説明

移動体検出システム

【課題】所定の操作を行うことなくシステムが設置される対象物体の揺れにより誤って監視空間内を移動する物体の在・不在を判定するのを防止することのできる移動体検出システムを提供する。
【解決手段】監視空間B1内の物体Oの移動に起因する物理量を検出する移動体検出部1と、移動体検出部1で検出された物理量と判定値との比較結果に基づいて監視空間B1内を移動する物体Oの存・不在を判定する移動体判定部2と、移動体判定部2において移動する物体Oが存在すると判定されると警報を報知する報知部3と、監視空間B1を内包する車両Bの揺れを検出する揺れ検出部4と、揺れ検出部4の検出結果に基づいて車両Bの揺れを表す指標を演算する揺れ演算部5とを備え、移動体判定部2は、前記比較結果及び前記揺れ演算部5の演算結果に基づいて監視空間B1内を移動する物体Oの在・不在を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視空間内において移動する物体の在・不在を検出する移動体検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の車両盗難並びに車上盗難が増加しているため、駐車中の車両に不審者が侵入した場合に警報音を鳴動する車載用盗難警報装置が普及してきている。このような車載用盗難警報装置としては、車内(監視空間)において移動する人(物体)の存・不在を検出するために移動体検出システムが搭載されている。この種の移動体検出システムは、例えば利用者が車両に鍵をかけて離れる際に警戒モードに切り換わる。警戒モードにおいては、所定周波数の連続エネルギ波(例えば、超音波)を車両内に放射しておき、車両内に存在する人により反射された反射波を受波するように構成されている。そして、車両内の人の移動に伴ってドップラー効果として生じる反射波の周波数偏移を検出することで、車両内を移動する人が存在すると判定して警報音を鳴動するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−145255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えばフェリーで車両を運搬中に、フェリーの揺れによって車両が揺れ、車両内に存在する物体(例えば、車両内に置いてある荷物等)が倒れる等して移動する場合がある。この場合、上記従来の移動体検出システムを当該車両に採用していると、移動体検出システムが車両内を移動する物体が存在すると判定してしまい、誤って警報音を鳴動する虞があった。また、タワー型立体駐車場に車両を駐車する場合にも、入庫時又は出庫時に車両が載せられるパレットが動作する際の衝撃によって車両が揺れ、上記と同様に車両内を移動する物体が存在すると判定してしまい、誤って警報音を鳴動する虞があった。
【0005】
そこで、従来の移動体検出システムでは、上記のようにフェリーで車両を運搬する場合、又はタワー型立体駐車場に駐車する場合には、利用者が所定の操作を行うことで車両内を移動する物体の在・不在を判定する機能を予め停止させていた。しかしながら、上記機能を停止するために所定の操作を必要とすることから、利用者にとって煩わしく、また、利用者が所定の操作を行うことを失念する虞があった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みて為されたもので、所定の操作を行うことなくシステムが設置される対象物体の揺れにより誤って監視空間内を移動する物体の在・不在を判定するのを防止することのできる移動体検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の移動体検出システムは、監視空間内の物体の移動に起因する物理量を検出する移動体検出部と、前記移動体検出部で検出された物理量と判定値との比較結果に基づいて前記監視空間内を移動する物体の存・不在を判定する移動体判定部と、前記移動体判定部において移動する物体が存在すると判定されると警報を報知する報知部とを備えた移動体検出システムであって、前記監視空間を内包する対象物体の揺れを検出する揺れ検出部と、前記揺れ検出部の検出結果に基づいて前記対象物体の揺れを表す指標を演算する揺れ演算部とを備え、前記移動体判定部は、前記比較結果及び前記揺れ演算部の演算結果に基づいて前記監視空間内を移動する物体の在・不在を判定することを特徴とする。
【0008】
