移動式クレーン
【課題】ラッフィングジブを用いる場合と固定ジブを用いる場合の両方にブーム全体が兼用可能でかつそれぞれの特長を十分に発揮できる移動式クレーンを提供する。
【解決手段】ブーム3の先端にジブの基端が連結される。ブームの先端部を構成する構造物40を、ジブとして、ラッフィングジブを用いる場合と固定ジブ31を用いる場合の両方に兼用するものとするに当たり、構造物のジブとの連結軸47を、ラッフィングジブを用いる場合ブームの軸線Sからブームの腹面側に所定距離離れたオフセット位置に設ける一方、構造物の腹面側主桁41aに、主桁延長部材43の一端を回動可能に連結する。固定ジブを用いる場合予めこの主桁延長部材の他端をブームの腹面側主桁3aに連結して構造物の腹面側主桁とブームの腹面側主桁との間に主桁延長部材を介在させることにより、構造物のジブとの連結軸がブームの軸線上に略一致する位置に変位するようにする。
【解決手段】ブーム3の先端にジブの基端が連結される。ブームの先端部を構成する構造物40を、ジブとして、ラッフィングジブを用いる場合と固定ジブ31を用いる場合の両方に兼用するものとするに当たり、構造物のジブとの連結軸47を、ラッフィングジブを用いる場合ブームの軸線Sからブームの腹面側に所定距離離れたオフセット位置に設ける一方、構造物の腹面側主桁41aに、主桁延長部材43の一端を回動可能に連結する。固定ジブを用いる場合予めこの主桁延長部材の他端をブームの腹面側主桁3aに連結して構造物の腹面側主桁とブームの腹面側主桁との間に主桁延長部材を介在させることにより、構造物のジブとの連結軸がブームの軸線上に略一致する位置に変位するようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラクレーンなどの移動式クレーンに関し、特に、ブームの先端に設けられるジブを有するものに係わる。
【背景技術】
【0002】
従来、ジブを有する移動式クレーンとして、例えば特許文献1に開示され、図11にも示すようなラッフィングジブクレーンが知られている。このラッフィングジブクレーンは、下部走行体101上に旋回自在に搭載された上部旋回体102と、この上部旋回体102の前部に基端が起伏可能に取り付けられたブーム103と、このブーム103の先端部に基端が起伏可能に連結されたラッフィングジブ104と、ブーム103の先端部にそれぞれ基端が連結されたフロントストラット(上部ストラットともいう)105及びリヤストラット(下部ストラットともいう)106とを備えている。ラッフィングジブ104の先端からは主フック107が主巻上ロープ108を介して吊り下げられているとともに、補フック109が補巻上ロープ110を介して吊り下げられている。主巻上ロープ108の一端は、ラッフィングジブ104の先端部、フロントストラット105及びリヤストラット106にそれぞれ設けた複数のシーブを通して、ブーム103の基端部に設けた主巻ウインチ111に巻き付けられ、この主巻ウインチ111により主フック107が主巻上ロープ108を介して巻上又は巻下されるようになっている。また、補巻上ロープ110の一端も、同じくラッフィングジブ104の先端部、フロントストラット105及びリヤストラット106にそれぞれ設けた複数のシーブを通して、ブーム103の基端部に設けた補巻ウインチ112に巻き付けられ、この補巻ウインチ112により補フック109が補巻上ロープ110を介して巻上又は巻下されるようになっている。
【0003】
上記ブーム103の先端部は、ガイライン114を介してマスト115の先端部と連結されている。このマスト115の基端は上部旋回体102に回動可能に取り付けられており、マスト115の基端部にはブーム起伏ウインチ116が取り付けられている。マスト115の先端部には上部スプレッダ117が設けられているとともに、上部旋回体102の後部には下部スプレッダ118が設けられており、この両スプレッダ117,118間にはブーム起伏ロープ119が巻き掛けられ、このブーム起伏ロープ119の一端はブーム起伏ウインチ116に巻き付けられ、このブーム起伏ウインチ116により上記両スプレッダ117,118間の距離を変えることでブーム103が起伏するようになっている。
【0004】
上記ラッフィングジブ104の先端部は、ガイライン121を介してフロントストラット105の先端部と連結されており、リヤストラット106の先端部は、ガイライン122を介してブーム103の基端側部分と連結されている。また、フロントストラット105の先端部とリヤストラット106の先端部との間にはシーブを介してジブ起伏ロープ123が巻き掛けられ、このジブ起伏ロープ123の一端は、リヤストラット106の中央部に設けたシーブを通して、ブーム103の基端部に設けたジブ起伏ウインチ124に巻き付けられ、このジブ起伏ウインチ124によりフロントストラット105とリヤストラット106とがなす角度を変えることでラッフィングジブ104が起伏するようになっている。
【0005】
このようなラッフィングジブクレーンの場合、ブーム103の先端部とラッフィングジブ104の基端との連結点ないし連結軸126は、ブーム103の軸線Sから前方つまりブーム103の腹面側に所定距離e離れたオフセット位置に設けられている。これは、図12に示すように、アタッチメントの組立・分解時などにブーム103の腹面側にラッフィングジブ104を折り畳んだ状態でブーム103などを地面上に接地できるようにするためのものである。
【0006】
また、ラッフィングジブクレーンの外、ジブを有する移動式クレーンとしては、例えば特許文献2に開示され、図13にも示すように、ブーム151の先端に連結されるジブ152のブーム151に対する角度が変化せず固定した状態に設けられてなるものが知れている。ジブ152の基端は、ブーム151に対して揺動可能に取り付けられているが、ジブ152の先端は、ストラット153の先端を経て張設された2本のガイライン154,155によってブーム151に支持されているため、ジブ152のブーム151に対する角度は、通常の作業時には変化しないようになっている。この種のジブ152は固定式ジブあるいは固定ジブとも呼ばれる。また、固定ジブ152の場合、ブーム151の先端との連結点ないし連結軸156は、ブーム151の軸線上に略一致した位置に設けられている。尚、図13中、157はジブ152の先端から巻上ロープ158を介して吊り下げられた吊りフックであり、巻上ロープ158の一端は、固定ジブ152の先端部及びストラット153の中間部などにそれぞれ設けた複数のシーブを通して、ブーム151の基端部又は上部旋回体に設けたウインチ(図示せず)に巻き付けられ、このウインチにより吊りフック157が巻上ロープ158を介して巻上又は巻下されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−46216号公報(第3頁、図13)
