説明

移動体検知センサ

【課題】 空間における特定方向への物体の移動を検知できるとともに、空間における物体の有無の判定に利用可能な信号を出力できる、小型且つ低コストの移動体検知センサを提供する。
【解決手段】 n個(nは2以上の整数)の受光器PD1〜PD3、及び、各受光器PD1〜PD3の出力信号の変化に応じてパルス信号を出力する信号出力回路14を半導体チップ上に実装する。各受光器の受光面は物体が移動する空間に面して一列に配置する。物体が受光面の近傍を順方向に通過すると、1番目からn番目まで受光面が順に遮光され、m番目(2≦m≦n)の受光面が遮光された時点で出力端OUTにパルス信号が出力され始める。その後、物体の通過に従って各受光面に光が再び入射し始め、p番目(2≦p≦n)の受光面に光が入射するようになった時点でパルス信号の出力が停止される。一方、物体が逆方向に通過してもパルス信号は出力されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の空間における物体の有無を判定したりその移動方向を検知したりするための移動体検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特定方向への物体の移動を検出可能なセンサの一例として、特許文献1に記載の定方向通過検出センサがある。このセンサは、受光素子を備え、物体が通過したときにできる光量の変化を検出する2個の光量検出回路と、各光量検出回路にそれぞれ接続され、光量の変化を検出すると異なるパルス幅の信号を出力するパルス出力回路と、各パルス出力回路からの信号を比較判定して、一方向への物体の移動を検出したときにのみ信号を供給する方向弁別回路と、該方向弁別回路の信号により、各回路へ電源を供給する電源供給線の電圧を高レベルと低レベルに切り換えて検出信号とする検出出力回路とから構成されている。
【0003】
また、別の例として、特許文献2に記載の動き検出装置がある。この装置は、位置Aの近傍の2箇所に於ける像の強度の違いに基づく2値信号1と、位置Bの近傍の2箇所に於ける像の強度の違いに基づく2値信号2とを用い、信号1と信号2の関係に基づいて、像の動きの方向と動きの速さの少なくとも1つを求めることを特徴としている。そして、このような構成によれば、2値信号の関係に基づいて動きの方向や速度を検出するので、半導体上に集積するのが容易であるとされている。
【0004】
また、所定の空間における物体の有無を判定するためのセンサとして、前記空間に面して配置された受光面を有するフォトトランジスタ等の受光器を備え、前記受光面に入射する光の強度が閾値以上であるか閾値未満であるかに応じて2値信号を出力するフォトインタラプタを利用するものがある。このようなセンサにおいて、物体が前記空間を通過すると、フォトインタラプタが、物体の進入により受光強度が閾値を下回った時点(遮光開始時点)から、物体の退出により受光強度が閾値まで回復した時点(入光開始時点)までの時間に相当する幅のパルスを出力する。この出力信号のパルス幅は、物体の移動速度だけでなく、物体の大きさによっても変化する。
【0005】
特許文献1に記載のセンサでは、同文献の第2図に示されているように、フォトトランジスタ、抵抗、コンデンサ、コンパレータ等の素子を用いて各回路が構成されている。このような構成では、最先端の電子機器でも利用可能な小型センサを作成することが困難な場合がある。
【0006】
一方、特許文献2に記載の装置では、空間における物体の有無を判定することができない。理由は次の通りである。特許文献2の実施例1(特に[0027])の記載から分かるように、同文献に記載の装置は、位置Aにおける遮光開始時点(又は入光開始時点)から位置Bにおける遮光開始時点(又は入光開始時点)までの時間に相当する幅のパルスを出力する。このパルスの幅は、物体の移動速度にのみ影響される。したがって、どんな大きさの物体が通過しても、速度が同じであれば同じ幅のパルスが出力される。一方、空間における物体の有無を判定するには、先に説明したフォトインタラプタの出力信号のように、遮光開始時点及び入光開始時点の両方を特定可能な信号が必要である。ところが、特許文献2に記載の装置はこのような信号を出力するように構成されていない。したがって、同装置は、空間における物体の有無の判定には利用することができない。
