説明

移動式クレーン及び移動式複合クレーン

【課題】移動式クレーンの横方向の安定度を大きくし、その場旋回を容易にできるようにする。
【解決手段】複数の走行体40は、それぞれ鉛直軸まわりに旋回可能である。複数の走行体40は、フレーム30の前後方向に沿った中心線A1を挟むように中心線A1の両側に、かつ、前部フレーム31の下方側に取り付けられた複数の前部走行体51を備える。複数の走行体40は、中心線A1を挟むように中心線A1の両側に、かつ、後部フレーム32の下方側に取り付けられた複数の後部走行体52を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回装置と走行装置とを共用化した移動式クレーン、及び、移動式複合クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、旋回装置と走行装置とを共用化した移動式クレーンがある(例えば非特許文献1)。図8(a)に示すように、移動式クレーン401は、フレーム30と、フレーム30の下方側かつ前後(合計2つ)に取り付けられた走行体440とを備える。さらに詳しくは、フレーム30は、前部フレーム31と、後部フレーム32と、前部フレーム31と後部フレーム32とを連結する中間フレーム33と、を備える。そして、前部フレーム31の下方側に1つの前部走行体451が取り付けられ、後部フレーム32の下方側に1つの後部走行体452が取り付けられる。
【0003】
この移動式クレーン401では、次のように旋回及び走行を行う。
図8(b)(図8(a)のF8b矢視図)に示すように、前部走行体451を駆動させず、後部走行体452を横方向に(円周C4に沿うように)駆動させると、前部走行体451に取り付けられた旋回ベアリング39の中心O4まわりに円周C4に沿って移動式クレーン401が旋回する。
また、2つの走行体440の向きを揃えて(図8(b)では横方向に揃えている)、前後の走行体440を同一の向きに駆動させることで移動式クレーン401が走行する。
【0004】
なお、特許文献1及び2には、単体の2台の移動式クレーンを平行に(横方向に並ぶように)配置および連結して1台の移動式複合クレーンとした技術が記載されている。移動式複合クレーンは、単体の移動式クレーンでは吊る事ができない重量物を扱うとき(大きな能力を必要とする作業時)に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−315864号公報
【特許文献2】特開2008−303038号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“Lampson International.LLC - Products”、[online]、[平成22年8月16日検索]、インターネット<URL:http://www.lampsoncrane.com/Products_LTL_1200.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の移動式クレーン(401)は、縦長の構造である(前後方向に長い)ので、縦方向(前後方向)の安定度は問題ない。しかしながら、横方向の安定度は極めて小さく、横荷重が作用したときは移動式クレーン(401)が不安定となる問題がある。
【0008】
また、上記の移動式クレーン(401)は、上述したように前部走行体(451)に取り付けられた旋回ベアリング(39)の中心(O4)まわりに旋回するが、このような旋回には広いスペースが必要となるという問題がある。
なお、前後の走行体(440)を横方向に沿うように平行に配置し、前後の走行体(440)を互いに横方向逆向きに(一方は右向き、他方は左向きに)駆動させれば、移動式クレーン(401)をその場旋回させる(フレームの中心O1を中心として円周C1に沿って旋回させる)ことが理論上は可能である。しかしながら、上記の構造の移動式クレーン(401)は通常大型で質量も大きいので、移動式クレーン(401)をその場旋回させようとしても地面を傷めるのみで旋回できない、または、旋回が困難である。
【0009】
本発明の目的は、横方向の安定度が大きく、容易にその場旋回ができる移動式クレーン及び移動式複合クレーンを提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