【特許文献2】特開2000−272883号公報(第2頁、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記ラッフィングジブクレーンと、固定ジブ152を有する移動式クレーンとを比較した場合、ラッフィングジブクレーンでは、ブーム103及びジブ(ラッフィングジブ)104が共に起伏可能であるため、作業性に優れているが、ストラット105,106及びガイライン114,121,122などの部品点数が多く、アタッチメントの組立・分解時に手間と時間がかかるという欠点がある。固定ジブ152を有する移動式クレーンでは、ラッフィングクレーンの利点と欠点が逆になる。このため、作業内容や作業期間などに応じて、下部走行体101や上部旋回体102などを兼用しながら、ジブとして、ラッフィングジブ104を用いたり、固定ジブ152を用いたりすることが従来から行われている。その一つの態様として、図14に示すように、ラッフィングジブクレーン用のブーム103をそのまま用い、このブーム103の先端に連結されるジブ161を、固定ジブとして設けること、つまりストラット162及びガイライン163,164を用いてブーム103に対するジブ161の角度を固定した状態に設けることが考えられる。
【0009】
しかしながら、このような態様のものでは、固定ジブ161のブーム103との連結点ないし連結軸165がブーム103の軸線Sからブーム腹面側に所定距離e離れて位置しているため、吊り作業時にはブーム103に対し軸圧縮荷重の外に大きな曲げモーメントが作用することになり、最大吊り荷重がその分低下するという問題がある。また、地上でのアタッチメントの組立・分解時には、図15に示すようにブーム103の先端部の地上高さが高くなるため、作業性が悪くなるとともに、安全性で不利になるという問題もある。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、ブームの先端部を構成する構造物を改良することにより、ブーム全体を、ラッフィングジブを用いる場合と固定ジブを用いる場合の両方に兼用できるとともに、いずれの場合にもそれぞれの特長を十分に発揮できる移動式クレーンを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、移動式クレーンとして、上部旋回体の前部にブームの基端が起伏可能に取り付けられ、このブームの先端にジブの基端が連結され、このジブの先端からロープを介してフックが吊り下げられていることを前提とする。そして、上記ブームの先端部を構成する構造物を、上記ジブとして、ブーム先端との連結軸回りに起伏可能に設けられるラッフィングジブを用いる場合と、ブームに対するジブの角度を固定した状態に設けられる固定ジブを用いる場合の両方に兼用するものとするに当たり、上記構造物のジブとの連結軸を、ラッフィングジブを用いる場合ブームの軸線からブームの腹面側に所定距離離れたオフセット位置に設ける一方、構造物の腹面側の主桁に、主桁延長部材の一端を回動可能に連結し、固定ジブを用いる場合予めこの主桁延長部材の他端をブームの腹面側の主桁に連結して構造物の腹面側の主桁とブームの腹面側の主桁との間に主桁延長部材を介在させることにより構造物全体がブームの背面側の主桁との連結軸回りに回動し、構造物のジブとの連結軸がブームの軸線上に略一致する位置に変位するように構成する。
【0012】
この構成では、ジブとしてラッフィングジブを用いる場合、ブームの先端部を構成する構造物のジブとの連結軸は、ブームの軸線からブームの腹面側に所定距離離れたオフセット位置に設けられているため、アタッチメントの組立・分解時などにブームの腹面側にラッフィングジブを折り畳んだ状態でブームなどを地面上に接地することができる。
【0013】
一方、ジブとして固定ジブを用いる場合には予め、上記構造物の腹面側の主桁に一端が回動可能に連結された主桁延長部材の他端をブームの腹面側の主桁に連結して構造物の腹面側の主桁とブームの腹面側の主桁との間に主桁延長部材を介在させることにより、構造物全体がブームの背面側の主桁との連結軸回りに回動し、構造物のジブとの連結軸がブームの軸線上に略一致する位置に変位するようになる。このため、吊り作業時にブームに対し軸圧縮荷重の外に大きな曲げモーメントが作用することはなく、また地上でのアタッチメントの組立・分解時にブームの先端部の地上高さが高くなることもない。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の移動式クレーンにおいて、上記主桁延長部材に、固定ジブを用いる場合でかつブームを地面近くにまで下げたときに接地する受け台を設ける構成にする。この構成では、ジブとして固定ジブを用いる場合で地上でのアタッチメントの組立・分解などのためにブームを地面近くにまで下げたときには、ブームの腹面側の主桁などが地面に接地する前に主桁延長部材の受け台が接地するため、ブームの腹面側の主桁などが地面に接触するのを回避することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように,本発明の移動式クレーンによれば、ブームの先端部を構成する構造物のジブとの連結軸が、ラッフィングジブを用いる場合ブームの軸線からブームの腹面側に所定距離離れたオフセット位置に、固定ジブを用いる場合ブームの軸線上に略一致する位置にそれぞれ位置するようになっているため、いずれのジブを用いる場合にもそれぞれの特長を十分に発揮することができる。しかも、上記構造物を含むブーム全体は、いずれのジブを用いる場合にも使用されるものであり、ジブの種別に応じて単に構造物の腹面側の主桁に連結した主桁延長部材の組付けを変更するだけであるため、ジブの種別毎に個別に所持・保管が必要な部品数をその分少なくすることができるとともに、ジブの種別の変更に伴う組立・分解作業を容易に行うことができ、実用性に優れた効果を奏するものである。
【0016】
特に、請求項2に係る発明では、固定ジブを用いる場合で地上でのアタッチメントの組立・分解などのためにブームを地面近くにまで下げたときには、ブームの腹面側の主桁などが地面に接地する前に主桁延長部材の受け台が接地するため、ブームの腹面側の主桁などが地面に接触するのを回避することができ、それらの損傷の防止化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る移動式クレーンのラッフィングジブクレーンとしての使用形態を示す側面図である。
【図2】図2は図1のX部分の拡大図である。
【図3】図3は上記移動式クレーンの別の使用形態を示す側面図である。
【図4】図4は図3のY部分の拡大図である。
【図5】図5はブームの先端部を構成するブーム先端構造物の側面図である。
【図6】図6は図5のZ方向から見た矢視図である。
【図7】図7は主桁延長部材を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は平面図、(d)は(a)のE−E線における断面図である。
【図8】図8は図3に示す使用形態の移動式クレーンの地上でのアタッチメントの組立・分解時の状態を示す側面図である。
【図9】図9は図8のF部分の拡大図である。
【図10】図10は上記ブーム先端構造物の使用形態に応じて固定ジブの位置が変化することを説明するための説明図である。
