説明

移動体の位置・速度検出装置

【課題】高速に移動する移動体の位置及び速度を検出することができる移動体の位置・速度検出装置を得る。
【解決手段】移動体72に搭載され、移動体の運動を制御する制御部73に接続されて、移動体を制御するための位置及び速度を検出する位置・速度検出装置70であって、移動体周辺に存在する静止した静止構造物71に光を照射する光源74と、静止構造物の表面画像を撮影する第1のカメラ75及び第2のカメラ76と、移動体が静止している場合には第1のカメラ及び第2のカメラの撮影範囲が少なくとも一部オーバーラップするように設置されたハーフミラー77と、第1のカメラ及び第2のカメラの画像データにより移動体の位置及び速度を検出する画像処理部79とを備えており、第1のカメラと第2のカメラの画像取り込み開始時間が異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レールに沿って移動する移動体の位置・速度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体の位置及び速度検出装置は、ガイドレールに光を照射する光源と、ガイドレールの表面を撮像するカメラ、カメラによって撮影された先行するレール表面画像と新しい画像から移動体の移動量を計算処理する処理部を備えるものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−274765号公報([0007]〜[0017]、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のような移動体の位置及び速度検出装置では、カメラのフレームレートはCCDラインカメラで1kHz程度であり、2次元カメラの場合さらに低くなる。移動体の高速化に伴い、上記フレームレートでは先行画像と新しい画像でオーバーラップする部分が無くなり、位置検出ができないという問題点があった。
【0005】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、高速に移動する移動体の位置及び速度を検出することができる移動体の位置・速度検出装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る移動体の位置・速度検出装置は、移動体に搭載され、移動体の運動を制御する制御部に接続されて、移動体を制御するための位置及び速度を検出する位置・速度検出装置であって、移動体周辺に存在する静止した静止構造物に光を照射する光源と、静止構造物の表面画像を撮影する第1のカメラ及び第2のカメラと、移動体が静止している場合には第1のカメラ及び第2のカメラの撮影範囲が少なくとも一部オーバーラップするように設置されたハーフミラーと、第1のカメラ及び第2のカメラの画像データにより移動体の位置及び速度を検出する画像処理部とを備えており、第1のカメラと第2のカメラの画像取り込み開始時間が異なるものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、2つのカメラ画像のオーバーラップ部分より移動体の位置・速度を検出することにより、カメラのフレームレートに依存しない、高速な移動体の位置・速度検出が可能となる、といった従来にない顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1はこの発明の実施例1における移動体の位置・速度検出装置の構成を示す模式図である。
【図2】図2はカメラの取り込みタイミングを説明するための模式図である。
【図3】図3はテンプレートマッチング方法を示す図である。
【図4】図4はこの発明の実施例2における移動体の位置・速度検出装置のテンプレートマッチング方法を示す図である。
【図5】図5はこの発明の実施例2におけるテンプレートマッチング方法を示す図である。
【図6】図6はこの発明の実施例3における移動体の位置・速度検出装置の構成を示す模式図である。
【図7】図7はこの発明の実施例4における移動体の位置・速度検出装置の構成を示す模式図である。
【図8】図8はこの発明の実施例5における移動体の位置・速度検出装置の構成を示す模式図である。
【図9】図9はこの発明の実施例6における移動体の位置・速度検出装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明をより詳細に説明するために、添付の図面に従ってこれを説明する。
【実施例1】
【0010】
図1はこの発明の実施例1における移動体の位置・速度検出装置の構成を示す模式図、図2はカメラの取り込みタイミングを説明するための模式図、図3はテンプレートマッチング方法を示す図である。
