説明

移動機及びローミング方法

【課題】ローミング先となるオペレータに対する各RATの利用制限に従って、移動機において自律的にRAT Capabilityを設定する技術を提供する。
【解決手段】ローミング機能を有する移動機であって、複数のRATにより無線通信するためのマルチRAT機能を有する。ローミング先となる各オペレータについて移動機が利用可能なRATを記述した関連付け情報格納部120と、ローミング先のオペレータにおいて移動機が前記複数のRATの何れのRATを利用可能であるか判定し、判定の結果に基づき当該移動機に現在設定されている複数のRATに対するRAT Capabilityを変更すべきか判断するRAT判定部130とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に移動通信システムに関し、より詳細には移動通信システムにおけるローミング機能を備えた移動機に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の移動通信システムでは、ユーザが自国から外国に旅行したときでも、自国で使用している携帯電話などの移動機(UE: User Equipment)を海外でも利用できる。このようなサービスは、ローミングサービスとして知られている。このローミングでは、ユーザが外国で移動機を利用する際、移動機は、ユーザが自国で契約しているオペレータ、すなわち、HPLMN(Home Public Land Mobile Network)と提携している当該国のオペレータ、すなわち、VPLMN(Visited Public Land Mobile Network)に接続して通信することができる。当該国においてHPLMNがいくつかのVPLMNと提携している場合、移動機はローミングによりその何れかと通信することになる。
【0003】
また、通常はオペレータ毎に、すなわち、PLMN(Public Land Mobile Network)毎にサービスを提供しているRAT(Radio Access Technology)が異なる。RATとは、移動通信の通信方式を示す。3GPP(3rd Generation Partnership Project)標準仕様に規定されているRATには、第3世代通信方式であるUMTS(Universal Mobile Telecommunications System)、第2世代のGSM(Global System for Mobile Communications)、LTE(Long Term Evolution)といったものがある。
【0004】
GSMは、全世界に最も普及しているRATであり、一般的により広範囲にエリアが提供されている。しかしながら、古い通信方式のため、比較的、パケット通信の伝送速度が遅いといった特徴がある。また、パケット通信以外にも回線交換を用いた音声サービスが提供されているのが一般的である。
【0005】
UMTSは、全世界で普及しつつある通信方式だが、発展途上国など、まだ普及が進んでいない国も存在する。UMTSは、HSDPA(High Speed Downlink Packet Access)、HSUPA(High Speed Uplink Packet Access)といった技術を用いることでGSMよりもパケット通信の伝送速度が速いという特徴がある。また、GSMと同様に一般的に回線交換を用いた音声サービスが提供される。
【0006】
LTEは、次世代の通信方式であり、導入されている国は、先進国の中でもごく僅かである。LTEは、パケット交換方式のみをサポートするRATであり、HSDPA、HSUPAをも凌駕する高速のパケット通信が可能となる。しかしながら、LTEではパケット交換のみをサポートし、回線交換がサポートされていないため、音声サービスを提供するためには、VoLTE(Voice over LTE)というIMS(IP Multimedia Subsystem)を用いた、パケット通信を使った音声サービスを導入するか、あるいはCSFB(Circuit Switching Fall Back)という音声サービスを利用する際にUMTSやGSMなどの回線交換による音声サービスが提供されているRATに遷移して音声サービスを受けるようにする技術のいずれかを導入する必要がある。VoLTEは現在、3GPPにおける標準化が取り決められている最中であり、直ぐに導入することは難しい。一方、CSFBに関しては、3GPPでの標準化も完了しているが、音声サービスの度に必ずRATを切り替える動作を伴うことになるため、UMTSやGSMと同様に音声サービスを受けるためには、スムーズな切り替え動作を可能にする仕組みを取り入れる必要性が出てくる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の通り、各RATには特徴があり、ネットワークのサービスの提供状況などによっては利用しない方がユーザの利便性が高くなるようなRATも存在する。そこで、移動機が在圏しているPLMN毎に使用できるRATを制限したり、特定のRATを使用するPLMNの利用を制限可能とすることが望ましい。
【0008】
