説明

移動を検出する方法および無線装置

【解決手段】本発明は、少なくとも一つの固定送信機から少なくとも一つの受信機に無線信号を送信し、受信信号を評価して移動を決定する、少なくとも一つの受信機の移動を検出する方法および無線装置に関する。無線信号は、高周波搬送波上に変調された規定ビットシーケンスとして設計され、受信機によって復調されて受信シーケンスを形成し、基準シーケンスとして記憶された規定ビットシーケンスとの相関が取られて一致が判定される。相関によって定まる一致またはエラーに応じて、受信した無線信号の受信電界強度の品質指標が求められる。規定ビットシーケンスを有する無線信号は、少なくとも二つの送信電力を有する送信機から一シーケンス内に送信される。このシーケンスが時間間隔で繰り返され、受信したシーケンスの品質指標が評価されて送信機に対する受信機の移動が決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの省電力受信機の移動を検出する方法および無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線システム内での距離および移動についての情報を与えるために、受信電界強度またはこれに依存する値を評価することが知られている。例えば一つの平面内でのモバイル無線ノードの位置を決定するためには、複数の、例えば少なくとも3つの距離評価が必要となる。
【0003】
さらに、テキサスインスツルメンツによるいわゆるZigbee(登録商標)技術に基づく位置決め方法が知られている。しかしながら、使用される統合無線受信機(例えばCC2420)は電流消費が大きく、電池を用いる運用は一日未満に限られてしまう。
【0004】
統合無線受信機では、受信信号の品質をいわゆるRSSI信号(受信信号強度表示)としてユーザに提供することが広く行われている。一般に、高周波受信搬送信号の振幅の対数レベル次元に対応するアナログ電圧がこれによって生成される。このようなRSSI信号の生成は一連の対数増幅器セルを用いて実施され、加算される個々の特性線が、より大きな入力レベルを持つ全体特性線を形成する。RSSI信号を生成するために、無線受信機の高周波受信部が作動される。受信信号の品質を表す利用可能な信号を作成するアナログRSSI回路の電流要件では、電池を用いての何年もの動作は不可能である。一連の対数増幅器は、様々な周波数範囲に対する個々のICとして市販されている。最も経済的なICは、最大2.7GHzで作動し、−21dBm〜+5dBmの入力レベルを許容し、電流消費は1.1mAである。このようなRSSI部品を持つ無線受信機の動作期間は、容量210mAhの電池作動では8日未満に限定される。電流消費が比較的高いために、ポーリングなどのスイッチを切る概念が使用されない限り、省エネルギーが不可能であり、電池で作動するアプリケーションが不可能になっている。
【0005】
標準的なトランシーバに基づく、センサノードネットワークとも呼ばれる無線ノードネットワークでは、電流を節約するためにいわゆるポーリングが使用される。これによると、受信機は短期間特定の時間でのみ起動される。この時間の間に通信が終結し、その後受信機が再び電源オフにされる。それゆえ、時間の大半にわたり受信機は機能しておらず、無線接続は到達不可能である。その結果、反応時間が増加するか、または望ましくない遅延期間が生じる。これは、例えば、ポーリングモードで動作する無線受信機がメッセージを受信するまでに、かなり長時間にわたる送信を行わなくてはならないという事実につながる。その結果、無線チャネルが常に占有されることが時々生じうる。一年の桁の動作期間を実現するためには、標準的なトランシーバのこのような受信機を、一分間スイッチオフにし、その後短時間(すなわち、約28μAの平均電流に対して適用するとき、0.1秒未満のオーダー)スイッチオンにする必要がある。
【0006】
既に言及したように、RSSI信号を提供するPLL方式の標準的な無線受信機の電流消費は、10mAを上回る。それにも関わらず、この種の受信機は、ポーリング方式を用いれば電池で使用することができる。しかしながら、ポーリングで動作する無線ネットワークでは、無線ノードの反応時間が等しく増加し、デューティサイクルが減少する。これは、多くのアプリケーションでは容認し得ないものである。
【0007】
例えば超再生受信機または検出受信機として省電流受信機を作成することができる。実現可能な電流消費は約100μAである。電流消費を低く維持するために、省電力受信機は、低感度および低い選択性に抑えられている。このような省電流無線受信機の長期間動作がそのアプリケーションで実現できる場合は、ポーリング方式における遅延または反応時間の増加という欠点は当てはまらなくなる。
