説明

移動局装置

【課題】 移動局装置において、通話の途切れを生じさせることなく、周辺基地局周波数へ受信周波数を切り替えた受信レベル(受信電界強度)の検出を実現し、通話品質の高いハンドオフを実現する。
【解決手段】 音声データを転送するトラフィックチャネル(TCH)と制御データを転送する複数の制御チャネル(LP+R、P、RI、SW、未定義)とを含む通信フレームにより、基地局装置1(自局)と無線通信する移動局装置3は、連続する複数の通信フレームの間欠的な通信フレームにおいて、その制御チャネル(RI、SW、未定義)を受信する時間で、自局と無線通信している周波数f1を周辺基地局2の周波数f2に切替えて、周波数f2での受信レベルを検出する制御を行なう。これによって、音声データを取り溢すことなく、他の周波数f2による受信レベルのサーチを行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信に用いる周波数を切り替えるために行なうサーチ処理を、音声通信を途切れさせることなく行なうことができる移動局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トランシーバーや携帯電話機などといった移動局装置は、基地局装置がカバーする無線通信エリア内において、基地局装置毎に設定された周波数により、基地局装置と無線通信する。
例えば、ARIB STD−T61に準拠したSCPC(Single Chanel Per Carrier)方式によるデジタル移動通信システムは、図5に例示するように、基地局装置及び、携帯無線機や車載無線機などの移動局装置と基地局装置とで構成され、基地局装置と移動局装置との間あるいは移動局装置間基地局装置経由または直接で無線通信を行う。なお、この通信方式は、1つの無線キャリアが1つの通信周波数に対応し、1つの基地局装置は1つの通信周波数で通話サービスすることを基本としている。
【0003】
このような移動通信システムでは、異なる通信周波数が設定された複数の基地局装置を設置し、各基地局装置の無線通信エリアを隣接させて、広範囲なエリアにおける移動局装置の無線通信を実現している。
そして、このような無線通信は、音声データを転送するトラフィックチャネルと制御データを転送する複数の制御チャネルとを含む通信フレームによりなされ、例えば、SCPC方式では図6に示すような構成の通信フレームが用いられる。
図6において、40msの通信フレームが連続しており、各通信フレームは、LP+R、P、TCH、RI、SW、未定義、TCHの各チャネルを含んでいる。
【0004】
LP+Rは、リニアライザ用プリアンブル及びバースト過渡応答用ガードタイムのチャネルであり、20bit割り当てられている。ここに、ガードタイムは異なる移動局装置からの送信信号が、前後する受信フレーム間で衝突する時間だけ、信号内容長をガードするためのものであり、また、リニアライザ用プリアンブル及びバーストの過渡応答用ガードタイムLP+Rは移動局装置及び基地局装置において送信電力増幅器の直線性を改善するために使用するものである。
【0005】
Pは、プリアンブルのチャネルであり、2bit割り当てられている。ここに、プリアンブルは、データの始まりに付加する区切り用の特殊ビット列である。
TCHは、トラヒックチャネルであり、96bitおよび160bit割り当てられている。このトラヒックチャネルにより、通話の音声データが転送される。
【0006】
RIは、無線情報チャネルであり、56bit割り当てられている。このRIは、全ての物理無線チャネル上に配置され、無線チャネル構造、動作モード、通信モード等のチャネル情報を転送するために用いられる。
SWは、同期ワードのチャネルであり、20bit割り当てられている。同期ワードは、装置間の同期確立を行うために使用するビット列である。
未定義は、20bit割り当てられている。
【0007】
すなわち、通話を転送するという無線通信システムの観点からすると、音声データを転送するトラフィックチャネル(TCH)と、その他のチャネル(LP+R、P、RI、SW)とで、通信フレームが構成されているということができ、これらその他のチャネル(LP+R、P、RI、SW)はそれぞれ通信に係る制御データを転送する制御チャネルということができる。
【0008】
また、上記のように複数の基地局装置を配置して移動局装置の無線通信エリアを構成するシステムでは、図7に示すように、待受状態や通話中に移動局装置3が、通信周波数f1の基地局装置1のエリアから通信周波数f2の基地局装置2のエリアへ移動した場合、より受信品質の高い(一般的には、受信電界強度が高い)基地局装置2の周波数f2へ通信周波数を切り替えるハンドオフがなされる。このハンドオフでは、移動局装置は電波を受信している基地局装置自局の受信品質が劣化してくると、自局周辺に存在する他の基地局装置周辺基地局の受信品質を測定し、より高い受信品質の周辺基地局へ通信周波数を移行する。