【0007】
なお、空間における物体の有無は、特許文献1に記載のセンサを使っても判定することはできない。これは、同センサが実際には10ms程度のパルスしか出力することができないという事情による。この程度の幅のパルスでは、通過する物体のカウント程度の処理なら実行可能であるが、その物体が空間にまだ存在しているか、それとも完全に通過してしまっているかを判定することはできない。
【0008】
【特許文献1】特開平3-84464号公報(第2図)
【特許文献2】特許第3546296号公報(第3頁17〜20行目、第4頁2〜13行目)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記のような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、所定の空間における特定方向への物体の移動を検知することができるとともに、従来のフォトインタラプタと同様に、前記空間における物体の有無の判定に利用可能な信号を出力することができ、しかも小型且つ低コストの移動体検知センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために成された第1発明に係る移動体検知センサは、所定の空間における物体の所定方向への移動を検知する移動体検知センサにおいて、
前記所定方向に沿って配列され、前記空間に面する受光面をそれぞれ有するn個の受光器(ただし、nは2以上の整数)、及び、各受光器の出力信号の変化に応じてパルス信号を出力する信号出力回路を備え、
前記受光器及び信号判定回路は半導体チップ上に実装されていること、及び、
前記信号出力回路は、
前記受光器の出力信号の第1のレベルから第2のレベルへの変化が、物体の入口側に最も近い1番目の受光器から物体の出口側のm番目(但し2≦m≦n)の受光器まで順に生じたときに、前記パルス信号の出力を開始し、その後、前記受光器の出力信号の第2のレベルから第1のレベルへの変化が、前記1番目の受光器からp(但し2≦p≦n)番目の受光器まで順に生じたときに、前記パルス信号の出力を終了する一方、
前記受光器の出力信号の変化が前記順序とは逆に前記出口側のn番目の受光器から1番目の受光器に向かって順に生じたときには前記パルス信号を出力しないように構成されていること、
を特徴としている。
【0011】
また上記課題を解決するために成された第2発明に係る移動体検知センサは、所定の空間における物体の所定方向及びその逆方向への移動を検知する移動体検知センサにおいて、
前記所定方向に沿って配列され、前記空間に面する受光面をそれぞれ有するn個の受光器(ただし、nは2以上の整数)、及び、各受光器の出力信号の変化に応じてパルス信号を出力する、第1及び第2の出力端を有する信号出力回路を備え、
前記受光器及び信号判定回路は半導体チップ上に実装されていること、及び、
前記信号出力回路は、
前記受光器の出力信号の第1のレベルから第2のレベルへの変化が、物体の入口側に最も近い1番目の受光器から物体の出口側のm番目(但し2≦m≦n)の受光器まで順に生じたときに、前記第1の出力端にパルス信号の出力を開始し、その後、前記受光器の出力信号の第2のレベルから第1のレベルへの変化が、前記1番目の受光器からp(但し2≦p≦n)番目の受光器まで順に生じたときに、前記第1の出力端へのパルス信号の出力を終了する一方、
前記受光器の出力信号の第1のレベルから第2のレベルへの変化が、前記順序とは逆に、前記出口側のn番目の受光器から1番目の受光器に向かって順に生じたときに、前記第2の出力端にパルス信号の出力を開始し、その後、前記受光器の出力信号の第2のレベルから第1のレベルへの変化が、前記n番目の受光器から1番目の受光器に向かって順に生じたときに、前記第2の出力端へのパルス信号の出力を終了するように構成されていること、
