相互作用を検出するための作用物質から選択される少なくとも一つの別の成分に加えて、請求項75〜77のいずれか一項記載の宿主細胞を含むキット。
【請求項79】
検出用作用物質が、抗体である、請求項78記載のキット。
【請求項80】
下記:
5’−3’ T40−NotI
5’−gtc gac tct aga ggc ggc cgc ATG GCT GAG CCC CGG CAG GAG−3’
3’−5’ T40−NotI
5’−act ctt aag ggt cgc ggc cgc TCA CAA CAA ACC CTG CTT GGC CAG−3’
295センスプライマー
5’−CGG AAT TCC ACC ATG GAT AAT ATC AAA CAC GTC CCG−3’
391アンチセンスプライマー
5’−C GCG GGA TCC TCA CTC CGC CCC GTG GTC TGT CTT GGC−3’
から選択される核酸プライマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19a】
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【図19b】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34a】
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【図34b】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【公開番号】特開2009−35549(P2009−35549A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−188134(P2008−188134)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【分割の表示】特願2002−556766(P2002−556766)の分割
【原出願日】平成14年1月15日(2002.1.15)
【出願人】(507092584)ウイスタ・ラボラトリーズ・リミテッド (7)
【氏名又は名称原語表記】WISTA LABORATORIES LTD.
【Fターム(参考)】