説明

移動式クレーン

【課題】ラチスブームの重量増加を最小限に抑えながら、メインパイプ同士の間隔を広げることなく、ラチスブームの座屈強度を向上させることができるようにする。
【解決手段】起伏されるラチスブーム5を構成する4本のメインパイプ21のうち、背面側に位置する2本のメインパイプ21aの特定部分に、CFRP30が巻きつけられている。これにより、特定部分におけるメインパイプ21の曲げ剛性が向上する一方、ラチスブーム5の重量増加はCFRP30の重量分のみである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラチス構造のブームを備えた移動式クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
移動式クレーンは、無限軌道(クローラ)により自走可能なクレーンであり、旋回ベアリングを支点として、吊荷重とカウンターウェイトとを釣り合わせながらラチス構造のブーム(ラチスブーム)を起伏させている。
【0003】
特許文献1には、外面が平坦な複数の辺のうち、少なくとも他の部材の端面が溶接される辺が、辺端から辺中心側になるほど次第に厚くなるように、辺の内面を内側方向に膨出させた角形鋼管を備えることにより、強度を保ちながら、軽量化することができるラチスブームが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ラチスブームのブームフット間隔を広げてブームの荷重支持能力を高め、ブームの軽量化を可能とし得るクレーンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−180680号公報
【特許文献2】特開2005−119820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ラチスブームは断面形状が矩形であり、四隅にメインパイプがそれぞれ配置されている。これらメインパイプは互いにラチスパイプによって連結されている。メインパイプは、ラチスブームに負荷される軸方向の荷重を受ける役割を果たしている。一方、ラチスパイプは、メインパイプ間の距離を保持することによって、ラチスブームの断面形状を保持する役割を果たしている。
【0007】
ラチスブームの先端部で吊持されたフックで吊荷を吊るとき、吊荷をガイケーブルで引っ張ることにより、ラチスブームが倒れないようにしている。このとき、ラチスブームの根元部分における荷重については、吊荷の荷重のブーム軸に直交する方向の成分と、ラチスブームの自重のブーム軸に直交する方向の成分との和が、ガイケーブルの張力のブーム軸に直交する方向の成分と釣り合っている。しかし、吊荷の荷重のブーム軸方向の成分、ラチスブームの自重のブーム軸方向の成分、および、ガイケーブルの張力のブーム軸方向の成分の全てが、ラチスブームを圧縮する力として作用する。これにより、4本のメインパイプは大きな圧縮力を受けている。
【0008】
また、ラチスブームは自重によって腹面側にたわむので、4本のメインパイプのうち、背面側に位置するメインパイプは、ブーム軸方向の圧縮力に加えて、たわみ(曲げ)による圧縮力を受けている。つまり、背面側に位置するメインパイプは、腹面側に位置するメインパイプよりも大きな圧縮荷重を受けている。
【0009】
そこで、ラチスブームが圧縮荷重により座屈しないように、メインパイプ、特に背面側に位置する2本のメインパイプに、十分な強度が要求される。
【0010】
ここで、ラチスブームが座屈しないようにするために、メインパイプ全体の径や板厚を増加させることが考えられる。しかし、この場合、ラチスブームの座屈強度が向上する反面、ラチスブームの自重が増加する。よって、ガイケーブルによる張力が同じであれば、吊り上げることが可能な吊荷の荷重が小さくなり、クレーンの能力が低下してしまう。
【0011】
また、ラチスブームが座屈しないようにするために、メインパイプ同士の間隔を広くすることも考えられる。この場合、ラチスブームの断面定数が大きくなるので、メインパイプに生じる圧縮荷重を低減させることができる。しかし、ラチスブームをトレーラ等で輸送することができるように、ラチスブームの幅と高さの寸法を輸送規制に適合させる必要がある。よって、メインパイプ同士の間隔を広げることに対して限界がある。
【0012】
本発明の目的は、ラチスブームの重量増加を最小限に抑えながら、メインパイプ同士の間隔を広げることなく、ラチスブームの座屈強度を向上させることが可能な移動式クレーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明における移動式クレーンは、自走式の下部走行体と、前記下部走行体の上に設けられた上部旋回体と、前記上部旋回体に対して起伏可能に設けられ、短手方向の断面が矩形状のラチスブームと、前記ラチスブームを起伏させる起伏手段と、を有し、前記ラチスブームは、矩形状の断面の四隅にそれぞれ位置する中空のメインパイプと、前記メインパイプ同士を連結するラチスパイプと、前記メインパイプの特定部分に設けられた補強部材と、を有する。
【0014】
上記の構成によれば、中空のメインパイプの特定部分に補強部材を設けることによって、特定部分におけるメインパイプの曲げ剛性が向上し、メインパイプの特定部分において、座屈による変形が抑えられる。このとき、ラチスブームの重量増加は補強部材の重量分のみであり、メインパイプ同士の間隔を広げる必要もない。これにより、ラチスブームの重量増加を最小限に抑えながら、メインパイプ同士の間隔を広げることなく、ラチスブームの座屈強度を向上させることができる。
【0015】
また、本発明における移動式クレーンにおいて、前記補強部材は、前記メインパイプの外周側に設けられていてよい。上記の構成によれば、中空のメインパイプの外周側に補強部材を設けることによって、特定部分におけるメインパイプの座屈強度を向上させている。これにより、メインパイプの中心から外側に向かって生じる座屈による変形を抑えることができる。
【0016】
また、本発明における移動式クレーンにおいて、前記補強部材は線状であって、前記メインパイプの外周面に巻きつけられていてよい。上記の構成によれば、中空のメインパイプの外周面に線状の補強部材を巻きつけるという比較的容易な加工によって、メインパイプの中心から外側に向かって生じる座屈による変形を抑えることができる。
【0017】
また、本発明における移動式クレーンにおいて、前記補強部材はシート状であって、前記メインパイプの外周面に貼り付けられていてよい。上記の構成によれば、中空のメインパイプの外周面にシート状の補強部材を貼り付けるという比較的容易な加工によって、メインパイプの中心から外側に向かって生じる座屈による変形を抑えることができる。
【0018】
