説明

移動局と通信制御方法

【課題】ハンドオーバー制御とDRX制御を組み合わせるにあたり、移動局の省電力を実現可能とする移動局、通信制御方法の提供。
【解決手段】 複数の基地局と少なくとも1つの移動局を含む無線通信システムにおける移動局は、前記基地局から通知されたDRX cycleの異なる2つのDRX設定のうち、DRX cycleが短いDRX設定を使用中に、予め定められた期間データ受信を行わない場合、DRX cycleが長いDRX設定の使用を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願についての記載)本願は、先の日本特許出願2007−025873号(2007年2月5日出願)の優先権を主張するものであり、前記先の出願の全記載内容は、本書に引用をもって繰込み記載されているものとみなされる。
本発明は、無線通信システムに関し、特に、ソース基地局からターゲット基地局への基地局間ハンドオーバーを行う無線通信システムの移動局と通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP(3rd Generation Partnership Project) Long Term Evolution(LTE)では、移動局が基地局間ハンドオーバー(Handover:「HO」とも略記される)を行う場合、ソース基地局(source eNB)がターゲット基地局(target eNB)へ、基地局間ハンドオーバーを行う移動局に関する、以下のような情報(RAN(Radio Access Network) Context Data)を転送することが検討されている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
1. QoS profiles(QoS profiles of the SAE(System Architecture Evolution) bearers)
2. AS configuration (RLC(Radio Link Control) Window Sizeなど)
【0004】
さらに、ソース基地局は、下りデータ送信中の場合には、未送信データをターゲット基地局へ転送するデータフォアワーディング(Data Forwarding)を行う。
【0005】
ターゲットセルへ移った移動局は、上りチャネルであるランダムアクセスチャネル(Random Access Channel:RACH)を介してターゲット基地局にアクセスし、ターゲット基地局から、上りリンクの同期のための送信タイミング調整値(Timing Advance:TA)と、上りリンクのスケジューリング情報を取得し、該取得したTAに従って送信タイミングを調整し、割り当てられた時間および周波数で、移動局がターゲット基地局へハンドオーバーして来たことを通知するための制御信号である「HO Confirm」を送信する。
【0006】
また、LTEでは、RRC(Radio Resources Control)_Connected状態(非特許文献1参照)における移動局のDRX(Discontinuous Reception;「間歇受信」ともいう)制御も検討されている。
【0007】
基地局は、自局が管理するセル内のすべての移動局のDRX制御を行い、移動局は基地局から指定された周期(「DRXサイクル」あるいは、「DRX期間」ともいう)にしたがって間歇受信を行う。DRXサイクル(DRX期間)は、例えば図18に示すように、連続受信する期間である受信期間(reception)と、受信を行わない期間である非受信期間(non−reception)を含む。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】3GPP TS36.300 v0.3.1 (Section 10.1その他)
【非特許文献2】3GPP RAN WG2 [R2-070088 Summary of email discussion on DRX in LTE_ACTIVE] <インターネット URL http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG2_RL2/TSGR2_56bis/Documents/R2-070088.zip>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上の非特許文献1、2の開示事項は、本書に引用をもって繰り込み記載されているものとする。以下に本発明による関連技術の分析を与える。
現在、LTEの基地局間HO制御とDRX制御をいかに組み合わせるかに関して検討がはじまったばかりである。このため、その制御の組み合わせ等において、移動局等の省電力化の向上等に関する具体的な方策等の検討はなされていないというのが実情である。
【0010】
したがって、本発明は、上記課題に鑑みて創案されたものであって、その目的は、ハンドオーバー制御とDRX制御を組み合わせるにあたり、移動局の省電力を実現可能とする通信制御方法、移動局を提供することにある。
【0011】
したがって、本発明の他の目的は、ハンドオーバー制御等によるネットワーク側の負荷増大を抑制するかあるいは低減可能とする通信制御方法、移動局を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願で開示される発明によれば、上記課題を解決するため、概略以下の構成の、移動局、通信制御方法が提供される。
【0013】
本発明によれば、複数の基地局と少なくとも1つの移動局を含む無線通信システムにおける移動局であって、前記基地局から通知されたDRX cycleの異なる2つのDRX設定のうち、DRX cycleが短いDRX設定を使用中に、予め定められた期間データ受信を行わない場合、DRX cycleが長いDRX設定の使用を開始する移動局が提供される。
【0014】
本発明によれば、複数の基地局と少なくとも1つの移動局を含む無線通信システムの移動局における通信制御方法であって、前記基地局から通知されたDRX cycleの異なる2つのDRX設定のうち、DRX cycleが短いDRX設定を使用中に、予め定められた期間データ受信を行わない場合、DRX cycleが長いDRX設定の使用を開始する通信制御方法が提供される。
【0015】
本発明の形態においては、ハンドオーバーの間、ソース基地局(source eNB)は、ハンドオーバー前後のDRX制御の継続を最適化するために、ターゲット基地局(target eBN)へ、ドーマンシ・コンテキスト(Dormancy Context)を転送(forward)する。移動局がハンドオーバーを完了した後、ターゲット基地局(target eBN)は、Dormancy Contextを使用して、移動局のDRX制御を行う。ターゲット基地局(target eBN)は、移動局(User Equipment:UE)がソースセルで長いDRXサイクルに滞在していたならば、移動局(UE)の状態をLTE_Idleに移すといった処理にも、ドーマンシコテキストを使用することができる。
【0016】
本発明の形態において、ドーマンシ・コンテキスト(Dormancy Context)としては、
現在(HO要求が生じた時点)のDRX(Discontinuous Reception)レベル、
現在のDRXレベルに滞在した時間、
ソース基地局が管理している間の平均DRXレベル、
ソース基地局が管理している間の最大DRXレベル、
ソース基地局が管理している間の最小DRXレベル、
HO準備期間の送信バッファサイズ、及び、
ソース基地局にスケジューリングされた時間/ソース基地局で、RRC_Connectedの状態にいた時間、
のうち少なくとも1つを含む。
【0017】
なお、本発明におけるソース基地局とターゲット基地局は、同じ通信システムの基地局だけでなく、異なるシステムの基地局でもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ハンドオーバー前後のDRX制御の継続を最適化可能としている。本発明によれば、例えばActivityの低い移動局に対して、より短い時間でDRX制御を開始することができる。この結果、移動局の電力削減を実現することができる。
【0019】
また、本発明によれば、さらにActivityが低い移動局に対して、より短い時間でIdle状態へ遷移させることができる。この結果、移動局の電力削減を可能としている。さらに、本発明によれば、本来は不必要である基地局間HOを回避することができるため、ネットワークの負荷の増加も回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態における基地局間ハンドオーバーの流れを説明するための図である。
【図2】本発明の一実施形態における基地局間ハンドオーバーを説明するための図である。
【図3】本発明の一実施形態における基地局間ハンドオーバー後の移動局の活動レベルの制御を説明するための図である。
【図4】本発明の一実施形態における基地局間ハンドオーバー後の移動局の活動レベルの制御を説明するための図である。
【図5】本発明の一実施形態における基地局間ハンドオーバー後の移動局の活動レベルの制御を説明するための図である。
【図6】本発明の第1の実施例における移動局の活動レベルの制御を説明するための図である。