これを実現するため、従来はネットワークで対応していた。これは、特定のPLMNにおいて移動機が利用できるRATを制限したい場合、そのPLMNのRATに移動機による位置登録があったとき、当該PLMNのオペレータが位置登録を拒否する、というものである。しかしながら、この方法は、移動機が位置登録が拒否された結果、他のRATをサーチする、という動作を期待することになるため、例えば、所望のRATのセルがなかなか見つからないような状況では、位置登録が成功していない状態が暫く続くことになる。このため、音声の発着信など様々なサービスが受けられない時間が長く続くことになり、ユーザの利便性が低下する可能性がある。また、移動機が位置登録を要求し、ネットワークがそれを拒否する、といった無駄な信号のやりとりが発生するため、NW負荷の観点からも望ましくない。
【0009】
他方、移動機には、ユーザ操作により、RATが利用可能であるか否かを示すRAT Capabilityを変更できる機能が搭載されているのが一般的である。RAT Capabilityは、ユーザ操作によって変更されることが前提となるため、在圏PLMN毎にRAT Capabilityを変更する、といった動作はユーザ任せになってしまう。この場合、RAT CapabilityをOFFにすることで、移動機がそのRATをサーチしなくなり、セルを見つけることもできなくなるため、そのRATに在圏することもなくなり、RATの利用を制限すること自体は可能となる。しかしながら、この場合にはユーザによるRAT Capabilityの変更操作が求められる。
【0010】
上記状況を具体例を用いてより詳細に説明する。図1に示されるように、2つのオペレータPLMN AとPLMN Bとが共に、RATとしてUMTSとLTEを提供しているものとする。ここで、移動機にはPLMN AのUSIM(Universal Subscriber Identity Module card)が挿入されているとし、PLMN Aがこの移動機のHPLMNである。ここで、PLMN Aでは、この移動機のUMTSとLTEとへの接続性が担保されているものとする。「接続性が担保されている」という表現は、PLMN AのUMTSやLTEでの移動機の接続試験が完了しており、接続しても問題ないことが確認できているということを意味する。他方、ローミング先のPLMN Bでは、UMTSでしか移動機の接続試験が完了しておらず、LTEへの接続性が担保できていないものとする。接続性が担保できていないネットワークに当該移動機が在圏すると、移動機のリセットや圏外はまり事象などが起こる可能性があり、ユーザの利便性を考慮すると接続しない方が望ましい。
【0011】
そこで、上記の例であれば、PLMN Aでは、移動機がUMTSとLTEとの両方のRATを使用できるようにし、PLMN Bでは、UMTSのみを使用できるようにすることによって、移動機がPLMN BのLTEに在圏することにより発生しうるユーザの不利益となるような事態を未然に回避できることが望ましい。また、移動機がPLMN BのLTEには接続しないよう設定可能にすることによって、オペレータが接続性を担保する必要がなくなり、PLMN BのLTE網への接続試験を省くことが可能となる。この結果、移動機の開発期間を大幅に削減することが期待できる。
【0012】
また、ある特定のローミング先において、特定のRATでのNWの不具合やユーザの不利益となるような問題が発見されている場合、ネットワークのファイル交換を待つまでは、NWの不具合によってユーザに不利益となるような事象が発生する可能性がある。そこで、特定のローミング先では事象が発生しているRAT以外のRATしか使用しないように制限し、ローミングユーザの利便性の低下を抑えることが望ましい。例えば、ある特定のVPLMNでは、UMTSとGSMのハンドオーバがサポートされていないかもしれない。ここで、UMTSのエリアが極端に狭い場合、UMTSで音声サービスを受けると、移動する度に頻繁に通話が切断されるといった状況になることが考えられる。この場合、当初からGSMで音声サービスが提供されていれば、音声が切断するといった状況には陥らなかったため、GSMに接続した方がユーザの利便性を向上させることになる。すなわち、移動機がこのVPLMNに在圏した場合は、UMTSの利用を制限するようにすることでローミングユーザの利便性の低下を抑えることが可能となる。
【0013】
また、特定のローミング先では、RATの通信料金に相違があるかもしれない。そのような場合、最も通信料金が安くなるRATのみを利用するように利用可能なRATを制限することで、ユーザが想定しない課金を未然に回避できることが望ましい。
【0014】