この移動体検出システムにおいて、前記揺れ検出部は、加速度センサ又は角速度センサを備え、前記対象物体の揺れによって生じる加速度又は角速度に基づいて前記対象物体の揺れを検出することが好ましい。
【0009】
この移動体検出システムにおいて、前記揺れ演算部は、前記揺れ検出部の検出結果に基づいて前記対象物体の揺れの周波数を演算するとともに、前記揺れの周波数が第1の周波数閾値よりも低い場合に前記移動体判定部に前記対象物体に揺れが発生している旨を知らせる揺れ信号を出力し、前記移動体判定部は、前記揺れ信号が入力されると当該揺れ信号及び前記比較結果に基づいて前記監視空間内を移動する物体の在・不在を判定することが好ましい。
【0010】
この移動体検出システムにおいて、前記移動体判定部は、前記揺れ信号が入力された場合の判定値を前記揺れ信号が入力されない場合と比較して前記監視空間内を移動する物体の存在が判定され難い向きに変化させることが好ましい。
【0011】
この移動体検出システムにおいて、前記移動体判定部は、前記揺れ信号が入力された場合の判定値を前記揺れの周波数が低くなるにつれて前記監視空間内を移動する物体の存在が判定され難い向きに変化させることが好ましい。
【0012】
この移動体検出システムにおいて、前記揺れ演算部は、前記揺れ検出部の検出結果に基づいて前記対象物体の揺れの振幅成分を演算し、前記移動体判定部は、前記揺れ信号が入力された場合の判定値を前記揺れの振幅成分が大きくなるにつれて前記監視空間内を移動する物体の存在が判定され難い向きに変化させることが好ましい。
【0013】
この移動体検出システムにおいて、前記移動体判定部は、前記揺れ信号が入力されると前記監視空間内を移動する物体の在・不在を判定する機能を停止させることが好ましい。
【0014】
この移動体検出システムにおいて、前記第1の周波数閾値は、前記対象物体が最も揺れ易い周波数よりも低いことが好ましい。
【0015】
この移動体検出システムにおいて、前記第1の周波数閾値は、0.3Hz〜0.5Hzの範囲で設定されることが好ましい。
【0016】
この移動体検出システムにおいて、前記揺れ演算部は、前記揺れ検出部の検出結果に基づいて前記対象物体の揺れの周波数を演算するとともに、前記揺れの周波数が第2の周波数閾値よりも高い場合に前記移動体判定部に前記対象物体に揺れが発生している旨を知らせる揺れ信号を出力し、前記移動体判定部は、前記揺れ信号が入力されると当該揺れ信号及び前記比較結果に基づいて前記監視空間内を移動する物体の在・不在を判定することが好ましい。
【0017】
この移動体検出システムにおいて、前記移動体判定部は、前記揺れ信号が入力された場合の判定値を前記揺れ信号が入力されない場合と比較して前記監視空間内を移動する物体の存在が判定され難い向きに変化させることが好ましい。
【0018】
この移動体検出システムにおいて、前記揺れ演算部は、前記揺れ検出部の検出結果に基づいて前記対象物体の揺れの振幅成分を演算し、前記移動体判定部は、前記揺れ信号が入力された場合の判定値を前記揺れの振幅成分が大きくなるにつれて前記監視空間内を移動する物体の存在が判定され難い向きに変化させることが好ましい。
【0019】
この移動体検出システムにおいて、前記移動体判定部は、前記揺れ信号が入力されると前記監視空間内を移動する物体の在・不在を判定する機能を停止させることが好ましい。
【0020】
この移動体検出システムにおいて、前記第2の周波数閾値は、前記対象物体が最も揺れ易い周波数よりも低いことが好ましい。
【0021】
この移動体検出システムにおいて、前記第2の周波数閾値は、0.3Hz〜0.5Hzの範囲で設定されることが好ましい。
【0022】
この移動体検出システムにおいて、前記揺れ演算部は、前記揺れ検出部が前記対象物体の揺れを検出した時点から前記対象物体の揺れが収まる時点までの経過時間を計時する第1のタイマを備え、前記移動体判定部は、前記第1のタイマで計時された経過時間が一定時間を超えると前記比較結果のみに基づいて前記監視空間内を移動する物体の在・不在を判定することが好ましい。
【0023】
この移動体検出システムにおいて、前記揺れ演算部は、前記揺れ検出部が前記対象物体の揺れを検出した履歴を記憶するメモリと、前記対象物体の揺れが収まった時点から前記対象物体の揺れを検出する時点までの経過時間を計時する第2のタイマとを備え、前記第2のタイマで計時された経過時間が一定時間を超えると前記履歴を消去し、前記移動判定部は、前記履歴を消去するまでは前記比較結果及び前記揺れ演算部の演算結果に基づいて前記監視空間内を移動する物体の在・不在を判定することが好ましい。
【0024】
