移動受信端末および中継装置
【課題】映像データおよび音声データの正常受信が再開した場合に、映像データおよび音声データの同期再生を迅速に再開することができる移動受信端末20を提供する。
【解決手段】本発明の移動受信端末20は、受信したPCRの受信タイミングとその値の履歴からPCRの受信タイミングとその値の関係を直線近似して次のPCRの受信タイミングとその値を推定するPCR推定部209と、次にPCRを受信すべきタイミングでPCRを受信しなかった場合に、受信しなかったPCRに代えて、推定したPCRをPCR比較部207に供給するPCR補間部203と、供給されたPCRを用いて内部クロックを補正するPCR比較部207とを備える。
【解決手段】本発明の移動受信端末20は、受信したPCRの受信タイミングとその値の履歴からPCRの受信タイミングとその値の関係を直線近似して次のPCRの受信タイミングとその値を推定するPCR推定部209と、次にPCRを受信すべきタイミングでPCRを受信しなかった場合に、受信しなかったPCRに代えて、推定したPCRをPCR比較部207に供給するPCR補間部203と、供給されたPCRを用いて内部クロックを補正するPCR比較部207とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタル放送を受信して再生する移動受信端末、または、有線通信回線を介して受信したディジタル放送を電波として出力する中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ISDB(Integrated Services Digital Broadcasting)−T方式のいわゆるワンセグ放送を受信して再生する受信端末が知られている。ISDB−Tでは、送信局が、内部クロックの値を示すPCR(Program Clock Reference)を定期的に受信端末へ送信し、受信端末は、通常、PLL(Phase Lock Loop)を用いて、端末内部のクロックを受信したPCRの値で補正することで、送信局側の内部クロックと受信端末側の内部クロックとの同期をとっている。
【0003】
また、送信局は、自局の内部クロックに基づいて映像データおよび音声データのそれぞれのデータの出力タイミングを指定するPTS(Presentation Time Stamp)を映像データおよび音声データと共に受信端末へ送信し、受信端末は、PTSで指定されたタイミングで、対応するビデオデータまたはオーディオデータを出力することにより、ビデオデータとオーディオデータとを、送信局側が意図したタイミングで同期再生することができる。
【0004】
ところで、ワンセグ放送は、受信エリアが広く、移動しながら受信しても再生された画像や音声の画像の乱れが少ないことから、受信端末は、小型化および軽量化して持ち運び易いようにされることが好ましい。小型化においては、受信機能を実現する部品のワンチップ化が有効であるが、従来はPLLが用いられ、PLLに関連する部品が大きいために、ワンチップ化が困難であった。
【0005】
これを解決する方法として、下記の特許文献1には、PLLを用いることなくビデオデータおよびオーディオデータの同期再生を可能とする技術が開示されている。当該特許文献1では、受信端末は、PCRを送信局から受信する都度、PCRの値をレジスタ(PCR_REG_A)に格納し、前回受信してレジスタ(PCR_REG_B)に格納していたPCRの値との差分を算出する。また、受信端末は、PCRを送信局から受信する都度、その時点での受信端末の内部クロックのカウント値をレジスタ(Local_REG_A)に格納し、前回のPCRの受信時にレジスタ(Local_REG_B)に格納していた内部クロックの値との差分を算出する。
【0006】
そして、受信端末は、PCRを送信局から受信する都度、PCRの値の差分と内部クロックのカウント値の差分との差分を複数のシフトレジスタ(DIFF_0〜N)に順次格納し、複数のシフトレジスタに格納されている差分の平均値を周波数誤差データとして算出する。そして、受信端末は、算出した周波数誤差データを用いてPTSの値を補正することにより、PLLを用いることなくビデオデータおよびオーディオデータの同期再生を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−311522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記した特許文献1の技術では、送信局側から送信されたPCRを受信端末が定期的に漏れなく受信することが前提となっており、今回受信したPCRの値と前回受信したPCRの値との差分と、今回のPCRの受信時の内部クロックの値と前回のPCRの受信時の内部クロックの値との差分との差分の値は、PCRを受信するたびにそれほど大きく変化することはない。
【0009】
しかし、受信端末は、持ち運ばれることが多く、ワンセグ放送の電波が障害物等により遮られると、PCRを受信できない場合がある。PCRを1つ以上受信しなかった場合、その後にPCRを受信すると、今回受信したPCRの値と前回受信したPCRの値との差分は、PCRを漏れなく受信し続けた場合の値よりも大きくなり、今回のPCRの受信時の内部クロックの値と前回のPCRの受信時の内部クロックの値との差分も、PCRを漏れなく受信し続けた場合の値よりも大きくなる。さらには、PCRの値の差分と内部クロックのカウント値の差分との差分も、PCRを漏れなく受信し続けた場合の値よりも大きくなる。
【0010】
これにより、PCRを1つ以上受信しなかった場合には、周波数誤差データの値が大きくなリ、受信端末は、内部クロックの周波数がそれほどずれていないにもかかわらず、あたかも大きくずれているかのように認識してしまい、ビデオデータおよびオーディオデータの同期再生が正しく行われない場合がある。この状況は、シフトレジスタの数が多いほど、長く続くことになる。従って、受信端末は、電波の受信環境が悪化した後に、電波の受信環境が良化して、PCRのデータ、ビデオデータ、およびオーディオデータの正常な受信が再開したとしても、しばらくの間は、ビデオデータおよびオーディオデータの同期再生を正しく行うことができない場合がある。
【0011】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、受信端末においてビデオデータおよびオーディオデータの正常受信が再開した場合に、ビデオデータおよびオーディオデータの同期再生を迅速に再開することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、PCRの受信タイミングとその値の履歴からPCRの受信タイミングとその値の関係を直線近似して次のPCRの受信タイミングとその値を推定し、次にPCRを受信すべきタイミングでPCRを受信しなかった場合に、受信しなかったPCRに代えて、推定したPCRを出力する。
【0013】
例えば、本発明の第1の態様は、ディジタル放送を受信して再生する移動受信端末であって、中継局から送信されたディジタル放送からTSパケットを抽出して出力するTSパケット出力手段と、逐次入力されるPCRの値と当該移動受信端末の内部クロックに基づくカウンタの値とを比較して、PCRによって再生されるクロックと当該内部クロックとの誤差を示す周波数誤差データを出力するPCR比較手段と、PCR比較手段から出力された周波数誤差データを用いて、TSパケット出力手段から出力されたTSパケットに含まれている映像データまたは音声データのPTSを補正し、補正したPTSに基づいて映像データまたは音声データの出力タイミングを制御する出力タイミング制御手段と、TSパケット出力手段から逐次出力されるTSパケットに含まれるPCRを収集し、過去に収集した複数のPCRの受信時刻毎の値の変化を直線近似し、次に受信すべきPCRの受信時刻および値を、近似した直線上に推定するPCR推定手段と、TSパケットがTSパケット出力手段から予め定められた時間間隔で出力されているか否かを監視し、出力されるべきタイミングでTSパケットがTSパケット出力手段から出力されている場合に、TSパケット出力手段から出力されたTSパケットに含まれるPCRをPCR比較手段に供給し、出力されるべきタイミングでTSパケットがTSパケット出力手段から出力されない場合に、PCR推定手段から出力されたPCRをPCR比較手段に供給するPCR補間手段とを備えることを特徴とする移動受信端末を提供する。
【0014】
また、本発明の第2の態様は、有線通信回線を介して受信したディジタル放送を電波として出力する中継装置であって、有線通信回線を介して受信したディジタル放送からTSパケットを抽出して出力するTSパケット出力手段と、TSパケット出力手段から逐次出力されるTSパケットに含まれるPCRを収集し、過去に収集した複数のPCRの受信時刻毎の値の変化を直線近似し、次に受信すべきPCRの受信時刻および値を、近似した直線上に推定するPCR推定手段と、PCR推定手段からPCRが出力された場合に、当該PCRを含むTSパケットを生成して出力し、PCR推定手段からPCRが出力されていない場合に、無効なデータを含むTSパケットを生成して出力するNULLパケット生成手段と、入力されたTSパケットを所定のフォーマットに変換して電波として送信する送信手段と、TSパケットがTSパケット出力手段から予め定められた時間間隔で出力されているか否かを監視し、出力されるべきタイミングでTSパケットがTSパケット出力手段から出力されている場合に、TSパケット出力手段から出力されたTSパケットを送信手段に入力し、出力されるべきタイミングでTSパケットがTSパケット出力手段から出力されない場合に、NULLパケット生成手段から出力されたTSパケットを送信手段に入力する欠落パケット検出手段とを備えることを特徴とする中継装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、移動受信端末においてビデオデータおよびオーディオデータの正常受信が再開した場合に、ビデオデータおよびオーディオデータの同期再生を迅速に再開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態に係るディジタル放送システム10の構成を示すシステム構成図である。
【図2】第1の実施形態における移動受信端末20の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図3】PCR受信履歴格納部210に格納されるデータの構造の一例を示す図である。
【図4】PCR推定部209によって次の擬似PCRの受信時刻および値が推定される過程を説明するための概念図である。
【図5】PCR比較部207に供給されるPCRのデータを説明するための概念図である。
【図6】PCR補間部203の動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】PCR推定部209の動作の一例を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施形態に係るディジタル放送システム50の構成を示すシステム構成図である。
【図9】第2の実施形態における中継装置60の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図10】第2の実施形態における移動受信端末70の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図11】送信部64に供給されるデータを説明するための概念図である。
【図12】欠落パケット検出部63の動作の一例を示すフローチャートである。
【図13】NULLパケット生成部66の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0018】
図1は、第1の実施形態に係るディジタル放送システム10の構成を示すシステム構成図である。ディジタル放送システム10は、放送局11、中継装置12、および1台以上の移動受信端末20を備える。放送局11で作成された放送コンテンツは、中継装置12を介して、ISDB−T方式のディジタル放送としてアンテナ13から出力される。それぞれの移動受信端末20は、中継装置12を介して送信されたディジタル放送を受信して再生する。
【0019】