【図7】本発明の第1の実施例における移動局の省電力効果を説明するための図である。
【図8】本発明の第2の実施例における移動局の活動レベルの制御を説明するための図である。
【図9】本発明の第2の実施例における移動局の省電力効果およびNW負荷の低減効果を説明するための図である。
【図10】本発明の一実施形態における移動局の活動レベルの制御を説明するための図である。
【図11】基地局間ハンドオーバーの流れを説明するための図である。
【図12】実施例における移動局の活動レベルの制御を説明するための図である。
【図13】実施例における移動局の動作を説明するための図である。
【図14】本発明の一実施例の基地局の構成の一例を示す図である。
【図15】本発明の一実施例の移動局の構成の一例を示す図である。
【図16】本発明の別の実施例の移動局の構成の一例を示す図である。
【図17】本発明の別の実施例のHOを説明する図である。
【図18】DRXサイクルを説明する図である。
【図19】本発明の一実施形態の変形例における基地局間ハンドオーバーの流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上記した本発明についてさらに詳細に説述すべく添付図面を参照して、本発明の実施の形態を以下に説明する。特に制限されないが、以下の実施の形態では、本発明を、3GPP LTEで検討されているシステムに実施した例に即して説明する。
【0022】
ハンドオーバー(「HO」と略記される)時のDRX(Discontinuous Reception;間歇受信)制御の一例として、基地局は、移動局のデータの送受信状況(「Activity」という)に応じて、非受信期間(non−reception)等のDRXサイクルに係るパラメータ(図18参照)を変更する。なお、ここでは3GPP LTEの一例を用いて説明しているので基地局が変更するものとしているが、3GPPの基地局制御装置(RNC)などのネットワーク側で変更するものとしても良い。Activityの度合い(程度)を表す指標として、例えば「Activityレベル」という指標を導入することができる。これは、例えば予め定められた期間(Tとする)において、送信バッファにデータで蓄積されている時間(Tsとする)の比率(%表示の場合、(Ts/T)x100(%))を用いることができる。なお、本発明において、Activityレベルは、(Ts/T)x100に制限されるものでなく、(Ts/T)x100以外にも、(Ts/T)と相関関係にある他の値(変換値)を用いてもよい。
【0023】
上記したように、「Activity」、「Activityレベル」に関して具体的な一例を説明したが、本願明細書において、「Activity」、「Activityレベル」の定義は、上記に制限されるものでないことは勿論であり、一般的なデータ送受信状況やその頻度を意味するものと理解されるべきものである。
【0024】
基地局又は移動局は、DRX制御のために用いる信号として、Activityレベル等に基づいて得られる「DRXレベル」という指標を用いてもよい。Activityレベルの値をそのままDRXレベルとしてもよいし、Activityレベル値に変換を施して得られた値(好ましくは、Activityレベルの値と相関の高い値)をDRXレベルとして用いてもよい。DRXレベルは%表示を用いてもよい。この場合、例えば0〜100%の範囲の値は、通常、離散値(例えば整数値)が用いられるが、小数等の連続値であってもよいことは勿論である。あるいは、DRXレベルとして、いくつかの離散的な代表値をとり得るようにしてもよい。
【0025】
以下では、まず、LTEの基地局間HOと、DRX制御を組み合わせた動作の1例として、
・移動局が、ソース基地局にメジャメントレポート(Measurement Report)を送信し、
・ソース基地局が、メジャメントレポートをみて、どの基地局をターゲット基地局候補とするかを決定し、ソースとターゲットの基地局間でハンドオーバーの可否の情報交換を行う、
という一連の動作が行われるHO準備期間における、移動局のDRX制御について検討してみる。
【0026】
例えば、DRX制御により非受信(non−reception)期間が長く設定された移動局は、現在設定されているDRX制御を無視して、アクティブ(Active)動作(移動局がダウンリンク信号を連続的に受信可能な状態)に移り、非受信(non−reception)期間が短く設定された移動局は、短い非受信(non−reception)期間のまま、HOを行う方法が知られている(例えば非特許文献2参照)が、その具体的実現方法は示されていなかった。そこで、以下ではその具体的実現方法を示す。
【0027】
以下に、図11を参照して、DRX制御中の移動局の基地局HOの手順を示す。
【0028】
ターゲット基地局から上りリンクのスケジューリング情報(UL allocation)が移動局に送信される。基地局間HOを行う移動局は、滞在するソースセルの周辺セルに関するメジャメントレポート(Measurement Report)をソース基地局へ送信する。
【0029】
ソース基地局は、移動局に対して、DRX(間歇受信)から連続的な受信動作へと移ること(あるいはDRXサイクルの非受信期間を短縮する)を指示する信号(DRX Control Signaling)を送信し、移動局のDRX制御を停止する。なお、図11に示すシーケンス動作例では、メジャメントレポート(Measurement Report)を受け取った基地局が移動局にDRX制御を停止する信号を出力しているが、メジャメントレポート(Measurement Report)を受け取った基地局は、必ずしも、移動局にDRX制御を停止する信号を出力する構成とする必要はない。例えば、予めルールを決めて、移動局が自分でDRX動作を停止するようにしてもよい。
【0030】
ソース基地局は、ターゲット基地局へ、移動局のRAN Context Data(QoS Profile、 AS configuration)を転送する。
【0031】
ソース基地局は、ターゲット基地局からHO受け入れが可能であることの通知((Context Confirm)を受け取った後、移動局に対してHO開始を許可するコマンド(HO Command)を送信する。
【0032】
移動局は、ソース基地局からHO開始コマンド(HO Command)を受信した後、ターゲットセルにおいて、上りチャネルであるRACHにて上りリンク同期(UL Synchronization)を送信し、ターゲット基地局から、送信タイミング調整値(Timing Advance:TA)と上りリンクのスケジューリング情報(UL allocation)を取得する。
【0033】
そして、移動局は、ターゲット基地局からの送信タイミング調整値(TA)に従って送信タイミングを調整して割り当てられた時間および周波数でHO Confirmを送信し、ターゲット基地局へハンドオーバーして来たことを通知する。
【0034】
移動局からのHO Confirmを受け取ったターゲット基地局は、ハンドオーバーの完了を伝える制御信号(HO Completed)を、ソース基地局へ送信し、MME(Mobility Management Entity)/UPE(User Plane Entity)へ、移動局が基地局間HOにより、自分が管理するセルに移動したことを通知し(UE(User Equipment) update to MME/UPE)、これにより基地局間HO動作が完了する。なお、この時点では、移動局はまだActive動作を行っている。
【0035】
ターゲット基地局は、ハンドオーバーして来た移動局が予め定められた期間(ターゲット基地局側で内蔵するタイマーで判断)データ送受信を行わなかった場合には、移動局に対するDRX制御をリスタートする。
【0036】
ターゲット基地局から上りリンクのスケジューリング情報(UL allocation:時間と周波数の割り当て情報)が移動局に送信され、移動局がデータを送信する(UL data transmission)。
【0037】
以上のように、HOとDRXを組み合わせた移動局の制御が行われる。
【0038】
図12は、図13のDRX滞在時間の算出を説明するための図であり、図12に、DRX動作中の移動局が、基地局間HOを行う場合のDRXレベルの変化の例を示している。移動局は、各セル内においてセル中心を通り直径と同じ距離だけ移動するものとする。
【0039】
図12の例では、
DRXレベルが、
100%のときを「Active」、
20%のときを、「DRX」
と呼ぶことにする。なお、図12において、DRXレベルが0%の状態のアイドル(Idle)は、RRC_Idle(LTE_Idle)状態である。
【0040】
DRXレベルが100%をActivity Levelが100%の場合として3GPP LTEを例として説明すると、1フレームを10 TTI(Transmission Time Interval)とすると、DRX Levelが100%(すなわち、Active動作)の移動局は、毎TTIに、ダウンリンク(DL)信号をモニタ(制御チャネルを復調)する。一方、DRX Levelが20%の移動局は、10TTI中の連続する2TTIだけDL信号をモニタし、残りの8TTIは非受信期間となってモニタしない。なお、DRXレベルが100%より小の値、例えば90%、あるいは95%等を、「Active」として定義してもよいことは勿論である。