この移動体検出システムにおいて、前記揺れ検出部は、前記対象物体において揺れの中心軸から離れた位置に設置されることが好ましい。
【0025】
この移動体検出システムにおいて、前記対象物体は車両であって、前記監視空間は前記車両内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、システムが設置される対象物体の揺れを検出し、揺れ演算部の演算結果に基づいて監視空間内を移動する物体の在・不在の判定を行うことができる。したがって、所定の操作を行うことなくシステムが設置される対象物体の揺れにより誤って監視空間内を移動する物体の在・不在を判定するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る移動体検出システムの実施形態を示す図で、(a)はブロック図で、(b)は車両の外観図である。
【図2】同上の動作を説明するためのフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る移動体検出システムの実施形態について図面を用いて説明する。尚、本実施形態では、図1(b)に示すように、監視空間B1が車両Bの内部であって、車両Bが監視空間B1を内包する対象物体となっている。本実施形態は、図1(a),(b)に示すように、移動体検出部1と、移動体判定部2と、報知部3と、揺れ検出部4と、揺れ演算部5とから構成される。
【0029】
移動体検出部1は、所謂超音波式のドップラーセンサであって、図1(a)に示すように、発振回路10と、送波器11と、受波器12と、ミキサ13と、増幅回路14とを備える。発振回路10は、所定周波数の送波信号を発振する。送波器11は、発振回路10からの送波信号を受けて発振回路10の発振周波数と同じ周波数の超音波を監視空間B1に送波する。受波器12は、監視空間B1に存在する物体Oに反射して生じる反射波を受波して受波信号を出力する。ミキサ13は、発振回路10からの送波信号と受波器12からの受波信号とを混合することで、両信号の位相差に応じたドップラー信号を検波する。増幅回路14は、ミキサ13からのドップラー信号を増幅して移動体判定部2に出力する。
【0030】
移動体判定部2は、移動体検出部1からのドップラー信号を受けてドップラー信号の振幅成分を演算する。そして、ドップラー信号の振幅成分と判定値との比較結果に基づいて監視空間B1内を移動する物体Oの在・不在を判定する。本実施形態では、ドップラー信号の振幅成分が判定値を上回ると監視空間B1内を移動する物体Oが存在すると判定し、その旨を知らせる報知信号を報知部3に出力する。報知部3は、例えばブザーから成り、移動体判定部2からの報知信号を受けて警報音を鳴動させることで、監視空間B1内に移動する物体Oが存在する、即ち、車両B内に不審者が侵入した事を報知する。
【0031】
ここで、上記の判定値は、後述する揺れ演算部5の演算結果に応じて判定値設定部20において適宜設定されるようになっている。尚、本実施形態では、ドップラー信号の振幅成分を判定値として採用しているが、例えば、ドップラー信号の継続時間やドップラー信号から演算される移動距離などを判定値として採用してもよい。即ち、物体Oの移動に起因する物理量であればよい。
【0032】
揺れ検出部4は、監視空間B1を内方する車両Bの揺れを検出するもので、例えば加速度センサから成る。そして、車両Bの揺れによって生じる加速度を検出し、検出した加速度データを含む検出信号を揺れ演算部5に出力する。ここで、揺れ検出部4で用いる加速度センサとしては、例えば、静電容量式やピエゾ抵抗式、磁気センサ式やガス式(サーモ)式といった半導体微細加工技術により成る半導体加速度センサを採用することができる。
【0033】
尚、揺れ検出部4は、車両Bの揺れを検出できるものであればよく、加速度センサの他に角速度センサから構成してもよい。この場合は、車両Bの揺れによって生じる角速度を検出し、検出した角速度データを含む検出信号を揺れ演算部5に出力する。この角速度センサとしては、例えば、振動式やガス式、静電容量式や光学式といった半導体微細加工技術により成る半導体角速度センサを採用することができる。勿論、加速度センサ及び角速度センサは上記のセンサに限定されるものではなく、加速度及び角速度を検出できるものであればよい。
【0034】
