説明

移動体通信システム

【課題】膨大な数のローカルエリアレンジノードの運用やそれらの柔軟な配置を可能とする移動通信システムを提供する。
【解決手段】セルリセレクションのための測定開始用閾値(S_intrasearch_total)として、サービングセルのバックホールリンクの通信品質を考慮した値を設ける。移動端末は、ステップST1401で、サービングセルの受信電力測定値(Sx)と測定開始用閾値(S_intrasearch_total)とを比較し、SxがS_intrasearch_total以下となった場合に、バックホールリンクの通信品質を含めたサービングセルの受信品質が悪いと判断し、ステップST1302で、セルリセレクションのための測定を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の移動端末と基地局との間で無線通信を実施する移動体通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
第3世代と呼ばれる通信方式のうち、W−CDMA(Wideband Code division Multiple Access)方式が2001年から日本で商用サービスが開始されている。また、下りリンク(個別データチャネル、個別制御チャネル)にパケット伝送用のチャネル(High Speed-Downlink Shared Channel:HS−DSCH)を追加することにより、下りリンクを用いたデータ送信の更なる高速化を実現するHSDPA(High Speed Down Link Packet Access)のサービスが開始されている。さらに、上り方向のデータ送信をより高速化するためHSUPA(High Speed Up Link Packet Access)方式についてもサービスが開始されている。W−CDMAは、移動体通信システムの規格化団体である3GPP(3rd Generation Partnership Project)により定められた通信方式であり、リリース8版の規格書がとりまとめられている。
【0003】
また、3GPPにおいて、W−CDMAとは別の通信方式として、無線区間についてはロングタームエボリューション(Long Term Evolution:LTE)、コアネットワーク(単にネットワークとも称する)を含めたシステム全体構成については、システムアーキテクチャエボリューション(System Architecture Evolution:SAE)と称される新たな通信方式が検討されている。
【0004】
LTEでは、アクセス方式、無線のチャネル構成やプロトコルが、現在のW−CDMA(HSDPA/HSUPA)とは全く異なるものになる。例えば、アクセス方式は、W−CDMAが符号分割多元接続(Code Division Multiple Access)を用いているのに対して、LTEは下り方向はOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)、上り方向はSC−FDMA(Single Career Frequency Division Multiple Access)を用いる。また、帯域幅は、W−CDMAが5MHzであるのに対し、LTEでは1.4MHz,3MHz,5MHz,10MHz,15MHz,20MHzの中で基地局毎に選択可能となっている。また、LTEでは、W−CDMAのように回線交換を含まず、パケット通信方式のみになる。
【0005】
LTEは、W−CDMAのコアネットワーク(General Packet Radio Service:GPRS)とは異なる新たなコアネットワークを用いて通信システムが構成されるため、W−CDMA網とは別の独立した無線アクセス網として定義される。したがって、W−CDMAの通信システムと区別するため、LTEの通信システムでは、移動端末(User Equipment:UE)と通信を行う基地局(Base station)はeNB(E-UTRAN NodeB)と称され、複数の基地局と制御データやユーザデータのやり取りを行う基地局制御装置(Radio Network Controller)は、EPC(Evolved Packet Core)またはaGW(Access Gateway)と称される。このLTEの通信システムでは、ユニキャスト(Unicast)サービスとE-MBMSサービス(Evolved Multimedia Broadcast Multicast Service)とが提供される。E−MBMSサービスとは、放送型マルチメディアサービスであり、単にMBMSと称される場合もある。複数の移動端末に対してニュースや天気予報、モバイル放送などの大容量放送コンテンツが送信される。これを1対多(Point to Multipoint)サービスともいう。
【0006】
3GPPでの、LTEシステムにおける全体的なアーキテクチャ(Architecture)に関する現在の決定事項が、非特許文献1(4.6.1章)に記載されている。全体的なアーキテクチャについて図1を用いて説明する。図1は、LTE方式の通信システムの構成を示す説明図である。図1において、移動端末101に対する制御プロトコル、例えばRRC(Radio Resource Control)と、ユーザプレイン、例えばPDCP(Packet Data Convergence Protocol)、RLC(Radio Link Control)、MAC(Medium Access Control)、PHY(Physical layer)とが基地局102で終端するならば、E−UTRAN(Evolved Universal Terrestrial Radio Access)は1つあるいは複数の基地局102によって構成される。
【0007】
基地局102は、MME(Mobility Management Entity)103から通知されるページング信号(Paging Signaling、ページングメッセージ(paging messages)とも称される)のスケジューリング(Scheduling)および送信を行う。基地局102は、X2インタフェースにより、互いに接続される。また基地局102は、S1インタフェースによりEPC(Evolved Packet Core)に接続される。より明確には、基地局102は、S1_MMEインタフェースによりMME(Mobility Management Entity)103に接続され、S1_UインタフェースによりS−GW(Serving Gateway)104に接続される。
【0008】
MME103は、複数あるいは単数の基地局102へのページング信号の分配を行う。また、MME103は待受け状態(Idle State)のモビリティ制御(Mobility control)を行う。MME103は、移動端末が待ち受け状態および、アクティブ状態(Active State)の際に、トラッキングエリア(Tracking Area)リストの管理を行う。
【0009】
S−GW104は、ひとつまたは複数の基地局102とユーザデータの送受信を行う。S−GW104は、基地局間のハンドオーバの際、ローカルな移動性のアンカーポイント(Mobility Anchor Point)となる。EPCには、さらにP−GW(PDN Gateway)が存在し、ユーザ毎のパケットフィルタリングやUE−IDアドレスの割当などを行う。
【0010】
移動端末101と基地局102との間の制御プロトコルRRCは、報知(Broadcast)、ページング(paging)、RRC接続マネージメント(RRC connection management)などを行う。RRCにおける基地局と移動端末の状態として、RRC_Idle、RRC_CONNECTEDがある。RRC_IDLEでは、PLMN(Public Land Mobile Network)選択、システム情報(System Information:SI)の報知、ページング(paging)、セル再選択(cell re-selection)、モビリティ等が行われる。RRC_CONNECTEDでは、移動端末はRRC接続(connection)を有し、ネットワークとのデータの送受信を行うことができ、また、ハンドオーバ(Handover:HO)、隣接セル(Neighbour cell)のメジャメント等が行われる。
【0011】
非特許文献1(5章)に記載される3GPPでの、LTEシステムにおけるフレーム構成に関する現在の決定事項について、図2を用いて説明する。図2は、LTE方式の通信システムで使用される無線フレームの構成を示す説明図である。図2において、1つの無線フレーム(Radio frame)は10msである。無線フレームは10個の等しい大きさのサブフレーム(Sub-frame)に分割される。サブフレームは、2個の等しい大きさのスロット(slot)に分割される。無線フレーム毎に1番目と6番目のサブフレームに下り同期信号(Downlink Synchronization Signal:SS)が含まれる。同期信号には、第一同期信号(Primary Synchronization Signal:P−SS)と、第二同期信号(Secondary Synchronization Signal:S−SS)とがある。サブフレーム単位にてMBSFN(Multimedia Broadcast multicast service Single Frequency Network)用とMBSFN以外のチャネルの多重が行われる。以降、MBSFN送信用のサブフレームをMBSFNサブフレーム(MBSFN sub-frame)と称する。
【0012】
非特許文献2に、MBSFNサブフレームの割り当て時のシグナリング例が記載されている。図3は、MBSFNフレームの構成を示す説明図である。図3において、MBSFNフレーム(MBSFN frame)毎にMBSFNサブフレームが割り当てられる。MBSFNフレームの集合(MBSFN frame Cluster)がスケジュールされる。MBSFNフレームの集合の繰り返し周期(Repetition Period)が割り当てられる。
【0013】
3GPPでの、LTEシステムにおけるチャネル構成に関する現在の決定事項が、非特許文献1(5章)に記載されている。CSG(Closed Subscriber Group cell)セルにおいてもnon−CSGセルと同じチャネル構成が用いられると想定されている。物理チャネル(Physical channel)について、図4を用いて説明する。図4は、LTE方式の通信システムで使用される物理チャネルを説明する説明図である。図4において、物理報知チャネル(Physical Broadcast channel:PBCH)401は、基地局102から移動端末101へ送信される下りチャネルである。BCHトランスポートブロック(transport block)は、40ms間隔中の4個のサブフレームにマッピングされる。40msタイミングの明白なシグナリングはない。物理制御チャネルフォーマットインジケータチャネル(Physical Control Format Indicator Channel:PCFICH)402は、基地局102から移動端末101へ送信される。PCFICHは、PDCCHsのために用いるOFDMシンボルの数について基地局102から移動端末101へ通知する。PCFICHは、サブフレーム毎に送信される。
【0014】
物理下り制御チャネル(Physical Downlink Control Channel:PDCCH)403は、基地局102から移動端末101へ送信される下りチャネルである。PDCCHは、リソース割り当て(allocation)、DL−SCH(後述の図5に示されるトランスポートチャネルの1つである下り共有チャネル)に関するHARQ情報、PCH(図5に示されるトランスポートチャネルの1つであるページングチャネル)を通知する。PDCCHは、上りスケジューリンググラント(Uplink Scheduling Grant)を運ぶ。PDCCHは、上り送信に対する応答信号であるAck(Acknowledgement)/Nack(Negative Acknowledgement)を運ぶ。PDCCHは、L1/L2制御信号とも呼ばれる。
【0015】
物理下り共有チャネル(Physical Downlink Shared Channel:PDSCH)404は、基地局102から移動端末101へ送信される下りチャネルである。PDSCHは、トランスポートチャネルであるDL-SCH(下り共有チャネル)やトランスポートチャネルであるPCHがマッピングされている。物理マルチキャストチャネル(Physical Multicast Channel:PMCH)405は、基地局102から移動端末101へ送信される下りチャネルである。PMCHは、トランスポートチャネルであるMCH(マルチキャストチャネル)がマッピングされている。
【0016】
物理上り制御チャネル(Physical Uplink Control Channel:PUCCH)406は、移動端末101から基地局102へ送信される上りチャネルである。PUCCHは、下り送信に対する応答信号(response)であるAck/Nackを運ぶ。PUCCHは、CQI(Channel Quality Indicator)レポートを運ぶ。CQIとは受信したデータの品質、もしくは通信路品質を示す品質情報である。またPUCCHは、スケジューリングリクエスト(Scheduling Request:SR)を運ぶ。物理上り共有チャネル(Physical Uplink Shared Channel:PUSCH)407は、移動端末101から基地局102へ送信される上りチャネルである。PUSCHは、UL−SCH(図5に示されるトランスポートチャネルの1つである上り共有チャネル)がマッピングされている。
【0017】
物理HARQインジケータチャネル(Physical Hybrid ARQ Indicator Channel:PHICH)408は、基地局102から移動端末101へ送信される下りチャネルである。PHICHは、上り送信に対する応答であるAck/Nackを運ぶ。物理ランダムアクセスチャネル(Physical Random Access Channel:PRACH)409は、移動端末101から基地局102へ送信される上りチャネルである。PRACHは、ランダムアクセスプリアンブル(random access preamble)を運ぶ。
【0018】
下りリファレンスシグナル(Reference signal)は、移動体通信システムとして既知のシンボルが、毎スロットの最初、3番目、最後のOFDMシンボルに挿入される。移動端末の物理レイヤの測定として、リファレンスシンボルの受信電力(Reference Symbol Received Power:RSRP)がある。
【0019】
非特許文献1(5章)に記載されるトランスポートチャネル(Transport channel)について、図5を用いて説明する。図5は、LTE方式の通信システムで使用されるトランスポートチャネルを説明する説明図である。図5(A)には、下りトランスポートチャネルと下り物理チャネルとの間のマッピングを示す。図5(B)には、上りトランスポートチャネルと上り物理チャネルとの間のマッピングを示す。下りトランスポートチャネルについて報知チャネル(Broadcast Channel:BCH)は、その基地局(セル)全体に報知される。BCHは、物理報知チャネル(PBCH)にマッピングされる。
【0020】
下り共有チャネル(Downlink Shared Channel:DL−SCH)には、HARQ(Hybrid ARQ)による再送制御が適用される。DL−SCHは、基地局(セル)全体への報知が可能である。DL−SCHは、ダイナミックあるいは準静的(Semi-static)なリソース割り当てをサポートする。準静的なリソース割り当ては、パーシステントスケジューリング(Persistent Scheduling)とも言われる。DL−SCHは、移動端末の低消費電力化のために移動端末のDRX(Discontinuous reception)をサポートする。DL−SCHは、物理下り共有チャネル(PDSCH)へマッピングされる。
【0021】
ページングチャネル(Paging Channel:PCH)は、移動端末の低消費電力を可能とするために移動端末のDRXをサポートする。PCHは、基地局(セル)全体への報知が要求される。PCHは、動的にトラフィックに利用できる物理下り共有チャネル(PDSCH)のような物理リソース、あるいは他の制御チャネルの物理下り制御チャネル(PDCCH)のような物理リソースへマッピングされる。マルチキャストチャネル(Multicast Channel:MCH)は、基地局(セル)全体への報知に使用される。MCHは、マルチセル送信におけるMBMSサービス(MTCHとMCCH)のSFN合成をサポートする。MCHは、準静的なリソース割り当てをサポートする。MCHは、PMCHへマッピングされる。
【0022】
上り共有チャネル(Uplink Shared Channel:UL−SCH)には、HARQ(Hybrid ARQ)による再送制御が適用される。UL−SCHは、ダイナミックあるいは準静的(Semi-static)なリソース割り当てをサポートする。UL−SCHは、物理上り共有チャネル(PUSCH)へマッピングされる。図5(B)に示されるランダムアクセスチャネル(Random Access Channel:RACH)は、制御情報に限られている。RACHは、衝突のリスクがある。RACHは、物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)へマッピングされる。
【0023】
HARQについて説明する。HARQとは、自動再送(Automatic Repeat reQuest)と誤り訂正(Forward Error Correction)との組み合わせにより、伝送路の通信品質を向上させる技術である。通信品質が変化する伝送路に対しても、再送により誤り訂正が有効に機能するという利点がある。特に、再送にあたって初送の受信結果と再送の受信結果との合成をすることで、更なる品質向上を得ることも可能である。
【0024】
再送の方法の一例を説明する。受信側にて、受信データが正しくデコードできなかった場合、換言すればCRC(Cyclic Redundancy Check)エラーが発生した場合(CRC=NG)、受信側から送信側へ「Nack」を送信する。「Nack」を受信した送信側は、データを再送する。受信側にて、受信データが正しくデコードできた場合、換言すればCRCエラーが発生しない場合(CRC=OK)、受信側から送信側へ「Ack」を送信する。「Ack」を受信した送信側は次のデータを送信する。
【0025】
HARQ方式の一例として、チェースコンバイニング(Chase Combining)がある。チェースコンバイニングとは、初送と再送に同じデータ系列を送信するもので、再送において初送のデータ系列と再送のデータ系列との合成を行うことで、利得を向上させる方式である。これは、初送データに誤りがあったとしても、部分的に正確なものも含まれており、正確な部分の初送データと再送データとを合成することで、より高精度にデータを送信できるという考え方に基づいている。また、HARQ方式の別の例として、IR(Incremental Redundancy)がある。IRとは、冗長度を増加させるものであり、再送においてパリティビットを送信することで、初送と組み合わせて冗長度を増加させ、誤り訂正機能により品質を向上させるものである。
【0026】
非特許文献1(6章)に記載される論理チャネル(Logical channel、以下「ロジカルチャネル」という場合がある)について、図6を用いて説明する。図6は、LTE方式の通信システムで使用される論理チャネルを説明する説明図である。図6(A)には、下りロジカルチャネルと下りトランスポートチャネルとの間のマッピングを示す。図6(B)には、上りロジカルチャネルと上りトランスポートチャネルとの間のマッピングを示す。報知制御チャネル(Broadcast Control Channel:BCCH)は、報知システム制御情報のための下りチャネルである。論理チャネルであるBCCHは、トランスポートチャネルである報知チャネル(BCH)、あるいは下り共有チャネル(DL−SCH)へマッピングされる。
【0027】
ページング制御チャネル(Paging Control Channel:PCCH)は、ページング信号を送信するための下りチャネルである。PCCHは、移動端末のセルロケーションをネットワークが知らない場合に用いられる。論理チャネルであるPCCHは、トランスポートチャネルであるページングチャネル(PCH)へマッピングされる。共有制御チャネル(Common Control Channel:CCCH)は、移動端末と基地局との間の送信制御情報のためのチャネルである。CCCHは、移動端末がネットワークとの間でRRC接続(connection)を持っていない場合に用いられる。下り方向では、CCCHは、トランスポートチャネルである下り共有チャネル(DL−SCH)へマッピングされる。上り方向では、CCCHは、トランスポートチャネルである上り共有チャネル(UL−SCH)へマッピングされる。
【0028】