【0041】
図12の例では、Cell 1を基地局1が管理し、同様に、Cell 2、3、4を基地局2、3、4がそれぞれ管理する。また、移動局は、Cell 2、3、4においてHO動作以外のデータ送受信を行わないものとする。DRX Levelの推移を太線で示す。
【0042】
図12において、XはHO時に移動局がActiveの時間、Yは、DRX制御が行われる時間(DRX滞在)である。
【0043】
移動局がCell 1に滞在しDRXであるとする。Cell 2へ基地局間HOを行うとき、この移動局は、Activeになり、HO動作を行う。Cell 2において移動局は、HO後にデータ送受信を行わないため、基地局2はActiveからDRXへの遷移時間に相当するタイマーのタイムアウト発生後で、移動局を、ActiveからDRXへ移す。以降、移動局は、Cell 2からCell 3、Cell 4、Cell 5へと次々にHOを行うが、このときの動作はCell 1からCell 2へHOした場合と同じである。
【0044】
HO時、移動局がActiveからDRXへ移行する遷移時間が1分(図12のX=1分)であり、移動局が30分間データ送受信を断続的に行うことを想定した場合の、30分間にDRXに滞在する時間について、移動速度、セル直径等のパラメータを変えた例を、図13に表形式で示す。
【0045】
なお、HOに要する時間は、数10msecでセル滞在時間に比べ十分短いため、この時間は無視して算出している。
【0046】
なお、図13では、移動局のデータ送受信状況はDRX制御を受ける程度のものである(Activeに設定する必要ない)ことを想定している。また図12、図13では、Cell 1〜Cell 5は、互いに境界を接して並置され、移動局は、複数セルの直径に沿った一直線上を、等速度で進行するというモデルを想定している。
【0047】
図13において、例えば移動局の移動速度が120km/h(=2km/分)でセル半径が6km(セル直径=12km)の場合、
各セルに滞在する時間は、12km/2km=6分(図12のX+Y=6分)であり、
HO回数は4回
であるため、
30分間では、5(=4+1)セルにまたがり、各セルにおいて、5(=6−1)分間ずつ、DRXに滞在する(すなわち、図12において、X=1分、Y=5分)。
【0048】
従って、30分の間に、DRXサイクルに滞在する時間は、5×5=25分となる。
【0049】
一方、移動速度が60km/hで、セル直径が1kmの場合、各セルの滞在時間と、ActiveからDRXサイクルへの遷移時間が、同じ1分であるため、この移動局は、30分間DRXに移ることはない。
【0050】
すなわち、図12において、X=1分、X+Y=1分より、Y=0分となり、ターゲットセルでのDRX制御が開始されないまま、早くも次のHO動作に移り、結局、Cell 1〜Cell 5を進行する間、DRX制御が行われないまま、4回のHOが行われる。
【0051】
このように、Activityが低い移動局が1つのセルに滞在する時間が、DRXサイクルへの遷移時間(この時間は例えば基地局側のタイマー等で管理される)よりも短い場合には、当該セル内にて、DRXサイクルへの遷移ができないため、移動局は余分な電力を消費する。
【0052】
同様に、セルに滞在する時間が、RRC_Idle状態へ遷移時間よりも短い場合には、RRC_Idle状態への遷移ができないため、移動局は余分な電力を消費する。さらに、この場合、Activityが低く、RRC_Idle状態にできる移動局が、本来は不必要であるHOを繰り返すことにより、ネットワーク(基地局、UPE/MME)の負荷が必要以上に増加することにもなり、さらなる改善の余地が残されている。
【0053】
本発明の別の側面の実施形態は、基地局間HO後のターゲットセルにおける移動局のDRX制御を、例えばHO完了と同時に開始し、ターゲットセルでの移動局の余分な電力消費の発生を抑え、不必要なHOの繰り返しを避けることで、ネットワークの負荷の低減を図るものである。特に制限されないが、以下の実施の形態でも、本発明を3GPP LTEで検討されているシステムに実施した例を説明する。
【0054】
図1と図2は、本実施の形態において、DRX動作を行っている移動局の基地局間HOの流れ(シーケンスダイアグラム)とシステム構成概念を示す図である。
【0055】
ソース基地局(101)から上りリンクのスケジューリング情報(UL allocation)が移動局(103)に送信され、移動局(103)は基地局間HOを行うにあたり、まず滞在するソースセルの周辺セルに関するメジャメントレポート(Measurement Report)をソース基地局(101)へ送信する。
【0056】
ソース基地局(101)は、移動局(103)へ、DRX動作からActive動作へと移ることを指示する信号(DRX Control Signaling)を送信し、移動局(103)のDRX制御を停止する。
【0057】
ソース基地局(101)は、ターゲット基地局(102)へ、移動局(103)のQoS Profile、AS Configurationのほか、ドーマンシ・コンテキスト(Dormancy Context)を転送する。
【0058】
ソース基地局(101)は、ターゲット基地局(102)からHO受け入れが可能であるこの通知信号(Context Confirm)を受信後、移動局(103)へHO開始を許可する信号(HO Command)を送信する。
【0059】
移動局(103)は、ソース基地局(101)からの制御信号(HO Command)を受信した後、上りチャネルであるRACH(Random Access Chanenl)にてターゲット基地局(102)にアクセスし、ターゲット基地局(102)から送信タイミング調整値(Timing Advance:TA)と上りリンクのスケジューリング情報(UL Allocation)を取得する。
【0060】
移動局(103)は、送信タイミング調整値(TA)に従って送信タイミングを調整し、割り当てられた時間および周波数で、信号(HO Confirm)を、ターゲット基地局(102)へ送信し、HOして来たことを通知する。
【0061】
ターゲット基地局(102)は、制御信号(HO Completed)をソース基地局(101)へ送信し、MME/UPE(104)へ、移動局(103)が基地局間HOにより自分が管理するセルに移動したことを通知し(UE update to MME/UPE)、これにより基地局間HO動作が完了する。
【0062】
HO動作完了後、ターゲット基地局(102)は、ソース基地局(101)より転送された、移動局のソースセルでの、
QoS Profile;
AS Configuration;
Dormancy Context;
UPE(User Plane Entity)から到着したパケット量;
ターゲット基地局(102)の持つ内部的な情報;
のうち、少なくとも、ドーマンシ・コンテキスト(Dormancy Context)を用いて、移動局(101)のDRX制御を行い、適切なDRX動作に移す信号(Early DRX Control Signaling)を送信する。
【0063】
ここで、ドーマンシ・コンテキスト(Dormancy Context)として、
(A)現在のDRXレベル;
(B)現在のDRXレベルに滞在した時間;
(C)ソースセルでの平均DRXレベル;
(D)ソースセルでの最大DRXレベル;
(E)ソースセルでの最小DRXレベル;
(F)HO準備期間の送信バッファサイズ;
(G)ソースセルでスケジューリングされた時間/ソースセルでRRC_Connectedにいた時間;
等を用いることができる。
【0064】
なお、本実施例では、DRXレベルに対応して、DRXサイクル(DRX期間)は規定されるものとしているが、DRXサイクルの長さは、DRXレベルに応じて、基地局が、その都度決定するようにしてもよい。あるいは、基地局や移動局に、DRXレベルとDRXサイクル(DRX期間)の対応表を具備しておき、該対応表を参照して、DRXサイクル(DRX期間)を決定してもよい。DRXレベルの値が高いものほど、DRXサイクル中の非受信期間の割合が、受信期間の割合よりも低くなるように設定されていることが望ましい。この対応を前提として、以下の実施形態で説明が行われるが、必ずしもこのような設定に限るものではない。
【0065】
本発明において可能とされるDRX制御として、例えば下記の手法がある。
【0066】
(I)DRXサイクル(DRX期間)は固定とし、その内の受信期間と非受信期間の割合を調節する。
【0067】
(II)受信期間を固定として非受信期間を調節する。同時に、DRXサイクル(DRX期間)の長さも変化する。
【0068】
(III)受信期間と非受信期間の比を固定とし、DRXサイクル(DRX期間)を調節する。
【0069】
以下に、それぞれを用いた場合の基地局間HO後のターゲットセルにおける移動局のDRXレベルであるLNEWを決定する方法を示す。
【0070】
(A)ドーマンシ・コンテキスト(Dormancy Context)として、現在(HO要求時点のソースセルで)のDRXレベル(=LOLD)を用いる場合、式(1)からLNEWを決定する(図3)。