ところで、本実施形態の移動体検出システムAは、図1(b)に示すように、車両B内の前後方向の中央部における天井に設けられており、このため、揺れ検出部4も同位置に設けられている。ここで、車両Bは、殆どの場合、床付近に中心軸をおいて全体が揺れるため、天井は揺れの中心軸から離れた位置となる。この車両Bにおける揺れの中心軸から離れた位置では、揺れの中心軸付近と比較して車両Bの変位量が大きくなる。したがって、揺れ検出部4において良好な感度で加速度又は角速度を検出することができる。
【0035】
揺れ演算部5は、例えばマイコンから構成され、図1(a)に示すように、揺れ分析部50と、揺れ判定部51と、メモリ52と、揺れ時間計時部53(第1のタイマ)と、停止時間計時部54(第2のタイマ)とを備える。揺れ分析部50は、揺れ検出部4からの検出信号に含まれる車両Bの加速度データ又は角速度データから車両Bの揺れの周波数を演算し、その演算結果を揺れ判定部51に送る。揺れ判定部51は、揺れ分析部50から得られた揺れの周波数と第1の周波数閾値及び第2の周波数閾値とを比較し、揺れの周波数が第1の周波数閾値を下回る場合には、車両Bに低周波の揺れが発生していると判定する。また、揺れの周波数が第2の周波数閾値を上回る場合には、車両Bに高周波の揺れが発生していると判定する。本実施形態では、第1の周波数閾値と第2の周波数閾値とが同一の値に設定されている。したがって、1つの周波数閾値を境にして車両Bの低周波の揺れと高周波の揺れとを判定している(以下の説明では、第1の周波数閾値と第2の周波数閾値とを区別せず、単に「周波数閾値」と呼ぶ)。車両Bに揺れが発生していると判定した場合には、揺れ判定部51は、車両Bに低周波の揺れ又は高周波の揺れの何れかが発生している旨を知らせる揺れ信号を判定値設定部20に出力する。尚、揺れ検出部4において加速度又は角速度を検出できない場合には、揺れ判定部51は車両Bに揺れが発生していないと判定する。この場合には、揺れ判定部51は判定値設定部20に揺れ信号を出力しない。
【0036】
ここで、例えば車両Bを押して揺らした場合、車両Bは自身が最も揺れやすい周波数、即ち、固有振動数付近の周波数で揺れる。この車両Bの固有振動数は、車両Bのサスペンションの状態等にも依存するが、0.65Hz程度である。また、タワー型立体駐車場の入庫又は出庫の際のパレットからの衝撃に伴う車両Bの高周波の揺れの周波数は、上記の車両Bの固有振動数と同程度若しくはそれ以上の周波数となる。一方、例えば車両Bをフェリーに載せて運搬した場合、フェリーの揺れに伴う車両Bの低周波の揺れの周波数は0.3Hz以下程度である。したがって、本実施形態では、上記の点を考慮して周波数閾値を0.3〜0.5Hzの範囲で設定している。
【0037】
メモリ52は、例えばEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の不揮発性メモリから成る。メモリ52は、揺れ判定部51において車両Bに高周波の揺れが発生したと判定した場合に、当該揺れの発生を履歴として記憶する。また、後述するように停止時間計時部54において一定時間が計時された場合に、記憶している揺れの発生の履歴を消去する。
【0038】
揺れ時間計時部53は、揺れ判定部51において車両Bに高周波の揺れが発生したと判定してから一定時間を計時するタイマであり、車両Bの揺れが収まったと判定するまで計時を継続する。また、停止時間計時部54は、揺れ判定部51において車両Bに揺れが発生していないと判定してから一定時間を計時するタイマであり、車両Bに揺れが発生したと判定するまで計時を継続する。
【0039】
以下、本実施形態における車両Bの揺れの判定動作及び物体Oの移動の判定動作について図2を用いて説明する。尚、以下の説明において、「通常時の判定値」とは、従来の移動体検出システムと同様に車両Bの揺れを考慮しない場合の判定値である。また、「低周波時の判定値」とは、例えばフェリーの揺れ等によって車両Bに低周波の揺れが発生した場合の判定値である。「低周波時の判定値」は、監視空間B1内を移動する物体Oの存在が判定され難くなるように、通常時の判定値よりも高く設定されている。また、「高周波時の判定値」とは、例えばタワー型立体駐車場の入庫又は出庫の際のパレットからの衝撃等によって車両Bに高周波の揺れが発生した場合の判定値である。「高周波時の判定値」は、監視空間B1内を移動する物体Oの存在が判定され難い通常時の判定値よりも高く設定されている。
【0040】
先ず、利用者が車両Bから離れる等して従来の移動体検出システムと同様に警戒モードに切り換わると、本実施形態における揺れの判定動作が開始される。この判定動作時には、揺れ検出部4が常時若しくは一定の間隔で車両Bの揺れに起因する加速度又は角速度の検出を行う。