上記問題点に鑑み、本発明の課題は、ローミング先となるオペレータに対する各RATの利用制限に従って、移動機において自律的にRAT Capabilityを設定する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の一特徴は、ローミング機能を有する移動機であって、複数のRATにより無線通信するためのマルチRAT機能を有する通信ハードウェア部と、ローミング先となる各オペレータについて当該移動機が利用可能なRATを記述した関連付け情報を格納する関連付け情報格納部と、前記関連付け情報に基づき、ローミング先のオペレータにおいて当該移動機が前記複数のRATの何れのRATを利用可能であるか判定し、前記判定の結果に基づき当該移動機に現在設定されている前記複数のRATに対するRAT Capabilityを変更すべきか判断するRAT判定部と、前記現在設定されているRAT Capabilityを変更すべきRATが前記RAT判定部から通知されると、前記変更すべきRATのRAT Capabilityを変更する通信制御部とを有する移動機に関する。
【0016】
本発明の他の特徴は、ローミング機能を有する移動機のローミング方法であって、前記移動機に格納されているローミング先となる各オペレータについて当該移動機が利用可能なRATを記述した関連付け情報に基づき、ローミング先のオペレータにおいて当該移動機が前記複数のRATの何れのRATを利用可能であるか判定するステップと、前記判定の結果に基づき、当該移動機に現在設定されているRAT Capabilityを変更すべきか判断するステップと、前記現在設定されているRAT Capabilityを変更すべきと判断した場合、前記変更すべきRATのRAT Capabilityを変更するステップと、前記RAT CapabilityがONに設定されているRATにより運用されているローミング先のオペレータのネットワークを検出するステップとを有するローミング方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、ローミング先となるオペレータに対する各RATの利用制限に従って、移動機において自律的にRAT Capabilityを設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、従来の移動機のローミング処理を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明の一実施例による移動機の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明の一実施例によるPLMN-RAT関連付けテーブルを示す。
【図4】図4は、本発明の一実施例による移動機におけるローミング処理を示すシーケンス図である。
【図5A】図5Aは、本発明の他の実施例による移動機におけるローミング処理を示すシーケンス図である。
【図5B】図5Bは、本発明の他の実施例による移動機におけるローミング処理を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
まず、図2を参照して本発明の一実施例による移動機を説明する。図2は、本発明の一実施例による移動機(UE)の構成を示す。UE10は、ユーザインタフェース(UI: User Interface)の制御などを行うアプリケーション(APL: APpLication)部100と、通信に関する制御を行うプロトコルスタック(PS: Protocol Stack)部200と、GSM、UMTS、LTEなどの各種RATの電波を利用してネットワークと信号を通信する通信ハードウェア部300と、着脱可能なUSIMとUE10との間のインタフェースをとるUSIMインタフェース部400とから構成される。
【0021】
UE10は、典型的には、携帯電話端末、スマートフォン、パーソナルコンピュータなどのユーザ装置(UE)である。UE10は、典型的には、補助記憶装置、メモリ装置、CPU、通信装置、表示装置、入力装置などの各種ハードウェアリソースの1以上から構成される。補助記憶装置は、ハードディスクやフラッシュメモリなどから構成され、後述される各種処理を実現するプログラムやデータを格納する。メモリ装置は、RAM(Random Access Memory)などから構成され、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置からプログラムを読み出して格納する。CPUは、情報を処理するプロセッサとして機能し、メモリ装置に格納されたプログラムに従って後述される各種機能を実現する。通信装置は、基地局などの無線装置と無線接続するための各種通信回路から構成される。本実施例では、上記通信装置から構成される通信ハードウェア部300は、複数の無線アクセス技術(RAT: Radio Access Technology)をサポートするマルチRAT機能を備える。本実施例では、通信ハードウェア部300がサポートするRATとして、LTE、UMTS、GSMの3つのRATを例として挙げているが、本発明による移動機はこれに限定されるものでない。UE10は、LTE、UMTS、GSMのいずれかのRATをサポートしなくてもよいし、また他のRATをサポートしてもよい。
【0022】
APL部100は、ユーザインタフェース(UI)部110と、PLMN-RAT関連付けテーブル格納部120と、RAT判定部130と、APL-PS間メッセージ送受信部140とを有する。
【0023】