【図11】図11は従来のラッフィングジブクレーンの側面図である。
【図12】図12は上記ラッフィングジブクレーンのブームの腹面側にジブを折り畳んでこれらを地面近くにまで下げた状態を示す側面図である。
【図13】図13は固定ジブを有する移動式クレーンのブーム先端側の側面図である。
【図14】図14は従来のラッフィングジブクレーン用のブームの先端に固定ジブを設けた移動式クレーンの図13相当図である。
【図15】図15は図14に示す移動式クレーンの図8相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態である実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1及び図3はいずれも本発明の一実施形態に係る移動式クレーンを示し、図1は移動式クレーンのラッフィングジブクレーンとしての使用形態を示し、図3は移動式クレーンのジブとして固定ジブを用いる場合の別の使用形態を示す。先ず、図1に示すラッフィングジブクレーンとしての使用形態について説明するに、このラッフィングジブクレーンの基本構成は、図11で説明した従来のものと略同じである。
【0020】
すなわち、ラッフィングジブクレーンは、クローラにより走行する下部走行体1と、この下部走行体1上に旋回自在に搭載された上部旋回体2と、この上部旋回体2の前部に基端が起伏可能に取り付けられたブーム3と、このブーム3の先端部に基端が起伏可能に連結されたラッフィングジブ4と、ブーム3の先端部にそれぞれ基端が連結されたフロントストラット5及びリヤストラット6とを備えている。
【0021】
上記ラッフィングジブ4の先端からは主フック7が主巻上ロープ8を介して吊り下げられているとともに、補フック9が補巻上ロープ10を介して吊り下げられている。主巻上ロープ8の一端は、ラッフィングジブ4の先端部、フロントストラット5及びリヤストラット6にそれぞれ設けた複数のシーブを通して、ブーム3の基端部に設けた主巻ウインチ11に巻き付けられ、この主巻ウインチ11により主フック7が主巻上ロープ8を介して巻上又は巻下されるようになっている。また、補巻上ロープ10の一端も、同じくラッフィングジブ4の先端部、フロントストラット5及びリヤストラット6にそれぞれ設けた複数のシーブを通して、ブーム3の基端部に設けた補巻ウインチ12に巻き付けられ、この補巻ウインチ12により補フック9が補巻上ロープ10を介して巻上又は巻下されるようになっている。
【0022】
上記ブーム3の先端部は、ガイライン14を介してマスト15の先端部と連結されている。このマスト15の基端は上部旋回体2に回動可能に取り付けられており、マスト15の基端部にはブーム起伏ウインチ16が取り付けられている。マスト15の先端部には上部スプレッダ17が設けられているとともに、上部旋回体2の後部には下部スプレッダ18が設けられており、この両スプレッダ17,18間にはブーム起伏ロープ19が巻き掛けられ、このブーム起伏ロープ19の一端はブーム起伏ウインチ16に巻き付けられ、このブーム起伏ウインチ16により上記両スプレッダ17,18間の距離を変えることでブーム3が起伏するようになっている。
【0023】
上記ラッフィングジブ4の先端部は、ガイライン21を介してフロントストラット5の先端部と連結されており、リヤストラット6の先端部は、ガイライン22を介してブーム3の基端側部分と連結されている。また、フロントストラット5の先端部とリヤストラット6の先端部との間にはシーブを介してジブ起伏ロープ23が巻き掛けられ、このジブ起伏ロープ23の一端は、リヤストラット6の中央部に設けたシーブを通して、ブーム3の基端部に設けたジブ起伏ウインチ24に巻き付けられ、このジブ起伏ウインチ24によりフロントストラット5とリヤストラット6とがなす角度を変えることでラッフィングジブ4が起伏するようになっている。
【0024】
次に、図3に示す移動式クレーンの別の使用形態について説明するに、この移動式クレーンは、ラッフィングジブクレーンの場合と同じく、クローラにより走行する下部走行体1と、この下部走行体1上に旋回自在に搭載された上部旋回体2と、この上部旋回体2の前部に基端が起伏可能に取り付けられたブーム3とを備えている。
【0025】
上記移動式クレーンは、ラッフィングジブクレーンにおけるラッフィングジブ4の代わりに、ブーム3の先端に基端が連結されるジブとして、ブーム3に対する角度を固定した状態で設けられた固定ジブ31を備えている。この固定ジブ31の基端は、ブーム3の先端に対して揺動可能に取り付けられているが、固定ジブ31の先端は、ストラット32の先端を経て張設された2本のガイライン33,34によってブーム3に支持されており、これにより、固定ジブ31のブーム3に対する角度は、通常の作業時には変化しないようになっている。
【0026】
上記固定ジブ31の先端からは吊りフック35が巻上ロープ36を介して吊り下げられている。この巻上ロープ36の一端は、固定ジブ31の先端部及びブーム3の先端部などにそれぞれ設けた複数のシーブを通して、ブーム3の基端部に設けた3つのウインチ11,12,24のうちの1つのウインチ(図ではラッフィンジブクレーンの場合の主巻ウインチ)11に巻き付けられ、このウインチ11により吊りフック35が巻上ロープ36を介して巻上又は巻下されるようになっている。
【0027】
上記ブーム3の先端部は、ガイライン14を介してマスト15の先端部と連結されている。このマスト15の基端は上部旋回体2に回動可能に取り付けられており、マスト15の基端部にはブーム起伏ウインチ16が取り付けられている。マスト15の先端部には上部スプレッダ17が設けられているとともに、上部旋回体2の後部には下部スプレッダ18が設けられており、この両スプレッダ17,18間にはブーム起伏ロープ19が巻き掛けられ、このブーム起伏ロープ19の一端はブーム起伏ウインチ16に巻き付けられ、このブーム起伏ウインチ16により上記両スプレッダ17,18間の距離を変えることでブーム3が起伏するようになっている。
【0028】
ここで、移動式クレーンのラッフィングジブクレーンとしての使用形態の場合と、固定ジブ31を用いる別の使用形態の場合とに兼用されるものは、同一符号を付しており、ブーム3は、その先端部を構成するブーム先端構造物40を含む全体がラッフィングジブクレーンの場合つまりラッフィングジブ4を用いる場合と固定ジブ31を用いる場合の両方に兼用されている。
【0029】
上記ブーム先端構造物40は、主桁として、図5及び図6に詳示するように、ブーム腹面側の左右2本の主桁41a(図では1本のみ示す)と、ブーム背面側の左右2本の主桁41b,41bと、一端が背面側主桁41bの上端に、他端が腹面側主桁41aの上端にそれぞれ結合された左右2本の傾斜主桁41c,41cとを有している。このブーム先端構造物40は、ラッフィングジブ4を用いる場合及び固定ジブ31を用いる場合のいずれにも腹面側主桁41aと傾斜主桁41cとの結合部に設けたピン孔42でジブ4又は31と連結されるようになっている。