【0008】
このような省電流受信機は、無線ノードネットワークではウェイクアップレシーバとして通常は使用される。特別な起動シーケンスを受信すると、省電力モード(例えばスリープモード)で動作する接続されている残りのシステムを目覚めさせる。1000mAhのリチウム電池をこのようなウェイクアップレシーバの電流供給源として使用する場合、100μAのレシーバを14ヶ月の間常にスイッチを入れて作動させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、少なくとも一つの省電力受信機の移動を省電力で検出する方法および無線デバイスを提示することにある。これによると、受信機または受信機を備えるモバイル無線ノードの有意な移動を、複雑な計算操作を用いずに比較的簡単な方法で、長期間にわたり検出することが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、この目的は、独立請求項の特徴によりそれぞれ達成される。
【0011】
従属請求項に示す手段の結果、有利な発展および改良が可能になる。
【0012】
少なくとも一つの省電力受信機の移動を省電力で検出する方法および無線デバイスにおいて、少なくとも一つの送信機から上記少なくとも一つの受信機に送信され、高周波搬送波上の規定ビットシーケンスとして変調される無線信号が、受信シーケンスにおいて復調される。後続の相関器ユニットにおいて、規定ビットシーケンスに対応して設計され記憶されている基準シーケンスと受信シーケンスとの相関を取り、この相関によって決定される一致またはエラーの関数として、受信機における受信電界強度の品質定数(quality constant)信号が決定される。さらに、一つのシーケンス内で少なくとも二つの異なる送信電力で規定ビットシーケンスで無線信号を送信し、このシーケンスを時間間隔で繰り返すことによって、受信シーケンスの品質定数を時間の関数として求めることができ、また、段階的な送信電力によって通達距離(distance range)の増加が実現される。この通達距離の範囲では、受信機の移動の有無を、品質定数の関数として評価デバイスによって決定することができる。
【0013】
相関によって一致とされることは、受信ビットシーケンスの全てのビットが期待されるビットシーケンスと同一である、エラーなしの受信を示している。相関によってエラーとされることは、不完全な送信であることを示し、期待される相関シーケンスとの違いが受信した相関シーケンス内に生じるときに発生する。
【0014】
品質定数の値(QM値)を用いて異なる間隔範囲(間隔クラス)内での移動を推定できる可能性は、本質的にコード長、すなわち規定ビットシーケンスの長さに依存する。例えば、異なる(例えば32ビットのビットシーケンスを持つ3つの)送信電力xの品質定数値が変動する場合、やや不確実性をもって、4つの異なる間隔(すなわち受信機から送信機までの距離)を推定することができる。送信電力の数を増加させると、これに応じて間隔クラスの数も増加し(例えば、5m以下、10m、20m以上)、この範囲内で受信機または無線ノードの移動を検出することができる。すなわち、「RSSI」ダイナミクスの拡張が実現される。とりわけ近い範囲では、わずかな送信エラーが生じるだけであり、「人工的な減少」が顕著である。規定ビットシーケンスを例えば64ビットに拡張することによって、より精密な差異(例えば、3m以下、5m、8m、13m、20m、30mより大きいなどの6つの間隔クラス)が可能になる。5段階の送信電力を実施すると、5つのQM値が求められ、3つの間隔範囲となるようにビットシーケンスが選択されると、最大で15個までの間隔を推定することができる。送信電力がQM値に適合され、間隔に対するQM値の割り当ておよび送信電力の重なり合いがないときに、最大15個の間隔が実現される。
【0015】
品質定数から移動を求める評価デバイスを、受信機に統合したり、外部に設けたり、または一部を受信機に配置し一部を外部に配置したりすることができる。重要なことは、受信機に部分的にまたは完全に統合される評価デバイスが、電流を節約するように設計されることである。加算器、コンパレータなどの低複雑度のデジタル回路がこの目的には適している。複雑な信号処理プロセッサでの評価は不要である。評価デバイスは、品質定数および/または移動および/または相対位置データが記憶され、必要に応じてそれらがアクティブな電流を消費するワイヤレスセンサネットワークを介して読み出され、中央で記憶され評価される、例えばスタティックRAMを無線受信機に備えることができる。したがって、高価なアイテムに取り付けられた無線受信機のトレーサビリティを保証することができる。相関器ユニット、シフトレジスタおよび/またはXORゲートなどの受信機の構成部品は、品質定数の評価のために必要であるが、電流消費が小さく、したがって電池電源でも非常に長期にわたる長時間動作が可能になる。