UI部110は、様々な情報をUE10のディスプレイなどの表示装置上に表示したり、入力装置などを介しユーザの操作を受け付けるなど、UE10とユーザとの間のユーザインタフェースを提供する。
【0024】
PLMN-RAT関連付けテーブル格納部120は、UE10がPLMN毎に利用可能なRATを示すPLMN-RAT関連付けテーブルを格納する。PLMN-RAT関連付けテーブルは、UI部110を介しユーザにより書き換え可能であり、またRAT判定部130からの変更通知によっても書き換え可能である。PLMN-RAT関連付けテーブルは、初期的には各PLMNのRATが利用可能と設定されてもよい。
【0025】
PLMN-RAT関連付けテーブルは、図3に示されるように、各PLMNと各RATとが関連付けされたテーブル形式により実現されてもよい。図示される実施例では、UE10がPLMN XにおいてRAT Xを利用可能である場合、PLMN-RAT関連付けテーブルのPLMN XとRAT Xに係る要素に「○」が入力される。他方、UE10がPLMN XにおいてRAT Xの利用が制限される場合、PLMN-RAT関連付けテーブルのPLMN XとRAT Xに係る要素に「×」が入力される。
【0026】
RAT判定部130は、PLMN-RAT関連付けテーブル格納部120に格納されているPLMN-RAT関連付けテーブルを参照して、判定対象となるPLMNにおいてUE10が利用可能なRAT又は利用制限されているRATを決定する。
【0027】
RAT判定部130は、判定対象となるPLMNについて利用制限されているRATが検出されると、検出されたRATについてRAT Capabilityの変更が必要である場合(すなわち、ONからOFFにRAT Capabilityを変更する必要がある場合)、APL-PS間メッセージ送受信部140を介しPS部200に当該RATをOFFに設定するためのRAT Capability変更要求を送信する。このとき、RAT判定部130は、検出されたRATのRAT CapabilityがOFFに変更されたことをUI部110を介しユーザに通知するようにしてもよい。
【0028】
他方、RAT判定部130は、判定対象となるPLMNについて利用可能なRATが検出されると、検出されたRATについてRAT Capabilityの変更が必要である場合(すなわち、OFFからONにRAT Capabilityを変更する必要がある場合)、APL-PS間メッセージ送受信部140を介しPS部200に当該RATをONに設定するためのRAT Capability変更要求を送信する。このとき、RAT判定部130は、検出されたRATがONに設定されたことをUI部110を介しユーザに通知するようにしてもよい。
【0029】
APL-PS間メッセージ送受信部140は、RAT判定部130から受信したメッセージをPS部200に送信し、またPS部200から受信したメッセージをRAT判定部130に送信する。
【0030】
PS部200は、APL-PS間メッセージ送受信部210と、PLMN選択部220と、無線部230とを有する。
【0031】
APL-PS間メッセージ送受信部210は、PLMN選択部220から受信したメッセージをAPL部100に送信し、またAPL部100から受信したメッセージをPLMN選択部220に送信する。
【0032】
PLMN選択部220は、ローミング先のPLMNを決定すると共に、選択したネットワークへの位置登録を実行する。PLMN選択部220は、通信ハードウェア部300によるセルサーチの結果に基づきローミング先のPLMNを決定する。なお、通信ハードウェア部300によるセルサーチの結果、ローミング先として複数のPLMNが検出された場合、PLMN選択部220は、USIMインタフェース部400を介し挿入されているUSIMに記録されているPLMN間の接続の優先度に基づき、より高い優先度を有するPLMNを選択する。PLMN選択部220は、このようにして選択したPLMNにおいて利用可能なRATを確認するため、当該PLMNに関するPLMN情報をAPL-PS間メッセージ送受信部210を介しAPL部100に送信する。また、APL部100からRAT Capability変更要求を受信すると、PLMN選択部220は、受信したRAT Capability変更要求に従ってRAT Capabilityを設定し、設定されたRAT Capabilityに基づき通信ハードウェア部300を介し選択したPLMNに位置登録を実行する。
【0033】
無線部230は、PLMN選択部220からの指示に応答して通信ハードウェア部300にサーチや在圏の指示を送信し、また通信ハードウェア部300からのサーチ結果をPLMN選択部220に送信する。
【0034】
通信ハードウェア部300は、PS部200による制御の下でセルサーチや接続先のネットワークとの通信処理などの各種通信処理を実現する。上述したように、通信ハードウェア部300は、複数のRATによる通信をサポートするマルチRAT機能を有し、RAT CapabilityがONに設定されているRATにより通信する。通信ハードウェア部300は、セルサーチの結果として検出されたセルのPLMN情報を含むセル情報をPS部200に送信する。
【0035】