マルチキャスト制御チャネル(Multicast Control Channel:MCCH)は、1対多の送信のための下りチャネルである。ネットワークから移動端末への1つあるいはいくつかのMTCH用のMBMS制御情報の送信のために用いられるチャネルである。MCCHは、MBMS受信中の移動端末のみに用いられるチャネルである。MCCHは、トランスポートチャネルである下り共有チャネル(DL−SCH)あるいはマルチキャストチャネル(MCH)へマッピングされる。
【0029】
個別制御チャネル(Dedicated Control Channel:DCCH)は、移動端末とネットワークとの間の個別制御情報を送信するチャネルである。DCCHは、上りでは上り共有チャネル(UL−SCH)へマッピングされ、下りでは下り共有チャネル(DL−SCH)にマッピングされる。
【0030】
個別トラフィックチャネル(Dedicate Traffic Channel:DTCH)は、ユーザ情報の送信のための個別移動端末への1対1通信のチャネルである。DTCHは、上りおよび下りともに存在する。DTCHは、上りでは上り共有チャネル(UL−SCH)へマッピングされ、下りでは下り共有チャネル(DL−SCH)へマッピングされる。
【0031】
マルチキャストトラフィックチャネル(Multicast Traffic channel:MTCH)は、ネットワークから移動端末へのトラフィックデータ送信のための下りチャネルである。MTCHは、MBMS受信中の移動端末のみに用いられるチャネルである。MTCHは、下り共有チャネル(DL−SCH)あるいはマルチキャストチャネル(MCH)へマッピングされる。
【0032】
GCIとは、グローバルセル識別子(Global Cell Identity)のことである。LTEおよびUMTS(Universal Mobile Telecommunication System)において、CSGセル(Closed Subscriber Group cell)が導入される。CSGについて以下に説明する(非特許文献3 3.1章参照)。CSG(Closed Subscriber Group)とは、利用可能な加入者をオペレータが特定しているセルである(特定加入者用セル)。特定された加入者は、PLMN(Public Land Mobile Network)の1つ以上のE-UTRANセルにアクセスすることが許可される。特定された加入者がアクセスを許可されている1つ以上のE−UTRANセルを「CSG cell(s)」と呼ぶ。ただし、PLMNにはアクセス制限がある。CSGセルとは、固有のCSGアイデンティティ(CSG identity:CSG ID;CSG−ID)を報知するPLMNの一部である。予め利用登録し、許可された加入者グループのメンバーは、アクセス許可情報であるところのCSG−IDを用いてCSGセルにアクセスする。
【0033】
CSG−IDは、CSGセルまたはセルによって報知される。移動体通信システムにCSG−IDは複数存在する。そして、CSG−IDは、CSG関連のメンバーのアクセスを容易にするために、移動端末(UE)によって使用される。移動端末の位置追跡は、1つ以上のセルからなる区域を単位に行われる。位置追跡は、待受け状態であっても移動端末の位置を追跡し、呼び出す(移動端末が着呼する)ことを可能にするためである。この移動端末の位置追跡のための区域をトラッキングエリアと呼ぶ。CSGホワイトリスト(CSG White List)とは、加入者が属するCSGセルのすべてのCSG IDが記録されている、USIM(Universal Subscriber Identity Module)に格納されたリストである。CSGホワイトリストは、許可CSGリスト(Allowed CSG ID List)と呼ばれることもある。
【0034】
「適切なセル」(Suitable cell)について以下に説明する(非特許文献3 4.3章参照)。「適切なセル」(Suitable cell)とは、UEが通常(normal)サービスを受けるためにキャンプオン(Camp ON)するセルである。そのようなセルは、以下の条件を満たすものとする。
【0035】
(1)セルは、選択されたPLMNもしくは登録されたPLMN、または「Equivalent PLMNリスト」のPLMNの一部であること。
【0036】
(2)NAS(Non-Access Stratum)によって提供された最新情報にて、さらに以下の条件を満たすこと
(a)そのセルが禁じられた(barred)セルでないこと
(b)そのセルが「ローミングのための禁止されたLAs」リストの一部ではなく、少なくとも1つのトラッキングエリア(Tracking Area:TA)の一部であること。その場合、そのセルは上記(1)を満たす必要がある
(c)そのセルが、セル選択評価基準を満たしていること
(d)そのセルが、CSGセルとしてシステム情報(System Information:SI)によって特定されたセルに関しては、CSG−IDはUEの「CSGホワイトリスト」(CSG WhiteList)の一部であること(UEのCSG WhiteList中に含まれること)。
【0037】
「アクセプタブルセル」(Acceptable cell)について以下に説明する(非特許文献3 4.3章参照)。これは、UEが限られたサービス(緊急通報)を受けるためにキャンプオンするセルである。そのようなセルは、以下のすべての要件を充足するものとする。つまり、E−UTRANネットワークで緊急通報を開始するための最小のセットの要件を以下に示す。(1)そのセルが禁じられた(barred)セルでないこと。(2)そのセルが、セル選択評価基準を満たしていること。
【0038】
セルにキャンプオン(camp on)するとは、UEがセル選択/再選択(cell selection/reselection)処理を完了し、UEがシステム情報とページング情報をモニタするセルを選択した状態である。
【0039】
3GPPにおいて、Home−NodeB(Home−NB;HNB)、Home−eNodeB(Home−eNB;HeNB)と称される基地局が検討されている。UTRANにおけるHNB、またはE-UTRANにおけるHeNBは、例えば家庭、法人、商業用のアクセスサービス向けの基地局である。非特許文献4には、HeNBおよびHNBへのアクセスの3つの異なるモードが開示されている。具体的には、オープンアクセスモード(Open access mode)と、クローズドアクセスモード(Closed access mode)と、ハイブリッドアクセスモード(Hybrid access mode)である。
【0040】
各々のモードは、以下のような特徴を有する。オープンアクセスモードでは、HeNBやHNBは通常のオペレータのノーマルセルとして操作される。クローズドアクセスモードでは、HeNBやHNBがCSGセルとして操作される。これはCSGメンバーのみアクセス可能なCSGセルである。ハイブリッドアクセスモードでは、非CSGメンバーも同時にアクセス許可されているCSGセルである。ハイブリッドアクセスモードのセル(ハイブリッドセルとも称する)は、言い換えれば、オープンアクセスモードとクローズドアクセスモードの両方をサポートするセルである。
【0041】
3GPPでは、全PCI(Physical Cell Identity)を、CSGセル用とnon−CSGセル用とに分割(PCIスプリットと称する)することが議論されている(非特許文献5参照)。またPCIスプリット情報は、システム情報にて基地局から傘下の移動端末に対して報知されることが議論されている。非特許文献5は、PCIスプリットを用いた移動端末の基本動作を開示する。PCIスプリット情報を有していない移動端末は、全PCIを用いて(例えば504コード全てを用いて)セルサーチを行う必要がある。これに対して、PCIスプリット情報を有する移動端末は、当該PCIスプリット情報を用いてセルサーチを行うことが可能である。
【0042】
また3GPPでは、リリース10として、ロングタームエボリューションアドヴァンスド(Long Term Evolution Advanced:LTE−A)の規格策定が進められている(非特許文献6、非特許文献7参照)。
【0043】
LTE−Aシステムでは、高い通信速度、セルエッジでの高いスループット、新たなカバレッジエリアなどを得るために、リレー(Relay:リレーノード(RN))をサポートすることが検討されている。リレーノードは、ドナーセル(Donor cell;Donor eNB;DeNB)を介して無線アクセスネットワークに無線で接続される。ドナーセルの範囲内で、ネットワーク(Network:NW)からリレーへのリンクは、ネットワークからUEへのリンクと同じ周波数バンドを共用する。この場合、リリース8のUEも該ドナーセルに接続することを可能とする。ドナーセルとリレーノードとの間のリンクをバックホールリンク(backhaul link)と称し、リレーノードとUEとの間のリンクをアクセスリンク(access link)と称す。
【0044】
FDD(Frequency Division Duplex)におけるバックホールリンクの多重方法として、DeNBからRNへの送信は下り(DL)周波数バンドで行われ、RNからDeNBへの送信は上り(UL)周波数バンドで行われる。リレーにおけるリソースの分割方法として、DeNBからRNへのリンクおよびRNからUEへのリンクが一つの周波数バンドで時分割多重され、RNからDeNBへのリンクおよびUEからRNへのリンクも一つの周波数バンドで時分割多重される。こうすることで、リレーにおいて、リレーの送信が自リレーの受信へ干渉することを防ぐことができる。
【0045】
LTE−Aで検討される技術の一つとして、ヘテロジーニアスネットワークス(Heterogeneous Networks:HetNets)が加えられた(非特許文献8参照)。ヘテロジーニアスネットワークスは、通常のeNB(マクロセル)に、HeNBやリレーノードのようなローカルエリアレンジノードを一つ以上組み入れたネットワークである。
【0046】
ヘテロジーニアスネットワークスにおいては、最も受信電力の強いセルへセルセレクションを行うことが必ずしも最適になるとは限らないという問題が存在する。また、バックホールリンクの通信品質が悪いセルには接続しない方がよい場合があるが、従来のセルセレクションにおいては、バックホールリンクの通信品質を考慮に入れていないという問題がある。さらに、ヘテロジーニアスネットワークでは、下りリンクで最適なセルと、上りリンクで最適なセルとは異なるという問題がある。従来のセルセレクションでは、下りリンクで最適なセルへのセルセレクションが行われるため、上りリンクについて何ら考慮されていない。これらの問題は、セルセレクションに限らず、セルリセレクションやハンドオーバなどのサービングセルの選択あるいは変更の際に生じる。
【0047】
これらの問題は、ヘテロジーニアスネットワークにおけるUEあるいはノード間の干渉の増大や、各ノードのキャパシティの低減という問題につながる。将来の膨大な数のローカルエリアレンジノードの運用やそれらの柔軟な配置を可能とするためには、これらの問題を解決することが重要な課題となっている。
【0048】
非特許文献8では、これらの問題を解消するために、バックホールリンクの品質を考慮したセルセレクションや、弱受信電力のセルの測定とトリガメカニズムとが必要であることが提案されている。非特許文献9には、リレーノードのバックホールリンクの通信品質を考慮したセルセレクション方法が開示されている。非特許文献10には、上りリンクと下りリンクとで異なるセルに独立に接続させることが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0049】
【非特許文献1】3GPP TS36.300 V9.1.0 4.6.1章、4.6.2章、5章、6章、10.1.2章、10.7章
【非特許文献2】3GPP R1−072963
【非特許文献3】3GPP TS36.304 V9.0.0 3.1章、4.3章、5.2.4章
【非特許文献4】3GPP S1−083461
【非特許文献5】3GPP R2−082899
【非特許文献6】3GPP TR 36.814 V1.1.1
【非特許文献7】3GPP TR 36.912 V9.0.0
【非特許文献8】3GPP R1−094883
【非特許文献9】3GPP R2−096887
【非特許文献10】3GPP R1−094246
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0050】
非特許文献8では、前述の問題を解消するために、バックホールリンクの品質を考慮したセルセレクションや、弱受信電力のセルの測定とトリガメカニズムとが必要であることが提案されている。しかし、これらの具体的な方法については、何ら記載されていない。
【0051】
非特許文献9には、リレーノードがバックホールリンクの品質を報知して、UEはそれを考慮してセルセレクションを行うと記載されている。しかし、どのようなメカニズムで該バックホールリンクの品質を考慮に入れるのか、具体的な方法については、何ら開示されていない。
【0052】
非特許文献10には、上りリンクと下りリンクとで異なるセルに独立に接続させることが開示されているが、この具体的方法については、何ら記載されていない。また、上りリンクと下りリンクとで異なるセルに接続させることは、UEがサービングセルを複数有することになるため、通信制御が非常に複雑になってしまうと考えられる。
【0053】
本発明の目的は、膨大な数のローカルエリアレンジノードの運用やそれらの柔軟な配置を可能とする移動通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0054】
本発明の移動体通信システムは、コアネットワークに接続される複数の基地局装置と、各前記基地局装置と無線通信可能な移動端末装置とを含み、前記複数の基地局装置の通信可能な範囲である複数のセルの少なくとも一部分が重複する移動体通信システムであって、前記移動端末装置は、各セルにおける基地局装置からの信号の受信品質と、前記基地局装置と前記コアネットワークとの間の通信回線の通信品質とを含む選択情報に基づいて、前記複数のセルの中から、通信対象となる基地局装置のセルを選択することを特徴とする。
【0055】
また本発明の移動体通信システムは、複数の基地局装置と、各前記基地局装置と無線通信可能な移動端末装置と、前記複数の基地局装置のうちの少なくとも1つの基地局装置と前記移動端末装置との間の無線通信を中継する中継装置とを含み、前記複数の基地局装置の通信可能な範囲である複数のセルの少なくとも一部分が重複する移動体通信システムであって、前記移動端末装置は、各セルにおける基地局装置からの信号の受信品質と、前記基地局装置と前記中継装置との間の通信回線の通信品質とを含む選択情報に基づいて、前記複数のセルの中から、通信対象となる基地局装置のセルを選択することを特徴とする。
【0056】
また本発明の移動体通信システムは、複数の基地局装置と、各前記基地局装置と無線通信可能な移動端末装置とを含み、前記複数の基地局装置の通信可能な範囲である複数のセルの少なくとも一部分が重複する移動体通信システムであって、前記移動端末装置は、各セルにおける基地局装置からの信号の受信品質と、各セルにおける移動端末装置から基地局装置への上り通信回線の状態とを含む選択情報に基づいて、前記複数のセルの中から、通信対象となる基地局装置のセルを選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0057】
また本発明の移動体通信システムによれば、移動端末装置は、各セルにおける基地局装置からの信号の受信品質と、基地局装置とコアネットワークとの間の通信回線の通信品質とを含む選択情報に基づいて、複数のセルの中から、通信対象となる基地局装置のセルを選択する。これによって、各セルの受信品質に加えて、基地局装置とコアネットワークとの間の通信回線の通信品質を考慮に入れて、通信対象となる基地局装置のセルを選択することができる。したがって、たとえば、ヘテロジーニアスネットワークスにおける干渉問題およびキャパシティ問題を改善することが可能となるので、膨大な数のローカルエリアレンジノードの運用およびそれらの柔軟な配置が可能となる。
【0058】
本発明の移動体通信システムによれば、移動端末装置は、各セルにおける基地局装置からの信号の受信品質と、基地局装置と中継装置との間の通信回線の通信品質とを含む選択情報に基づいて、複数のセルの中から、通信対象となる基地局装置のセルを選択する。これによって、各セルの受信品質に加えて、基地局装置と中継装置との間の通信回線の通信品質を考慮に入れて、通信対象となる基地局装置のセルを選択することができる。したがって、たとえば、ヘテロジーニアスネットワークスにおける干渉問題およびキャパシティ問題を改善することが可能となるので、膨大な数のローカルエリアレンジノードの運用およびそれらの柔軟な配置が可能となる。
【0059】
また本発明の移動体通信システムによれば、移動端末装置は、各セルにおける基地局装置からの信号の受信品質と、各セルにおける移動端末装置から基地局装置への上り通信回線の状態とを含む選択情報に基づいて、複数のセルの中から、通信対象となる基地局装置のセルを選択する。これによって、各セルの受信品質に加えて、各セルの上り通信回線の状態を考慮に入れて、通信対象となる基地局装置のセルを選択することができる。したがって、たとえば、ヘテロジーニアスネットワークスにおける干渉問題およびキャパシティ問題を改善することが可能となるので、膨大な数のローカルエリアレンジノードの運用およびそれらの柔軟な配置が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】LTE方式の通信システムの構成を示す説明図である。
【図2】LTE方式の通信システムで使用される無線フレームの構成を示す説明図である。
【図3】MBSFNフレームの構成を示す説明図である。
【図4】LTE方式の通信システムで使用される物理チャネルを説明する説明図である。
【図5】LTE方式の通信システムで使用されるトランスポートチャネルを説明する説明図である。
【図6】LTE方式の通信システムで使用される論理チャネルを説明する説明図である。
【図7】現在3GPPにおいて議論されているLTE方式の移動体通信システムの全体的な構成を示すブロック図である。
【図8】本発明に係る移動端末(図7の移動端末71)の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明に係る基地局(図7の基地局72)の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明に係るMME(図7のMME部73)の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明に係るHeNBGWである図7に示すHeNBGW74の構成を示すブロック図である。
【図12】LTE方式の通信システムにおいて移動端末(UE)が行うセルサーチから待ち受け動作までの概略を示すフローチャートである。
【図13】非特許文献3の技術によるUEのセルリセレクションの処理手順を示すフローチャートである。
【図14】セルリセレクションのための測定開始用閾値に、サービングセルのバックホールリンクの通信品質を入れ込んだセルリセレクションの処理手順を示すフローチャートである。
【図15】サービングセルの測定値にサービングセルのバックホールリンクの通信品質を入れ込んだセルリセレクションの処理手順を示すフローチャートである。
【図16】セルリセレクションのための測定開始用閾値として、バックホール閾値(開始)を設けたセルリセレクションの処理手順を示すフローチャートである。
【図17】セルランキング時のセルの測定値に各セルのバックホールリンクの通信品質を入れこんだセルリセレクションの処理手順を示すフローチャートである。
【図18】受信品質が、ある値以上のセルがある場合に、バックホールリンクの受信品質を考慮してセルランキングを行うセルリセレクションの処理手順を示すフローチャートである。
【図19】バックホールリンクの通信品質が、ある値以上のセルがある場合、セルの受信品質を考慮してセルランキングを行うセルリセレクションの処理手順を示すフローチャートである。
【図20】上りリンクの状態も考慮に入れたセルリセレクションの処理手順を示すフローチャートである。
【図21】受信品質が、ある値以上のセルがある場合に、パスロスを考慮してセルランキングを行うセルリセレクションの処理手順を示すフローチャートである。
【図22】本発明の実施の形態1から実施の形態4の変形例1で開示した方法を組合せたセルリセレクションの処理手順を示すフローチャートの一例である。
【図23】非特許文献3の技術によるUEのセルセレクションの処理手順を示すフローチャートである。
【図24】本実施の形態で開示する、セルのバックホールリンクの通信品質および上りリンクの状態を考慮に入れたセルセレクションの処理手順を示すフローチャートである。
【図25】非特許文献1の技術による通常のHOの処理手順を示すシーケンス図である。
【図26】サービングセルによるターゲットセルの選択手順の一例を示すフローチャートである。
【図27】本実施の形態で開示する、セルのバックホールリンクの通信品質および上りリンクの状態を考慮に入れたHOの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
実施の形態1.