【0016】
好適な無線システムでは、移動の検出を行おうとする領域内に、少なくとも三台の固定送信機が設けられる。したがって、移動方向と、場合により相対位置を検出することも可能である。このようなシステムのアプリケーションの一例として、例えば4台か5台(またはそれ以上)の固定送信機が設置され、物体に取り付けられ省電力受信機を有する多数の無線ノードが設けられる、展示パビリオンに言及することができる。本発明に係るシステムを用いて、無線支援型の盗難防止または回避を行うことができる。
【0017】
好ましくは、生成が簡単なことから、基準シーケンスとしてバイナリシーケンスが選択され、したがって規定ビットシーケンスとしてバイナリシーケンスが選択される。さらに、規定ビットシーケンスまたは基準シーケンスが少なくとも8ビットからなると有利である。好ましくは、受信信号の受信時により多くのエラーが許容されるように、例えば31ビット長およびそれ以上、例えば最大64ビットの長いビットシーケンスを選択すべきである。
【0018】
品質定数を定義するために、実際の相関最大値の間隔が所定の値で選択される。相関最大値に加えて、少なくとも一つの第2最大値すなわち最高値における間隔を考慮に入れると特に有利である。所定の値は、達成可能な最大値または実現しうる最良の相関最大値によって求めることができる。例えばゼロであってもよい。これらの基準は、本発明にしたがって規定ビットシーケンスまたは基準シーケンスを選択するときには特に、受信信号の品質に関して、すなわち受信電界強度に関しての良質な情報を提供する。
【0019】
有利な実施形態では、相関器ユニットは、相互相関関数にしたがって、受信したビットシーケンスすなわち受信シーケンスと基準シーケンスとの相関を求める。その結果、求められた相互相関関数は、干渉なしの受信の場合は自己相関関数と同一になる。規定ビットシーケンスを用いて自己相関係数を定め前もって決定することができる。省電力受信機は、その復調に関連して設計されているので、OOK(オンオフキーイング)変調または他の多価振幅変調を用いて変調された無線信号を復調することができる。これが、約5μAから100μA未満を必要とする、受信機の省電力設計につながる。
【0020】
要するに、受信ビットシーケンスと期待されるビットシーケンス(すなわち基準シーケンス)との相関におけるエラーの数は、無線受信機の入力における信号強度によって決まると言うことができる。その結果、エラーの数を、受信電界強度の品質定数として用いることができる。エラーの数は、受信機の感度、種類、および使用されるビットシーケンス(規定ビットシーケンス、基準シーケンス)の長さによって決まる。
【0021】
提示した方法により、無線ノードの位置または移動を省電力で決定することが可能になる。提示した方法は省電力となるように設計することができるが、その理由は、複雑なPLLシンセサイザ方式の無線受信機を使用しないからである。これは、特にWLAN受信機またはZigbee(登録商標)受信機に当てはまる。無線ネットワーク(例えばWLANなど)のアクティブなインフラは必要とされない。到来時刻(TOAまたはTDOA)方式の場合のような広範な計算方法を実行する必要がない。アクティブな同期化された無線ネットワークは不要である。
【0022】
送信機の位置シーケンスの送信を、多数の(移動可能な)省電力無線受信機のために同時に使用することができる。位置情報の決定の間の無線チャネルの占有は非常に小さく、位置決めされている多数の無線受信機に対しても同様である。
【0023】
数メートルの精度で空間または領域内の割り当てが可能である。上記方法のさらなるアプリケーションは、省電力センサネットワーク内の移動する「外来物」を検出し、省電力センサネットワーク内の「無線遮蔽方向」を求め、マルチホップセンサネットワークのために新たな最適なルーティング経路を発見することである。無線ノードの経路を追跡するために、無線ノードのメモリ内にそれぞれの確立された位置をプロトコル化することができる。
【0024】
本発明の実施形態は図面に表されており、以降の文書でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明で使用される無線システムの一例を模式的に示す図である。
【図2】本発明に係る方法で使用される、無線信号の受信品質を省電力で決定する受信回路を模式的に示す図である。
【図3】送信エラーが発生しない場合の相互相関関数を示す図である。
