説明

移動区間決定方法

【課題】搬送動作における媒体の目標移動区間を適切に決定する。
【解決手段】上流側ローラ及び下流側ローラの双方により挟持される第一位置から双方のうちの一方のみにより挟持される第二位置までの範囲を決定するステップと、前記第二位置よりも上流側に位置する第三位置から前記第一位置よりも下流側に位置する第四位置までの該目標移動区間を決定するステップと、を有する移動区間決定方法であって、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を決定するステップでは、前記吐出動作の開始時に媒体が位置決めされるよりも前記搬送方向において下流側に位置する第五位置から前記第三位置よりも上流側に位置する第六位置までの前記目標移動区間、の前記搬送方向における長さを調整して、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間が前記第一位置から前記第二位置までの前記範囲を跨ぐ区間となるように、該目標移動区間を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動区間決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上流側搬送ローラ及び下流側搬送ローラの双方うちの少なくとも一方の搬送ローラにより媒体が搬送される搬送動作と、該媒体に液体が吐出される吐出動作と、が交互に繰り返し実行される液体吐出処理は既に知られている(例えば、特許文献1参照)。上流側搬送ローラ及び下流側搬送ローラは、双方とも、媒体を挟持しながら回転することにより、媒体を搬送する。
【0003】
当該液体吐出処理において、先ず、媒体は吐出動作の開始時に搬送方向における位置決め位置に位置決めされる。その後、搬送動作が繰り返し実行され、媒体は前記位置決め位置から搬送方向下流へ移動する。媒体の搬送方向下流への移動が進行すると、やがて、該媒体の状態が、上流側搬送ローラと下流側搬送ローラの双方により挟持された状態から、前記双方のうちの一方のみにより挟持される状態に移行する。このように媒体の状態が移行する際に搬送誤差が発生してしまう。
【0004】
かかる搬送誤差を考慮して媒体を適切に搬送するためには、媒体を搬送する搬送経路中、どの範囲内に該媒体が位置するときに前記搬送誤差が発生し得るのかを明確にしておく必要がある。このため、前記搬送誤差が発生し得る範囲として、前記上流側搬送ローラ及び前記下流側搬送ローラの双方により挟持される際に媒体が搬送方向において位置する位置(以下、第一位置)から該双方のうちの一方のみにより挟持される際に媒体が前記搬送方向において位置する位置(以下、第二位置)までの範囲、を液体吐出処理の事前に決定しておく場合がある。
【0005】
前記搬送誤差を考慮して媒体を適切に搬送するためには、さらに、液体吐出処理の搬送動作のうち、どの搬送動作の実行中に前記搬送誤差が発生し得るかを明確にする必要がある。このため、前記搬送誤差が発生し得る搬送動作において媒体を移動させるための目標移動区間、を液体吐出処理の事前に決定しておく場合がある。つまり、前記搬送動作のうち、媒体が前記第一位置から前記第二位置までの範囲内を移動するように搬送される搬送動作、における目標移動区間を決定することがある。当該目標移動区間は、前記第二位置よりも搬送方向上流側に位置する位置(以下、第三位置)から前記第一位置よりも搬送方向下流側に位置する位置(以下、第四位置)までの区間に相当する。そして、前記搬送誤差を考慮して媒体を適切に搬送する上で、前記第三位置から前記第四位置までの目標移動区間は、前記第一位置から前記第二位置までの前記範囲を跨ぐ区間となるように決定されることが望ましい。
【0006】
ところで、前記第三位置から前記第四位置までの目標移動区間を決定するにあたり、前述の位置決め位置を調整する場合がある。すなわち、位置決め位置を調整すれば、前記第三位置及び前記第四位置の搬送方向における位置が決定され、これに伴って、該第三位置から該第四位置までの目標移動区間も決定されることになる(例えば、図22参照)。
【特許文献1】特開平5−96796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、位置決め位置の調整に対しては、液体吐出処理を適切に実施する上での制限が設けられている。かかる制限内で位置決め位置を調整しようとすると、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間が、前記第一位置から前記第二位置までの前記範囲を跨ぐ区間となるように決定されない可能性がある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を適切に決定することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、主たる発明は、(A)上流側搬送ローラ及び下流側搬送ローラの双方により挟持される際に媒体が搬送方向において位置する第一位置から前記双方のうちの一方のみにより挟持される際に媒体が前記搬送方向において位置する第二位置までの範囲、を決定するステップと、(B)前記双方のうちの少なくとも一方により媒体が搬送される搬送動作と、媒体に液体が吐出される吐出動作と、が繰り返し実行される液体吐出処理の該搬送動作における媒体の目標移動区間のうち、前記第二位置よりも前記搬送方向において上流側に位置する第三位置から前記第一位置よりも前記搬送方向において下流側に位置する第四位置までの該目標移動区間、を決定するステップと、(C)を有する移動区間決定方法であって、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を決定するステップでは、前記吐出動作の開始時に媒体が位置決めされる、前記搬送方向における位置決め位置、よりも前記搬送方向において下流側に位置する第五位置から前記第三位置よりも前記搬送方向において上流側に位置する第六位置までの前記目標移動区間、の前記搬送方向における長さを調整して、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間が前記第一位置から前記第二位置までの前記範囲を跨ぐ区間となるように、該目標移動区間を決定することを特徴とする移動区間決定方法である。
【0009】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0011】
先ず、(A)上流側搬送ローラ及び下流側搬送ローラの双方により挟持される際に媒体が搬送方向において位置する第一位置から前記双方のうちの一方のみにより挟持される際に媒体が前記搬送方向において位置する第二位置までの範囲、を決定するステップと、(B)前記双方のうちの少なくとも一方により媒体が搬送される搬送動作と、媒体に液体が吐出される吐出動作と、が繰り返し実行される液体吐出処理の該搬送動作における媒体の目標移動区間のうち、前記第二位置よりも前記搬送方向において上流側に位置する第三位置から前記第一位置よりも前記搬送方向において下流側に位置する第四位置までの該目標移動区間、を決定するステップと、(C)を有する移動区間決定方法であって、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を決定するステップでは、前記吐出動作の開始時に媒体が位置決めされる、前記搬送方向における位置決め位置、よりも前記搬送方向において下流側に位置する第五位置から前記第三位置よりも前記搬送方向において上流側に位置する第六位置までの前記目標移動区間、の前記搬送方向における長さを調整して、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間が前記第一位置から前記第二位置までの前記範囲を跨ぐ区間となるように、該目標移動区間を決定する移動区間決定方法。
【0012】
かかる方法では、前記位置決め位置の調整に対して設けられた制限に拘束されることなく、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を、該目標移動区間が前記第一位置から前記第二位置までの前記範囲を跨ぐ区間となるように、適切に決定することが可能になる。ここで、目標移動区間とは、本印刷において搬送動作が実行されたときに紙が搬送方向に移動する理論上の移動区間のことである。また、「前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間が前記第一位置から前記第二位置までの前記範囲を跨ぐ区間となる」とは、前記第三位置が前記第一位置よりも搬送方向において上流側に位置し、かつ、前記第四位置が前記第二位置よりも搬送方向において下流側に位置することを意味する。
【0013】
また、上記の移動区間決定方法において、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を決定するステップでは、前記第三位置と前記第四位置との中間位置が前記第一位置と前記第二位置との中間位置と一致するように、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を決定することとしてもよい。
【0014】
かかる方法によれば、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を媒体が移動するように搬送される搬送動作が実行された際に、媒体が実際に移動する移動区間が前記目標移動区間から多少ずれたとしても、実際の前記移動区間が前記第一位置から前記第二位置までの前記範囲を跨ぐ区間となる。
【0015】
また、上記の移動区間決定方法において、前記液体吐出処理では、媒体の中央部に液体が吐出される通常液体吐出処理と、前記通常液体吐出処理よりも前に実施され、媒体の先端部に液体が吐出される先端液体吐出処理であって、該先端液体吐出処理の前記搬送動作における前記目標移動区間の前記長さが、前記通常液体吐出処理の前記搬送動作における前記目標移動区間の前記長さよりも短い先端液体吐出処理と、が実施され、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を決定するステップでは、前記第五位置から前記第六位置までの前記目標移動区間の前記長さとして、前記通常液体吐出処理の前記搬送動作のうち、最初に実行される前記搬送動作における前記目標移動区間の前記長さを調整して、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を決定することとしてもよい。
【0016】
例えば、液体吐出処理が媒体に画像を印刷する処理である場合、上記の方法によれば、前記第五位置から前記第六位置までの前記目標移動区間の搬送方向における長さを調整することにより前記画像の画質に及ぶ影響、の顕在化を抑制することが可能になる。
【0017】
また、上記の移動区間決定方法において、前記第一位置から前記第二位置までの前記範囲を決定するステップでは、媒体を搬送するための補正前目標搬送量を補正するための補正値が対応付けられた、前記第一位置から前記第二位置までの前記範囲を決定し、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を決定するステップでは、前記第三位置から前記第四位置まで媒体を搬送するための前記補正前目標搬送量を前記補正値により補正した補正後目標搬送量、に基づいて実行される前記搬送動作における前記目標移動区間としての、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を決定することとしてもよい。
【0018】
かかる場合には、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を、該目標移動区間が前記第一位置から前記第二位置までの前記範囲を跨ぐ区間となるように決定することが、媒体を適切に搬送する上でより有意義になる。
【0019】
また、上記の移動区間決定方法において、前記第一位置から前記第二位置までの前記範囲を決定するステップでは、前記第一位置から前記第二位置までの前記範囲を複数の種類の媒体の該種類毎に決定し、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を決定するステップでは、前記第五位置から前記第六位置までの前記目標移動区間の前記長さ、を前記種類毎に調整して、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間が前記第一位置から前記第二位置までの前記範囲を跨ぐ区間となるように、該目標移動区間を前記種類毎に決定することとしてもよい。
【0020】
かかる方法であれば、媒体の種類の相違により前記第一位置から前記第二位置までの前記範囲が異なる場合があることを考慮した上で、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を前記種類毎に適切に決定することが可能になる。
【0021】
===プリンタについて===
本実施形態に係る液体吐出処理として、液体の一例であるインクを媒体に吐出して該媒体に画像を印刷する印刷処理を例に挙げて説明する。
【0022】
<<プリンタの基本構成>>
先ず、印刷処理を行うための印刷装置の一例としてのインクジェットプリンタ(以下、プリンタ1)について、その基本構成について図1、図2A及び図2Bを用いて説明する。図1は、プリンタ1の全体構成のブロック図である。また、図2Aは、プリンタ1の全体構成の概略図である。また、図2Bは、プリンタ1の全体構成の断面図である。なお、図2Aには矢印にて紙の搬送方向とヘッド41の走査方向とが示されている。また、図2Bには矢印にて前記搬送方向が示されている。
【0023】
プリンタ1は、図1に示すように、搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40、検出器群50、及びコントローラ60を有する。外部装置であるコンピュータ110から印刷データを受信したプリンタ1は、コントローラ60によって各ユニット(搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40)を制御する。コントローラ60は、コンピュータ110から受信した印刷データに基づいて各ユニットを制御し、媒体の一例である紙に画像を印刷する。プリンタ1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラ60に出力する。コントローラ60は、検出器群50から出力された検出結果に応じた制御を実施する。