【0041】
ここで、揺れ検出部4において加速度又は角速度が検出されると、揺れ判定部51において当該車両Bの揺れの周波数と周波数閾値とを比較する。車両Bの揺れの周波数が周波数閾値を下回る場合、揺れ判定部51は、車両Bの揺れが低周波の揺れであると判定し、低周波の揺れである旨を知らせる揺れ信号を判定値設定部20に出力する。判定値設定部20では、当該揺れ信号が入力されると、判定値を低周波時の判定値に設定する。したがって、移動体判定部2は、以降では低周波時の判定値に基づいて監視空間B1内を移動する物体Oの在・不在を判定する。
【0042】
一方、車両Bの揺れの周波数が周波数閾値を上回る場合、揺れ判定部51は、車両Bの揺れが高周波の揺れであると判定し、高周波の揺れである旨を知らせる揺れ信号を判定値設定部20に出力する。判定値設定部20では、当該揺れ信号が入力されると、判定値を高周波時の判定値に設定する。更に、揺れ判定部51は、揺れ時間計時部53に車両Bに揺れが発生したと判定した時点からの計時を開始させる。そして、揺れ時間計時部53において一定時間が計時されると、揺れ判定部51は、車両Bの揺れが人為的な揺れであると判定し、メモリ52に記憶されている揺れの履歴を消去させる。そして、揺れ判定部51は、人為的な揺れである旨を知らせる揺れ信号を判定値設定部20に出力する。判定値設定部20では、当該揺れ信号が入力されると、判定値を通常時の判定値に設定する。
【0043】
一方、揺れ時間計時部53において一定時間が計時されるまでの間に、揺れ判定部51において車両Bの揺れが収まったと判定された場合は、当該揺れの発生を履歴としてメモリ52に記憶させるが、揺れ信号を判定値設定部20に出力しない。したがって、判定値設定部20では、高周波時の判定値が維持される。即ち、移動判定部2は、車両Bの揺れが一定時間継続した場合には通常時の判定値に基づいて、継続しない場合には高周波時の判定値に基づいて監視空間B1内を移動する物体Oの在・不在を判定する。
【0044】
次に、揺れ判定部51において車両Bに揺れが発生していないと判定した場合には、揺れ判定部51はメモリ52に揺れの履歴が記憶されているか否かを確認する。ここで、メモリ52に揺れの履歴が記憶されていない場合には、揺れ判定部51は、判定値を通常時の判定値に設定するように指示する信号を判定値設定部20に出力する。判定値設定部20では、当該信号が入力されると、判定値を通常時の判定値に設定する。したがって、移動体判定部2は、以降では通常時の判定値に基づいて監視空間B1内を移動する物体Oの在・不在を判定する。
【0045】
一方、メモリ52に揺れの履歴が記憶されている場合には、揺れ判定部51は、停止時間計時部54に車両Bに揺れが発生していないと判定した時点からの計時を開始させる。そして、停止時間計時部54において一定時間が計時されると、揺れ判定部51は、メモリ52に記憶されている揺れの履歴を消去させるとともに、判定値を通常時の判定値に設定するように指示する信号を判定値設定部20に出力する。判定値設定部20では、当該信号が入力されると、判定値を通常時の判定値に設定する。したがって、移動体判定部2は、以降では通常時の判定値に基づいて監視空間B1内を移動する物体Oの在・不在を判定する。一方、停止時間計時部54において一定時間が計時されるまでの間に、揺れ判定部51において車両Bに揺れが発生したと判定された場合には、高周波時の判定値が維持される。
【0046】
上述のように、本実施形態では、揺れ検出部4及び揺れ演算部5を備えているので、移動体検出システムAが設置される車両Bの揺れを検出し、揺れ演算部5の演算結果に基づいて監視空間B1内を移動する物体Oの在・不在の判定を行うことができる。したがって、所定の操作を行うことなく車両Bの揺れにより誤って監視空間B1内を移動する物体Oの在・不在を判定するのを防止することができる。
【0047】
具体的には、例えばフェリーによる車両Bの運搬中等で車両Bに低周波の揺れが発生している場合には、移動体判定部2が低周波時の判定値に基づいて監視空間B1内を移動する物体Oの在・不在の判定を行う。このため、例えばフェリーの揺れに伴う車両Bの揺れによって車両B内で荷物等の物体が倒れて移動したとしても、当該物体の挙動が小さいため、当該物体の移動に伴うドップラー信号の振幅成分が低周波時の判定値を上回らない。したがって、移動体判定部2が監視空間B1内を移動する物体Oが存在しないと判定するので、報知部3が誤って警報音を鳴動するのを防止することができる。