第1の発明の移動式クレーンは、フレームと、前記フレームに取り付けられた複数の走行体と、を備える。前記フレームは、ブームが取り付けられた前部フレームと、カウンタウエイトが取り付けられた後部フレームと、前記前部フレームと前記後部フレームとを連結する中間フレームと、を備える。複数の前記走行体は、それぞれ鉛直軸まわりに旋回可能な走行体である。また、複数の前記走行体は、前記フレームの前後方向に沿った中心線を挟むように当該中心線の両側に、かつ、前記前部フレームの下方側に取り付けられた複数の前部走行体と、前記中心線を挟むように当該中心線の両側に、かつ、前記後部フレームの下方側に取り付けられた複数の後部走行体と、を備える。
【0011】
この移動式クレーンでは、フレームの前後方向に沿った中心線を挟むように中心線の両側に、複数の前部走行体および複数の後部走行体を備える。よって、前部走行体および後部走行体を前記中心線上に1つずつ備える場合(すなわち上述した従来の移動式クレーンの場合)に比べ、本発明の移動式クレーンは横方向の安定度が大きい。
また、移動式クレーンを下から見たとき、複数の走行体(複数の前部走行体および複数の後部走行体)の前後方向と、フレームの中心を中心とする円周に沿う方向と、が沿うように複数の走行体を配置した場合、移動式クレーンはその場旋回できる。この場合、複数の前部走行体と複数の後部走行体とで荷重を分担させるため、1つの前部走行体と1つの後部走行体とをフレームの横方向に沿うように平行に配置することで移動式クレーンをその場旋回させる場合に比べ、1つの走行体に作用する荷重を軽減できる事により、容易にその場旋回できる。
【0012】
第2の発明の移動式複合クレーンは、横方向に並んで配置された2台の第1の発明に係る移動式クレーンと、2台の前記移動式クレーンの前記フレームどうしを結合する結合フレームと、を備える。
【0013】
この移動式複合クレーンでは、2台の移動式クレーンが横方向に並んで配置されるので、1台の移動式クレーンに比べ横方向の安定度がより大きい。
また、この移動式複合クレーンでは、下から見たとき、2台の移動式クレーンの2つのフレームの中心を中心とする円周に沿う方向と、複数の走行体の前後方向と、が沿うように複数の走行体を配置した場合、第1の発明の移動式クレーンと同様のその場旋回が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】クレーン全体を横から見た図である。
【図2】図1に示すクレーンを下から見た模式図である。
【図3】変形例1の図1相当図である。
【図4】変形例1の図2相当図等である。
【図5】変形例2の図1相当図等である。
【図6】変形例2の図2(a)相当図である。
【図7】第2実施形態の図2相当図である。
【図8】従来のクレーンの図1及び図2(a)相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、図1及び図2を参照して移動式クレーン1の実施形態を説明する。なお、図2は図1に示すF2矢視図であり、図2(a)は移動式クレーンの旋回時、図2(b)は移動式クレーンの走行時の状態を示す。なお、図2ではフレーム30より上方側の部材は省略している。
【0016】
移動式クレーン1は、図1に示すように、旋回装置と走行装置とを共用化した構造のクレーンである。移動式クレーン1は、フレーム30を備える。フレーム30の上方側には主に、ブーム11、巻き上げウインチ12、ロングマスト16、ブーム起伏ウインチ17、および、カウンタウエイト21が取り付けられる。また、フレーム30の下方側には複数の走行体40が取り付けられる。以下、移動式クレーン1の(またはフレーム30の)前後方向および横方向を単に「前後方向」および「横方向」という。
【0017】
ブーム11は、上下に揺動可能な起伏部材である。ブーム11の基端部(ブームフット11f)はフレーム30(の前部フレーム31。フレーム30の詳細については後述)に取り付けられる。ブーム11の先端部からは巻き上げロープ13を介してフックが吊り下げられる。
【0018】
巻き上げウインチ12は、フレーム30(中間フレーム33)に取り付けられるとともに、巻き上げロープ13を巻き込み及び巻き出しする装置である。
【0019】
ロングマスト16は、ブーム11の後方側に配置され、ブーム11を支持する部材である。ロングマスト16の基端部はフレーム30(前部フレーム31)に取り付けられる。ロングマスト16の先端部と後部フレーム32とが、カウンタウエイトガイライン22でつながれる。ロングマスト16の先端部にはブーム起伏ロープ18がかけられ、ロングマスト16の先端部とブーム11の先端部とが、スプレッダを介してブーム起伏ロープ18及びガイライン19でつながれる。
【0020】
ブーム起伏ウインチ17は、フレーム30(中間フレーム33)に取り付けられるとともに、ブーム起伏ロープ18を巻き込み及び巻き出しする装置である。ブーム起伏ロープ18の巻き込み及び巻き出しにより、ブーム11が起伏する。
