説明

移動用変圧器搭載車両

【課題】移動用変圧器の設置作業時の作業負担の軽減、及び設置作業の迅速化を図り、更に、設置スペースを減少させることのできる移動用変圧器を搭載した車両を提供する
【解決手段】移動用変圧器を架台部に搭載した移動用変圧器搭載車両において、外部からの電力を前記移動用変圧器に対して供給する電力供給線を絶縁状態で中継して保持する保持手段を架台部に設ける。保持手段は、架台部に設置される保持枠体及び、保持枠体に取り付けられるとともに電力供給線を嵌入保持する保持ブラケットを備える。かかる構成により、電力供給線を迅速に保持させることができる。そのため、移動用変圧器への交換作業の際の負担を軽減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動用変圧器搭載車両、特に、電力施設で一時的に用いられる移動用変圧器を搭載した移動用変圧器搭載車両に関する。
【背景技術】
【0002】
移動用変圧器は、発電所等の電力施設において変圧器が老朽化して故障したり、災害によって故障したりした場合に、この電力施設に搬送されて、直ちに電力供給を再開することを目的としている。
【0003】
特許文献1として、トラックの荷台に移動用変圧器を搭載したトラックが開示されている。この特許文献1で開示される移動用変圧器を搭載したトラックは、移動用変圧器をトラックの荷台の前方側に搭載して、荷台の後方側に移動用変圧器の取付作業を行うための作業スペースを確保している。これによると、作業現場が狭隘であっても、作業者が荷台上において変圧器の設置を行うことが可能となる。
【0004】
一方、特別高圧電力系統においては、車両に設置された移動用変圧器を電力施設に設置する場合は、絶縁用のブッシングが取り付けられた移動ケーブルを介して、移動用変圧器に配備される接続用ブッシングと電力施設の設備とが接続されることで実行される。これにより、電力供給が再開される。移動用変圧器を設置する際は、絶縁用ブッシングを接続用ブッシングに直接接続すると、絶縁用ブッシング及び移動ケーブルの重量によって接続用ブッシングが破損するおそれがある。そこで、移動ケーブルの絶縁用ブッシングを架台に嵌入して支持させることで、絶縁用ブッシング及び移動ケーブルの荷重を分配させて、電力施設の設備と移動用変圧器との間において移動ケーブルを中継させる手法が採用されている。この架台は、移動用変圧器が三相交流電力系統の電力設備に接続されるので、相間短絡を防止すべく、車両の車幅方向の両外側及び車両の後端側外方、すなわち、車両とは別体で車両近傍に3箇所設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−283838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された移動用変圧器を搭載したトラックは、高圧電力系統において移動用変圧器を用いる場合に適用されるものであり、移動ケーブルの絶縁用ブッシングを支持する架台を設置する構成を具備していない。従って、特別高圧電力系統において移動用変圧器を用いる場合に直接適用することはできない。
【0007】
また、上記の特別高圧電力系統用の移動用変圧器を搭載した車両を用いて移動用変圧器の設置を行う場合は、移動ケーブルの絶縁用ブッシングが架台に支持される際に絶縁用ブッシングの重量によって架台が転倒してしまうことを防止すべく、土台部分が支持部分に対して比較的大きく形成されているので、架台全体としても比較的大きな寸法で形成する必要性が生じる。従って、架台は、移動用変圧器を搭載した車両とは別の車両によって現地まで搬送されなければならない。すなわち、移動用変圧器の搬送とは別に架台のみを別の車両によって電力施設まで搬送するので、搬送作業が煩雑となる。また、架台の寸法が比較的大きく形成されているので、現地において架台を設置する際の作業負担が増大するとともに、車両外において架台の設置スペースを確保する必要が生じる。また、架台に接地線を設けることによる作業負担及びコストも増大する。従って、移動用変圧器の設置作業の負担が増大するとともに、設置作業の長期化が懸念される。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、移動用変圧器の設置作業時の作業負担の軽減、及び設置作業の迅速化を図り、更に、設置スペースを減少させることのできる移動用変圧器を搭載した車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明による移動用変圧器搭載車両は、移動用変圧器を架台部に搭載した移動用変圧器搭載車両において、外部からの電力を前記移動用変圧器に対して供給する電力供給線を絶縁状態で中継して保持する保持手段が前記架台部に固定設置されたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、保持手段が移動用変圧器搭載車両の架台部に固定設置されているので、電力供給線を中継保持させるための架台を別体として設置する必要がない。従って、架台のみを移動用変圧器搭載車両とは別の車両によって、電力施設まで搬送する必要がなく、搬送作業の煩雑さを回避できるとともに、電力設備における架台の設置作業を廃止することができるので、移動用変圧器への交換作業の際の作業負担を大幅に軽減することができる。その結果、移動用変圧器への切替えまでの時間が短縮化されて交換作業がスムーズに実現され、故障からの復旧が迅速に実現される。その一方で、移動用変圧器から新たな変圧器への切替えまでの時間も短縮化されて、交換作業がスムーズに実現され、電力供給信頼度の向上を図ることができる。