を特徴としている。
【0012】
さらにまた上記課題を解決するために成された第3発明に係る移動体検知センサは、所定の空間における物体の所定方向への移動を検知する移動体検知センサにおいて、
前記所定方向に沿って配列され、前記空間に面する受光面をそれぞれ有するn個の受光器(ただし、nは2以上の整数)、及び、各受光器の出力信号の変化に応じて出力端にパルス信号を出力する信号出力回路を備え、
前記受光器及び信号判定回路は半導体チップ上に実装されていること、及び、
前記信号出力回路は、
前記受光器の出力信号の第1のレベルから第2のレベルへの変化が、物体の入口側に最も近い1番目の受光器から物体の出口側のm番目(但し2≦m≦n)の受光器まで順に生じたときに、前記第1の出力端にパルス信号の出力を開始し、その後、前記受光器の出力信号の第2のレベルから第1のレベルへの変化が、前記1番目の受光器からp(但し2≦p≦n)番目の受光器まで順に生じたときに、前記第1の出力端へのパルス信号の出力を終了する一方、
前記受光器の出力信号の変化が前記順序とは逆に、前記出口側のn番目の受光器から1番目の受光器に向かって順に生じたときには、外部よりリセット信号が与えられる又はそれに相当するリセットが実行されるまで前記出力端の信号レベルを固定するように構成されていること、
を特徴としている。
【0013】
第1乃至第3発明に係る移動体検知センサはいずれも、受光面における受光強度が所定の閾値以上のときは第1のレベルの信号を出力し、該閾値未満のときは第2のレベルの信号を出力する受光器をn個(ただし、nは2以上の整数)備えている。これらの受光器は、物体の通過方向に沿って配列されており、その受光面は物体が通過する空間(以下、検知空間と呼ぶ)に面している。
【0014】
この移動体検知センサにおいて、物体が検知空間を通過すると、各受光器の受光面への入射光がその物体により次々に遮られる。入射光が遮られると、受光器の受光強度が閾値未満となり、その出力信号が第1のレベルから第2のレベルに変化する。このような出力信号の変化が、物体の通過に従って、1番目の受光器からn番目の受光器まで順に発生する。そして、その中でm番目の受光器の出力信号の変化が生じると、信号出力回路がパルス信号の出力を開始する。mはnと等しくてもよいが、2以上であればnより小さくてもよい。
【0015】
また、前記のような出力信号の変化が生じた後、物体が受光器の受光面の近傍を完全に通過すると、受光器の受光強度が閾値以上となり、その出力信号が第2のレベルから第1のレベルに復帰する。このような出力信号の復帰が、物体の通過に従って、1番目の受光器からn番目の受光器まで順に発生する。その中でp番目の受光器の出力信号の復帰が生じると、信号出力回路がパルス信号の出力を終了する。pはm又はnと等しくてもよいが、2以上であればnより小さくてもよい。こうした動作は第1乃至第3発明に係る移動体検知センサに共通の動作である。一方、物体が検知空間を逆方向に通過したときの動作は第1乃至第3発明に係る移動体検知センサでそれぞれ相違する。
【0016】
第1発明に係る移動体検知センサでは、物体が検知空間を逆方向に通過したとき、受光器の出力信号の変化は逆順(すなわち、n番目の受光器から1番目の受光器に向かう順)に生じる。この場合、信号出力回路はパルス信号を出力しない。
【0017】
第2発明に係る移動体検知センサでは、信号出力回路は、上述の如く物体が検知空間を所定方向に通過した際にパルス信号を発生させるのと同様の回路を、物体が検知空間を逆方向に通過する(つまり受光器の出力信号の変化が逆順に生じる)際にもパルス信号を発生させるために有している。物体が検知空間を所定方向に通過する際に発生されたパルス信号は第1の出力端から出力されるが、物体が検知空間を逆方向に通過する際に発生されたパルス信号は第1の出力端とは別の第2の出力端から出力される。
【0018】