図2は、第1の実施形態における移動受信端末20の機能構成の一例を示すブロック図である。移動受信端末20は、ビデオデコーダ200、ビデオバッファ201、DAC(Digital to Analog Converter)202、PCR補間部203、チューナ204、TS(Transport Stream)パケット出力部205、スイッチ206、PCR比較部207、出力タイミング制御部208、PCR推定部209、PCR受信履歴格納部210、オーディオデコーダ211、オーディオバッファ212、およびDAC213を有する。
【0020】
PCR受信履歴格納部210には、例えば図3に示すように、それぞれのPCR値2101が、当該PCRを受信した受信時刻2100に対応付けて格納される。チューナ204は、アンテナ21を介して受信したディジタル放送電波を復調し、復調結果をTSパケット出力部205へ出力する。
【0021】
TSパケット出力部205は、チューナ204から出力された復調結果についてデインタリーブならびに誤り検出および訂正等の処理を行って、TSパケットを復元する。そして、TSパケット出力部205は、復元したTSパケットのPID(Program ID)を参照して、映像データを含むTSパケットをビデオデコーダ200へ、音声データを含むTSパケットをオーディオデコーダ211へ、PCRを含むTSパケットをスイッチ206およびPCR推定部209へ、それぞれ出力する。
【0022】
また、無効なデータを含むNULL_TSパケットを復元した場合、TSパケット出力部205は、復元したNULL_TSパケットを破棄する。また、TSパケット出力部205は、TSパケットを復元する都度、TSパケットを受信した旨をPCR補間部203に通知する。
【0023】
ビデオデコーダ200は、TSパケット出力部205からTSパケットを受け取った場合に、当該TSパケットに含まれる映像データをデコードしてビデオバッファ201へ送ると共に、当該TSパケットに含まれている、映像データの出力タイミングを示すPTSを出力タイミング制御部208へ送る。ビデオバッファ201は、ビデオデコーダ200から受け取った映像データを蓄積し、出力タイミング制御部208からの指示に応じて映像データをDAC202を介して表示装置22へ出力する。
【0024】
オーディオデコーダ211は、TSパケット出力部205からTSパケットを受け取った場合に、当該TSパケットに含まれる音声データをデコードしてオーディオバッファ212へ送ると共に、当該TSパケットに含まれている、音声データの出力タイミングを示すPTSを出力タイミング制御部208へ送る。オーディオバッファ212は、オーディオデコーダ211から受け取った音声データを蓄積し、出力タイミング制御部208からの指示に応じて音声データをDAC213を介してスピーカ23へ出力する。
【0025】
PCR比較部207は、スイッチ206を介してPCRを受け取った場合に、受け取ったPCRの値と、移動受信端末20の内部クロックに基づいて動作するカウンタの値とを比較して、PCRによって再生されるクロックと当該内部クロックとの誤差を示す周波数誤差データを算出し、算出した周波数誤差データを出力タイミング制御部208へ出力する。
【0026】
出力タイミング制御部208は、ビデオデコーダ200およびオーディオデコーダ211から受信したPTSの値を、PCR比較部207から受信した周波数誤差データに基づいて補正し、補正したPTSを用いて、ビデオバッファ201内の映像データの出力タイミングおよびオーディオバッファ212内の音声データの出力タイミングを制御する。なお、PCR比較部207および出力タイミング制御部208の動作については、特許文献1に記載されている公知の技術であるため、その詳細な説明は省略する。
【0027】
PCR推定部209は、TSパケット出力部205からPCRが出力された場合に、PCRの受信開始を認識し、PCRがTSパケット出力部205から出力された時刻を受信時刻として、当該受信時刻に対応付けて、TSパケット出力部205から出力されたPCRの値をPCR受信履歴格納部210に追加登録する。そして、PCR受信履歴格納部210内に2つ以上のPCRの値が登録された場合に、PCR推定部209は、例えば図4に示すように、横軸を受信時刻、縦軸をPCRの値とするグラフ上に、PCR受信履歴格納部210内のPCRの値をならべる。
【0028】
そして、PCR推定部209は、過去に収集した複数のPCR31(図4内の黒丸)の受信時刻毎の値の変化を直線30で近似する。直線近似の方法としては、例えば最小二乗法や回帰分析により求めた傾向線等が用いられる。この場合、平均傾向から大きく外れるデータ(例えば、平均から3σ(σは標準偏差)以上離れたデータ)がある場合は、そのデータを除去してから傾向線を求めるようにしてもよい。そして、PCR推定部209は、最新の受信時刻t1の時点までに受信した複数のPCR31に基づいて算出した直線30上に、次のPCRの受信予定時刻t2(例えば、受信時刻t1から約231ミリ秒後)の時点における擬似PCR32(図4の白丸)の受信時刻および値を推定し、推定した擬似PCR32の値を、当該擬似PCR32の受信予定時刻にスイッチ206へ出力する。
【0029】
また、PCR推定部209は、予め定められたPCRの受信間隔(例えば、約231ミリ秒±数ミリ秒)毎に、TSパケット出力部205からPCRが出力されたか否かを監視し、予め定められたPCRの受信間隔毎に、TSパケット出力部205からPCRが出力されなかった場合に、推定した擬似PCRの受信時刻および値をPCR受信履歴格納部210に追加登録する。
【0030】
これにより、TSパケット出力部205からPCRが出力されなくても、それまで2回以上PCRが出力されていれば、PCR推定部209は、前回推定した擬似PCRの受信時刻および値に基づいて、次に受信すべきPCRの値を擬似PCRとして推定することができる。
【0031】
PCR補間部203は、TSパケット出力部205からTSパケットを受信した旨を通知された場合に、TSパケットの受信開始を認識し、予め定められたTSパケットの送信間隔(例えば、TSパケットのビットレートが約32Mbpsである場合、約50μ秒±数μ秒)毎に、TSパケットを受信した旨がTSパケット出力部205から通知されたか否かを監視する。
【0032】
TSパケットを受信した旨が、予め定められたTSパケットの送信間隔毎にTSパケット出力部205から通知された場合、PCR補間部203は、TSパケット出力部205の出力がPCR比較部207に供給されていなければ、TSパケット出力部205の出力がPCR比較部207に供給されるようにスイッチ206を制御する。
【0033】
一方、TSパケットを受信した旨が、予め定められたTSパケットの送信間隔毎にTSパケット出力部205から通知されない場合、PCR補間部203は、PCR推定部209の出力がPCR比較部207に供給されていなければ、PCR推定部209の出力がPCR比較部207に供給されるようにスイッチ206を制御する。
【0034】
ここで、例えば、図5(a)に示すように、中継装置12からディジタル放送が送信されている場合に、図5(b)に示すように、時刻t3から時刻t4までの区間Aにおいて、ディジタル放送電波が障害物等に遮られて、移動受信端末20がディジタル放送電波を受信できなかった場合を例に、PCR比較部207に供給されるPCRについて説明する。
【0035】
PCR推定部209は、図5(c)に示すように、PCR受信履歴格納部210内の複数のPCRの受信時刻および値を用いて、順次、次の擬似PCRを推定して出力している。PCR補間部203は、図5(d)に示すように、時刻t3以前においては、TSパケットを受信すべきタイミングでTSパケットを受信した旨が通知されているため、TSパケット出力部205の出力をPCR比較部207に供給するようにスイッチ206を制御している。
【0036】
一方、時刻t3から時刻t4までの区間Aにおいては、PCR補間部203は、TSパケットを受信すべきタイミングでTSパケットを受信した旨が通知されていないことを検出して、PCR推定部209の出力をPCR比較部207に供給するようにスイッチ206を制御する。また、時刻t4以後においては、PCR補間部203は、TSパケットを受信すべきタイミングでTSパケットを受信した旨が通知されたことを検出して、TSパケット出力部205の出力をPCR比較部207に供給するようにスイッチ206を制御する。
【0037】
これにより、PCR比較部207に供給されるPCRは、図5(e)のように、時刻t3以前においては、TSパケット出力部205から出力されたPCRがPCR比較部207に供給され、時刻t3からt4までの区間Aにおいては、PCR推定部209から出力された擬似PCRがPCR比較部207に供給され、時刻t4以後においては、TSパケット出力部205から出力されたPCRがPCR比較部207に供給される。
【0038】
このように、ディジタル放送電波の受信環境が悪化して、PCR等を正常に受信できない期間が発生したとしても、その期間において、PCR補間部203は、PCR推定部209が生成した擬似PCRをPCR比較部207に供給する。そのため、PCR比較部207は、放送局11の内部クロックと移動受信端末20の内部クロックとのずれの算出精度の悪化を低く抑えることができる。これにより、出力タイミング制御部208は、ディジタル放送電波の受信環境が良化して、PCR、ビデオデータ、およびオーディオデータ等の正常受信が再開した場合に、映像および音声の同期再生を迅速に再開することができる。
【0039】
図6は、PCR補間部203の動作の一例を示すフローチャートである。なお、本フローチャートは、移動受信端末20の電源オン等の所定のタイミングで開始し、ディジタル放送の受信動作終了や移動受信端末20の電源オフ等の所定のタイミングで終了する。
【0040】
まず、PCR補間部203は、TSパケット出力部205からTSパケットを受信した旨が通知されたか否かを判定することにより、移動受信端末20がTSパケットの受信を開始したか否かを判定する(S100)。TSパケットの受信を開始していない場合(S100:No)、PCR補間部203は、TSパケットの受信を開始するまでステップS100に示した処理を実行する。
【0041】
一方、TSパケットの受信を開始した場合(S100:Yes)、PCR補間部203は、TSパケットを受信すべきタイミングでTSパケットを受信した旨がTSパケット出力部205から通知されたか否かを判定することにより、移動受信端末20が予め定められたタイミングで次のTSパケットを受信したか否かを判定する(S101)。
【0042】
予め定められたタイミングで次のTSパケットを受信した場合(S101:Yes)、PCR補間部203は、スイッチ206の状態を参照して、TSパケット出力部205の出力がPCR比較部207に供給されているか否かを判定する(S102)。TSパケット出力部205の出力がPCR比較部207に供給されている場合(S102:Yes)、PCR補間部203は、再びステップS101に示した処理を実行する。
【0043】
TSパケット出力部205の出力がPCR比較部207に供給されていない場合(S102:No)、PCR補間部203は、TSパケット出力部205の出力がPCR比較部207に供給されるようにスイッチ206を制御し(S103)、再びステップS101に示した処理を実行する。
【0044】
予め定められたタイミングで次のTSパケットを受信していない場合(S101:No)、PCR補間部203は、スイッチ206の状態を参照して、PCR推定部209の出力がPCR比較部207に供給されているか否かを判定する(S104)。PCR推定部209の出力がPCR比較部207に供給されている場合(S104:Yes)、PCR補間部203は、再びステップS101に示した処理を実行する。
【0045】
PCR推定部209の出力がPCR比較部207に供給されていない場合(S104:No)、PCR補間部203は、PCR推定部209の出力がPCR比較部207に供給されるようにスイッチ206を制御し(S105)、再びステップS101に示した処理を実行する。
【0046】
図7は、PCR推定部209の動作の一例を示すフローチャートである。なお、本フローチャートは、移動受信端末20の電源オン等の所定のタイミングで開始し、ディジタル放送の受信動作終了や移動受信端末20の電源オフ等のタイミングで終了する。
【0047】