【0011】
また、保持手段が移動用変圧器搭載車両に固定設置されているので、架台を設置するための設置スペースの確保が不要となり、比較的狭隘な領域への設置であっても容易に行うことができる。その一方で、移動用変圧器への交換作業の際の作業スペースを増大させることが可能となり、狭隘な作業現場においても移動用変圧器への交換作業をスムーズに行うことができる。
【0012】
請求項2に記載の発明による移動用変圧器搭載車両は、請求項1に記載の移動用変圧器搭載車両において、前記架台部は、平面視略矩形に形成され、前記保持手段は、前記架台部の幅方向の両側縁部の所定位置及び後側縁部の略中央位置にそれぞれ設けられたことを特徴とする。
【0013】
この構成は、請求項1に記載の保持手段の配置構成を示したものであり、平面視略矩形に形成された架台部の両側縁部及びこの架台部の後側縁部に保持手段が設置されて、電力供給線がこれらの保持手段に中継保持される。従って、3基の保持手段が架台部に固定設置されているので、各電力供給線間の空気絶縁性を確保した上で、電力供給線を架台部の保持手段において中継保持することができる。その結果、例えば、三相交流発電機からの電力供給線を中継保持させる場合は、各相間の離間距離を適切に確保して相間短絡を回避しつつ電力供給線を中継保持することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明による移動用変圧器搭載車両は、請求項1または2に記載の移動用変圧器搭載車両において、前記架台部は、前記後側縁部の略中央位置に前記架台部を内方側に切り欠いた凹部を有し、前記後側縁部に設けられる保持手段が前記凹部内に設けられたことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、架台部の後側縁部の略中央位置から架台部の内方側に切り欠かれて凹部が形成され、この凹部に架台部の後側縁部の略中央位置に設けられた保持手段が設置される。従って、架台部の後側縁部の保持手段が、後側縁部の内方側に固定されるので、移動用変圧器搭載車両の後方側における移動用変圧器の設置スペース及び設置作業スペースを増大させることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明による移動用変圧器搭載車両は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の移動用変圧器搭載車両において、前記保持手段は、前記架台部の上面に前記両側縁部及び後側縁部から非突出状態で固定された基体部と、該基体部に着脱可能に装着され、装着された状態で前記架台部の外側に突出する保持ブラケットと、を備え、該保持ブラケットに前記電力供給線の絶縁用ブッシングが嵌合保持されることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、保持手段は基体部及び保持ブラケットによって構成され、保持ブラケットが架台部の外側に突出するので、各保持手段において、高い空気絶縁性を確保して電力供給線を中継保持することができる。一方で、保持ブラケットが基体部に対して着脱可能に取り付けられているので、走行時には保持ブラケットを取り外して、車幅方向のクリアランスを確保して円滑な走行状態を実現することができる。また、簡易な構成で保持手段を形成することができるので、製造コストを削減することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、保持手段が移動用変圧器搭載車両の架台部に固定設置されているので、電力供給線を中継保持させるための架台を別体として設置する必要がない。従って、架台のみを移動用変圧器搭載車両とは別の車両によって、電力施設まで搬送する必要がなく、搬送作業の煩雑さを回避できるとともに、電力設備における架台の設置作業を廃止することができるので、移動用変圧器への交換作業の際の作業負担を大幅に軽減することができる。その結果、移動用変圧器への切替えまでの時間が短縮化されて交換作業がスムーズに実現され、故障からの復旧が迅速に実現される。その一方で、移動用変圧器から新たな変圧器への切替えまでの時間も短縮化されて、交換作業がスムーズに実現され、電力供給信頼度の向上を図ることができる。
【0019】
また、保持手段が移動用変圧器搭載車両に固定設置されているので、架台を設置するための設置スペースの確保が不要となり、比較的狭隘な領域への設置であっても容易に行うことができる。その一方で、移動用変圧器への交換作業の際の作業スペースを増大させることが可能となり、狭隘な作業現場においても移動用変圧器への交換作業をスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る移動用変圧器搭載車両の概略を説明する図である。