図7は、現在3GPPにおいて議論されているLTE方式の移動体通信システムの全体的な構成を示すブロック図である。現在3GPPにおいては、CSG(Closed Subscriber Group)セル(E−UTRANのHome−eNodeB(Home−eNB;HeNB)、UTRANのHome−NB(HNB))と、non−CSGセル(E−UTRANのeNodeB(eNB)、UTRANのNodeB(NB)、GERANのBSS)とを含めたシステムの全体的な構成が検討されており、E−UTRANについては、図7のような構成が提案されている(非特許文献1 4.6.1.章参照)。
【0062】
図7について説明する。移動端末装置(以下「移動端末」または「UE」という)71は、基地局装置(以下「基地局」という)72と送受信を行う。基地局72は、eNB72−1と、Home−eNB72−2とに分類される。eNB72−1は、MME、あるいはS−GW、あるいはMMEおよびS−GWを含むMME/S−GW部(以下「MME部」という)73とS1インタフェースにより接続され、eNB72−1とMME部73との間で制御情報が通信される。eNB72−1は、MME部73を介してコアネットワークに接続される。ひとつのeNB72−1に対して、複数のMME部73が接続されてもよい。eNB72−1間は、X2インタフェースにより接続され、eNB72−1間で制御情報が通信される。
【0063】
Home−eNB72−2は、MME部73とS1インタフェースにより接続され、Home−eNB72−2とMME部73との間で制御情報が通信される。ひとつのMME部73に対して、複数のHome−eNB72−2が接続される。あるいは、Home−eNB72−2は、HeNBGW(Home-eNB GateWay)74を介してMME部73と接続される。Home−eNB72−2とHeGW74とは、S1インタフェースにより接続され、HeNBGW74とMME部73とはS1インタフェースを介して接続される。Home−eNB72−2は、MME部73、またはMME部73およびHeNBGW74を介して、コアネットワークに接続される。ひとつまたは複数のHome−eNB72−2がひとつのHeNBGW74と接続され、S1インタフェースを通して情報が通信される。HeNBGW74は、ひとつまたは複数のMME部73と接続され、S1インタフェースを通して情報が通信される。
【0064】
さらに現在3GPPでは、以下のような構成が検討されている。Home−eNB72−2間のX2インタフェースはサポートされない。MME部73からは、HeNBGW74はeNB72−1として見える。Home−eNB72−2からは、HeNBGW74はMME部73として見える。Home−eNB72−2が、HeNBGW74を介してMME部73に接続されるか否かに関係なく、Home−eNB72−2とMME部73との間のインタフェースは、S1インタフェースで同じである。複数のMME部73にまたがるような、Home−eNB72−2へのモビリティ、あるいはHome−eNB72−2からのモビリティはサポートされない。Home−eNB72−2は、唯一のセルをサポートする。
【0065】
図8は、本発明に係る移動端末(図7の移動端末71)の構成を示すブロック図である。図8に示す移動端末71の送信処理を説明する。まず、プロトコル処理部801からの制御データ、およびアプリケーション部802からのユーザデータが、送信データバッファ部803へ保存される。送信データバッファ部803に保存されたデータは、エンコーダー部804へ渡され、誤り訂正などのエンコード処理が施される。エンコード処理を施さずに、送信データバッファ部803から変調部805へ直接出力されるデータが存在してもよい。エンコーダー部804でエンコード処理されたデータは、変調部805にて変調処理が行われる。変調されたデータは、ベースバンド信号に変換された後、周波数変換部806へ出力され、無線送信周波数に変換される。その後、アンテナ807から基地局72に送信信号が送信される。
【0066】
また、移動端末71の受信処理は、以下のとおりに実行される。基地局72からの無線信号がアンテナ807により受信される。受信信号は、周波数変換部806にて無線受信周波数からベースバンド信号に変換され、復調部808において復調処理が行われる。復調後のデータは、デコーダー部809へ渡され、誤り訂正などのデコード処理が行われる。デコードされたデータのうち、制御データはプロトコル処理部801へ渡され、ユーザデータはアプリケーション部802へ渡される。移動端末71の一連の処理は、制御部810によって制御される。よって制御部810は、図8では省略しているが、各部801〜809と接続している。
【0067】
図9は、本発明に係る基地局(図7の基地局72)の構成を示すブロック図である。図9に示す基地局72の送信処理を説明する。EPC通信部901は、基地局72とEPC(MME部73、HeNBGW74など)との間のデータの送受信を行う。他基地局通信部902は、他の基地局との間のデータの送受信を行う。Home−eNB72−2間のX2インタフェースはサポートされない方向であるため、Home−eNB72−2では、他基地局通信部902が存在しないことも考えられる。EPC通信部901および他基地局通信部902は、それぞれプロトコル処理部903と情報の受け渡しを行う。プロトコル処理部903からの制御データ、ならびにEPC通信部901および他基地局通信部902からのユーザデータおよび制御データは、送信データバッファ部904へ保存される。
【0068】
送信データバッファ部904に保存されたデータは、エンコーダー部905へ渡され、誤り訂正などのエンコード処理が施される。エンコード処理を施さずに、送信データバッファ部904から変調部906へ直接出力されるデータが存在してもよい。エンコードされたデータは、変調部906にて変調処理が行われる。変調されたデータは、ベースバンド信号に変換された後、周波数変換部907へ出力され、無線送信周波数に変換される。その後、アンテナ908より一つもしくは複数の移動端末71に対して送信信号が送信される。
【0069】
また、基地局72の受信処理は以下のとおりに実行される。ひとつもしくは複数の移動端末71からの無線信号が、アンテナ908により受信される。受信信号は、周波数変換部907にて無線受信周波数からベースバンド信号に変換され、復調部909で復調処理が行われる。復調されたデータは、デコーダー部910へ渡され、誤り訂正などのデコード処理が行われる。デコードされたデータのうち、制御データはプロトコル処理部903あるいはEPC通信部901、他基地局通信部902へ渡され、ユーザデータはEPC通信部901および他基地局通信部902へ渡される。基地局72の一連の処理は、制御部911によって制御される。よって制御部911は、図9では省略しているが、各部901〜910と接続している。
【0070】
現在3GPPにおいて議論されているHome−eNB72−2の機能を以下に示す(非特許文献1 4.6.2章参照)。Home−eNB72−2は、eNB72−1と同じ機能を有する。加えて、HeNBGW74と接続する場合、Home−eNB72−2は、適当なサービングHeNBGW74を発見する機能を有する。Home−eNB72−2は、1つのHeNBGW74に唯一接続する。つまり、HeNBGW74との接続の場合は、Home−eNB72−2は、S1インタフェースにおけるFlex機能を使用しない。Home−eNB72−2は、1つのHeNBGW74に接続されると、同時に別のHeNBGW74や別のMME部73に接続しない。
【0071】
Home−eNB72−2のTACとPLMN IDは、HeNBGW74によってサポートされる。Home−eNB72−2をHeNBGW74に接続すると、「UE attachment」でのMME部73の選択は、Home−eNB72−2の代わりに、HeNBGW74によって行われる。Home−eNB72−2は、ネットワーク計画なしで配備される可能性がある。この場合、Home−eNB72−2は、1つの地理的な領域から別の地理的な領域へ移される。したがって、この場合のHome−eNB72−2は、位置によって、異なったHeNBGW74に接続する必要がある。
【0072】
図10は、本発明に係るMME(図7のMME部73)の構成を示すブロック図である。PDN GW通信部1001は、MME部73とPDN GWとの間のデータの送受信を行う。基地局通信部1002は、MME部73と基地局72との間のS1インタフェースによるデータの送受信を行う。PDN GWから受信したデータがユーザデータであった場合、ユーザデータは、PDN GW通信部1001から、ユーザプレイン通信部1003経由で基地局通信部1002に渡され、1つあるいは複数の基地局72へ送信される。基地局72から受信したデータがユーザデータであった場合、ユーザデータは、基地局通信部1002から、ユーザプレイン通信部1003経由でPDN GW通信部1001に渡され、PDN GWへ送信される。
【0073】
PDN GWから受信したデータが制御データであった場合、制御データは、PDN GW通信部1001から制御プレイン制御部1005へ渡される。基地局72から受信したデータが制御データであった場合、制御データは、基地局通信部1002から制御プレイン制御部1005へ渡される。
【0074】
HeNBGW通信部1004は、HeNBGW74が存在する場合に設けられ、情報種別によって、MME部73とHeNBGW74との間のインタフェース(IF)によるデータの送受信を行う。HeNBGW通信部1004から受信した制御データは、HeNBGW通信部1004から制御プレイン制御部1005へ渡される。制御プレイン制御部1005での処理の結果は、PDN GW通信部1001経由でPDN GWへ送信される。また、制御プレイン制御部1005で処理された結果は、基地局通信部1002経由でS1インタフェースにより1つあるいは複数の基地局72へ送信され、またHeNBGW通信部1004経由で1つあるいは複数のHeNBGW74へ送信される。
【0075】
制御プレイン制御部1005には、NASセキュリティ部1005−1、SAEベアラコントロール部1005−2、アイドルステート(Idle State)モビリティ管理部1005―3などが含まれ、制御プレインに対する処理全般を行う。NASセキュリティ部1005―1は、NAS(Non-Access Stratum)メッセージのセキュリティなどを行う。SAEベアラコントロール部1005―2は、SAE(System Architecture Evolution)のベアラの管理などを行う。アイドルステートモビリティ管理部1005―3は、待受け状態(LTE−IDLE状態、単にアイドルとも称される)のモビリティ管理、待受け状態時のページング信号の生成および制御、傘下の1つあるいは複数の移動端末71のトラッキングエリア(TA)の追加、削除、更新、検索、トラッキングエリアリスト(TA List)管理などを行う。
【0076】
MME部73は、UEが登録されている(registered)追跡領域(トラッキングエリア:Tracking Area:TA)に属するセルへ、ページングメッセージを送信することで、ページングプロトコルに着手する。MME部73に接続されるHome−eNB72−2のCSGの管理やCSG−IDの管理、そしてホワイトリスト管理は、アイドルステートモビリティ管理部1005―3で行ってもよい。
【0077】
CSG−IDの管理では、CSG−IDに対応する移動端末とCSGセルとの関係が管理(追加、削除、更新、検索)される。例えば、あるCSG−IDにユーザアクセス登録された一つまたは複数の移動端末と該CSG−IDに属するCSGセルとの関係であってもよい。ホワイトリスト管理では、移動端末とCSG−IDとの関係が管理(追加、削除、更新、検索)される。例えば、ホワイトリストには、ある移動端末がユーザ登録した一つまたは複数のCSG−IDが記憶されてもよい。これらのCSGに関する管理は、MME部73の中の他の部分で行われてもよい。MME部73の一連の処理は、制御部1006によって制御される。よって制御部1006は、図10では省略しているが、各部1001〜1005と接続している。
【0078】
現在3GPPにおいて議論されているMMEの機能を以下に示す(非特許文献1 4.6.2章参照)。MMEは、CSG(Closed Subscriber Groups)のメンバーの1つ、あるいは複数の移動端末のアクセスコントロールを行う。MMEは、ページングの最適化(Paging optimization)の実行をオプションとして認める。
【0079】
図11は、本発明に係るHeNBGWである図7に示すHeNBGW74の構成を示すブロック図である。EPC通信部1101は、HeNBGW74とMME部73との間のS1インタフェースによるデータの送受信を行う。基地局通信部1102は、HeNBGW74とHome−eNB72−2との間のS1インタフェースによるデータの送受信を行う。ロケーション処理部1103は、EPC通信部1101経由で渡されたMME部73からのデータのうちレジストレーション情報などを、複数のHome−eNB72−2に送信する処理を行う。ロケーション処理部1103で処理されたデータは、基地局通信部1102に渡され、ひとつまたは複数のHome−eNB72−2にS1インタフェースを介して送信される。
【0080】
ロケーション処理部1103での処理を必要とせず通過(透過)させるだけのデータは、EPC通信部1101から基地局通信部1102に渡され、ひとつまたは複数のHome−eNB72−2にS1インタフェースを介して送信される。HeNBGW74の一連の処理は、制御部1104によって制御される。よって制御部1104は、図11では省略しているが、各部1101〜1103と接続している。
【0081】
現在3GPPにおいて議論されているHeNBGW74の機能を以下に示す(非特許文献1 4.6.2章参照)。HeNBGW74は、S1アプリケーションについてリレーする。Home−eNB72−2へのMME部73の手順の一部分であるが、HeNBGW74は、移動端末71に関係しないS1アプリケーションについて終端する。HeNBGW74が配置されるとき、移動端末71に無関係な手順がHome−eNB72−2とHeNBGW74との間、そしてHeNBGW74とMME部73との間を通信される。HeNBGW74と他のノードとの間でX2インタフェースは設定されない。HeNBGW74は、ページングの最適化(Paging optimization)の実行をオプションとして認める。
【0082】
次に移動体通信システムにおける一般的なセルサーチ方法の一例を示す。図12は、LTE方式の通信システムにおいて移動端末(UE)が行うセルサーチから待ち受け動作までの概略を示すフローチャートである。移動端末は、セルサーチを開始すると、ステップST1201で、周辺の基地局から送信される第一同期信号(P−SS)、および第二同期信号(S−SS)を用いて、スロットタイミング、フレームタイミングの同期をとる。P−SSとS−SSとを合わせて、同期信号(SS)には、セル毎に割り当てられたPCI(Physical Cell Identity)に1対1に対応するシンクロナイゼーションコードが割り当てられている。PCIの数は現在504通りが検討されており、この504通りのPCIを用いて同期をとるとともに、同期がとれたセルのPCIを検出(特定)する。
【0083】
次に同期がとれたセルに対して、ステップST1202で、基地局からセル毎に送信される参照信号RS(Reference Signal)を検出し受信電力の測定を行う。参照信号RSには、PCIと1対1に対応したコードが用いられており、そのコードで相関をとることによって他セルと分離できる。ステップST1201で特定したPCIから、該セルのRS用のコードを導出することによって、RSを検出し、RS受信電力を測定することが可能となる。
【0084】
次にステップST1203で、ステップST1202までで検出されたひとつ以上のセルの中から、RSの受信品質が最も良いセル(例えば、RSの受信電力が最も高いセル、つまりベストセル)を選択する。
【0085】
次にステップST1204で、ベストセルのPBCHを受信して、報知情報であるBCCHを得る。PBCH上のBCCHには、セル構成情報が含まれるMIB(Master Information Block)がのる。したがってPBCHを受信してBCCHを得ることで、MIBが得られる。MIBの情報としては、例えば、DL(ダウンリンク)システム帯域幅(送信帯域幅設定(transmission bandwidth configuration:dl-bandwidth)とも呼ばれる)、送信アンテナ数、SFN(System Frame Number)などがある。
【0086】
次にステップST1205で、MIBのセル構成情報をもとに該セルのDL−SCHを受信して、報知情報BCCHの中のSIB(System Information Block)1を得る。SIB1には、該セルへのアクセスに関する情報や、セルセレクションに関する情報、他のSIB(SIBk;k≧2の整数)のスケジューリング情報が含まれる。また、SIB1には、TAC(Tracking Area Code)が含まれる。
【0087】
次にステップST1206で、移動端末は、ステップST1205で受信したSIB1のTACと、移動端末が既に保有しているTACとを比較する。比較した結果、同じならば、該セルで待ち受け動作に入る。比較して異なる場合は、移動端末は該セルを通してコアネットワーク(Core Network,EPC)(MMEなどが含まれる)へ、TAU(Tracking Area Update)を行うためにTAの変更を要求する。コアネットワークは、TAU要求信号とともに移動端末から送られてくる該移動端末の識別番号(UE−IDなど)をもとに、TAの更新を行う。コアネットワークは、TAの更新後、移動端末にTAU受領信号を送信する。移動端末は、該セルのTACで、移動端末が保有するTAC(あるいはTACリスト)を書き換える(更新する)。その後、移動端末は、該セルで待ち受け動作に入る。
【0088】
LTEやUMTS(Universal Mobile Telecommunication System)においては、CSG(Closed Subscriber Group)セルの導入が検討されている。前述したように、CSGセルに登録したひとつまたは複数の移動端末のみにアクセスが許される。CSGセルと登録されたひとつまたは複数の移動端末とがひとつのCSGを構成する。このように構成されたCSGには、CSG−IDと呼ばれる固有の識別番号が付される。なお、ひとつのCSGには、複数のCSGセルがあってもよい。移動端末は、どれかひとつのCSGセルに登録すれば、そのCSGセルが属するCSGの他のCSGセルにはアクセス可能となる。
【0089】
また、LTEでのHome−eNBやUMTSでのHome−NBが、CSGセルとして使われることがある。CSGセルに登録した移動端末は、ホワイトリストを有する。具体的には、ホワイトリストはSIM(Subscriber Identity Module)/USIMに記憶される。ホワイトリストには、移動端末が登録したCSGセルのCSG情報が格納される。CSG情報として具体的には、CSG−ID、TAI(Tracking Area Identity)、TACなどが考えられる。CSG−IDとTACとが対応付けられていれば、どちらか一方でよい。また、CSG−IDおよびTACと、GCI(Global Cell Identity)とが対応付けられていればGCIでもよい。
【0090】
以上から、ホワイトリストを有しない(本発明においては、ホワイトリストが空(empty)の場合も含める)移動端末は、CSGセルにアクセスすることは不可能であり、non−CSGセルのみにしかアクセスできない。一方、ホワイトリストを有する移動端末は、登録したCSG−IDのCSGセルにも、non−CSGセルにもアクセスすることが可能となる。
【0091】
3GPPでは、全PCI(Physical Cell Identity)を、CSGセル用とnon−CSGセル用とに分割(PCIスプリットと称する)することが議論されている(非特許文献5参照)。またPCIスプリット情報は、システム情報にて基地局から傘下の移動端末に対して報知されることが議論されている。PCIスプリットを用いた移動端末の基本動作を開示する。PCIスプリット情報を有していない移動端末は、全PCIを用いて(例えば504コード全てを用いて)セルサーチを行う必要がある。これに対して、PCIスプリット情報を有する移動端末は、当該PCIスプリット情報を用いてセルサーチを行うことが可能である。
【0092】
また3GPPでは、ハイブリッドセルのためのPCIは、CSGセル用のPCI範囲の中には含まれないことが決定されている(非特許文献1 10.7章参照)。
【0093】
HeNBおよびHNBに対しては、様々なサービスへの対応が求められている。例えば、オペレータは、ある決められたHeNBおよびHNBに移動端末を登録させ、登録した移動端末のみにHeNBおよびHNBのセルへのアクセスを許可することで、該移動端末が使用できる無線リソースを増大させて、高速に通信を行えるようにする。その分、オペレータは、課金料を通常よりも高く設定する、といったサービスである。
【0094】
このようなサービスを実現するため、登録した(加入した、メンバーとなった)移動端末のみがアクセスできるCSG(Closed Subscriber Group cell)セルが導入されている。CSG(Closed Subscriber Group cell)セルは、商店街やマンション、学校、会社などへ数多く設置されることが要求される。例えば、商店街では店舗毎、マンションでは部屋毎、学校では教室毎、会社ではセクション毎にCSGセルを設置し、各CSGセルに登録したユーザのみが該CSGセルを使用可能とするような使用方法が要求されている。HeNB/HNBは、マクロセルのカバレッジ外での通信を補完するためだけでなく、上述したような様々なサービスへの対応が求められている。このため、HeNB/HNBがマクロセルのカバレッジ内に設置される場合も生じる。
【0095】
LTE−Aで検討される技術の一つとして、ヘテロジーニアスネットワークス(Heterogeneous networks:HetNets)が加えられた。3GPPでは、ピコeNB(ピコセル(pico cell))、ホットゾーンセル用のノード、HeNB/HNB/CSGセル、リレーノード、リモートラジオヘッド(RRH)のような低出力電力のローカルエリアレンジ(Local-area range)のネットワークノード(ローカルエリアレンジノード(local area range node)、ローカルエリアノード(local area node)、ローカルノード(local node))を扱う。したがって、通常のeNB(マクロセル)に、このようなローカルエリアレンジノードを一つ以上組み入れたネットワークの運用が要求される。通常のeNB(マクロセル)に、このようなローカルエリアレンジノードを一つ以上組み入れたネットワークがヘテロジーニアスネットワークスと呼ばれ、干渉低減方法、キャパシティ改善方法などが検討される。