【0071】
ここで、Mは予め定義したマージンであり、固定値である。図3に示す例では、M=25%とし、LOLD=25%からLNEW=50%としている。
【0072】
(B)ドーマンシ・コンテキスト(DORMANCY CONTEXT)として、現在のDRX滞在時間Tと現在のDRXレベルを用いる場合、式(2)、(3)から、LNEWを決定する(図4)。

【0073】


【0074】
ここで、M1、M2は予め定義したマージンであり、M1<M2である。Tは予め定義したマージンの選択を行うための閾値である。
【0075】
現在のDRX滞在時間Tが閾値時間T以上の場合、マージンMをM1、TがT未満の場合、MをM2とし、LOLDにMを加算した値をLNEWとしている。
【0076】
(C)ドーマンシ・コンテキスト(DORMANCY CONTEXT)として、ソースセルでの平均DRXレベル(=LAVE)を用いる場合、式(4)からLNEWを決定する。

【0077】
ここで、DRXレベルとして整数値を用いる場合、LAVEは、

以上(または以下)、かつ最も近い値であり、MAVEは予め定義した固定のマージンである。
【0078】
(D)ドーマンシ・コンテキスト(DORMANCY CONTEXT)として、ソースセルでの最大DRXレベル(=LMAX)を用いる場合、式(6)からLNEWを決定する。