【0030】
また、上記ブーム先端構造物40の各腹面側主桁41aの下端にはそれぞれ主桁延長部材43の一端が結合ピン44回りに回動可能に連結されている。この主桁延長部材43は、図7に拡大詳示するように、円管よりなる棒状の部材本体43aと、この部材本体43aの一端側に設けられた各々ピン孔よりなる2つの結合部43b,43cと、部材本体43aの他端側に設けられたピン孔よりなる1つの結合部43dとを有している。
【0031】
そして、ラッフィングジブ4を用いる場合、図2に拡大詳示するように、上記主桁延長部材43は、ブーム先端構造物40の腹面側主桁41aの下端と背面側主桁41bの下端とを連結する補桁45の下方近傍でこれと平行な状態に格納されており、主桁延長部材43の結合部43bは、結合ピン44によりブーム先端構造物40の腹面側主桁41aの下端に結合され、主桁延長部材43の結合部43cは、結合ピン46によりブーム3(詳しくは先端部を除く中間ブーム)の腹面側主桁3aの上端に結合されている。この場合、上記ブーム先端構造物40のジブ4との結合ピンよりなる連結軸47は、図1に示す如くブーム3の軸線Sから前方つまりブーム3の腹面側に所定距離e離れたオフセット位置に設けられている。
【0032】
一方、固定ジブ31を用いる場合、図4に拡大詳示するように、上記主桁延長部材43は、ブーム先端構造物40の腹面側主桁41aの下端とブーム3の腹面側主桁3aの上端との間に介在されており、主桁延長部材43の一端側の結合部43bは、ラッフィングジブ4を用いる場合と同じく結合ピン44によりブーム先端構造物40の腹面側主桁41aの下端に結合され、主桁延長部材43の他端側の結合部43dは、結合ピン48によりブーム3の腹面側主桁3aの上端に結合されている。この場合、上記ブーム先端構造物40のジブ31との連結軸47は、ブーム3の軸線S上に略一致する位置に設けられている。上記主桁延長部材43の長さは、固定ジブ31を用いる場合に予め主桁延長部材43を結合ピン44回りに回動させて主桁延長部材43の他端側の結合部43dをブーム31の腹面側主桁3aに連結してブーム先端構造物40の腹面側主桁41aとブーム3の腹面側主桁3aとの間に介在させるときブーム先端構造物40全体がブーム3の背面側の主桁3bとの連結軸としての結合ピン49回りに回動し、ブーム先端構造物40のジブ31との連結軸47がブーム3の軸線S上に略一致する位置に変位するように設定されている。
【0033】
さらに、上記主桁延長部材43には、図7に示す如く部材本体43aから側方に突出する断面T字形の受け台51が設けられている。この受け台51は、図8及び図9に示すように、固定ジブ31を用いる場合でかつブーム3を地面近くにまで下げたときにブーム3の代わりに接地するものである。
【0034】
従って、上記実施形態においては、ブーム3の先端に連結されるジブとして、ラッフィングジブ4を用いる場合、ブーム先端構造物40の腹面側主桁41aの下端に連結された主桁延長部材43は、ブーム先端構造物40の補桁45の下方近傍でこれと平行な状態に格納されており、ブーム先端構造物40のジブ4との連結軸47は、ブーム3の軸線Sからブーム3の腹面側に所定距離e離れたオフセット位置に設けられている。このため、図12を用いて説明した従来のラッフィングジブクレーンの場合と同様に、アタッチメントの組立・分解時などにブーム3の腹面側にラッフィングジブ4を折り畳んだ状態でブーム3などを地面上に接地することができる。
【0035】
一方、ブーム3の先端に連結されるジブとして、固定ジブ31を用いる場合、上記主桁延長部材43は、ブーム先端構造物40の腹面側主桁41aの下端とブーム3の腹面側主桁3aの上端との間に介在されており、ブーム先端構造物40のジブ31との連結軸47は、ブーム3の軸線S上に略一致する位置に設けられている。このため、固定ジブ31の先端から吊り下げた吊りフック35を用いて行う吊り作業時にブーム3に対し軸圧縮荷重の外に大きな曲げモーメントが作用することはなく、最大吊り荷重を高めることができる。また、地上でのアタッチメントの組立・分解時には、図8に示す如くブーム3の腹面側及び固定ジブ31の腹面側が共に地面に接地又は近接して、ブーム3の先端部の地上高さが高くなることはない。しかも、図9に示す如くブーム3の腹面側の主桁3aなどが接地する前に上記主桁延長部材43に設けた受け台51が接地するため、ブーム3の腹面側の主桁3aなどが地面に接触するのを回避することができ、それらの損傷の防止化を図ることができる。
【0036】
さらに、図10に示すように、ブーム先端構造物40のジブ31との連結軸47がブーム3の軸線S上に略一致して位置する場合における固定ジブ31の先端側のシーブ中心P1は、ブーム先端構造物40のジブ31の連結軸47がブーム3の軸線Sからブーム腹面側に偏心して位置する場合における固定ジブ31の先端側のシーブ中心P2と比べて、ΔHだけ高くなるとともに、ΔRだけ上部旋回体2に近付くため、その分吊り作業性能を高めることができる。
【0037】
その上、上記ブーム先端構造物40を含むブーム3全体は、ラッフィングジブ4を用いる場合と固定ジブ31を用いる場合の両方に兼用されるものであり、ジブ4,31の種別に応じて単にブーム先端構造物40の腹面側主桁41aに連結した主桁延長部材43の組付けを、ブーム先端構造物40の補桁45と平行な格納状態とブーム先端構造物40の腹面側主桁41aとブーム3の腹面側主桁3aとの間に介在された状態とに変更するだけであるため、ジブ4,31の種別毎に個別に所持・保管が必要な部品数をその分少なくすることができるとともに、ジブ4,31の種別の変更に伴う組立・分解作業を容易に行うことができる。
【0038】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の形態を包含するものである。例えば上記実施形態では、ブーム3の先端部を構成するブーム先端構造物40の主桁として、ブーム腹面側の左右2本の主桁41aと、ブーム背面側の左右2本の主桁41b,41bと、一端が背面側主桁41bの上端に、他端が腹面側主桁41aの上端にそれぞれ結合された左右2本の傾斜主桁41c,41cとを有する場合について述べたが、本発明は、この場合に限らず、その他種々の形態のブーム先端構造物の場合にも同様に適用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラクレーンなどの移動式クレーンに関し、特に、ブームの先端に設けられるジブを有するものに係わる。
【背景技術】
【0002】