【0096】
非特許文献8に、ヘテロジーニアスネットワークスの技術が記載されている。従来のセルセレクションのアルゴリズムでは、周辺セルを測定した後、最も受信電力の強いセル(ストロンゲストセル、ベストセル)へセルセレクションを行う。しかし、HeNBの場合、CSGによる制限のために、ベストセルをセル選択できないという問題が生じる。またマクロセルとピコセルとが存在するネットワークでは、必ずしもベストセルが通信に最適なセルになるとは限らないという問題が存在する。
【0097】
さらに、UEは、バックホールリンクの通信品質が悪いセルに接続しない方がよい場合がある。このことは、中継装置であるリレーノードのバックホールリンクだけでなく、ピコセルやフェムトセル(HeNB)のような有線のバックホールリンクを有するノードにも該当する。特に、フェムトセル(HeNB)は、ホームユースが想定されており、一般的なブロードバンド回線を通してコアネットワーク側に接続されるため、バックホールリンクにおいて使用帯域の制限や信頼性の劣化が生じてしまう。リレーノードのバックホールリンクは、リレーノードと基地局装置との間の通信回線である。ピコセルおよびフェムトセル(HeNB)などの基地局装置のバックホールリンクは、基地局装置とコアネットワークとの間の通信回線である。
【0098】
非特許文献8では、これらの問題を解消するために、バックホールリンクの品質を考慮したセルセレクションや、弱受信電力のセルの測定とトリガメカニズムとが必要であることが提案されている。しかし、これらの具体的な方法については、何ら記載されていない。
【0099】
またこれらの問題は、セルセレクションに限らず、セルリセレクションやハンドオーバ(HO)などのサービングセルの選択あるいは変更の際に生じてしまう。
【0100】
非特許文献9に、リレーノードのバックホールリンクを考慮したセルセレクション方法が開示されている。リレーノードがバックホールリンクの品質を報知して、UEはそれを考慮してセルセレクションを行うと記載されている。しかし、どのようなメカニズムで該バックホールリンクの品質を考慮に入れるのか、具体的な方法については、何ら開示されていない。
【0101】
また非特許文献9に、ドナーeNBが全てのリレーノードのバックホールリンクの品質を報知すること、およびQoffsetに、リレーノードとドナーeNBとの間のリンク品質を入れ込むことが記載されている。しかし、非特許文献3に示されるように、Qoffsetは、セルリセレクションの際に隣接セルの受信電力測定値に加えるオフセット値である。したがって、ここで開示された方法では、セルセレクションの際に、バックホールリンクの通信品質を入れ込めていない。また、Qoffsetは、隣接セルの受信電力測定値に対して与えられるオフセット値であるので、サービングセルの受信電力に対して、サービングセルのバックホールリンクの通信品質を入れ込むことができていない。
【0102】
図13は、非特許文献3の技術によるUEのセルリセレクションの処理手順を示すフローチャートである。UEは、セルリセレクションのために、サービングセルの受信電力を測定する。該サービングセルの受信電力測定値をSxとする。
【0103】
ステップST1301で、UEは、Sxとセルリセレクションのための測定開始用閾値(S_intrasearch)とを比較する。S_intrasearchは、予めサービングセルから報知される。UEは、SxとS_intrasearchとを比較し、SxがS_intrasearch以下となった場合に、サービングセルの受信電力が低いと判断し、セルリセレクションのための測定を開始する(ステップST1302)。UEは、SxがS_intrasearchよりも大きい場合は、サービングセルの受信電力は十分であると判断し、セルリセレクションのための測定を開始せず、Sxを測定し、ステップST1301に戻って、再度SxとS_intrasearchとを比較する。
【0104】
ステップST1302で、UEは、隣接セルの受信電力の測定を行う。この際、サービングセルの受信電力の測定も行ってもよい。ステップST1303で、UEは、セル毎の測定値から、受信電力にある補正値を入れ込んだ値(Srxlev)を算出する。この補正値および算出方法は、非特許文献3に記載されている。
【0105】
Srxlevを算出したUEは、ステップST1304で、該Srxlevが0より大きいか否か判断する。該Srxlevが0より大きい場合、該セルをベストセル選択の候補として、後述するステップST1306の処理を行う。該Srxlevが0以下の場合は、該セルはベストセル選択の候補としない。
【0106】
UEは、ステップST1302のセルリセレクションのための測定で得られた一つまたは複数のセルに対して、前述のステップST1303およびステップST1304の処理を行う。その結果、Srxlevが0より大きくなるセルが全く得られなかった場合は、ステップST1305に移行し、圏外となる。Srxlevが0より大きくなるセルが得られた場合は、ステップST1306に移行する。
【0107】
Srxlevが0より大きくなったセルについて、ステップST1306で、UEは以下の式を用いてRs,Rnを算出する(非特許文献3参照)。
【0108】
Rs=Qmeas,s+Qhyst
Rn=Qmeas,n−Qoffset
Qmeas,sは、セルリセレクション用のサービングセルの受信電力測定値で、Qmeas,nは、セルリセレクション用の隣接セル(サービングセルでないセル)の受信電力測定値である。Qhystは、ヒステリシスを与えるオフセット値である。Qoffsetは、同一周波数キャリア内でのセルリセレクションにおいては、セル間補正用オフセット値、異周波数キャリアあるいは他システムへのリセレクションにおいては、セル間補正用と周波数間補正用のオフセット値である。
【0109】
UEは、算出したRs、Rnを用いて、最も高い受信電力となるセル(ベストセル)を選択する。そして、UEがステップST1306で選択したベストセルにセルリセレクションを行う。
【0110】
セルリセレクションは、以上のように行われるので、非特許文献9に開示された方法では、サービングセルの受信電力に対して、サービングセルのバックホールリンクの通信品質を入れ込めないという問題が生じる。
【0111】
さらに、非特許文献3に開示されたセルリセレクションでは、隣接セルの受信電力測定の前に、サービングセルの受信電力を測定し、その値に応じてセルリセレクションのための測定を行うか否かを判断するが、非特許文献9にはこのことについては全く記載されていない。非特許文献9に開示された方法では、ステップST1301に示すセルリセレクションのための隣接セルの測定を行うか否かの判断に、サービングセルのバックホールリンクの通信品質を全く考慮できていないことになる。
【0112】
例えば、サービングセルがリレーの場合、アクセスリンクの受信品質は良いが、バックホールリンクの通信品質が悪い場合がある。ステップST1301のセルリセレクションのための隣接セルの測定を行うか否かの判断に、サービングセルのバックホールリンクの通信品質を考慮に入れていない場合は、バックホールリンクの通信品質が悪いにもかかわらず、セルリセレクションを行わなくなる。これにより、通信速度の低下や、最悪の場合、通信断が生じることになる。
【0113】
このことは、リレーだけでなく、他のローカルノードにおいても生じる。例えば、HeNBにおいて、バックホールリンクはHeNBとコアネットワークとを接続するブロードバンド回線である。このブロードバンド回線が混雑して通信品質が劣化した場合などには、同じ問題が生じる。
【0114】
これらの問題を解消するために、本実施の形態では、セルリセレクションにサービングセルおよび隣接セルの少なくともいずれか一方のバックホールリンクの通信品質を考慮に入れる方法を開示する。
【0115】
本実施の形態では、セルリセレクションに、サービングセルのバックホールリンクの通信品質を考慮に入れる方法として、セルリセレクションのための測定開始用クライテリア、すなわち基準値に、バックホールリンクの通信品質を考慮に入れる。
【0116】
セルリセレクションのための測定開始用クライテリアにバックホールリンクの通信品質を考慮に入れる一例として、セルリセレクションのための測定開始用閾値にサービングセルのバックホールリンクの通信品質を入れ込む。
【0117】
図14は、セルリセレクションのための測定開始用閾値に、サービングセルのバックホールリンクの通信品質を入れ込んだセルリセレクションの処理手順を示すフローチャートである。図14に示すフローチャートの処理は、図13に示すフローチャートの処理と類似しているので、異なる処理についてのみ説明し、対応する部分については同一のステップ番号を付して、処理の説明を省略する。
【0118】
UEは、セルリセレクションのために、サービングセルの受信電力を測定する。ここで、サービングセルのバックホールリンクの通信品質を考慮したセルリセレクションのための測定開始用閾値(S_intrasearch_total)を新たに設けておく。
【0119】
ステップST1401で、UEは、該サービングセルの受信電力測定値(Sx)とサービングセルのバックホールリンクの通信品質を考慮したセルリセレクションのための測定開始用閾値(S_intrasearch_total)とを比較する。サービングセルの受信品質およびバックホールリンクの通信品質は、選択情報に相当する。
【0120】
UEは、SxとS_intrasearch_totalとを比較し、SxがS_intrasearch_total以下となった場合に、バックホールリンクの通信品質を含めたサービングセルの受信品質が悪いと判断し、セルリセレクションのための測定を開始する(ステップST1302)。UEは、SxがS_intrasearch_totalよりも大きい場合は、バックホールリンクの通信品質を含めたサービングセルの受信品質が十分であると判断し、セルリセレクションのための測定を開始せず、Sxを測定し、ステップST1401に戻って、再度SxとS_intrasearch_totalとを比較する。
【0121】
このように、セルリセレクションのための測定開始用閾値に、サービングセルのバックホールリンクの通信品質を入れ込むことで、セルリセレクションのための測定開始用クライテリアにバックホールリンクの通信品質を考慮に入れる。
【0122】
サービングセルは、バックホールリンクの通信品質を測定し、該測定結果を考慮して新たなセルリセレクションのための測定開始用閾値(S_intrasearch_total)を決定する。サービングセルは、予め該S_intrasearch_totalを報知しておく。UEは、予めサービングセルから報知された該S_intrasearch_totalを受信しておき、ステップST1401で、セルリセレクションのための測定開始用閾値として用いる。
【0123】
図14では、図13のS_intrasearchとは別に、新たにS_intrasearch_totalを設けることとした。これにより、バックホールリンクを考慮する場合と考慮しない場合とで、異なる閾値を用いることが可能となる。
【0124】
一方、新たにS_intrasearch_totalを設けずに、サービングセルが導出したバックホールリンクの通信品質を考慮したセルリセレクションのための測定開始用閾値をS_intrasearchに設定するようにしてもよい。常にバックホールリンクを考慮するセルのような場合は、常にS_intrasearchにバックホールリンクの通信品質を入れ込むことができ、報知するパラメータの数を減らすことが可能となる。
【0125】
バックホールリンクの通信品質としては、受信電力(RSRP、RSRQ:Reference Signal Received Quality)、通信速度、通信容量、回線品質などとすればよい。リレーでは、バックホールリンクの通信品質として受信電力(RSRP、RSRQ)などとして、従来の閾値(S_intrasearch)と単位を揃え、ある関数により直接S_intrasearch_totalを計算できるようにするとよい。これによって、サービングセルにおけるS_intrasearch_totalの導出を容易にすることが可能となる。また、ある関数により計算して導出するのではなく、バックホールリンクの通信品質とそれに対応する閾値S_intrasearch_totalとの対応表を用いて導出するようにしてもよい。
【0126】
バックホールリンクが有線の場合は、バックホールリンクの通信品質を、通信速度、通信容量、回線品質などとするとよい。この場合、従来の閾値(S_intrasearch)と単位が異なることになるが、その場合、バックホールリンクの通信品質を変数とするある関数を設けて、該関数によってS_intrasearch_totalを導出するようにしてもよい。あるいは、バックホールリンクの通信品質とそれに対応する閾値S_intrasearch_totalとの対応表を用いて導出するようにしてもよい。これらの関数あるいは対応表は、予め静的に決めておくとよい。
【0127】
サービングセルは、新たなセルリセレクションのための測定開始用閾値(S_intrasearch_total)をSIB3に含めて報知してもよいし、あるいはSIB1に含めて報知してもよい。SIB3の場合、セルリセレクション用パラメータが含まれるので、UEは、他のセルリセレクション用パラメータと一緒に受信することが可能となる。このため、UEの受信動作を簡略化でき、また、制御誤動作の削減が可能となる。SIB1の場合、予め報知されるタイミングが決められているので、UEは、メジャメント時に早期に受信可能となる。このため、UEのメジャメント動作において制御遅延を小さくすることが可能となる。
【0128】
上記に開示した方法では、新たなセルリセレクションのための測定開始用閾値(S_intrasearch_total)をサービングセルが導出することとした。これに限らず、UEが新たなセルリセレクションのための測定開始用閾値(S_intrasearch_total)を導出するようにしてもよい。この場合、サービングセルは、該サービングセルのバックホールリンクの通信品質をUEに報知するようにすればよい。UEは、報知された該サービングセルのバックホールリンクの通信品質を用いて、該閾値S_intrasearch_totalを導出する。
【0129】
バックホールリンクの通信品質は変動する。したがって、該バックホールリンクの通信品質を変更して報知する場合は、報知情報の修正により行えばよい。サービングセルは、該バックホールリンクの通信品質を、ある期間平均する、あるいはフィルタリングするなどして、該平均値あるいはフィルタリング後の値を報知するようにしてもよい。該ある期間を報知情報が修正されるタイミングに合わせるようにしてもよい。
【0130】
サービングセルは、該サービングセルのバックホールリンクの通信品質をSIB3に含めて報知してもよいし、あるいはSIB1に含めて報知してもよい。それぞれの場合において、S_intrasearch_totalを報知する場合と同等の効果が得られる。
【0131】
UEが、サービングセルから報知された該サービングセルのバックホールリンクの通信品質を用いて、該閾値S_intrasearch_totalを導出する方法としては、前述のサービングセルが導出する方法と同様の方法を適用できる。
【0132】
ここでは、同じ周波数キャリア内でのセルリセレクションについて記載したが、他周波数キャリア内のセルへのセルリセレクションや、W−CDMAなど他システムへのセルリセレクションにおいても同様の方法とすることができる。セルリセレクションのための測定開始用閾値(S_intrasearch)の代わりに、他周波数キャリア用あるいは他システム用のセルリセレクションのための測定開始用閾値(S_nonintrasearch)にバックホールリンクの通信品質を考慮すればよい。バックホールリンクの通信品質を考慮した新たな他周波数キャリア用あるいは他システム用のセルリセレクションのための測定開始用閾値(S_nonintrasearch_total)を、別途設けて同様の方法としてもよい。
【0133】
本実施の形態に開示した方法とすることで、各セルの受信品質に加えて、バックホールリンクの通信品質を考慮に入れて、セルリセレクションを行うことができる。これによって、たとえサービングセルの受信品質が良好であったとしても、サービングセルのバックホールリンクの通信品質によっては、セルリセレクションを開始することになるため、サービングセルのバックホールリンクの通信品質の劣化による通信速度の低下や通信断の発生を抑制することが可能となる。したがって、ヘテロジーニアスネットワークスにおける干渉問題およびキャパシティ問題を改善することが可能となるので、膨大な数のローカルエリアレンジノードの運用およびそれらの柔軟な配置が可能となる。
【0134】
実施の形態1 変形例1.
セルリセレクションのための測定開始用クライテリアに、バックホールリンクの通信品質を考慮に入れる別の例として、サービングセルの測定値にサービングセルのバックホールリンクの通信品質を入れ込む場合について説明する。
【0135】
図15は、サービングセルの測定値にサービングセルのバックホールリンクの通信品質を入れ込んだセルリセレクションの処理手順を示すフローチャートである。図15に示すフローチャートの処理は、図13に示すフローチャートの処理と類似しているので、異なる処理についてのみ説明し、対応する部分については同一のステップ番号を付して、処理の説明を省略する。
【0136】
UEは、セルリセレクションのために、サービングセルの受信電力を測定する。UEは、該サービングセルの受信電力測定値(Sx)にサービングセルのバックホールリンクの通信品質を入れ込んだ値(Sx_total)を導出する。
【0137】
サービングセルは、バックホールリンクの通信品質を測定し、UEに報知しておく。UEは、予めサービングセルから報知された該通信品質を受信しておき、上述したSx_totalの導出の際に用いる。
【0138】
ステップST1501で、UEは、Sx_totalとセルリセレクションのための測定開始用閾値(S_intrasearch)とを比較する。UEは、Sx_totalとS_intrasearchとを比較し、Sx_totalがS_intrasearch以下となった場合に、バックホールリンクの通信品質を含めたサービングセルの受信品質が悪いと判断し、セルリセレクションのための測定を開始する(ステップST1302)。UEは、Sx_totalがS_intrasearchよりも大きい場合は、バックホールリンクの通信品質を含めたサービングセルの受信品質が十分であると判断し、セルリセレクションのための測定を開始せず、ステップST1501に戻って、再度Sxを測定し、Sx_totalを導出してS_intrasearchと比較する。
【0139】
このように、UEが測定するサービングセルの受信電力測定値(Sx)にサービングセルのバックホールリンクの通信品質を入れ込んだ値(Sx_total)を導出して、Sx_totalをセルリセレクションのための測定を開始するか否かの判断に用いることで、サービングセルのバックホールリンクの通信品質を考慮に入れる。
【0140】
バックホールリンクの通信品質としては、受信電力(RSRP、RSRQ)、通信速度、通信容量、回線品質などとすればよい。リレーでは、バックホールリンクの通信品質として受信電力(RSRP、RSRQ)などとして、アクセスリンクの測定値(Sx)と単位を揃え、ある関数により直接Sx_totalを計算できるようにするとよい。これによって、UEにおけるSx_totalの導出を容易にすることが可能となる。また、ある関数により計算して導出するのではなく、対応表を用いて導出するようにしてもよい。
【0141】
バックホールリンクが有線の場合は、バックホールリンクの通信品質としては、通信速度、通信容量、回線品質などとするとよい。この場合、従来のサービングセルの受信電力測定値(Sx)と単位が異なることになるが、その場合、バックホールリンクの通信品質を変数とするある関数を設けて、該関数によってSx_totalを導出するようにしてもよい。あるいは、バックホールリンクの通信品質とそれに対応する測定値Sx_totalとの対応表を用いて導出するようにしてもよい。これらの関数あるいは対応表は、予め静的に決めておくとよい。
【0142】
サービングセルは、バックホールリンクの通信品質を報知するが、該バックホールリンクの通信品質は変動する。したがって、該バックホールリンクの通信品質を変更して報知する場合は、報知情報の修正により行えばよい。サービングセルは、該バックホールリンクの通信品質を、ある期間平均する、あるいはフィルタリングするなどして、該平均値あるいはフィルタリング後の値を報知するようにしてもよい。該ある期間を報知情報が修正されるタイミングに合わせるようにしてもよい。
【0143】
UEがバックホールリンクの通信品質を、ある期間平均する、あるいはフィルタリングしてもよい。サービングセルは、バックホールリンクの通信品質測定値を平均などせずにUEに報知して、UEが報知されたバックホールリンクの通信品質測定値を平均あるいはフィルタリングするようにしてもよい。
【0144】
サービングセルは、バックホールリンクの通信品質をSIB3に含めて報知してもよいし、あるいはSIB1に含めて報知してもよい。SIB3の場合、セルリセレクション用パラメータが含まれるので、UEは、他のセルリセレクション用パラメータと一緒に受信することが可能となる。このため、UEの受信動作を簡略化でき、また、制御誤動作の削減が可能となる。SIB1の場合、予め報知されるタイミングが決められているので、UEはメジャメント時に早期に受信可能となる。このため、UEのメジャメント動作において制御遅延を小さくすることが可能となる。
【0145】
本変形例の方法とすることで、実施の形態1で記載した効果に加えて、以下の効果を得ることが可能となる。サービングセルの受信電力測定値にサービングセルのバックホールリンクの通信品質を入れ込むことで、UEがネットワークからサービングセルを介して、UEまでのトータルの受信品質を導出することができるようになる。このため、バックホールリンクの通信品質の効果を適切に考慮することが可能となり、たとえバックホールリンクの通信品質が支配的となるような場合にも、精度良くセルリセレクションのための測定を開始させることが可能となる。
【0146】
実施の形態1 変形例2.