【0079】
ここで、MMAXは予め定義したマージンで、固定値である。
【0080】
(E)ドーマンシ・コンテキスト(DORMANCY CONTEXT)として、ソースセルでの最小DRXレベル(=LMIN)を用いる場合、式(7)からLNEWを決定する。

【0081】
ここで、MMINは予め定義したマージンで、固定値である。
【0082】
(F)ドーマンシ・コンテキスト(DORMANCY CONTEXT)として、ソースセルにおけるHO準備期間でのソース基地局の送信バッファサイズ(SBUF)を用いる場合、式(8)のように、予めK個の閾値とK−1個のDRXレベルの関係を定義して、LNEWを決定する(図5)。

【0083】
図5(A)の例では、LOLDが25%のとき、ソースセルにおけるHO準備期間のソース基地局の送信バッファサイズSBUFがS≦SBUF≦Sであるため、図5(B)のバッファ閾値とLNEWの対応表から、LNEW=50%としている。なお、バッファ閾値とLNEWの対応表は、基地局内のコントローラが参照可能なメモリ(書き換え可能な不揮発性メモリ等)に保持される。
【0084】
(G)ドーマンシ・コンテキスト(DORMANCY CONTEXT)として、ソースセルでスケジューリングされた時間/ソースセルでRRC_Connectedの状態にいた時間(RSCR)を用いる場合、式(9)のように、予めK個の閾値とK−1個のDRXレベルの関係を定義して、LNEWを決定する。

【0085】
(H)ドーマンシ・コンテキスト(DORMANCY CONTEXT)として、上記のうち複数(J個)を用いる場合、式(10)からLNEWを決定する。

【0086】
ここで、wは、j番目のDORMANCY CONTEXTから決まるLNEW,jに対する重みであり、以下の関係を満たす。

・・・(11)
【0087】
以下、いくつかの実施例に即して説明する。
【0088】
<第1の実施例>
図6、図7は、本発明の第1の実施例を説明するための図である。第1の実施例として、ドーマンシ・コンテキスト(DORMANCY CONTEXT)として、現在のDRXサイクルを用いて、以下の式(12)(上式(1)と同じ)によりターゲットセルにおけるHO完了期間における移動局のDRXレベルを決定する場合の例を示す。

【0089】
なお、本実施例ではM=0、つまり、HO完了期間におけるターゲットセルでのDRXレベルをHO動作開始直前のソースセルでのDRXレベルと同じ状態にする。
【0090】
本実施例において、移動局のDRXレベルが
100%のときを「Active」、
60%のときを「Short DRX」、
20%のときを「Long DRX」、
0%のときを「Idle」
と呼ぶ。なお、前述したように、DRXレベルが100%以下、例えば90%のときを「Active」と定義してもよい。例えば「Short DRX」による制御では、DRXサイクルにおける非受信期間の割合が、「Long DRX」の非受信期間の割合よりも短く設定される。
【0091】
ここで、4つのセルCell 1、2、3、4があり、各セルと基地局の関係として、Cell 1、2、3、4を、基地局1、2、3、4がそれぞれ管理するものとする。
【0092】
また、移動局は、Cell 1、2、3、4へ順にHOを行い、Cell 2、3、4において、HO動作以外のデータ送受信を行わないものとする。
【0093】
DRX動作の移動局の基地局間HOにおいて、本発明を用いた場合のDRXレベルの変化が、図6のようになったものとする。
【0094】
初期状態として、高速移動をしている移動局がCell 1に滞在し、Long DRXであるとする。Cell 2へ基地局間HOを行うとき、この移動局は、Activeになり、HO動作を行う。
【0095】
本実施例では、HO完了期間のターゲットセルにおける移動局のDRXレベルを、ソースセルでのDRXレベルと同じにするため、HO完了期間のCell 2における移動局のDRXレベルを、Cell 1におけるDRXレベルと同じく、Long DRXと決定する。
【0096】
基地局2は、HO完了期間において、移動局に、Long DRXに移ることを指示する信号(Early DRX Control Signaling)を送信し、HO完了後すぐに移動局のDRX制御を開始する。
【0097】
移動局は、Cell 2からCell 3、Cell 3からCell 4へ順に、HOを行うが、Cell 1からCell 2へのHOと同様に、各基地局は、HO完了期間において、すぐに移動局をLong DRXへ移し、DRX制御を開始する。これにより、HO後のセルにおける移動局の余分な電力消費を低減することができる。
【0098】
図7に、ActiveからDRXへの遷移時間が1分であり、移動局が30分間データ送受信を断続的に行うことを想定した場合の、30分間にDRXに滞在する時間を示す。なお、HOに要する時間は数10msecでセル滞在時間に比べ十分短いため、この時間は無視して算出している。
【0099】
また、移動局は、HO先でも、そのデータ送受信状況が、DRXで制御される程度のものであるものとする(Activeに維持する必要はない)。さらに、移動局は、各セル内においてセル中心を通り直径と同じ距離だけ移動するものとする。また、各Cellは、互いに境界を接して並置され、移動局は、複数セルの直径に沿った一直線上を、等速度で進行するというモデルを想定している。
【0100】
本発明を用いる場合、移動局のDRXレベルをHO完了直後(例えば数ms後)にソースセルと同じDRXレベルに移す。
【0101】
図7において、例えば移動局の移動速度が120km/hでセル直径が12kmの場合、各セルに滞在する時間は6分、HO回数は4回で、5セルにまたがって滞在する。
【0102】
前述したように、図13の例では、基地局が持つタイマーが切れたことをトリガとして、ActiveからDRXへ遷移させるため、30分の間に、DRXに滞在する時間は、25(=(6−1)×5)分となる。
【0103】
本実施例では、HO完了期間で移動局をDRXに移すことができるため、30分の間にDRXに滞在する時間は、初めのセルに滞在していたときの5(=6−1)分と、HO後の各セルでの24(=4×6)分の計29分となる。
【0104】
この結果、本発明によれば、図13の実施形態の場合(25分)と較べ、DRX滞在期間は、+4分の増加となる。そして、DRX滞在期間の増分に比例して、移動局の消費電力を低減することができる。
【0105】
一方、移動速度が60km/hでセル直径が1kmの場合、各セルに滞在する時間は1分でHO回数は29回で、30セルにまたがって滞在する。
【0106】
図13の例では、各セルの滞在時間とActiveからDRXへの遷移時間が同じ1分であるため、移動局は、30分間ずっと、DRXに移ることはない。すなわち30分間ずっと、Activeのままである。
【0107】
本実施例によれば、HOの完了により、ただちに、移動局をDRX(例えばLong DRX等)に移すことができ、HO後の各セルでも、DRXに滞在することができる。このため、30分の間に最大DRXに滞在する時間は、初めのセルに滞在していたときの0(=1−1)分と、HO後の各セルでの29(=1×29)分の計29分となる。
【0108】
この結果、本発明により得られるDRX滞在期間は、図13に示した場合と比べて、+29分の増加となり、さらに移動局の消費電力を低減することができる。
【0109】
<第2の実施例>
図8、図9は本発明の第2の実施例を説明するための図である。本発明の第2の実施例として、ドーマンシ・コンテキスト(DORMANCY CONTEXT)に現在のDRXレベルLOLDと現在のDRXレベルに滞在した時間Tを用いて、式(13)、(14)(上式(2)、(3)と同一)により、ターゲットセルにおけるHO完了期間における移動局のDRXレベルを決定する場合の例を示す。