まず、PCR推定部209は、TSパケット出力部205からPCRを2回受信したか否かを判定する(S200)。PCRを2回受信していない場合(S200:No)、PCR推定部209は、PCRを2回受信するまでステップS200に示した処理を実行する。一方、PCRを2回受信した場合(S200:Yes)、PCR推定部209は、受信したそれぞれのPCRの受信時刻および値をPCR受信履歴格納部210に登録する(S201)。
【0048】
次に、PCR推定部209は、図4で説明したように、過去に収集したPCR受信履歴格納部210内の複数のPCRの受信時刻毎の値の変化を直線で近似し(S202)、近似した直線上に、次にPCRを受信すべき受信時刻における擬似PCRの値を推定する(S203)。そして、PCR推定部209は、推定した擬似PCRの受信時刻において、推定した値の擬似PCRをスイッチ206へ出力する(S204)。
【0049】
次に、PCR推定部209は、予め定められたPCRを受信すべきタイミングで、TSパケット出力部205からPCRを受信したか否かを判定する(S205)。TSパケット出力部205からPCRを受信した場合(S205:Yes)、PCR推定部209は、TSパケット出力部205からPCRを受信した受信時刻に対応付けて、受信したPCRの値をPCR受信履歴格納部210に追加登録し(S206)、再びステップS202に示した処理を実行する。
【0050】
一方、TSパケット出力部205からPCRを受信しなかった場合(S205:No)、PCR推定部209は、ステップS203において推定した擬似PCRの値を、ステップS203において推定した受信時刻に対応付けてPCR受信履歴格納部210に追加登録し(S207)、再びステップS202に示した処理を実行する。
【0051】
以上、本発明の第1の実施形態について説明した。
【0052】
上記説明から明らかなように、本実施形態の移動受信端末20によれば、映像データおよび音声データの正常受信が再開した場合に、映像データおよび音声データの同期再生を迅速に再開することができる。
【0053】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0054】
図8は、第2の実施形態に係るディジタル放送システム50の構成を示すシステム構成図である。ディジタル放送システム50は、放送局51、中継装置60、および1台以上の移動受信端末70を備える。
【0055】
放送局51で作成された放送コンテンツは、ISDB−T用のMPEG2のTSパケットに変換されてUDPパケットに格納され、さらにIPフレームに格納されてインターネット等の通信回線52を介して中継装置60へ送られる。中継装置60は、通信回線52を介して受信したTSパケットをOFDM変調し、ディジタル放送電波としてアンテナ53を介して送信する。それぞれの移動受信端末70は、中継装置60から送信されたディジタル放送を受信して再生する。
【0056】
図9は、第2の実施形態における中継装置60の機能構成の一例を示すブロック図である。中継装置60は、UDPパケット受信部61、TSパケット出力部62、欠落パケット検出部63、送信部64、PCR推定部65、NULLパケット生成部66、スイッチ67、およびPCR受信履歴格納部68を有する。PCR受信履歴格納部68内に格納されるデータの構造は、図3を用いて説明した、第1の実施形態におけるPCR受信履歴格納部210と同様であるため、説明を省略する。
【0057】
UDPパケット受信部61は、通信回線52を介して受信したIPフレームからUDPパケットを抽出してTSパケット出力部62へ送る。TSパケット出力部62は、UDPパケット受信部61より受け取ったUDPパケットからMPEG2のTSパケットを抽出して欠落パケット検出部63、NULLパケット生成部66、およびスイッチ67へ送る。また、UDPパケット受信部61は、抽出したTSパケットの中で、PCRを含むTSパケットをPCR推定部65へ送る。
【0058】
送信部64は、スイッチ67を介して受け取ったTSパケットをOFDM変調し、ディジタル放送電波としてアンテナ53を介して送信する。PCR推定部65は、TSパケット出力部62からPCRを含むTSパケットを受け取った場合に、PCRの受信開始を認識し、PCRを含むTSパケットがTSパケット出力部205から出力された時刻を受信時刻として、当該受信時刻に対応付けて、TSパケット出力部205から出力されたTSパケットに含まれるPCRの値をPCR受信履歴格納部210に追加登録する。
【0059】
そして、PCR受信履歴格納部68内に2つ以上のPCRの値が登録された場合に、PCR推定部65は、次のPCRの受信予定時刻における擬似PCRの値を推定し、推定した擬似PCRの値を、当該擬似PCRの受信予定時刻にNULLパケット生成部66へ出力する。なお、PCR推定部65による擬似PCRの受信時刻および値の推定方法については、図4を用いて説明した第1の実施形態におけるPCR推定部209と同様であるため、説明を省略する。
【0060】
NULLパケット生成部66は、TSパケット出力部62からTSパケットを受け取った場合に、TSパケットの受信開始を認識し、予め定められたTSパケットの送信間隔(例えば、約19.2μ秒±数μ秒)毎に、無効なデータを含むNULL_TSパケットを生成する。そして、NULLパケット生成部66は、PCR推定部65から擬似PCRの値が出力されていない場合に、生成したNULL_TSパケットをスイッチ67へ出力する。一方、PCR推定部65から擬似PCRの値が出力された場合、NULLパケット生成部66は、生成したNULL_TSパケットに代えて、PCR推定部65から出力された擬似PCRを含むTSパケットを生成してスイッチ67へ出力する。
【0061】
欠落パケット検出部63は、TSパケット出力部62からTSパケットを受け取った場合に、TSパケットの受信開始を認識し、TSパケットが予め定められたTSパケットの送信間隔でTSパケット出力部62から出力されているか否かの監視を開始する。出力されるべきタイミングでTSパケットがTSパケット出力部62から出力されている場合、欠落パケット検出部63は、TSパケット出力部62から出力されたTSパケットが送信部64に入力されるようにスイッチ67を制御する。一方、出力されるべきタイミングでTSパケットがTSパケット出力部62から出力されない場合、欠落パケット検出部63は、NULLパケット生成部66から出力されたTSパケットが送信部64に入力されるようにスイッチ67を制御する。
【0062】
図10は、第2の実施形態における移動受信端末70の機能構成の一例を示すブロック図である。移動受信端末70は、ビデオデコーダ700、ビデオバッファ701、DAC702、チューナ703、TSパケット出力部704、PCR比較部705、出力タイミング制御部706、オーディオデコーダ707、オーディオバッファ708、およびDAC709を有する。
【0063】
チューナ703は、アンテナ71を介して受信したディジタル放送電波を復調し、復調結果をTSパケット出力部704へ出力する。TSパケット出力部704は、チューナ703から出力された復調結果についてデインタリーブならびに誤り検出および訂正等の処理を行って、TSパケットを復元する。そして、TSパケット出力部704は、復元したTSパケットのPIDを参照して、映像データを含むTSパケットを移動受信端末70へ、音声データを含むTSパケットをオーディオデコーダ707へ、PCRを含むTSパケットをPCR比較部705へ、それぞれ出力する。また、無効なデータを含むNULL_TSパケットを復元した場合、TSパケット出力部704は、復元したNULL_TSパケットを破棄する。
【0064】
ビデオデコーダ700は、TSパケット出力部704からTSパケットを受け取った場合に、当該TSパケットに含まれる映像データをデコードしてビデオバッファ701へ送ると共に、当該TSパケットに含まれている、映像データの出力タイミングを示すPTSを出力タイミング制御部706へ送る。ビデオバッファ701は、ビデオデコーダ700から受け取った映像データを蓄積し、出力タイミング制御部706からの指示に応じて映像データをDAC702を介して表示装置72へ出力する。
【0065】
オーディオデコーダ707は、TSパケット出力部704からTSパケットを受け取った場合に、当該TSパケットに含まれる音声データをデコードしてオーディオバッファ708へ送ると共に、当該TSパケットに含まれている、音声データの出力タイミングを示すPTSを出力タイミング制御部706へ送る。オーディオバッファ708は、オーディオデコーダ707から受け取った音声データを蓄積し、出力タイミング制御部706からの指示に応じて音声データをDAC709を介してスピーカ73へ出力する。
【0066】
PCR比較部705は、TSパケット出力部704からPCRを受け取った場合に、受け取ったPCRの値と、移動受信端末70の内部クロックに基づいて動作するカウンタの値とを比較して、PCRによって再生されるクロックと当該内部クロックとの誤差を示す周波数誤差データを算出し、算出した周波数誤差データを出力タイミング制御部706へ出力する。
【0067】
出力タイミング制御部706は、ビデオデコーダ700およびオーディオデコーダ707から受信したPTSの値を、PCR比較部705から受信した周波数誤差データに基づいて補正し、補正したPTSを用いて、ビデオバッファ701内の映像データの出力タイミングおよびオーディオバッファ708内の音声データの出力タイミングを制御する。なお、移動受信端末70の各機能は、特許文献1等に記載されている公知の技術であるため、その詳細な説明は省略する。
【0068】
ここで、中継装置60の内部処理について、図11を参照しながら説明する。ここでは、例えば、図11(a)に示すように、放送局51からディジタル放送のTSパケットが送信されている場合に、図11(b)に示すように、時刻t5からt6までの区間Bにおいて、通信回線52の輻輳等により一部のTSパケットが欠落して中継装置60に届かなかった場合を例に、送信部64に供給されるTSパケットについて説明する。
【0069】
PCR推定部65は、図11(c)に示すように、PCR受信履歴格納部68内の複数のPCRの受信時刻および値を用いて、順次、次の擬似PCRを推定して出力している。NULLパケット生成部66は、図11(d)に示すように、PCR推定部65から擬似PCRが出力されていない場合にはNULL_TSパケットを出力し、PCR推定部65から擬似PCRが出力された場合には擬似PCRを含むTSパケットを出力する。
【0070】
欠落パケット検出部63は、図11(e)に示すように、時刻t5以前においては、TSパケットを受信すべきタイミングでTSパケット出力部62からTSパケットが出力されているため、TSパケット出力部62の出力を送信部64に供給するようにスイッチ67を制御する。また、時刻t5から時刻t6の間の区間Bおいて、欠落パケット検出部63は、TSパケットを受信すべきタイミングでTSパケットを受信しなかったことを検出して、NULLパケット生成部66の出力を送信部64に供給するようにスイッチ67を制御する。また、時刻t6以後においては、欠落パケット検出部63は、TSパケットを受信すべきタイミングでTSパケットを受信したことを検出し、TSパケット出力部62の出力を送信部64に供給するようにスイッチ67を制御する。
【0071】
これにより、送信部64に供給されるTSパケットは、図11(f)のように、時刻t5以前においては、TSパケット出力部62から出力されたTSパケットが送信部64に供給され、時刻t5からt6までの区間Bにおいては、NULLパケット生成部66から出力された、擬似PCRを含むTSパケットまたはNULL_TSパケットが送信部64に供給され、時刻t6以後においては、TSパケット出力部62から出力されたTSパケットが送信部64に供給される。
【0072】
このように、通信回線52に輻輳が発生し、放送局51から送信されたTSパケットが欠落した場合であっても、欠落パケット検出部63は、PCR推定部65が生成した擬似PCRを含むTSパケットを送信部64に送信させる。そのため、移動受信端末70のPCR比較部705は、放送局51の内部クロックと移動受信端末70の内部クロックとのずれの算出精度の悪化を低く抑えることができる。
【0073】
これにより、移動受信端末70の出力タイミング制御部706は、通信回線52に輻輳が発生してTSパケットの欠落が発生した後に、中継装置60において、PCR、ビデオデータ、およびオーディオデータ等を含むTSパケットの正常受信が再開した場合に、映像および音声の同期再生を迅速に再開することができる。