また、本発明における移動式クレーンにおいて、前記補強部材は、前記メインパイプの内部に設けられていてよい。上記の構成によれば、中空のメインパイプの内部に補強部材を設けることによって、特定部分におけるメインパイプの座屈強度を向上させている。これにより、メインパイプの外側から中心に向かって生じる座屈による変形を抑えることができる。
【0019】
また、本発明における移動式クレーンにおいて、前記補強部材は、前記メインパイプの内部に充填された発泡体であってよい。上記の構成によれば、中空のメインパイプの内部に発泡体を充填することによって、メインパイプの外側から中心に向かって生じる座屈による変形を抑えることができる。
【0020】
また、本発明における移動式クレーンにおいて、前記発泡体は、前記メインパイプの前記特定部分の内部全体に充填されていてよい。上記の構成によれば、中空のメインパイプの特定部分の内部全体に発泡体を充填することによって、メインパイプの外側から中心に向かって生じる座屈による変形を好適に抑えることができる。
【0021】
また、本発明における移動式クレーンにおいて、前記発泡体は、前記メインパイプの前記特定部分の内部の少なくとも一箇所を塞ぐように充填されていてよい。上記の構成によれば、中空のメインパイプの特定部分の内部の少なくとも一箇所を塞ぐように発泡体を充填することによって、ラチスブームの重量増加を好適に抑えながら、メインパイプの外側から中心に向かって生じる座屈による変形を好適に抑えることができる。
【0022】
また、本発明における移動式クレーンにおいて、前記補強部材は、前記メインパイプの内周面に接続する板部材であってよい。上記の構成によれば、中空のメインパイプの内周面に板部材を接続することによって、メインパイプの外側から中心に向かって接続方向に沿って生じる座屈による変形を抑えることができる。
【0023】
また、本発明における移動式クレーンにおいて、前記板部材は、前記メインパイプの内周面との接続方向が、前記メインパイプに圧縮荷重が負荷される方向となるように設けられていてよい。上記の構成によれば、板部材とメインパイプの内周面との接続方向が、メインパイプに圧縮荷重が負荷される方向であるので、メインパイプに負荷される圧縮荷重に対して、メインパイプの曲げ剛性を好適に向上させることができる。
【0024】
また、本発明における移動式クレーンにおいて、前記補強部材は、背面側に位置する前記メインパイプに設けられていてよい。上記の構成によれば、背面側に位置するメインパイプは、腹面側に位置するメインパイプよりも大きな圧縮荷重を受けているので、背面側に位置するメインパイプの曲げ剛性を向上させることにより、ラチスブームの座屈強度を効率的に向上させることができる。
【0025】
また、本発明における移動式クレーンにおいて、前記特定部分は、前記メインパイプに負荷される圧縮荷重が最も大きい部分であってよい。上記の構成によれば、補強部材が設けられた特定部分が、メインパイプに負荷される圧縮荷重が最も大きい部分であるので、特定部分におけるメインパイプの曲げ剛性を向上させることにより、ラチスブームの座屈強度を効率的に向上させることができる。
【0026】
また、本発明における移動式クレーンにおいて、前記補強部材は、前記メインパイプを構成する材料よりも比重が小さい材料で構成されていてよい。上記の構成によれば、補強部材を、メインパイプを構成する材料よりも比重が小さい材料で構成することによって、ラチスブームの重量増加を好適に抑えることができる。
【0027】
また、本発明における移動式クレーンにおいて、前記補強部材は、前記メインパイプを構成する材料よりも引張強度が高い材料で構成されていてよい。上記の構成によれば、補強部材を、メインパイプを構成する材料よりも引張強度が高い材料で構成することによって、ラチスブームの座屈強度を好適に向上させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の移動式クレーンによると、中空のメインパイプの特定部分に補強部材を設けることによって、特定部分におけるメインパイプの曲げ剛性が向上し、メインパイプの特定部分において、座屈による変形が抑えられる。このとき、ラチスブームの重量増加は補強部材の重量分のみであり、メインパイプ同士の間隔を広げる必要もない。これにより、ラチスブームの重量増加を最小限に抑えながら、メインパイプ同士の間隔を広げることなく、ラチスブームの座屈強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態による移動式クレーンにおいて、ラチスブームが直立状態であるときの概略側面図である。
【図2】(a)は、ラチスブームの概略側面図であり、(b)は、ラチスブームの概略断面図である。
【図3】本発明の実施形態による移動式クレーンにおいて、ラチスブームが横たわった状態であるときの概略側面図である。
【図4】(a)は、従来のメインパイプの概略側面図であり、(b)は、第1実施形態に係るメインパイプの概略側面図である。
【図5】メインパイプの概略断面図である。
【図6】(a)は、従来のメインパイプの概略側面図であり、(b)は、第2実施形態に係るメインパイプの概略側面図である。
【図7】メインパイプの概略断面図である。
【図8】(a)は、従来のメインパイプの概略側面図であり、(b)は、第3実施形態に係るメインパイプの概略側面図である。
【図9】メインパイプの概略断面図である。
【図10】(a)は、第3実施形態に係るメインパイプの変形例の概略側面図であり、(b)は、第3実施形態に係るメインパイプの変形例の概略側面図であり、(c)は、第3実施形態に係るメインパイプの変形例の概略側面図であり、(d)は、第3実施形態に係るメインパイプの変形例の概略側面図である。
【図11】(a)は、第3実施形態に係るメインパイプの変形例の概略側面図であり、(b)は、第3実施形態に係るメインパイプの変形例の概略側面図であり、(c)は、第3実施形態に係るメインパイプの変形例の概略側面図である。
【図12】(a)は、従来のメインパイプの概略側面図であり、(b)、(c)は、第4実施形態に係るメインパイプの概略側面図である。
【図13】メインパイプの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0031】
[第1実施形態]
(移動式クレーンの機械的構成)
本発明の第1実施形態による移動式クレーン1は、図1に示すように、履帯走行式の下部走行体2を備えている。下部走行体2の上には、旋回ベアリング3を介して、垂直軸心回りに旋回する上部旋回体4が搭載されている。旋回ベアリング3は、図示しないインナーレースとアウターレースとボールまたはローラとからなる。
【0032】
上部旋回体4の前部には、運転室4aが配設されている。また、上部旋回体4の後部には、カウンタウェイト4bが装着されている。さらに、上部旋回体4の前部には、ラチスブーム5を起伏可能に支持するブームフットピン4cが設けられている。