【0021】
カウンタウエイト21は、移動式クレーン1の前後方向の安定度を増大させるためのおもりである。カウンタウエイト21は、フレーム30(後部フレーム32)に取り付けられる(搭載される)。カウンタウエイト21は、後部フレーム32とカウンタウエイトガイライン22とを介してロングマスト16の先端から吊り下げられ、カウンタウエイトガイライン22に張力がかかると、ロングマスト16の先端の移動を拘束する。
【0022】
フレーム30は、下方側に走行体40等が取り付けられるとともに、上方側にブーム11等が取り付けられた構造物(上部本体)である。フレーム30は前方側から順に、前部フレーム31と、中間フレーム33と、後部フレーム32とを備える。なお、図2(a)及び(b)に示すように、フレーム30の前後方向に沿う中心線(フレーム30の横方向の中心を通る線)を中心線A1とする。
【0023】
前部フレーム31は、図1に示すように、フレーム30のうち前端周辺部分であり、ブーム11のブームフット11fが上方側に取り付けられた部材(ブームフットフレーム)である。前部フレーム31の上方側には、ロングマスト16も取り付けられる。前部フレーム31の下方側には前部走行体51が取り付けられる。
【0024】
後部フレーム32は、フレーム30のうち後端周辺部分であり、カウンタウエイト21が上方側に取り付けられた部材(カウンタウエイトフレーム)である。後部フレーム32の下方側には後部走行体52が取り付けられる。
【0025】
中間フレーム33は、前部フレーム31と後部フレーム32とを連結する部材であり、上方側にウインチが取り付けられた部材(ウインチフレーム)である。中間フレーム33の上方側には、巻き上げウインチ12、ブーム起伏ウインチ17、エンジン等パワーユニット(図示なし)、及び操縦装置(図示なし)等が載せられる。
中間フレーム33は、前部フレーム31と後部フレーム32との高低差を吸収できるように、前部フレーム31と後部フレーム32とを連結する。具体的には例えば、中間フレーム33の前後方向両端部と、前部フレーム31および後部フレーム32とが、ピン(横方向を軸方向とするピン)により回動可能に連結される。これにより、前部フレーム31と後部フレーム32とに高低差があっても、前部走行体51と後部走行体52とが地面に接触しやすい。その結果、地盤の影響を受けにくく、安定したクレーン作業ができる。
【0026】
走行体40(複数の走行体)は、移動式クレーン1の走行および旋回を行うための装置であり、移動式クレーン1の支持装置である。走行体40は、フレーム30に複数取り付けられ、それぞれ鉛直軸まわりに旋回可能である。すなわち、複数の走行体40は、旋回ベアリング39を介してフレーム30の下方側に取り付けられるとともに、フレーム30に対して鉛直軸まわりに旋回可能である。図1及び図2に示すように、走行体40はそれぞれ、旋回ベアリング39が取り付けられた下部本体41と、下部本体41の両側に取り付けられたクローラ42とを備える。なお、図2(a)に示すように、走行体40の前後方向(ここでは、移動式クレーン1やフレーム30の横方向ではなく、走行体40の前後方向)を前後方向Dとする。また、図2では煩雑を避けるため、複数の走行体40のうち1つの走行体のみ、前後方向Dを示し、符号39、41、及び42を付している。また、走行体40は、前部フレーム31に取り付けられた前部走行体51と、後部フレーム32に取り付けられた後部走行体52とを備える。
【0027】
旋回ベアリング39は、複数の走行体40それぞれをフレーム30に対して鉛直軸まわりに旋回させるための部材(旋回輪)である。旋回ベアリング39は、円周(外周または内周)が歯車状(図示なし)に形成される。そして、この歯車とかみ合うピニオン(図示なし)をモータ(図示なし)で回転させる。これにより、走行体40がフレーム30に対して旋回する。
【0028】
(走行体の数および配置)
前部走行体51(複数の前部走行体)は、図1及び図2に示すように、走行体40のうち、前部フレーム31の下方側に取り付けられた複数(1対以上)の走行体である。図2に示すように、前部走行体51は、フレーム30の前後方向に沿った(フレーム30の)中心線A1を挟むように中心線A1の両側に配置される。1対(2つ)の前部走行体51は、移動式クレーン1の横方向の安定度を十分確保できるように、横方向に所定の距離を離して配置される。
【0029】