【0048】
また、例えばタワー型立体駐車場の入庫又は出庫の際のパレットからの衝撃等で車両Bに高周波の揺れが発生した場合には、移動体判定部2が高周波時の判定値に基づいて監視空間B1内を移動する物体Oの在・不在の判定を行う。このため、例えばパレットからの衝撃に伴う車両Bの揺れによって車両B内で荷物等の物体が倒れて移動したとしても、当該物体の挙動が小さいため、当該物体の移動に伴うドップラー信号の振幅成分が高周波時の判定値を上回らない。したがって、移動体判定部2が監視空間B1内を移動する物体Oが存在しないと判定するので、報知部3が誤って警報音を鳴動するのを防止することができる。
【0049】
ここで、例えば車両Bを不審者が手で揺らした場合を考える。この場合、車両Bの揺れの周波数が周波数閾値を上回るため、移動体判定部2が高周波時の判定値に基づいて監視空間B1内を移動する物体Oの在・不在を判定するようになり、車両B内に侵入した不審者を正しく判定できない虞がある。即ち、不審者の挙動は大きいために、通常では不審者の移動に伴うドップラー信号の振幅成分が高周波時の判定値を上回るが、挙動が小さい場合には、上記振幅成分が高周波時の判定値を上回らない虞がある。そこで、本実施形態では、パレットからの衝撃に伴う車両Bの揺れが短時間で収まる点に着目し、車両Bの揺れが一定時間継続しない場合には、判定値を高周波時の判定値から通常時の判定値に変更するようにしている。このため、たとえ車両Bを不審者が手で揺らしたとしても、移動体判定部2が通常時の判定値に基づいて監視空間B1内を移動する物体Oの在・不在を判定するため、不審者の挙動が小さい場合でも車両B内に侵入した不審者を正しく判定することができる。
【0050】
ところで、高周波時の判定値の維持が為された直後に揺れ判定部51において車両Bに揺れが発生していないと判定された場合に、判定値を高周波時の判定値から通常時の判定値に直ぐに変更すると以下の問題が起こり得る。即ち、パレットからの衝撃に伴う車両Bの揺れが収まった後、暫くしてから車両B内で荷物等の物体が倒れたり、車両B内に取り付けてあるアクセサリ等が揺れたりすることがあり、これらの揺れを監視空間B1内を移動する物体Oとして誤って判定する虞がある。そこで、本実施形態では、車両Bに高周波の揺れが発生したと判定し、且つ当該揺れが一定時間継続すると、揺れの発生を履歴としてメモリ52に記憶させている。そして、揺れの履歴が有る場合には、車両Bに揺れが発生していない時間(停止時間)を計時し、当該時間が一定時間を超えると揺れの履歴を消去して、判定値設定部20の判定値を通常時の判定値に設定するようにしている。而して、揺れの履歴を消去するまでは高周波時の判定値が維持されるので、上記の揺れを監視空間B1内を移動する物体Oとして誤って判定することがない。また、車両Bが停止している状態が一定時間続いた場合には、移動体判定部2の判定動作が初期状態にリセットされるため、不審者の挙動が小さい場合でも車両B内に侵入した不審者を正しく判定することができる。
【0051】
尚、本実施形態では、低周波時の判定値、及び高周波時の判定値を一値に設定しているが、車両Bの揺れの周波数に応じて変化させてもよい。例えば、揺れ分析部50に、車両Bの加速度データ又は角速度データから車両Bの揺れの周波数のみならず、車両Bの揺れの振幅成分も演算させ、その演算結果を揺れ判定部51に送らせる。そして、揺れ判定部51に、車両Bの揺れの周波数又は振幅成分、或いはその両方の演算結果を含む揺れ信号を判定値設定部20に出力させる。判定値設定部20には、車両Bの揺れの周波数又は振幅成分、或いはその両方と相関を持つ判定値のデータテーブルを持たせ、入力された揺れ信号に含まれる車両Bの揺れの周波数又は振幅成分、或いはその両方の演算結果に応じて判定値を決定させる。
【0052】
以下、判定値の設定の具体例について説明する。例えば、車両Bに低周波の揺れが発生している場合では、車両Bの揺れが車両Bの重量やサスペンションの硬さ等に依存するとともに、フェリーの揺れが船体の大きさ等に依存するため、フェリーの揺れに伴う車両Bの揺れの周波数が異なってくる。そこで、低周波時の判定値を、車両Bの揺れの周波数が低くなるにつれて監視空間B1内を移動する物体Oの存在が判定され難い向きに変化させる、即ち、大きくさせるのが望ましい。このように低周波時の判定値を設定することで、移動体判定部2の感度を段階的に鈍くすることができる。而して、報知部3が誤って警報音を鳴動するのを効果的に防止することができる。
【0053】