また第3発明に係る移動体検知センサでは、信号出力回路は、物体が検知空間を逆方向に通過したとき、受光器の出力信号の変化が逆順に生じたことを検知すると出力端の信号レベルを論理0又は1に固定する。そして、外部よりリセット信号が与えられるか、或いは例えば電源が再投入される等、リセット信号の供給に相当するリセットが実行されるまでその状態を保持する。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、第1発明に係る移動体検知センサは、物体が所定の空間を特定の方向に通過した場合にのみパルス信号を出力し、逆の方向に通過した場合には信号を出力しない。また第2発明に係る移動体検知センサは、物体が所定の空間を特定の方向に通過した場合にパルス信号を第1の出力端に出力し、逆の方向に通過した場合にはパルス信号を別の第2の出力端に出力する。さらにまた第3発明に係る移動体検知センサは、物体が所定の空間を特定の方向に通過した場合にパルス信号を出力端に出力し、逆の方向に通過した場合にはその出力端の信号レベルを固定してしまいリセットされるまで解除しない。したがって、このようなセンサは、特定方向への物体の移動を選択的に検知したい場合に好適に利用できる。
【0020】
また、上記第1乃至第3発明に係る移動体検知センサでは、前記信号出力回路が出力するパルスの幅は、1番目からm番目までの全ての受光器に対して入射光の遮断が発生した時点(遮光開始時点)より、1番目からp番目全ての受光器に対して光が再び入射するようになった時点(入光開始時点)までの時間に対応する。即ち、物体が到来したときの遮光開始時点及び物体が通過したときの入光開始時点の両方が特定されているから、上記パルス信号に基づいて、検知空間における物体の有無を判定することが可能である。
【0021】
また、第1乃至第3発明に係る移動体検知センサは、m個又はp個の受光器の出力信号が所定の順序で変化/復帰しなければ前記パルス信号を出力しない。したがって、例えば、全ての受光器への入射光が同時に遮られたり、あるいは全ての受光器への光の入射が同時に再開されたりしても、パルス信号は出力されない。これは、第1乃至第3発明に係る移動体検知センサが外乱光に対する高い耐性を有することを意味するとともに、物体の特定方向への移動の態様が異常であることを検知できることを意味する。
【0022】
また、第1乃至第3発明に係る移動体検知センサは、受光器及び信号出力回路を半導体チップ上に実装する構成を採用しているため、センサの小型化及び低コスト化が可能である。また、特定方向の物体の移動の検知及び所定空間における物体の有無の判定に必要な信号がチップ1個だけで得られるようになる。
【0023】
また、第2発明に係る移動体検知センサによれば、物体が特定方向と逆方向に移動したことも検知できるので、例えば、本来特定方向へのみ移動する筈の物体がそれに反した動きをしていることを検知することができる。また、往復運動するような物体の移動をそれぞれ検知できるので、第1発明に係る移動体検知センサよりもさらに幅広い用途に利用できる。
【0024】
また、第3発明に係る移動体検知センサによれば、物体が特定方向と逆方向に移動したときにそれ以降のセンサとしての動作が禁止されるので、例えば、本来特定方向へのみ移動する筈の物体がそれに反した動きをしたとき、次に物体が特定方向へと移動してもこれに応答しないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
〔実施例1〕
まず第1発明に係る移動体検知センサの一実施例(実施例1)について、図面を参照して説明する。図1は実施例1による移動体検知センサを示す外観図である。この実施例1の移動体検知センサ1(以下、単にセンサ1と呼ぶ)は、3個の受光面10A〜10Cが一列に配列された受光領域10を有する半導体チップ12を備えている。半導体チップ12上には、受光領域10の近傍を受光面10Aから受光面10Cに向かう方向(以下、これを順方向と言い、それと反対方向を逆方向と言う)に物体が通過したときにパルス信号を出力する信号出力回路14が実装されている。
【0026】