USIMインタフェース部400は、典型的には着脱可能であるUSIMを収容し、UE10とUSIMとの間のインタフェースをとる。USIMには、発信者識別に使用されるIDコード、電話番号、オペレータがプリセットしたデータ及びプログラムなどが格納されている。オペレータによりプリセットされるデータとして、上述したようなHPLMNがローミング先として契約しているオペレータVPLMNに関する情報や各VPLMN間の接続優先度などの情報が格納されている。
【0036】
次に、図4を参照して本発明の一実施例による移動機におけるローミング処理を説明する。図4は、本発明の一実施例による移動機におけるローミング処理を示すシーケンス図である。本実施例では、UE10はLTE、UMTS及びGSMの3つのRATをサポートしている。初期的には、UE10のRAT Capabilityは、LTE、UMTS及びGSMの3つのRATについてONに設定される。
【0037】
図4に示されるように、ステップS401において、UE10がPLMN BのLTE網に在圏する。UE10がPLMN BのLTE網に在圏すると、ステップS402において、通信ハードウェア部300は、PLMN BのLTE網から報知される在圏中のPLMN Bに関するPLMN情報を含む報知情報を受信する。通信ハードウェア部300は、受信した報知情報をPS部200の無線部230に送信し、無線部230はこの報知情報をPLMN選択部220に通知する。ここで、PLMN BのLTE網への在圏によって位置登録が必要である場合、PLMN選択部220は位置登録を実行するよう無線部230を介し通信ハードウェア部300に指示する。
【0038】
ステップS403において、PLMN選択部220は、在圏することになったPLMN BにおいてUE10が何れのRATを現在利用可能であるか確認するため、PS部200のAPL-PS間メッセージ送受信部210を介しAPL部100に取得したPLMN Bに関するPLMN情報を送信する。
【0039】
ステップS404において、APL部100がPLMN情報を受信すると、RAT判定部130は、PLMN-RAT関連付けテーブル格納部120に格納されているPLMN-RAT関連付けテーブルを参照して、PLMN Bにおいて利用可能なRATを決定する。例えば、参照されるPLMN-RAT関連付けテーブルが図3に示されるように設定されていた場合、PLMN BにおいてUE10はUMTS及びGSMについて利用可能であり、LTEについては利用制限されていることが確認できる。すなわち、UE10が在圏するPLMN BのLTE網は、UE10により利用制限されていることがわかる。
【0040】
ステップS405において、RAT判定部130は、判定したPLMN Bにおける各RATの利用制限に基づきRAT Capabilityの変更が必要である場合、PS部200にRAT Capability変更要求を送信する。上述したように、UE10において当初設定されているRAT Capabilityについては、3つすべてのRATがONとされていた。しかしながら、本例ではPLMN Bに対してはLTEが利用制限されているため、LTEに対するRAT CapabilityをONからOFFに変更する必要がある。このため、RAT判定部130は、LTEをOFFにするRAT Capability変更要求をAPL-PS間メッセージ送受信部140を介しPS部200に送信する。このとき、RAT判定部130は、UI部110にLTEをOFFに設定したことを通知し、その旨をディスプレイなどを介しユーザに表示するようにしてもよい。PS部200のAPL-PS間メッセージ送受信部210がLTEをOFFにするRAT Capability変更要求を受信すると、APL-PS間メッセージ送受信部210は、受信したRAT Capability変更要求をPLMN選択部220に送信する。このRAT Capability変更要求を受信すると、PLMN選択部220は、LTEに対するRAT CapabilityがOFFになったことを記憶し、無線部230を介し通信ハードウェア部300にLTEに対するRAT CapabilityがOFFに設定されたことを通知し、通信ハードウェア部300にLTEを除くRATに対してセルサーチを実行するよう指示する。
【0041】
ステップS406において、通信ハードウェア部300は、LTEを除くRATに対してセルサーチを実行し、検出したセルのPLMN情報を含むセル情報を無線部230に通知する。本実施例では、通信ハードウェア部300は、在圏中のPLMN BのUMTS網を検出したとする。無線部230は受信したPLMN BのUMTS網に関するセル情報をPLMN選択部220に送信し、PLMN選択部220は検出されたセル情報に基づき接続すべきPLMNを選択し、無線部230に通知する。なお、PLMN BについてはUMTS及びGSMが現在利用可能であることがすでに確認されているため、PLMN選択部220は、APL部100に再度RAT判定を要求することなく、通信ハードウェア部300により検出されたPLMN BのUMTSをローミング先として選択する。
【0042】