従来、ジブを有する移動式クレーンとして、例えば特許文献1に開示され、図11にも示すようなラッフィングジブクレーンが知られている。このラッフィングジブクレーンは、下部走行体101上に旋回自在に搭載された上部旋回体102と、この上部旋回体102の前部に基端が起伏可能に取り付けられたブーム103と、このブーム103の先端部に基端が起伏可能に連結されたラッフィングジブ104と、ブーム103の先端部にそれぞれ基端が連結されたフロントストラット(上部ストラットともいう)105及びリヤストラット(下部ストラットともいう)106とを備えている。ラッフィングジブ104の先端からは主フック107が主巻上ロープ108を介して吊り下げられているとともに、補フック109が補巻上ロープ110を介して吊り下げられている。主巻上ロープ108の一端は、ラッフィングジブ104の先端部、フロントストラット105及びリヤストラット106にそれぞれ設けた複数のシーブを通して、ブーム103の基端部に設けた主巻ウインチ111に巻き付けられ、この主巻ウインチ111により主フック107が主巻上ロープ108を介して巻上又は巻下されるようになっている。また、補巻上ロープ110の一端も、同じくラッフィングジブ104の先端部、フロントストラット105及びリヤストラット106にそれぞれ設けた複数のシーブを通して、ブーム103の基端部に設けた補巻ウインチ112に巻き付けられ、この補巻ウインチ112により補フック109が補巻上ロープ110を介して巻上又は巻下されるようになっている。
【0003】
上記ブーム103の先端部は、ガイライン114を介してマスト115の先端部と連結されている。このマスト115の基端は上部旋回体102に回動可能に取り付けられており、マスト115の基端部にはブーム起伏ウインチ116が取り付けられている。マスト115の先端部には上部スプレッダ117が設けられているとともに、上部旋回体102の後部には下部スプレッダ118が設けられており、この両スプレッダ117,118間にはブーム起伏ロープ119が巻き掛けられ、このブーム起伏ロープ119の一端はブーム起伏ウインチ116に巻き付けられ、このブーム起伏ウインチ116により上記両スプレッダ117,118間の距離を変えることでブーム103が起伏するようになっている。
【0004】
上記ラッフィングジブ104の先端部は、ガイライン121を介してフロントストラット105の先端部と連結されており、リヤストラット106の先端部は、ガイライン122を介してブーム103の基端側部分と連結されている。また、フロントストラット105の先端部とリヤストラット106の先端部との間にはシーブを介してジブ起伏ロープ123が巻き掛けられ、このジブ起伏ロープ123の一端は、リヤストラット106の中央部に設けたシーブを通して、ブーム103の基端部に設けたジブ起伏ウインチ124に巻き付けられ、このジブ起伏ウインチ124によりフロントストラット105とリヤストラット106とがなす角度を変えることでラッフィングジブ104が起伏するようになっている。
【0005】
このようなラッフィングジブクレーンの場合、ブーム103の先端部とラッフィングジブ104の基端との連結点ないし連結軸126は、ブーム103の軸線Sから前方つまりブーム103の腹面側に所定距離e離れたオフセット位置に設けられている。これは、図12に示すように、アタッチメントの組立・分解時などにブーム103の腹面側にラッフィングジブ104を折り畳んだ状態でブーム103などを地面上に接地できるようにするためのものである。
【0006】
また、ラッフィングジブクレーンの外、ジブを有する移動式クレーンとしては、例えば特許文献2に開示され、図13にも示すように、ブーム151の先端に連結されるジブ152のブーム151に対する角度が変化せず固定した状態に設けられてなるものが知れている。ジブ152の基端は、ブーム151に対して揺動可能に取り付けられているが、ジブ152の先端は、ストラット153の先端を経て張設された2本のガイライン154,155によってブーム151に支持されているため、ジブ152のブーム151に対する角度は、通常の作業時には変化しないようになっている。この種のジブ152は固定式ジブあるいは固定ジブとも呼ばれる。また、固定ジブ152の場合、ブーム151の先端との連結点ないし連結軸156は、ブーム151の軸線上に略一致した位置に設けられている。尚、図13中、157はジブ152の先端から巻上ロープ158を介して吊り下げられた吊りフックであり、巻上ロープ158の一端は、固定ジブ152の先端部及びストラット153の中間部などにそれぞれ設けた複数のシーブを通して、ブーム151の基端部又は上部旋回体に設けたウインチ(図示せず)に巻き付けられ、このウインチにより吊りフック157が巻上ロープ158を介して巻上又は巻下されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−46216号公報(第3頁、図13)
【特許文献2】特開2000−272883号公報(第2頁、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記ラッフィングジブクレーンと、固定ジブ152を有する移動式クレーンとを比較した場合、ラッフィングジブクレーンでは、ブーム103及びジブ(ラッフィングジブ)104が共に起伏可能であるため、作業性に優れているが、ストラット105,106及びガイライン114,121,122などの部品点数が多く、アタッチメントの組立・分解時に手間と時間がかかるという欠点がある。固定ジブ152を有する移動式クレーンでは、ラッフィングクレーンの利点と欠点が逆になる。このため、作業内容や作業期間などに応じて、下部走行体101や上部旋回体102などを兼用しながら、ジブとして、ラッフィングジブ104を用いたり、固定ジブ152を用いたりすることが従来から行われている。その一つの態様として、図14に示すように、ラッフィングジブクレーン用のブーム103をそのまま用い、このブーム103の先端に連結されるジブ161を、固定ジブとして設けること、つまりストラット162及びガイライン163,164を用いてブーム103に対するジブ161の角度を固定した状態に設けることが考えられる。
【0009】
しかしながら、このような態様のものでは、固定ジブ161のブーム103との連結点ないし連結軸165がブーム103の軸線Sからブーム腹面側に所定距離e離れて位置しているため、吊り作業時にはブーム103に対し軸圧縮荷重の外に大きな曲げモーメントが作用することになり、最大吊り荷重がその分低下するという問題がある。また、地上でのアタッチメントの組立・分解時には、図15に示すようにブーム103の先端部の地上高さが高くなるため、作業性が悪くなるとともに、安全性で不利になるという問題もある。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、ブームの先端部を構成する構造物を改良することにより、ブーム全体を、ラッフィングジブを用いる場合と固定ジブを用いる場合の両方に兼用できるとともに、いずれの場合にもそれぞれの特長を十分に発揮できる移動式クレーンを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、移動式クレーンとして、上部旋回体の前部にブームの基端が起伏可能に取り付けられ、このブームの先端にジブの基端が連結され、このジブの先端からロープを介してフックが吊り下げられていることを前提とする。そして、上記ブームの先端部を構成する構造物を、上記ジブとして、ブーム先端との連結軸回りに起伏可能に設けられるラッフィングジブを用いる場合と、ブームに対するジブの角度を固定した状態に設けられる固定ジブを用いる場合の両方に兼用するものとするに当たり、上記構造物のジブとの連結軸を、ラッフィングジブを用いる場合ブームの軸線からブームの腹面側に所定距離離れたオフセット位置に設ける一方、構造物の腹面側の主桁に、主桁延長部材の一端を回動可能に連結し、固定ジブを用いる場合予めこの主桁延長部材の他端をブームの腹面側の主桁に連結して構造物の腹面側の主桁とブームの腹面側の主桁との間に主桁延長部材を介在させることにより構造物全体がブームの背面側の主桁との連結軸回りに回動し、構造物のジブとの連結軸がブームの軸線上に略一致する位置に変位するように構成する。