セルリセレクションのための測定開始用クライテリアに、バックホールリンクの通信品質を考慮に入れる別の例として、セルリセレクションのための測定開始用閾値として、サービングセルのバックホールリンクの通信品質閾値(以降、「バックホール閾値(開始)」と表す)を設ける。
【0147】
図16は、セルリセレクションのための測定開始用閾値として、バックホール閾値(開始)を設けたセルリセレクションの処理手順を示すフローチャートである。図16に示すフローチャートの処理は、図13に示すフローチャートの処理と類似しているので、異なる処理についてのみ説明し、対応する部分については同一のステップ番号を付して、処理の説明を省略する。
【0148】
UEは、セルリセレクションのために、サービングセルの受信電力を測定する。ステップST1301で、UEは、該サービングセルの受信電力測定値(Sx)とセルリセレクションのための測定開始用閾値(S_intrasearch)とを比較する。S_intrasearchは、予めサービングセルから報知される。
【0149】
UEは、SxとS_intrasearchとを比較し、SxがS_intrasearch以下となった場合に、サービングセルの受信電力が低いと判断し、セルリセレクションのための測定を開始する(ステップST1302)。UEは、SxがS_intrasearchよりも大きい場合は、ステップST1601で、サービングセルのバックホールリンクの通信品質と、サービングセルのバックホールリンクの通信品質閾値(バックホール閾値(開始))とを比較する。サービングセルのバックホールリンクの通信品質と、サービングセルのバックホールリンクの通信品質閾値とは、各々予めサービングセルから報知される。
【0150】
ステップST1601で、UEは、サービングセルのバックホールリンクの通信品質が、バックホール閾値(開始)以下となった場合は、バックホールリンクの通信品質が低いと判断して、セルリセレクションのための測定を開始する(ステップST1302)。UEは、サービングセルのバックホールリンクの通信品質が、バックホール閾値(開始)より大きい場合は、バックホールリンクの通信品質が十分であると判断して、セルリセレクションのための測定を開始せず、ステップST1301に戻り、Sxを測定し、SxとS_intrasearchとを比較する。
【0151】
ステップST1601におけるサービングセルのバックホールリンクの通信品質とバックホール閾値(開始)との比較は、ステップST1301における通常のサービングセルの受信電力測定値(Sx)と受信電力の閾値(S_intrasearch)との比較と、オア(or)条件で行われるようにするとよい。これによって、いずれかの条件が通信に不十分となった場合に、セルリセレクションのための測定を開始するようにできる。
【0152】
このように、サービングセルのバックホールリンクの通信品質閾値を設けて、セルリセレクションのための測定を開始するか否かの判断に用い、また、該判断をセルリセレクションのための測定開始条件に入れ込むことで、サービングセルのバックホールリンクの通信品質を考慮に入れる。
【0153】
バックホールリンクの通信品質は変動するが、その対処方法は実施の形態1の変形例1で開示したのと同様の方法とすればよい。
【0154】
バックホールリンクの通信品質およびバックホールリンクの通信品質閾値として、受信電力(RSRP、RSRQ)、通信速度、通信容量、回線品質などとすればよい。バックホールリンクの通信品質とバックホールリンクの通信品質閾値とを別の指標としてもよいが、同じとしてもよい。同じ場合は、単位が同じになるので直接比較が可能となるため、UEでの制御が簡易になる。
【0155】
サービングセルは、バックホールリンクの通信品質とバックホールリンクの通信品質閾値とを、一緒にあるいは別々に、SIB3に含めて報知してもよいし、あるいはSIB1に含めて報知してもよい。SIB3の場合、セルリセレクション用パラメータが含まれるので、UEは、他のセルリセレクション用パラメータと一緒に受信することが可能となる。このため、UEの受信動作を簡略化でき、また、制御誤動作の削減が可能となる。SIB1の場合、予め報知されるタイミングが決められているので、UEはメジャメント時に早期に受信可能となる。このため、UEのメジャメント動作において制御遅延を小さくすることが可能となる。
【0156】
サービングセルのバックホールリンクの通信品質閾値は、報知されるのではなく、静的な値として予め決められていてもよい。この場合、UEは、予め決められた値を用いることができる。これにより、報知情報を削減できシグナリング負荷を低減できる。
【0157】
また、バックホールリンクの通信品質閾値に、初期値として予め決められた値を用い、バックホールリンクの通信品質閾値が報知された場合に、初期値に代えて、報知された該バックホールリンクの通信品質閾値を用いるようにしてもよい。この場合、該バックホールリンクの通信品質閾値を、サービングセルが必要に応じて報知すればよい。
【0158】
本変形例の方法とすることで、実施の形態1で記載した効果に加えて、以下の効果を得ることが可能となる。サービングセルの受信品質とバックホールリンクの通信品質とを各々個別に設定できるため、柔軟性が高く緻密な設定が可能となる。したがって、バックホールリンクの通信品質を考慮する必要のあるセルが増大した場合にも、通信速度の低下や通信断の発生を抑制したセルリセレクションが可能となる。
【0159】
実施の形態2.
前述の非特許文献9には、Qoffsetに、リレーノードとドナーeNBとの間のリンク品質を入れ込むことが開示されている。しかし、非特許文献9に開示された方法では、セルリセレクションにおけるセルランキングの際に、サービングセルのバックホールリンクの通信品質を入れ込むことができていない。セルランキングにおいて、サービングセルのバックホールリンクの通信品質を考慮に入れないと、サービングセルの受信電力が良い場合、該サービングセルをベストセルとして選択する可能性が大きくなる。該サービングセルのバックホールリンクの通信品質が悪い場合は、ベストセル選択後も通信速度の低下や、さらには通信断が生じることになる。
【0160】
本実施の形態では、セルリセレクションに、サービングセルおよび隣接セルの少なくともいずれか一方のバックホールリンクの通信品質を考慮に入れる方法として、セルランキング時にサービングセルおよび隣接セルの少なくともいずれか一方のバックホールリンクの通信品質を入れこむ。
【0161】
ここでは、セルランキング時にサービングセルおよび隣接セルの少なくともいずれか一方のバックホールリンクの通信品質を入れこむ一例として、セルランキング時のセルの測定値に各セルのバックホールリンクの通信品質を入れ込む。
【0162】
図17は、セルランキング時のセルの測定値に各セルのバックホールリンクの通信品質を入れこんだセルリセレクションの処理手順を示すフローチャートである。図17に示すフローチャートの処理は、図13および図16に示すフローチャートの処理と類似しているので、異なる処理についてのみ説明し、対応する部分については同一のステップ番号を付して、処理の説明を省略する。セルリセレクションのための測定を開始するまでの動作は、実施の形態1の変形例2で開示した方法を用いているが、これに限らない。実施の形態1または実施の形態1の変形例1で開示した方法であってもよい。
【0163】
本実施の形態では、ステップST1304で、Srxlevが0より大きくなったセルについて、UEは、ステップST1701の処理を行う。ステップST1701で、UEは、サービングセルの受信電力測定値にサービングセルのバックホールリンクの通信品質を入れ込んだ受信品質を導出する。該サービングセルのバックホールリンクの通信品質を入れ込んだ受信品質をRs_totalとする。
【0164】
さらにステップST1701で、UEは、隣接セルの受信電力測定値に隣接セルのバックホールリンクの通信品質を入れ込んだ受信品質を導出する。該隣接セルのバックホールリンクの通信品質を入れ込んだ受信品質をRn_totalとする。
【0165】
UEは、導出したRs_totalとRn_totalとを用いて、バックホールリンクの通信品質を入れ込んだ受信品質が最良のセル(ベストセル)を選択する。そして、UEがステップST1701で選択したベストセルにセルリセレクションを行う。
【0166】
サービングセルは、自セルのバックホールリンクの通信品質をUEに報知し、UEは、サービングセルから報知される該情報を受信して、ステップST1701のRs_totalの導出に用いる。サービングセルが該情報を報知する方法は、実施の形態1の変形例1で開示した方法を用いればよい。
【0167】
サービングセルは、隣接セルのバックホールリンクの通信品質をUEに報知し、UEは、サービングセルから報知される該情報を受信して、ステップST1701のRn_totalの導出に用いる。
【0168】
サービングセルが該情報を報知するため、サービングセルは、隣接セルのバックホールリンクの通信品質を認識する必要がある。この方法として、セルは各々、自セルのバックホールリンクの通信品質を測定し、その結果を、該セルのアイデンティティ(PCI、GCI)とともに、あるいは関連付けて、隣接セルに通知する。該通知のためのインタフェースには、X2インタフェースあるいはS1インタフェースなどを用いればよい。
【0169】
リレーの場合は、ドナーeNB(DeNB)に上りバックホールリンク(リレーからDeNBへのリンク)を用いて通知してもよい。該DeNBが、傘下のリレーに通知してもよい。こうすることで、リレーが隣接のリレーのバックホールリンクの通信品質を認識することができる。通知方法としては、DeNBから傘下のリレーへ個別に通知してもよいし、DeNBから報知してもよい。また、リレーの場合は、DeNBが上りバックホールリンクの通信品質を測定して、その結果を該リレーのバックホールリンクの通信品質として用いてもよい。これによって、リレーからDeNBへ通知する必要がなくなる。このようにすることで、サービングセルが隣接セルのバックホールリンクの通信品質を認識することが可能となる。
【0170】
HeNBGWに接続されるHeNBの場合、HeNBGWが傘下のHeNBのバックホールリンクの通信品質を測定し、HeNBGWが該測定値を傘下のHeNBへ通知するようにしてもよい。
【0171】
サービングセルが、隣接セルのバックホールリンクの通信品質を報知する方法は、実施の形態1の変形例1で開示したサービングセルのバックホールリンクの通信品質の報知方法と同様とすればよい。
【0172】
バックホールリンクの通信品質の平均値あるいはフィルタリング後の値の導出は、サービングセルが行ってもよいし、UEが行ってもよいし、セル毎に行ってもよい。セル各々が自セルにおいて行うようにしておくのがよい。これによって、平均化後あるいはフィルタリング後の情報を、ある期間毎に通知すればよくなる。該ある期間を報知情報が修正されるタイミングに合わせるようにしてもよい。こうすることで、各セルがサービングセルに通知する情報量や、サービングセルがUEに通知する情報量を削減することが可能となる。
【0173】
サービングセルは、隣接セルのバックホールリンクの通信品質をSIB4に含めて報知するようにしてもよい。SIB4には隣接セルの情報が含まれるので、UEは、他の隣接セルの情報、例えばPCIと関連付けて受信することが可能となる。このため、UEの受信動作を簡略化でき、また、制御誤動作の削減が可能となる。
【0174】
バックホールリンクの通信品質に用いる指標とそれを用いた導出方法、セルの受信電力測定値の単位が異なる場合の導出方法は、実施の形態1の変形例1で開示したのと同様の方法を用いればよい。
【0175】
本実施の形態で開示した方法とすることで、隣接セルのバックホールリンクの通信品質とともに、サービングセルのバックホールリンクの通信品質を考慮に入れたセルリセレクションが可能となる。たとえサービングセルの受信品質が良好であったとしても、該サービングセルのバックホールリンクの通信品質が悪い場合は、他のセルへのセルリセレクションを行わせることが可能となる。このため、サービングセルのバックホールリンクの通信品質の劣化による通信速度の低下や通信断の発生を抑制することが可能となる。
【0176】
また、バックホールリンクの通信品質の悪いセルへは、セルリセレクションすることが無くなるため、リセレクション後に通信速度の低下や通信断の発生を抑制することが可能となる。
【0177】
また、リセレクション後の無線リンク失敗や、さらに通信断などによる再度のセルセレクション、セルリセレクション動作を行なわなくて済むため、UEの消費電力の削減や、システムとしての動作が不安定になることを無くすことが可能となる。
【0178】
また、サービングセルのバックホールリンクの通信品質と、隣接セル毎のバックホールリンクの通信品質とを個別に考慮に入れて、トータルのセルの通信品質を導出することで、セル毎に異なって変動するバックホールリンクの通信品質を、個別に入れ込むことが可能となる。バックホールリンクの通信品質に変動の無いセルは、変更した該通信品質を報知する必要が無くなるため、報知あるいはX2インタフェース、S1インタフェースを用いた通知回数を削減することができる。したがって、シグナリング負荷の削減、UEの消費電力の削減が可能となる。
【0179】
バックホールリンクの通信品質を、サービングセルの受信電力の単位で表せるオフセット値としてもよい。例えば、サービングセルのバックホールリンクの通信品質を考慮に入れたオフセット値をQoffset,sとし、隣接セルのバックホールリンクの通信品質を考慮に入れたオフセット値をQoffset,nとしてもよい。サービングセルは、該オフセット値をUEに報知する。ステップST1701で、UEは、以下の式を用いてRs_total、Rn_totalを算出する。
【0180】
Rs_total=Qmeas,s−Qoffset,s+Qhyst
Rn_total=Qmeas,n−Qoffset,n
UEは、算出したRs_total、Rn_totalを用いて、最も高い受信電力となるセル(ベストセル)を選択する。そして、UEが選択したベストセルにセルリセレクションを行う。
【0181】
こうすることで、従来のセルリセレクションとほぼ同じ方法で、バックホールリンクの通信品質を考慮に入れることが可能となる。
【0182】
本実施の形態では、サービングセルは、隣接セルのバックホールリンクの通信品質を認識するため、セルは各々、自セルのバックホールリンクの通信品質を測定し、その結果を、X2インタフェースあるいはS1インタフェースなどを用いて隣接セルに通知する。別の方法として、各セルは、複数の周波数キャリア上で、自セルのバックホールリンクの通信品質を報知するようにしてもよい。各セルは、該複数の周波数キャリアの中で、自セルが用いる周波数キャリアと異なる周波数キャリア上の隣接セルの報知情報を受信する。該報知情報を報知する専用の周波数キャリアを予め静的に決めておいてもよい。各セルは、定期的あるいは随時、該報知情報が送信される周波数キャリアについて、隣接セルのメジャメントを行い、受信電力がある閾値より大きいセルの報知情報を受信するようにしておく。こうすることで、各セルは、隣接セルの報知情報を認識することが可能となる。
【0183】
LTE−Aシステムでは、LTEシステムの周波数帯域幅(transmission bandwidths)よりも大きい周波数帯域幅をサポートすることが考えられている。そのため、LTE−A対応の移動端末は、同時に1つあるいは複数のコンポーネントキャリア(Component Carrier:CC)を受信することが考えられている。このコンポーネントキャリアを用いて上述の方法を行うようにしてもよい。各セルは、複数のコンポーネントキャリア上で自セルのバックホールリンクの通信品質を報知し、各セルは、該複数のコンポーネントキャリアの中で、自セルが用いるコンポーネントキャリア上の隣接セルの報知情報を受信するようにすればよい。該報知情報が送信されるコンポーネントキャリアも、UEとの通信に使用することが可能である。
【0184】
3GPPでは、現在HeNBにはX2インタフェースが設けられていない。したがって、この方法をHeNBが存在するヘテロジーニアスネットワークで用いることで、X2インタフェースが無くても、エアインタフェースにより隣接セルの情報を得ることが可能となる。例えば、HeNBがマクロセル圏内に存在しているような場合に、マクロセルから該HeNBに対して、あるいは、該HeNBからマクロセルに対して、上述の方法を用いて自セルのバックホールリンクの通信品質を通知するようにしてもよい。これにより、S1インタフェースを介して通知するよりも早期に通知することが可能となる。時間的に変動するバックホールリンクの通信品質を、S1インタフェースより小さい遅延時間で隣接セルに通知可能となる。
【0185】
実施の形態2 変形例1.
実施の形態2では、隣接セルのバックホールリンクの通信品質をサービングセルがUEに報知する。しかし、サービングセルが全ての隣接セルについて該通信品質をUEに報知すると、報知情報が膨大になってしまう。さらに、シグナリング負荷も増大し、UEの消費電力も増大してしまう。また、HeNBは、ホームユースにおいて一般利用者が該HeNBを設置することが想定されており、大量のHeNBがそれぞれ任意の場所に設置されることになる。したがって、これらのHeNBを含むネットワークで隣接セル情報を構成するのは、非常に複雑になってしまう。よって、サービングセルが隣接セルのバックホールリンクの通信品質をUEに報知するのは、システムとして複雑になる。このことは、サービングセルが、隣接セルのバックホールリンクの通信品質を考慮に入れたオフセット値を報知する場合や、非特許文献9に開示されるQoffsetを報知する場合にも生じる問題である。
【0186】
これらの問題を解消するため、本変形例では、サービングセルが隣接セルのバックホールリンクの通信品質を報知するのではなく、セルが各々自セルのバックホールリンクの通信品質を報知して、UEがセルリセレクションにおいて該通信品質をセルランキングに用いることとする。
【0187】
セルリセレクションのためのセルの測定を開始するUEは、図17に示すステップST1302において、セルの測定を開始する。この際にUEは、各セルの受信電力を測定するだけでなく、各セルが報知する自セルのバックホールリンクの通信品質を受信する。
【0188】
UEは、このステップST1302で受信した各セルのバックホールリンクの通信品質を用いて、ステップST1701で、該各セルのRs_total、Rn_totalを導出する。バックホールリンクの通信品質の指標と導出方法、セルの受信電力測定値の単位が異なる場合の導出方法は、実施の形態2と同様の方法で行うとよい。
【0189】
各セルは、自セルのバックホールリンクの通信品質を報知するが、該バックホールリンクの通信品質は変動する。したがって、該バックホールリンクの通信品質を変更して報知する場合は、報知情報の修正により行えばよい。バックホールリンクの通信品質の平均値あるいはフィルタリング後の値の導出は、UEが行ってもよいし、セル毎に行ってもよいが、セル各々が自セルにおいて行うようにしておくのがよい。こうすることで、平均化後あるいはフィルタリング後の情報をある期間毎に通知すればよくなる。したがって、各セルがサービングセルに通知する情報量や、サービングセルがUEに通知する情報量を削減することが可能となる。該ある期間を報知情報が修正されるタイミングに合わせるようにしてもよい。
【0190】
各セルは、自セルのバックホールリンクの通信品質を報知するが、この際SIB1に含めて報知してもよい。SIB1の場合、予め報知されるタイミングが決められているので、UEはメジャメント時に早期に受信可能となる。このため、UEのメジャメント動作において制御遅延を小さくすることが可能となる。この場合、前述の図12に示したセルサーチの手順において、ステップST1203のベストセル選択を、ステップST1205でSIB1を受信した後で行うようにすればよい。
【0191】
本変形例の方法とすることで、実施の形態2で記載した効果に加えて、以下の効果を得ることができる。サービングセルが報知する情報から、隣接セルの情報を削減することができる。また、各セルは、自セルのバックホールリンクの通信品質や該セルのアイデンティティ(PCI、GCI)を隣接セルに通知しなくてもよくなる。したがって、エアインタフェースやX2インタフェース、S1インタフェースにおけるシグナリング負荷を削減することが可能となる。また、このため、大量に、そして任意の場所に設置されるHeNBを含むネットワークにおいても、簡易な構成のシステムを構築することが可能となる。
【0192】
また、セルは、各々自セルのバックホールリンクの通信品質を考慮に入れたオフセット値あるいは非特許文献9に開示されるQoffsetを報知するようにしてもよい。このようにしても、本変形例と同等の効果が得られる。
【0193】
実施の形態2 変形例2.