【0074】
図12は、欠落パケット検出部63の動作の一例を示すフローチャートである。なお、本フローチャートは、中継装置60の電源オン等の所定のタイミングで開始し、中継装置60の電源オフ等の所定のタイミングで終了する。
【0075】
まず、欠落パケット検出部63は、TSパケット出力部62からTSパケットを受け取ったか否かを判定することにより、中継装置60がTSパケットの受信を開始したか否かを判定する(S300)。中継装置60がTSパケットの受信を開始していない場合(S300:No)、欠落パケット検出部63は、中継装置60がTSパケットの受信を開始するまでステップS300に示した処理を繰り返す。
【0076】
中継装置60がTSパケットの受信を開始した場合(S300:Yes)、欠落パケット検出部63は、予め定められた時間間隔でTSパケット出力部62からTSパケットを受信したか否かを判定する(S301)。予め定められた時間間隔でTSパケットを受信した場合(S301:Yes)、欠落パケット検出部63は、スイッチ67の状態を参照して、TSパケット出力部62の出力が送信部64に供給されているか否かを判定する(S302)。TSパケット出力部62の出力が送信部64に供給されている場合(S302:Yes)、欠落パケット検出部63は、再びステップS301に示した処理を実行する。
【0077】
一方、TSパケット出力部62の出力が送信部64に供給されていない場合(S302:No)、欠落パケット検出部63は、TSパケット出力部62の出力が送信部64に供給されるようにスイッチ67を制御し(S303)、再びステップS301に示した処理を実行する。
【0078】
予め定められた時間間隔でTSパケットを受信していない場合(S301:No)、欠落パケット検出部63は、スイッチ67の状態を参照して、NULLパケット生成部66の出力が送信部64に供給されているか否かを判定する(S304)。NULLパケット生成部66の出力が送信部64に供給されている場合(S304:Yes)、欠落パケット検出部63は、再びステップS301に示した処理を実行する。
【0079】
一方、NULLパケット生成部66の出力が送信部64に供給されていない場合(S304:No)、欠落パケット検出部63は、NULLパケット生成部66の出力が送信部64に供給されるようにスイッチ67を制御し(S305)、再びステップS301に示した処理を実行する。
【0080】
図13は、NULLパケット生成部66の動作の一例を示すフローチャートである。なお、本フローチャートは、中継装置60の電源オン等の所定のタイミングで開始し、中継装置60の電源オフ等の所定のタイミングで終了する。
【0081】
まず、NULLパケット生成部66は、TSパケット出力部62からTSパケットを受け取ったか否かを判定することにより、中継装置60がTSパケットの受信を開始したか否かを判定する(S400)。中継装置60がTSパケットの受信を開始していない場合(S400:No)、NULLパケット生成部66は、中継装置60がTSパケットの受信を開始するまでステップS400に示した処理を繰り返す。
【0082】
中継装置60がTSパケットの受信を開始した場合(S400:Yes)、NULLパケット生成部66は、予め定められたTSパケットの受信タイミング毎に無効なデータを含むNULL_TSパケットを生成し(S401)、PCR推定部65から擬似PCRの値を受信したか否かを判定する(S402)。
【0083】
PCR推定部65から擬似PCRの値を受信した場合(S402:Yes)、NULLパケット生成部66は、ステップS401で生成したNULL_TSパケットに代えて、PCR推定部65から受信した擬似PCRを含むTSパケットを生成してスイッチ67へ出力し(S403)、再びステップS402に示した処理を実行する。
【0084】
PCR推定部65から擬似PCRの値を受信していない場合(S402:No)、NULLパケット生成部66は、ステップS401で生成したNULL_TSパケットをスイッチ67へ出力し(S404)、再びステップS402に示した処理を実行する。
【0085】
以上、本発明の第2の実施形態について説明した。
【0086】
上記説明から明らかなように、本実施形態の中継装置60によれば、通信回線52の輻輳等によりPCR、映像データ、および音声データが欠落した後に、これらのデータの正常受信が再開した場合に、移動受信端末70において映像データおよび音声データの同期再生を迅速に再開させることができる。
【0087】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0088】
例えば、上記した第2の実施形態において、放送局51によって圧縮された状態でTSパケットが通信回線52を介して中継装置60へ送られた場合、中継装置60のTSパケット出力部62は、UDPパケット受信部61より受け取ったUDPパケットから圧縮された状態のTSパケットを抽出し、抽出したTSパケットを伸張した後に、伸張したTSパケットを、欠落パケット検出部63、NULLパケット生成部66、およびスイッチ67へ送る。
【0089】
また、上記した第2の実施形態における移動受信端末70は、上記した第1の実施形態に記載された移動受信端末20の機能を有していてもよい。これにより、通信回線52においてTSパケットが欠落した場合のみならず、中継装置60から送信されたディジタル放送電波が遮断された場合にも、移動受信端末70は、PCR、映像データ、および音声データの正常受信が再開した場合に、映像データおよび音声データの同期再生を迅速に再開することができる。
【0090】
なお、上記した各実施形態におけるディジタル放送システムは、映像および音声の迅速な復帰が可能となることから、災害時に配信される緊急警報放送の受信等に有効である。特に、第1の実施形態における移動受信端末20は、災害時に避難しながら緊急警報放送を受信する場合に特に有効である。また、第2の実施形態における中継装置60は、災害時に通信回線52が不安定となる場合において移動受信端末70が緊急警報放送を受信する場合に特に有効である。
【符号の説明】
【0091】
10・・・ディジタル放送システム、11・・・放送局、12・・・中継装置、13・・・アンテナ、20・・・移動受信端末、21・・・アンテナ、22・・・表示装置、23・・・スピーカ、200・・・ビデオデコーダ、201・・・ビデオバッファ、202・・・DAC、203・・・PCR補間部、204・・・チューナ、205・・・TSパケット出力部、206・・・スイッチ、207・・・PCR比較部、208・・・出力タイミング制御部、209・・・PCR推定部、210・・・PCR受信履歴格納部、211・・・オーディオデコーダ、212・・・オーディオバッファ、213・・・DAC、50・・・ディジタル放送システム、51・・・放送局、52・・・通信回線、53・・・アンテナ、60・・・中継装置、61・・・UDPパケット受信部、62・・・TSパケット出力部、63・・・欠落パケット検出部、64・・・送信部、65・・・PCR推定部、66・・・NULLパケット生成部、67・・・スイッチ、68・・・PCR受信履歴格納部、70・・・移動受信端末、700・・・ビデオデコーダ、701・・・ビデオバッファ、702・・・DAC、703・・・チューナ、704・・・TSパケット出力部、705・・・PCR比較部、706・・・出力タイミング制御部、707・・・オーディオデコーダ、708・・・オーディオバッファ、709・・・DAC、71・・・アンテナ、72・・・表示装置、73・・・スピーカ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタル放送を受信して再生する移動受信端末、または、有線通信回線を介して受信したディジタル放送を電波として出力する中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ISDB(Integrated Services Digital Broadcasting)−T方式のいわゆるワンセグ放送を受信して再生する受信端末が知られている。ISDB−Tでは、送信局が、内部クロックの値を示すPCR(Program Clock Reference)を定期的に受信端末へ送信し、受信端末は、通常、PLL(Phase Lock Loop)を用いて、端末内部のクロックを受信したPCRの値で補正することで、送信局側の内部クロックと受信端末側の内部クロックとの同期をとっている。
【0003】
また、送信局は、自局の内部クロックに基づいて映像データおよび音声データのそれぞれのデータの出力タイミングを指定するPTS(Presentation Time Stamp)を映像データおよび音声データと共に受信端末へ送信し、受信端末は、PTSで指定されたタイミングで、対応するビデオデータまたはオーディオデータを出力することにより、ビデオデータとオーディオデータとを、送信局側が意図したタイミングで同期再生することができる。
【0004】
ところで、ワンセグ放送は、受信エリアが広く、移動しながら受信しても再生された画像や音声の画像の乱れが少ないことから、受信端末は、小型化および軽量化して持ち運び易いようにされることが好ましい。小型化においては、受信機能を実現する部品のワンチップ化が有効であるが、従来はPLLが用いられ、PLLに関連する部品が大きいために、ワンチップ化が困難であった。
【0005】
これを解決する方法として、下記の特許文献1には、PLLを用いることなくビデオデータおよびオーディオデータの同期再生を可能とする技術が開示されている。当該特許文献1では、受信端末は、PCRを送信局から受信する都度、PCRの値をレジスタ(PCR_REG_A)に格納し、前回受信してレジスタ(PCR_REG_B)に格納していたPCRの値との差分を算出する。また、受信端末は、PCRを送信局から受信する都度、その時点での受信端末の内部クロックのカウント値をレジスタ(Local_REG_A)に格納し、前回のPCRの受信時にレジスタ(Local_REG_B)に格納していた内部クロックの値との差分を算出する。
【0006】
そして、受信端末は、PCRを送信局から受信する都度、PCRの値の差分と内部クロックのカウント値の差分との差分を複数のシフトレジスタ(DIFF_0〜N)に順次格納し、複数のシフトレジスタに格納されている差分の平均値を周波数誤差データとして算出する。そして、受信端末は、算出した周波数誤差データを用いてPTSの値を補正することにより、PLLを用いることなくビデオデータおよびオーディオデータの同期再生を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−311522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記した特許文献1の技術では、送信局側から送信されたPCRを受信端末が定期的に漏れなく受信することが前提となっており、今回受信したPCRの値と前回受信したPCRの値との差分と、今回のPCRの受信時の内部クロックの値と前回のPCRの受信時の内部クロックの値との差分との差分の値は、PCRを受信するたびにそれほど大きく変化することはない。
【0009】
しかし、受信端末は、持ち運ばれることが多く、ワンセグ放送の電波が障害物等により遮られると、PCRを受信できない場合がある。PCRを1つ以上受信しなかった場合、その後にPCRを受信すると、今回受信したPCRの値と前回受信したPCRの値との差分は、PCRを漏れなく受信し続けた場合の値よりも大きくなり、今回のPCRの受信時の内部クロックの値と前回のPCRの受信時の内部クロックの値との差分も、PCRを漏れなく受信し続けた場合の値よりも大きくなる。さらには、PCRの値の差分と内部クロックのカウント値の差分との差分も、PCRを漏れなく受信し続けた場合の値よりも大きくなる。
【0010】
これにより、PCRを1つ以上受信しなかった場合には、周波数誤差データの値が大きくなリ、受信端末は、内部クロックの周波数がそれほどずれていないにもかかわらず、あたかも大きくずれているかのように認識してしまい、ビデオデータおよびオーディオデータの同期再生が正しく行われない場合がある。この状況は、シフトレジスタの数が多いほど、長く続くことになる。従って、受信端末は、電波の受信環境が悪化した後に、電波の受信環境が良化して、PCRのデータ、ビデオデータ、およびオーディオデータの正常な受信が再開したとしても、しばらくの間は、ビデオデータおよびオーディオデータの同期再生を正しく行うことができない場合がある。