【0009】
なお、図8に示すように、移動局装置3が自局1の通信エリア内であるが電波状況が悪い場所に移動した場合などのように、自局1との受信品質が劣化しているにもかかわらず、より受信品質の良い周辺基地局が見つからない場合は、自局との通話を継続しようとするが、この場合でも、移動局装置3は常に周辺基地局の受信品質を計測しつづけている。
【0010】
特許文献1には、移動局装置において、全ての基地局の受信電界強度を計測して優先順位を割り振り、閾値よりも高い受信電界強度の中から優先順位の高い基地局に切替えるデジタル無線通信システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−171445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
移動局装置は、小型化や低価格化の要請があることから、無線受信を行なう受信系を1つだけ備えたものがあり、典型的な例として、SCPC方式のシステムに用いられる移動局装置では、1つの受信系により基地局装置(自局)との通話通信と他の基地局(周辺基地局)の受信電界強度の検出とを行なって、ハンドオフを行なっている。
移動局装置が、このように自局と通話しながら周辺基地局の受信電界を測定するには、自局の周波数を周辺基地局の周波数に切り替える必要があるため、従来では、図9の(a)に示す方法や(b)に示す方法を採用して、ハンドオフのための周波数切替えによる受信電界強度の測定を行なっていた。
【0013】
図9(a)に示す方法は、移動局装置が、基地局装置1(周波数f1:自局)と通話通信を行なっている状態で、或る時間、自局との通話を放棄し、周辺基地局2の周波数(f2)に切り替えて当該周波数の受信電界強度を測定する。
図9(b)に示す方法は、移動局装置が、基地局装置1(周波数f1:自局)と通話通信を行なっている状態で、自局との通話を或る程度継続しつつ、定期的に周辺基地局の周波数(f2)に切り替えて当該周波数の受信電界強度を測定する。
【0014】
しかしながら、音声データをフレーム毎(図6に例では40mm毎)に受信してデコードすることで音声として再生されるところ、図9(a)に示す方法にあっては通話の継続ができない時間が比較的長くなってしまい、また、図9(a)に示す方法にあっては通話継続するが音声が途切れ途切れとなってしまうという問題があり、いずれにしても、無線通信システムの使命であるところの通話について、その品質を低下させてしまっていた。
【0015】
なお、複数の受信系を備えた移動局装置にあっても、程度の差があるということができるとしても、同様な問題があるといえる。
すなわち、受信系が複数ある場合でも、その内の少なくとも1つの受信系を、トラフィックチャネルを受信せずに周辺基地局の周波数へ切替えることは、いつ何時なされるか予測し得ないに通話の転送のために割り当てられているチャネルを通話転送のために使用しない時間を作ることになるといえから、図9に示すような方法を採用する場合には、総じて、通話通信の品質を低下させることになるといえる。
【0016】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、通話の品質を低下させることなく、周波数切り替えによる受信品質の検出(測定)を実現する移動局装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、連続する複数の通信フレームについて、移動局装置は、全ての通信フレームから制御データを受信せずとも支障が生じない、或いは、或る程度の支障が生じても、許容できる程度のものであったり、リカバーできる程度のものであるという斬新な着想に基づく発明であり、この制御データを受信する時間を周波数切り替えによる受信品質の検出に利用することで、通話通信の品質を低下させることなく、周波数切り替えによる受信品質の検出を実現するものである。
【0018】
すなわち、本発明に係る移動局装置は、音声データを転送するトラフィックチャネルと通信に使用される制御データを転送する複数の制御チャネルとを含む通信フレームにより、基地局装置と無線通信する移動局装置であり、間欠的な通信フレームの制御チャネルを受信する時間で、基地局装置と無線通信している周波数を他の周波数に切替えて、当該切替えた周波数での受信品質を検出する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0019】