【0024】
搬送ユニット20は、紙を所定の方向(搬送方向)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット20は、給紙ローラ21と、搬送モータ(以下、PFモータ22)と、上流側搬送ローラ23と、プラテン24と、下流側搬送ローラ25と、を有する(図2A及び図2B参照)。給紙ローラ21は、紙挿入口に挿入された紙をプリンタ内に給紙するためのローラである。上流側搬送ローラ23は、プリンタ1の上下方向に並んで対をなす紙送りローラ23a及び従動ローラ23bにより構成され、紙の搬送方向においてプラテン24よりも上流側に設けられている。上流側搬送ローラ23の紙送りローラ23aはPFモータ22によって駆動される。プラテン24は、印刷中の紙を支持するものである。下流側搬送ローラ25は、プリンタ1の上下方向に並んで対をなす排紙ローラ25a及び従動ローラ25bにより構成され、搬送方向においてプラテン24よりも下流側に設けられている。下流側搬送ローラ25の排紙ローラ25aは、紙送りローラ23aと同期して回転する。なお、上流側搬送ローラ23及び下流側搬送ローラ25の詳細については後述する。
【0025】
キャリッジユニット30は、図2Aに示すように、キャリッジ31とキャリッジモータ32とを有し、後述のヘッド41を所定の方向(以下、走査方向という)に移動させるために走査方向に移動する。また、キャリッジ31は、インクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持している。
【0026】
ヘッドユニット40は、図2Aに示すように、その下面に複数のノズル(図3参照)を有するヘッド41を備える。このヘッド41は、吐出部の一例であり、キャリッジ31に設けられている。このため、ヘッド41はキャリッジ31の移動に伴って走査方向に移動する。そして、ヘッド41の移動中にノズルからインクが断続的に吐出されることにより、走査方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が紙に形成される。
【0027】
検出器群50には、キャリッジ31の走査方向における位置を検出するためのリニア式エンコーダ51、紙送りローラ23aの回転量を検出するためのロータリー式エンコーダ52、給紙中の紙の先端の位置を検出するための紙検出センサ53、及び、紙の有無を検出するための光学センサ54等が含まれる。なお、光学センサ54は、状況に応じて、紙の先端及び後端を検出することも可能である。
【0028】
コントローラ60は、プリンタ1の制御を行うためのものである。コントローラ60は、インターフェース61と、CPU62と、メモリ63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェース61は、コンピュータ110とプリンタ1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンタ全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリ63は、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。CPU62は、メモリ63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
【0029】
<<搬送ローラについて>>
前述の上流側搬送ローラ23及び下流側搬送ローラ25は、ともに、紙を挟持しながら回転することにより該紙を搬送方向に搬送させるローラである。以下、上流側搬送ローラ23及び下流側搬送ローラ25によりプリンタ1内の紙を搬送方向に移動させるときの様子について説明する。
【0030】
給紙ローラ21によりプリンタ1内に給紙された紙は、先ず、紙送りローラ23aと従動ローラ23bとの間に挟まれ、上流側搬送ローラ23のみにより搬送方向に搬送される。紙が上流側搬送ローラ23に挟持されたまま搬送方向に搬送され続けると、やがて、紙の搬送方向下流側の端部(先端部)が排紙ローラ25aと従動ローラ25bとの間に挟まれるようになる。つまり、紙が上流側搬送ローラ23及び下流側搬送ローラ25の双方により挟持されるようになる。そして、紙は当該双方によって更に搬送方向下流側に搬送される。紙が前記双方により挟持されたまま搬送され続けると、やがて、紙の搬送方向上流側の端部(後端部)が上流側搬送ローラ23から離れる。つまり、紙が前記双方のうちの下流側搬送ローラ25のみにより挟持されるようになる。以降、紙は下流側搬送ローラ25のみにより搬送方向に搬送され続け、最終的にプリンタ1外へ排出される。
【0031】
なお、上流側搬送ローラ23の従動ローラ23b及び下流側搬送ローラ25の従動ローラ25bがない構成であってもよい。
【0032】
<<ノズルについて>>
次に、図3を参照しつつ、ヘッド41の下面におけるノズル配列について説明する。図3は、該ノズル配列を示す図であり、図中、矢印にて搬送方向と走査方向とが示されている。
【0033】
ヘッド41の下面には、図3に示すように、ブラックインクノズル群Kと、シアンインクノズル群Cと、マゼンタインクノズル群Mと、イエローインクノズル群Yが形成されている。各ノズル群は、該各ノズル群に対応した色のインクを吐出するためのノズルを90個備えている。
【0034】
各ノズル群の複数のノズルは、搬送方向に沿って一定の間隔(ノズルピッチ:k・D)で整列してノズル列を形成している。なお、図3中、各ノズル列を構成するノズルには、下流側のノズルほど小さい数の番号が付されている(♯1〜♯90)。ここで、Dは、搬送方向における最小のドットピッチ(紙に形成されるドットの最高解像度での間隔)である。また、kは1以上の整数であり、本実施形態では、ノズルピッチが90dpi(1/90インチ)であり、搬送方向のドットピッチが720dpi(1/720インチ)であるため、k=8である。なお、前記光学センサ54は、搬送方向に沿った方向において、一番上流側にあるノズル♯90とほぼ同じ位置にある。
【0035】
各ノズルに対しては、インクチャンバー及びピエゾ素子(インクチャンバー及びピエゾ素子ともに不図示)が設けられており、ピエゾ素子の駆動によってインクチャンバーが伸縮・膨張することにより、ノズルからインクが滴状に吐出される。
【0036】
<<印刷処理について>>
次に、図4を用いて、紙に画像を印刷するための印刷処理について説明する。図4は、印刷処理の流れ図である。
【0037】
印刷処理は、図4に示すように、印刷データ受信動作(S001)、給紙動作(S002)、搬送動作(S003)、ドット形成動作(S004)、排紙動作(S005)からなる。各動作は、コントローラ60が各ユニットを制御することによって実行される。
【0038】
印刷データ受信動作は、コントローラ60がコンピュータ110からインターフェース61を介して印刷データを受信する動作である。コントローラ60は、当該印刷データに含まれる各種コマンドを解析し、各ユニットを制御して以下の各動作を行う。
【0039】
給紙動作は、給紙ローラ21により紙をプリンタ内に給紙する動作である。搬送動作は、上流側搬送ローラ23及び下流側搬送ローラ25のうちの少なくとも一方の搬送ローラにより紙を搬送方向に搬送する動作であり、紙がプリンタ内に給紙されてからプリンタ外に排出されるまでの間に複数回実行される。前記少なくとも一方の搬送ローラにより各搬送動作が実行されると、紙は搬送方向においてヘッド41に対して相対的に移動するようになる。ここで、各搬送動作において紙の搬送するための目標搬送量は予め決められており、コントローラ60は、各搬送動作において前記目標搬送量だけ紙を移動させるように前記各搬送動作を実行させる。
【0040】
なお、新たな紙が給紙される度に(換言すると、印刷処理が実施される度に)、初回の搬送動作として、前記新たな紙を頭出し位置に位置決めするための搬送動作が実行される。頭出し位置とは、ドット形成動作の開始時に紙が位置決めされる、搬送方向における位置決め位置に相当する。すなわち、紙が頭出し位置に位置決めされると、紙の最も先端側に位置する部分が、ヘッド41の下面に形成されたノズルと対向するようになり、ドット形成動作が開始可能になる。
【0041】
ドット形成動作は、インクの吐出動作であって、走査方向に移動するヘッド41のノズルからインクを断続的に吐出させて紙に複数のドットからなるドット列(以下、ラスタライン)を形成させる動作である。このドット形成動作と搬送動作とは、交互に繰り返し実行される。これにより、紙上のある位置にラスタラインを形成するドット形成動作が実行された後に搬送動作が実行されると、次回のドット形成動作において、紙上の前記ある位置とは異なる位置(搬送方向において異なる位置)にラスタラインを形成することが可能になる。
【0042】
そして、印刷データ受信動作により受信された印刷データに基づいてドット形成動作と搬送動作とが交互に繰り返し実行されることにより、複数のラスタラインが紙上において搬送方向に沿って並ぶようになる。そして、最終的に、紙には画像が印刷される。画像の印刷が完了した時点で、コントローラ60は、下流側搬送ローラ25に該紙をプリンタ1外に排出するための排紙動作を実行させる。
【0043】
その後、コントローラ60は、印刷を続行するか否かの判断を行い、次の紙(新たな紙)に印刷を行う場合には給紙動作に戻って印刷処理を続行する。他方、次の紙に印刷を行わない場合には印刷処理が終了する。
【0044】
<<ラスタラインの形成について>>
本実施形態の印刷処理(より正確には後述の本印刷)は、ラスタラインの形成位置に対応して、先端印刷、通常印刷、及び、後端印刷の3つの工程に分けられる(例えば、図18参照)。これらの工程は印刷処理において上記の順に行われる。
【0045】
通常印刷は、1回のパスで記録されるラスタライン間に記録されないラスタラインが挟まれるような印刷(インターレース印刷)により行われる。インターレース印刷では、あるラスタラインを形成するパスをパスxとすると、パスx+1では、あるラスタラインのすぐ上に位置する位置(あるラスタラインよりもDだけ先端側に位置する位置)にラスタラインが形成される。なお、『パス』とはドット形成動作のことであり、『パスx』とはx回目のドット形成動作を意味する。このインターレース印刷による通常印刷が実施されると、紙の搬送方向中央部に、搬送方向(すなわち、紙幅方向と交差する方向)に連続して並ぶ複数のラスタラインが形成される。つまり、通常印刷は、紙の搬送方向中央部にインクが吐出される通常液体吐出処理に相当する。換言すると、通常印刷は、印刷画像の、前記搬送方向に相当する方向における中央部を印刷するための処理である。
【0046】
但し、通常印刷のみでは、紙の先端部及び後端部にラスタラインを搬送方向に連続して並ぶように形成することができない。そこで、先端印刷及び後端印刷が、通常印刷の前後に行われる。先端印刷は、紙の先端部にラスタラインを形成するための処理(換言すると、印刷画像の先端付近を印刷するための処理)である。つまり、先端印刷は、紙の先端部にインクが吐出される先端液体吐出処理に相当する。
【0047】
後端印刷は、紙の後端部にラスタラインを形成するための処理(換言すると、印刷画像の後端付近を印刷するための処理)である。そして、先端印刷、通常印刷、及び、後端印刷が実施されることにより、先頭のラスタラインから最終のラスタラインまでの複数のラスタラインが搬送方向に連続して並ぶように形成され、紙に画像が印刷される。
【0048】
<<縁有り印刷と縁無し印刷について>>
本実施形態のプリンタ1は、紙の画像が印刷される領域(画像印刷領域)が異なる2つの印刷形態として、「縁有り印刷」と「縁無し印刷」とを実施することが可能である。
【0049】
縁有り印刷とは、紙の先端及び後端から所定の長さ分の余白が形成されるようにインクを吐出する印刷方法である。
縁無し印刷とは、紙の搬送方向端部に余白が形成されないように、搬送方向において紙の外側まで亘った範囲にインクを吐出する印刷方法のことである。縁無し印刷では、紙の外側に向けて吐出されるために該紙に着弾しないインク、が発生する。このようなインクは、プラテン24に形成されたインク集積溝(不図示)に集積される。さらに、縁無し印刷は、紙の先端が搬送方向においてインク集積溝の形成位置に差し掛かった状態で開始される。これは、縁無し印刷では、インク集積溝の搬送方向上流側端部よりも外側(上流側)に至る範囲までインクが吐出されるためである。つまり、紙の先端が前記インク集積溝の形成位置から外れた位置にある状態で縁無し印刷が開始されると、インクがプラテン24に着弾して(所謂プラテン印刷)プラテン24上を移動する紙を汚してしまう。かかるプラテン印刷を防止するため、縁無し印刷において初回のドット形成動作(すなわち、パス1)が開始されるときには、紙の先端がインク集積溝の形成位置に差し掛かるようにしなければならない。
【0050】
ところで、縁有り印刷及び縁無し印刷の各印刷において初回のドット形成動作が開始されるとき、紙は前述した頭出し位置に位置決めされることになる。そして、縁有り印刷と縁無し印刷との間で、頭出し位置が異なっている。縁有り印刷用の頭出し位置は、紙の先端及び後端から所定の長さ分の余白が設けられるように初回のドット形成動作を開始させるための位置に設定されている。縁無し印刷用の頭出し位置は、プラテン印刷を回避させるための位置(すなわち、初回のドット形成動作の開始時に紙の先端がインク集積溝の形成位置に差し掛かった状態となる位置)に設定されている。
【0051】
なお、頭出し位置は搬送方向において下流の位置である方が望ましい。これは、頭出し位置が搬送方向において下流の位置であるほど、紙の先端部にラスタラインが適切に形成されるためである。より詳しく説明すると、紙が上流側搬送ローラ23のみに挟持されている場合、プラテン24から浮き易くなり、該紙の姿勢が不安定になり易い(特に、紙の先端部の位置が不安定になり易い)。そこで、頭出し位置をなるべく搬送方向下流側の位置にすることにより、紙がプラテン24から浮いてしまうことを抑制する。これにより、紙が上流側搬送ローラ23のみに挟持されている間において、該紙の姿勢の変化を抑制しながらドット形成動作を行うことが可能になる。
【0052】
<<搬送動作の制御機構について>>
次に、搬送動作の制御機構について図5を用いて説明する。図5は、当該制御機構を含む搬送ユニット20を示す斜視図である。
【0053】