【0033】
ラチスブーム5は、下部ブーム5aと、中間ブーム5bと、上部ブーム5cとが連結されてなる。なお、ラチスブーム5は、下部ブーム5aと、中間ブーム5bと、上部ブーム5cとが連結されてなる三段構成に限定されず、下部ブーム5aと上部ブーム5cとの二段構成であってもよいし、四段以上の構成であってもよい。
【0034】
上部旋回体4の後部の上部には、側面形状が直角三角形状のガントリ6が立設されている。ガントリ6の頂部側には、下部スプレッダ6aが配設されている。ラチスブーム5の先端側には、上部スプレッダ6bが配設されている。下部スプレッダ6aと上部スプレッダ6bとの間には、ブーム起伏ロープ7が下部スプレッダ6aと上部スプレッダ6bとに組み込まれて設けられている。上部スプレッダ6bとラチスブーム5の上端部とは、ガイケーブル6cによって連結されている。
【0035】
ブーム起伏ロープ7は、上部旋回体4に搭載されている図示しないブーム起伏ドラムからガントリ6の頂部まで延び、下部スプレッダ6aおよび上部スプレッダ6bの両方に巻かれている。ブーム起伏ロープ7は、ブーム起伏ドラムによって巻取り、巻出される。ラチスブーム5は、ブーム起伏ドラムによるブーム起伏ロープ7の巻取り、巻出しによる下部スプレッダ6aと上部スプレッダ6bとの間の間隔の拡縮により、ガイケーブル6cを介して起伏されるように構成されている。
【0036】
また、ラチスブーム5の先端部には、吊荷13を吊持する主フック8が昇降自在に吊持されている。より詳しくは、ラチスブーム5の先端部には、ガイドシーブ5dとトップシーブ5eとが設けられており、主巻ロープ9がガイドシーブ5d、トップシーブ5eの順に掛けられている。主巻ロープ9は、上部旋回体4に搭載された図示しない主巻ウインチにより巻取り、繰出される。そして、主巻ロープ9はトップシーブ5eで下向きに方向変換され、主フック8を支持する主フックブロック8aに設けられた複数のシーブに掛け回されている。主巻ロープ9の先端は、ラチスブーム5の先端に連結されている。
【0037】
(ラチスブームの機械的構成)
ラチスブーム5は、図2に示すように、断面形状が矩形であり、四隅に中空のメインパイプ21がそれぞれ配置されている。これらメインパイプ21は互いにラチスパイプ22によって連結されている。メインパイプ21は、ラチスブーム5に負荷される軸方向の荷重を受ける役割を果たしている。一方、ラチスパイプ22は、メインパイプ21間の距離を保持することによって、ラチスブーム5の断面形状を保持する役割を果たしている。
【0038】
ここで、図1に示すように、ラチスブーム5の根元部分(ブームフット)11にかかる荷重については、吊荷13により生じる荷重のブーム軸に直交する方向の成分Aと、ラチスブーム5の自重のブーム軸に直交する方向の成分Bとの和が、ガイケーブル6cの張力のブーム軸に直交する方向の成分Cと釣り合っている。しかし、吊荷13の荷重のブーム軸方向の成分A’、ラチスブーム5の自重のブーム軸方向の成分B’、および、ガイケーブル6cの張力のブーム軸方向の成分C’の全てが、ラチスブーム5を圧縮する力として作用している。つまり、成分A’、成分B’、そして成分C’の和である荷重Dがブーム軸方向に作用している。また、荷重Dと相対する方向には、荷重Dの反力Eが作用している。このように、ラチスブーム5の4本のメインパイプ21は大きな圧縮力を受けている。
【0039】
また、ラチスブーム5は自重によって下方向にたわむので、4本のメインパイプ21のうち、背面側に位置する2本のメインパイプ21aは、ブーム軸方向の圧縮力に加えて、たわみ(曲げ)による圧縮力を受けている。つまり、背面側の2本のメインパイプ21aは、腹面側の2本のメインパイプ21bよりも大きな圧縮荷重を受けている。
【0040】
特に、ラチスブーム5を可能な限り直立させたときに、吊荷13の荷重によるブーム軸方向の成分が最大となる。このとき、中間ブーム5bにおける下部ブーム5a付近において、4本のメインパイプ21のうち、背面側の2本のメインパイプ21aに、最も大きな圧縮荷重が生じる。
【0041】
また、図3に示すように、地面に横たわっているラチスブーム5を引き起こすときに、ガイケーブル6cによる張力がブーム軸にほぼ平行になり、ガイケーブル6cの張力によるブーム軸方向の成分F’が最大となる。一方、ラチスブーム5には、成分F’と相対する方向に、成分F’と釣り合う反力Hが作用している。また、ラチスブーム5には、ラチスブーム5の自重による荷重Gが作用している。そのため、ラチスブーム5は下方向にたわむ(曲がる)。これにより、ラチスブーム5の中央付近において、4本のメインパイプ21のうち、背面側に位置する2本のメインパイプ21aに、最も大きな圧縮荷重が生じる。
【0042】
そこで、背面側に位置する2本のメインパイプ21aを補強することにより、ラチスブーム5の座屈強度が向上されている。図4(a)に示すように、従来のメインパイプ21の外周面には、何も巻きつけられていない。これに対して、図4(b)に示すように、本実施形態に係るメインパイプ21においては、背面側に位置する2本のメインパイプ21aの外周面に、補強部材として線状のCFRP(炭素繊維強化プラスチック)30が巻きつけられている。
【0043】
ここで、CFRP30が巻きつけられている部分は、メインパイプ21に負荷される圧縮荷重が最も大きい特定部分である。具体的には、特定部分は、中間ブーム5bにおける下部ブーム5a付近の部分や、ラチスブーム5の中央付近の部分である。
【0044】
本実施形態において、ラチスブーム5を構成するメインパイプ21およびラチスパイプ22は、鋼製である。鋼は、比重が7.86で、ヤング率が2.1×10kg/mmである。よって、メインパイプ21の外周面に巻きつける補強部材としては、ラチスブーム5の重量増加を最小限に抑えるために、鋼よりも比重が小さい材料が望ましい。以下の表1に、鋼よりも比重が小さい材料を示す。
【0045】
【表1】

【0046】
また、メインパイプ21の外周面に巻きつける補強部材としては、ラチスブーム5の座屈強度を向上させるために、上記の表1に示した材料のうち、引張弾性率(ヤング率)が鋼よりも高い材料が望ましい。この点、CFRP30は、比重が鋼よりも小さく、引張強度が鋼よりも高いので、最も適した材料であるといえる。
【0047】
メインパイプ21が座屈すると、図5に示すように、中空のメインパイプ21の断面が、円形から変形した形となる。具体的には、メインパイプ21が座屈すると、メインパイプ21の外側から中心に向かう方向に力が作用する。これにより、メインパイプ21の外側から中心に向って変形が生じ、メインパイプ21が凹む。また、メインパイプ21が座屈すると、メインパイプ21の中心から外側に向かう方向に力が作用する。これにより、メインパイプ21の中心から外側に向かって変形が生じ、凹んだ部分の左右の部分が外側に膨らむ。