【0011】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、受信端末においてビデオデータおよびオーディオデータの正常受信が再開した場合に、ビデオデータおよびオーディオデータの同期再生を迅速に再開することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、PCRの受信タイミングとその値の履歴からPCRの受信タイミングとその値の関係を直線近似して次のPCRの受信タイミングとその値を推定し、次にPCRを受信すべきタイミングでPCRを受信しなかった場合に、受信しなかったPCRに代えて、推定したPCRを出力する。
【0013】
例えば、本発明の第1の態様は、ディジタル放送を受信して再生する移動受信端末であって、中継局から送信されたディジタル放送からTSパケットを抽出して出力するTSパケット出力手段と、逐次入力されるPCRの値と当該移動受信端末の内部クロックに基づくカウンタの値とを比較して、PCRによって再生されるクロックと当該内部クロックとの誤差を示す周波数誤差データを出力するPCR比較手段と、PCR比較手段から出力された周波数誤差データを用いて、TSパケット出力手段から出力されたTSパケットに含まれている映像データまたは音声データのPTSを補正し、補正したPTSに基づいて映像データまたは音声データの出力タイミングを制御する出力タイミング制御手段と、TSパケット出力手段から逐次出力されるTSパケットに含まれるPCRを収集し、過去に収集した複数のPCRの受信時刻毎の値の変化を直線近似し、次に受信すべきPCRの受信時刻および値を、近似した直線上に推定するPCR推定手段と、TSパケットがTSパケット出力手段から予め定められた時間間隔で出力されているか否かを監視し、出力されるべきタイミングでTSパケットがTSパケット出力手段から出力されている場合に、TSパケット出力手段から出力されたTSパケットに含まれるPCRをPCR比較手段に供給し、出力されるべきタイミングでTSパケットがTSパケット出力手段から出力されない場合に、PCR推定手段から出力されたPCRをPCR比較手段に供給するPCR補間手段とを備えることを特徴とする移動受信端末を提供する。
【0014】
また、本発明の第2の態様は、有線通信回線を介して受信したディジタル放送を電波として出力する中継装置であって、有線通信回線を介して受信したディジタル放送からTSパケットを抽出して出力するTSパケット出力手段と、TSパケット出力手段から逐次出力されるTSパケットに含まれるPCRを収集し、過去に収集した複数のPCRの受信時刻毎の値の変化を直線近似し、次に受信すべきPCRの受信時刻および値を、近似した直線上に推定するPCR推定手段と、PCR推定手段からPCRが出力された場合に、当該PCRを含むTSパケットを生成して出力し、PCR推定手段からPCRが出力されていない場合に、無効なデータを含むTSパケットを生成して出力するNULLパケット生成手段と、入力されたTSパケットを所定のフォーマットに変換して電波として送信する送信手段と、TSパケットがTSパケット出力手段から予め定められた時間間隔で出力されているか否かを監視し、出力されるべきタイミングでTSパケットがTSパケット出力手段から出力されている場合に、TSパケット出力手段から出力されたTSパケットを送信手段に入力し、出力されるべきタイミングでTSパケットがTSパケット出力手段から出力されない場合に、NULLパケット生成手段から出力されたTSパケットを送信手段に入力する欠落パケット検出手段とを備えることを特徴とする中継装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、移動受信端末においてビデオデータおよびオーディオデータの正常受信が再開した場合に、ビデオデータおよびオーディオデータの同期再生を迅速に再開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態に係るディジタル放送システム10の構成を示すシステム構成図である。
【図2】第1の実施形態における移動受信端末20の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図3】PCR受信履歴格納部210に格納されるデータの構造の一例を示す図である。
【図4】PCR推定部209によって次の擬似PCRの受信時刻および値が推定される過程を説明するための概念図である。
【図5】PCR比較部207に供給されるPCRのデータを説明するための概念図である。
【図6】PCR補間部203の動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】PCR推定部209の動作の一例を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施形態に係るディジタル放送システム50の構成を示すシステム構成図である。
【図9】第2の実施形態における中継装置60の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図10】第2の実施形態における移動受信端末70の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図11】送信部64に供給されるデータを説明するための概念図である。
【図12】欠落パケット検出部63の動作の一例を示すフローチャートである。
【図13】NULLパケット生成部66の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0018】
図1は、第1の実施形態に係るディジタル放送システム10の構成を示すシステム構成図である。ディジタル放送システム10は、放送局11、中継装置12、および1台以上の移動受信端末20を備える。放送局11で作成された放送コンテンツは、中継装置12を介して、ISDB−T方式のディジタル放送としてアンテナ13から出力される。それぞれの移動受信端末20は、中継装置12を介して送信されたディジタル放送を受信して再生する。
【0019】
図2は、第1の実施形態における移動受信端末20の機能構成の一例を示すブロック図である。移動受信端末20は、ビデオデコーダ200、ビデオバッファ201、DAC(Digital to Analog Converter)202、PCR補間部203、チューナ204、TS(Transport Stream)パケット出力部205、スイッチ206、PCR比較部207、出力タイミング制御部208、PCR推定部209、PCR受信履歴格納部210、オーディオデコーダ211、オーディオバッファ212、およびDAC213を有する。
【0020】
PCR受信履歴格納部210には、例えば図3に示すように、それぞれのPCR値2101が、当該PCRを受信した受信時刻2100に対応付けて格納される。チューナ204は、アンテナ21を介して受信したディジタル放送電波を復調し、復調結果をTSパケット出力部205へ出力する。
【0021】
TSパケット出力部205は、チューナ204から出力された復調結果についてデインタリーブならびに誤り検出および訂正等の処理を行って、TSパケットを復元する。そして、TSパケット出力部205は、復元したTSパケットのPID(Program ID)を参照して、映像データを含むTSパケットをビデオデコーダ200へ、音声データを含むTSパケットをオーディオデコーダ211へ、PCRを含むTSパケットをスイッチ206およびPCR推定部209へ、それぞれ出力する。
【0022】
また、無効なデータを含むNULL_TSパケットを復元した場合、TSパケット出力部205は、復元したNULL_TSパケットを破棄する。また、TSパケット出力部205は、TSパケットを復元する都度、TSパケットを受信した旨をPCR補間部203に通知する。
【0023】
ビデオデコーダ200は、TSパケット出力部205からTSパケットを受け取った場合に、当該TSパケットに含まれる映像データをデコードしてビデオバッファ201へ送ると共に、当該TSパケットに含まれている、映像データの出力タイミングを示すPTSを出力タイミング制御部208へ送る。ビデオバッファ201は、ビデオデコーダ200から受け取った映像データを蓄積し、出力タイミング制御部208からの指示に応じて映像データをDAC202を介して表示装置22へ出力する。
【0024】
オーディオデコーダ211は、TSパケット出力部205からTSパケットを受け取った場合に、当該TSパケットに含まれる音声データをデコードしてオーディオバッファ212へ送ると共に、当該TSパケットに含まれている、音声データの出力タイミングを示すPTSを出力タイミング制御部208へ送る。オーディオバッファ212は、オーディオデコーダ211から受け取った音声データを蓄積し、出力タイミング制御部208からの指示に応じて音声データをDAC213を介してスピーカ23へ出力する。
【0025】
PCR比較部207は、スイッチ206を介してPCRを受け取った場合に、受け取ったPCRの値と、移動受信端末20の内部クロックに基づいて動作するカウンタの値とを比較して、PCRによって再生されるクロックと当該内部クロックとの誤差を示す周波数誤差データを算出し、算出した周波数誤差データを出力タイミング制御部208へ出力する。
【0026】
出力タイミング制御部208は、ビデオデコーダ200およびオーディオデコーダ211から受信したPTSの値を、PCR比較部207から受信した周波数誤差データに基づいて補正し、補正したPTSを用いて、ビデオバッファ201内の映像データの出力タイミングおよびオーディオバッファ212内の音声データの出力タイミングを制御する。なお、PCR比較部207および出力タイミング制御部208の動作については、特許文献1に記載されている公知の技術であるため、その詳細な説明は省略する。
【0027】
PCR推定部209は、TSパケット出力部205からPCRが出力された場合に、PCRの受信開始を認識し、PCRがTSパケット出力部205から出力された時刻を受信時刻として、当該受信時刻に対応付けて、TSパケット出力部205から出力されたPCRの値をPCR受信履歴格納部210に追加登録する。そして、PCR受信履歴格納部210内に2つ以上のPCRの値が登録された場合に、PCR推定部209は、例えば図4に示すように、横軸を受信時刻、縦軸をPCRの値とするグラフ上に、PCR受信履歴格納部210内のPCRの値をならべる。
【0028】
そして、PCR推定部209は、過去に収集した複数のPCR31(図4内の黒丸)の受信時刻毎の値の変化を直線30で近似する。直線近似の方法としては、例えば最小二乗法や回帰分析により求めた傾向線等が用いられる。この場合、平均傾向から大きく外れるデータ(例えば、平均から3σ(σは標準偏差)以上離れたデータ)がある場合は、そのデータを除去してから傾向線を求めるようにしてもよい。そして、PCR推定部209は、最新の受信時刻t1の時点までに受信した複数のPCR31に基づいて算出した直線30上に、次のPCRの受信予定時刻t2(例えば、受信時刻t1から約231ミリ秒後)の時点における擬似PCR32(図4の白丸)の受信時刻および値を推定し、推定した擬似PCR32の値を、当該擬似PCR32の受信予定時刻にスイッチ206へ出力する。
【0029】
また、PCR推定部209は、予め定められたPCRの受信間隔(例えば、約231ミリ秒±数ミリ秒)毎に、TSパケット出力部205からPCRが出力されたか否かを監視し、予め定められたPCRの受信間隔毎に、TSパケット出力部205からPCRが出力されなかった場合に、推定した擬似PCRの受信時刻および値をPCR受信履歴格納部210に追加登録する。
【0030】
これにより、TSパケット出力部205からPCRが出力されなくても、それまで2回以上PCRが出力されていれば、PCR推定部209は、前回推定した擬似PCRの受信時刻および値に基づいて、次に受信すべきPCRの値を擬似PCRとして推定することができる。
【0031】
PCR補間部203は、TSパケット出力部205からTSパケットを受信した旨を通知された場合に、TSパケットの受信開始を認識し、予め定められたTSパケットの送信間隔(例えば、TSパケットのビットレートが約32Mbpsである場合、約50μ秒±数μ秒)毎に、TSパケットを受信した旨がTSパケット出力部205から通知されたか否かを監視する。