位置及び速度検出装置(以下、位置・速度検出装置という)70は、静止構造物であるレール71に沿った方向(x方向)に移動する移動体72に搭載され、また、制御部73は位置・速度検出装置70の位置・速度検出信号を元に移動体72の運行制御を行っている。
位置・速度検出装置70は、光源74を備え、光源74はレール71の表面に光を照射するように配置されている。光源74としてはLEDやレーザダイオード、ランプなどを用いることができる。位置・速度検出装置70内に設けられた第1のカメラ75及び第2のカメラ76はそれぞれハーフミラー77を介してレール71の表面を撮影するように配置されており、また、移動体72が静止している場合は、両者の撮影範囲が一部あるいは全て共通であるように配置されている。カメラ駆動部78はそれぞれのカメラ75、76の撮影開始タイミングを制御し、2つのカメラ75、76の取り込み開始時間をずらすことで、例えば移動体72が図15のx正方向に移動している場合、第1のカメラ75は第1画像、第2のカメラ76は第2画像を撮影し、撮影範囲として両者が一部オーバーラップするように構成する。画像処理部79は、両者の画像データのオーバーラップ部分から移動体72の位置・速度を検出し、制御部73に検出信号を送出する。
【0011】
次にカメラ撮影開始タイミングの詳細について述べる。図2にカメラ駆動部78が発生させる撮影開始タイミングのタイミングチャートと、第1のカメラ75及び第2のカメラ76の撮像範囲を示す。第1のカメラ75の取り込み開始時間をTa、第2のカメラ76の取り込み開始時間をTbとし、二つの取り込み開始時間の差t1(Tb−Ta)をカメラのフレームレートt2よりも短い時間に設定している。従って、移動体72の移動速度が大きい場合でも、図2に示すように、第1画像の取得範囲と第2画像の取得範囲との間でオーバーラップ部分が存在するようになる。また、カメラの露光時間τは、カメラに備わる電子的乃至は機械的なシャッターを時間τの間開放することによって実現される。もしくは、シャッターは常に開放しておき、光源74をパルス点灯させ、その点灯時間を露光時間τと等しくしてもよい。
【0012】
次に図3を用いて画像処理部79における位置・速度検出方法の詳細について述べる。第1のカメラ75により撮影された第1画像の濃淡度分布のうち、中心部分の一部を切り取った濃淡度分布を第1画像のテンプレートとする。次に第2のカメラ76によって撮影された第2の画像の濃淡度分布に対して、上記第1画像のテンプレートを用いてテンプレートマッチングを行い、両者の画像間における移動量Δxを計算する。以上により時間t1の間における移動量Δxが測定でき、移動体72の移動速度vはΔx/t1により計算される。また、速度vは、カメラのフレームレート時間t2ごとに測定されるため、移動体72の移動量はv*t2を積算することにより測定することが可能である。
このような位置・速度検出装置70においては、2つのカメラ75、76を備え、両者の撮影開始タイミングに時間差を持たせることで、カメラのフレームレートよりも短い時間差で2枚の画像を取得することが可能となり、移動体72の移動速度が大きい場合でも、2枚の画像の間にオーバーラップ部分が存在するようになる。従って、移動体72の移動速度が高速である場合でも移動体の位置及び速度検出が可能となる。
【0013】
この実施例1において、移動体の例としてレールに沿って移動する移動体を用いたが、例えば自動車のようなレールを使用しない移動体に対しても同様の効果を得ることができる。
また、本実施例1において、カメラ75、76で撮影する画像としてレール71の表面を用いたが、移動体72周辺に存在する静止構造物、例えばレールを敷設した床面や地面、エレベータであれば昇降路の壁や柱、自動車であれば道路、地面や風景を用いても同様の効果を得ることができる。
【実施例2】
【0014】
また、図1において、第1のカメラ75及び第2のカメラ76はx方向に画素が並んだラインセンサを用いることができるが、2次元のエリアセンサを用いてもよい。この場合、図4に示すように、第1のカメラ75で撮影した第1画像から取得するテンプレートとして2次元の濃淡度分布を用い、第2のカメラ76で撮影した第2画像の濃淡度分布に対して2次元のテンプレートマッチングを行う。テンプレートマッチングの結果、両者の画像間におけるレール71に沿った移動方向(x方向)の移動量Δxを測定することができる。また、移動体72がΔxに移動する間に、移動体72の振動によってレール71が敷設された方向に垂直な方向(y方向)にΔy移動した場合でも、レール71に沿った移動方向の移動量を測定することができる。
もしくは、第1のカメラ75を1次元のエリアセンサ、第2のカメラ76を2次元のエリアセンサとしてもよい。この場合、図5に示すように、1次元の画像をテンプレートとして使用し、2次元の第2画像に対して2次元的なテンプレートマッチングを行うことで、y方向に移動体72が移動していても、Δxを測定することができる。
【0015】