【0048】
本実施形態においては、メインパイプ21の外周面にCFRP30を巻きつけることによって、メインパイプ21の曲げ剛性を向上させている。これにより、メインパイプ21の中心から外側に向かって生じる座屈による変形(膨らみ)が、矢印で示すように抑えられる。
【0049】
このように、中空のメインパイプ21の特定部分にCFRP30を設けることによって、特定部分におけるメインパイプ21の曲げ剛性が向上し、メインパイプ21の特定部分において、座屈による変形が抑えられる。このとき、ラチスブーム5の重量増加はCFRP30の重量分のみであり、メインパイプ21同士の間隔を広げる必要もない。これにより、ラチスブーム5の重量増加を最小限に抑えながら、メインパイプ21同士の間隔を広げることなく、ラチスブーム5の座屈強度を向上させることができる。
【0050】
また、中空のメインパイプ21の外周側にCFRP30を設けることによって、特定部分におけるメインパイプ21の座屈強度を向上させている。これにより、メインパイプ21の中心から外側に向かって生じる座屈による変形を抑えることができる。
【0051】
また、中空のメインパイプ21の外周面に線状のCFRP30を巻きつけるという比較的容易な加工によって、メインパイプ21の中心から外側に向かって生じる座屈による変形を抑えることができる。
【0052】
また、背面側に位置するメインパイプ21aは、腹面側に位置するメインパイプ21bよりも大きな圧縮荷重を受けているので、背面側に位置するメインパイプ21aの曲げ剛性を向上させることにより、ラチスブーム5の座屈強度を効率的に向上させることができる。
【0053】
また、CFRP30が設けられた特定部分が、メインパイプ21に負荷される圧縮荷重が最も大きい部分であるので、特定部分におけるメインパイプ21の曲げ剛性を向上させることにより、ラチスブーム5の座屈強度を効率的に向上させることができる。
【0054】
また、CFRP30は、メインパイプ21を構成する鋼よりも比重が小さいので、ラチスブーム5の重量増加を好適に抑えることができる。
【0055】
また、CFRP30は、メインパイプ21を構成する鋼よりも引張強度が高いので、ラチスブーム5の座屈強度を好適に向上させることができる。
【0056】
なお、本実施形態において、シート状のCFRPがメインパイプ21の外周面に貼り付けられていてもよい。また、補強部材はCFRPに限定されず、比重が鋼よりも小さく、引張強度が鋼よりも高い材料であればよい。
【0057】
このように、中空のメインパイプ21の外周面にシート状のCFRPを貼り付けるという比較的容易な加工によって、メインパイプ21の中心から外側に向かって生じる座屈による変形を抑えることができる。
【0058】
また、補強部材は鋼であってもよい。この場合、メインパイプ21の一部の重量が増加するだけなので、メインパイプ21全体の径や板厚を増加させるよりも、ラチスブーム5の重量増加を最小限に抑えながら、ラチスブーム5の座屈強度を向上させることができる。
【0059】
(第1実施形態の概要)
以上のように、本実施形態の移動式クレーン1は、自走式の下部走行体2と、下部走行体2の上に設けられた上部旋回体4と、上部旋回体4に対して起伏可能に設けられ、短手方向の断面が矩形状のラチスブーム5と、ラチスブーム5を起伏させる起伏手段(ガントリ6、下部スプレッダ6a、上部スプレッダ6b、ガイケーブル6c、ブーム起伏ロープ7など)と、を有し、ラチスブーム5は、矩形状の断面の四隅にそれぞれ位置する中空のメインパイプ21と、メインパイプ21同士を連結するラチスパイプ22と、メインパイプ21の特定部分に設けられた補強部材(CFRP30など)と、を有する構成にされている。
【0060】
上記の構成によれば、中空のメインパイプ21の特定部分に補強部材を設けることによって、特定部分におけるメインパイプ21の曲げ剛性が向上し、メインパイプ21の特定部分において、座屈による変形が抑えられる。このとき、ラチスブーム5の重量増加は補強部材の重量分のみであり、メインパイプ21同士の間隔を広げる必要もない。これにより、ラチスブーム5の重量増加を最小限に抑えながら、メインパイプ21同士の間隔を広げることなく、ラチスブーム5の座屈強度を向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態の移動式クレーン1において、補強部材は、メインパイプ21の外周側に設けられている構成にされている。上記の構成によれば、中空のメインパイプ21の外周側に補強部材を設けることによって、特定部分におけるメインパイプ21の座屈強度を向上させている。これにより、メインパイプ21の中心から外側に向かって生じる座屈による変形を抑えることができる。
【0062】
また、本実施形態の移動式クレーン1において、補強部材は線状であって、メインパイプ21の外周面に巻きつけられている構成にされている。上記の構成によれば、中空のメインパイプ21の外周面に線状の補強部材を巻きつけるという比較的容易な加工によって、メインパイプ21の中心から外側に向かって生じる座屈による変形を抑えることができる。
【0063】
また、本実施形態の移動式クレーン1において、補強部材はシート状であって、メインパイプ21の外周面に貼り付けられている構成にされている。上記の構成によれば、中空のメインパイプ21の外周面にシート状の補強部材を貼り付けるという比較的容易な加工によって、メインパイプ21の中心から外側に向かって生じる座屈による変形を抑えることができる。
【0064】
また、本実施形態の移動式クレーン1において、補強部材は、背面側に位置するメインパイプ21aに設けられている構成にされている。上記の構成によれば、背面側に位置するメインパイプ21aは、腹面側に位置するメインパイプ21bよりも大きな圧縮荷重を受けているので、背面側に位置するメインパイプ21aの曲げ剛性を向上させることにより、ラチスブーム5の座屈強度を効率的に向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態の移動式クレーン1において、特定部分は、メインパイプ21に負荷される圧縮荷重が最も大きい部分で構成されている。上記の構成によれば、補強部材が設けられた特定部分が、メインパイプ21に負荷される圧縮荷重が最も大きい部分であるので、特定部分におけるメインパイプ21の曲げ剛性を向上させることにより、ラチスブーム5の座屈強度を効率的に向上させることができる。
【0066】
また、本実施形態の移動式クレーン1において、補強部材は、メインパイプ21を構成する材料よりも比重が小さい材料で構成されている。上記の構成によれば、補強部材を、メインパイプ21を構成する材料よりも比重が小さい材料で構成することによって、ラチスブーム5の重量増加を好適に抑えることができる。