後部走行体52(複数の後部走行体)は、走行体40のうち、後部フレーム32の下方側に取り付けられた複数(1対以上)の走行体である。後部走行体52は、中心線A1を挟むように中心線A1の両側に配置される。1対(2つ)の後部走行体52は、前部走行体51と同様に、横方向に所定の距離を離して配置される。
【0030】
(その場旋回および走行)
これらの前部走行体51および後部走行体52(複数の走行体40)の動作は、移動式クレーン1の走行時と旋回時とで異なる。
図2(b)に示すように、移動式クレーン1の走行時は、複数の走行体40の向き(前後方向D)を一方向に揃えて前後の走行体40(前部走行体51および後部走行体52)を同一の向きに駆動する。これにより、移動式クレーン1が走行する。
【0031】
図2(a)に示すように、移動式クレーン1の旋回時は、移動式クレーン1がその場旋回するように複数の走行体40を配置する。すなわち、移動式クレーン1を下から(または上から)見たとき、フレーム30の中心O1(フレーム30の前後方向および横方向の中心)を中心とする円周C1に沿う方向と、複数の走行体40の前後方向Dとが沿うように、複数の走行体40を配置する(走行体40それぞれのフレーム30に対する旋回角度を設定する)。言いかえれば、移動式クレーン1を下から見たとき、フレーム30の中心O1と走行体40の中心とを通る直線Lと、走行体40の前後方向Dとが直交するように複数の走行体40それぞれを配置する。すなわち、2つの前部走行体51、および、2つの後部走行体52がそれぞれ「ハ」の字状(逆V字状)に配置されるように、複数の走行体40を旋回させる。そして、前後の走行体40を駆動する。さらに詳しくは、前部走行体51および後部走行体52を横方向略逆向きに(前部走行体51および後部走行体52のうち、一方を略右向き、他方を略左向きに)駆動する。これにより移動式クレーン1はフレーム30の中心O1まわりにその場旋回する。
【0032】
(本実施形態の移動式クレーンの特徴)
(特徴1)
図2に示すように、この移動式クレーン1では、フレーム30の前後方向に沿った中心線A1を挟むように中心線A1の両側に、複数の前部走行体51および複数の後部走行体52を備える。よって、図8(b)に示す従来の移動式クレーン401のように、前部走行体451および後部走行体452を中心線A1上に1つずつ備える場合に比べ、図2に示す本発明の移動式クレーン1は横方向の安定度が大きい。
【0033】
図2(a)に示すように、移動式クレーン1を下から見たとき、複数の走行体40(複数の前部走行体51および複数の後部走行体52)の前後方向Dと、フレーム30の中心O1を中心とする円周C1に沿う方向と、が沿うように複数の走行体40を配置した場合(すなわち上述したように、2つの前部走行体51および2つの後部走行体52を「ハ」の字状に配置した場合)、移動式クレーン1はその場旋回できる。この場合、複数の前部走行体51と複数の後部走行体52とで荷重を分担させるため、図8(a)に示すように1つの前部走行体451と1つの後部走行体452とをフレーム30の横方向に沿うように平行に配置することで移動式クレーン401をその場旋回させる場合に比べ、図2(a)に示す移動式クレーン1では1つの走行体40に作用する荷重を軽減できる事により、容易にその場旋回できる。
【0034】
(変形例1)
図3及び図4に、変形例1の移動式クレーン101を示す。なお、図4(a)は、図3に示すF4a矢視図である。図4(b)は、図4(a)に示す4つの前部走行体51周辺部を上から見た図であり、図3に示すF4b矢視図である。
変形例1と上記実施形態との相違点は主に次の点である。図3及び図4(a)に示すように、移動式クレーン101は、前部フレーム31(図3参照)の下方側に取り付けられた4つの走行体40と、4つの走行体40を結合する走行体結合フレーム138とを備える。また、走行体結合フレーム138は、旋回ベアリング137を介して前部フレーム31(図3参照)に取り付けられる。
【0035】
旋回ベアリング137は、図4に示すように、走行体結合フレーム138および4つの前部走行体51を前部フレーム31(図3参照)に対して旋回可能とする部材である。図4(a)に示すように、旋回ベアリング137により、移動式クレーン101は前部走行体51を固定して旋回(前固定旋回)できる(後述)。
【0036】
走行体結合フレーム138は、図3に示すように、旋回ベアリング137を介して前部フレーム31の下方側に取り付けられるとともに、下方側に取り付けられる4つの走行体40を結合する部材である。図4(b)に示すように、走行体結合フレーム138は、例えば3つの長方形部材を組み合わせた「H」状の部材であり、旋回ベアリング137が取り付けられた部材138a(「H」の横線に対応する部分)と、部材138aの長手方向両端に取り付けられた2つの部材138b(同2本の縦線に対応する部分)とを備える。