図2は、信号出力回路14の構成例を示す論理回路図である。この例では、3個の受光器PD1〜PD3、3個の増幅器AMP1〜AMP3、3個の比較器CMP1〜CMP3、2個のイクスクルーシブOR(XOR)ゲートXOR1、XOR2、1個のNORゲートNOR及び3個のT型フリップフロップFF1〜FF3が図2に示すように結線されている。そして、3個の受光器PD1〜PD3の受光面が図1の受光面10A〜10Cとなっており、フリップフロップFF3の正転(Q)出力がこの信号出力回路14の出力端(OUT)となっている。
【0027】
図3は、物体が受光面の前方近傍を順方向に通過したときに信号出力回路14の内部で発生する各種信号及びセンサ1の出力信号を示すタイムチャート、図4は、物体が受光面の前方近傍を順方向に通過したときの受光面に対する物体の位置とセンサ1の出力との関係を示すタイムチャート、図5は、物体が受光面の前方近傍を逆方向に通過したときの受光面に対する物体の位置とセンサ1の出力との関係を示すタイムチャートである。
【0028】
図4に示すように、物体が受光領域10の前方近傍を順方向に通過すると、受光面10Aから受光面10Cまで順に入射光が遮られる。そして、受光領域10の中の半分以上の範囲で入射光が遮断されると(図4の時点t1)、パルス信号の出力が開始される(つまり出力端OUTの信号レベルは「0」から「1」に変化する)。その後、物体の移動に従い、再び受光面10Aから順に光が入射するようになる。そして、受光領域10の中の半分以上の範囲で再び光が入射するようになると(図4の時点t2)、パルス信号の出力が停止される(つまり出力端OUTの信号レベルは「1」から「0」に変化する)。
【0029】
逆に、図5に示すように、物体が各受光面の前方近傍を逆方向(即ち、受光面10Cから受光面10Aに向かう方向)に通過したときには、パルス信号は出力されず、出力端OUTの信号レベルは「0」に維持される。また、受光面10A〜10Cに同時に光が入射したり、あるいは同時に遮光されたりした場合にも、パルス信号は出力されない。
【0030】
図3を参照して図2の信号出力回路14の動作を説明すると、物体の移動に伴い3個の受光器PD1〜PD3の出力信号は順番に「1」になるから、同じ順番で「0」になる。したがって、2個のXORゲートXOR1、XOR2の出力は物体の通過開始時と通過終了時との両方に出現する。フリップフロップFF1、FF2及びNORゲートにより、XOR1、XOR2の出力が連続で且つ順番に発生したことを検知し、そしてその検知信号であるフリップフリップFF2の正転(Q)出力をフリップフロップFF3を通すことにより、順方向に物体が通過した際に「1」となるような出力信号を得る。一方、物体が逆方向に通過した場合には、XOR1、XOR2の出力変化の順番が上記順方向時とは異なるため、フリップフリップFF2の正転(Q)出力が「1」とはならず、出力端よりパルス信号は出力されない。
【0031】
このタイミングを詳しく見ると、パルス信号の出力は2番目の受光器PD2が遮光された時点で開始され、その後、再び受光器PD2に光が入射するようになった時点で停止される。このことから、この実施例1の構成は、第1発明において受光器の個数nを3とし、m及びpを2としたものである。もちろん、nは最低2にすることが可能である。また、回路構成を変更することにより、m=p=nとすることも容易に行える。その場合には、物体により受光領域のほぼ全面が遮光されたときに出力端よりパルス信号の出力が開始され、物体が通過して受光領域のほぼ全面に光が当たるようになったときにパルス信号が終了する。
【0032】
以上のように、センサ1のパルス信号は順方向に物体が通過した場合にのみ出力されるため、同信号に基づいて物体の移動方向を検知することができる。また、出力されるパルス信号は、入射光が遮断された時点(遮光開始時点)より再び光が入射するようになった時点(入光開始時点)までの時間幅を以て出力される。したがって、この信号に基づいて、受光領域10の近傍における物体の有無を判定することができる。
【0033】
〔実施例2〕