【0067】
また、本実施形態の移動式クレーン1において、補強部材は、メインパイプ21を構成する材料よりも引張強度が高い材料で構成されている。上記の構成によれば、補強部材を、メインパイプ21を構成する材料よりも引張強度が高い材料で構成することによって、ラチスブーム5の座屈強度を好適に向上させることができる。
【0068】
[第2実施形態]
(ラチスブームの機械的構成)
次に、本発明の第2実施形態による移動式クレーン1について説明する。第2実施形態による移動式クレーン1が、第1実施形態による移動式クレーン1と異なる点は、従来のメインパイプ21が、図6(a)に示すように、内部に何も充填されていないのに対して、図6(b)に示すように、メインパイプ21の特定部分の内部全体に、補強部材である発泡アルミ(発泡体)40が充填されている点である。発泡アルミ40は、ラチスブーム5を構成する中空のメインパイプ21のうち、背面側に位置する2本のメインパイプ21aの内部に充填されている。
【0069】
ここで、発泡アルミ40が充填されている部分は、メインパイプ21に負荷される圧縮荷重が最も大きい特定部分全体である。特定部分は、第1実施形態と同様に、中間ブーム5bにおける下部ブーム5a付近の部分や、ラチスブーム5の中央付近の部分である。
【0070】
第1実施形態と同様に、ラチスブーム5を構成するメインパイプ21およびラチスパイプ22は、鋼製である。発泡アルミ40は、鋼よりも比重が小さく、鋼よりも引張強度が高い。具体的には、鋼は、比重が7.86で、ヤング率が2.1×10kg/mmである。これに対して、発泡アルミ40は、比重が0.2〜0.3で、ヤング率が0.1×1011kg/mmである。
【0071】
メインパイプ21が座屈すると、図7に示すように、中空のメインパイプ21の断面が、円形から変形した形となる。具体的には、メインパイプ21が座屈すると、メインパイプ21の外側から中心に向かう方向に力が作用する。これにより、メインパイプ21の外側から中心に向って変形が生じ、メインパイプ21が凹む。また、メインパイプ21が座屈すると、メインパイプ21の中心から外側に向かう方向に力が作用する。これにより、メインパイプ21の中心から外側に向かって変形が生じ、凹んだ部分の左右の部分が外側に膨らむ。
【0072】
本実施形態においては、中空のメインパイプ21の内部に発泡アルミ40を充填することによって、メインパイプ21の曲げ剛性を向上させている。これにより、メインパイプ21の外側から中心に向かって生じる座屈による変形(凹み)が、矢印で示すように抑えられる。
【0073】
このように、中空のメインパイプ21の特定部分に発泡アルミ40を設けることによって、特定部分におけるメインパイプ21の曲げ剛性が向上し、メインパイプ21の特定部分において、座屈による変形が抑えられる。このとき、ラチスブーム5の重量増加は発泡アルミ40の重量分のみであり、メインパイプ21同士の間隔を広げる必要もない。これにより、ラチスブーム5の重量増加を最小限に抑えながら、メインパイプ21同士の間隔を広げることなく、ラチスブーム5の座屈強度を向上させることができる。
【0074】
また、中空のメインパイプ21の内部に発泡アルミ40を充填することによって、特定部分におけるメインパイプ21の座屈強度を向上させている。これにより、メインパイプ21の外側から中心に向かって生じる座屈による変形を抑えることができる。
【0075】
また、中空のメインパイプ21の特定部分の内部全体に発泡アルミ40を充填することによって、メインパイプ21の外側から中心に向かって生じる座屈による変形を好適に抑えることができる。
【0076】
また、背面側に位置するメインパイプ21aは、腹面側に位置するメインパイプ21bよりも大きな圧縮荷重を受けているので、背面側に位置するメインパイプ21aの曲げ剛性を向上させることにより、ラチスブーム5の座屈強度を効率的に向上させることができる。
【0077】
また、発泡アルミ40が設けられた特定部分が、メインパイプ21に負荷される圧縮荷重が最も大きい部分であるので、特定部分におけるメインパイプ21の曲げ剛性を向上させることにより、ラチスブーム5の座屈強度を効率的に向上させることができる。
【0078】
また、発泡アルミ40は、メインパイプ21を構成する鋼よりも比重が小さいので、ラチスブーム5の重量増加を好適に抑えることができる。
【0079】
また、発泡アルミ40は、メインパイプ21を構成する鋼よりも引張強度が高いので、ラチスブーム5の座屈強度を好適に向上させることができる。
【0080】
なお、本実施形態において、メインパイプ21の内部に充填する補強部材は発泡アルミ40に限定されず、比重が鋼よりも小さく、引張強度が鋼よりも高い材料であればよい。また、メインパイプ21の内部に発泡アルミ40を充填する構成に限定されず、メインパイプ21の内部に収まるような補強部材が、メインパイプ21の内部に挿入されていてもよい。
【0081】
また、メインパイプ21の内部に設ける補強部材は鋼であってもよい。この場合、メインパイプ21の一部の重量が増加するだけなので、メインパイプ21全体の径や板厚を増加させるよりも、ラチスブーム5の重量増加を最小限に抑えながら、ラチスブーム5の座屈強度を向上させることができる。
【0082】
その他の構成は、第1実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
【0083】
(第2実施形態の概要)
以上のように、本実施形態の移動式クレーン1において、補強部材(発泡アルミ40など)は、メインパイプ21の内部に設けられている構成にされている。上記の構成によれば、中空のメインパイプ21の内部に補強部材を設けることによって、特定部分におけるメインパイプ21の座屈強度を向上させている。これにより、メインパイプ21の外側から中心に向かって生じる座屈による変形を抑えることができる。
【0084】
また、本実施形態の移動式クレーン1において、補強部材は、メインパイプ21の内部に充填された発泡体である構成にされている。上記の構成によれば、中空のメインパイプ21の内部に発泡体を充填することによって、メインパイプ21の外側から中心に向かって生じる座屈による変形を抑えることができる。
【0085】
また、本実施形態の移動式クレーン1において、発泡体は、メインパイプ21の特定部分の内部全体に充填されている構成にされている。上記の構成によれば、中空のメインパイプ21の特定部分の内部全体に発泡体を充填することによって、メインパイプ21の外側から中心に向かって生じる座屈による変形を好適に抑えることができる。
【0086】
[第3実施形態]
(ラチスブームの機械的構成)