【図4】送信エラーが発生する場合の相互相関関数を示す図である。
【図5】様々な送信電力に対する品質定数値を送信機からの距離の関数として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1には、複数の無線ノード21と複数の固定送信機22とを有する囲まれた領域20内の無線システムが示されている。無線ノード21は例えばある物体に接続されており移動可能となっている。無線ノードはそれぞれ、図2に関連して後述する省電力受信回路を有し、他の無線ノードまたは別の受信機構成(図示せず)に信号を送信するための送信回路も通常は有する。
【0027】
図示のシステムは、無線ノード21の移動および移動方向を検出するように機能する。ともに図1に実線で示されている固定送信機22および無線ノード21に関連して、移動の検出についての説明を最初に行う。
【0028】
図2には、無線ノード21とともに使用され、アナログフロントエンドとしての省電力受信部1を有する受信回路が模式的に示されている。受信部1はアンテナ2に接続される。アンテナ2は、HF搬送波信号上に変調された低ビットレートの規定ビットシーケンスの形態の高周波信号(RF信号)として、送信機22から送信された無線信号を受信する。OOK変調または振幅走査が使用される。受信部1は、高周波増幅器3およびOOK復調器4によって模式的に示されている。OOK復調器4において、受信した信号が受信ビットシーケンス(または受信シーケンス)に変換され、受信部1の出力5に与えられる。受信部1は、非常に簡単な設計の受信機であることによって区別される。すなわち、回路の複雑度が小さく、感度が低く、選択性が低いことをもって区別される。複雑な回路および複雑な変調技術を省くことによって、受信機のエネルギー消費が削減され、5μAから100μA未満の範囲となる。受信部1は、例えば超再生受信機または検出受信機として作成されてもよい。
【0029】
受信部1は、相関器ユニット6に接続される。相関器ユニット6はデジタル設計でもアナログ設計でもよく、例えば、シフトレジスタと、XORゲートまたはXNORゲートなどの論理ゲートとを有する。この相関器ユニットも同じく電流を節約するように設計され、非常にわずかなμAしか消費しない。相関器ユニット6の部品であってよいメモリ部9は基準シーケンスs(t)を記憶する。基準シーケンスは、HF搬送波信号上に変調された規定ビットシーケンスと同一である。相関器ユニット6は、受信部1の入力信号に対応する出力信号7を場合により提供することができ、受信の品質定数QMのための信号、すなわち従来の無線受信機におけるRSSI信号に対応する受信電界強度をさらに生成する。
【0030】
図1に係るこのような受信回路は、特別な起動シーケンス(規定ビットシーケンス)を受信するいわゆるウェークアップ受信機として、例えば無線ノードネットワーク内で使用することができる。受信部1および相関器ユニット6における評価後に、受信回路は、ネットワークの一つ以上の無線ノードにそれらを起動するための出力信号7を送信する。無線ノードは、省電力のメイン受信機として設計される。これにより、無線ノードネットワークを省電力モード(例えばスリープモード)で運用し、それにも関わらず必要なときに起動することが可能になる。無線ノードの品質定数値により、例えばセンサネットワークまたは無線ノードネットワークにおいて、ローカルの受信条件についての結論を引き出すことが可能になる。また、無線ノードの品質定数値を使用して、マルチホップネットワークにおける最適なルーティング経路を決定することができる。運用期間を増加する目的のために無線ノードの送信を用いた電力制御が明らかになる。本発明に係る方法、または図1の発明に係る無線装置を用いた方法では、品質定数の値を単独でまたは追加して使用して、無線ノードの移動および移動方向を推定し、または無線ノードの位置を決定する。これらについてはさらに後述する。
【0031】
最初に、品質定数の決定について説明する。
【0032】
相関器ユニット6では、受信信号e(t)と呼ばれる受信ビット列または受信ビットシーケンス5と、メモリ部9に記憶され予めプログラムされている基準シーケンスs(t)とから、相関関数が形成される。相互相関関数KKFがk(t)として形成されると好ましい。干渉なしの受信の場合、受信信号e(t)は基準シーケンスs(t)と同一である。すなわち、s(t)は自分自身と相関する。この理想的なケース、すなわち送信エラーが存在しないケースでは、求められたKKFは自己相関関数AKFと同一である。自己相関関数AKFは、規定ビットシーケンスまたは基準シーケンスを用いて直接定められ、事前に求めることができる。
【0033】