したがって、上記本発明に係る移動局装置では、連続する複数の通信フレームから受信する制御データは間欠的に欠落するものの、必要程度の制御データを受信して支障のない通信制御を行なうことができるとともに、連続する複数の通信フレームから音声データを欠落することなく受信できるので、通話の継続ができない時間が生じたり、音声が途切れ途切れとなるなどと言った通信品質を低下させる事態の発生を防止することができる。
【0020】
なお、制御チャネルの不受信をどの程度の間欠性をもって設定するかは、例えば、制御データが欠落することによる支障の有無や程度と、周波数を切替えて受信品質を検出する必要性の程度との兼ね合いから、無線通信システムの実際の運用に即して決定すればよい。
また、予め所定の間隔で間欠性を設定せずとも、受信品質が所定値より低下した場合に、制御データを受信する時間で周波数を切替えて受信品質を検出するようにしてもよく、このような方法によっても、必要な時にその時の通信フレームからの制御データを欠落させることとなるので、結果的には、間欠的な通信フレームの制御チャネルを受信する時間で、周波数に切替えて受信品質を検出する制御がなされているといえる。
【0021】
また、本発明に係る移動局装置は、音声データを転送するトラフィックチャネルと通信に使用される制御データを転送する複数の制御チャネルとを含む通信フレームにより、基地局装置と無線通信する移動局装置であり、基地局装置と無線通信している受信品質が所定値より低下したときに、制御チャネルを受信する時間において、当該基地局装置と無線通信している周波数を周辺の他の基地局装置との無線通信に用いる他の周波数に切替えて、当該切替えた周波数での受信品質を検出する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0022】
したがって、上記本発明に係る移動局装置では、上記に加えて、通信中の基地局装置(自局)との受信品質が所定値(予め設定した閾値)より低下したときに、周辺の他の基地局(周辺基地局)の周波数に切替えて受信品質を検出するため、必要に応じて、制御データを欠落させるだけでよい。
そして、これによっても、必要なタイミングの通信フレームにおいて制御データを欠落させるだけであるので、結果的には、間欠的な通信フレームの制御チャネルを受信する時間で、周波数を切替えて受信品質を検出する制御がなされているといえる。
【0023】
ここで、本発明において、間欠的な通信フレームで行なうことに加えて、周波数を切替えて当該切替えた周波数での受信品質を検出する時間は、1つの通信フレームに含まれる全ての制御チャネルを割り当てなくともよく、1つの通信フレームに含まれる複数の制御チャネルの内の隣接する複数の制御チャネルを受信する時間を、割り当てるようにしてもよい。
例えば、図6に示したフレーム構成において、RI、SW、未定義の隣接する3つの制御チャネルを受信する時間で、周波数を切替えて受信品質を検出する制御を行い、他の制御チャネルLP+R、Pは受信するようにしてもよい。
【0024】
このように複数ある制御チャネルの内の一部の制御チャネルを受信する時間を周波数を切替えて受信品質を検出する制御に割り当てることにより、欠落させる制御データを最小限にとどめることができる。そして、隣接する複数の制御チャネルをこの受信品質検出の制御に割り当てることにより、これら制御チャネルにより連続した比較的長い時間を当該制御に使用することができるので、周波数切替えや受信品質検出の処理に要する時間を十分に確保することができる。
【0025】
本発明において、複数ある制御チャネルの内の、どれを、幾つ、周波数切替えによる受信品質検出の制御に割り当てるかは、例えば、周波数切替えや受信品質検出の処理に要する時間と、各制御データの必要性との兼ね合いから設定すればよいが、要は、周波数切替えによる受信品質検出が支障なく行える時間を確保で切ればよい。
なお、本発明は、1つの制御チャネルで周波数切替えによる受信品質検出ができる場合には、複数ある制御チャネルの内の1つの制御チャネルを受信する時間を、切替えた周波数での受信品質を検出する処理の時間に割り当てる態様を除外するものではない。
【0026】
ここで、本発明において、受信品質の検出には、典型的には受信電界強度を使用するが、受信ビット誤り率など、受信品質を評価することはできる他の種々なパラメータを用いることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の移動局装置によれば、制御チャネルを受信する時間を間欠的に利用して周波数切り替えによる受信品質の検出を行なうようにしたので、音声データを欠落なく受信して高品質な通話を実現することができる。したがって、通話品質を低下させることなく、ハンドオフを行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る移動局装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る移動局装置の要部に機能構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る移動局装置の処理を説明する図である。