次に、本発明の第3実施形態による移動式クレーン1について説明する。第3実施形態による移動式クレーン1が、第1実施形態による移動式クレーン1と異なる点は、従来のメインパイプ21が、図8(a)に示すように、内周面に何も接続されていないのに対して、図8(b)に示すように、メインパイプ21の内周面に、補強部材である板部材50が接続されている点である。板部材50は、ラチスブーム5を構成する中空のメインパイプ21のうち、背面側に位置する2本のメインパイプ21aの内周面に接続されている。
【0087】
ここで、板部材50は、メインパイプ21の内周面との接続方向が、圧縮荷重がかかる方向Jと平行となるように、メインパイプ21の内周面に接続されている。方向Jは、具体的には、図2に示すようなラチスブーム5の縦方向K、若しくは横方向Lと平行である。これは、ラチスブーム5を構成するメインパイプ21に、吊荷13の荷重がかかる縦方向Kと、ラチスブーム5の旋回による慣性力および横風による荷重がかかる横方向Lの2方向から、圧縮荷重がかかり易いためである。また、板部材50が接続されている部分は、メインパイプ21に負荷される圧縮荷重が最も大きい特定部分である。特定部分は、第1実施形態と同様に、中間ブーム5bにおける下部ブーム5a付近の部分や、ラチスブーム5の中央付近の部分である。
【0088】
第1実施形態と同様に、ラチスブーム5を構成するメインパイプ21およびラチスパイプ22は、鋼製である。なお、板部材50としては、鋼よりも比重が小さく、鋼よりも引張強度が高いものを用いるとなお良い。
【0089】
メインパイプ21が座屈すると、図9に示すように、中空のメインパイプ21の断面が、円形から変形した形となる。具体的には、メインパイプ21が座屈すると、メインパイプ21の外側から中心に向かう方向に力が作用する。これにより、メインパイプ21の外側から中心に向って変形が生じ、メインパイプ21が凹む。また、メインパイプ21が座屈すると、メインパイプ21の中心から外側に向かう方向に力が作用する。これにより、メインパイプ21の中心から外側に向かって変形が生じ、凹んだ部分の左右の部分が外側に膨らむ。
【0090】
本実施形態においては、中空のメインパイプ21の内周面に板部材50を接続することによって、メインパイプ21の曲げ剛性を向上させている。これにより、メインパイプ21の外側から中心に向かって生じる座屈による変形(凹み)が、矢印で示すように抑えられる。
【0091】
このように、中空のメインパイプ21の特定部分に板部材50を設けることによって、特定部分におけるメインパイプ21の曲げ剛性が向上し、メインパイプ21の特定部分において、座屈による変形が抑えられる。このとき、ラチスブーム5の重量増加は板部材50の重量分のみであり、メインパイプ21同士の間隔を広げる必要もない。これにより、ラチスブーム5の重量増加を最小限に抑えながら、メインパイプ21同士の間隔を広げることなく、ラチスブーム5の座屈強度を向上させることができる。
【0092】
また、中空のメインパイプ21の内周面に板部材50を接続することによって、特定部分におけるメインパイプ21の座屈強度を向上させている。これにより、メインパイプ21の外側から中心に向かって生じる座屈による変形を抑えることができる。
【0093】
また、板部材50とメインパイプ21の内周面との接続方向が、メインパイプ21に圧縮荷重が負荷される方向であるので、メインパイプ21に負荷される圧縮荷重に対して、メインパイプ21の曲げ剛性を好適に向上させることができる。
【0094】
また、背面側に位置するメインパイプ21aは、腹面側に位置するメインパイプ21bよりも大きな圧縮荷重を受けているので、背面側に位置するメインパイプ21aの曲げ剛性を向上させることにより、ラチスブーム5の座屈強度を効率的に向上させることができる。
【0095】
また、板部材50が設けられた特定部分が、メインパイプ21に負荷される圧縮荷重が最も大きい部分であるので、特定部分におけるメインパイプ21の曲げ剛性を向上させることにより、ラチスブーム5の座屈強度を効率的に向上させることができる。
【0096】
また、板部材50を、メインパイプ21を構成する鋼よりも比重が小さいものにすれば、ラチスブーム5の重量増加を好適に抑えることができ、好ましい。
【0097】
また、板部材50を、メインパイプ21を構成する鋼よりも引張強度が高いものにすることにより、ラチスブーム5の座屈強度を好適に向上させることができ、好ましい。
【0098】
なお、板部材は鋼であってもよい。この場合、メインパイプ21の一部の重量が増加するだけなので、メインパイプ21全体の径や板厚を増加させるよりも、ラチスブーム5の重量増加を最小限に抑えながら、ラチスブーム5の座屈強度を向上させることができる。
【0099】
また、図10(a)に示すように、交差する2枚の板部材60a,60bが、メインパイプ21の内周面にそれぞれ接続されていてもよい。この場合、板部材60aとメインパイプ21の内周面との接続方向、および、板部材60bとメインパイプ21の内周面との接続方向の2方向から負荷される圧縮荷重に対して、メインパイプ21の曲げ剛性を向上させることができる。
【0100】
また、図10(b)に示すように、メインパイプ21の内径よりも幅が短い板部材70がメインパイプ21の内周面に接続されていてもよい。この場合、板部材70とメインパイプ21の内周面との接続方向に負荷される圧縮荷重に対して、メインパイプ21の曲げ剛性を向上させることができる。特に、メインパイプ21が湾曲した際に、板部材70が接続されているメインパイプ21の内周面が、圧縮力が作用する湾曲の内側となるように、板部材70が接続されていることが好ましい。
【0101】
また、図10(c)に示すように、間隔を開けて一直線状に並んだ2枚の板部材80a,80bが、メインパイプ21の内周面にそれぞれ接続されていてもよい。この場合、2枚の板部材80a,80bとメインパイプ21の内周面との接続方向に負荷される圧縮荷重に対して、メインパイプ21の曲げ剛性を向上させることができる。また、2枚の板部材80a,80bは、メインパイプ21の内周面への接続方向が互いに異なっていてもよい。この場合、板部材80aとメインパイプ21の内周面との接続方向、および、板部材80bとメインパイプ21の内周面との接続方向の2方向から負荷される圧縮荷重に対して、メインパイプ21の曲げ剛性を向上させることができる。
【0102】
また、図10(d)に示すように、4つの板部材90a,90b,90c,90dがメインパイプ21の内周面にそれぞれ接続されていてもよい。ここで、板部材90aと板部材90dとは、間隔を開けて一直線状に並んでいるとともに、板部材90bと板部材90cとは、間隔を開けて一直線状に並んでいる。この場合、板部材90a,90dとメインパイプ21の内周面との接続方向、および、板部材90b,90cとメインパイプ21の内周面との接続方向の2方向から負荷される圧縮荷重に対して、メインパイプ21の曲げ剛性を向上させることができる。また、4枚の板部材90a,90b,90c,90dは、メインパイプ21の内周面への接続方向が互いに異なっていてもよい。この場合、板部材90aとメインパイプ21の内周面との接続方向、板部材90bとメインパイプ21の内周面との接続方向、板部材90cとメインパイプ21の内周面との接続方向、および、板部材90dとメインパイプ21の内周面との接続方向の4方向から負荷される圧縮荷重に対して、メインパイプ21の曲げ剛性を向上させることができる。