また、車両Bに低周波の揺れ又は高周波の揺れの何れかが発生している場合では、車両Bの揺れの振幅成分が大きくなるほど、車両B内で荷物等が倒れて移動する可能性が高くなる。そこで、低周波時の判定値又は高周波時の判定値、或いはその両方を、車両Bの揺れの振幅成分が大きくなるにつれて監視空間B1内を移動する物体Oの存在が判定され難い向きに変化させる、即ち、大きくさせるのが望ましい。このように各判定値を設定することで、車両Bの揺れの振幅成分が大きくなるほど移動体判定部2の感度を段階的に鈍くすることができる。而して、報知部3が誤って警報音を鳴動するのを効果的に防止することができる。
【0054】
また、揺れ判定部51において車両Bに揺れが発生したと判定した場合に、移動体判定部2に監視空間B1内を移動する物体Oの在・不在の判定の機能を停止させるように構成してもよい。この場合、車両Bに揺れが発生すると物体Oの移動の判定を行わないので、車両B内で荷物等が倒れて移動したとしても、当該物体の移動を判定しないので、報知部3が誤って警報音を鳴動するのを確実に防止することができる。
【0055】
ところで、本実施形態では、フェリーの揺れ等による車両Bの揺れと、タワー型立体駐車場の入庫又は出庫の際のパレットからの衝撃等による車両Bの揺れとの何れにも対応する構成となっているが、何れか一方のみに対応する構成であってもよい。例えば、前者のみに対応する構成とする場合には、揺れ判定部51において第1の周波数閾値のみで車両Bの低周波の揺れの有無を判定すればよい。そして、車両Bに低周波の揺れが発生した場合には、判定値設定部20において判定値を低周波の揺れの場合の判定値に設定すればよい。また、車両Bに低周波の揺れが発生しない場合には、判定値設定部20において判定値を通常時の判定値に設定すればよい。この構成では、メモリ52、揺れ時間計時部53、停止時間計時部54は不要となる。
【0056】
尚、本実施形態では、移動体検出部1として超音波式のドップラーセンサを用いているが、電波式のドップラーセンサであってもよい。また、監視空間B1内における物体Oの移動を検出できるものであれば他のセンサを用いてもよい。例えば、反射波を見る距離センサや、カメラ等を利用して撮像した画像の差分で物体Oの移動を検出するセンサ、又は監視空間内の温度分布の変化を見る赤外線センサ等であってもよい。この場合、各センサで検出される物体Oの移動に起因する物理量をドップラー信号の振幅成分に代えて判定値とすればよい。
【符号の説明】
【0057】
1 移動体検出部
2 移動体判定部
3 報知部
4 揺れ検出部
5 揺れ演算部
52 メモリ
53 揺れ時間計時部(第1のタイマ)
54 停止時間計時部(第2のタイマ)
A 移動体検出システム
B 車両(対象物体)
B1 監視空間
O 物体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視空間内の物体の移動に起因する物理量を検出する移動体検出部と、前記移動体検出部で検出された物理量と判定値との比較結果に基づいて前記監視空間内を移動する物体の存・不在を判定する移動体判定部と、前記移動体判定部において移動する物体が存在すると判定されると警報を報知する報知部とを備えた移動体検出システムであって、前記監視空間を内包する対象物体の揺れを検出する揺れ検出部と、前記揺れ検出部の検出結果に基づいて前記対象物体の揺れを表す指標を演算する揺れ演算部とを備え、前記移動体判定部は、前記比較結果及び前記揺れ演算部の演算結果に基づいて前記監視空間内を移動する物体の在・不在を判定することを特徴とする移動体検出システム。
【請求項2】
前記揺れ検出部は、加速度センサ又は角速度センサを備え、前記対象物体の揺れによって生じる加速度又は角速度に基づいて前記対象物体の揺れを検出することを特徴とする請求項1記載の移動体検出システム。
【請求項3】
前記揺れ演算部は、前記揺れ検出部の検出結果に基づいて前記対象物体の揺れの周波数を演算するとともに、前記揺れの周波数が第1の周波数閾値よりも低い場合に前記移動体判定部に前記対象物体に揺れが発生している旨を知らせる揺れ信号を出力し、前記移動体判定部は、前記揺れ信号が入力されると当該揺れ信号及び前記比較結果に基づいて前記監視空間内を移動する物体の在・不在を判定することを特徴とする請求項1又は2記載の移動体検出システム。
【請求項4】
前記移動体判定部は、前記揺れ信号が入力された場合の判定値を前記揺れ信号が入力されない場合と比較して前記監視空間内を移動する物体の存在が判定され難い向きに変化させることを特徴とする請求項3記載の移動体検出システム。