ここで、複数のセルが検出された場合、PLMN選択部220は、USIMインタフェース部400に挿入されているUSIMに記述されたPLMNの優先度に従って最も優先度の高いPLMNを選択する。また、USIMに記述されたPLMNの優先度にRATの優先度も記述されている場合、選択されたPLMNに対してRAT CapabilityがONに設定されているRATから最も優先度の高いRATを選択し、無線部230に選択したPLMN及びRATを通知するようにしてもよい。
【0043】
ステップS407において、無線部230からPLMN BのUMTS網に優先的に在圏するよう指示されると、通信ハードウェア部300は、PLMN BのUMTS網の電波を検出し、検出したPLMN BのUMTS網に在圏する。
【0044】
ステップS408において、通信ハードウェア部300は、在圏するPLMN BのUMTS網により報知される在圏中のPLMN Bに関するPLMN情報を含む報知情報を受信し、受信した報知情報をPS部200の無線部230に送信する。無線部230は、この報知情報をPLMN選択部220に通知する。
【0045】
ステップS409において、PLMN選択部220は、LTEがOFFに設定されているRAT Capabilityと共に位置登録をPLMN BのUMTS網に通知する。以降、UE10は、別のPLMNのセルに在圏したり、電源OFF/ON、ユーザの操作によるRAT Capabilityの変更などが実行されるまで、LTEがOFFに設定されたRAT Capabilityを有する端末として動作する。このようにして、PLMN-RAT関連付けテーブルの設定に従って、UE10によるPLMN BのLTE網への在圏を制限することが可能となる。
【0046】
次に、図5を参照して本発明の他の実施例による移動機におけるローミング処理を説明する。上述した実施例では、当初はPLMN BのLTE網に在圏したUE10が、PLMN-RAT関連付けテーブルに設定されているPLMN BのLTEの利用制限に基づき、新たなローミング先として同一のPLMN Bの異なるRATであるUMTSに接続した。他方、本実施例では、当初はPLMN BのLTEに在圏したUE10が、PLMN-RAT関連付けテーブルに設定されているPLMN BのLTEの利用制限に基づき、新たなローミング先として異なるオペレータであるPLMN Aに接続するケースについて説明する。図5A及び5Bは、本発明の他の実施例による移動機におけるローミング処理を示すシーケンス図である。図5から明らかなように、図5のステップS501〜S505は、図4のステップS401〜S405と同様である。このため、以下ではステップS506以降の処理について説明する。
【0047】
ステップS506において、通信ハードウェア部300は、LTEを除くRATに対してセルサーチを実行する。本実施例では、通信ハードウェア部300は、在圏中のPLMN Bと異なるオペレータであるPLMN AのUMTSを検出したとする。通信ハードウェア部300は、検出したセルのPLMN情報を含むセル情報を無線部230に通知する。無線部230は受信したPLMN AのUMTS網に関するセル情報をPLMN選択部220に送信し、PLMN選択部220は検出されたセル情報に基づき接続すべきPLMNとしてPLMN Aを選択し、無線部230に通知する。
【0048】
ステップS507において、UE10は、検出したPLMN AのUMTS網に在圏する。ステップS508において、通信ハードウェア部300は、検出したPLMN AのUMTS網から報知される在圏中のPLMN Aに関するPLMN情報を含む報知情報を受信する。通信ハードウェア部300は、受信した報知情報をPS部200の無線部230に送信し、無線部230はこの報知情報をPLMN選択部220に通知する。ここで、PLMN AのUMTS網への在圏によって位置登録が必要である場合、PLMN選択部220は位置登録を実行するよう無線部230を介し通信ハードウェア部300に指示する。
【0049】
ステップS509において、検出されたPLMN Aについては何れのRATが利用可能であるか未確認であるため、PLMN選択部220は、PLMN Aにおいて何れのRATが利用可能であるか確認する必要がある。このため、PLMN選択部220は、在圏することになったPLMN AにおいてUE10が何れのRATを利用可能であるか確認するため、PS部200のAPL-PS間メッセージ送受信部210を介しAPL部100に取得したPLMN Aに関するPLMN情報を送信する。
【0050】
ステップS510において、APL部100がPLMN情報を受信すると、RAT判定部130は、PLMN-RAT関連付けテーブル格納部120に格納されているPLMN-RAT関連付けテーブルを参照して、PLMN Aにおいて利用可能なRATを決定する。図3に示されるPLMN-RAT関連付けテーブルを参照して、RAT判定部130は、PLMN AにおいてUE10はLTS、UMTS及びGSMのすべてのRATが利用可能であることを確認する。
【0051】