次に第2発明に係る移動体検知センサの一実施例(実施例2)について、図面を参照して説明する。この実施例2の移動体検知センサの外観は図示しないが、基本的には図1に示した実施例1と同様であり、受光領域10内に配列された受光面が4個、つまり受光面10A〜10Dである点のみが異なる。
【0034】
図6は実施例2のセンサにおける信号出力回路24の構成例を示す論理回路図であり、図7は物体が受光面の前方近傍を順方向及び逆方向に通過したときに信号出力回路24の内部で発生する各種信号及びセンサ1の出力信号を示すタイムチャートである。
【0035】
この信号出力回路24は、4個の受光器PD1〜PD4、4個の増幅器AMP1〜AMP4、4個の比較器CMP1〜CMP4、2個のXORゲートXOR1、XOR2、1個のNORゲートNOR及び6個のT型フリップフロップFF1〜FF6が図6に示したように結線されており、フリップフロップFF3の正転(Q)出力が第1出力端OUTA、フリップフロップFF6の正転(Q)出力が第2出力端OUTBとなっている。このうち、フリップフロップFF4〜FF6を除く論理回路は、受光器、増幅器、比較器がそれぞれ3個から4個に増加しているという相違はあるものの、基本的な動作は実施例1と同様であり、物体が順方向に通過する際に第1出力端OUTAにパルス信号が出力され、物体が逆方向に通過する際にはパルス信号は出されず「0」を維持する。
【0036】
この実施例2の構成は、XORゲートXOR1、XOR2、NORゲートNOR、フリップフロップFF1、FF2、FF3から構成される順方向移動検知回路のほかに、フリップフロップFF4、FF5、FF6から構成される逆方向移動検知回路を備える点が特徴である。図6で明らかなように、逆方向移動検知回路は順方向移動検知回路における3個のフリップフロップFF1、FF2、FF3による回路構成と同じであり、フリップフロップFF4、FF5の入力パルス(C)がフリップフロップFF1、FF2とは入れ替えられている点のみが異なる。それにより、この逆方向移動検知回路は順方向移動検知回路とは逆の動作、即ち、物体が逆方向に通過する際に第2出力端OUTBにパルス信号を出力し、物体が順方向に通過する際にはパルス信号を出さずに「0」を維持する。
【0037】
上記実施例1による移動体検知センサでは、物体が順方向に通過したことを検知することは可能であるものの、物体が逆方向に通過したこと自体は検知できないが、この実施例2による移動体検知センサによれば、物体が順方向に通過したことと物体が逆方向に通過したこととを、それぞれ独立に検知することができる。それにより、例えば物体が逆方向に通過することが異常事態であるような場合に、その異常を検知して適切な対処を行うことができる。
【0038】
〔実施例3〕
次に第3発明に係る移動体検知センサの一実施例(実施例3)について、図面を参照して説明する。図8は実施例3のセンサにおける信号出力回路34の構成例を示す論理回路図であり、図9及び図10は物体が受光面の前方近傍を順方向及び逆方向に通過したときに信号出力回路34の内部で発生する各種信号及びセンサ1の出力信号を示すタイムチャートである。なお、図10のタイムチャートは図9のタイムチャートに時間的に連続するものと考えることができる。
【0039】
この信号出力回路34は、4個の受光器PD1〜PD4、4個の増幅器AMP1〜AMP4、4個の比較器CMP1〜CMP4、2個のXORゲートXOR1、XOR2、1個のNORゲートNOR、2個のANDゲートAND1、AND2、1個のORゲートOR、1個のNANDゲートNAND、及び5個のT型フリップフロップFF1〜FF5が図8に示したように結線されており、NANDゲートNANDの出力が出力端OUTとなっている。また、外部からリセット信号を供給するリセット端子RSTが設けられている。
【0040】