上流側搬送ローラ23及び下流側搬送ローラ25のうち、少なくとも上流側搬送ローラ23に搬送動作を実行させるために、コントローラ60は所定の駆動量にてPFモータ22を駆動する。所定の駆動量にてPFモータ22を駆動すると、紙送りローラ23aは、所定の回転量にて回転する。これにより、上流側搬送ローラ23が紙を所定の搬送量にて搬送する。ここで、紙の搬送量は、紙送りローラ23aの回転量に応じて定まる。本実施形態では、紙送りローラ23aが1回転すると、紙が1インチ搬送されるものとする(つまり、紙送りローラ23aの周長は、1インチである)。したがって、紙送りローラ23aの回転量が検出できれば、紙の搬送量も検出可能である。そこで、本実施形態では、前述のロータリー式エンコーダ52が設けられている。
【0054】
そして、例えば目標搬送量を1インチにして紙を搬送する場合、紙送りローラ23aが1回転したことをロータリー式エンコーダ52が検出するまで、コントローラ60がPFモータ22を駆動する。このように、コントローラ60は、目標搬送量に応じた回転量になることをロータリー式エンコーダ52が検出するまで、PFモータ22を駆動する。
【0055】
一方、下流側搬送ローラ25のみにより紙を搬送する搬送動作を実行させる場合においては、排紙ローラ25aの回転量が検出される。そして、コントローラ60は、排紙ローラ25aの回転量が目標搬送量に応じた回転量になるまで、該排紙ローラ25aを回転させる。
【0056】
<<搬送誤差について>>
上記のように、ロータリー式エンコーダ52は、紙送りローラ23aの回転量を検出することにより紙の搬送量を検出する。しかし、ロータリー式エンコーダ52は、厳密に言えば、紙の搬送量を検出している訳ではない。このため、紙送りローラ23aの回転量と紙の搬送量が一致しない場合、紙の搬送量が正確に検出されなくなる。そして、このような検出誤差によって目標搬送量と実際の搬送量との間に誤差(搬送誤差)が生じる。検出誤差による搬送誤差としては、DC成分の搬送誤差及びAC成分の搬送誤差の2種類がある。
【0057】
DC成分の搬送誤差とは、紙送りローラ23aが1回転したときに生じる所定量の搬送誤差のことである。このDC成分の搬送誤差は、製造誤差等によって紙送りローラ23aの周長が個々のプリンタ毎に異なることが原因と考えられる。つまり、DC成分の搬送誤差は、設計上の紙送りローラ23aの周長と実際の紙送りローラ23aの周長が異なるために生じる搬送誤差である。このDC成分の搬送誤差は、紙送りローラ23aが1回転するときの開始位置に関わらず一定になるが、実際には、紙の摩擦等の影響によって、紙の総搬送量に応じて異なる値になる。言い換えると、実際のDC成分の搬送誤差は、紙と紙送りローラ23a(又は、紙とヘッド41)との相対位置関係に応じて異なる値になる。
【0058】
AC成分の搬送誤差とは、搬送時に用いられる紙送りローラ23aの周面の場所に応じた搬送誤差のことである。AC成分の搬送誤差は、搬送時に用いられる紙送りローラ23aの周面の場所に応じて異なる量になる。つまり、AC成分の搬送誤差は、搬送開始時の紙送りローラ23aの回転位置と搬送量に応じて、異なる量になる。AC成分の搬送誤差が生じる原因としては、紙送りローラ23aの形状による影響(例えば、紙送りローラ23aが楕円形状や卵型である場合)、紙送りローラ23aの回転軸の偏心、及び、紙送りローラ23aの回転軸とロータリー式エンコーダ52のスケールの中心との不一致などが考えられる。
【0059】
さらに、上流側搬送ローラ23及び下流側搬送ローラ25の双方に挟持された状態(以下、挟持状態)にある紙が、搬送方向に搬送され続けると、やがて、該紙の後端が上流側搬送ローラ23から離れ、前記双方の一方(具体的には、下流側搬送ローラ25)のみにより挟持された状態(すなわち、上流側搬送ローラ23に挟持されない状態であり、以下、非挟持状態)に移行する。このときに、搬送誤差が生じる現象(以下、蹴飛ばし)が発生する。
【0060】
蹴飛ばしについてより詳細に説明すると、紙の後端が上流側搬送ローラ23から離れる間際には、紙の上流側搬送ローラ23により挟持された面積が減少していく。その反面、上流側搬送ローラ23が紙を挟持するために該紙に及ぼす力は略一定である。このため、前記後端が上流側搬送ローラ23から離れる瞬間、上流側搬送ローラ23による挟持圧が紙に過度に作用する。この結果、ある搬送動作の実行中に紙の状態が挟持状態から非挟持状態に移行すると、該ある搬送動作における当初の目標搬送量よりも小さい搬送量にて紙が搬送されるようになる。
【0061】
<<搬送誤差に対する対策>>
プリンタ1を購入したユーザの下で紙に画像を印刷するための印刷処理(以下、本印刷)が実施された際に上記の搬送誤差が生じると、あるラスタラインが所望の形成位置からずれた位置に形成されるようになるため、最終的に得られる画像の画質が低下する虞がある。
【0062】
そこで、本実施形態では、前記搬送誤差を補正して前記画質を向上させる対策として、プリンタ1がプリンタ製造工場から出荷される前に(すなわち、プリンタ1を購入したユーザの下で本印刷が行われる前に)、事前処理が行われる。この事前処理は、例えば、プリンタ製造工場の検査工程において行われる。
【0063】
事前処理では、各搬送動作における目標搬送量を補正するための補正値を取得する処理(以下、補正値取得処理)が行われる。なお、補正値取得処理が実施される前には、当該処理にて取得される補正値の適用範囲が予め設定される。さらに、事前処理では、本印刷の搬送動作のうち、特定の搬送動作の目標搬送量を調整する処理(以下、搬送量調整処理)が行われる。プリンタ1の組立が完了してから搬送量調整処理が実施されるまでは、本印刷の搬送動作の目標搬送量は仮決めされているが、適切な紙の搬送を実現するために搬送量調整処理にて前記特定の搬送動作の目標搬送量を調整して本決定する。
【0064】
上記の事前処理が完了した後、プリンタ1は梱包された後にユーザに向けて出荷され、該プリンタ1を購入したユーザの下で本印刷が実施される。そして、本印刷において、コントローラ60は、補正値取得処理にて取得された補正値により目標搬送量を補正し、補正した目標搬送量に基づいて本印刷中の各搬送動作を実行させる。また、本印刷中の搬送動作のうち、搬送量調整処理にて目標搬送量が調整された搬送動作を実行させるときには、調整後の搬送量を補正値により補正し、補正した目標搬送量に基づいて該搬送動作を実行させる。なお、以降の説明では、補正値により補正される前の目標搬送量を補正前目標搬送量と、補正された後の目標搬送量を補正後目標搬送量とも呼ぶ。
【0065】
===補正値の適用範囲の決定について===
上記の事前処理では、補正値取得処理に先立って、先ず、補正値が対応付けられる範囲として、該補正値の適用範囲を紙の搬送経路内において決定するステップ(以下、適用範囲決定ステップ)が行われる。
【0066】
適用範囲決定ステップでは、紙が頭出し位置に位置決めされてからプリンタ1外に排出されるまでの前記搬送経路内に所定の間隔を有する範囲を複数決定する。そして、決定された複数の範囲を示す情報が、工場内のコンピュータ110に予めインストールされた補正値取得プログラムにより、該コンピュータ110に記憶される。なお、本実施形態において、前記複数の範囲は、前記搬送経路において連続して並ぶ範囲として決定される(例えば、図14参照)。
【0067】
ところで、適用範囲決定ステップにおいて決定される複数の範囲の中には、紙が挟持状態にある際に搬送方向において位置する第一位置から紙が非挟持状態にある際に搬送方向において位置する第二位置までの範囲、が含まれている。この第一位置から第二位置までの範囲は、蹴飛ばし発生範囲と呼ばれ、該範囲内に紙が位置する間に蹴飛ばしが確実に発生する範囲として決定される範囲である。蹴飛ばし発生範囲は、プリンタ1のメカ特性や使用される紙の種類を考慮して理論的もしくは実験的に決定される。
【0068】
具体的に説明すると、先ず、蹴飛ばしが発生する際に紙が搬送方向において位置する位置(以下、蹴飛ばし発生位置)を理論的もしくは実験的に予測する。その後、蹴飛ばし発生位置が搬送方向において変動し得る範囲(変動範囲)を加味して、前記蹴飛ばし発生範囲を決定する。より正確には、理論的もしくは実験的に予測された蹴飛ばし発生位置から上流側及び下流側にそれぞれ前記変動範囲分だけ離れた2つの位置を求め、当該2つの位置の間の範囲を蹴飛ばし発生範囲として決定する。つまり、蹴飛ばし発生範囲は予測された前記蹴飛ばし発生位置を中央位置とする範囲である。以上のように決定された蹴飛ばし発生範囲は、後述する蹴飛ばし用の補正値の適用範囲となる。
【0069】
===補正値取得処理について===
次に、補正値取得処理について図6を用いて説明する。図6は、補正値取得処理のフローチャートである。
【0070】
補正値取得処理は、組立完了後のプリンタ1を用いてテストパターンをテストシートTSに印刷し、テストパターンから得られる情報に基づいて補正値を取得する処理である。補正値取得処理は、図6に示すように、テストパターンを印刷するステップ(S101)、テストパターン及び基準パターンを読み取るステップ(S102)、補正値を算出するステップ(S103)、及び、補正値をコントローラ60のメモリ63に記憶するステップ(S104)、からなる。なお、補正値取得処理は、組立完了後のプリンタ1を工場内のコンピュータ110に接続した状態で実施される。該コンピュータ110には、スキャナ150も接続されており、前述した補正値取得プログラムのほか、プリンタドライバやスキャナドライバが予めインストールされている。
【0071】
補正値取得処理では、先ず、プリンタドライバにより、テストパターンを印刷するための印刷データがプリンタ1に送信される。そして、プリンタ1のコントローラ60が、前記印刷データに基づいて搬送動作とドット形成動作とを交互に繰り返し実行させて、テストシートTSにテストパターンを印刷するモード(以下、テストパターン印刷)を実施する。なお、テストパターン印刷の際に用いられるテストシートTSは、本印刷の際に用いられる紙と同一の種類のものである。テストパターン印刷後、検査者は、テストシートTSをスキャナ150にセットし、スキャナドライバがスキャナ150にテストパターンを読み取らせ、該テストパターンの画像データを取得する。このとき、スキャナ150にはテストシートTSとともに基準シートSSがセットされており、基準シートSSに描画された基準パターンも一緒に読み取られる。その後、補正値取得プログラムにより前記画像データが解析される。そして、当該解析の結果に基づいて補正値が算出される。補正値が算出されると、補正値取得プログラムにより、補正値のデータがプリンタ1に送信されて前記種類毎にメモリ63に記憶される。
以下、補正値取得処理の各ステップについて説明する。
【0072】
<<テストパターン印刷>>
テストパターンを印刷するステップについて図7を用いて説明する。図7は、テストパターン印刷の様子を示す図である。図中の右側には、テストシートTSに印刷されるテストパターンが示されている。図中の左側に示された長方形は、テストパターン印刷時の各パスにおけるヘッド41の位置を示している。また、図示の都合上、ヘッド41がテストシートTSに対して移動しているように描かれているが、同図はヘッド41に対するテストシートTSの相対位置を示すものであって、実際にはテストシートTSが搬送方向に間欠的に搬送されている。
【0073】
テストパターンは、図7に示すように、識別コードと、複数の罫線状のパターン(以下、単にパターンと言う)とから構成される。識別コードは、個々のプリンタ1をそれぞれ識別するための個体識別用の記号であり、この識別コードがテストパターンの読取時に読み取られることにより、補正値取得処理の対象となるプリンタがコンピュータ110に識別される。複数のパターンの各々は、テストシートTSの紙幅方向、すなわち、ヘッド41の走査方向に沿って形成される罫線である。そして、テストパターン印刷中、搬送動作とドット形成動作が繰り返し実行される毎に(すなわち、パス毎に)、各パターンがテストシートTSの先端側から順次形成される。これにより、テストシートTS上に複数のパターンが紙幅方向と交差する方向に並ぶようになる。
【0074】
以上のようなテストパターンをテストシートTSに形成する手順を、図7を参照しつつ説明する。なお、テストシートTSの先端からi番目のパターン(すなわち、テストパターン印刷時のパスiにて印刷されるパターン)をP(i)とする。
【0075】
先ず、コントローラ60は、テストシートTSを頭出し位置まで移動させる。その後、パス1により、ノズル♯90のみからインクが吐出されてパターンP(1)が形成される。パターンP(1)の形成後、コントローラ60は、紙送りローラ23aを1/8回転させてテストシートTSを1/8インチだけ搬送する搬送動作を実行させる。その後、パス2により、ノズル♯90のみからインクが吐出されてパターンP(2)が形成される。以下、同様の動作が繰り返し行われ、1/8インチ間隔でパターンP(3)〜パターンP(m−1)が形成される。なお、パス1〜パスm−1において、テストシートTSは、上流側搬送ローラ23及び下流側搬送ローラ25のうちの少なくとも上流側搬送ローラ23に挟持されている。
【0076】
パターンP(m−1)の形成後、コントローラ60は、テストシートTSを更に下流側に移動させるために搬送動作を実行させる。その後、パスmにより、ノズル♯90のみからインクが吐出されてパターンP(m)が形成される。この際、テストシートTSの状態は、上流側搬送ローラ23及び下流側搬送ローラ25の双方に挟持された状態、すなわち、挟持状態にある。パターンP(m)の形成後、コントローラ60は、テストシートTSを1/6インチだけ更に下流側に搬送する搬送動作を実行させる。その後、パスm+1により、ノズル#90のみからインクが吐出されてパターンP(m+1)が形成される。この際、テストシートTSの状態は非挟持状態にある。さらに、P(m+1)の印刷後、コントローラ60は、排紙ローラ25aを回転させて、テストシートTSを約1インチだけ更に下流側に搬送する搬送動作を実行させる。その後、パスm+2により、ノズル♯3のみからインクが吐出されてP(m+2)が印刷される。そして、P(m+2)の印刷が終了した後にテストシートTSがプリンタ外に排出された時点でテストパターン印刷が完了する。
【0077】
ところで、上記の手順により形成されたテストパターンには、テストパターン印刷中の搬送動作における搬送誤差が反映されている。具体的に説明すると、パターンP(1)〜P(m+1)はノズル♯90のみからインクを吐出させることにより形成されるため、パターンP(1)〜P(m+1)中の互いに隣り合う2つのパターンの間隔(パターン間隔)は、理論上、当該2つのパターンの各々が形成される際の理論位置の間隔(理論位置間隔)と同値となる。例えば、パターンP(1)〜P(m−1)中の互いに隣接する2つのパターンについての理論位置間隔は、ちょうど1/8インチになる。また、パターンP(m)、P(m+1)についての理論位置間隔は、ちょうど1/6インチになる。しかし、実際には搬送動作中に搬送誤差が生じてしまうため、パターン間隔は理論位置間隔と異なってしまう。仮に理想的な搬送量よりも多くテストシートTSが搬送されると、パターン間隔は理論位置間隔より広がる。逆に、理想的な搬送量よりも少なくテストシートTSが搬送されると、パターン間隔が狭まる。