本変形例では、セルリセレクション対象となることを許可するかどうかを示すインジケータを設ける。サービングセルが、自セルがセルリセレクション対象となることを許可するかどうかを示すインジケータと、隣接セルがセルリセレクション対象となることを許可するかどうかを示すインジケータとを報知する。隣接セルの該インジケータは、セル毎に設けて報知してもよい。
【0194】
セルリセレクションの際のUEの動作は、例えば前述の図17に示すフローチャートの一部を変更することで可能となる。UEは、予めサービングセルから報知された該インジケータを受信しておき、セルリセレクションの際に、図17のステップST1303において、該インジケータによりセルリセレクション対象となることが許可されたセルに対してのみ、Srxlevを算出するようにする。
【0195】
そしてUEは、ステップST1303において、該Srxlevを算出したセルのうち、ステップST1304で、Srxlevが0より大きくなったセルの中から、ステップST1701でセルランキングを行い、ベストセルを選択するようにすればよい。こうすることで、セルリセレクション対象となることが許可されたセルの中から、ベストセルを選択することが可能となる。
【0196】
セルランキングおよびベストセルの選択方法としては、図17のステップST1701の処理を行う必要はなく、図13〜図16のステップST1306の処理を行うようにしてもよい。この場合、UEは、ステップST1304で、Srxlevが0より大きくなったセルの中から、ステップST1306でセルランキングおよびベストセル選択を行う。こうすることで、セルリセレクション対象となることが許可されたセルの中から、ベストセルを選択することが可能となる。
【0197】
もし該インジケータが、セルリセレクション対象となることが許可されないセルの場合は、ステップST1303でSrxlevを算出する対象から外す。これにより、ベストセルの選択において、セルリセレクション対象となることが許可されないセルが選択されることはなくなる。
【0198】
本変形例では、ステップST1303において、該インジケータによりセルリセレクション対象となることが許可されたセルに対してのみ、Srxlevを算出するようにしたが、これに限らない。たとえばステップST1302に示すセルリセレクションのためのセルの受信電力の測定の際に、該インジケータによりセルリセレクションの対象となることが許可されたセルのみの測定を行うようにしてもよい。また、たとえばセルランキングおよびベストセルの選択方法として、図13〜図16のステップST1306の処理を行う場合は、ステップST1306において、該インジケータによりセルリセレクション対象となることが許可されたセルに対してのみ、Rs,Rnを算出するようにしてもよい。また図17のステップST1701の処理を行う場合は、ステップST1701において、該インジケータによりセルリセレクション対象となることが許可されたセルに対してのみ、Rs_total,Rn_totalを算出するようにしてもよい。該インジケータによりセルリセレクション対象となることが許可されたセルから、ベストセルが選択されればよい。
【0199】
サービングセルは、隣接セルの該インジケータを認識する必要がある。この方法は、実施の形態2で開示した、サービングセルが隣接セルのバックホールリンクの通信品質を認識する方法と同様にすればよい。
【0200】
また、サービングセルが該インジケータを報知する方法は、実施の形態2で開示した、サービングセルが隣接セルのバックホールリンクの通信品質を報知する方法と同様にすればよい。
【0201】
各セルは、自セルのバックホールリンクの通信品質を測定し、その測定結果に応じて該インジケータの値を設定するようにしておく。こうすることで、バックホールリンクの通信品質が悪く、バックホールリンクの通信が十分に行なえない状態においては、該インジケータにより、セルリセレクション対象となることを許可しないようにできるので、セルリセレクションの際に、UEが該セルを選択してしまうことを防ぐことができる。
【0202】
また、本変形例で開示した方法とすることで、実施の形態2で記載した効果に加えて、以下の効果を得ることができる。バックホールリンクの通信品質が極めて悪いセルが存在する場合などに、セルリセレクション対象から該セルを外すことが可能となるため、セルリセレクション制御を簡易にすることができる。また、UEの消費電力の削減を図ることができる。
【0203】
また、該インジケータは、実施の形態2で記載した各セルのバックホールリンクの通信品質よりも少ない情報量にできるので、各セルからサービングセルへ通知する情報量やサービングセルから報知する情報量を削減することが可能となる。
【0204】
該インジケータを1ビットとしてもよい。1(あるいは0)が、セルリセレクション対象となることを許可することを示し、0(あるいは1)がセルリセレクション対象となることを許可しないことを示すようにする。これにより、最小の情報量で実現可能となる。
【0205】
本変形例では、サービングセルが、自セルがセルリセレクション対象となることを許可するかどうかを示すインジケータと、隣接セルがセルリセレクション対象となることを許可するかどうかを示すインジケータとを報知するようにしたが、各セルが、自セルがセルリセレクション対象となることを許可するかどうかを示すインジケータを報知するようにしてもよい。この場合は、実施の形態2の変形例1で開示した方法と同様に、セルリセレクションのためのセルの測定を開始するUEは、図17に示すステップST1302でのセルの測定の際に、各セルが報知する該インジケータを受信するようにしておけばよい。これにより、サービングセルが隣接セルの該インジケータを報知する必要がなくなる。各セルが該インジケータを報知する方法は、実施の形態2の変形例1の方法と同様にすればよい。
【0206】
各セルが、自セルがセルリセレクション対象となることを許可するかどうかを示すインジケータを報知するようにすることで、さらに以下の効果を得ることができる。サービングセルが報知する情報から、隣接セルの情報を削減することができる。また、各セルは、自セルのバックホールリンクの通信品質や該セルのアイデンティティ(PCI、GCI)を隣接セルに通知しなくてもよくなる。したがって、エアインタフェースやX2インタフェース、S1インタフェースにおけるシグナリング負荷を削減することが可能となる。また、このため、大量に、そして任意の場所に設置されるHeNBを含むネットワークにおいても簡易な構成のシステムを構築することが可能となる。
【0207】
実施の形態2 変形例3.
本変形例では、セルランキング時にサービングセルおよび隣接セルの少なくともいずれか一方のバックホールリンクの通信品質を入れこむ別の方法を開示する。本変形例では、受信品質が、ある値以上のセルがある場合、バックホールリンクの受信品質を考慮してセルランキングを行うようにする。該ある値として、受信品質閾値(基準値)を設ける。
【0208】
図18は、受信品質が、ある値以上のセルがある場合に、バックホールリンクの受信品質を考慮してセルランキングを行うセルリセレクションの処理手順を示すフローチャートである。図18に示すフローチャートの処理は、図13および図16に示すフローチャートの処理と類似しているので、異なる処理についてのみ説明し、対応する部分については同一のステップ番号を付して、処理の説明を省略する。セルリセレクションのための測定を開始するまでの動作は、実施の形態1の変形例2で開示した方法を用いているが、これに限らない。実施の形態1または実施の形態1の変形例1で開示した方法であってもよい。
【0209】
本変形例では、ステップST1304で、Srxlevが0より大きくなったセルについて、UEは、ステップST1801の処理を行う。ステップST1801で、UEは、セルの受信品質が受信品質閾値(基準値)以上か否か、具体的には、セルの受信品質を表す受信電力測定値が受信品質閾値(基準値)以上か否かを判断する。受信電力測定値が受信品質閾値(基準値)以上の場合は、ステップST1803へ移行する。受信電力測定値が受信品質閾値(基準値)より小さい場合は、ステップST1802へ移行する。
【0210】
ステップST1304でSrxlevが0より大きくなったセルのうち、ステップST1801で受信電力測定値が受信品質閾値(基準値)以上となるセルがある場合、ステップST1803で、UEは、該セルの中で、バックホールリンクの通信品質でセルランキングを行い、バックホールリンクの通信品質が最も良好なセルをベストセルとして選択する。そして、UEは、ステップST1803で選択したベストセルにセルリセレクションを行う。受信品質閾値(基準値)を、UEがセルリセレクションを行うのに必要な受信品質に設定することで、受信品質測定値が該必要な受信品質を満足したセルの中から、該セルのバックホールリンクの通信品質に応じてベストセルを選択することができる。
【0211】
ステップST1304でSrxlevが0より大きくなったセルのうち、ステップST1801で受信電力測定値が受信品質閾値(基準値)以上となるセルが無い場合、ステップST1802で、UEは、該セルの中から、受信品質で、具体的には受信電力測定値でセルランキングを行う。このセルランキング方法は、従来のセルランキング方法と同じとすることができる。UEは、ステップST1802で、受信電力測定値が最も良好なセルをベストセルとして選択する。そして、UEは、ステップST1802で選択したベストセルにセルリセレクションを行う。
【0212】
該受信品質閾値(基準値)は一つであってもよいし、複数であってもよく、例えばセル毎にあってもよい。例えば受信品質閾値(基準値)がセル毎に設けられる場合、ステップST1801で判断対象とするセル毎に該受信品質閾値(基準値)を用いるようにすればよい。該受信品質閾値(基準値)をセル毎に設ける場合、セルのアイデンティティ(PCI,GCI)と関連付けるようにしておくとよい。こうすることで、セル毎の状況を考慮できるため、より緻密なセルリセレクションが可能となる。
【0213】
該受信品質閾値(基準値)をサービングセルが報知してもよいし、各セルが報知してもよい。サービングセルが報知する場合はSIB3に含めて報知してもよいし、あるいはSIB1に含めて報知してもよいし、SIB4に含めて報知してもよい。SIB3で報知する場合、セルリセレクション用パラメータが含まれるので、他のセルリセレクション用パラメータと一緒に受信することが可能となる。このため、UEの受信動作を簡略化でき、また、制御誤動作の削減が可能となる。SIB1の場合、予め報知されるタイミングが決められているので、UEはメジャメント時に早期に受信可能となる。このため、UEのメジャメント動作において制御遅延を小さくすることが可能となる。SIB4で報知する場合、隣接セルの情報が含まれるので、他の隣接セルの情報、例えばPCIと関連付けて受信することが可能となる。SIB4での報知は、該受信品質閾値(基準値)をセル毎に設ける場合などに適し、UEの受信動作を簡略化でき、また、制御誤動作の削減が可能となるという利点を有する。
【0214】
各セルが受信品質閾値(基準値)を報知する場合は、SIB1に含めて報知してもよい。SIB1の場合、予め報知されるタイミングが決められているので、UEはメジャメント時に早期に受信可能となる。このため、UEのメジャメント動作において制御遅延を小さくすることが可能となる。
【0215】
該受信品質閾値(基準値)は報知されるのではなく、静的な値として予め決められていてもよい。この場合、UEは、予め決められた値を用いることができる。UEは、該受信品質閾値(基準値)を報知される必要がなくなるので、シグナリング負荷の削減、UEの消費電力の削減が可能となる。
【0216】
また、該受信品質閾値(基準値)に、初期値として予め決められた値を用い、該受信品質閾値(基準値)がサービングセルあるいは各セルから報知された場合に、初期値に代えて報知された各々のセルの該受信品質閾値(基準値)を用いるようにしてもよい。この場合、サービングセルあるいは各セルは、必要に応じて該受信品質閾値(基準値)を報知すればよい。
【0217】
UEは、ステップST1803で、バックホールリンクの通信品質をもとにベストセルを選択する。したがって、UEは、サービングセルおよび各セルのバックホールリンクの通信品質を認識しておく必要がある。この方法については、実施の形態2、実施の形態2の変形例1などを用いるとよい。
【0218】
本変形例で開示した方法とすることで、実施の形態2、実施の形態2の変形例1で記載した効果に加えて、以下の効果を得ることができる。通信に十分な受信品質を得られている場合は、バックホールリンクの通信品質によって、ベストセルを選択することが可能となる。受信品質を優先して選択するセルを決定することができるため、セルを見つけやすくできる。また、UEがバックホールリンクの通信品質を用いて、トータルの受信品質を導出する必要が無い。したがって、UEのセルリセレクション制御が容易となり、UEの低消費電力化を図ることができる。
【0219】
本変形例では、図18において、ステップST1304のSrxlevによる判断とは別に、ステップST1801で、受信品質が受信品質閾値(基準値)以上か否かの判断を行っている。この二つの判断を一つにして、ステップST1801およびステップST1802の処理を無くしてもよい。この場合には、以下のようにする。
【0220】
ステップST1304では、セル毎の受信電力測定値に、あるオフセット値を考慮してSrxlevを導出していることを述べた。このオフセットの他に、新たなオフセットを設けて、受信品質閾値(基準値)を考慮した値を該新たなオフセット値とすればよい。該新たなオフセットを、Srxlevを導出する際に用いることで、受信品質閾値(基準値)も考慮に入れることが可能となる。該新たなオフセットを設けるのではなく、既存のオフセットに受信品質閾値(基準値)を考慮した値を入れ込むようにしてもよい。
【0221】
このようにして、ステップST1304のSrxlevによる判断と、ステップST1801の受信品質が受信品質閾値(基準値)以上か否かの判断とを一つのステップで行うことによって、UEでの判断を簡易にすることが可能となる。また、従来のセルのランキング方法と同様にすることが可能となる。
【0222】
実施の形態2 変形例4.
本変形例では、セルランキング時にサービングセルおよび隣接セルの少なくともいずれか一方のバックホールリンクの通信品質を入れこむ別の方法を開示する。本変形例では、バックホールリンクの通信品質が、ある値以上のセルがある場合、セルの受信品質を考慮してセルランキングを行うようにする。該ある値として、バックホール閾値(基準値)を設ける。
【0223】
図19は、バックホールリンクの通信品質が、ある値以上のセルがある場合、セルの受信品質を考慮してセルランキングを行うセルリセレクションの処理手順を示すフローチャートである。図19に示すフローチャートの処理は、図13および図16に示すフローチャートの処理と類似しているので、異なる処理についてのみ説明し、対応する部分については同一のステップ番号を付して、処理の説明を省略する。セルリセレクションのための測定を開始するまでの動作は、実施の形態1の変形例2で開示した方法を用いているが、これに限らない。実施の形態1または実施の形態1の変形例1で開示した方法であってもよい。
【0224】
本変形例では、ステップST1304で、Srxlevが0より大きくなったセルについて、UEは、ステップST1901の処理を行う。ステップST1901で、UEは、セルのバックホールリンクの通信品質がバックホール閾値(基準値)以上か否かを判断する。バックホールリンクの通信品質がバックホール閾値(基準値)以上の場合は、ステップST1903へ移行する。バックホールリンクの通信品質がバックホール閾値(基準値)より小さい場合は、ステップST1902へ移行する。
【0225】
ステップST1304でSrxlevが0より大きくなったセルのうち、ステップST1901でバックホールリンクの通信品質がバックホール閾値(基準値)以上となるセルがある場合、ステップST1903で、UEは、該セルの中で、受信品質、具体的には受信電力測定値によりセルランキングを行い、受信品質、具体的には受信電力測定値が最も良好なセルをベストセルとして選択する。このセルランキング方法は、従来のセルランキング方法と同じとすることができる。そして、UEは、ステップST1903で選択したベストセルにセルリセレクションを行う。バックホール閾値(基準値)を、UEがセルリセレクションを行うのに必要なバックホールリンクの通信品質に設定することで、バックホールリンクの通信品質が、該必要なバックホールリンクの通信品質を満足したセルの中から、該セルの受信品質、具体的には受信電力測定値に応じてベストセルを選択することができる。
【0226】
ステップST1304で、Srxlevが0より大きくなったセルのうち、ステップST1901でバックホールリンクの通信品質がバックホール閾値(基準値)以上となるセルが無い場合、ステップST1902で、UEは、該セルの中からバックホールリンクの通信品質によってセルランキングを行う。UEは、ステップST1902で、バックホールリンクの通信品質が最も良好なセルをベストセルとして選択する。そして、UEは、ステップST1902で選択したベストセルにセルリセレクションを行う。
【0227】
該バックホール閾値(基準値)の設定方法やUEへの通知方法などについては、実施の形態2の変形例3で記載した受信品質閾値(基準値)と同様に設定すればよい。サービングセルと各セルとのバックホールリンクの通信品質についても、実施の形態2の変形例3で記載した方法と同様にすればよい。
【0228】
本変形例で開示した方法とすることで、実施の形態2、実施の形態2の変形例1で記載した効果に加えて、以下の効果を得ることができる。通信に十分なバックホールリンクの通信品質が得られている場合は、セルの受信品質、具体的には受信電力測定値によって、ベストセルを選択することが可能となる。バックホールリンクの通信品質を優先して選択するセルを決定することができるため、確実なリンクを設定できるセルを見つけやすくできる。
【0229】
また、UEがバックホールリンクの通信品質を用いて、トータルの受信品質を導出する必要が無い。したがって、UEのセルリセレクション制御が容易となり、UEの低消費電力化を図ることができる。
【0230】
実施の形態3.
本実施の形態では、セルリセレクションにサービングセルおよび隣接セルの少なくともいずれか一方のバックホールリンクの通信品質を考慮に入れる別の方法を開示する。本実施の形態では、UEの通信速度に応じたバックホールリンクの通信品質を考慮に入れる。
【0231】
一例として、UEは、自UEの所望通信速度に応じて、必要なバックホールリンクの通信品質を満足するセルの中でセルランキングを行う。通信速度に応じて所望のバックホールリンクの通信品質は異なる。例えば、高速大容量の通信には、高いバックホールリンクの通信品質が要求され、低速小容量の通信には、低いバックホールリンクの通信品質でよい。そこで、UEの所望通信速度に応じて必要なバックホールリンクの通信品質を満足するセルの中でセルランキングを行うようにする。
【0232】
UEの所望通信速度に応じた所望のバックホールリンクの通信品質を与える方法として、例えば、UEの通信速度に応じて必要なバックホールリンク通信品質の閾値を設けるとよい。UEは、自UEの所望通信速度から、該通信速度に対応するバックホールリンク通信品質の閾値を導出し、該閾値より高いバックホールリンクの通信品質を有するセルの中からセルランキングによってセルを選択する。
【0233】
UEの通信速度とバックホールリンクの通信品質の閾値との対応関係は、静的な値として予め決めておいてもよいし、あるいは、サービングセルあるいは各セルから報知するようにしてもよい。また、初期値として静的な値としておき、その後、サービングセルあるいは各セルから報知するようにして、初期値に代えて報知された値を用いるようにしてもよい。
【0234】
UEの通信速度とバックホールリンクの通信品質の閾値との対応関係は、対応表を設けておいてもよいし、適切な関数を用いてUEの通信速度から導出するようにしてもよい。適切な関数を用いる場合は、該関数を予め決めておくようにしてもよい。
【0235】
UEの所望通信速度について述べたが、これに限らず、UEの送信バッファ状態や、UEがどれだけの通信速度に対応可能であるかを示すUEのケーパビリティを考慮に入れるようにしてもよい。この場合、UEの送信バッファ状態や、UEのケーパビリティに応じて、バックホールリンクの通信品質の閾値と対応付けるようにしておけばよい。
【0236】
本実施の形態で開示した方法とすることで、実施の形態2、実施の形態2の変形例1で記載した効果に加えて、UEの所望通信速度を考慮したセルリセレクションを可能にすることができる。
【0237】
実施の形態4.