受信電界強度に対する品質定数を求めるために使用でき使用すべきである多数のエラーを定義できるように、規定ビットシーケンスを適切な方法で選択することが重要である。自己相関関数に対して顕著な最大値を有する場合には、ビットシーケンスs(t)が適している。さらに、第2最大値(単数または複数)に対しての広い間隔をこのAKFとともに与えるように意図される。干渉ありの受信の場合でさえも、両方の特性がともに維持される必要がある。例えば、第2最大値または第2最大値の「カーペット」よりも、いくつかの品質定数単位分だけ最大値が上回るように、この間隔が大きくなければならない。こうすると、干渉ありの送信であっても相互相関関数KKFの形が維持される。さらに、KKF内の時間位置に対して最大値が「静止」していなければならない。すなわち、干渉が結合して受信される場合に最大値が移動してはならない。ビットシーケンスs(t)およびe(t)としてバイナリシーケンスを使用することができ、このとき相互相関関数k(t)はバイナリではない。
【0034】
送信エラーが存在しない場合、相関最大値が最も顕著になり、第2最大値に対する間隔が同様に最大になる。追加の送信エラーはそれぞれメイン最大値の低下を導き、第2最大値が増加する。これにより、メイン最大値から第2最大値への間隔が減少する。
【0035】
適切なビットシーケンスは、例えば非常に良好な相互相関関数が形成されるようなものであり(例えば00111111191111111100)、この場合、第2最大値に対する間隔は8になる。二つの干渉エラーがあると、相互相関関数は、00111112373211111100になる。この場合、第2最大値に対する間隔は依然として4である。
【0036】
エラーの検出可能な数は、使用されるビットシーケンスの長さに依存するので、出来るだけ長いビットシーケンスを選択するのが賢明である。実用上は、8ビットからのシーケンス長が良く、受信時のエラーを許容することができる。 上述の基準を満足する31ビットのシーケンスを使用する場合、最大で9個の任意の送信エラーを許容することができ、相互相関関数の最大値も同じ場所で顕著になり、第2最大値に対する間隔をなおも確立することができる。
【0037】
図3および4において、送信エラーがない場合の、受信ビットシーケンス5(例えば10110111)と基準シーケンスの相互相関関数e(t)と、異なる数の送信エラーが示されている。縦軸は信号品質を表し、横軸は時間を表す。図3から分かるように、送信エラーのない自己相関関数でもある相互相関関数は、高さ「8」の顕著な最大値を有し、第2最大値に対する間隔は「3」である。相関ユニット6の出力において信号8に設定される品質定数値について、相関最大値の高さ(ここでは「8」)を第2最大値(ここでは「3」)に対する間隔とともに使用することができる。相関最大値の高さのみを選択する場合、最も取り得る値を参照すべきである。
【0038】
図4は、送信エラーが一つある場合の相互相関関数を一例として示す。メイン最大値が依然として非常に顕著であり、第2最大値に対する間隔も依然として大きいことが分かる。追加のエラーはそれぞれ、相互相関関数の最大値の減少と、第2最大値に対する間隔の減少とにつながる。受信中に発生するエラーが多すぎると(例えば、受信レベルが低すぎる場合)、KKF内での最大値の顕著さが失われる。
【0039】
受信した高周波信号の信号品質または受信電界強度を省電力で決定することは、送信機22からの受信回路(無線ノード21)の距離を推定し、その移動を決定するのに役立つ。
【0040】
この目的のために、送信機22は、好ましくはOOK法によって高周波搬送波上に変調される無線信号すなわち規定ビットシーケンスを、異なる送信電力で(例えば3つの異なる送信電力で)所定の時間間隔で送信し、省電力受信機を有する無線ノードが異なる受信電界強度で無線信号を受信する。相関器ユニット6では、異なる送信電力での品質定数の値が求められ、評価デバイス10に供給される。評価デバイス10は受信回路の一部であってもよいが、無線ノードとは独立して別の場所に設けられていてもよい。続いて、品質定数の信号8が無線によって送信される。例えば盗難監視用の無線システムでは、受信回路が常にスイッチオンにされていることが好ましい。しかしながら、段階的な送信電力で無線信号を送信する一時的なシーケンスにも適用することができる。
【0041】
段階的な送信電力にした結果、品質定数の範囲を拡張することができる。例えば図1に係る構成が遮蔽のない自由場として構築された場合、受信が良好になり、送信機22からの無線ノードまたは受信機21の間隔が十分に大きくなる場合(例えば50mから)のみ、品質定数が変化するようになる。送信電力を1/10に低下させると、より貧弱な受信が「人為的に」引き起こされ、送信機22からの受信機21の間隔がより小さい場合(例えば16m)でさえ、確立した品質定数が自身の値を変更することになる。送信電力をさらに段階的にすると、例えばもう一度10倍にすると、より小さな間隔(例えば5mから)に対しても品質定数の変化を再び検出できるようになる。連続的な低下に対応する送信電力の数を選択することによって、品質定数値を用いて送信機からのより小さな間隔を推定することができる。