ステップS511において、RAT判定部130は、判定したPLMN Aにおける各RATの利用制限に基づきRAT Capabilityの変更が必要である場合、PS部200にRAT Capability変更要求を送信する。ステップS505においてUE10のRAT CapabilityはLTEに対してOFFに設定された。しかしながら、上述したように、PLMN Aに対してはLTEが利用可能とされているため、LTEに対するRAT CapabilityをOFFからONに変更する必要がある。このため、RAT判定部130は、LTEをONにするRAT Capability変更要求をAPL-PS間メッセージ送受信部140を介しPS部200に送信する。このとき、RAT判定部130は、UI部110にLTEをONに設定したことを通知し、その旨をディスプレイなどを介しユーザに表示するようにしてもよい。
【0052】
ステップS512において、PS部200のAPL-PS間メッセージ送受信部210がLTEをONにするRAT Capability変更要求を受信すると、APL-PS間メッセージ送受信部210は、受信したRAT Capability変更要求をPLMN選択部220に送信する。このRAT Capability変更要求を受信すると、PLMN選択部220は、LTEに対するRAT CapabilityがONになったことを記憶し、無線部230を介し通信ハードウェア部300にLTEに対するRAT CapabilityがONに設定されたことを通知し、通信ハードウェア部300にLTEを含むすべてのRATに対してセルサーチを実行するよう指示する。通信ハードウェア部300は、LTEを含むすべてのRATに対してセルサーチを実行し、検出したセルのPLMN情報を含むセル情報を無線部230に通知する。本実施例では、通信ハードウェア部300は、在圏中のPLMN AのLTE網を検出したとする。無線部230は受信したPLMN AのLTE網に関するセル情報をPLMN選択部220に送信し、PLMN選択部220は検出されたセル情報に基づき接続すべきPLMNを選択し、無線部230に通知する。なお、PLMN AについてはLTE、UMTS及びGSMが現在利用可能であることがすでに確認されているため、PLMN選択部220は、APL部100に再度RAT判定を要求することなく、通信ハードウェア部300により検出されたPLMN AのLTEを選択する。
【0053】
ここで、PLMN Aにおける複数のセルが検出された場合、PLMN選択部220は、USIMインタフェース部400に挿入されているUSIMに記述されたRATの優先度を参照し、PLMN Aに対して最も優先度の高いRATを選択し、無線部230に選択したRATを通知するようにしてもよい。
【0054】
ステップS513において、無線部230からPLMN AのLTEに優先的に在圏するよう指示されると、通信ハードウェア部300は、PLMN AのLTE網の電波を検出し、検出したPLMN AのLTE網に在圏する。
【0055】
ステップS514において、通信ハードウェア部300は、在圏するPLMN AのLTE網により報知される在圏中のPLMN Aに関するPLMN情報を含む報知情報を受信し、受信した報知情報をPS部200の無線部230に送信する。無線部230は、この報知情報をPLMN選択部220に通知する。
【0056】
ステップS515において、PLMN選択部220は、LTEがONに設定されているRAT Capabilityと共に位置登録をPLMN AのLTE網に通知する。以降、UE10は、別のPLMNのセルに在圏したり、電源OFF/ON、ユーザの操作によるRAT Capabilityの変更などが実行されるまで、LTEがONに設定されたRAT Capabilityを有する端末として動作する。このようにして、PLMN-RAT関連付けテーブルの設定に従って、UE10によるPLMN AのLTE網への在圏が可能となる。
【0057】
上述した実施例では、図3に示されるようなPLMN毎に各RATが利用可能か否かを示すPLMN-RAT関連付けテーブルが使用されたが、本発明はこれに限定されるものでない。他の実施例では、PLMN-RAT関連付けテーブルは、特定のRATに関しては、特定のPLMNでしか許容しないといったホワイトリスト方式(図3において、LTEは「PLMN A以外」は利用不可「×」であるなど)、特定のRATを特定のPLMNのみ許容しないとったブラックリスト方式など、様々な形式で表現することができる。また、MCC(Mobile Country Code)によって、国単位で各RATの利用制限を設定し、その国にあるオペレータのネットワークへの在圏時は、特定のRATを許容する、又は許容しないようにするなどの設定方法(図3において、「MCC=DDD」の「×」など)もあり、様々な設定方法が考えられる。
【0058】
また、PLMN-RAT関連付けテーブルは、移動機固有の不揮発値として保持してもよいし、ユーザ操作により書き換え可能としてもよい。PLMN-RAT関連付けテーブルが不揮発値として保持されている場合、ADL(Air Down Load)を用いて外部から書き換え可能とし、必要に応じてテーブルを更新できるようにしてもよい。
【0059】