この実施例3において、XORゲートXOR1、XOR2、NORゲートNOR、フリップフロップFF1、FF2、FF3から構成される順方向移動検知回路の動作は実施例2における順方向移動検知回路と全く同一である。この実施例3の構成では、上記順方向移動検知回路に加えて、ANDゲートAND1、AND2、ORゲートOR、NANDゲートNAND、フリップフロップFF4、FF5から成る異常(逆方向移動)検知回路が設けられている。図9に示すように、物体が順方向に移動する際に、異常検知回路においてフリップフロップFF5の正転(Q)出力は「0」に維持される。したがって、出力端OUTにはフリップフロップFF3の反転(Qバー)出力の反転が出力され、それによってパルス信号が現れる。
【0041】
それと反対に物体が逆方向に移動する際には、異常検知回路においてフリップフロップFF5の正転(Q)出力は「1」に変化し、物体が通過し終えても「1」が維持される。そのため、NANDゲートNANDにより出力端OUTの信号レベルは「1」に固定され、図10に示すように、それ以降、物体が順方向に通過しても出力端OUTの信号レベルは「1」に固定されたままで先に説明したようなパルス信号は出力されない。したがって、出力端OUTの信号レベルを監視することにより、一度でも物体が逆方向に通過したことがあるか否かを判断することができる。この状態を解除するには、リセット端子RSTにパルス信号を供給する。それにより、フリップフロップFF3、FF5がリセットされるため、図10に示すように、物体が順方向に通過したときにパルス信号を出力することができるように復帰する。
【0042】
このように実施例3による移動体検知センサによれば、物体が逆方向に通過したことを一旦検知すると、それ以降、リセットが為されるまで出力を固定し、物体が順方向に通過したことに対して応答しないようにすることができる。
【0043】
以上、第1乃至第3発明に係る移動体検知センサの一実施例について説明したが、上記実施例はあくまで一例に過ぎず、他にも本発明の精神及び範囲内で様々な実施例が考えられる。例えば、上記実施例では3個又は4個の受光器を使用したが、信号出力回路の構成を適宜変更することにより、5個以上の受光器を用いて上記のようなパルス信号を出力するセンサや、2個の受光器のみで上記のようなパルス信号を出力するセンサを構成することも可能である。即ち、第1乃至第3発明におけるnは2以上の整数でありさえすればよく、m、pは2以上でn以下の整数でありさえすればよい。また、信号出力回路の構成も一例であって、同様の機能を達成するために適宜論理回路を変形できることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第1発明に係る移動体検知センサの一実施例を示す外観図。
【図2】図1に示した移動体検知センサの信号出力回路の構成例を示す論理回路図。
【図3】図2に示した信号出力回路の内部で発生する各種信号及びセンサの出力信号を示すタイムチャート。
【図4】物体が受光面の近傍を順方向に通過したときの物体の位置とセンサの出力との関係を示すタイムチャート。
【図5】物体が受光面の近傍を逆方向に通過したときの物体の位置とセンサの出力との関係を示すタイムチャート。
【図6】第2発明の一実施例による移動体検知センサの信号出力回路の構成例を示す論理回路図。
【図7】図6に示した信号出力回路の内部で発生する各種信号及びセンサの出力信号を示すタイムチャート。
【図8】第3発明の一実施例による移動体検知センサの信号出力回路の構成例を示す論理回路図。
【図9】図8に示した信号出力回路の内部で発生する各種信号及びセンサの出力信号を示すタイムチャート。
【図10】図8に示した信号出力回路の内部で発生する各種信号及びセンサの出力信号を示すタイムチャート。
【符号の説明】
【0045】
1…移動体検知センサ
10…受光領域
10A〜10C…受光面
12…半導体チップ
14、24、34…信号出力回路
PD1〜PD4…受光器
AMP1〜AMP4…増幅器
CMP1〜CMP4…比較器
FF1〜FF6…T型フリップフロップ
XOR1、XOR2…イクスクルーシブORゲート
AND1、AND2…ANDゲート
NAND…NANDゲート
NOR…NORゲート
OR…ORゲート
OUT、OUTA、OUTB…出力端