以上に述べた構成によれば、移動体72の振動や横揺れなどによってレール71に垂直な方向に位置変動しながらレールに沿って移動している場合でも、レールに沿った移動方向の移動量を測定することが可能となる。また、レールに沿って移動しない、例えば自動車のような移動体については、2次元的な移動量を測定することが可能となる。
【実施例3】
【0016】
図6はこの発明の実施例3における移動体の位置・速度検出装置の構成を示す模式図である。
図6は図1と異なり、移動体72の移動方向(x方向)に垂直な断面で切断した図である。位置・速度検出装置70は、第1のカメラ75及び第2のカメラ76が1次元のラインセンサを備え、レール71に垂直な方向(y方向)に画像をぼかして撮影するためのシリンドリカルレンズ80を備えている。
y方向に画像をぼかすことで、y方向について平均化された濃度値を持つ画像として撮影することができる。したがって、移動体72の振動や横揺れなどによってy方向に位置変動しても、第1のカメラ75及び第2のカメラ76による画像の間にオーバーラップする部分が存在するため、両者の画像をテンプレートマッチングすることにより、レール71に沿った移動方向(x方向)の移動量を測定することができる。
このように、第1のカメラ75及び第2のカメラ76を1次元のラインセンサとし、シリンドリカルレンズ80によってレール71に垂直な方向に画像をぼかして撮影することにより、移動体72の振動によってレール71に垂直な方向に位置変動しながらレール71に沿って移動している場合でもレール71に沿った移動方向の移動量を測定することが可能となる。また、1次元画像間のテンプレートマッチングを行うため、2次元に比べて少ない計算時間で移動量を測定することが可能となる。
さらに、図6において、光源74としてLEDのような有限の放射角を持つ光源を使用した場合、レンズ81を用いて集光してもよい。
このような構成によれば、光源74の放射光を効率よく使用することができる。
【実施例4】
【0017】
図7はこの発明の実施例4における移動体の位置・速度検出装置の構成を示す模式図である。
位置・速度検出装置70は、ハーフミラー77とレール71の間の物体側にテレセントリックなレンズ82を備えたものである。
物体側にテレセントリックなレンズ82を設置することにより、物体側にテレセントリックな光学系が形成される。したがって、移動体73の揺れや振動によりレンズ82とレール71の間隔が変動しても、光学系の倍率は常に一定であり、第1のカメラ75及び第2のカメラ76による画像の常に倍率は等しくなるため、安定したテンプレートマッチングを行うことができる。
このように、物体側にテレセントリックなレンズ82をレール71とハーフミラー77の間に設けることで、レールとセンサの間の間隔が変動しても、安定した位置・速度の検出が可能となる。
【実施例5】
【0018】
図8はこの発明の実施例5における移動体の位置・速度検出装置の構成を示す模式図である。
位置・速度検出装置70は、光源74に対する第1のカメラ75及び第2のカメラ76の位置が、ハーフミラー77を介して、レール71の表面について正反射の位置となるように配置されるものである。従って、光源74からの光が、効率よく第1のカメラ75及び第2のカメラ76に入射する。
このように、光源とカメラをレール表面について正反射の位置に配置することで、光源の放射光を効率よく使用することができる。
【実施例6】
【0019】
図9はこの発明の実施例6における移動体の位置・速度検出装置の構成を示す模式図である。
位置・速度検出装置70において、光源74、ハーフミラー77、第1のカメラ75、第2のカメラ76及び画像処理部79を用いて画像のテンプレートマッチングを行い、単位時間あたりの移動距離を測定する方法は実施例1と同様である。この実施例12における位置・速度検出装置70は、さらに、レール71の継ぎ目83を検出するレール継ぎ目検出部84を設けている。移動体72が移動するレール71は所定の長さの単位レールを繋いで構成されており、単位レール間には必ず継ぎ目83が存在する。レール継ぎ目検出部84は、この継ぎ目83を光学的乃至は磁気的などの方式により検出し、検出信号を出力するものである。
【0020】
次に、上記継ぎ目検出部84を用いた位置検出方法について述べる。単位レール長さごとに存在する各レールの継ぎ目83の位置はレール71の敷設時決定される。各々の継ぎ目83の位置を位置データとして継ぎ目位置記憶部84に記憶させておく。位置・速度演算部85では、画像処理部79において実施例1と同様の方法で測定された移動体の単位時間あたりの移動量を常に受け取る。単位時間あたりの移動量は速度信号として、制御部73へと信号出力される。また、単位時間あたりの移動量を積算し、積算量を移動体72の位置信号として制御部73へと出力する。ただし、レール継ぎ目検出部84より継ぎ目検出信号が入力された場合は、継ぎ目位置記憶部86に記憶されている位置データを用いて位置データをリセットし、継ぎ目83の位置を位置信号として出力する。リセット後はリセット時の位置データをもとに、画像処理部79の信号を積算し、積算量を移動体72の位置信号として出力する。従って、位置・速度検出装置70の位置検出信号は、常にレール71の継ぎ目83に基づいた基準位置でリセットされた値であるため、積算による累積誤差が無くなり正確な位置検出が可能となる。