【0078】
このように各パターン間隔が各搬送動作中に生じる搬送誤差を反映しているため(換言すると、組立完了後のプリンタ1における紙の搬送特性を反映している)、当該パターン間隔を測定すれば搬送誤差を測定することが可能になる。さらに、当該パターン間隔から前記搬送誤差に対する補正値を求めることも可能になる。
【0079】
特に、本実施形態では、パスmの際にテストシートTSが搬送方向において位置する理論位置(以下、パスmにおける理論位置と言う)は、蹴飛ばし発生範囲の上流側境界位置(すなわち、第一位置)に設定されている。他方、パスm+1における理論位置は、前記蹴飛ばし発生範囲の下流側境界位置(すなわち、第二位置)に設定されている。つまり、テストパターン印刷は、パスmにおける理論位置からパスm+1における理論位置までの範囲が前記蹴飛ばし発生範囲となるように実施される。換言すると、テストパターン印刷中、パスmとパスm+1との間に蹴飛ばしが発生することになる。このため、パターンP(m)、P(m+1)の間のパターン間隔を測定すれば、蹴飛ばしによる搬送誤差に対する補正値(以下、蹴飛ばし用の補正値)を求めることが可能になる。
【0080】
同様に、パターンP(m+1)とパターンP(m+2)との間隔は、テストシートTSの搬送が理想的に行われた場合(正確には、更にノズル♯90とノズル♯3のインクの吐出が同じである場合)には、ちょうど3/90インチになるはずである。しかし、搬送誤差があるため、パターン間隔は3/90インチにならない。このため、パターンP(m+1)とパターンP(m+2)との間隔を測定すれば、前記搬送誤差に対する補正値を求めることが可能になる。
【0081】
<テストパターンの読み取り>
次に、テストパターンを読み取るステップについて説明する。当該ステップを説明するにあたり、先ず、テストパターンを読み取るために用いられるスキャナ150について、図8を用いて説明する。図8は、スキャナ150の内部構成を示す模式図である。図中、矢印にて画像読取センサ153の移動方向(副走査方向)が示されている。なお、以下の説明において、画像読取センサ153に備えられた複数の受光素子(不図示)が並んだ方向であって、副走査方向と略直交する方向を主走査方向と呼ぶ。
【0082】
スキャナ150は、上蓋151が閉じられた状態で、原稿台ガラス152に置かれた原稿Gに光を照射して、その反射光を検出して原稿Gの画像を読み取る。スキャナ150内部には、図8に示すように、原稿台ガラス152を介して原稿Gと対面しつつ副走査方向に移動する画像読取センサ153と、該画像読取センサ153を移動させるために案内バー154に沿って前記副走査方向に移動するキャリッジ155と、該キャリッジ155を移動させるための移動機構156と、スキャナ各部を制御するスキャナコントローラ(不図示)と、が備えられている。そして、画像読取センサ153が副走査方向に移動しながら、光が照射された原稿Gからの反射光を検出する。これにより、原稿台ガラス152上にセットされた原稿Gの画像が読み取られる。スキャナコントローラは、読み取った画像のデータ(画像データ)をコンピュータ110へ送信する。
【0083】
以上のようなスキャナ150によりテストシートTS上のテストパターンが読み取られる。また、本実施形態において、スキャナ150の読取解像度は、720dpi(主走査方向)×720dpi(副走査方向)である。
【0084】
ところで、スキャナ150がテストパターンを読み取る際の読み取り位置については、該読み取り位置の理論値と実際の読み取り位置との間に誤差が生じる。そして、読み取り位置の誤差がある状態でテストパターンを単に読み取っただけでは、テストパターン中のパターンの位置を正確に計測することができない。そこで、本実施形態では、テストパターンをスキャナ150に読み取らせる際に、基準シートSSをセットして基準パターンも読み取らせている。
【0085】
以下、テストパターンと基準パターンの読み取りについて、図9A及び図9Bを用いて説明する。図9Aは、基準シートSSを示した図である。図9Bは、原稿台ガラス152にテストシートTSと基準シートSSとをセットしたときの様子を示した図である。
【0086】
基準シートSSには基準パターンが形成されており、図9Aに示すように、当該基準パターンは36dpi間隔にて精度良く並んだ複数のラインから構成されている。そして、テストシートTS及び基準シートSSは、図9Bに示すように、原稿台ガラス152上の所定の位置にセットされる。基準シートSSは、複数のラインの各々がスキャナ150の主走査方向と平行になるようにセットされる。一方、テストシートTSは、基準シートSSの横に並べられ、各パターンが主走査方向と平行になるようにセットされる。
【0087】
このようにテストシートTSと基準シートSSをセットした状態で、スキャナ150は、テストパターンと基準パターンを読み取る。これにより、テストパターンと基準パターンの各々について画像データを取得する。但し、読み取り位置の誤差の影響により、実際の画像データは、理想的に読み取られた場合の画像データと比べて歪んでしまう。そこで、補正値取得プログラムは、前記画像データを解析するにあたり、基準パターンの画像データに基づいて、テストパターンの画像データに及ぶ読み取り位置の誤差の影響をキャンセルさせる。
【0088】
<補正値の算出>
次に、テストパターンの画像データを解析して補正値を算出するステップについて図10を参照しながら説明する。図10は、補正値を算出するステップのフローチャートである。
【0089】
1)準備処理
図10に示すように、補正値を算出する前準備として、スキャナ150から取得したテストパターン及び基準パターンの画像データを解析するための準備処理が行われる(S121)。当該準備処理は補正値取得プログラムにより実行される。準備処理としては、先ず、テストシートTS及び基準シートSSの各々が傾いてスキャナ150にセットされたために生じた傾き、を補正する処理をテストシートTS及び基準シートSSの各画像データに対して施す。前記傾きを補正するにあたり、テストパターン及び基準パターンの各々の画像について、公知の検出方法により傾き角度を検出する。そして、該傾き角度に基づいて、各画像を回転処理して当該各画像の傾きを補正する。なお、回転処理は、テストパターン及び基準パターンの各々に対して個別に行われる。このような個別の回転処理を行う結果、基準パターンに対するテストパターンの位置が相対的にずれる場合がある。かかる場合を考慮し、個別の回転処理により生じるズレを評価しておき、各パターンの位置を算出するステップ(S122)において各パターンの位置を算出した際に、該位置から前記ズレを差し引く。
【0090】
また、次の準備処理としてテストパターン自体の歪みを検出する。テストパターン自体の歪みとは、テストパターンの印刷中にテストシートTSが傾いてしまうことによって発生する歪みである。例えば、テストパターンの印刷中に、テストシートTSの紙幅方向がヘッド41の走査方向に対して傾き出すと、テストシートTSに対してテストパターンが歪んだ状態で印刷されてしまう。テストパターン自体の歪みが顕著になると、当該テストパターンに基づいて補正値を算出したときに不適切な値が得られてしまう。このような事態を回避するため、テストパターン自体の歪みを評価し、当該歪みが規定以上の歪みである場合にはエラーとする。
【0091】
2)パターンの位置の算出
上記の準備処理を行った後、補正値取得プログラムにより、スキャナ座標系において、基準パターンの各ラインの位置と、テストパターンの各パターンの位置と、がそれぞれ算出される(S122)。スキャナ座標系では、スキャナ150の読取によって取得される画像が、1/720×1/720インチの画素により構成されるものとする。また、各画像における左上の画素の位置を、スキャナ座標系の原点とする。その後、補正値取得プログラムにより、スキャナ座標系における各ラインの位置と各パターンの位置とに基づいて、テストシートTS上における各パターンの形成位置、すなわち、各パターンの絶対位置がそれぞれ算出される(S123)。
【0092】
以下、図11A及び図11Bと、図12と、図13とを参照しながら説明する。図11Aは、テストパターンの画像のうち、スキャナ座標系における各パターンの位置を算出する際に用いられる範囲を示す図である。図11Bは、パターンの位置の算出についての説明図である。横軸は、画素のy方向の位置(スキャナ座標系)を示している。縦軸は、画素の階調値(x方向に並ぶ画素の階調値の平均値)を示している。図12は、算出されたパターンの位置の説明図であり、図中に示す位置は、所定の演算が施されて無次元化されている。図13は、テストパターンのi番目のパターンの絶対位置の算出に関する説明図である。ここで、テストパターンのi番目のパターンとは、基準パターンのj−1番目のラインと、基準パターンのj番目のラインとの間に位置するパターンである。
【0093】
なお、以下の説明では、テストパターンのi番目のパターンの位置(スキャナ座標系)を「M(i)」と呼び、基準パターンのj番目のラインの位置(スキャナ座標系)を「K(j)」と呼ぶ。また、基準パターンのj−1番目のラインとj番目のラインとの間隔(y方向の間隔)を「L」と呼び、基準パターンのj−1番目のラインとテストパターンのi番目のパターンとの間隔(y方向の間隔)を「L(i)」と呼ぶ。
【0094】
先ず、補正値取得プログラムは、図11Aに示すテストパターンの画像のうちの点線にて示す範囲の画像、の画像データを用いて、各パターンの位置を算出する。ここで、補正値取得プログラムは、前記点線にて示す範囲の画像の画像データから、各パターンについて階調値の重心位置を算出し(図11B参照)、この重心位置を各パターンの位置とする。
【0095】
次に、絶対位置の算出に際して、補正値取得プログラムは、次式に基づいて、間隔Lに対する間隔L(i)の比率Hを算出する。
H=L(i)/L
={M(i)−K(j−1)}/{K(j)−K(j−1)}
【0096】
ところで、実際の基準シートSS上の基準パターンは等間隔であるので、基準パターンの1番目のラインの絶対位置をゼロとすれば、基準パターンの任意のラインの位置を算出できる。例えば、基準パターンの2番目のラインの絶対位置は1/36インチである。そこで、基準パターンのj番目のラインの絶対位置を「J(j)」とし、テストパターンのi番目のパターンの絶対位置を「R(i)」とすると、次式のようにしてR(i)を算出できる。
R(i)={J(j)−J(j−1)}×H+J(j−1)
【0097】
以下、各パターンの絶対位置を算出する手順について、テストパターン中の1番目のパターンの絶対位置R(1)を算出する場合を具体例に挙げて説明する。先ず、図12に示すように、補正値取得プログラムにより、パターンP(1)の位置M(1)が基準パターンの2番目のラインの位置K(2)と3番目のラインの位置K(3)との間に存在していることを検出する。次に、補正値取得プログラムにより、比率Hが0.40143008(=(373.7686667-309.613250)/(469.430413-309.613250))であることが求められる。最終的に、図13に示す位置関係から、1番目のパターンの絶対位置R(1)が0.98878678ミリ(=0.038928613インチ{=1/36インチ}×0.40143008+1/36インチ)であることが求められる。
【0098】
3)補正値の計算
次に、補正値取得プログラムにより、各パターンの絶対位置から補正値が求められる(S124)。
【0099】
補正値は、適用範囲決定ステップにて決定された複数の範囲(適用範囲)に対して、該範囲毎に求められる。すなわち、本実施形態では、補正値が求められる前に該補正値の適用範囲が予め決定されている。そして、補正値は、適用範囲の数に応じた分だけ求められる。また、各適用範囲は、一部の適用範囲(具体的には、後述する補正値Cbの適用範囲)を除き、テストパターンの各パターンが形成される際にテストシートTSが位置する理論位置の間の範囲に相当する。換言すると、テストパターン印刷では、一部のパターン(具体的には、パターンP(m+2))を除き、理論上、前記複数の範囲の各境界位置にテストシートTSが位置する際にパターンが形成される。
【0100】
具体的に説明すると、i番目のパターンP(i)が形成される際にテストシートTSが位置する理論位置(以下、パターンP(i)形成時の理論位置とも言う)からi+1番目のパターンP(i+1)形成時の理論位置までの範囲に対して、該範囲を適用範囲とする補正値C(i)が求められることになる。当該補正値C(i)は、i番目のパターンの絶対位置R(i)とi+1番目のパターンの絶対位置R(i+1)と基づいて求められる。そして、補正値C(i)は、パターンP(i)及びパターンP(i+1)の実際のパターン間隔(換言すると、絶対位置R(i)、R(i+1)の間隔)と理論上のパターン間隔との差として求められる。
【0101】
ここで、iが1〜m−2である場合、補正値C(i)は、「3.18mm」(1/8インチ)から「R(i+1)−R(i)」を引いた値になる。例えば、補正値C(1)は、パターンP(1)形成時の理論位置からパターンP(2)形成時の理論位置までの範囲、を適用範囲とする。そして、補正値C(1)の値は3.18mm−{R(2)−R(1)}となる。このようにして、補正値C(i)が、図14に示すように、前記複数の範囲の該範囲毎に求められる。図14は、当該複数の範囲と該範囲毎に求められた補正値とを示す図である。
【0102】
また、iがmである補正値C(m)は、パターンP(m)形成時の理論位置からパターンP(m+1)形成時の理論位置までの範囲、に対する補正値として求められる。当該範囲は蹴飛ばし発生範囲に相当する。したがって、補正値C(m)は、蹴飛ばし発生範囲を適用範囲とする補正値、すなわち、蹴飛ばし用の補正値Ckとなる。この補正値Ckは、パターンP(m)及びパターンP(m+1)の理論上のパターン間隔と実際のパターン間隔との差として求められ、その値は「4.23mm」(1/6インチ)から「R(m+1)−R(m)」を引いた値になる。
【0103】