【0042】
以下のケースが一例として選択される。以下の電力で無線信号によって3つの周波数が送信される。
電力1:10mW
電力2:1mW
電力3:0.1mW
【0043】
正しい位置での受信機21による受信が以下の品質定数を導く。
QM1:31
QM2:26
QM3:21
【0044】
受信機21が送信機22から離れて移動すると、品質定数の値が以下に変化する。
QM1:31
QM2:25
QM3:10
【0045】
次に品質定数の評価が評価ユニット10で行われるが、様々な方法が想定可能である。最も簡単な形態では、異なる送信電力を持つ無線信号のシーケンスの値を、送信機と受信機の間の距離の測定値として、評価ユニット10に加算することができる。かなり長い期間にわたりこのような合計値を求めそれぞれの合計値を比較することで、合計値が以前の合計値から大幅に逸脱した場合、位置の変化すなわち移動という結果を導くことができる。送信電力を段階的に選択すると、異なる重み付けがされたQM値の加算が生じることがある。使用された規定ビットシーケンスに関連した段階的な送信電力を用いて、評価のタイプを正確に調節する必要がある。また、使用される受信機に関連して、特にその感度、使用された規定ビットシーケンス、特にそのコード長に関連して、段階的な送信電力の数を考慮に入れる必要がある。
【0046】
図5には、送信機からの距離の関数としてQM値が示されている。曲線11は、最大電力ステップに対するQM値を示し、曲線12は、一桁分だけ減少した電力ステップに対するQM値を示し、曲線13は、再び1/10だけ減少した電力ステップに対するQM値を示す。QM値の単一の曲線11、12、13を用いて、3つの異なる間隔範囲すなわち間隔クラスI、II、IIIが存在すると仮定する場合、図5に示す可能性を用いて(すなわち3つの送信電力ステップを有する送信機と一つの受信機とを用いて)、曲線の重なりの関数として、最大で9個の間隔クラスを推定することができる。上述のように、段階的な送信電力を適切な方法で選択しなければならない。十分離れた送信電力が選択されなかった場合(例えば2:1)、間隔に対するQMの特性線に重なり合いが生じることがある。十分に離れた送信電力が選択された場合(例えば100:1)、間隔に対するQM値の割り当てに隙間をつけることができる。使用されるコードが長いほど、一送信あたりより多くの送信エラーを許容することができる。すなわち、使用可能なQM値範囲が増大する。したがって、間隔に対するQMの割り当てをより精密に行うことができる。
【0047】
送信機22と受信機21を用いて、実際には通常は複数の送信機を用いて、図1に対応する上記の説明が実行される。図1では、4つの送信機22(TX1、TX2、TX3、TX4)と例えば6つの受信機21とが示されているが、より多くのものも計画することができる。このような場合、各送信機22に送信機識別符号(例えば8〜16ビットの識別符号)が割り当てられ、位置シーケンスとしての長い規定ビットシーケンス(例えば31ビット)が全ての送信機22に対して共通であってもよい。続いて、例えば毎分1サイクルで周期的に、または必要に応じて不定期に、またはユーザの望んだときに、送信機22が送信する。移動が検出されると、多くの場合、送信機22の送信時間を短くする(例えば15分から1分に)ことが賢明である。これは、対応する無線ノードによって報告されるかまたは引き起こされる。確立されたサイクルでは、それぞれ異なる送信電力を持つOOK変調搬送波信号が連続して送信され、受信機21が全ての送信機22からの無線信号を受信し、その後それぞれを評価して品質定数、すなわち品質定数値を形成する。
【0048】
以下では、4つの送信機22(すなわち、TX1、TX2、TX3、TX4)と、一つの受信機すなわち無線ノード21とに関する例を説明する。4つの異なる位置にある4つの送信機22から、規定ビットシーケンス(すなわち、送信機識別ビットシーケンスとの相関シーケンス)が、5つの異なる時間t1、t2、t3、t4、t5に、3つの異なる送信電力で連続して送信され、これらが無線ノード21によって受信され、QM値に関して評価される。評価のために、各送信t1〜t5について、異なる送信電力の品質定数値がそれぞれ合計され、例えばRAM内にQMTX1〜QMTX4として記憶される。続いて、これらの値を使用して、顕著な時間的変化を考慮に入れて移動を検出する。