【0110】


【0111】
なお、Tは予め定義した閾値で、Mはマージンである。また、M1=−40%、M2=0%とし、DRXレベルが負の値になった場合には0に置き換える。
【0112】
本実施例において、移動局のDRXレベルが、
100%のときを「Active」、
60%のときを「Short DRX」、
20%のときを「Long DRX」、
0%のときを「Idle」
と呼ぶ。前述したように、DRXレベルが100%以下、例えば90%のときを「Active」と定義してもよい。例えば「Short DRX」による制御では、DRXサイクルにおける非受信期間の割合が、「Long DRX」の非受信期間の割合よりも短く設定される。
【0113】
ここで、各セルと基地局の関係として、Cell 1、2、3、4を基地局1、2、3、4がそれぞれ管理するものとし、移動局はCell 2、3、4においてHO動作以外のデータ送受信を行わないものとする。
【0114】
本実施例において、基地局間HOを行った場合のDRXレベルの変化が、図8のようになったものとする。
【0115】
初期状態として、高速移動をしている移動局がCell 1に滞在し、LongDRXであるとする。また、この移動局がCell 1でLong DRXに滞在している時間TがT以上であるとする。
【0116】
Cell 2へ基地局間HOを行うとき、この移動局は、Activeになり、HO動作を行う。
【0117】
本実施例では、HO完了期間のターゲットセルにおける移動局のDRXレベルをソースセルでのDRXレベルにマージンを加えた値とするため、HO完了期間のCell 2における移動局のDRXレベルLNEW、2は、Cell 1におけるDRXレベル LOLD、1=20%にマージンM=M1=−40%を加え、0 %(実際は−20%だが、負は0に置き換える)、つまりIdle状態に移すことを決定する。
【0118】
基地局2は、HO完了期間において移動局にIdle状態に移ることを指示する信号(Early DRX Control Signaling)を送信する。
【0119】
これにより、移動局はCell 2からCell 3、Cell 3からCell 4へ順にHOを行う必要がなく、移動局の余分な電力消費を低減することができる。
【0120】
また、ネットワーク(NW)は、移動局の不必要なHOを繰り返すことによる負荷の増加を回避することができる。
【0121】
図9に、ActiveからLong DRXへの遷移時間が1分であり、Long DRXからIdleへの遷移時間が5分であることを想定した場合の、移動局がIdleになるまでに繰り返すHOの回数を示す。
【0122】
なお、HOに要する時間は約数10msecでありセル滞在時間に比べ十分短いため、この時間は無視して算出している。
【0123】
また、初期状態として、初めに滞在するセルで移動局はLong DRXであり、次のセルへのHOは必ず行うものとし、観測時間を30分とする。
【0124】
さらに、移動局は、各セル内においてセル中心を通り直径と同じ距離だけ移動するものとする。本発明を用いる場合、HO完了直後(例えば数ms後)にソースセルと同じDRXレベルにマージンを加えた値に決定する。
【0125】
本実施例では、最大DRXに滞在する時間が5分未満の場合にはLong DRXとし、5分以上の場合には、負のマージンを加えIdle状態(RRC_Idle)に移すものとする。
【0126】
図9において、例えば移動局の移動速度が120km/hでありセル直径が12kmの場合、各セルに滞在する時間は6分となり、HOは、初めの1回のみで、2セルにまたがって滞在する。
【0127】
従来の技術では、基地局が持つタイマーが切れたことをトリガとしてActiveからLong DRXへ、またはLong DRXからIdleへ遷移するため、2番目のセルにおいて1分後に、Long DRXとなり、さらに5分後に、Idleになる。
【0128】
本発明によれば、HO完了期間で移動局をLong DRXへ移すことができ、その後5分で、移動局をIdleへ移すため、HO回数は同じく1回である。
【0129】
図13に示した例では、Long DRXになるまでに1分間要するのに対し、本実施例によれば、1分を待たずに、わずか、数msでLong DRXに移すことによる移動局の消費電力を低減することができる。
【0130】
次に、移動速度が60km/hであり、セル直径が1kmの場合、各セルに滞在する時間は1分である。
【0131】
図13に示した例では、Long DRXに移る前に、次のHOを行うため、観測期間30分の間ずっとHOを繰り返し、HO回数は29回となる。
【0132】
一方、本実施例によれば、初めのHOの直後(例えば数ms後)に移動局をLong DRXへ移すことができるため、HOを繰り返しても、Long DRXに滞在する時間が加算され、HOを5回繰り返した後で、Long DRXからIdleへ移すことができる。
【0133】
従って、本発明によれば、図13に示した例と比べて、HO回数の増減は、−24回となり、移動局の消費電力の低減、およびネットワーク(NW)の負荷の低減が実現できる。
【0134】
上記のとおり、本発明により、DRX動作を行う移動局の基地局間HOにおける余分な電力消費や、NWの負荷の増大を回避することができる。
【0135】
なお、ドーマンシ・コンテキスト(DORMANCY CONTEXT)として、上記の他に、ソース基地局の最大送信バッファサイズ、ソースセル基地局の平均バッファサイズ等を用いてもよい。ソースセル基地局における平均バッファサイズ等は、定期的なポーリングによる送信バッファサイズの監視結果、あるいは送信バッファへのデータ蓄積時のイベント発生に基づく送信バッファサイズのログ結果等から算出される。
【0136】
また、HO後のターゲットセル内のDRX制御として、以下に記載する手法法を用いてもよい(図10参照)。
【0137】
移動局と基地局がRRC接続を確立している(RRC_Connected state)ことを前提とし、移動局が一定時間TDにデータ送受信をしていない場合、その移動局のDRXレベルを式(15)のように低くする。