一方、iがm+1である補正値C(m+1)は、前記複数の範囲のうち、パターンP(m+1)形成時の理論位置以降の範囲(すなわち、蹴飛ばし発生範囲の下流側境界位置よりも搬送方向において下流側にある範囲)を適用範囲とする補正値(以下、補正値Cb)として求められる。つまり、補正値Cbの適用範囲は、パターンP(m+1)形成時の理論位置から紙の搬送経路の末端までの範囲である。そして、補正値Cbは、パターンP(m+1)とパターンP(m+2)の理論上のパターン間隔と実際のパターン間隔との差として求められ、その値は「0.847mm」(3/90インチ)から「R(m+2)−R(m+1)」を引いた値になる。
【0104】
4)補正値の平均化
ところで、印刷処理中の各搬送動作時に用いられる紙送りローラ23aの周面の場所は、印刷処理間で異なってくる場合がある。この結果、パターンP(1)〜パターンP(m−1)中のパターン間隔は、DC成分の搬送誤差の影響だけではなく、AC成分の搬送誤差の影響も受けることになる。しかし、上記の方法により求められた補正値C(1)〜C(m−2)については、AC成分の搬送誤差の影響を考慮していない。このため、補正値C(1)〜C(m−2)をそのまま適用すると、却って搬送誤差を悪化させる虞がある。
【0105】
そこで、本実施形態では、AC成分の搬送誤差の影響を反映させ難くするために、補正値C(1)〜C(m−2)については、次式により平均化している(S125)。なお、平均化して得られる補正値を平均補正値Ctと呼ぶ。
Ct(i)={C(i−3)+C(i−2)+C(i−1)+C(i)+C(i+1)+C(i+2)+C(i+3)+C(i+4)}/8
【0106】
以下、図15を用いて、テストパターン中の各パターンと平均補正値Ctとの関係について説明する。図15は、当該関係についての説明図である。
【0107】
平均補正値Ct(i)は、図15に示すように、パターンP(i−3)〜パターンP(i+4)における各パターン間隔に基づいて求められる。例えば、平均補正値Ct(4)は、補正値C(1)〜C(8)の総和を8で割った値(補正値C(1)〜C(8)の平均値)となる。このようにして求められた平均補正値Ct(i)は、図15に示すように、パターンP(i)形成時の理論位置からパターンP(i+1)形成時の理論位置までの範囲、に対応付けられ、該範囲を適用範囲とする。
【0108】
なお、平均補正値Ct(i)を求める際にiが3以下になる場合、平均補正値Ct(i)は、C(1)〜C(8)までの総和を8で割った値とする。また、平均補正値Ct(i)を求める際にiがm−5以上になる場合、平均補正値Ct(i)は、C(m−9)〜C(m−2)までの総和を8で割った値とする。また、パターンP(m−1)形成時の理論位置からパターンP(m)形成時の理論位置までの範囲、に対応付けられる平均補正値Ct(m−1)は、平均補正値Ct(m−2)に、m回目の搬送動作におけるテストシートTSの移動距離の理論値aとm−1回目の搬送動作における前記移動距離の理論値bとの比a/b、を乗じた値とする。
【0109】
ところで、パターンP(1)〜P(m−1)は、ほぼ1/8インチ毎に形成されているため、平均補正値Ctは1/8インチ毎に求められることになる。つまり、テストパターン印刷においてパターン間隔が紙送りローラ23aの周長(1インチ)の1/8になるように設定されていたため、各平均補正値Ct(i)が理論上1インチ離れるべき2つのラインの間隔に応じた値になるにも関わらず、その適用範囲を1/8インチにすることが可能になる。これにより、AC成分の搬送誤差の影響を受け難くするとともに、DC成分の搬送誤差をきめ細かく補正することが可能になる。
【0110】
また、補正値Ckは、蹴飛ばしによる搬送誤差に対する補正値であり、検出誤差による搬送誤差に対する補正値(すなわち、補正値C(1)〜C(m−2))とともに平均化することには適さないものである。このため、本実施形態では、補正値Ckは平均化の対象としていない。また、補正値Cbについても、検出誤差による補正値とともに平均化することには適さないため、平均化の対象としていない。
【0111】
<補正値の記憶>
次に、補正値取得プログラムにより、補正値をプリンタ1のメモリ63に記憶するステップ(S104)について説明する。
【0112】
メモリ63に記憶される補正値は、平均補正値Ct(i)、補正値Ck、及び、補正値Cbである。これらの補正値は前述の複数の範囲とともに記憶される。このとき、前記範囲毎に、該範囲と該範囲を適用範囲とする補正値とが対応付けられる。なお、前記範囲については、その境界位置情報がメモリ63に記憶される。つまり、補正値の各々は、その適用範囲毎に、該適用範囲を示す境界位置情報に対応付けられてメモリ63に記憶されることになる。例えば、蹴飛ばし用の補正値である補正値Ckについては、その適用範囲が蹴飛ばし発生範囲であり、当該蹴飛ばし発生範囲を示す境界位置情報に対応付けられて記憶される。なお、境界位置情報とは、各範囲の搬送方向上端側及び搬送方向下端側の境界位置を示す情報である。
【0113】
そして、補正値が適用範囲毎に該適用範囲を示す境界位置情報に対応付けられてメモリ63に記憶される結果、図16に示すようなテーブル(以下、補正値のテーブル)がメモリ63に形成されることになる。図16は、補正値のテーブルを示した図である。
【0114】
===搬送量調整処理===
次に、搬送量調整処理について説明する。
【0115】
搬送量調整処理は、前述したように、本印刷の各搬送動作の補正前目標搬送量のうち、特定の搬送動作の補正前目標搬送量を仮決めされた当初の搬送量から調整して本決定するための処理である。
【0116】
特定の搬送動作の補正前目標搬送量を調整する目的は、特定の搬送動作後に実行される搬送動作のうち、蹴飛ばし発生範囲の下流側境界位置(第二位置)よりも搬送方向上流側に位置する第三位置から該蹴飛ばし発生範囲の上流側境界位置(第一位置)よりも搬送方向下流側に位置する第四位置まで紙を搬送する搬送動作、における目標移動区間を適切な区間になるように決定することである。
【0117】
より具体的に説明すると、本印刷の搬送動作のうち、特定の搬送動作の補正前目標搬送量を調整すると、その調整量分だけ、該特定の搬送動作における目標移動区間の搬送方向長さが調整される。これにより、前記特定の搬送動作以降の各パスにおける紙の理論位置が、搬送方向において前記調整量分だけずれた位置になる。つまり、前記特定の搬送動作後に実行される搬送動作における目標移動区間が前記調整量分だけ変化した区間に決定される。以上のようにして、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を決定する。
【0118】
ここで、前記第三位置から前記第四位置までの目標移動区間は、蹴飛ばし発生範囲と搬送方向において重なりを有する区間である。換言すると、前記第三位置から前記第四位置まで紙を搬送するための搬送動作が実行される間に、該紙は蹴飛ばし発生範囲内を移動する。そして、前記第三位置から前記第四位置まで紙を搬送するための搬送動作が実行される間に、蹴飛ばしが発生し得る。このため、以下、前記第三位置から前記第四位置まで紙を搬送するための搬送動作を「蹴飛ばしが発生し得る搬送動作」とも呼ぶ。
【0119】
搬送量調整処理は、補正値取得処理の終了後、プリンタ1が出荷されるまでに行われる。また、搬送量調整処理は、プリンタ1と工場内のコンピュータ110とが接続された状態で、該コンピュータ110にインストールされた搬送量調整プログラムにより行われる。
【0120】
<<本印刷の概要>>
搬送量調整処理について具体的に説明するにあたり、先ず、本印刷の概要を説明する。
【0121】
<本印刷における搬送動作の目標搬送量>
本印刷の各搬送動作の補正前目標搬送量について、図17及び図18を用いて説明する。図17は、メモリ63に記憶された、本印刷の各搬送動作に関する情報の説明図である。図18は、当該情報に基づいて実施される本印刷の様子を示した図である。図中の右側には、画像が印刷される紙が示されており、図中の左側に示された長方形は、本印刷中の各パスにおけるヘッド41の位置を示している。図18は、図示の都合上、ヘッド41が紙に対して移動しているように描かれているが、同図はヘッド41に対する紙の相対位置を示すものである。また、図中に示されたヘッド41のうち、グレーで塗り潰された領域は、各パスにおいてインクを吐出しないノズルが並ぶ領域を示している。なお、以降の説明では、本印刷中のパスiにおいて紙が位置する理論位置を理論位置Q(i)と呼ぶ。また、パスi−1とパスiとの間の搬送動作(i回目の搬送動作)において紙を搬送するための補正前目標搬送量をF(i)と呼ぶ。例えば、F(1)は、初回の搬送動作において紙を頭出し位置に位置決めするための補正前目標搬送量である。
【0122】
コントローラ60は、本印刷にて各搬送動作を実行させるために、メモリ63に予め記憶された搬送動作に関する情報(以下、記録情報)を読み取り、当該記録情報に基づいて搬送動作を実行させる。記録情報には、図17に示すように、各パス間に実行される搬送動作において紙を搬送するための補正前目標搬送量F(i)を示す情報が含まれている。ここで、本印刷の搬送動作の補正前目標搬送量F(i)は、テストパターン印刷中の搬送動作の目標搬送量とは異なる。なお、本印刷には縁無し印刷と縁有り印刷とがあり、両印刷間で頭出し位置が異なることから、補正前目標搬送量F(1)を示す情報としては、縁無し印刷用の情報と縁有り印刷用の情報とが個別にメモリ63に記憶されている。
【0123】
この補正前目標搬送量F(i)を示す情報については、前述したように、搬送量調整処理の実施前の段階では仮決めされた搬送量を示す情報がメモリ63に記憶されている。つまり、搬送量調整処理の実施前の段階では、各パスにおける理論位置Q(i)、及び、各搬送動作における目標移動区間も仮決めされていることになる。
【0124】
また、コントローラ60は、各補正前目標搬送量F(i)を、先端印刷中の搬送動作の補正前目標搬送量、通常印刷中の搬送動作の補正前目標搬送量、後端印刷中の搬送動作の補正前目標搬送量に区分して適用する。具体的に説明すると、図18に示す本印刷において、コントローラ60は、パス1〜パス4の間に実行される搬送動作の補正前目標搬送量F(1)〜F(4)を先端印刷中の搬送動作の補正前目標搬送量として適用する。同様に、パス5〜パスnの間に実行される搬送動作の補正前目標搬送量F(5)〜F(n)を通常印刷中の搬送動作の補正前目標搬送量として適用し、パスn+1〜パスn+4の間に実行される搬送動作の補正前目標搬送量F(n+1)〜F(n+4)を後端印刷中の搬送動作の補正前目標搬送量として適用する。
【0125】
補正前目標搬送量F(i)のうち、通常印刷中の各搬送動作の補正前目標搬送量として適用されるF(5)〜F(n)は、前述したインターレース印刷を行うための搬送量に設定されており、当該搬送量は蹴飛ばし発生範囲の搬送方向長さ(1/6インチ)よりも大きい。また、搬送量調整処理の実施前において、F(5)〜F(n)は同一の搬送量に仮決めされている。さらに、初回の搬送動作を除く、先端印刷中の各搬送動作の補正前目標搬送量として適用されるF(2)〜F(4)、及び、後端印刷中の各搬送動作の補正前目標搬送量として適用されるF(n+1)〜F(n+4)についても、搬送量調整処理の実施前においては、それぞれ、同一の搬送量に仮決めされている。また、F(2)〜F(4)、及び、R(n+1)〜F(n+4)は、F(5)〜F(n)よりも小さな搬送量に設定されている。換言すると、先端印刷及び後端印刷中の各搬送動作における目標移動区間の搬送方向長さは、通常印刷中の各搬送動作における目標移動区間の搬送方向長さより短く設定されている。これは、先端印刷及び後端印刷では、通常印刷よりも紙の姿勢がより不安定になり易くなるためである。
【0126】
詳しく説明すると、本実施形態では、通常印刷において、紙が上流側搬送ローラ23及び下流側搬送ローラ25の双方に挟持されながら搬送されるように設定されている。一方、先端印刷において紙が上流側搬送ローラ23のみに挟持されながら搬送され、後端印刷において紙が下流側搬送ローラ25のみに挟持されながら搬送されるように設定されている。すなわち、本実施形態では、先端印刷において最後に実行される搬送動作にて、紙の状態が上流側搬送ローラ23のみに挟持された状態から前記双方により挟持される挟持状態に移行し、通常印刷において最後に実行される搬送動作にて、紙の状態が挟持状態から非挟持状態に移行する。
【0127】
以上のような設定の下で本印刷を実施するとき、通常印刷では、紙が上流側搬送ローラ23及び下流側搬送ローラ25の双方に挟持されるため、紙の姿勢が安定した状態で該紙にインクが吐出される。これに対し、先端印刷及び後端印刷では紙が前記双方のうちの一方のみに挟持される。このため、先端印刷及び後端印刷の搬送動作において通常印刷の場合と同じ搬送量にて紙を搬送しようとすると、紙の姿勢が不安定になり易く、該紙にインク滴を適切に着弾させることが困難になる。かかる理由により、紙の姿勢の安定化を図るため、F(2)〜F(4)、及び、R(n+1)〜F(n+4)は、F(5)〜F(n)よりも小さな搬送量に設定されている。
【0128】
なお、本実施形態では、通常印刷において最後に実行される搬送動作にて、紙の状態が挟持状態から非挟持状態に移行することとしたが、これに限定されるものではない。通常印刷中のいずれかの搬送動作にて、紙の状態が挟持状態から非挟持状態に移行することとしてもよい。また、本実施形態では、先端印刷において最後に実行される搬送動作にて、紙の状態が上流側搬送ローラ23のみに挟持された状態から挟持状態に移行することとしたが、これに限定されるものではない。先端印刷中のいずれかの搬送動作にて、紙の状態が上流側搬送ローラ23のみに挟持された状態から挟持状態に移行することとしてもよい。また、通常印刷中の搬送動作にて、上流側搬送ローラ23のみに挟持された状態から挟持状態に移行することとしてもよい。
【0129】
補正前目標搬送量F(i)についてさらに説明すると、各搬送動作が搬送誤差を伴わず理想的に実行された場合には、当該各搬送動作において紙は補正前目標搬送量だけ搬送されることになる。例えば、パスi−1とパスiとの間の搬送動作(i回目の搬送動作)が理想的に実行された場合、補正前目標搬送量F(i)だけ紙が搬送方向下流側に搬送されることになる。そして、i回目の搬送動作が完了した時点で紙は理論位置Q(i)に位置するようになるが、該理論位置Q(i)は、理論上、頭出し位置(すなわち、理論位置Q(1))からF(2)〜F(i)までの総和に相当する距離だけ搬送方向下流側に離れた位置になる。
【0130】
<本印刷にて形成されるラスタラインとノズルの関係>