【図4】本発明を適用可能な通信フレームの一例を示す図である。
【図5】無線通信システムの一例を示す図である。
【図6】本発明を適用可能な通信フレームの一例を示す図である。
【図7】移動局装置のハンドオフを説明する図である。
【図8】移動局装置の基地局切り替えの動作を説明する図である。
【図9】従来の問題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を、図に示す実施例に基づいて具体的に説明する。
本実施例の移動局装置は、SCPC方式によるデジタル移動通信システムに用いられ、図6に示した通信フレームにより基地局装置と無線通信する。
すなわち、連続する通信フレームの各々の通信フレーム(40ms)には、音声データを転送するトラフィックチャネル(TCH)と、通信に使用される制御データを転送する複数の制御チャネル(LP+R、P、RI、SW、未定義)とを図6に示す順序で含んでいる。
【0030】
図1には、本実施例の移動局装置の無線通信処理に係る部分の概略構成を示してあり、この移動局装置は、受信系と送信系とを1つずつ備えており、受信系をなす受信装置10と送信系をなす送信装置11は空中線共用器12を介して空中線(アンテナ)13に接続されている。
受信装置10と送信装置11には制御装置14に接続されており、制御装置14で、送受信されるデータの入出力処理や、周波数切り替えによる受信レベル(受信電界強度)の判定処理がなされる。
【0031】
制御装置14には送受話装置などの付属装置15が接続されており、送話装置15から入力された音声は制御装置14によりデジタル音声データに変換され、送信装置11がこの音声データを通信フレームのトラフィックチャネル(TCH)により空中線13から無線送信する。
基地局装置から通信フレームのトラフィックチャネル(TCH)により送信されてき音声データは、空中線13を介して受信装置10で受信し、これを制御装置14がアナログ変換して受話装置15から音声出力する。
また、通信フレームの制御チャネルで基地局装置から受信する各種制御データにより、受信装置10、送信装置11、制御装置14が同期保持などの送受信処理を行なう。
【0032】
ここで、本実施例では、図3に示すように、連続する通信フレームの内の間欠的な1つの通信フレーム(例えば、数フレーム毎に1つのフレーム)において、当該通信フレームの3つの連続する制御チャネル(RI、SW、未定義)を受信する時間で、周波数を切替えて受信レベルの検出判定処理を行なうように設定されている。
また、本実施例では、各基地局装置には通信周波数が予め設定されて、各移動局装置には各基地局装置の周波数が予め設定されたシステム構成であり、ハンドオフを行なうために、自局の周波数を周辺基地局の周波数に切替えて受信レベルの検出判定処理を行なう。
【0033】
例えば、1つ40msの通信フレームについて、100フレーム間隔の1フレームを周波数を切替えて受信レベルを検出判定する処理を行なうように設定した場合、1秒毎に周波数を切替えて受信レベルの検出判定処理がなされる。
したがって、移動局装置は制御データを1パーセント欠落するだけであるので、送受信処理に支障を生じることはなく、1秒毎に周波数を切替えた受信レベルの検出判定処理(すなわち、周辺基地局のサーチ)がなされるので、通常の移動速度からすると適切なタイミングでのハンドオフが実行される。
すなわち、ハンドオフが適切とされる程度と、制御データの欠落が支障ない程度との兼ね合いから、どの程度の周期(間欠性)で周波数を切替えた受信レベルの検出判定処理を行なうかを設定すればよい。
【0034】
図2は、本実施例の移動局装置が、周波数切り替えによる受信レベルの検出判定処理を行なうために備える機能構成を示している。
受信部20及びレベル検出部21は受信装置10により構成される。
受信部20は、空中線13を介して、図6及び図3に示す通信フレームにより基地局装置から送信される音声データ及び制御データを受信する。なお、この受信処理は、通常の状態では、移動局装置が属する無線通信エリアを構成する基地局装置(自局)の周波数で行なう。
レベル検出部21は、受信部20が行なう受信処理の受信レベルを逐次検出する。
【0035】