【請求項5】
前記移動体判定部は、前記揺れ信号が入力された場合の判定値を前記揺れの周波数が低くなるにつれて前記監視空間内を移動する物体の存在が判定され難い向きに変化させることを特徴とする請求項4記載の移動体検出システム。
【請求項6】
前記揺れ演算部は、前記揺れ検出部の検出結果に基づいて前記対象物体の揺れの振幅成分を演算し、前記移動体判定部は、前記揺れ信号が入力された場合の判定値を前記揺れの振幅成分が大きくなるにつれて前記監視空間内を移動する物体の存在が判定され難い向きに変化させることを特徴とする請求項3乃至5の何れか1項に記載の移動体検出システム。
【請求項7】
前記移動体判定部は、前記揺れ信号が入力されると前記監視空間内を移動する物体の在・不在を判定する機能を停止させることを特徴とする請求項3記載の移動体検出システム。
【請求項8】
前記第1の周波数閾値は、前記対象物体が最も揺れ易い周波数よりも低いことを特徴とする請求項3乃至7の何れか1項に記載の移動体検出システム。
【請求項9】
前記第1の周波数閾値は、0.3Hz〜0.5Hzの範囲で設定されることを特徴とする請求項3乃至8の何れか1項に記載の移動体検出システム。
【請求項10】
前記揺れ演算部は、前記揺れ検出部の検出結果に基づいて前記対象物体の揺れの周波数を演算するとともに、前記揺れの周波数が第2の周波数閾値よりも高い場合に前記移動体判定部に前記対象物体に揺れが発生している旨を知らせる揺れ信号を出力し、前記移動体判定部は、前記揺れ信号が入力されると当該揺れ信号及び前記比較結果に基づいて前記監視空間内を移動する物体の在・不在を判定することを特徴とする請求項1又は2記載の移動体検出システム。
【請求項11】
前記移動体判定部は、前記揺れ信号が入力された場合の判定値を前記揺れ信号が入力されない場合と比較して前記監視空間内を移動する物体の存在が判定され難い向きに変化させることを特徴とする請求項10記載の移動体検出システム。
【請求項12】
前記揺れ演算部は、前記揺れ検出部の検出結果に基づいて前記対象物体の揺れの振幅成分を演算し、前記移動体判定部は、前記揺れ信号が入力された場合の判定値を前記揺れの振幅成分が大きくなるにつれて前記監視空間内を移動する物体の存在が判定され難い向きに変化させることを特徴とする請求項10又は11記載の移動体検出システム。
【請求項13】
前記移動体判定部は、前記揺れ信号が入力されると前記監視空間内を移動する物体の在・不在を判定する機能を停止させることを特徴とする請求項10記載の移動体検出システム。
【請求項14】
前記第2の周波数閾値は、前記対象物体が最も揺れ易い周波数よりも低いことを特徴とする請求項10乃至13の何れか1項に記載の移動体検出システム。
【請求項15】
前記第2の周波数閾値は、0.3Hz〜0.5Hzの範囲で設定されることを特徴とする請求項10乃至14の何れか1項に記載の移動体検出システム。
【請求項16】
前記揺れ演算部は、前記揺れ検出部が前記対象物体の揺れを検出した時点から前記対象物体の揺れが収まる時点までの経過時間を計時する第1のタイマを備え、前記移動体判定部は、前記第1のタイマで計時された経過時間が一定時間を超えると前記比較結果のみに基づいて前記監視空間内を移動する物体の在・不在を判定することを特徴とする請求項10乃至15の何れか1項に記載の移動体検出システム。
【請求項17】
前記揺れ演算部は、前記揺れ検出部が前記対象物体の揺れを検出した履歴を記憶するメモリと、前記対象物体の揺れが収まった時点から前記対象物体の揺れを検出する時点までの経過時間を計時する第2のタイマとを備え、前記第2のタイマで計時された経過時間が一定時間を超えると前記履歴を消去し、前記移動判定部は、前記履歴を消去するまでは前記比較結果及び前記揺れ演算部の演算結果に基づいて前記監視空間内を移動する物体の在・不在を判定することを特徴とする請求項16記載の移動体検出システム。
【請求項18】
前記揺れ検出部は、前記対象物体において揺れの中心軸から離れた位置に設置されることを特徴とする請求項1乃至17の何れか1項に記載の移動体検出システム。
【請求項19】
前記対象物体は車両であって、前記監視空間は前記車両内であることを特徴とする請求項1乃至18の何れか1項に記載の移動体検出システム。

【図1】
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【図2】
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