【0032】
TSパケットを受信した旨が、予め定められたTSパケットの送信間隔毎にTSパケット出力部205から通知された場合、PCR補間部203は、TSパケット出力部205の出力がPCR比較部207に供給されていなければ、TSパケット出力部205の出力がPCR比較部207に供給されるようにスイッチ206を制御する。
【0033】
一方、TSパケットを受信した旨が、予め定められたTSパケットの送信間隔毎にTSパケット出力部205から通知されない場合、PCR補間部203は、PCR推定部209の出力がPCR比較部207に供給されていなければ、PCR推定部209の出力がPCR比較部207に供給されるようにスイッチ206を制御する。
【0034】
ここで、例えば、図5(a)に示すように、中継装置12からディジタル放送が送信されている場合に、図5(b)に示すように、時刻t3から時刻t4までの区間Aにおいて、ディジタル放送電波が障害物等に遮られて、移動受信端末20がディジタル放送電波を受信できなかった場合を例に、PCR比較部207に供給されるPCRについて説明する。
【0035】
PCR推定部209は、図5(c)に示すように、PCR受信履歴格納部210内の複数のPCRの受信時刻および値を用いて、順次、次の擬似PCRを推定して出力している。PCR補間部203は、図5(d)に示すように、時刻t3以前においては、TSパケットを受信すべきタイミングでTSパケットを受信した旨が通知されているため、TSパケット出力部205の出力をPCR比較部207に供給するようにスイッチ206を制御している。
【0036】
一方、時刻t3から時刻t4までの区間Aにおいては、PCR補間部203は、TSパケットを受信すべきタイミングでTSパケットを受信した旨が通知されていないことを検出して、PCR推定部209の出力をPCR比較部207に供給するようにスイッチ206を制御する。また、時刻t4以後においては、PCR補間部203は、TSパケットを受信すべきタイミングでTSパケットを受信した旨が通知されたことを検出して、TSパケット出力部205の出力をPCR比較部207に供給するようにスイッチ206を制御する。
【0037】
これにより、PCR比較部207に供給されるPCRは、図5(e)のように、時刻t3以前においては、TSパケット出力部205から出力されたPCRがPCR比較部207に供給され、時刻t3からt4までの区間Aにおいては、PCR推定部209から出力された擬似PCRがPCR比較部207に供給され、時刻t4以後においては、TSパケット出力部205から出力されたPCRがPCR比較部207に供給される。
【0038】
このように、ディジタル放送電波の受信環境が悪化して、PCR等を正常に受信できない期間が発生したとしても、その期間において、PCR補間部203は、PCR推定部209が生成した擬似PCRをPCR比較部207に供給する。そのため、PCR比較部207は、放送局11の内部クロックと移動受信端末20の内部クロックとのずれの算出精度の悪化を低く抑えることができる。これにより、出力タイミング制御部208は、ディジタル放送電波の受信環境が良化して、PCR、ビデオデータ、およびオーディオデータ等の正常受信が再開した場合に、映像および音声の同期再生を迅速に再開することができる。
【0039】
図6は、PCR補間部203の動作の一例を示すフローチャートである。なお、本フローチャートは、移動受信端末20の電源オン等の所定のタイミングで開始し、ディジタル放送の受信動作終了や移動受信端末20の電源オフ等の所定のタイミングで終了する。
【0040】
まず、PCR補間部203は、TSパケット出力部205からTSパケットを受信した旨が通知されたか否かを判定することにより、移動受信端末20がTSパケットの受信を開始したか否かを判定する(S100)。TSパケットの受信を開始していない場合(S100:No)、PCR補間部203は、TSパケットの受信を開始するまでステップS100に示した処理を実行する。
【0041】
一方、TSパケットの受信を開始した場合(S100:Yes)、PCR補間部203は、TSパケットを受信すべきタイミングでTSパケットを受信した旨がTSパケット出力部205から通知されたか否かを判定することにより、移動受信端末20が予め定められたタイミングで次のTSパケットを受信したか否かを判定する(S101)。
【0042】
予め定められたタイミングで次のTSパケットを受信した場合(S101:Yes)、PCR補間部203は、スイッチ206の状態を参照して、TSパケット出力部205の出力がPCR比較部207に供給されているか否かを判定する(S102)。TSパケット出力部205の出力がPCR比較部207に供給されている場合(S102:Yes)、PCR補間部203は、再びステップS101に示した処理を実行する。
【0043】
TSパケット出力部205の出力がPCR比較部207に供給されていない場合(S102:No)、PCR補間部203は、TSパケット出力部205の出力がPCR比較部207に供給されるようにスイッチ206を制御し(S103)、再びステップS101に示した処理を実行する。
【0044】
予め定められたタイミングで次のTSパケットを受信していない場合(S101:No)、PCR補間部203は、スイッチ206の状態を参照して、PCR推定部209の出力がPCR比較部207に供給されているか否かを判定する(S104)。PCR推定部209の出力がPCR比較部207に供給されている場合(S104:Yes)、PCR補間部203は、再びステップS101に示した処理を実行する。
【0045】
PCR推定部209の出力がPCR比較部207に供給されていない場合(S104:No)、PCR補間部203は、PCR推定部209の出力がPCR比較部207に供給されるようにスイッチ206を制御し(S105)、再びステップS101に示した処理を実行する。
【0046】
図7は、PCR推定部209の動作の一例を示すフローチャートである。なお、本フローチャートは、移動受信端末20の電源オン等の所定のタイミングで開始し、ディジタル放送の受信動作終了や移動受信端末20の電源オフ等のタイミングで終了する。
【0047】
まず、PCR推定部209は、TSパケット出力部205からPCRを2回受信したか否かを判定する(S200)。PCRを2回受信していない場合(S200:No)、PCR推定部209は、PCRを2回受信するまでステップS200に示した処理を実行する。一方、PCRを2回受信した場合(S200:Yes)、PCR推定部209は、受信したそれぞれのPCRの受信時刻および値をPCR受信履歴格納部210に登録する(S201)。
【0048】
次に、PCR推定部209は、図4で説明したように、過去に収集したPCR受信履歴格納部210内の複数のPCRの受信時刻毎の値の変化を直線で近似し(S202)、近似した直線上に、次にPCRを受信すべき受信時刻における擬似PCRの値を推定する(S203)。そして、PCR推定部209は、推定した擬似PCRの受信時刻において、推定した値の擬似PCRをスイッチ206へ出力する(S204)。
【0049】
次に、PCR推定部209は、予め定められたPCRを受信すべきタイミングで、TSパケット出力部205からPCRを受信したか否かを判定する(S205)。TSパケット出力部205からPCRを受信した場合(S205:Yes)、PCR推定部209は、TSパケット出力部205からPCRを受信した受信時刻に対応付けて、受信したPCRの値をPCR受信履歴格納部210に追加登録し(S206)、再びステップS202に示した処理を実行する。
【0050】
一方、TSパケット出力部205からPCRを受信しなかった場合(S205:No)、PCR推定部209は、ステップS203において推定した擬似PCRの値を、ステップS203において推定した受信時刻に対応付けてPCR受信履歴格納部210に追加登録し(S207)、再びステップS202に示した処理を実行する。
【0051】
以上、本発明の第1の実施形態について説明した。
【0052】
上記説明から明らかなように、本実施形態の移動受信端末20によれば、映像データおよび音声データの正常受信が再開した場合に、映像データおよび音声データの同期再生を迅速に再開することができる。
【0053】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0054】
図8は、第2の実施形態に係るディジタル放送システム50の構成を示すシステム構成図である。ディジタル放送システム50は、放送局51、中継装置60、および1台以上の移動受信端末70を備える。
【0055】
放送局51で作成された放送コンテンツは、ISDB−T用のMPEG2のTSパケットに変換されてUDPパケットに格納され、さらにIPフレームに格納されてインターネット等の通信回線52を介して中継装置60へ送られる。中継装置60は、通信回線52を介して受信したTSパケットをOFDM変調し、ディジタル放送電波としてアンテナ53を介して送信する。それぞれの移動受信端末70は、中継装置60から送信されたディジタル放送を受信して再生する。
【0056】
図9は、第2の実施形態における中継装置60の機能構成の一例を示すブロック図である。中継装置60は、UDPパケット受信部61、TSパケット出力部62、欠落パケット検出部63、送信部64、PCR推定部65、NULLパケット生成部66、スイッチ67、およびPCR受信履歴格納部68を有する。PCR受信履歴格納部68内に格納されるデータの構造は、図3を用いて説明した、第1の実施形態におけるPCR受信履歴格納部210と同様であるため、説明を省略する。
【0057】
UDPパケット受信部61は、通信回線52を介して受信したIPフレームからUDPパケットを抽出してTSパケット出力部62へ送る。TSパケット出力部62は、UDPパケット受信部61より受け取ったUDPパケットからMPEG2のTSパケットを抽出して欠落パケット検出部63、NULLパケット生成部66、およびスイッチ67へ送る。また、UDPパケット受信部61は、抽出したTSパケットの中で、PCRを含むTSパケットをPCR推定部65へ送る。
【0058】
送信部64は、スイッチ67を介して受け取ったTSパケットをOFDM変調し、ディジタル放送電波としてアンテナ53を介して送信する。PCR推定部65は、TSパケット出力部62からPCRを含むTSパケットを受け取った場合に、PCRの受信開始を認識し、PCRを含むTSパケットがTSパケット出力部205から出力された時刻を受信時刻として、当該受信時刻に対応付けて、TSパケット出力部205から出力されたTSパケットに含まれるPCRの値をPCR受信履歴格納部210に追加登録する。
【0059】
そして、PCR受信履歴格納部68内に2つ以上のPCRの値が登録された場合に、PCR推定部65は、次のPCRの受信予定時刻における擬似PCRの値を推定し、推定した擬似PCRの値を、当該擬似PCRの受信予定時刻にNULLパケット生成部66へ出力する。なお、PCR推定部65による擬似PCRの受信時刻および値の推定方法については、図4を用いて説明した第1の実施形態におけるPCR推定部209と同様であるため、説明を省略する。
【0060】
NULLパケット生成部66は、TSパケット出力部62からTSパケットを受け取った場合に、TSパケットの受信開始を認識し、予め定められたTSパケットの送信間隔(例えば、約19.2μ秒±数μ秒)毎に、無効なデータを含むNULL_TSパケットを生成する。そして、NULLパケット生成部66は、PCR推定部65から擬似PCRの値が出力されていない場合に、生成したNULL_TSパケットをスイッチ67へ出力する。一方、PCR推定部65から擬似PCRの値が出力された場合、NULLパケット生成部66は、生成したNULL_TSパケットに代えて、PCR推定部65から出力された擬似PCRを含むTSパケットを生成してスイッチ67へ出力する。
【0061】