また、現行の移動機は、一般的にユーザ操作により、RAT Capabilityを手動で切り替えることが可能となっているが、本発明は、ユーザ操作に依らないタイミングでRAT Capabilityが変更されることになる。そのため、ユーザが想定しないRATを移動機が利用してしまうことが懸念される。しかしながら、例えば、RAT Capabilityが変更されたことをディスプレイに表示し、現在移動機においてサポートされているRATが何かのRATであるかユーザに通知することによって、このような問題を解消することができる。
【0060】
また、RAT Capabilityをディスプレイ表示しない場合でも、RAT判定部130がユーザ操作によりOFFに設定されているRATを記憶しておき、PS部200からの在圏中のPLMNの通知に対するRAT Capabilityの変更要求に反映する形にすればよい。例えば、図4に示されるシーケンスにおいて、RAT Capabilityが予めユーザ操作により、GSM=OFFと設定されている状態であったと仮定する。このとき、移動機がPLMN BのLTE網に在圏した場合、RAT判定部130がPS部200から在圏中のPLMNの通知を受けて、PLMN毎のRAT判定を実施した後に送信するRAT Capability変更要求は、LTEに対してOFFであり、かつGSMに対してOFFという設定となる。そのようなRAT Capabilityに設定することで、セルサーチはUMTSのみで実行されることになり、GSMがセルサーチの対象から外れ、ユーザが所望しないGSMセルに在圏するケースを防ぐことが可能となる。
【0061】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 移動機(UE)
100 アプリケーション(APL)部
200 プロトコルスタック(PS)部
300 通信ハードウェア部
400 USIMインタフェース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローミング機能を有する移動機であって、
複数のRATにより無線通信するためのマルチRAT機能を有する通信ハードウェア部と、
ローミング先となる各オペレータについて当該移動機が利用可能なRATを記述した関連付け情報を格納する関連付け情報格納部と、
前記関連付け情報に基づき、ローミング先のオペレータにおいて当該移動機が前記複数のRATの何れのRATを利用可能であるか判定し、前記判定の結果に基づき当該移動機に現在設定されている前記複数のRATに対するRAT Capabilityを変更すべきか判断するRAT判定部と、
前記現在設定されているRAT Capabilityを変更すべきRATが前記RAT判定部から通知されると、前記変更すべきRATのRAT Capabilityを変更する通信制御部と、
を有する移動機。
【請求項2】
前記通信制御部は、前記複数のRATのうちRAT CapabilityがONに設定されているRATにより運用されているローミング先のオペレータのネットワークを検出するよう前記通信ハードウェア部に指示する、請求項1記載の移動機。
【請求項3】
前記通信制御部は、前記通信ハードウェア部により検出されたネットワークのオペレータが在圏中のオペレータに一致するか判断し、一致する場合には前記検出されたネットワークにローミングし、一致しない場合には前記検出されたネットワークのオペレータを前記RAT判定部に通知し、当該移動機に現在設定されている前記複数のRATに対するRAT Capabilityを変更すべきか判断させる、請求項2記載の移動機。
【請求項4】
前記RAT判定部は、前記現在設定されているRAT Capabilityを変更すべきと判断した場合、前記現在設定されているRAT Capabilityを変更することをユーザインタフェースを介しユーザに通知する、請求項1記載の移動機。
【請求項5】
ローミング機能を有する移動機のローミング方法であって、
前記移動機に格納されているローミング先となる各オペレータについて当該移動機が利用可能なRATを記述した関連付け情報に基づき、ローミング先のオペレータにおいて当該移動機が前記複数のRATの何れのRATを利用可能であるか判定するステップと、
前記判定の結果に基づき、当該移動機に現在設定されているRAT Capabilityを変更すべきか判断するステップと、
前記現在設定されているRAT Capabilityを変更すべきと判断した場合、前記変更すべきRATのRAT Capabilityを変更するステップと、
前記RAT CapabilityがONに設定されているRATにより運用されているローミング先のオペレータのネットワークを検出するステップと、
を有するローミング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2012−199661(P2012−199661A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61199(P2011−61199)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】