本印刷にて形成されるラスタラインと、各ラスタラインを形成するためにインクを吐出するノズルと、の関係について図19を用いて説明する。図19は、ラスタラインとノズルの関係の説明図である。図中の左側に示された長方形は、本印刷中の各パスにおけるヘッド41の位置を示している。なお、説明の便宜上、前記ヘッド41には、一つのノズル群のみを示し、更にノズル群のノズル数も少なくしている。また、各パスにおいてインクを吐出することが可能なノズルを黒丸にて示し、インクを吐出することができないノズルを白丸にて示している。一方、図中の右側には、画像が印刷される紙が示されている。当該紙には、先端印刷の各パス、及び、通常印刷開始後の数パスにより形成されるラスタラインと、各ラスタラインに対して割り当てられたノズルの番号と、が示されている。また、図示の都合上、図中のラスタラインは、模式的に、かつ、実際のラスタラインよりも短く描かれている。また、図19にはヘッド41が紙に対して移動しているように描かれているが、同図はヘッド41に対する紙の相対位置を示すものである。
【0131】
本印刷にて形成されるラスタラインの各々に対しては、該ラスタライン毎に、ノズルが割り当てられている。つまり、あるラスタラインは、当該あるラスタラインに対して割り当てられたノズルから吐出されるインクによって形成される。そして、ラスタラインの各々に対するノズルの割り当て方の変化パターンは、先端印刷、通常印刷、及び、後端印刷の各工程の移行時に切り替わる。つまり、本実施形態では、ラスタラインが並ぶ方向における、該ラスタラインの各々に対して割り当てられたノズル順序の変化パターンは、補正前目標搬送量F(i)が変化するタイミングで切り替わることになる。
【0132】
以下、図19を参照しながら具体的に説明する。図19に示すケースでは、パス1〜パス4が先端印刷のパスになり、パス5〜パスnが通常印刷のパスになり、パスn+1〜パスn+4が後端印刷のパスになる。また、初回の搬送動作の補正前目標搬送量F(1)を除き、先端印刷の搬送動作の補正前目標搬送量F(2)〜F(4)は、同一の搬送量(=1・D)に設定されている。同様に、通常印刷の搬送動作の補正前目標搬送量F(5)〜F(n)についても、同一の搬送量(=3・D)に設定されている。さらに、後端印刷の搬送動作の補正前目標搬送量F(n+1)〜F(n+4)についても、同一の搬送量(=1・D)に設定されている。
【0133】
本印刷中の先端印刷により形成されるラスタライン(すなわち、パス1〜パス4にて形成されるラスタライン)のうち、先頭から4本目までのラスタラインは、#2のノズルから吐出されるインクにより形成される。また、5本目から8本目までのラスタラインは、#3のノズルから吐出されるインクにより形成され、9本目から12本目までのラスタラインは、#4のノズルから吐出されるインクにより形成される。このように、先端印刷にて形成されるラスタラインに対して割り当てられたノズル(ノズル番号)は、連続する4本のラスタライン毎に変化する。
【0134】
通常印刷により形成されるラスタライン(すなわち、パス5〜パスnにて形成されるラスタライン)については、該ラスタラインの各々に対するノズルの割り当て方に一定の規則性が見出される。図19に示すケースでは、パス5〜パスnにて形成されるラスタラインのうち、最初のラスタラインから3本目のラスタライン(先頭のラスタラインから数えて13本目から15本目のラスタライン)に対しては、それぞれ、#2、#3、#4の順でノズルが割り当てられている。そして、4本目以降のラスタライン(先頭のラスタラインから数えて16本目以降のラスタライン)に対しても、3本毎に上記の順でノズルが割り当てられている。このように、通常印刷にて形成されるラスタラインに対して割り当てられたノズルは、一定の順序が周期的に繰り返されるように変化する。
【0135】
後端印刷により形成されるラスタライン(すなわち、パスn+1〜n+4にて形成される図19に不図示のラスタライン)に対して割り当てられたノズルについては、先端印刷と同様、連続する4本のラスタライン毎に変化する。
【0136】
以上のように、本実施形態では、ラスタラインの各々に対するノズルの割り当て方の変化パターン(換言すると、ラスタラインを形成するためにインクを吐出するノズルの組み合わせ方)が、搬送動作の補正前搬送量F(i)が変化する時点に切り替わる。
【0137】
<<搬送量調整の手順>>
本実施形態では、前述したように、特定の搬送動作の補正前目標搬送量を調整して、該特定の搬送動作後に実行される搬送動作のうち、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作、における目標移動区間を決定する。換言すると、搬送量調整処理では、特定の搬送動作における目標移動区間の搬送方向長さを調整することになる。なお、本実施形態では、特定の搬送動作における目標移動区間の上流側境界位置が、頭出し位置よりも搬送方向下流側に位置する。また、該目標移動区間の下流側境界位置は、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作における目標移動区間の上流側境界位置(すなわち、第三位置)よりも搬送方向上流側に位置する。
【0138】
以下、搬送量調整処理の具体的な手順について、仮決めされた補正前目標搬送量F(i)に基づいて図19に示す本印刷が仮に実施される場合を例に挙げて説明する。なお、以下の説明では、前記特定の搬送動作における目標移動区間の上流側境界位置を第五位置と呼び、下流側境界位置を第六位置と呼ぶ。これに伴って、前記特定の搬送動作における目標移動区間を、第五位置から第六位置までの目標移動区間とも呼ぶ。
【0139】
搬送量調整処理を行うにあたり、先ず、仮決めされた補正前目標搬送量F(i)に基づいて仮に実施される本印刷において、搬送動作の目標移動区間のうち、蹴飛ばし発生範囲と重なりを有する目標移動区間を特定する。図19に示す本印刷では、パスn−2とパスn−1との間の搬送動作(n−1回目の搬送動作)における目標移動区間と、パスn−1とパスnとの間の搬送動作(n回目の搬送動作)における目標移動区間と、が蹴飛ばし発生範囲と重なりを有している。すなわち、図19に示す本印刷では、蹴飛ばし発生範囲と重なりを有する目標移動区間を紙が移動するように該紙を搬送する搬送動作が2回実行される。このように、仮決めされた補正前目標搬送量F(i)に基づいて仮に実施される本印刷において、蹴飛ばし発生範囲と重なりを有する目標移動区間が複数ある場合に、搬送量調整処理が実施される。
【0140】
次に、特定された蹴飛ばし発生範囲と重なりを有する目標移動区間の搬送方向中央位置を特定する。蹴飛ばし発生範囲と重なりを有する目標移動区間として複数の目標移動区間が特定されるため、当該複数の目標移動区間のうち、その区間内に蹴飛ばし発生範囲の搬送方向中央位置(すなわち、第一位置と第二位置の中間位置)が位置する目標移動区間、の搬送方向中央位置を特定する。図19に示す本印刷では、n回目の搬送動作における目標移動区間の搬送方向中央位置を特定することになる。
【0141】
次に、特定された目標移動区間の搬送方向中央位置と、蹴飛ばし発生範囲の搬送方向中央位置との間の距離(図19中、記号Δにて示す)を求める。この距離Δが補正前目標搬送量の調整量に相当する。
【0142】
前記距離Δを求めた後、本実施形態では、調整対象の補正前目標搬送量として、通常印刷において最初に実行される搬送動作の補正前目標搬送量(図19に示す本印刷では、5回目の搬送動作の補正前目標搬送量F(5))を調整する。換言すると、第五位置から第六位置までの目標移動区間の搬送方向長さとして、通常印刷において最初に実行される搬送動作における目標移動区間の搬送方向長さを調整する。図19に示す本印刷では、パス4における理論位置Q(4)が第五位置に相当し、パス5における理論位置Q(5)が第六位置に相当する。そして、第五位置から第六位置までの目標移動区間として、理論位置Q(4)から理論位置Q(5)までの区間の搬送方向長さを調整することになる。
【0143】
そして、通常印刷において最初に実行される搬送動作の補正前目標搬送量(図19に示す本印刷では、F(5))を、仮決めされた当初の搬送量から前記距離Δに相当する分だけ調整する。このとき、特定された目標移動区間の搬送方向中央位置が、蹴飛ばし発生範囲の搬送方向中央から見て搬送方向下流側にある場合には、前記補正前目標搬送量を当初の搬送量より前記距離Δに相当する分だけ少ない搬送量に調整する。一方、蹴飛ばし発生範囲の搬送方向中央から見て搬送方向上流側にある場合には、前記補正前目標搬送量を当初の搬送量より前記距離Δに相当する分だけ多い搬送量に調整する。
【0144】
上記の調整により、通常印刷において2回目以降に各搬送動作における目標移動区間が、仮決めされた当初の区間よりも前記距離Δだけ移動した区間に改めて決定される。具体的に説明すると、図19のケースでは、補正前目標搬送量F(5)を前記距離Δに相当する分だけ少ない搬送量に調整することになり、当該調整後に本印刷を実施すると、図20に示すように、パス5以降の各パスにおける理論位置Q(i)が、仮決めされた当初の理論位置から搬送方向において前記距離Δだけ上流側に位置する位置になる。これに伴い、通常印刷において2回目以降の搬送動作(初回の搬送動作から数えて6回目以降の搬送動作)における目標移動区間が、仮決めされた当初の区間よりも前記距離Δだけ上流側に移動した区間となる。なお、図20は、搬送量調整処理の完了後に、調整後の補正前目標搬送量F(i)に基づいて実施される本印刷の様子を示しており、図19に対応した図である。
【0145】
以上のように改めて決定された目標移動区間の中には、蹴飛ばし発生範囲と重なりを有する目標移動区間が含まれている。すなわち、通常印刷において最初に実行される搬送動作の補正前目標搬送量が調整される結果、蹴飛ばし発生範囲と重なりを有する目標移動区間についても改めて決定されることになる。かかる目標移動区間が、第三位置から第四位置までの目標移動区間、すなわち、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作における目標移動区間に相当する。
【0146】
そして、本実施形態では、通常印刷において最初に実行される搬送動作の補正前目標搬送量を前記距離Δに相当する分だけ調整することにより、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作の目標移動区間は、蹴飛ばし発生範囲を跨ぐ区間となるように決定される。このことは、本印刷の搬送動作における目標移動区間のうち、蹴飛ばし発生範囲と重なりを有する目標移動区間が1つのみになることを意味する。つまり、本印刷において、紙が蹴飛ばし発生範囲内を移動するように実行される搬送動作(すなわち、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作)は1回のみとなり、当該搬送動作の実行時に確実に蹴飛ばしが発生することになる。
【0147】
具体的に説明すると、図19のケースでは、補正前目標搬送量F(5)を距離Δに相当する分だけ調整すると、蹴飛ばし発生範囲と重なりを有する目標移動区間として特定されたn−1回目及びn回目の搬送動作における目標移動区間が、仮決めされた当初の区間よりも前記距離Δだけ上流側に移動した区間に改めて決定される。この結果、図20に示すように、n回目の搬送動作における目標移動区間が蹴飛ばし発生範囲を跨ぐ区間となり、該目標移動区間が蹴飛ばし発生範囲と重なりを有する唯一の目標移動区間として決定される。そして、搬送量調整処理の完了後に本印刷を実施すると、n回目の搬送動作のみが蹴飛ばしが発生し得る搬送動作に該当し、該搬送動作の実行中に蹴飛ばしが確実に発生することになる。
【0148】
また、図20に示すように、搬送量調整処理により、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作における目標移動区間の搬送方向中央位置(すなわち、第三位置と第四位置との中間位置)が、蹴飛ばし発生範囲の搬送方向中央位置と一致するようになる。つまり、本実施形態の搬送量調整処理は、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作における目標移動区間を、該目標移動区間の搬送方向中央位置が蹴飛ばし発生範囲の搬送方向中央位置と一致するように、改めて決定するための処理であると言える。かかる処理が実施されることにより、搬送量調整処理の完了後に本印刷が実施されると、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作の実行時に紙が実際に移動する移動区間が該搬送動作における目標移動区間から多少ずれたとしても、当該移動区間が蹴飛ばし発生範囲を跨ぐ区間になる。つまり、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作において実際の移動区間が前記目標移動区間からずれたとしても、該搬送動作の実行中に蹴飛ばしが確実に発生することになる。
【0149】
また、本実施形態では、搬送量調整処理の実施前後で、補正前目標搬送量F(i)が変化する時点は変化しない。これは、本実施形態の搬送量調整処理では、通常印刷において最初に実行される搬送動作の補正前目標搬送量、すなわち、補正前目標搬送量F(i)が変化する直後の該補正前目標搬送量F(i)を調整するためである。このため、ラスタラインの各々に対するノズルの割り当て方の変化パターンが切り替わる時点についても、搬送量調整処理の実施前後で変化せず、先端印刷、通常印刷、及び、後端印刷の各工程の移行時となる。なお、本実施形態では、図20に示すように、搬送量調整処理後においても、通常印刷により形成されるラスタラインの各々に対するノズルの割り当て方に一定の規則性が見出される。具体的に説明すると、通常印刷により形成されるラスタラインのうち、最初のラスタラインから3本目のラスタラインに対しては、それぞれ、#3、#4、#2の順でノズルが割り当てられて、4本目以降のラスタラインに対しても3本毎に上記の順でノズルが割り当てられている。
【0150】
<<調整後の目標搬送量の記憶>>
以上のように通常印刷において最初に実行される搬送動作の補正前目標搬送量を調整した後、調整された該補正前目標搬送量F(i)を示す情報がメモリ63に記憶される。具体的に説明すると、メモリ63に記憶された補正前目標搬送量F(i)の情報のうち、通常印刷において最初に実行される搬送動作の補正前目標搬送量を示す情報が、仮決めされた当初の搬送量を示す情報から、調整後の搬送量を示す情報に更新される。他方、調整されなかった補正前目標搬送量F(i)を示す情報については、仮決めされた当初の搬送量を示す情報がメモリ63に残ることになる。そして、当該情報の更新が終了した時点で搬送量調整処理が完了するとともに、事前処理も終了する。
【0151】
===ユーザの下での本印刷時の搬送動作===