欠落パケット検出部63は、TSパケット出力部62からTSパケットを受け取った場合に、TSパケットの受信開始を認識し、TSパケットが予め定められたTSパケットの送信間隔でTSパケット出力部62から出力されているか否かの監視を開始する。出力されるべきタイミングでTSパケットがTSパケット出力部62から出力されている場合、欠落パケット検出部63は、TSパケット出力部62から出力されたTSパケットが送信部64に入力されるようにスイッチ67を制御する。一方、出力されるべきタイミングでTSパケットがTSパケット出力部62から出力されない場合、欠落パケット検出部63は、NULLパケット生成部66から出力されたTSパケットが送信部64に入力されるようにスイッチ67を制御する。
【0062】
図10は、第2の実施形態における移動受信端末70の機能構成の一例を示すブロック図である。移動受信端末70は、ビデオデコーダ700、ビデオバッファ701、DAC702、チューナ703、TSパケット出力部704、PCR比較部705、出力タイミング制御部706、オーディオデコーダ707、オーディオバッファ708、およびDAC709を有する。
【0063】
チューナ703は、アンテナ71を介して受信したディジタル放送電波を復調し、復調結果をTSパケット出力部704へ出力する。TSパケット出力部704は、チューナ703から出力された復調結果についてデインタリーブならびに誤り検出および訂正等の処理を行って、TSパケットを復元する。そして、TSパケット出力部704は、復元したTSパケットのPIDを参照して、映像データを含むTSパケットを移動受信端末70へ、音声データを含むTSパケットをオーディオデコーダ707へ、PCRを含むTSパケットをPCR比較部705へ、それぞれ出力する。また、無効なデータを含むNULL_TSパケットを復元した場合、TSパケット出力部704は、復元したNULL_TSパケットを破棄する。
【0064】
ビデオデコーダ700は、TSパケット出力部704からTSパケットを受け取った場合に、当該TSパケットに含まれる映像データをデコードしてビデオバッファ701へ送ると共に、当該TSパケットに含まれている、映像データの出力タイミングを示すPTSを出力タイミング制御部706へ送る。ビデオバッファ701は、ビデオデコーダ700から受け取った映像データを蓄積し、出力タイミング制御部706からの指示に応じて映像データをDAC702を介して表示装置72へ出力する。
【0065】
オーディオデコーダ707は、TSパケット出力部704からTSパケットを受け取った場合に、当該TSパケットに含まれる音声データをデコードしてオーディオバッファ708へ送ると共に、当該TSパケットに含まれている、音声データの出力タイミングを示すPTSを出力タイミング制御部706へ送る。オーディオバッファ708は、オーディオデコーダ707から受け取った音声データを蓄積し、出力タイミング制御部706からの指示に応じて音声データをDAC709を介してスピーカ73へ出力する。
【0066】
PCR比較部705は、TSパケット出力部704からPCRを受け取った場合に、受け取ったPCRの値と、移動受信端末70の内部クロックに基づいて動作するカウンタの値とを比較して、PCRによって再生されるクロックと当該内部クロックとの誤差を示す周波数誤差データを算出し、算出した周波数誤差データを出力タイミング制御部706へ出力する。
【0067】
出力タイミング制御部706は、ビデオデコーダ700およびオーディオデコーダ707から受信したPTSの値を、PCR比較部705から受信した周波数誤差データに基づいて補正し、補正したPTSを用いて、ビデオバッファ701内の映像データの出力タイミングおよびオーディオバッファ708内の音声データの出力タイミングを制御する。なお、移動受信端末70の各機能は、特許文献1等に記載されている公知の技術であるため、その詳細な説明は省略する。
【0068】
ここで、中継装置60の内部処理について、図11を参照しながら説明する。ここでは、例えば、図11(a)に示すように、放送局51からディジタル放送のTSパケットが送信されている場合に、図11(b)に示すように、時刻t5からt6までの区間Bにおいて、通信回線52の輻輳等により一部のTSパケットが欠落して中継装置60に届かなかった場合を例に、送信部64に供給されるTSパケットについて説明する。
【0069】
PCR推定部65は、図11(c)に示すように、PCR受信履歴格納部68内の複数のPCRの受信時刻および値を用いて、順次、次の擬似PCRを推定して出力している。NULLパケット生成部66は、図11(d)に示すように、PCR推定部65から擬似PCRが出力されていない場合にはNULL_TSパケットを出力し、PCR推定部65から擬似PCRが出力された場合には擬似PCRを含むTSパケットを出力する。
【0070】
欠落パケット検出部63は、図11(e)に示すように、時刻t5以前においては、TSパケットを受信すべきタイミングでTSパケット出力部62からTSパケットが出力されているため、TSパケット出力部62の出力を送信部64に供給するようにスイッチ67を制御する。また、時刻t5から時刻t6の間の区間Bおいて、欠落パケット検出部63は、TSパケットを受信すべきタイミングでTSパケットを受信しなかったことを検出して、NULLパケット生成部66の出力を送信部64に供給するようにスイッチ67を制御する。また、時刻t6以後においては、欠落パケット検出部63は、TSパケットを受信すべきタイミングでTSパケットを受信したことを検出し、TSパケット出力部62の出力を送信部64に供給するようにスイッチ67を制御する。
【0071】
これにより、送信部64に供給されるTSパケットは、図11(f)のように、時刻t5以前においては、TSパケット出力部62から出力されたTSパケットが送信部64に供給され、時刻t5からt6までの区間Bにおいては、NULLパケット生成部66から出力された、擬似PCRを含むTSパケットまたはNULL_TSパケットが送信部64に供給され、時刻t6以後においては、TSパケット出力部62から出力されたTSパケットが送信部64に供給される。
【0072】
このように、通信回線52に輻輳が発生し、放送局51から送信されたTSパケットが欠落した場合であっても、欠落パケット検出部63は、PCR推定部65が生成した擬似PCRを含むTSパケットを送信部64に送信させる。そのため、移動受信端末70のPCR比較部705は、放送局51の内部クロックと移動受信端末70の内部クロックとのずれの算出精度の悪化を低く抑えることができる。
【0073】
これにより、移動受信端末70の出力タイミング制御部706は、通信回線52に輻輳が発生してTSパケットの欠落が発生した後に、中継装置60において、PCR、ビデオデータ、およびオーディオデータ等を含むTSパケットの正常受信が再開した場合に、映像および音声の同期再生を迅速に再開することができる。
【0074】
図12は、欠落パケット検出部63の動作の一例を示すフローチャートである。なお、本フローチャートは、中継装置60の電源オン等の所定のタイミングで開始し、中継装置60の電源オフ等の所定のタイミングで終了する。
【0075】
まず、欠落パケット検出部63は、TSパケット出力部62からTSパケットを受け取ったか否かを判定することにより、中継装置60がTSパケットの受信を開始したか否かを判定する(S300)。中継装置60がTSパケットの受信を開始していない場合(S300:No)、欠落パケット検出部63は、中継装置60がTSパケットの受信を開始するまでステップS300に示した処理を繰り返す。
【0076】
中継装置60がTSパケットの受信を開始した場合(S300:Yes)、欠落パケット検出部63は、予め定められた時間間隔でTSパケット出力部62からTSパケットを受信したか否かを判定する(S301)。予め定められた時間間隔でTSパケットを受信した場合(S301:Yes)、欠落パケット検出部63は、スイッチ67の状態を参照して、TSパケット出力部62の出力が送信部64に供給されているか否かを判定する(S302)。TSパケット出力部62の出力が送信部64に供給されている場合(S302:Yes)、欠落パケット検出部63は、再びステップS301に示した処理を実行する。
【0077】
一方、TSパケット出力部62の出力が送信部64に供給されていない場合(S302:No)、欠落パケット検出部63は、TSパケット出力部62の出力が送信部64に供給されるようにスイッチ67を制御し(S303)、再びステップS301に示した処理を実行する。
【0078】
予め定められた時間間隔でTSパケットを受信していない場合(S301:No)、欠落パケット検出部63は、スイッチ67の状態を参照して、NULLパケット生成部66の出力が送信部64に供給されているか否かを判定する(S304)。NULLパケット生成部66の出力が送信部64に供給されている場合(S304:Yes)、欠落パケット検出部63は、再びステップS301に示した処理を実行する。
【0079】
一方、NULLパケット生成部66の出力が送信部64に供給されていない場合(S304:No)、欠落パケット検出部63は、NULLパケット生成部66の出力が送信部64に供給されるようにスイッチ67を制御し(S305)、再びステップS301に示した処理を実行する。
【0080】
図13は、NULLパケット生成部66の動作の一例を示すフローチャートである。なお、本フローチャートは、中継装置60の電源オン等の所定のタイミングで開始し、中継装置60の電源オフ等の所定のタイミングで終了する。
【0081】
まず、NULLパケット生成部66は、TSパケット出力部62からTSパケットを受け取ったか否かを判定することにより、中継装置60がTSパケットの受信を開始したか否かを判定する(S400)。中継装置60がTSパケットの受信を開始していない場合(S400:No)、NULLパケット生成部66は、中継装置60がTSパケットの受信を開始するまでステップS400に示した処理を繰り返す。
【0082】
中継装置60がTSパケットの受信を開始した場合(S400:Yes)、NULLパケット生成部66は、予め定められたTSパケットの受信タイミング毎に無効なデータを含むNULL_TSパケットを生成し(S401)、PCR推定部65から擬似PCRの値を受信したか否かを判定する(S402)。
【0083】
PCR推定部65から擬似PCRの値を受信した場合(S402:Yes)、NULLパケット生成部66は、ステップS401で生成したNULL_TSパケットに代えて、PCR推定部65から受信した擬似PCRを含むTSパケットを生成してスイッチ67へ出力し(S403)、再びステップS402に示した処理を実行する。
【0084】
PCR推定部65から擬似PCRの値を受信していない場合(S402:No)、NULLパケット生成部66は、ステップS401で生成したNULL_TSパケットをスイッチ67へ出力し(S404)、再びステップS402に示した処理を実行する。
【0085】
以上、本発明の第2の実施形態について説明した。
【0086】
上記説明から明らかなように、本実施形態の中継装置60によれば、通信回線52の輻輳等によりPCR、映像データ、および音声データが欠落した後に、これらのデータの正常受信が再開した場合に、移動受信端末70において映像データおよび音声データの同期再生を迅速に再開させることができる。
【0087】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0088】
例えば、上記した第2の実施形態において、放送局51によって圧縮された状態でTSパケットが通信回線52を介して中継装置60へ送られた場合、中継装置60のTSパケット出力部62は、UDPパケット受信部61より受け取ったUDPパケットから圧縮された状態のTSパケットを抽出し、抽出したTSパケットを伸張した後に、伸張したTSパケットを、欠落パケット検出部63、NULLパケット生成部66、およびスイッチ67へ送る。
【0089】
また、上記した第2の実施形態における移動受信端末70は、上記した第1の実施形態に記載された移動受信端末20の機能を有していてもよい。これにより、通信回線52においてTSパケットが欠落した場合のみならず、中継装置60から送信されたディジタル放送電波が遮断された場合にも、移動受信端末70は、PCR、映像データ、および音声データの正常受信が再開した場合に、映像データおよび音声データの同期再生を迅速に再開することができる。
【0090】
なお、上記した各実施形態におけるディジタル放送システムは、映像および音声の迅速な復帰が可能となることから、災害時に配信される緊急警報放送の受信等に有効である。特に、第1の実施形態における移動受信端末20は、災害時に避難しながら緊急警報放送を受信する場合に特に有効である。また、第2の実施形態における中継装置60は、災害時に通信回線52が不安定となる場合において移動受信端末70が緊急警報放送を受信する場合に特に有効である。