前述のように、ヘテロジーニアスネットワークスにおける干渉低減方法およびキャパシティ改善方法として、非特許文献8に、弱受信電力のセルの測定とトリガメカニズムとが必要であることが提案されているが、具体的な方法については、何ら記載されていない。
【0238】
非特許文献10に、ヘテロジーニアスネットワークスにおいては、下りリンクで最適なセルと、上りリンクで最適なセルとは異なるという問題があることが記載されている。
【0239】
このような問題が生じる状況として、たとえば、マクロセルのカバレッジ内にHeNBが配置されている場合がある。マクロセルのカバレッジは、HeNBのカバレッジと比較して大きい。よってマクロセルの下り送信パワーは、HeNBの下り送信パワーより大きい。マクロセルよりHeNBの近くにUEが位置した場合であっても、下り受信品質としては、マクロセルの方がHeNBより良好となる場合がある。しかし、該UEは、マクロセルよりHeNBの近くに位置するため、上りリンクの通信品質としては、HeNBの方がマクロセルより良好となる。
【0240】
このような問題を解消するために、非特許文献10には、上りリンクと下りリンクとで異なるセルに独立に接続させることが開示されているが、この具体的方法については、何ら記載されていない。また、上りリンクと下りリンクとで異なるセルに接続させることは、UEがサービングセルを複数有することになるため、通信制御が非常に複雑になってしまうと考えられる。
【0241】
これらの問題を解消するために、本実施の形態では、セルリセレクションにおいて、上りリンクの状態も考慮に入れることで、弱受信電力のセルへのリセレクションを可能にする方法を開示する。上りリンクの状態は選択情報に相当し、上りリンクは上り通信回線に相当する。
【0242】
下りリンクで最適なセルと、上りリンクで最適なセルとは異なるため、上りリンクで最適なセルが、下りリンクにおいては弱受信電力のセルとなる場合がある。従来のセルリセレクションでは、下りリンクの受信電力によってセルランキングを行っているため、このような場合に、上りリンクで最適なセルへのセルリセレクションは行えない。そこで、本実施の形態では、セルリセレクションにおいて、上りリンクの状態も考慮に入れることとする。
【0243】
セルリセレクションにおいて、上りリンクの状態も考慮に入れるために、本実施の形態では、セルリセレクションのための測定開始用サービングセルのパスロス閾値(以下「パスロス閾値(開始)」という場合がある)と、セルランキング用のセル毎のパスロス閾値(以下「パスロス閾値(基準値)」という場合がある)とを新たに設ける。
【0244】
これは、パスロスが小さいほど、上りリンクで最適なセルと判断できるためである。パスロスが小さいと、小さいUEの送信電力で、セルが上り信号を復調するために必要な受信電力を得ることができるためである。したがって、UEは低消費電力で動作可能となり、システムとしても上り干渉を低減することができる。
【0245】
パスロスとして、上りリンクのパスロスを用いるようにしてもよいが、上りリンクのパスロスをUEが認識するのは複雑になるため、下りリンクのパスロスを用いるようにしてもよい。パスロスの相対値は、主にセルとUEの各々の位置によって生じるリンクの経路(パス)に依存するため、下りリンクのパスロスを用いても判断可能である。したがって、ここでは上りリンクの状態を考慮に入れるために、下りリンクのパスロスを用いるようにする。
【0246】
図20は、上りリンクの状態も考慮に入れたセルリセレクションの処理手順を示すフローチャートである。図20に示すフローチャートの処理は、図13に示すフローチャートの処理と類似しているので、異なる処理についてのみ説明し、対応する部分については同一のステップ番号を付して、処理の説明を省略する。
【0247】
UEは、セルリセレクションのために、サービングセルの受信電力を測定する。ステップST1301で、UEは、SxとS_intrasearchとを比較し、SxがS_intrasearch以下となった場合に、サービングセルの受信電力が低いと判断し、セルリセレクションのための測定を開始する(ステップST1302)。UEは、SxがS_intrasearchよりも大きい場合は、ステップST2001で、サービングセルのパスロスとパスロス閾値(開始)とを比較する。サービングセルのパスロスは、UEが測定する。該パスロスの測定は、セルリセレクションのために行うサービングセルの受信電力の測定の際に行ってもよい。
【0248】
ステップST2001で、UEは、サービングセルのパスロスがパスロス閾値(開始)以上となった場合は、上りリンクの状態が悪いと判断して、セルリセレクションのための測定を開始する(ステップST1302)。UEは、サービングセルのパスロスがパスロス閾値(開始)より小さい場合は、上りリンクの状態が通信に十分であると判断して、セルリセレクションのための測定を開始せず、ステップST1301に戻り、Sxを測定し、SxとS_intrasearchとを比較する。
【0249】
ステップST2001のサービングセルのパスロスとパスロス閾値(開始)との比較は、ステップST1301の通常のサービングセルの受信電力測定値(Sx)と受信電力の閾値(S_intrasearch)との比較と、オア(or)条件で行われるようにするとよい。これによって、いずれかの条件が通信に不十分となった場合に、セルリセレクションのための測定を開始するようにできる。
【0250】
このように、サービングセルのパスロス閾値を設けて、セルリセレクションのための測定を開始するか否かの判断に用い、また、該判断をセルリセレクションのための測定開始条件に入れ込むことで、サービングセルの上りリンクの状態を考慮に入れることができる。
【0251】
ステップST1302で、セルリセレクションのための測定を開始したUEは、ステップST1303で、各セルの受信電力測定値よりSrxlevを算出し、ステップST1304でSrxlevが0より大きくなったセルについて、UEはステップST2002の処理を行う。ステップST1304でSrxlevが0より大きくなるセルが無い場合、UEはステップST1305に移行して、圏外状態になる。
【0252】
ステップST2002で、UEは、セルのパスロス測定値がパスロス閾値(基準値)以下か否かを判断する。各セルのパスロスは、UEが測定する。パスロスの測定は、UEがステップST1302におけるセルリセレクションのための測定の際に行ってもよい。セルのパスロス測定値がパスロス閾値(基準値)以下の場合、ステップST2004へ移行する。セルのパスロス測定値がパスロス閾値(基準値)より大きい場合、ステップST2003へ移行する。
【0253】
ステップST1304でSrxlevが0より大きくなったセルのうち、ステップST2002でパスロス測定値がパスロス閾値(基準値)以下となるセルがある場合、ステップST2004で、UEは、該セルの中で受信品質をもとにセルランキングを行い、受信品質が最も良好なセルをベストセルとして選択する。このセルランキング方法は、従来のセルランキング方法と同じとすることができる。そして、UEは、ステップST2004で選択したベストセルにセルリセレクションを行う。パスロス閾値(基準値)を、UEがセルリセレクションを行うのに必要なセルの上りリンクの状態に設定することで、必要な上りリンクの状態を満足したセルの中から、該セルの受信品質に応じてベストセルを選択することができる。
【0254】
ステップST1304でSrxlevが0より大きくなったセルのうち、ステップST2002でパスロス測定値がパスロス閾値(基準値)以下となるセルが無い場合、ステップST2003で、UEは、該セルの中からパスロス測定値でセルランキングを行う。UEは、ステップST2003で、パスロス測定値が最小のセルをベストセルとして選択する。そして、UEは、ステップST2003で選択したベストセルにセルリセレクションを行う。
【0255】
パスロスは変動するので、UEはパスロスの測定結果を、ある期間平均する、あるいはフィルタリングするなどしてもよい。該平均値あるいはフィルタリング後の値を、ステップST2002においてパスロス閾値(基準値)と比較するようにしてもよい。
【0256】
サービングセルは、パスロス閾値(開始)を報知する。SIB3に含めて報知してもよいし、あるいはSIB1に含めて報知してもよい。SIB3の場合、セルリセレクション用パラメータが含まれるので、UEは、他のセルリセレクション用パラメータと一緒に受信することが可能となる。このため、UEの受信動作を簡略化でき、また、制御誤動作の削減が可能となる。SIB1の場合、予め報知されるタイミングが決められているので、UEは、メジャメント時に早期に受信可能となる。このため、UEのメジャメント動作において制御遅延を小さくすることが可能となる。
【0257】
パスロス閾値(開始)は報知されるのではなく、静的な値として予め決められていてもよい。この場合、UEは、予め決められた値を用いることができる。これにより、報知情報を削減でき、シグナリング負荷を低減できる。
【0258】
また、パスロス閾値(開始)に、初期値として予め決められた値を用い、パスロス閾値(開始)が報知された場合に、初期値に代えて報知された該パスロス閾値(開始)を用いるようにしてもよい。この場合、該パスロス閾値(開始)を、サービングセルが必要に応じて報知すればよい。
【0259】
パスロス閾値(基準値)は一つであってもよいし、複数であってもよく、例えばセル毎にあってもよい。例えばパスロス閾値(基準値)がセル毎に設けられる場合、ステップST2002で判断対象とするセル毎に該パスロス閾値(基準値)を用いるようにすればよい。該パスロス閾値(基準値)をセル毎に設ける場合、セルのアイデンティティ(PCI,GCI)と関連付けるようにしておくとよい。こうすることで、セル毎の上りリンクの状況を考慮できるため、より緻密なセルリセレクションが可能となる。
【0260】
該パスロス閾値(基準値)をサービングセルが報知してもよいし、各セルが報知してもよい。サービングセルが報知する場合は、SIB3に含めて報知してもよいし、あるいはSIB1に含めて報知してもよいし、SIB4に含めて報知してもよい。SIB3で報知する場合、セルリセレクション用パラメータが含まれるので、UEは、他のセルリセレクション用パラメータと一緒に受信することが可能となる。このためUEの受信動作を簡略化でき、また、制御誤動作の削減が可能となる。
【0261】
SIB1の場合、予め報知されるタイミングが決められているので、UEはメジャメント時に早期に受信可能となる。このため、UEのメジャメント動作において制御遅延を小さくすることが可能となる。SIB4の場合、隣接セルの情報が含まれるので他の隣接セルの情報、例えばPCIと関連付けて受信することが可能となる。SIB4での報知は、該パスロス閾値(基準値)をセル毎に設ける場合などに適し、UEの受信動作を簡略化でき、また、制御誤動作の削減が可能となる。
【0262】
各セルがパスロス閾値(基準値)を報知する場合は、SIB1に含めて報知してもよい。SIB1の場合、予め報知されるタイミングが決められているので、UEはメジャメント時に早期に受信可能となる。このため、UEのメジャメント動作において制御遅延を小さくすることが可能となる。
【0263】
該パスロス閾値(基準値)は報知されるのではなく、静的な値として予め決められていてもよい。この場合、UEは、予め決められた値を用いることができる。UEは、該パスロス閾値(基準値)を報知される必要がなくなるので、シグナリング負荷の削減、UEの消費電力の削減が可能となる。
【0264】
また、該パスロス閾値(基準値)に、初期値として予め決められた値を用い、該パスロス閾値(基準値)がサービングセルあるいは各セルから報知された場合に、初期値に代えて報知された各々のセルの該パスロス閾値(基準値)を用いるようにしてもよい。この場合、サービングセルあるいは各セルは、必要に応じて該パスロス閾値(基準値)を報知すればよい。
【0265】
また、本実施の形態では、パスロス閾値(開始)とパスロス閾値(基準値)とを設けることとしたが、どちらか一方でもよい。ステップST2001あるいはステップST2002の判断のどちらか一方を行うようにしてもよい。
【0266】
本実施の形態では、セルとUEとの間の上りリンクの状態を表す指標として、パスロスを用いることを開示したが、上りリンクの状態を表す指標としては、実際の距離を用いてもよい。これらに限らず、上りリンクの状態を表す指標であればよい。距離を用いる場合、セルとUEとの間の距離が小さいほど、上りリンクの状態が良好であると判断する。実際の距離の導出は、例えば以下の方法としてもよい。セルが自セルの位置をGPS(Global Positioning System)等により測定し、該位置情報を報知する。UEは、自セルの位置をGPS等により測定する。また、UEは、サービングセルあるいは各セルから報知されるセルの位置情報を受信する。UEは、測定した自UEの位置情報と、受信した各セルの位置情報とによって、各セルとUEとの間の距離を導出する。これにより、上りリンクの状態を表す指標として、各セルとUEとの間の実際の距離を用いることが可能となる。
【0267】
本実施の形態に開示した方法とすることで、各セルの受信品質に加えて、上りリンクの通信品質を考慮に入れて、セルリセレクションを行うことができる。これによって、たとえサービングセルの受信品質が良好であったとしても、サービングセルのパスロスによっては、セルリセレクションを開始することになるため、サービングセルのパスロスの増大による通信速度の低下、通信断の発生、UEの消費電力の増大を抑制することが可能となる。さらに、UEの上り送信電力を抑制することができるので、システムとして上り干渉回避が可能となる。したがって、ヘテロジーニアスネットワークスにおける干渉問題およびキャパシティ問題を改善することが可能となるので、膨大な数のローカルエリアレンジノードの運用およびそれらの柔軟な配置が可能となる。
【0268】
また、本実施の形態で開示した方法とすることで、セルランキングの際に、サービングセルのパスロスと隣接セルのパスロスを考慮に入れることが可能となる。これによって、たとえサービングセルの受信品質が良好であったとしても、該サービングセルのパスロスが大きい場合は、他のセルへセルリセレクションさせることが可能となる。このため、サービングセルのパスロスの増大による通信速度の低下、通信断の発生、UEの消費電力の増大を抑制することが可能となる。
【0269】
また、パスロスの大きいセルへは、セルリセレクションすることが無くなるため、リセレクション後の通信速度の低下、通信断の発生、UEの消費電力の増大を抑制することが可能となる。
【0270】
また、UEの上り送信電力を抑制することができるので、システムとして上り干渉回避が可能となる。
【0271】
また、本実施の形態で開示した方法とすることで、上り通信に十分なパスロスを得られている場合は、セルの受信品質によってベストセルを選択することが可能となる。パスロスを優先して選択するセルを決定することができるため、確実な上りリンクを設定できるセルを見つけやすくできる。
【0272】
実施の形態4 変形例1.
本変形例では、セルリセレクションにおいて、上りリンクの状態も考慮に入れる別の方法を開示する。受信品質が、ある値以上のセルがある場合、上りリンクの状態を考慮してセルランキングを行うようにする。該ある値として、受信品質閾値(基準値)を設ける。該受信品質閾値(基準値)は、実施の形態2の変形例3で開示した受信品質閾値(基準値)と異なっていてもよいが、セルの受信品質が、通信に十分な受信品質を得られているかどうかの指標となる閾値であるため、同じにしてもよい。同じ場合は、該受信品質閾値(基準値)を表すパラメータを一つにすることができる。
【0273】
図21は、受信品質が、ある値以上のセルがある場合に、パスロスを考慮してセルランキングを行うセルリセレクションの処理手順を示すフローチャートである。図21に示すフローチャートの処理は、図13および図20に示すフローチャートの処理と類似しているので、異なる処理についてのみ説明し、対応する部分については同一のステップ番号を付して、処理の説明を省略する。セルリセレクションのための測定を開始するまでの動作は、実施の形態4に開示した方法とする。
【0274】
ステップST1304でSrxlevが0より大きくなったセルについて、UEは、ステップST2101の処理を行う。ステップST2101で、UEは、セルの受信品質、具体的には受信電力測定値が、受信品質閾値(基準値)以上か否かを判断する。受信電力測定値が受信品質閾値(基準値)以上の場合、ステップST2103へ移行する。受信電力測定値が受信品質閾値(基準値)より小さい場合、ステップST2102へ移行する。
【0275】
ステップST1304でSrxlevが0より大きくなったセルのうち、ステップST2101で受信電力測定値が受信品質閾値(基準値)以上となるセルがある場合、ステップST2103で、UEは、該セルの中で、パスロスでセルランキングを行い、パスロスが最小のセルをベストセルとして選択する。そして、UEは、ステップST2103で選択したベストセルにセルリセレクションを行う。受信品質閾値(基準値)を、UEがセルリセレクションを行うのに必要な受信品質に設定することで、受信品質測定値が該必要な受信品質を満足したセルの中から、該セルのパスロスに応じてベストセルを選択することができる。
【0276】
ステップST1304でSrxlevが0より大きくなったセルのうち、ステップST2101で受信電力測定値が受信品質閾値(基準値)以上となるセルが無い場合、ステップST2102で、UEは、該セルの中から受信電力測定値でセルランキングを行う。このセルランキング方法は、従来のセルランキング方法と同じとすることができる。ステップST2102で、受信電力測定値が最も良好なセルをベストセルとして選択する。そして、UEは、ステップST2102で選択したベストセルにセルリセレクションを行う。受信品質閾値(基準値)に関しては、実施の形態2の変形例3で開示した方法と同様とすればよい。
【0277】
ステップST1304のSrxlevによる判断と、ステップST2101の受信品質が受信品質閾値(基準値)以上か否かの判断とを一つにしてもよい。この方法は、実施の形態2の変形例3で開示した方法と同様とすればよい。これによって、UEでの判断を簡易にすることが可能となる。
【0278】
UEは、ステップST2103でパスロスをもとにベストセルを選択する。したがって、UEは、サービングセルおよび各セルのパスロスを認識しておく必要がある。この方法については、実施の形態4で開示した方法を用いるとよい。
【0279】
本変形例で開示した方法とすることで、実施の形態4で記載した効果に加えて、以下の効果を得ることができる。通信に十分な受信品質を得られている場合は、パスロスによってベストセルを選択することが可能となる。受信品質を優先して選択するセルを決定することができるため、セルを見つけやすくできる。
【0280】
実施の形態5.
ヘテロジーニアスネットワークスにおける問題点を解消するために、実施の形態1から実施の形態4の変形例1で開示した方法を組合せてもよい。
【0281】
図22は、本発明の実施の形態1から実施の形態4の変形例1で開示した方法を組合せたセルリセレクションの処理手順を示すフローチャートの一例である。図22に示すフローチャートの処理は、図13、図16、図18、図19および図20に示すフローチャートの処理と類似しているので、異なる処理についてのみ説明し、対応する部分については同一のステップ番号を付して、処理の説明を省略する。
【0282】
UEは、セルリセレクションのための測定を開始するか否かの判断として、ステップST1601、ステップST2001に示すように、サービングセルのバックホールリンクの通信品質とサービングセルのパスロスとを考慮に入れる。ステップST1301に示すサービングセルの受信電力と共に、これらの判断をオア(or)条件とすることにより、いずれかの条件が通信に不十分となった場合に、セルリセレクションのための測定を開始するようにできる。
【0283】
UEは、セルランキングにおいて、ステップST1801に示すように、セルの受信品質を考慮に入れ、ステップST2002でセルのパスロスを考慮に入れ、ステップST1901でセルのバックホールリンクの通信品質を考慮に入れ、ステップST2201でUEの所望通信速度を考慮に入れる。
【0284】
ステップST2201で、UEの所望通信速度に対応するバックホールリンクの通信品質閾値を満足するセルが得られない場合は、ステップST2202へ移行し、セルの受信品質でセルランキングを行い、最も良好な受信品質のセル(ベストセル)の選択を行う。あるいは、セルのパスロスでセルランキングを行い、最小のパスロスのセル(ベストセル)の選択を行うようにしてもよい。
【0285】
また、ステップST2201では、実施の形態3で開示したUEの所望通信速度とバックホールリンクの通信品質とを対応させる方法としたが、バックホールの通信品質に限らず、上りリンクの状態と対応させるようにしてもよい。また両方行うようにしてもよい。上りリンクの状態を表す指標としては、たとえば実施の形態4で開示したパスロスあるいは距離を用いればよい。パスロスを用いる場合、UEの所望通信速度に対応するパスロスの閾値を設けておき、ステップST2201でUEの所望通信速度に対応するパスロス閾値を満足するか否かを判断する。UEの通信速度と上りパスロスの閾値との対応関係は、実施の形態3で開示した方法と同様にすればよい。これにより、上りリンクの状態を考慮に入れる際にも、UEの所望通信速度を考慮することが可能となる。
【0286】
ステップST2201で、UEの所望通信速度に対応するバックホールリンクの通信品質閾値を満足するセルが得られた場合は、ステップST2203に移行して、セルのバックホールリンクの通信品質でセルランキングを行い、バックホールリンクの通信品質が最も良好なセル(ベストセル)を選択する。UEは、ステップST1802、ステップST2003、ステップST1902、ステップST2202またはステップST2203で選択したベストセルにセルリセレクションを行う。
【0287】
このようにすることで、セルランキングにおいて、実施の形態1から実施の形態4の変形例1で記載した効果を併せ持つことが可能となる。
【0288】
本実施の形態で開示したように、実施の形態1から実施の形態4の変形例1で開示した方法を組合せることによって、サービングセルおよび隣接セルの少なくともいずれか一方のバックホールリンクの品質を考慮したセルリセレクションや、弱受信電力のセルへのセルリセレクションを可能とし、ヘテロジーニアスネットワークスにおける干渉問題やキャパシティ問題を改善することが可能となる。
【0289】
さらに、マクロセルとローカルノードとの配置状況に応じて必要となる方法を組合せることで、より膨大で複雑な状況のヘテロジーニアスネットワークスにおいても、干渉やキャパシティを最適にすることが可能となる。
【0290】
実施の形態6.