プリンタ1を購入したユーザの下で本印刷が実施される際、コントローラ60は、メモリ63に記録された記録情報と補正値を読み出し、該記録情報中の補正前目標搬送量F(i)を該補正値により補正し、補正した補正後目標搬送量に基づいて搬送動作を実行させる。このとき、コントローラ60は、補正値を該補正値の適用範囲に応じて適用する。以下、本印刷中における補正値の適用について、より具体的に説明する。
【0152】
本実施形態では、ある搬送動作における目標移動区間が、ある補正値の適用範囲と重なりを有する場合、前記ある補正値が前記ある搬送動作に対して適用される。つまり、ある補正値の適用範囲の下流側境界位置よりも上流側に位置する位置から、当該適用範囲の上流側境界位置よりも下流側に位置する位置までの目標移動区間を紙に移動させるための搬送動作に対して、前記ある補正値が適用される。以下では、補正値の種類(平均補正値Ct、補正値Ck、及び、補正値Cb)毎に補正値の適用例について説明する。
【0153】
<平均補正値Ctによる補正>
先ず、平均補正値Ct(i)による補正について具体的に説明する。
平均補正値Ct(i)の適用範囲は、パターンP(i)形成時の理論位置からパターンP(i+1)形成時の理論位置までの範囲、となる。そして、本印刷時のパスj−1とパスjとの間の搬送動作における紙の目標移動区間(j回目の搬送動作における目標移動区間であって、理論位置Q(j−1)から理論位置Q(j)までの区間)が平均補正値Ct(i)の適用範囲と重なりを有する場合、平均補正値Ct(i)がj回目の搬送動作に対して適用される。以下、図21A乃至図21Dを参照しながら、平均補正値Ct(i)の適用例について具体的に説明する。図21A乃至図21Dは、平均補正値Ct(i)の適用例についての説明図である。
【0154】
平均補正値Ct(i)の適用の第一例は、図21Aに示すように、パスj−1における理論位置Q(j−1)が補正値Ct(i)の適用範囲の上流側境界位置と一致し、かつ、パスjにおける理論位置Q(j)が適用範囲の下流側境界位置と一致するケースである。本ケースでは、コントローラ60は、平均補正値Ct(i)により、j回目の搬送動作における補正前目標搬送量F(j)を補正する。
【0155】
平均補正値Ct(i)の適用の第二例は、図21Bに示すように、理論位置Q(j−1)と理論位置Q(j)とが、ともに補正値Ct(i)の適用範囲内にあるケースである。本ケースでは、コントローラ60は、補正前目標搬送量F(j)と平均補正値Ct(i)の適用範囲の搬送方向長さLとの比F(j)/L、をCt(i)に掛けた値を補正値とする。そして、コントローラ60は、当該補正値により補正前目標搬送量F(j)を補正する。
【0156】
平均補正値Ct(i)の適用の第三例は、図21Cに示すように、理論位置Q(j−1)が平均補正値Ct(i)の適用範囲内にあり、かつ、理論位置Q(j)が平均補正値Ct(i+1)の適用範囲内にあるケースである。すなわち、j回目の搬送動作における目標移動区間が2つの平均補正値Ct(i)、Ct(i+1)の適用範囲に亘る場合である。ここで、補正前目標搬送量F(j)のうち、平均補正値Ct(i)の適用範囲内での搬送量をFxとし、平均補正値Ct(i+1)の適用範囲内での搬送量をFyとする。また、平均補正値Ct(i)の適用範囲の搬送方向長さをLxとし、平均補正値Ct(i+1)の適用範囲の搬送方向長さをLyとする。本ケースでは、コントローラ60は、Ct(i)にFx/Lxを掛けた値と、Ct(i+1)にFy/Lyを掛けた値との和を補正値とする。そして、コントローラ60は、当該補正値により補正前目標搬送量F(j)を補正する。
【0157】
平均補正値Ct(i)の適用の第四例は、図21Dに示すように、理論位置Q(j−1)が平均補正値Ct(i−1)の適用範囲内にあり、パスjにおける理論位置Q(j)が平均補正値Ct(i+1)の適用範囲内にあるケースである。すなわち、j回目の搬送動作における目標移動区間が3つの平均補正値Ct(i−1)、Ct(i)、Ct(i+1)の適用範囲に亘る場合である。ここで、補正前目標搬送量F(j)のうち、平均補正値Ct(i−1)の適用範囲内での搬送量をFxとし、平均補正値Ct(i+1)での搬送量をFyとする。また、平均補正値Ct(i−1)の適用範囲の搬送方向長さをLxとし、平均補正値Ct(i+1)の適用範囲の搬送方向長さをLyとする。本ケースでは、コントローラ60は、Ct(i−1)にFx/Lxを掛けた値と、Ct(i)と、Ct(i+1)にFy/Lyを掛けた値との総和を補正値とする。そして、コントローラ60は、当該補正値により補正前目標搬送量F(j)を補正する。
【0158】
以上のように、コントローラ60は、補正前目標搬送量F(j)を平均補正値Ct(i)により補正し、該補正前目標搬送量F(j)を補正した補正後目標搬送量に基づいてj回目の搬送動作を実行させる。これにより、前述したDC成分の搬送誤差が補正される。また、各平均補正値Ct(i)の適用範囲が1/8インチ毎に設定されているため、紙とヘッド41との相対位置に応じて変化するDC成分の搬送誤差を的確に補正することができる。
【0159】
<補正値Ckによる補正>
次に、蹴飛ばし用の補正値Ckによる補正について説明する。
補正値Ckの適用範囲は、前述したように、蹴飛ばし発生範囲(すなわち、パターンP(m)形成時の理論位置からパターンP(m+1)形成時の理論位置までの範囲)である。そして、補正値Ckは、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作に対して適用される。
【0160】
ところで、搬送量調整処理により、本印刷において蹴飛ばしが発生し得る搬送動作は、1回のみ実行されることになる。つまり、本印刷において補正値Ckが適用される搬送動作は1回のみとなる。これは、搬送量調整処理により、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作における目標移動区間を蹴飛ばし発生範囲を跨ぐ区間になるように決定したためである。このような意味で、搬送量調整処理は、蹴飛ばし用の補正値Ckが適用される搬送動作における目標移動区間としての、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作における目標移動区間を決定する処理であると言える。なお、蹴飛ばし用の補正値Ckが適用される搬送動作は、当然ながら、該搬送動作の補正前目標搬送量を補正値Ckにより補正した補正後目標搬送量に基づいて実行される搬送動作である。
【0161】
また、紙の蹴飛ばしが発生し得る搬送動作における目標移動区間と補正値Ckの適用範囲との位置関係から、該補正値Ckは、前述した平均補正値Ct(i)の適用例のうちの第四例と同様の手順により適用される。つまり、コントローラ60は、Ct(i)、Ck、及び、Cbを用いて計算したときの値を補正値として、該補正値により前記蹴飛ばしが発生し得る搬送動作の補正前目標搬送量(すなわち、第三位置から第四位置まで紙を搬送するための補正前目標搬送量)を補正する。これにより、蹴飛ばしによる搬送誤差を適切に補正して紙を適切に搬送することが可能になる。
【0162】
蹴飛ばしによる搬送誤差に対する補正の効果についてより詳しく説明する。
前述したように、搬送量調整処理を実施することにより、装置の不具合等の外乱が生じない限り、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作の実行時に蹴飛ばしが確実に発生し、該蹴飛ばしによる搬送誤差も生じるようになる。この結果、蹴飛ばしが発生する際に蹴飛ばし用の補正値Ckが適用されることになる。このため、補正値Ckによる補正効果が適切に発揮され、蹴飛ばしによる搬送誤差も適切に補正される。
【0163】
さらに、前述したように、搬送量調整処理を実施することにより、補正値Ckが適用される搬送動作は、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作に限定される。ここで、仮に補正値Ckが複数の搬送動作に対して適用されることを想定すると、当該複数の搬送動作中のある搬送動作の実行時に蹴飛ばしが発生していないにもかかわらず、当該ある搬送動作に対して蹴飛ばし用の補正値Ckが適用されることになる。すなわち、補正値Ckを適用すべきではない搬送動作に対しても該補正値Ckが適用されることになる。この結果、該補正値Ckの補正効果が有効に発揮されずに、本印刷における紙の搬送を却って阻害してしまう。これは、蹴飛ばしによる搬送誤差が例えば、DC成分の搬送誤差よりも大きく、蹴飛ばし用の補正値Ckも他の補正値(例えば、平均補正値Ct(i))に比べて大きな値となるためである。
【0164】
これに対し、本実施形態では、搬送量調整処理により補正値Ckが適用される搬送動作が1回に限定され、かつ、該搬送動作の実行時に蹴飛ばしが確実に発生するようになるため、複数の搬送動作に対する補正値Ckの適用を回避し、該補正値Ckが該補正値Ckを適用すべき搬送動作に対してのみ適用される。つまり、該補正値Ckの補正効果が有効に発揮されることになる。
【0165】
<補正値Cbによる補正>
次に、補正値Cbによる補正について説明する。補正値Cbは、その適用範囲がパターンP(m+1)の形成時におけるテストシートTSの理論位置から搬送方向下流側の範囲であり、本印刷中、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作、及び、後端印刷の各搬送動作に対して適用される。そして、コントローラ60は、後端印刷の各搬送動作を実行させるときには、補正値Cbにより補正前目標搬送量F(i)を補正し、補正された補正後目標搬送量に基づいて搬送動作を実行させる。このように、コントローラ60が補正値Cbにより補正した補正後搬送量に基づいて後端印刷の各搬送動作を実行させることにより、当該各搬送動作における搬送誤差を的確に補正することが可能になる。なお、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作については、前述した通りであるので、説明を省略する。
【0166】
===本実施形態の事前処理の有効性について===
上記の実施形態では、本印刷の事前処理として、補正値取得処理に先立って蹴飛ばし発生範囲を決定した後、補正値取得処理と搬送量調整処理を実施することとした。また、搬送量調整処理では、通常印刷において最初に実行される搬送動作の補正前目標搬送量を調整して、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作における目標移動区間を、該目標移動区間が蹴飛ばし発生範囲を跨ぐ区間になるように決定することとした。これにより、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作における目標移動区間を適切に決定することが可能になる。以下、本実施形態の事前処理の有効性について説明する。
【0167】
『背景技術』の項で説明したように、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作における目標移動区間を決定する方策としては、頭出し位置(換言すると、本印刷の搬送動作のうち、初回の搬送動作の補正前目標搬送量F(1))を調整することも考えられる。すなわち、図22に示すように、頭出し位置を調整すると、その調整分だけ、パス2以降の各パスにおける紙の理論位置を搬送方向においてずらすことが可能になる。これにより、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作における目標移動区間を適切な区間(蹴飛ばし発生範囲を跨ぐ区間)に決定することが可能になる。図22は、頭出し位置を調整した場合の図であり、図20に対応した図である。
【0168】
一方、頭出し位置は、本印刷を適切に実施する上で適正な位置に設定されなければならない。具体的に説明すると、本印刷として縁有り印刷が実施される場合、頭出し位置は、紙の先端及び後端から所定の長さ分の余白が設けられるように初回のドット形成動作を開始させるための位置でなければならない。一方、縁無し印刷が実施される場合、頭出し位置は、プラテン印刷が回避させるための位置でなければならない。このような頭出し位置に対する制約条件の下で頭出し位置を調整すると、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作における目標移動区間を蹴飛ばし発生範囲を跨ぐ区間になるように決定することができない可能性もある。
【0169】
そこで、本実施形態では、頭出し位置の調整の代替策として、通常印刷において最初に実行される搬送動作の補正前目標搬送量を調整して、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作における目標移動区間を決定することとした。かかる調整によれば、上記の制約条件に拘束されることなく、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作における目標移動区間を蹴飛ばし発生範囲を跨ぐ区間に決定することが可能になる。
【0170】
また、本実施形態の搬送量調整処理では、通常印刷において最初に実行される搬送動作の補正前目標搬送量を調整することとした。但し、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作における目標移動区間を適切に決定する観点から言えば、上記以外の調整も考えられる。つまり、本印刷において、紙が頭出し位置に位置決めされてから該紙が蹴飛ばし発生範囲内を移動するようになるまでの間に実行される搬送動作であれば、いずれの搬送動作の補正前目標搬送量F(i)を調整することとしてもよい。かかる搬送動作に該当する限り、例えば、通常印刷において2回目以降に実行される搬送動作の補正前目標搬送量F(i)を調整することとしてもよい。
【0171】
しかし、通常印刷において2回目以降に実行される搬送動作の補正前目標搬送量F(i)を調整すると、通常印刷の途中に補正前目標搬送量F(i)が変化することになる。このため、ラスタラインの各々に対するノズルの割り当て方の変化パターンが通常印刷の途中に切り替わってしまう場合がある。すなわち、前記変化パターンが切り替わる時点が搬送量調整処理の実施前後で増えることがある。一方、前記変化パターンの切り替わりは、印刷画像の画質に影響を及ぼす。そして、前記変化パターンが切り替わる時点が増え、特に通常印刷の途中で前記変化パターンが切り替わると、前記影響が前記画質に顕著に現れてしまう。つまり、上記の調整を実施した場合には、該調整によって前記影響が顕在化する虞がある。
【0172】