制御部22は、制御装置10により構成され、レベル判定部23、タイミング判定部24、周波数切替え部25を有している。
レベル判定部23はレベル検出部21で検出された受信レベルの強度を判定し、タイミング判定部24は受信部20で受信している通信フレームの連続する3つの制御チャネル(RI、SW、未定義)を受信する時間(受信開始タイミングと受信終了タイミング)を判定し、周波数切替え部25は自局の周波数と周辺基地局の周波数との切替えを受信部20に指示する。
【0036】
図3を参照して、上記各機能部の動作を説明する。
まず、移動局装置は、周波数f1で基地局装置1(自局)から連続する通信フレームにより音声データを受信部20で受信している状態とする。
この状態において、レベル検出部21は受信部20による受信レベルを逐次検出しており、この検出したレベルをレベル判定部23へ出力する。
【0037】
そして、例えば50個おきに1個と言ったように、予め設定された間欠的な通信フレームを受信するタイミングになると、タイミング判定部24が、当該通信フレーム及び当該通信フレームに含まれる制御チャネル(RI、SW、未定義)を受信するタイミングを判定する。
この判定された制御チャネル(RI、SW、未定義)を受信するタイミングに同期して、周波数切替え部25が、先頭の制御チャネル(RI)を受信するタイミングで受信周波数を他の基地局装置2(周辺基地局)の周波数f2に変更する指示を受信部20へ出力し、また、後尾の制御チャネル(未定義)を受信するタイミングで受信周波数を元の基地局装置1(自局)の周波数f1に戻す指示を受信部20へ出力する。
【0038】
すなわち、連続する3つの制御チャネル(RI、SW、未定義)を受信する時間、受信部20は周辺基地局の周波数f2に切替えられて受信処理を行ない、この周波数f2による受信レベルはレベル検出部21が検出してレベル判定部23へ出力する。
したがって、制御部22の制御により、間欠的な通信フレームの制御チャネルを受信する時間で、自局と無線通信している周波数f1を他の周波数f2(周辺基地局の周波数)に切替えて、当該切替えた周波数f2での受信レベルを検出する処理がなされる。
【0039】
そして、レベル判定部23が自局の周波数f1における受信レベルと周辺基地局の周波数f2における受信レベルとを比較し、この比較結果に応じて、周波数切替え部25が、周波数f1の受信レベルが強い場合には元の周波数f1へ受信周波数を戻す指示を受信部20へ出力し、周波数f2の受信レベルが強い場合にはこの周辺基地局の周波数f2へ受信周波数を変更する指示を受信部20へ出力する。
なお、周波数f2の受信レベルが周波数f1の受信レベルより所定の値を超えて強い場合に周波数f2へ受信周波数を変更するようにしてもよく、また、本発明では、周波数f2の受信レベルが所定の受信レベルより強い場合に周波数f2へ受信周波数を変更するようにするなど、種々な態様を採用することができる。
【0040】
したがって、移動局装置が自局から周辺基地局の無線通信エリアへ移動した場合には、受信部20の受信周波数が当該周辺基地局の周波数に切替えられるハンドオフが実行され、しかも、このハンドオフを行なうために周波数を切替えて受信レベルの測定を行なっても、音声データ(TCH)を取り溢すことなく受信することができるので、音声通信を途切れさせることなくハンドオフのための処理を行なうことができる。
【0041】
ここで、本実施例では、周波数を他の周波数に切替えて受信レベルを検出(測定)する時間を、連続する3つの制御チャネルを受信する時間としている。これは、レベル検出部21が受信レベルを検出するために必要な時間を確保するためであり、受信レベルの検出を短時間で行なうことができるのであれば、連続する2つの制御チャネル(例えば、RI、SW)或いはいずれか1つの制御チャネル(例えば、LP+R)を受信する時間で、周波数を他の周波数に切替えて受信レベルを検出(測定)するようにしてもよい。
【0042】
なお、本実施例では、1フレームが40msである無線通信システムの伝送速度は9.6Kbpsであるところ、図3に示すように3つの制御チャネルを合計したビット数は56+20+20=96bitであるから、周波数切り替えされる時間は10msとなる。ただし、実際には周波数を切り替えるに要する時間も必要となるので、高性能なシンセサイザを使用して周波数の切替時間を短くして、レベル検出部21が受信レベルを検出(測定)するに必要な5ms程度の時間を確保している。
【0043】
本発明は、上記制御部22による制御を若干変更した態様としても実施することができる。
この態様に係る実施例では、上記した周辺基地局の周波数による受信レベルの測定を、上記実施例のように予め設定した間隔の間欠的な通信フレームで行なうのではなく、自局からの受信レベルが予め設定した所定値より低下したときに行なう。