【0012】
この構成では、ジブとしてラッフィングジブを用いる場合、ブームの先端部を構成する構造物のジブとの連結軸は、ブームの軸線からブームの腹面側に所定距離離れたオフセット位置に設けられているため、アタッチメントの組立・分解時などにブームの腹面側にラッフィングジブを折り畳んだ状態でブームなどを地面上に接地することができる。
【0013】
一方、ジブとして固定ジブを用いる場合には予め、上記構造物の腹面側の主桁に一端が回動可能に連結された主桁延長部材の他端をブームの腹面側の主桁に連結して構造物の腹面側の主桁とブームの腹面側の主桁との間に主桁延長部材を介在させることにより、構造物全体がブームの背面側の主桁との連結軸回りに回動し、構造物のジブとの連結軸がブームの軸線上に略一致する位置に変位するようになる。このため、吊り作業時にブームに対し軸圧縮荷重の外に大きな曲げモーメントが作用することはなく、また地上でのアタッチメントの組立・分解時にブームの先端部の地上高さが高くなることもない。
【0014】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の移動式クレーンにおいて、上記主桁延長部材に、固定ジブを用いる場合でかつブームを地面近くにまで下げたときに接地する受け台を設ける構成にする。この構成では、ジブとして固定ジブを用いる場合で地上でのアタッチメントの組立・分解などのためにブームを地面近くにまで下げたときには、ブームの腹面側の主桁などが地面に接地する前に主桁延長部材の受け台が接地するため、ブームの腹面側の主桁などが地面に接触するのを回避することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように,本発明の移動式クレーンによれば、ブームの先端部を構成する構造物のジブとの連結軸が、ラッフィングジブを用いる場合ブームの軸線からブームの腹面側に所定距離離れたオフセット位置に、固定ジブを用いる場合ブームの軸線上に略一致する位置にそれぞれ位置するようになっているため、いずれのジブを用いる場合にもそれぞれの特長を十分に発揮することができる。しかも、上記構造物を含むブーム全体は、いずれのジブを用いる場合にも使用されるものであり、ジブの種別に応じて単に構造物の腹面側の主桁に連結した主桁延長部材の組付けを変更するだけであるため、ジブの種別毎に個別に所持・保管が必要な部品数をその分少なくすることができるとともに、ジブの種別の変更に伴う組立・分解作業を容易に行うことができ、実用性に優れた効果を奏するものである。
【0016】
特に、請求項2に係る発明では、固定ジブを用いる場合で地上でのアタッチメントの組立・分解などのためにブームを地面近くにまで下げたときには、ブームの腹面側の主桁などが地面に接地する前に主桁延長部材の受け台が接地するため、ブームの腹面側の主桁などが地面に接触するのを回避することができ、それらの損傷の防止化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る移動式クレーンのラッフィングジブクレーンとしての使用形態を示す側面図である。
【図2】図2は図1のX部分の拡大図である。
【図3】図3は上記移動式クレーンの別の使用形態を示す側面図である。
【図4】図4は図3のY部分の拡大図である。
【図5】図5はブームの先端部を構成するブーム先端構造物の側面図である。
【図6】図6は図5のZ方向から見た矢視図である。
【図7】図7は主桁延長部材を示し、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は平面図、(d)は(a)のE−E線における断面図である。
【図8】図8は図3に示す使用形態の移動式クレーンの地上でのアタッチメントの組立・分解時の状態を示す側面図である。
【図9】図9は図8のF部分の拡大図である。
【図10】図10は上記ブーム先端構造物の使用形態に応じて固定ジブの位置が変化することを説明するための説明図である。
【図11】図11は従来のラッフィングジブクレーンの側面図である。
【図12】図12は上記ラッフィングジブクレーンのブームの腹面側にジブを折り畳んでこれらを地面近くにまで下げた状態を示す側面図である。
【図13】図13は固定ジブを有する移動式クレーンのブーム先端側の側面図である。
【図14】図14は従来のラッフィングジブクレーン用のブームの先端に固定ジブを設けた移動式クレーンの図13相当図である。
【図15】図15は図14に示す移動式クレーンの図8相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態である実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1及び図3はいずれも本発明の一実施形態に係る移動式クレーンを示し、図1は移動式クレーンのラッフィングジブクレーンとしての使用形態を示し、図3は移動式クレーンのジブとして固定ジブを用いる場合の別の使用形態を示す。先ず、図1に示すラッフィングジブクレーンとしての使用形態について説明するに、このラッフィングジブクレーンの基本構成は、図11で説明した従来のものと略同じである。
【0020】
すなわち、ラッフィングジブクレーンは、クローラにより走行する下部走行体1と、この下部走行体1上に旋回自在に搭載された上部旋回体2と、この上部旋回体2の前部に基端が起伏可能に取り付けられたブーム3と、このブーム3の先端部に基端が起伏可能に連結されたラッフィングジブ4と、ブーム3の先端部にそれぞれ基端が連結されたフロントストラット5及びリヤストラット6とを備えている。
【0021】
上記ラッフィングジブ4の先端からは主フック7が主巻上ロープ8を介して吊り下げられているとともに、補フック9が補巻上ロープ10を介して吊り下げられている。主巻上ロープ8の一端は、ラッフィングジブ4の先端部、フロントストラット5及びリヤストラット6にそれぞれ設けた複数のシーブを通して、ブーム3の基端部に設けた主巻ウインチ11に巻き付けられ、この主巻ウインチ11により主フック7が主巻上ロープ8を介して巻上又は巻下されるようになっている。また、補巻上ロープ10の一端も、同じくラッフィングジブ4の先端部、フロントストラット5及びリヤストラット6にそれぞれ設けた複数のシーブを通して、ブーム3の基端部に設けた補巻ウインチ12に巻き付けられ、この補巻ウインチ12により補フック9が補巻上ロープ10を介して巻上又は巻下されるようになっている。