【0138】
反対に、移動局が一定時間TUにデータ送受信を継続している場合、その移動局のDRXレベルを式(16)のように高くする。

【0139】
なお、このDRX制御を実現する方法として、
・基地局がLNEWを決定し、移動局へLNEWを通知する方法と、
・基地局が移動局へ、DL、TU、TDを通知し、基地局と移動局のそれぞれでLNEWを決定する方法
のいずれを用いてもよい。
【0140】
なお、このDRX制御方法は、HO後の移動局に対してだけでなく、ある1つのセル内に滞在する移動局についても適用が可能である。
【0141】
上記実施例では、ActiveからLong DRXへの遷移時間を1分としたが、ActiveからLong DRXへの遷移時間が長くなるのに応じて、本発明の効果が顕著となる。なお、本発明においては、移動局が下りリンクの連続受信に入って、一定期間データの送信がない場合に、DRX(間欠受信)に入らずに、RRC_IDLE状態になる場合もある。
【0142】
図14は、図1及び図2に示した実施例の基地局の構成の一例を模式的に示す図である。図1、図2におけるソース基地局(101)とターゲット基地局(102)は同一構成とされており、このため、図14には、ソース基地局のみの構成が示されている。図14を参照すると、不図示の送信部と受信部を備えた無線部(RF)105と、ベースバンド処理を行うベースバンド部106と、送信データの符号化、受信データの復号化を行う符号化/復号化部(CODEC)107と、制御部108と、ターゲット基地局と有線で通信する送信/受信部109と、DRXレベルを導出するDRXコントローラ110と、バッファ部111と、送信する制御信号の符号化、受信制御信号の復号化を行う符号化/復号化部112とを備えている。
【0143】
制御部108は、符号化/復号化部(CODEC)107、DRXコントローラ110の動作を制御するスケジューラ108−1と、送信/受信部109を制御するコントローラ108−2を備えている。バッファ部111は、送信データを蓄積する送信バッファ(不図示)と受信データを蓄積する受信バッファ(不図示)を備えている。DRXコントローラ110は、バッファ部110の送信バッファに蓄積されるデータを監視し、移動局のActivityレベルを導出し、前述したように、Activityレベルそのもの、あるいは、Activityレベルに対する演算等により求められActivityレベルと相関関係を有するDRXレベルを導出する。スケジューラ108−1は、例えばDRXコントローラ110に対して送信バッファの監視タイミングを通知する。
【0144】
DRXコントローラ110からのDRXレベルを取得したコントローラ108−2は、DRX制御を行う場合、信号(DRX Control Signaling)を移動局に送信するように制御する。制御部108からの制御信号は符号化/復号化部112で符号化され、DRX Control Signalingに対応する制御信号が生成され、ベースバンド処理され、無線部105から移動局に無線送信される。コントローラ108−2は、DRXコントローラ110からのDRXレベルを含むドーマンシ・コンテキスト(DORMANCY CONTEXT)のほか、QoS Profile As Configurationを含むコンテキストデータ(Context Data)を、送信/受信部109を介して、ターゲット基地局に送信する。また、コントローラ108−2は、送信/受信部109を介して、ターゲット基地局から信号(Context Confirm、HO Completed等)を受信した場合、スケジューラ108−1に通知し、当該イベント発生に対応して、スケジューラ108−1が次の処理をスケジューリングする。
【0145】
本発明において、移動局として3GPP−LTE携帯端末を用いることもできる。前述したように、基地局側で移動局のActivityレベルを検出しDRXレベルを導出してもよいし、あるいは、移動局側で移動局のActivityレベルを検出し、基地局に通知する構成としてもよい。図15は、本発明の通信端末の一実施例をなす移動局の構成の一例を示す図である。図15を参照すると、移動局(通信端末)103において、Activityレベルコントローラ(Activity Level CTRL)126は、バッファ部124の送信バッファの蓄積状態をモニタしてActivityレベルを算出する。制御部125は、不図示のスケジュール部を備え、バッファ部124の送信バッファの蓄積状態の監視の制御を行う。Activityレベルは、例えば制御制御信号として、基地局に送信され、基地局では、移動局から受信したActivityレベルに基づきDRXレベルを導出し、DRX制御を行うようにしてもよい。移動局103において、DRXサイクルの非受信期間には、RF部121のRF受信部(不図示)をインアクティブに設定する。なお、ベースバンド部122、CODEC123、127等の説明は省略する。
【0146】
図16は、本発明の通信端末の他の実施例をなす移動局の構成の一例を示す図である。この実施例の移動局(通信端末)は、図15のActivityレベルコントローラのかわりに、DRXレベルコントローラ(DRX Level CTRL)128を備えている。DRXレベルコントローラ128は、バッファ部124の送信バッファ(不図示)の蓄積状態をモニタしてActivityレベルを算出し、Activityレベルにしたがって、DRXレベルを導出する。そして、得られえたDRXレベルにしたがって、自律的にDRX制御を行う。DRX制御へ移行する場合、DRXレベル、DRX制御を開始したこと等を制御信号で基地局に送信し、基地局では、移動局がDRX制御を開始したことを記録管理する。
【0147】
次に、本発明のさらに別の実施例として、3GPP LTEとWCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)のデュアル対応の移動局を例に説明する。図17は、本発明の別の実施例を説明する模式図である。図17(B)は、図17(A)の基地局制御局(RNC:「無線ネットワーク制御装置」ともいう)4のドーマンシコントール部の構成を示す図である。第1のLTE基地局1から第2のLTE基地局2に少なくともドーマンシ・コンテキスト(Dormancy Context)が転送され、第1のLTE基地局1でのDRXレベルに応じて、第2のLTE基地局2で、直ちにDRX制御を行う。第2のLTE基地局2から、WCDMAの基地局5にハンドオーバーする場合、第2のLTE基地局2から基地局制御局(RNC)4へ少なくともドーマンシ・コンテキスト(Dormancy Context)が転送され、基地局制御局4から基地局5へDRXレベルが送信され、ハンドオーバー前の3GPP−LTE基地局での移動局の活動状況に応じて、WCDMA基地局5は、移動局3のDRX制御を行う。基地局制御局4は、図17(B)に示すように、LTE基地局からのドーマンシ・コンテキスト(Dormancy Context)を送受信インタフェース41を介して受け取り、送受信インタフェース42を介して配下のWCDMA基地局5に送信するドーマンシ・コントロール中継部44を備えている。
【0148】
なお、WLAN(Wireless Local Area Network)のアクセスポイント(AP)間のハンドオーバー、WiMAX(Worldwide interoperability of Microwave Access)の基地局間のハンドオーバーにも本発明を適用できることは勿論である。