これに対して、本実施形態のように、通常印刷において最初における搬送動作の補正前目標搬送量を調整すれば、前記影響の顕在化を抑制することが可能である。具体的に説明すると、本実施形態では、先端印刷から通常印刷に移行する直後、すなわち、補正前目標搬送量F(i)が必然的に変化する直後の該補正前目標搬送量F(i)を調整する。このため、前記変化パターンが切り替わる時点については、搬送量調整処理の実施前後で変化しない。したがって、搬送量調整処理の実施に伴う前記影響の顕在化が抑制されることになる。
【0173】
また、本実施形態では、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作における目標移動区間を、該目標移動区間の搬送方向中央位置が蹴飛ばし発生範囲の搬送方向中央位置と一致するように、決定することとした。これにより、前述のように、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作の実行時において、実際に紙が移動する区間が前記目標移動区間からずれたとしても、蹴飛ばしを確実に発生させることが可能になる。この結果、蹴飛ばし用の補正値Ckによる補正効果を有効に発揮させることが可能になる。
【0174】
===複数の種類の紙に対する事前処理===
上記の実施形態では、1種類の紙について、蹴飛ばし発生範囲を決定した後に、本印刷の搬送動作のうち、通常印刷において最初に実行される搬送動作の補正前目標搬送量を調整して、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作における目標移動区間を決定する例について説明した。
【0175】
一方、プリンタ1を用いて、互いに種類(例えば、紙質や紙サイズ)が異なる複数の紙に画像を印刷する場合がある。ここで、紙の種類(特に、紙のサイズ)が異なると、プリンタ1内における紙の搬送経路や蹴飛ばし発生範囲の搬送方向における位置が種類毎に異なる可能性がある。つまり、図23に示すように、本印刷の搬送動作における目標移動区間のうち、蹴飛ばし発生範囲と重なりを有する目標移動区間(すなわち、第三位置から第四位置までの目標移動区間)が前記種類毎に異なることもある。図23は、紙サイズが異なる2つの紙A、Bに対して、それぞれ実施した本印刷の様子を示す図である。
【0176】
したがって、プリンタ1を用いて複数の種類の紙に画像を印刷する場合には、上記の事前処理を前記種類毎に実施すること(他の例)が考えられる。以下、他の例について説明する。
【0177】
他の例では、先ず、既述の手順により適用範囲決定ステップを紙の種類毎に実施する。すなわち、他の例では、蹴飛ばし発生範囲を前記種類毎に決定する。次に、補正値取得処理を前記種類毎に実施する。具体的に説明すると、紙の種類別に、前記適用範囲決定ステップにて決定された複数の範囲の該範囲毎に補正値を取得する。これは、プリンタの搬送特性(換言すると、搬送動作における搬送誤差)が紙の種類に応じて変化する可能性があるためである。そして、前記種類別に補正値が取得される結果、メモリ63には、補正値のテーブル(図16参照)が前記種類別に作成され、該種類に対応付けられて記憶されるようになる。
【0178】
補正値取得処理の終了後、搬送量調整処理を前記種類毎に実施する。つまり、前記種類毎に、本印刷の通常印刷において最初に実施される搬送動作の補正前目標搬送量を調整して、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作における目標移動区間を前記種類毎に、蹴飛ばし発生範囲を跨ぐ区間となるように決定する。
【0179】
以下、紙の種類毎に搬送量調整処理を実施する手順について説明する。
【0180】
先ず、ある紙について、既述の手順により、蹴飛ばしが起きる搬送動作における目標移動区間を決定する。すなわち、ある紙に画像を印刷する本印刷を仮決めされた補正前目標搬送量F(i)に基づいて仮に実行した場合に、該ある紙に対応した蹴飛ばし発生範囲と重なりを有する目標移動区間を特定する。そして、特定された目標移動区間の搬送方向中央位置と蹴飛ばし発生範囲の搬送方向位置との距離Δを求め、通常印刷において最初に実行される搬送動作の補正前目標搬送量F(i)を仮決めされた当初の搬送量から前記距離Δに相当する分だけ調整する。これにより、ある紙に対応した蹴飛ばしが発生し得る搬送動作の目標移動区間が、当初の区間から前記距離Δに相当する分だけ移動する結果、該ある紙に対応した蹴飛ばし発生範囲を跨ぐ区間となるように決定される。以下、ある紙とは種類が異なる他の紙について、前記搬送量調整処理を上記の手順にて実施する。
【0181】
搬送量調整処理を前記種類毎に実施した後、メモリ63に記憶された補正前目標搬送量F(i)の情報のうち、通常印刷において最初に実施される搬送動作の補正前目標搬送量を示す情報が、仮決めされた当初の搬送量を示す情報から、調整後の搬送量を示す情報に更新される。そして、調整後の搬送量を示す情報は、前記種類毎にメモリ63に記憶される。すなわち、他の例では、プリンタ1により画像が印刷される紙の種類の数だけ、調整された補正前搬送量F(i)を示す情報がメモリ63に記憶されることになる。また、該情報は各種類を示す情報と対応付けられてメモリ63に記憶される。
【0182】
以上のように、他の例では、搬送量調整処理を紙の種類毎に実施して、該種類毎に、蹴飛ばしが発生し得る搬送動作における目標移動区間を決定する。これにより、プリンタ1により画像が印刷される紙の種類が複数あるときに該種類間で蹴飛ばし発生範囲が異なる場合を考慮して、蹴飛ばしが起きる搬送動作における目標移動区間を前記種類毎に適切に決定することが可能になる。
【0183】
===その他の実施の形態===
上記の各実施形態には、主として、本発明の移動区間決定方法について記載されているが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0184】
また、上記の実施形態では、媒体の一例として紙に液体を吐出する液体吐出処理に対して、搬送動作における目標移動区間を決定する方法について説明した。しかし、これに限られるものではなく、他の媒体(例えば、布、フィルム、基盤など)に液体を吐出する液体吐出処理の搬送動作における目標移動区間、を決定する場合にも本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】プリンタ1の全体構成のブロック図である。
【図2】図2Aは、プリンタ1の全体構成の概略図である。図2Bは、プリンタ1の全体構成の断面図である。
【図3】ノズル配列を示す図である。
【図4】印刷処理の流れ図である。
【図5】搬送動作の制御機構を含む搬送ユニット20を示す図である。
【図6】補正値取得処理のフローチャートである。
【図7】テストパターン印刷の様子を示す図である。
【図8】スキャナ150の内部構成を示す模式図である。
【図9】図9Aは、基準シートSSを示した図である。図9Bは、原稿台ガラス152にテストシートTSと基準シートSSをセットしたときの様子を示した図である。
【図10】補正値を算出するステップのフローチャートである。
【図11】図11Aは、各パターンの位置を算出する際に用いられる範囲を示す図である。図11Bは、パターンの位置の算出についての説明図である。
【図12】算出されたパターンの位置の説明図である。
【図13】テストパターンのi番目のパターンの絶対位置の算出に関する説明図である。
【図14】紙の搬送経路内に設定された複数の範囲、及び、該範囲毎に求められた補正値を示す図である。
【図15】テストパターン中の各パターンと平均補正値Ctとの関係についての説明図である。
【図16】補正値のテーブルを示した図である。
【図17】メモリ63に記憶された、本印刷の各搬送動作に関する情報の説明図である。
【図18】各搬送動作に関する情報に基づいて実施される本印刷の様子を示した図である。
【図19】ラスタラインとノズルの関係の説明図である。
【図20】調整後の補正前目標搬送量F(i)に基づいて実施される本印刷の様子を示した図である。
【図21】図21A及び図21Bは、頭出し位置の調整量を求めるための具体的方法の説明図である。
【図22】頭出し位置を調整した場合の図である。
【図23】紙サイズが異なる2つの紙A、Bに対して、それぞれ本印刷を実施した様子を示す図である。
【符号の説明】
【0186】
1 プリンタ、110 コンピュータ、20 搬送ユニット、
21 給紙ローラ、22 PFモータ、23 上流側搬送ローラ、
23a 紙送りローラ、23b 従動ローラ、24 プラテン、
25 下流側搬送ローラ、25a 排紙ローラ、25b 従動ローラ、
30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、32 キャリッジモータ、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、50 検出器群、
51 リニア式エンコーダ、52 ロータリー式エンコーダ、
53 紙検出センサ、54 光学センサ、60 コントローラ、
61 インターフェース、62 CPU、63 メモリ、
64 ユニット制御回路、150 スキャナ、151 上蓋、
152 原稿台ガラス、153 画像読取センサ、
154 案内バー、155 キャリッジ、156 移動機構、
G 原稿、TS テストシート、SS 基準シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側搬送ローラ及び下流側搬送ローラの双方により挟持される際に媒体が搬送方向において位置する第一位置から前記双方のうちの一方のみにより挟持される際に媒体が前記搬送方向において位置する第二位置までの範囲、を決定するステップと、
前記双方のうちの少なくとも一方により媒体が搬送される搬送動作と、媒体に液体が吐出される吐出動作と、が繰り返し実行される液体吐出処理の該搬送動作における媒体の目標移動区間のうち、
前記第二位置よりも前記搬送方向において上流側に位置する第三位置から前記第一位置よりも前記搬送方向において下流側に位置する第四位置までの該目標移動区間、を決定するステップと、
を有する移動区間決定方法であって、
前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を決定するステップでは、
前記吐出動作の開始時に媒体が位置決めされる、前記搬送方向における位置決め位置、
よりも前記搬送方向において下流側に位置する第五位置から前記第三位置よりも前記搬送方向において上流側に位置する第六位置までの前記目標移動区間、の前記搬送方向における長さを調整して、
前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間が前記第一位置から前記第二位置までの前記範囲を跨ぐ区間となるように、該目標移動区間を決定することを特徴とする移動区間決定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の移動区間決定方法において、
前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を決定するステップでは、
前記第三位置と前記第四位置との中間位置が前記第一位置と前記第二位置との中間位置と一致するように、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を決定することを特徴とする移動区間決定方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の移動区間決定方法において、
前記液体吐出処理では、
媒体の中央部に液体が吐出される通常液体吐出処理と、
前記通常液体吐出処理よりも前に実施され、媒体の先端部に液体が吐出される先端液体吐出処理であって、該先端液体吐出処理の前記搬送動作における前記目標移動区間の前記長さが、前記通常液体吐出処理の前記搬送動作における前記目標移動区間の前記長さよりも短い先端液体吐出処理と、
が実施され、
前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を決定するステップでは、
前記第五位置から前記第六位置までの前記目標移動区間の前記長さとして、
前記通常液体吐出処理の前記搬送動作のうち、最初に実行される前記搬送動作における前記目標移動区間の前記長さを調整して、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を決定することを特徴とする移動区間決定方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の移動区間決定方法において、
前記第一位置から前記第二位置までの前記範囲を決定するステップでは、
媒体を搬送するための補正前目標搬送量を補正するための補正値が対応付けられた、前記第一位置から前記第二位置までの前記範囲を決定し、
前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を決定するステップでは、
前記第三位置から前記第四位置まで媒体を搬送するための前記補正前目標搬送量を前記補正値により補正した補正後目標搬送量、に基づいて実行される前記搬送動作における前記目標移動区間としての、前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を決定することを特徴とする移動区間決定方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の移動区間決定方法において、
前記第一位置から前記第二位置までの前記範囲を決定するステップでは、
前記第一位置から前記第二位置までの前記範囲を複数の種類の媒体の該種類毎に決定し、
前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間を決定するステップでは、
前記第五位置から前記第六位置までの前記目標移動区間の前記長さ、を前記種類毎に調整して、
前記第三位置から前記第四位置までの前記目標移動区間が前記第一位置から前記第二位置までの前記範囲を跨ぐ区間となるように、該目標移動区間を前記種類毎に決定することを特徴とする移動区間決定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−137250(P2009−137250A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318758(P2007−318758)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】