【符号の説明】
【0091】
10・・・ディジタル放送システム、11・・・放送局、12・・・中継装置、13・・・アンテナ、20・・・移動受信端末、21・・・アンテナ、22・・・表示装置、23・・・スピーカ、200・・・ビデオデコーダ、201・・・ビデオバッファ、202・・・DAC、203・・・PCR補間部、204・・・チューナ、205・・・TSパケット出力部、206・・・スイッチ、207・・・PCR比較部、208・・・出力タイミング制御部、209・・・PCR推定部、210・・・PCR受信履歴格納部、211・・・オーディオデコーダ、212・・・オーディオバッファ、213・・・DAC、50・・・ディジタル放送システム、51・・・放送局、52・・・通信回線、53・・・アンテナ、60・・・中継装置、61・・・UDPパケット受信部、62・・・TSパケット出力部、63・・・欠落パケット検出部、64・・・送信部、65・・・PCR推定部、66・・・NULLパケット生成部、67・・・スイッチ、68・・・PCR受信履歴格納部、70・・・移動受信端末、700・・・ビデオデコーダ、701・・・ビデオバッファ、702・・・DAC、703・・・チューナ、704・・・TSパケット出力部、705・・・PCR比較部、706・・・出力タイミング制御部、707・・・オーディオデコーダ、708・・・オーディオバッファ、709・・・DAC、71・・・アンテナ、72・・・表示装置、73・・・スピーカ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディジタル放送を受信して再生する移動受信端末であって、
中継局から送信されたディジタル放送からTS(Transport Stream)パケットを抽出して出力するTSパケット出力手段と、
逐次入力されるPCR(Program Clock Reference)の値と当該移動受信端末の内部クロックに基づくカウンタの値とを比較して、PCRによって再生されるクロックと当該内部クロックとの誤差を示す周波数誤差データを出力するPCR比較手段と、
前記PCR比較手段から出力された周波数誤差データを用いて、前記TSパケット出力手段から出力されたTSパケットに含まれている映像データまたは音声データのPTS(Presentation Time Stamp)を補正し、補正したPTSに基づいて映像データまたは音声データの出力タイミングを制御する出力タイミング制御手段と、
前記TSパケット出力手段から逐次出力されるTSパケットに含まれるPCRを収集し、過去に収集した複数のPCRの受信時刻毎の値の変化を直線近似し、次に受信すべきPCRの受信時刻および値を、近似した直線上に推定するPCR推定手段と、
TSパケットが前記TSパケット出力手段から予め定められた時間間隔で出力されているか否かを監視し、
出力されるべきタイミングでTSパケットが前記TSパケット出力手段から出力されている場合に、前記TSパケット出力手段から出力されたTSパケットに含まれるPCRを前記PCR比較手段に供給し、
出力されるべきタイミングでTSパケットが前記TSパケット出力手段から出力されない場合に、前記PCR推定手段から出力されたPCRを前記PCR比較手段に供給するPCR補間手段と
を備えることを特徴とする移動受信端末。
【請求項2】
請求項1に記載の移動受信端末であって、
PCRの値を、当該PCRの受信時刻に対応付けて格納するPCR受信履歴格納手段をさらに備え、
前記PCR推定手段は、
前記TSパケット出力手段から出力されるTSパケットに含まれるPCRを受信した場合に、PCRを受信した時刻に対応付けて受信したPCRの値を前記PCR受信履歴格納手段に追加登録し、前記PCR受信履歴格納手段内のPCRの受信時刻毎の値の変化を直線近似して次に受信すべきPCRの受信時刻および値を推定し、出力されるべきタイミングでTSパケットが前記TSパケット出力手段から出力されなかった場合に、推定したPCRの受信時刻および値を前記PCR受信履歴格納手段に追加登録することを特徴とする移動受信端末。
【請求項3】
有線通信回線を介して受信したディジタル放送を電波として出力する中継装置であって、
前記有線通信回線を介して受信したディジタル放送からTS(Transport Stream)パケットを抽出して出力するTSパケット出力手段と、
前記TSパケット出力手段から逐次出力されるTSパケットに含まれるPCR(Program Clock Reference)を収集し、過去に収集した複数のPCRの受信時刻毎の値の変化を直線近似し、次に受信すべきPCRの受信時刻および値を、近似した直線上に推定するPCR推定手段と、
前記PCR推定手段からPCRが出力された場合に、当該PCRを含むTSパケットを生成して出力し、前記PCR推定手段からPCRが出力されていない場合に、無効なデータを含むTSパケットを生成して出力するNULLパケット生成手段と、
入力されたTSパケットを所定のフォーマットに変換して電波として送信する送信手段と、
TSパケットが前記TSパケット出力手段から予め定められた時間間隔で出力されているか否かを監視し、
出力されるべきタイミングでTSパケットが前記TSパケット出力手段から出力されている場合に、前記TSパケット出力手段から出力されたTSパケットを前記送信手段に入力し、
出力されるべきタイミングでTSパケットが前記TSパケット出力手段から出力されない場合に、前記NULLパケット生成手段から出力されたTSパケットを前記送信手段に入力する欠落パケット検出手段と
を備えることを特徴とする中継装置。
【請求項4】
請求項3に記載の中継装置であって、
PCRの値を、当該PCRの受信時刻に対応付けて格納するPCR受信履歴格納手段をさらに備え、
前記PCR推定手段は、
前記TSパケット出力手段から出力されるTSパケットに含まれるPCRを受信した場合に、PCRを受信した時刻に対応付けて受信したPCRの値を前記PCR受信履歴格納手段に追加登録し、前記PCR受信履歴格納手段内のPCRの受信時刻毎の値の変化を直線近似して次に受信すべきPCRの受信時刻および値を推定し、出力されるべきタイミングでTSパケットが前記TSパケット出力手段から出力されなかった場合に、推定したPCRの受信時刻および値を前記PCR受信履歴格納手段に追加登録することを特徴とする中継装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の中継装置であって、
前記TSパケット出力手段は、
前記有線通信回線を介して受信したディジタル放送のデータが圧縮されている場合には、当該データを伸張した後にTSパケットを抽出して出力することを特徴とする中継装置。
【請求項1】
ディジタル放送を受信して再生する移動受信端末であって、
中継局から送信されたディジタル放送からTS(Transport Stream)パケットを抽出して出力するTSパケット出力手段と、
逐次入力されるPCR(Program Clock Reference)の値と当該移動受信端末の内部クロックに基づくカウンタの値とを比較して、PCRによって再生されるクロックと当該内部クロックとの誤差を示す周波数誤差データを出力するPCR比較手段と、
前記PCR比較手段から出力された周波数誤差データを用いて、前記TSパケット出力手段から出力されたTSパケットに含まれている映像データまたは音声データのPTS(Presentation Time Stamp)を補正し、補正したPTSに基づいて映像データまたは音声データの出力タイミングを制御する出力タイミング制御手段と、
前記TSパケット出力手段から逐次出力されるTSパケットに含まれるPCRを収集し、過去に収集した複数のPCRの受信時刻毎の値の変化を直線近似し、次に受信すべきPCRの受信時刻および値を、近似した直線上に推定するPCR推定手段と、
TSパケットが前記TSパケット出力手段から予め定められた時間間隔で出力されているか否かを監視し、
出力されるべきタイミングでTSパケットが前記TSパケット出力手段から出力されている場合に、前記TSパケット出力手段から出力されたTSパケットに含まれるPCRを前記PCR比較手段に供給し、
出力されるべきタイミングでTSパケットが前記TSパケット出力手段から出力されない場合に、前記PCR推定手段から出力されたPCRを前記PCR比較手段に供給するPCR補間手段と
を備えることを特徴とする移動受信端末。
【請求項2】
請求項1に記載の移動受信端末であって、
PCRの値を、当該PCRの受信時刻に対応付けて格納するPCR受信履歴格納手段をさらに備え、
前記PCR推定手段は、
前記TSパケット出力手段から出力されるTSパケットに含まれるPCRを受信した場合に、PCRを受信した時刻に対応付けて受信したPCRの値を前記PCR受信履歴格納手段に追加登録し、前記PCR受信履歴格納手段内のPCRの受信時刻毎の値の変化を直線近似して次に受信すべきPCRの受信時刻および値を推定し、出力されるべきタイミングでTSパケットが前記TSパケット出力手段から出力されなかった場合に、推定したPCRの受信時刻および値を前記PCR受信履歴格納手段に追加登録することを特徴とする移動受信端末。
【請求項3】
有線通信回線を介して受信したディジタル放送を電波として出力する中継装置であって、
前記有線通信回線を介して受信したディジタル放送からTS(Transport Stream)パケットを抽出して出力するTSパケット出力手段と、
前記TSパケット出力手段から逐次出力されるTSパケットに含まれるPCR(Program Clock Reference)を収集し、過去に収集した複数のPCRの受信時刻毎の値の変化を直線近似し、次に受信すべきPCRの受信時刻および値を、近似した直線上に推定するPCR推定手段と、
前記PCR推定手段からPCRが出力された場合に、当該PCRを含むTSパケットを生成して出力し、前記PCR推定手段からPCRが出力されていない場合に、無効なデータを含むTSパケットを生成して出力するNULLパケット生成手段と、
入力されたTSパケットを所定のフォーマットに変換して電波として送信する送信手段と、
TSパケットが前記TSパケット出力手段から予め定められた時間間隔で出力されているか否かを監視し、
出力されるべきタイミングでTSパケットが前記TSパケット出力手段から出力されている場合に、前記TSパケット出力手段から出力されたTSパケットを前記送信手段に入力し、
出力されるべきタイミングでTSパケットが前記TSパケット出力手段から出力されない場合に、前記NULLパケット生成手段から出力されたTSパケットを前記送信手段に入力する欠落パケット検出手段と
を備えることを特徴とする中継装置。
【請求項4】
請求項3に記載の中継装置であって、
PCRの値を、当該PCRの受信時刻に対応付けて格納するPCR受信履歴格納手段をさらに備え、
前記PCR推定手段は、
前記TSパケット出力手段から出力されるTSパケットに含まれるPCRを受信した場合に、PCRを受信した時刻に対応付けて受信したPCRの値を前記PCR受信履歴格納手段に追加登録し、前記PCR受信履歴格納手段内のPCRの受信時刻毎の値の変化を直線近似して次に受信すべきPCRの受信時刻および値を推定し、出力されるべきタイミングでTSパケットが前記TSパケット出力手段から出力されなかった場合に、推定したPCRの受信時刻および値を前記PCR受信履歴格納手段に追加登録することを特徴とする中継装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の中継装置であって、
前記TSパケット出力手段は、
前記有線通信回線を介して受信したディジタル放送のデータが圧縮されている場合には、当該データを伸張した後にTSパケットを抽出して出力することを特徴とする中継装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−161748(P2010−161748A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4067(P2009−4067)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
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