【0103】
また、図11(a)に示すように、断面が四角形状の角筒100が、メインパイプ21の内部に挿入されていてもよい。角筒100の断面が、4辺のうち2辺が平行で、他の2辺も平行な長方形である場合、平行する2辺に平行な方向、および、平行する他の2辺に平行な方向の2方向から負荷される圧縮荷重に対して、メインパイプ21の曲げ剛性を向上させることができる。また、角筒100の断面が、平行な2辺を有しない矩形である場合、各辺に平行な4方向から負荷される圧縮荷重に対して、メインパイプ21の曲げ剛性を向上させることができる。
【0104】
また、図11(b)に示すように、断面が三角形状の角筒110が、メインパイプ21の内部に挿入されていてもよい。この場合、各辺に平行な3方向から負荷される圧縮荷重に対して、メインパイプ21の曲げ剛性を向上させることができる。
【0105】
また、図11(c)に示すように、板部材120が、メインパイプ21に設けられた穴に嵌合されていてもよい。ここで、板部材120の一部は、メインパイプ21の内部に延在している。また、板部材120は、溶接等によってメインパイプ21に固定されている。なお、板部材120は、メインパイプ21に対して取り外し可能であってよい。この場合、板部材120が老朽化したり、不要となったときに、板部材120を取り外すことが可能であるため、便利である。
【0106】
その他の構成は、第1実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
【0107】
(第3実施形態の概要)
以上のように、本実施形態の移動式クレーン1において、補強部材は、メインパイプ21の内周面に接続する板部材(板部材50,60a,60b,70,80a,80b,90a,90b,90c,90d)である構成にされている。上記の構成によれば、中空のメインパイプ21の内周面に板部材を接続することによって、メインパイプ21の外側から中心に向かって接続方向に沿って生じる座屈による変形を抑えることができる。
【0108】
さらに、板部材は、メインパイプ21の内周面との接続方向が、メインパイプ21に圧縮荷重が負荷される方向となるように設けられている構成にされている。上記の構成によれば、板部材とメインパイプ21の内周面との接続方向が、メインパイプ21に圧縮荷重が負荷される方向であるので、メインパイプ21に負荷される圧縮荷重に対して、メインパイプ21の曲げ剛性を好適に向上させることができる。
【0109】
[第4実施形態]
(ラチスブームの機械的構成)
次に、本発明の第4実施形態による移動式クレーン1について説明する。第4実施形態による移動式クレーン1が、第1実施形態による移動式クレーン1と異なる点は、従来のメインパイプ21が、図12(a)に示すように、内部に何も充填されていないのに対して、図12(b)、図12(c)に示すように、メインパイプ21の特定部分の内部の少なくとも1箇所を塞ぐように、補強部材である発泡アルミ(発泡体)40が充填されている点である。発泡アルミ40は、ラチスブーム5を構成する中空のメインパイプ21のうち、背面側に位置する2本のメインパイプ21aの内部に充填されている。
【0110】
ここで、発泡アルミ40により塞がれている部分は、メインパイプ21に負荷される圧縮荷重が最も大きい特定部分である。特定部分は、第1実施形態と同様に、中間ブーム5bにおける下部ブーム5a付近の部分や、ラチスブーム5の中央付近の部分である。図12(b)においては、メインパイプ21の特定部分の中央が、発泡アルミ40により塞がれている。図12(c)においては、メインパイプ21の特定部分の中央を中心とする3箇所が、所定の間隔で発泡アルミ40により塞がれている。なお、発泡アルミ40により塞がれる箇所は、2箇所であってもよいし、4箇所以上であってもよい。
【0111】
第1実施形態と同様に、ラチスブーム5を構成するメインパイプ21およびラチスパイプ22は、鋼製である。発泡アルミ40は、鋼よりも比重が小さく、鋼よりも引張強度が高い。具体的には、鋼は、比重が7.86で、ヤング率が2.1×10kg/mmである。これに対して、発泡アルミ40は、比重が0.2〜0.3で、ヤング率が0.1×1011kg/mmである。
【0112】
メインパイプ21が座屈すると、図13に示すように、メインパイプ21の外側から中心に向かう方向に力が作用する。これにより、中空のメインパイプ21の断面が、円形から扁平変形した形となる。
【0113】
本実施形態においては、中空のメインパイプ21の特定部分の内部の少なくとも1箇所を塞ぐように、発泡アルミ40を充填することによって、メインパイプ21の曲げ剛性を向上させている。これにより、メインパイプ21の外側から中心に向かって生じる座屈による扁平変形が、矢印で示すように抑えられる。
【0114】
このように、中空のメインパイプ21の特定部分に発泡アルミ40を設けることによって、特定部分におけるメインパイプ21の曲げ剛性が向上し、メインパイプ21の特定部分において、座屈による変形が抑えられる。このとき、ラチスブーム5の重量増加は発泡アルミ40の重量分のみであり、メインパイプ21同士の間隔を広げる必要もない。これにより、ラチスブーム5の重量増加を最小限に抑えながら、メインパイプ21同士の間隔を広げることなく、ラチスブーム5の座屈強度を向上させることができる。
【0115】
また、中空のメインパイプ21の内部に発泡アルミ40を充填することによって、特定部分におけるメインパイプ21の座屈強度を向上させている。これにより、メインパイプ21の外側から中心に向かって生じる座屈による変形を抑えることができる。
【0116】
また、中空のメインパイプ21の特定部分の内部の少なくとも一箇所を塞ぐように発泡アルミ40を充填することによって、ラチスブーム5の重量増加を好適に抑えながら、メインパイプ21の外側から中心に向かって生じる座屈による変形を好適に抑えることができる。
【0117】
また、背面側に位置するメインパイプ21aは、腹面側に位置するメインパイプ21bよりも大きな圧縮荷重を受けているので、背面側に位置するメインパイプ21aの曲げ剛性を向上させることにより、ラチスブーム5の座屈強度を効率的に向上させることができる。
【0118】