上記実施例6では単位レールのレール継ぎ目83を検出するレール継ぎ目検出部84について述べたが、レール継ぎ目83の代わりに、単位レールを繋ぎとめるボルトを用いてリセットを行っても同様の効果が得られる。
このように、レールの継ぎ目やボルトを用いて移動体の位置をリセットする基準センサを設けることで、累積誤差の少ない正確な位置検出を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
以上のように、この発明に係る移動体の位置及び速度検出装置は、高速に移動する移動体の位置及び速度を検出することができる。
【符号の説明】
【0022】
70 位置・速度検出装置、71 レール(静止構造物)、72 移動体、73 制御部、74 光源、75 第1のカメラ、76 第2のカメラ、77 ハーフミラー、78 カメラ駆動部、79 画像処理部、80 シリンドリカルレンズ、81 レンズ、82 テレセントリックなレンズ、83 レール継ぎ目、84 継ぎ目検出部、85 位置・速度出力部、86 継ぎ目位置記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、移動体の運動を制御する制御部に接続されて、移動体を制御するための位置及び速度を検出する位置・速度検出装置であって、
移動体周辺に存在する静止した静止構造物に光を照射する光源と、
上記静止構造物の表面画像を撮影する第1のカメラ及び第2のカメラと、
移動体が静止している場合には上記第1のカメラ及び第2のカメラの撮影範囲が少なくとも一部オーバーラップするように設置されたハーフミラーと、
第1のカメラ及び第2のカメラの画像データにより移動体の位置及び速度を検出する画像処理部とを備えており、
第1のカメラと第2のカメラの画像取り込み開始時間が異なることを特徴とする移動体の位置・速度検出装置。
【請求項2】
第1のカメラ及び第2のカメラが2次元のエリアセンサであることを特徴とする請求項1記載の移動体の位置・速度検出装置。
【請求項3】
第1のカメラが1次元ラインカメラであり、
第2のカメラが2次元のエリアカメラであることを特徴とする請求項1記載の移動体の位置・速度検出装置。
【請求項4】
第1のカメラ及び第2のカメラが1次元ラインカメラであることを特徴とする請求項1記載の移動体の位置・速度検出装置。
【請求項5】
カメラにおいて撮影している面内において、移動体の移動方向に垂直な方向に画像をぼかして撮影するためのレンズを、静止構造物とカメラとの間に配置することを特徴とする請求項1記載の移動体の位置・速度検出装置。
【請求項6】
光源の放射光は有限の放射角を持ち、
光源と静止構造物との間にレンズを配置し、
レンズは放射光を集光することを特徴とする請求項1記載の移動体の位置・速度検出装置。
【請求項7】
静止構造物とカメラの間にレンズを配置し、
レンズは物体側に対してテレセントリックな光学系を形成していることを特徴とする請求項1記載の移動体の位置・速度検出装置。
【請求項8】
光源が、第1のカメラ及び第2のカメラに対して、静止構造物表面に正反射の位置に配置されることを特徴とする請求項1記載の移動体の位置・速度検出装置。
【請求項9】
移動体はレールに沿って移動する移動体であり、
レールは所定の長さの単位レールを繋ぐことによって構成され、
レールの繋ぎ目に存在する繋ぎ目構造物を検出する継ぎ目検出センサと、
繋ぎ目構造物の位置をあらかじめ記憶させた継ぎ目位置記憶部と、
移動体の位置及び速度を出力し、継ぎ目検出センサの出力と継ぎ目位置記憶部の位置データをもとに移動体の位置をリセットする位置・速度出力部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の移動体の位置・速度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−73885(P2011−73885A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8426(P2011−8426)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【分割の表示】特願2006−550608(P2006−550608)の分割
【原出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】