【0022】
上記ブーム3の先端部は、ガイライン14を介してマスト15の先端部と連結されている。このマスト15の基端は上部旋回体2に回動可能に取り付けられており、マスト15の基端部にはブーム起伏ウインチ16が取り付けられている。マスト15の先端部には上部スプレッダ17が設けられているとともに、上部旋回体2の後部には下部スプレッダ18が設けられており、この両スプレッダ17,18間にはブーム起伏ロープ19が巻き掛けられ、このブーム起伏ロープ19の一端はブーム起伏ウインチ16に巻き付けられ、このブーム起伏ウインチ16により上記両スプレッダ17,18間の距離を変えることでブーム3が起伏するようになっている。
【0023】
上記ラッフィングジブ4の先端部は、ガイライン21を介してフロントストラット5の先端部と連結されており、リヤストラット6の先端部は、ガイライン22を介してブーム3の基端側部分と連結されている。また、フロントストラット5の先端部とリヤストラット6の先端部との間にはシーブを介してジブ起伏ロープ23が巻き掛けられ、このジブ起伏ロープ23の一端は、リヤストラット6の中央部に設けたシーブを通して、ブーム3の基端部に設けたジブ起伏ウインチ24に巻き付けられ、このジブ起伏ウインチ24によりフロントストラット5とリヤストラット6とがなす角度を変えることでラッフィングジブ4が起伏するようになっている。
【0024】
次に、図3に示す移動式クレーンの別の使用形態について説明するに、この移動式クレーンは、ラッフィングジブクレーンの場合と同じく、クローラにより走行する下部走行体1と、この下部走行体1上に旋回自在に搭載された上部旋回体2と、この上部旋回体2の前部に基端が起伏可能に取り付けられたブーム3とを備えている。
【0025】
上記移動式クレーンは、ラッフィングジブクレーンにおけるラッフィングジブ4の代わりに、ブーム3の先端に基端が連結されるジブとして、ブーム3に対する角度を固定した状態で設けられた固定ジブ31を備えている。この固定ジブ31の基端は、ブーム3の先端に対して揺動可能に取り付けられているが、固定ジブ31の先端は、ストラット32の先端を経て張設された2本のガイライン33,34によってブーム3に支持されており、これにより、固定ジブ31のブーム3に対する角度は、通常の作業時には変化しないようになっている。
【0026】
上記固定ジブ31の先端からは吊りフック35が巻上ロープ36を介して吊り下げられている。この巻上ロープ36の一端は、固定ジブ31の先端部及びブーム3の先端部などにそれぞれ設けた複数のシーブを通して、ブーム3の基端部に設けた3つのウインチ11,12,24のうちの1つのウインチ(図ではラッフィンジブクレーンの場合の主巻ウインチ)11に巻き付けられ、このウインチ11により吊りフック35が巻上ロープ36を介して巻上又は巻下されるようになっている。
【0027】
上記ブーム3の先端部は、ガイライン14を介してマスト15の先端部と連結されている。このマスト15の基端は上部旋回体2に回動可能に取り付けられており、マスト15の基端部にはブーム起伏ウインチ16が取り付けられている。マスト15の先端部には上部スプレッダ17が設けられているとともに、上部旋回体2の後部には下部スプレッダ18が設けられており、この両スプレッダ17,18間にはブーム起伏ロープ19が巻き掛けられ、このブーム起伏ロープ19の一端はブーム起伏ウインチ16に巻き付けられ、このブーム起伏ウインチ16により上記両スプレッダ17,18間の距離を変えることでブーム3が起伏するようになっている。
【0028】
ここで、移動式クレーンのラッフィングジブクレーンとしての使用形態の場合と、固定ジブ31を用いる別の使用形態の場合とに兼用されるものは、同一符号を付しており、ブーム3は、その先端部を構成するブーム先端構造物40を含む全体がラッフィングジブクレーンの場合つまりラッフィングジブ4を用いる場合と固定ジブ31を用いる場合の両方に兼用されている。
【0029】
上記ブーム先端構造物40は、主桁として、図5及び図6に詳示するように、ブーム腹面側の左右2本の主桁41a(図では1本のみ示す)と、ブーム背面側の左右2本の主桁41b,41bと、一端が背面側主桁41bの上端に、他端が腹面側主桁41aの上端にそれぞれ結合された左右2本の傾斜主桁41c,41cとを有している。このブーム先端構造物40は、ラッフィングジブ4を用いる場合及び固定ジブ31を用いる場合のいずれにも腹面側主桁41aと傾斜主桁41cとの結合部に設けたピン孔42でジブ4又は31と連結されるようになっている。
【0030】
また、上記ブーム先端構造物40の各腹面側主桁41aの下端にはそれぞれ主桁延長部材43の一端が結合ピン44回りに回動可能に連結されている。この主桁延長部材43は、図7に拡大詳示するように、円管よりなる棒状の部材本体43aと、この部材本体43aの一端側に設けられた各々ピン孔よりなる2つの結合部43b,43cと、部材本体43aの他端側に設けられたピン孔よりなる1つの結合部43dとを有している。
【0031】
そして、ラッフィングジブ4を用いる場合、図2に拡大詳示するように、上記主桁延長部材43は、ブーム先端構造物40の腹面側主桁41aの下端と背面側主桁41bの下端とを連結する補桁45の下方近傍でこれと平行な状態に格納されており、主桁延長部材43の結合部43bは、結合ピン44によりブーム先端構造物40の腹面側主桁41aの下端に結合され、主桁延長部材43の結合部43cは、結合ピン46によりブーム3(詳しくは先端部を除く中間ブーム)の腹面側主桁3aの上端に結合されている。この場合、上記ブーム先端構造物40のジブ4との結合ピンよりなる連結軸47は、図1に示す如くブーム3の軸線Sから前方つまりブーム3の腹面側に所定距離e離れたオフセット位置に設けられている。
【0032】
一方、固定ジブ31を用いる場合、図4に拡大詳示するように、上記主桁延長部材43は、ブーム先端構造物40の腹面側主桁41aの下端とブーム3の腹面側主桁3aの上端との間に介在されており、主桁延長部材43の一端側の結合部43bは、ラッフィングジブ4を用いる場合と同じく結合ピン44によりブーム先端構造物40の腹面側主桁41aの下端に結合され、主桁延長部材43の他端側の結合部43dは、結合ピン48によりブーム3の腹面側主桁3aの上端に結合されている。この場合、上記ブーム先端構造物40のジブ31との連結軸47は、ブーム3の軸線S上に略一致する位置に設けられている。上記主桁延長部材43の長さは、固定ジブ31を用いる場合に予め主桁延長部材43を結合ピン44回りに回動させて主桁延長部材43の他端側の結合部43dをブーム31の腹面側主桁3aに連結してブーム先端構造物40の腹面側主桁41aとブーム3の腹面側主桁3aとの間に介在させるときブーム先端構造物40全体がブーム3の背面側の主桁3bとの連結軸としての結合ピン49回りに回動し、ブーム先端構造物40のジブ31との連結軸47がブーム3の軸線S上に略一致する位置に変位するように設定されている。