【0149】
さらに、無線通信自在な第1、第2のノードが相対的に移動自在とされ、第2のノードが第1のノードを管理する状態から、無線通信自在な第1、第3のノード(第2のノードと通信接続)が相対的に移動自在とされ、第3のノードが第1のノードを管理する状態に移行する場合の第1のノードの間歇受信を制御する場合にも適用できる。
【0150】
図19は、本発明の一実施形態の変形例における基地局間ハンドオーバーの流れを説明するための図である。図1に示した前記実施形態では、ターゲット基地局102がソース基地局101にハンドオーバー完了を伝える信号(HO Completed)を送信した後、移動局103に対して、DRX制御の開始を指示する信号(Early DRX Control Signaling)が送信しているが、この信号(Early DRX Control Signaling)を送る代わりに、例えば図19に示すように、ターゲット基地局102からソース基地局101へ送信される信号(Context Confirm)と、ソース基地局101から移動局103へ送信されるコマンド(HO Command)にDRX制御情報(例えば、DRXレベル、DRXサイクル等で、Early DRX Control Signalingの内容と等価な内容)を含めることで、DRX制御情報を、移動局103へ送るようにしてもよい。すなわち、図19において、ターゲット基地局102は、ソース基地局101からContext Dataを受信すると、Context Dataに含まれるDormacy Contextに基づきDRX選択処理(DRX Selection)を実行し、選択したDRX制御情報(New DRX制御情報)を、信号(Context Confirm)にてソース基地局101に送信する。ソース基地局101は、DRX制御情報(New DRX制御情報)をコマンド(HO Command)にて移動局103に送信する。該信号(Context Confirm)を受信した移動局103は、ターゲット基地局102に対して信号(HO Confirm)を送り、ターゲット基地局102から、該信号(HO Confirm)が正しく受信されたことを示す応答が帰ってきた後、ただちに、DRXを開始する。
【0151】
移動局のバッテリの適正な消費を可能とするため、E−UTRAN(Evolved UTRAN)におけるDRXは、下記を特徴とする。
【0152】
DRXの異なるレベルを区別するためのRRCやMAC(Medium Access Control)のサブステート(サブ状態)は存在しない。
【0153】
利用可能なDRXの値は、ネットワーク(NW)によって制御され、非DRXからx秒間まで存在する。値xはLTE_IDLEで使用されるページング(paging)DRXと同じくらいかもしれない(なお、具体的な値は今後の検討課題であり、本明細書では規定しない)。
【0154】
測定要求とレポート基準は、DRX期間の長さに応じて異なってもよい。つまり、長いDRX期間は、より緩和された要求に対応するものであってもよい。
【0155】
ネットワーク(NW)は移動局(UE)に、サービング(Serving cell)の無線品質(無線品質の正確な定義はFFS)が閾値を上回っている場合、隣接セル(Neighbouring cell)の測定(measurement)を行わなくてもてよいということを示す当該閾値を送るかもしれない。
【0156】
DRXサイクルに関係なく、移動局(UE)は、測定報告(UL measurement report)を送るために、最初に利用可能なRACHの機会を使用するかもしれない。測定報告(Measurement report)を送った直後に、移動局(UE)は自身のDRX動作を変えるようにしてもよい(その方法がeNBによって予め規定されるかどうかは、今後の検討課題である)。
【0157】
上りリンクデータ送信に関するHARQ処理は、DRX処理とは独立である。DLデータのHARQ処理がDRX処理と独立がどうかは今後の検討課題である。
【0158】
ハンドオーバーの間、ソースeNBは、ハンドオーバーの前後のDRX制御の継続を最適化するために、ターゲットeNBへドーマンシ・コンテキスト(Dormancy context)を転送する。ドーマンシ・コンテキスト(Dormancy context)は、少なくとも、最新のDRXレベル、ソースセルでの平均/最大/最小のDRXレベルを含む。ターゲットeNBは、UEがソースcellで低いDRXレベルに滞在していたならば、UEの状態をLTE_IDLEへ移すといった処理にもドーマンシ・コンテキスト(dormancy context)を使用することができる。
【0159】
以上、本発明を上記実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例の構成にのみ制限されるものでなく、本発明の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【0160】
本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。
【符号の説明】
【0161】
1、2 LTE基地局
3、103 移動局
4 基地局制御局
5 WCDMA基地局
41、42 送受信インタフェース
43 制御部
44 ドーマンシ・コントロール中継部
101 ソース基地局
102 ターゲット基地局
104 MME/UPE
105 無線部
106 ベースバンド部
107、112 符号化/復号化部
108 制御部
108−1 スケジューラ
108−2 コントローラ
109 送信/受信部
110 DRXコントローラ
111 バッファ
121 無線部
122 ベースバンド部
123、127 符号化/復号化部
124 バッファ
125 制御部
126 Activityレベルコントローラ
128 DRXレベルコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局と少なくとも1つの移動局を含む無線通信システムにおける移動局であって、
前記基地局から通知されたDRX cycleの異なる2つのDRX設定のうち、DRX cycleが短いDRX設定を使用中に、予め定められた期間データ受信を行わない場合、DRX cycleが長いDRX設定の使用を開始する移動局。
【請求項2】
複数の基地局と少なくとも1つの移動局を含む無線通信システムの移動局における通信制御方法であって、
前記基地局から通知されたDRX cycleの異なる2つのDRX設定のうち、DRX cycleが短いDRX設定を使用中に、予め定められた期間データ受信を行わない場合、DRX cycleが長いDRX設定の使用を開始する通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−166838(P2011−166838A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112556(P2011−112556)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【分割の表示】特願2008−557090(P2008−557090)の分割
【原出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】