前述のように、ヘテロジーニアスネットワークスにおいて、干渉の低減、キャパシティの改善が要求される。その方法として、非特許文献8に、弱受信電力のセルの測定とトリガメカニズムとが必要であることが提案されているが、具体的な方法については、何ら記載されていない。また非特許文献9には、リレーノードのバックホールリンクを考慮したセルセレクション方法が開示されているが、どのようなメカニズムで該バックホールリンクの品質を考慮に入れるのか、具体的な方法については、何ら開示されていない。また非特許文献10に示される方法では、通信制御が非常に複雑になってしまう。
【0291】
これらの問題を解消するために、本実施の形態では、セルセレクションにおいて、セルのバックホールリンクの通信品質および上りリンクの状態の少なくともいずれか一方を考慮に入れるための具体的方法を開示する。本実施の形態では、セルのバックホールリンクの通信品質および上りリンクの状態の両方を考慮に入れる場合を説明する。
【0292】
図23は、非特許文献3の技術によるUEのセルセレクションの処理手順を示すフローチャートである。ステップST2301で、UEは、セルセレクションのために、周辺セルの受信電力を測定する。ステップST2302で、UEは、セル毎の測定値から、受信電力に、ある補正値を入れ込んだ値(Srxlev)を算出する。この補正値およびその算出方法は、非特許文献3に記載されている。
【0293】
Srxlevを算出したUEは、ステップST2303で、該Srxlevが0より大きいか否かを判断する。該Srxlevが0より大きい場合、該セルをベストセル選択の候補として、ステップST2305へ移行する。該Srxlevが0以下の場合は、該セルをベストセル選択の候補としない。
【0294】
UEは、セルセレクションのための測定で得られた一つまたは複数のセルに対して、ステップST2302およびステップST2303の各処理を行う。その結果、Srxlevが0より大きくなるセルが全く得られなかった場合は、ステップST2304に移行し、圏外状態となる。Srxlevが0より大きくなるセルが得られた場合は、ステップST2305の処理を行う。ステップST2305で、UEは、Srxlevが0より大きくなったセルの中から、受信電力が最も高いセル(ベストセル)を選択する。そしてUEは、選択したベストセルにキャンプオンする。
【0295】
図24は、本実施の形態で開示する、セルのバックホールリンクの通信品質および上りリンクの状態を考慮に入れたセルセレクションの処理手順を示すフローチャートである。図24に示すフローチャートの処理は、図18、図19、図20、図22および図23に示すフローチャートの処理と類似しているので、異なる処理についてのみ説明し、対応する部分については同一のステップ番号を付して、処理の説明を省略する。
【0296】
本実施の形態では、ステップST2303でSrxlevが0より大きくなるセルが得られた場合は、UEは、ベストセルを選択する際に、ステップST1801でセルの受信品質を考慮に入れ、ステップST2002でセルのパスロスを考慮に入れ、ステップST1901でセルのバックホールリンクの通信品質を考慮に入れ、ステップST2201でUEの所望通信速度を考慮に入れる。
【0297】
ステップST2201で、UEの所望通信速度に対応するバックホールリンクの通信品質閾値を満足するセルが得られない場合は、ステップST2202へ移行し、セルの受信品質が最も良好なセル(ベストセル)の選択を行う。あるいは、セルのパスロスが最小のセル(ベストセル)の選択を行うようにしてもよい。
【0298】
ステップST2201で、UEの所望通信速度に対応するバックホールリンクの通信品質閾値を満足するセルが得られた場合は、ステップST2203に移行して、セルのバックホールリンクの通信品質が最も良好なセル(ベストセル)を選択する。UEは、ステップST1802、ステップST2003、ステップST1902、ステップST2202またはステップST2203で選択したベストセルを、キャンプオンするセルとして選択する。
【0299】
図24からわかるように、本実施の形態では、実施の形態2から実施の形態5に開示したセルリセレクションの、セルリセレクションのための測定開始後のセルランキングの方法を適用することができる。
【0300】
本実施の形態で開示した方法とすることで、セルセレクションにおいても、セルのバックホールリンクの通信品質および上りリンクの状態の少なくともいずれか一方を考慮に入れることが可能となる。このため、ヘテロジーニアスネットワークスにおける干渉問題やキャパシティ問題を改善することが可能となる。
【0301】
さらに、マクロセルとローカルノードとの配置状況に応じて必要となる方法を組合せることで、より膨大で複雑な状況のヘテロジーニアスネットワークスにおいても、干渉やキャパシティを最適にすることが可能となる。
【0302】
また、ベストセルの選択において実施の形態2から実施の形態5に開示した方法を適用することで、各々の効果を併せ持つことが可能となる。
【0303】
実施の形態7.
実施の形態1から実施の形態6では、セルリセレクション、セルセレクションにおいて、セルのバックホールリンクの通信品質および上りリンクの状態の少なくともいずれか一方を考慮に入れる方法を開示したが、本実施の形態では、ハンドオーバ(HO)において、セルのバックホールリンクの通信品質および上りリンクの状態の少なくともいずれか一方を考慮に入れる方法を開示する。
【0304】
ヘテロジーニアスネットワークスにおいて、前述した問題は、セルセレクションやセルリセレクションのみならず、ハンドオーバ(HO)の場合にも生じる。前述の問題は、サービングセルの選択や変更を行う場合に生じるからである。HOにおいては、HO先となるターゲットセルを選択しなければならない。したがって、このターゲットセルの選択が問題となる。
【0305】
図25は、非特許文献1の技術による通常のHOの処理手順を示すシーケンス図である。サービングセルがソースセルとなる。ここでは、ソースセルとターゲットセルとの間の通信をX2インタフェースで行う場合について示している。
【0306】
ステップST2501で、ソースセルは、メジャメントコントロール(Measurement control)メッセージをUEに通知して、UEにメジャメント、すなわち測定を行わせる。具体的には、受信品質を表す受信電力を測定させる。ステップST2502で、UEは、メジャメント結果、すなわち測定結果を、メジャメントレポート(Measurement report)として、ソースセルに対して通知する。具体的には、受信品質測定結果、より詳細には受信電力測定値を、メジャメントレポートとして通知する。
【0307】
ステップST2503で、ソースセルは、該UEからのメジャメントレポートを用いてターゲットセルを決定する。このように、通常のHOでは、各セルが、主としてUEの受信品質測定結果に基づいて、該UEがHOが必要かどうか、およびどのセルへHOさせるかどうかを判断する。つまり、ソースセルは、ステップST2502においてUEから受信したメジャメントレポートをトリガとして、HO手順を起動する。
【0308】
ターゲットセルを決定したソースセルは、ステップST2504で、該ターゲットセルにHOリクエスト(HO request)メッセージを通知する。該HOリクエストメッセージには、HOさせるUEに関する情報である、UEコンテキスト(UE context)情報が含まれる。ターゲットセルは、ステップST2505で、自セルの状態および該UEに関する情報を考慮して、該UEへのHOを許可するかどうかを決定する。図25では、ターゲットセルがUEへのHOを許可する場合を示している。
【0309】
HO許可の場合、ターゲットセルは、ステップST2506で、HOリクエストに対する許可メッセージ(HO request Ack)をソースセルに通知する。該許可メッセージを受信したソースセルは、ステップST2507で、UEに対して、Mobility(HO)制御情報を通知する。またソースセルは、ステップST2509で、ターゲットセルに対して、HOで通信を継続させるために必要なデータと、それに関するPDCPのSNステータス(SN status)情報を通知する。
【0310】
ステップST2507でHO制御情報を受信したUEは、ステップST2508で、ソースセルからデタッチを行い、該HO制御情報に含まれるターゲットセル情報に基づいて、ステップST2510で、ターゲットセルに対して同期(Synchronization)処理を行う。同期確立後、ターゲットセルは、ステップST2511で、上りリソースのアロケーション情報と、送信タイミング情報であるTA(Timing Advance)情報とをUEに通知する。
【0311】
上りリソースのアロケーション情報とTA情報とを受信したUEは、ステップST2512で、ターゲットセルに対して、RRC接続再構成完了(RRC connection reconfiguration complete)メッセージを通知する。これにより、UEとターゲットセルとの間でのデータ通信が開始される。ステップST2512でRRC接続再構成完了メッセージを受信したターゲットセルは、ステップST2513で、上位装置であるMMEおよびサービングGW(S−GW)を介して、ソースセルとの間で、HO完遂(HO completion)のための処理を行う。ステップST2513におけるHO完遂のための処理に伴って、ソースセルは、ステップST2514で、該UEに関する情報に付随する制御に用いていたリソースを開放する。
【0312】
セルリセレクション、セルセレクションにおいては、UEがベストセルの選択を行う。しかし、HOにおいては、図25のステップST2503に示すように、ソースセルであるサービングセルが、ターゲットセルの選択を行う。図26は、サービングセルによるターゲットセルの選択手順の一例を示すフローチャートである。ステップST2601で、サービングセルは、UEから通知されたメジャメントリポート(Measurement Report)を受信する。
【0313】
ステップST2601でUEから通知されたメジャメントリポートを受信したサービングセルは、ステップST2602で、該メジャメントリポートの結果から、UEの受信品質に基づいて、受信品質が最も良いセルをターゲットセルとして選択する。
【0314】
そこで、本実施の形態では、HOにおいて、サービングセルによるターゲットセルの選択の際に、セルのバックホールリンクの通信品質および上りリンクの状態の少なくともいずれか一方を考慮に入れる。本実施の形態では、セルのバックホールリンクの通信品質および上りリンクの状態の両方を考慮に入れる場合を説明する。
【0315】
図27は、本実施の形態で開示する、セルのバックホールリンクの通信品質および上りリンクの状態を考慮に入れたHOの処理手順を示すフローチャートである。図27に示すフローチャートの処理は、図18、図19、図20、図22および図26に示すフローチャートの処理と類似しているので、異なる処理についてのみ説明し、対応する部分については同一のステップ番号を付して、処理の説明を省略する。
【0316】
ステップST2601で、UEから通知されたメジャメントリポートを受信したサービングセルは、ターゲットセルを選択する際に、ステップST1801でセルの受信品質を考慮に入れ、ステップST2002でセルのパスロスを考慮に入れ、ステップST1901でセルのバックホールリンクの通信品質を考慮に入れ、ステップST2201でUEの所望通信速度を考慮に入れる。
【0317】
ステップST2201で、UEの所望通信速度に対応するバックホールリンクの通信品質閾値を満足するセルが得られない場合は、ステップST2704へ移行し、セルの受信品質が最も良好なセルをターゲットセルとして選択する。あるいは、セルのパスロスが最小のセルをターゲットセルとして選択するようにしてもよい。
【0318】
ステップST2201で、UEの所望通信速度に対応するバックホールリンクの通信品質閾値を満足するセルが得られた場合は、ステップST2705に移行して、セルのバックホールリンクの通信品質が最も良好なセルをターゲットセルとして選択する。サービングセルは、ステップST2701、ステップST2702、ステップST2703、ステップST2704およびステップST2705で選択したセルをターゲットセルとして選択する。
【0319】
図27からわかるように、本実施の形態では、実施の形態2から実施の形態5に開示したセルリセレクションにおける、セルリセレクションのための測定開始後のセルランキングの方法を、HOにおけるサービングセルによるターゲットセルの選択に適用することができる。
【0320】
本実施の形態で開示したターゲットセルの選択において、サービングセルは、周辺セルのバックホールリンクの通信品質を認識する必要がある。この方法としては、実施の形態2で開示した方法を用いればよい。
【0321】
本実施の形態で開示したターゲットセルの選択において、サービングセルは、UEとセルとの間のパスロスを認識する必要がある。サービングセルのパスロスだけでなく、隣接セルのパスロスについても認識する必要がある。この方法として、パスロス用のメジャメントコンフィグレーションを設ける。サービングセルは、図25のステップST2501に示すメジャメントコントロールとして、パスロス用のメジャメントコンフィグレーションを用いて、UEに、隣接セルのパスロスの測定を行うことを通知する。UEは、測定したパスロスが、ある条件を満たしたセルについて、該セルのアイデンティティ(PCI,GCI)とともにパスロス値を、該メジャメントコンフィグレーションに対応するメジャメントリポートでサービングセルに通知する。
【0322】
ある条件としては、例えば、サービングセルが、メジャメントコンフィグレーションでUEにパスロスの閾値を通知しておく。該メジャメントコンフィグレーションを受信したUEは、サービングセルおよび隣接セルの少なくともいずれか一方のパスロスを測定し、該パスロスの測定結果が該閾値より大きくなったセルについて、メジャメントリポートをサービングセルに通知する。また、別の例として、UEはサービングセルおよび隣接セルの少なくともいずれか一方のパスロスを測定し、最も小さいパスロスのセルについて、メジャメントリポートをサービングセルに通知する。これらの方法を、サービングセルは、メジャメントコンフィグレーションで別々にあるいは同時に設定する。これにより、サービングセルは、サービングセルとUEとの間あるいは隣接セルとUEとの間のパスロスを認識することが可能となる。
【0323】
サービングセルとUEとの間のパスロスについては、サービングセルが、UEからの上りリンクの受信電力を測定し、該UEの送信電力と該受信電力測定値とを用いて導出してもよい。該UEの送信電力をサービングセルが設定する場合は、サービングセルは、該UEの送信電力を認識していることになる。UEが送信電力を設定する場合は、該UEが送信データとともに、該送信電力情報をサービングセルに通知するようにしておけばよい。これにより、サービングセルは、該送信電力情報を認識することが可能となる。
【0324】
実施の形態4で述べたように、上りリンクの状態としては、パスロスではなく、実際の距離を用いてもよい。この場合、位置測定用のメジャメントコンフィグレーションを設ける。該メジャメントコンフィグレーションを受信したUEは、GPS等により自UEの位置を測定する。UEは、測定した位置を、該メジャメントコンフィグレーションに対応するメジャメントリポートでサービングセルに通知する。
【0325】
サービングセルは、UEだけでなく、自セルや隣接セルの位置も認識しておく必要がある。各セルは、自セルの位置をGPS等により測定し、予め該位置情報を隣接セルに通知しておくとよい。該通知は、各セルの設置時やinitialize、すなわち初期化時に行われるようにしておくとよい。これにより、サービングセルは、隣接セルの位置を認識することが可能となるため、上記で述べたUEの位置を用いて、各セルとUEとの間の実際の距離を導出することが可能となる。
【0326】
本実施の形態で開示したターゲットセルの選択において、サービングセルは、UEの所望通信速度を認識する必要がある。UEの所望通信速度に限らず、UEの所望通信速度、UEの送信データ量やUEのケーパビリティを用いる場合は、これらの情報をサービングセルが認識する必要がある。ここでは、予めUEは、これらの情報をサービングセルに通知しておくようにする。UEは、RRC接続を要求する際、あるいは、RRC_connected状態にいる際に、これらの情報をサービングセルに通知しておけばよい。あるいは、図25のステップST2502に示すメジャメントリポートとともに、あるいは該メジャメントリポートメッセージに含めてサービングセルに通知するようにすればよい。RRCシグナリングを用いてもよいし、MACシグナリングを用いてもよい。これらの情報を個別に通知してもよいし、必要に応じて複数の情報を組合せて通知するようにしてもよい。
【0327】
本実施の形態で開示した方法とすることで、HOにおいても、セルのバックホールリンクの通信品質および上りリンクの状態の少なくともいずれか一方を考慮に入れることが可能となる。このため、ヘテロジーニアスネットワークスにおける干渉問題やキャパシティ問題を改善することが可能となる。
【0328】
また、実施の形態1から本実施の形態に開示した方法を組合せてもよく、この場合、UEの状態(RRC_Idle状態およびRRC_Connected状態)にかかわらず、サービングセルを選択あるいは変更する場合に、セルのバックホールリンクの通信品質および上りリンクの状態の少なくともいずれか一方を考慮に入れることが可能となり、ヘテロジーニアスネットワークスにおける干渉問題やキャパシティ問題を改善することが可能となる。
【0329】
また、マクロセルとローカルノードとの配置状況に応じて必要となる方法を組合せることで、より膨大で複雑な状況のヘテロジーニアスネットワークスにおいても、干渉やキャパシティを最適にすることが可能となる。
【0330】
本発明で開示した方法は、通常のeNB(マクロセル)にローカルノード一つ以上を組み入れたネットワークのみに限らず、マクロセルのみのネットワーク、あるいはローカルノードのみのネットワークにおいても、干渉低減、キャパシティ改善のために適用することが可能である。例えば、マクロセルにおいて、バックホールリンクの多くは専用回線が用いられるが、セル毎に該専用回線の通信品質は異なる。あるセル内でイベントが行われているような場合、該セルの通信負荷が増大し、それに伴い該セルのバックホール専用回線の通信品質も劣化することがある。このような場合にもバックホールリンクの通信品質を考慮してサービングセルの選択を行うことで、該セルを避けて異なるセルを選択可能とすることができる。したがって、セル間でキャパシティの分散を行うことが可能となり、通信速度の低下や、最悪の場合に生じる通信断を防ぐことが可能となる。
【0331】
以上の実施の形態では、LTEシステム(E−UTRAN)を中心に記載したが、本発明の移動体通信システムは、一つまたは複数の種類のノードが用いられる通信システムであれば適用可能である。たとえば、W−CDMAシステム(UTRAN、UMTS)またはLTEアドバンスド(LTE-Advanced)に適用可能である。
【符号の説明】
【0332】
71 移動端末、72 基地局、72−1 eNB、72−2 Home−eNB、73 MME/S−GW部、74 HeNBGW。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアネットワークに接続される複数の基地局装置と、各前記基地局装置と無線通信可能な移動端末装置とを含み、前記複数の基地局装置の通信可能な範囲である複数のセルの少なくとも一部分が重複する移動体通信システムであって、
前記移動端末装置は、
各セルにおける基地局装置からの信号の受信品質と、前記基地局装置と前記コアネットワークとの間の通信回線の通信品質とを含む選択情報に基づいて、前記複数のセルの中から、通信対象となる基地局装置のセルを選択することを特徴とする移動体通信システム。
【請求項2】
複数の基地局装置と、各前記基地局装置と無線通信可能な移動端末装置と、前記複数の基地局装置のうちの少なくとも1つの基地局装置と前記移動端末装置との間の無線通信を中継する中継装置とを含み、前記複数の基地局装置の通信可能な範囲である複数のセルの少なくとも一部分が重複する移動体通信システムであって、
前記移動端末装置は、
各セルにおける基地局装置からの信号の受信品質と、前記基地局装置と前記中継装置との間の通信回線の通信品質とを含む選択情報に基づいて、前記複数のセルの中から、通信対象となる基地局装置のセルを選択することを特徴とする移動体通信システム。
【請求項3】
前記選択情報は、各セルにおける移動端末装置から基地局装置への上り通信回線の状態を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の移動体通信システム。
【請求項4】
複数の基地局装置と、各前記基地局装置と無線通信可能な移動端末装置とを含み、前記複数の基地局装置の通信可能な範囲である複数のセルの少なくとも一部分が重複する移動体通信システムであって、
前記移動端末装置は、
各セルにおける基地局装置からの信号の受信品質と、各セルにおける移動端末装置から基地局装置への上り通信回線の状態とを含む選択情報に基づいて、前記複数のセルの中から、通信対象となる基地局装置のセルを選択することを特徴とする移動体通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2013−80986(P2013−80986A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28426(P2010−28426)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】