【0044】
このために、レベル判定部23は、レベル検出部21が検出した自局の周波数(f1)における受信レベルが所定値より低下したかを判定し、所定値より低下したときには、タイミング判定部24が、直近の通信フレーム(或いは、幾つか後の通信フレーム)及び当該通信フレームに含まれる制御チャネルを受信するタイミングを判定し、上記実施例と同様に、この判定された制御チャネルを受信する時間、周波数切替え部25が受信部20の受信周波数を他の基地局装置(周辺基地局)の周波数(f2)に変更させ、レベル検出部21が検出する当該周波数(f2)の受信レベルに応じてハンドオフさせる。
【0045】
この実施例によれば、ハンドオフの要否を、予め間欠的に設定した通信フレーム(制御チャネル)を受信するタイミングではなく、受信レベルが低下して必要となったときに随時行なうことができ、ハンドオフが必要な状況に対してより迅速に対処することができる。
【0046】
なお、上記の本実施例では、制御部22は、プロセッサやメモリ等のコンピュータハードウエアにより本発明に係るプログラムを実行することで、各機能部22〜25を構成しているが、本発明では、これらをハードウエア回路により構成してもよい。
また、本発明は、典型的には周辺基地局へのハンドオフに適用するが、これに限らず、移動局装置が受信品質の良い無線通信周波数をサーチする方法として広く適用することができる。
【0047】
また、本発明は、図3や図6に示す構成の通信フレームに限らず、音声データを転送するチャネル(名称がトラフィックチャネルに限らない)と制御データを転送するチャネル(名称が制御チャネルとは限らない)とを含む通信フレームにより、基地局装置と無線通信する移動局装置に広く適用することができる。
例えば、図4に示すようなARIB STD−T61で規定されているFDMAの通信フレームにより、基地局装置と無線通信する移動局装置にも適用することができる。
【0048】
図4に示すFDMA方式の通信フレームは、音声データを転送するチャネル(トラフィックチャネル:TCH)と、制御データを転送するチャネルとして、同期ワードのチャネル(SW)、THCに付随して一時的にTCHをスチールして高速のデータ転送を行なうチャネル(FACCH)、THCに付随して一時的にTCHをスチールして低速のデータ転送を行なうチャネル(SACCH)、ハウスキーピングチャネル(RCH)を含んでいる。
このような通信フレーム構成についても、制御データを転送するチャネルの内の全部、又は、連続した一部、又は、1つを、上記のように周波数を切替えて受信品質を検出する時間に割り当てればよい。
【符号の説明】
【0049】
1:基地局装置(自局)、 2:基地局装置(周辺基地局)、
3:移動局装置、 10:受信装置、
14:制御装置、 20:受信部、
21:レベル検出部、 22:制御部、
23:レベル判定部、 24:タイミング判定部、
25:周波数切替え部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声データを転送するトラフィックチャネルと通信に使用される制御データを転送する複数の制御チャネルとを含む通信フレームにより、基地局装置と無線通信する移動局装置において、
間欠的な通信フレームの制御チャネルを受信する時間で、基地局装置と無線通信している周波数を他の周波数に切替えて、当該切替えた周波数での受信品質を検出する制御手段を備えたことを特徴とする移動局装置。
【請求項2】
音声データを転送するトラフィックチャネルと通信に使用される制御データを転送する複数の制御チャネルとを含む通信フレームにより、基地局装置と無線通信する移動局装置において、
基地局装置と無線通信している受信品質が所定値より低下したときに、制御チャネルを受信する時間において、当該基地局装置と無線通信している周波数を周辺の他の基地局装置との無線通信に用いる他の周波数に切替えて、当該切替えた周波数での受信品質を検出する制御手段を備えたことを特徴とする移動局装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の移動局装置において、
周波数を切替えて当該切替えた周波数での受信品質を検出する時間は、1つの通信フレームに含まれる複数の制御チャネルの内の隣接する複数の制御チャネルを受信する時間であることを特徴とする移動局装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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