また、発泡アルミ40が設けられた特定部分が、メインパイプ21に負荷される圧縮荷重が最も大きい部分であるので、特定部分におけるメインパイプ21の曲げ剛性を向上させることにより、ラチスブーム5の座屈強度を効率的に向上させることができる。
【0119】
また、発泡アルミ40は、メインパイプ21を構成する鋼よりも比重が小さいので、ラチスブーム5の重量増加を好適に抑えることができる。
【0120】
また、発泡アルミ40は、メインパイプ21を構成する鋼よりも引張強度が高いので、ラチスブーム5の座屈強度を好適に向上させることができる。
【0121】
なお、本実施形態において、メインパイプ21の内部に充填する補強部材は発泡アルミ40に限定されず、比重が鋼よりも小さく、引張強度が鋼よりも高い材料であればよい。また、メインパイプ21の内部に発泡アルミ40を充填する構成に限定されず、メインパイプ21の内部を塞ぐような補強部材が、メインパイプ21の内部に挿入されていてもよい。
【0122】
また、メインパイプ21の内部に設ける補強部材は鋼であってもよい。この場合、メインパイプ21の一部の重量が増加するだけなので、メインパイプ21全体の径や板厚を増加させるよりも、ラチスブーム5の重量増加を最小限に抑えながら、ラチスブーム5の座屈強度を向上させることができる。
【0123】
その他の構成は、第1実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
【0124】
(第4実施形態の概要)
以上のように、本実施形態の移動式クレーン1において、発泡体(発泡アルミ40など)は、メインパイプ21の特定部分の内部の少なくとも一箇所を塞ぐように充填されている構成にされている。上記の構成によれば、中空のメインパイプ21の特定部分の内部の少なくとも一箇所を塞ぐように発泡体を充填することによって、ラチスブーム5の重量増加を好適に抑えながら、メインパイプ21の外側から中心に向かって生じる座屈による変形を好適に抑えることができる。
【0125】
(本実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0126】
例えば、本実施形態において、背面側に位置する2本のメインパイプ21aに補強部材が設けられている構成にされているが、これに限定されず、腹面側の2本のメインパイプ21bに補強部材が設けられていてもよい。
【0127】
また、本実施形態において、メインパイプ21の特定部分、即ち、中間ブーム5bにおける下部ブーム5a付近の部分や、ラチスブーム5の中央付近の部分に、補強部材が設けられている構成にされているが、これに限定されず、メインパイプ21の他の部分に補強部材が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0128】
1 移動式クレーン
2 下部走行体
3 旋回ベアリング
4 上部旋回体
4a 運転室
4b カウンタウェイト
4c ブームフットピン
5 ラチスブーム
5a 上部ブーム
5b 中間ブーム
5c 下部ブーム
5d ガイドシーブ
5e トップシーブ
6 ガントリ
6a 下部スプレッダ
6b 上部スプレッダ
6c ガイケーブル
7 ブーム起伏ロープ
8 主フック
8a 主フックブロック
9 主巻ロープ
11 根元部分
13 吊荷
21 メインパイプ
22 ラチスパイプ
40 発泡アルミ
50,60a,60b,70,80a,80b,90a,90b,90c,90d,120 板部材
100,110 角筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走式の下部走行体と、
前記下部走行体の上に設けられた上部旋回体と、
前記上部旋回体に対して起伏可能に設けられ、短手方向の断面が矩形状のラチスブームと、
前記ラチスブームを起伏させる起伏手段と、
を有し、
前記ラチスブームは、
矩形状の断面の四隅にそれぞれ位置する中空のメインパイプと、
前記メインパイプ同士を連結するラチスパイプと、
前記メインパイプの特定部分に設けられた補強部材と、
を有することを特徴とする移動式クレーン。
【請求項2】
前記補強部材は、前記メインパイプの外周側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の移動式クレーン。
【請求項3】
前記補強部材は線状であって、前記メインパイプの外周面に巻きつけられていることを特徴とする請求項2に記載の移動式クレーン。
【請求項4】
前記補強部材はシート状であって、前記メインパイプの外周面に貼り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の移動式クレーン。
【請求項5】
前記補強部材は、前記メインパイプの内部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の移動式クレーン。
【請求項6】
前記補強部材は、前記メインパイプの内部に充填された発泡体であることを特徴とする請求項5に記載の移動式クレーン。
【請求項7】
前記発泡体は、前記メインパイプの前記特定部分の内部全体に充填されていることを特徴とする請求項6に記載の移動式クレーン。
【請求項8】
前記発泡体は、前記メインパイプの前記特定部分の内部の少なくとも一箇所を塞ぐように充填されていることを特徴とする請求項6に記載の移動式クレーン。
【請求項9】
前記補強部材は、前記メインパイプの内周面に接続する板部材であることを特徴とする請求項5に記載の移動式クレーン。
【請求項10】
前記板部材は、前記メインパイプの内周面との接続方向が、前記メインパイプに圧縮荷重が負荷される方向となるように設けられていることを特徴とする請求項9に記載の移動式クレーン。
【請求項11】
前記補強部材は、背面側に位置する前記メインパイプに設けられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の移動式クレーン。
【請求項12】
前記特定部分は、前記メインパイプに負荷される圧縮荷重が最も大きい部分であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の移動式クレーン。
【請求項13】
前記補強部材は、前記メインパイプを構成する材料よりも比重が小さい材料で構成されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の移動式クレーン。
【請求項14】
前記補強部材は、前記メインパイプを構成する材料よりも引張強度が高い材料で構成されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の移動式クレーン。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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