【0049】
【表1】

【0050】
ここでは、各QM値は例えば0〜8の値を取ることができる。
【0051】
送信t1から送信t2の間、送信機TX1からの伝播経路に沿った離脱と、送信機TX3への接近を検出することができる。送信t2から送信t3の間、QMの変化が小さすぎるので、場合によっては無視することができる。
【0052】
QMの先行値に対する差分であるQMTX1t2−QMTX1t1=2−8=6が計算され、信頼性しきい値(例えば、2より大きな距離からのみ)が加算され、移動を結論づけることができる。複雑度が非常に小さく省電力形態のデジタル回路としてこの減算を実装することができる。例えばより複雑な計算、例えば平方根の計算を実行したい場合、これを対応値テーブルに記憶しておけば平方根アルゴリズムを省くことができる。この値テーブルは、対応する組み合わせの最小化を有し省電力形態のデジタル回路として設計することができる。
【0053】
移動の検出の判定は:送信t1から送信t4までの場合、送信機TX1からの離脱と、これと同時の送信機TX3への接近を結論づけることができ、その後再び送信機TX1に近づいている。送信機TX4は顕著な変化を示していない。一つ以上のQM値が十分に大きく変化すると、方向に関する結論を導くことができる。
【0054】
図1に示すように、このような監視ユニットの場合には、中央評価ユニット10を設けるのが賢明である。中央評価ユニットは、例えば全ての受信機21の無線送信を介して品質定数値を収集し、取り得る移動、移動方向、および場合により相対位置に関する評価を行い、イベントがある場合に対応する報告を伝達する。
【0055】
また、中央評価ユニットは、各無線ノード21で収集されたQM値を時々読み上げる可能性を提供する。これにより追跡が可能になる。移動が検出された場合にのみそれぞれのQM値の履歴が送信される場合、読み上げが非常に単純化される。移動が検出されない場合、中央の検出に対する個別の統計値で十分である。しかしながら、各無線ノード21は、無線ノード21上に位置する送信機に関連し、基本的にその位置で移動および移動方向を検出し、既存の無線ネットワークを起動し中央検出をさせる。
【0056】
図1に示した監視のさらなる可能性は、囲まれた領域20内に位置する外来物を検出可能なことである。しかしながら、時間履歴を使用する必要がある。すなわち、個別の送信機に対する時間の関数としての品質定数の完全な変な変化に基づき外来物についての結論を引き出すためには、全ての受信機の品質定数の全ての値を記録しなければならない。このタイプの監視のためには、無線ノード21が送信機22から離れているか否か、または外来物による遮蔽が伝搬経路で生じたか否かを区別することができるように、図1に示すよりも多くの送信機22が必要になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの固定送信機から少なくとも一つの受信機に無線信号を送信し、受信信号を評価して移動を決定する、少なくとも一つの受信機の移動を検出する方法であって、
前記無線信号は、高周波搬送波上に変調された規定ビットシーケンスとして設計され、前記受信機によって復調されて受信シーケンスを形成し、
前記受信シーケンスは、基準シーケンスとして記憶された前記規定ビットシーケンスとの相関が取られて一致が判定され、
受信した無線信号の受信電界強度の品質定数が、前記相関によって定まる一致またはエラーの関数として決定され、
前記無線信号は、少なくとも二つの送信電力で前記送信機から規定ビットシーケンスで一シーケンス内に送信され、このシーケンスが時間間隔で繰り返され、
受信したシーケンスの品質定数が評価されて前記送信機に対する前記受信機の移動が決定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
異なる送信電力の数および/または互いに対する段階が、移動が検出される予定の距離範囲の関数として選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
それぞれに送信機識別符号が割り当てられた少なくとも3つの送信機が設けられ、
前記規定ビットシーケンスとともに前記識別符号がそれぞれ送信され、
前記規定ビットシーケンスが、全ての送信機に対し同一であるか、または送信機毎に異なることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