RST…リセット端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の空間における物体の所定方向への移動を検知する移動体検知センサにおいて、
前記所定方向に沿って配列され、前記空間に面する受光面をそれぞれ有するn個の受光器(ただし、nは2以上の整数)、及び、各受光器の出力信号の変化に応じてパルス信号を出力する信号出力回路を備え、
前記受光器及び信号判定回路は半導体チップ上に実装されていること、及び、
前記信号出力回路は、
前記受光器の出力信号の第1のレベルから第2のレベルへの変化が、物体の入口側に最も近い1番目の受光器から物体の出口側のm番目(但し2≦m≦n)の受光器まで順に生じたときに、前記パルス信号の出力を開始し、その後、前記受光器の出力信号の第2のレベルから第1のレベルへの変化が、前記1番目の受光器からp(但し2≦p≦n)番目の受光器まで順に生じたときに、前記パルス信号の出力を終了する一方、
前記受光器の出力信号の変化が前記順序とは逆に前記出口側のn番目の受光器から1番目の受光器に向かって順に生じたときには前記パルス信号を出力しないように構成されていること、
を特徴とする移動体検知センサ。
【請求項2】
所定の空間における物体の所定方向及びその逆方向への移動を検知する移動体検知センサにおいて、
前記所定方向に沿って配列され、前記空間に面する受光面をそれぞれ有するn個の受光器(ただし、nは2以上の整数)、及び、各受光器の出力信号の変化に応じてパルス信号を出力する、第1及び第2の出力端を有する信号出力回路を備え、
前記受光器及び信号判定回路は半導体チップ上に実装されていること、及び、
前記信号出力回路は、
前記受光器の出力信号の第1のレベルから第2のレベルへの変化が、物体の入口側に最も近い1番目の受光器から物体の出口側のm番目(但し2≦m≦n)の受光器まで順に生じたときに、前記第1の出力端にパルス信号の出力を開始し、その後、前記受光器の出力信号の第2のレベルから第1のレベルへの変化が、前記1番目の受光器からp(但し2≦p≦n)番目の受光器まで順に生じたときに、前記第1の出力端へのパルス信号の出力を終了する一方、
前記受光器の出力信号の第1のレベルから第2のレベルへの変化が、前記順序とは逆に、前記出口側のn番目の受光器から1番目の受光器に向かって順に生じたときに、前記第2の出力端にパルス信号の出力を開始し、その後、前記受光器の出力信号の第2のレベルから第1のレベルへの変化が、前記n番目の受光器から1番目の受光器に向かって順に生じたときに、前記第2の出力端へのパルス信号の出力を終了するように構成されていること、
を特徴とする移動体検知センサ。
【請求項3】
所定の空間における物体の所定方向への移動を検知する移動体検知センサにおいて、
前記所定方向に沿って配列され、前記空間に面する受光面をそれぞれ有するn個の受光器(ただし、nは2以上の整数)、及び、各受光器の出力信号の変化に応じて出力端にパルス信号を出力する信号出力回路を備え、
前記受光器及び信号判定回路は半導体チップ上に実装されていること、及び、
前記信号出力回路は、
前記受光器の出力信号の第1のレベルから第2のレベルへの変化が、物体の入口側に最も近い1番目の受光器から物体の出口側のm番目(但し2≦m≦n)の受光器まで順に生じたときに、前記第1の出力端にパルス信号の出力を開始し、その後、前記受光器の出力信号の第2のレベルから第1のレベルへの変化が、前記1番目の受光器からp(但し2≦p≦n)番目の受光器まで順に生じたときに、前記第1の出力端へのパルス信号の出力を終了する一方、
前記受光器の出力信号の変化が前記順序とは逆に、前記出口側のn番目の受光器から1番目の受光器に向かって順に生じたときには、外部よりリセット信号が与えられる又はそれに相当するリセットが実行されるまで前記出力端の信号レベルを固定するように構成されていること、
を特徴とする移動体検知センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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