【0033】
さらに、上記主桁延長部材43には、図7に示す如く部材本体43aから側方に突出する断面T字形の受け台51が設けられている。この受け台51は、図8及び図9に示すように、固定ジブ31を用いる場合でかつブーム3を地面近くにまで下げたときにブーム3の代わりに接地するものである。
【0034】
従って、上記実施形態においては、ブーム3の先端に連結されるジブとして、ラッフィングジブ4を用いる場合、ブーム先端構造物40の腹面側主桁41aの下端に連結された主桁延長部材43は、ブーム先端構造物40の補桁45の下方近傍でこれと平行な状態に格納されており、ブーム先端構造物40のジブ4との連結軸47は、ブーム3の軸線Sからブーム3の腹面側に所定距離e離れたオフセット位置に設けられている。このため、図12を用いて説明した従来のラッフィングジブクレーンの場合と同様に、アタッチメントの組立・分解時などにブーム3の腹面側にラッフィングジブ4を折り畳んだ状態でブーム3などを地面上に接地することができる。
【0035】
一方、ブーム3の先端に連結されるジブとして、固定ジブ31を用いる場合、上記主桁延長部材43は、ブーム先端構造物40の腹面側主桁41aの下端とブーム3の腹面側主桁3aの上端との間に介在されており、ブーム先端構造物40のジブ31との連結軸47は、ブーム3の軸線S上に略一致する位置に設けられている。このため、固定ジブ31の先端から吊り下げた吊りフック35を用いて行う吊り作業時にブーム3に対し軸圧縮荷重の外に大きな曲げモーメントが作用することはなく、最大吊り荷重を高めることができる。また、地上でのアタッチメントの組立・分解時には、図8に示す如くブーム3の腹面側及び固定ジブ31の腹面側が共に地面に接地又は近接して、ブーム3の先端部の地上高さが高くなることはない。しかも、図9に示す如くブーム3の腹面側の主桁3aなどが接地する前に上記主桁延長部材43に設けた受け台51が接地するため、ブーム3の腹面側の主桁3aなどが地面に接触するのを回避することができ、それらの損傷の防止化を図ることができる。
【0036】
さらに、図10に示すように、ブーム先端構造物40のジブ31との連結軸47がブーム3の軸線S上に略一致して位置する場合における固定ジブ31の先端側のシーブ中心P1は、ブーム先端構造物40のジブ31の連結軸47がブーム3の軸線Sからブーム腹面側に偏心して位置する場合における固定ジブ31の先端側のシーブ中心P2と比べて、ΔHだけ高くなるとともに、ΔRだけ上部旋回体2に近付くため、その分吊り作業性能を高めることができる。
【0037】
その上、上記ブーム先端構造物40を含むブーム3全体は、ラッフィングジブ4を用いる場合と固定ジブ31を用いる場合の両方に兼用されるものであり、ジブ4,31の種別に応じて単にブーム先端構造物40の腹面側主桁41aに連結した主桁延長部材43の組付けを、ブーム先端構造物40の補桁45と平行な格納状態とブーム先端構造物40の腹面側主桁41aとブーム3の腹面側主桁3aとの間に介在された状態とに変更するだけであるため、ジブ4,31の種別毎に個別に所持・保管が必要な部品数をその分少なくすることができるとともに、ジブ4,31の種別の変更に伴う組立・分解作業を容易に行うことができる。
【0038】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の形態を包含するものである。例えば上記実施形態では、ブーム3の先端部を構成するブーム先端構造物40の主桁として、ブーム腹面側の左右2本の主桁41aと、ブーム背面側の左右2本の主桁41b,41bと、一端が背面側主桁41bの上端に、他端が腹面側主桁41aの上端にそれぞれ結合された左右2本の傾斜主桁41c,41cとを有する場合について述べたが、本発明は、この場合に限らず、その他種々の形態のブーム先端構造物の場合にも同様に適用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部旋回体の前部にブームの基端が起伏可能に取り付けられ、このブームの先端にジブの基端が連結され、このジブの先端からロープを介してフックが吊り下げられた移動式クレーンにおいて、
上記ブームの先端部を構成する構造物は、上記ジブとして、ブーム先端との連結軸回りに起伏可能に設けられるラッフィングジブを用いる場合と、ブームに対するジブの角度を固定した状態に設けられる固定ジブを用いる場合の両方に兼用されるものであり、上記構造物のジブとの連結軸は、ラッフィングジブを用いる場合ブームの軸線からブームの腹面側に所定距離離れたオフセット位置に設けられている一方、構造物の腹面側の主桁には主桁延長部材の一端が回動可能に連結され、固定ジブを用いる場合予めこの主桁延長部材の他端をブームの腹面側の主桁に連結して構造物の腹面側の主桁とブームの腹面側の主桁との間に主桁延長部材を介在させることにより構造物全体がブームの背面側の主桁との連結軸回りに回動し、構造物のジブとの連結軸がブームの軸線上に略一致する位置に変位するようになっていることを特徴とする移動式クレーン。
【請求項2】
上記主桁延長部材には、固定ジブを用いる場合でかつブームを地面近くにまで下げたときに接地する受け台が設けられている請求項1記載の移動式クレーン。
【請求項1】
上部旋回体の前部にブームの基端が起伏可能に取り付けられ、このブームの先端にジブの基端が連結され、このジブの先端からロープを介してフックが吊り下げられた移動式クレーンにおいて、
上記ブームの先端部を構成する構造物は、上記ジブとして、ブーム先端との連結軸回りに起伏可能に設けられるラッフィングジブを用いる場合と、ブームに対するジブの角度を固定した状態に設けられる固定ジブを用いる場合の両方に兼用されるものであり、上記構造物のジブとの連結軸は、ラッフィングジブを用いる場合ブームの軸線からブームの腹面側に所定距離離れたオフセット位置に設けられている一方、構造物の腹面側の主桁には主桁延長部材の一端が回動可能に連結され、固定ジブを用いる場合予めこの主桁延長部材の他端をブームの腹面側の主桁に連結して構造物の腹面側の主桁とブームの腹面側の主桁との間に主桁延長部材を介在させることにより構造物全体がブームの背面側の主桁との連結軸回りに回動し、構造物のジブとの連結軸がブームの軸線上に略一致する位置に変位するようになっていることを特徴とする移動式クレーン。
【請求項2】
上記主桁延長部材には、固定ジブを用いる場合でかつブームを地面近くにまで下げたときに接地する受け台が設けられている請求項1記載の移動式クレーン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−162344(P2012−162344A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22714(P2011−22714)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】
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