異なる送信電力での前記少なくとも一つの送信機の一つのシーケンスの無線信号から受信した周波数の品質定数が加算され、前記送信機に対する前記受信機の移動を示すものとして使用されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記移動方向が、前記少なくとも3つの送信機の品質定数の関数として求められることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記規定ビットシーケンスにバイナリシーケンスが使用されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
自己相関関数に対して、一つ以上の第2最大値に対する間隔が大きい顕著な最大値が生成され、干渉があるときでさえこの最大値が変化しないように、前記規定ビットシーケンスが選択されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記相関最大値の高さが所定値における品質定数として選択され、好ましくは、第2最大値に対する間隔に関連する前記相関最大値の最小値または高さであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
相互相関関数にしたがって前記受信シーケンスと前記基準シーケンスの相関が取られることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
オンオフキーイングまたは他の多価振幅変調に対応して前記無線信号が変調されることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
送信された無線信号のシーケンスの品質定数の時間評価によって電波遮蔽が検出されることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
少なくとも一つの省電力アナログ受信機と、
前記少なくとも一つの受信機に対して、高周波搬送波上に変調された規定ビットシーケンスとして設計される無線信号を送信し、復調された無線信号から受信シーケンスを形成する少なくとも一つの固定送信機と、
省電力評価デバイスと、を有する、移動を検出する無線装置であって、
前記省電力評価デバイスは、
少なくとも一つの相関ユニット(6)と、
前記規定ビットシーケンスを基準シーケンスとして記憶するメモリ部(9)と、を備え、
前記相関ユニット(6)は、前記受信シーケンスと前記基準シーケンスとの相関を取り、この相関によって定まる一致またはエラーの関数として、前記受信機(1)における受信電界強度の品質定数信号を求めるように設計されており、
前記少なくとも一つの送信機は、少なくとも二つの異なる送信電力で規定ビットシーケンスを持つ前記無線信号を一シーケンス内に送信し、このシーケンスを時間間隔で繰り返すように設計されており、
前記評価デバイスは、前記受信シーケンスの品質定数を評価し、前記送信機に対する前記受信機の移動を求めるように設計されることを特徴とする無線装置。
【請求項13】
前記基準シーケンスの自己相関関数、したがって前記規定ビットシーケンスが、一つ以上の第2最大値に対する間隔が大きい顕著な最大値を有し、干渉があるときでさえこの最大値が変化しないことを特徴とする請求項12に記載の無線装置。
【請求項14】
所定の値、好ましくは前記相関最大値の取り得る最大の値における前記相関最大値の間隔を品質定数として求め、および/または第2最大値に対する間隔に関連する前記相関最大値の高さを品質定数として求めるように、前記相関器ユニット(6)が設計されることを特徴とする請求項12または13に記載の無線装置。
【請求項15】
前記相関器ユニット(6)が、受信シーケンス(5)および基準シーケンスから相互相関関数を形成するように設計されることを特徴とする請求項12ないし14のいずれかに記載の無線装置。
【請求項16】
前記受信機が、OOK復調器またはM−ASK復調器として設計された省電力復調器(4)を有することを特徴とする請求項13ないし15のいずれかに記載の無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−504047(P2013−504047A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527249(P2012−527249)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005612
【国際公開番号】WO2011/026653
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(504380482)フラウンホファー−ゲゼルシャフト ツア フェデルンク デア アンゲヴァンテン フォルシュンク エーファウ (5)
【Fターム(参考)】