【0037】
2つの部材138bそれぞれの下方側には、部材138bの長手方向に沿って2つ(合計4つ)の前部走行体51が取り付けられる。すなわち、図4(a)に示すように、移動式クレーン101を下から見て、走行体結合フレーム138の中心O2(旋回ベアリング137の中心O2)の周囲に4つの前部走行体51が配置される。また例えば、4つの前部走行体51を直線でつなぐと長方形が形成されるような位置に4つの前部走行体51が配置される。なお、この配置では、4つの前部走行体51のうち少なくとも2つが、フレーム30の中心線A1を挟むように中心線A1の両側に配置される。
このように、移動式クレーン101は前部走行体51を4つ備えるので、前部走行体51を2つ(図2参照)のみ備える場合に比べ、前部走行体51で大きい荷重を支えることができる(または、同じ大きさの荷重を支える場合に前部走行体51を小さくでき、その結果小回りがきくようにできる)。
【0038】
(前固定旋回)
移動式クレーン101では、上述した形態(図2(a)参照)と同様にその場旋回ができるとともに、次のように前固定旋回ができる。すなわち、図4(a)に示すように、移動式クレーン101を下から見たとき、旋回ベアリング137の中心O2を中心とする円周C2に沿う方向と、後部走行体52の前後方向Dとが沿うように、後部走行体52を配置する(二点鎖線で示す後部走行体52を参照)。そして、前部走行体51は駆動させず、後部走行体52のみ(略横方向に)駆動させる。これにより、旋回ベアリング137の中心O2を中心として、移動式クレーン101が旋回(前固定旋回)する。
【0039】
(変形例2)
図5及び図6に、変形例2の移動式クレーン201を示す。なお、図5(a)は、変形例2の図1相当図である。図5(b)は、後部フレーム32周辺を後方側から見た図であり、図5(a)に示すF5b矢視図である。図6は、図5(a)に示すF6矢視図である。変形例2と変形例1との相違点は、後部走行体252の構成である。
【0040】
後部走行体252では、図5(a)及び(b)に示すように、下部本体41(図6では省略)の横方向(ここでは、移動式クレーン201やフレーム30の横方向ではなく、下部本体41の横方向)両側にホイール242(タイヤを備えた車輪)が取り付けられる。ホイール242は、地面に対する追随がクローラ42(図2(a)参照)よりも良い。よって、図5(a)及び図6に示す移動式クレーン201の安定度を向上できる。
【0041】
また、図6に示すように、後部走行体252は、後部フレーム32の下方側に、かつ、フレーム30の中心線A1の両側に2つずつ(合計4つ)取り付けられる。4つの後部走行体252は、前後方向にずらして配置される。具体的には例えば、横方向内側に配置された2つの後部走行体252を、同外側に配置されたの2つの後部走行体252よりも後方側にずらして配置する。この配置により、後部フレーム32及び後部走行体252の前後方向の安定度を向上できる。
【0042】
(第2実施形態)
図7に、第2実施形態の移動式複合クレーン2を示す。なお、移動式複合クレーン2を横から見た状態は図1に示す。また、図7(a)は旋回時、図7(b)は走行時の状態を示す。
【0043】
移動式複合クレーン2は、図7(a)及び(b)に示すように、横方向に並んで配置された2台の(それぞれ単体の)移動式クレーン1Xと1Yとを結合した、1台のクレーンである。移動式クレーン1X及び1Yはそれぞれ図1に示す移動式クレーン1(または図3及び図5に示す移動式クレーン101及び202)である。移動式複合クレーン2では、巻き上げ、ブーム11(図1参照)の起伏、旋回、及び走行の各動作が2台の移動式クレーン1X及び1Yで同期するように制御される。また、2台の移動式クレーン1X及び1Yの2つのブーム11(図1参照)から吊り下げられた2つのフックに、1つの吊ビーム(図示なし)を吊り下げる等の手段により、吊荷重を分散させる。これにより、1台の移動式クレーン1では吊る事ができない荷重の吊荷を吊ることができる。
また、図7(a)及び(b)に示すように、移動式複合クレーン2は、2台の移動式クレーン1X及び1Yを結合する結合フレーム335を備える。
【0044】
結合フレーム335は、2台の移動式クレーン1X及び1Yのフレーム30どうしを結合する構造物である。前部フレーム31どうしは結合フレーム336で、後部フレーム32どうしは結合フレーム337で結合される(なお、中間フレーム33どうしを結合しても良い)。結合フレーム335とフレーム30とは、(図1に示す前部フレーム31と後部フレーム32とを中間フレーム33でピンを用いて連結したのと同様に)例えばピンを用いて結合される。これにより、移動式クレーン1Xと1Yとの高低差を吸収できる。なお、図7(a)に示すように、結合フレーム335で結合された2つのフレーム30を1つの部材と考えたとき、この部材の中心(横方向及び前後方向の中心)を中心O3、この部材の前後方向に沿う中心線を中心線A2とする。
【0045】
(その場旋回および走行)
移動式複合クレーン2は、移動式クレーン1(図2(a)参照)と同様の構成を備えるので、移動式クレーン1と同様に走行および旋回する。さらに詳しくは、移動式複合クレーン2では、2つのフレーム30の前後方向に沿った中心線A2を挟むように中心線A2の両側に複数(2つずつ、合計4つ)の前部走行体51X及び51Yが取り付けられる。また、中心線A2を挟むように中心線A2の両側に複数(2つずつ、合計4つ)の後部走行体52X及び52Yが取り付けられる。
図7(b)に示すように、移動式複合クレーン2の走行時は、複数の走行体40の向きを一方向に揃え、同一の向きに複数の走行体40を駆動する。これにより、移動式複合クレーン2が走行する。
【0046】
図7(a)に示すように、移動式複合クレーン2の旋回時は、移動式複合クレーン2がその場旋回するように複数の走行体40を配置する。すなわち、移動式複合クレーン2を下から見たとき、2つのフレーム30の中心O3を中心とする円周C3に沿う方向と、複数の走行体40の前後方向Dと、が沿うように複数の走行体40を配置する。そして、複数の走行体40を駆動させる。これにより、移動式複合クレーン2は、2つのフレーム30の中心O3まわりにその場旋回する。
【0047】
(本実施形態の移動式複合クレーンの特徴)
(特徴2)
図7(a)及び(b)に示すように、この移動式複合クレーン2では、2台の移動式クレーン1X及び1Yが横方向に並んで配置されるので、1台の移動式クレーン1(図2(a)参照)に比べ横方向の安定度が大きい。
【0048】
また、図7(a)に示すように、この移動式複合クレーン2では、下から見たとき、2台の移動式クレーン1X及び1Yの2つのフレーム30の中心O3を中心とする円周C3に沿う方向と、複数の走行体40の前後方向Dと、が沿うように複数の走行体40を配置した場合、移動式クレーン1(図2(a)参照)と同様のその場旋回が容易にできる。
【0049】
(その他の変形例)
上記実施形態(および変形例)では、前部走行体51または後部走行体52の数を2または4とした。しかしながらこの数は様々に変形できる。例えば、変形例1では、図4(a)及び(b)に示すように、走行体結合フレーム138に前部走行体51を4つ取り付けたが、前部走行体51を2つ(図4(b)に示す1つの部材138bに1つずつ)取り付けても良い。
また、前部走行体51および後部走行体52の数を6以上などとしても良い。走行体40の数が多いほど、走行体40で支えることができる荷重を大きくできる。または、同じ大きさの荷重を支える場合に走行体40を小さくでき、その結果小回りがきくようにできる。
【符号の説明】
【0050】
1、1X、1Y、101、201 移動式クレーン
2 移動式複合クレーン
11 ブーム
21 カウンタウエイト
30 フレーム
31 前部フレーム
32 後部フレーム
33 中間フレーム
40 走行体
51 前部走行体
52 後部走行体
335 結合フレーム
A1、A2 中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームに取り付けられた複数の走行体と、を備え、
前記フレームは、
ブームが取り付けられた前部フレームと、
カウンタウエイトが取り付けられた後部フレームと、
前記前部フレームと前記後部フレームとを連結する中間フレームと、を備え、
複数の前記走行体は、それぞれ鉛直軸まわりに旋回可能な走行体であって、
前記フレームの前後方向に沿った中心線を挟むように当該中心線の両側に、かつ、前記前部フレームの下方側に取り付けられた複数の前部走行体と、
前記中心線を挟むように当該中心線の両側に、かつ、前記後部フレームの下方側に取り付けられた複数の後部走行体と、を備える移動式クレーン。
【請求項2】
横方向に並んで配置された2台の請求項1に記載の移動式クレーンと、
2台の前記移動式クレーンの前記フレームどうしを結合する結合フレームと、を備える移動式複合クレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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