【図2】図1の矢線P方向から見た図である。
【図3】図2の矢線Qで示す要部拡大図である。
【図4】同じく、本発明の実施の形態に係る移動用変圧器搭載車両のブッシング保持枠体及びブッシング保持ブラケット、移動ケーブルの概略を説明する図である。
【図5】同じく、本発明の実施の形態に係る移動用変圧器搭載車両のブッシング保持ブラケットに移動用ケーブルが支持される状態を説明する図である。
【図6】同じく、本発明の実施の形態に係る移動用変圧器搭載車両の運用状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について、図1〜図6に基づいて詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る移動用変圧器搭載車両(以下、「変圧器車」という)10の概略を説明する図であり、図2は、図1の矢線P方向から見た図である。なお、図1〜図4において矢線FRは、変圧器車10の前後方向を示す。
【0023】
図示のように、変圧器車10はトラクタ50、及び架台部、本実施の形態では移動用変圧器ユニット20を備え、トラクタ50に移動用変圧器ユニット20が連結されている。
【0024】
移動用変圧器ユニット20の後方下部には、移動用変圧器ユニット20を支持する車輪28aを具備した台車28が配設され、トラクタ50の走行によって移動用変圧器ユニット20が牽引走行される。以下、移動用変圧器ユニット20の詳細を説明する。
【0025】
移動用変圧器ユニット20は、前後方向FRに亘って延在するフレーム22を備え、油冷却器26b、変圧器26aがフレーム22の前部から後部へ向かって順に配設され、これらの機器がフレーム22と連結されている。この変圧器26aには、絶縁用ブッシング74に保持された電力供給線である移動ケーブル72を介して、三相交流電力系統の電力施設における電力設備に接続される2次ブッシング25−1〜25−3が、移動用変圧器ユニット20の後部上方に突出して設置されている。
【0026】
フレーム22の略中央領域には、ランディングギヤ29が4基配設され、上記の変圧器24等が搭載された移動用変圧器ユニット20が電力施設の所定箇所に配置される際に、移動用変圧器ユニット20を支持する。そして、2次ブッシング25−1〜25−3に移動ケーブル72が接続されたときに絶縁用ブッシング74を保持するブッシング保持ブラケット40が、ブッシング保持基体部30を介してフレーム22の後部に取り付けられており、保持手段を構成する。なお、保持手段の接地は、移動用変圧器ユニット20の図示しない1本の接地線で共用されている。
【0027】
図3は、図2において矢線Qで示す要部拡大図である。図示のように、フレーム22は、車輪28aの上部に突出して変圧器車10の車幅方向の両側方において前後方向FRに沿って延在する張り出し部24aを備える。そして、台車28は、台車28の後側縁部の幅方向における略中央位置から、台車28の内方側である車輪28aの後端まで切り欠かれて凹状に形成された凹部24bを備える。
【0028】
ブッシング保持基体部30は、前後方向FRに沿って取り付けられる一対の第1基体30−1及び30−2、変圧器車10の幅方向に沿って取り付けられる第2基体30−3の3基によって構成される。そして、第1基体30−1及び30−2、第2枠体30−3のそれぞれにブッシング保持ブラケット40を構成する第1ブラケット40−1及び40−2、第2ブラケット40−3は、移動用変圧器ユニット20が、電力施設の所定箇所に配置される際に取り付けられる。なお、図1においては、説明の便宜のため、これらのブラケットが変圧器車10に取り付けられた状態を示している。
【0029】
図4は、ブッシング保持枠体30及びブッシング保持ブラケット40、移動ケーブル72の概略を説明する図である。なお、ブッシング保持基体部30において、第1基体30−1、30−2及び第2基体30−3はいずれも同じ構成であり、ブッシング保持ブラケット40において、第1ブラケット40−1、40−2及び第2ブラケット40−3はいずれも同じ構成である。更に、移動ケーブル72−1〜72−3はいずれも同じ構成である。従って、説明の便宜上、それぞれの構成部材には、第1基体30−1、30−2、及び第1ブラケット40−1、40−2、移動ケーブル62−1において付した符号と同一の符号を付している。
【0030】
図示のように、第1基体30−1、30−2は、板金形成された部材によって正面視略矩形に形成されたブラケット取付部32を備え、ブラケット取付部32の両側端縁から矢線Wで示す変圧器10またはフレーム22の幅方向の内方側に折曲してブラケット取付部32と連続する一対の側面部34が形成され、断面視略コ字状に形成される。ブラケット取付部32の下端縁は幅方向Wの内方側に折曲され、一対の側面部34の下端縁は端部が互いに対向する方向に折曲されて、取付フランジ36がそれぞれ形成される。
【0031】
ブラケット取付部32の上部には、前後方向FRに沿って延在するブラケット取付長孔32aが開口形成される。また、ブラケット取付部32の略中央部分は略矩形に開口され、側面部34の略中央部分は略三角形に開口されて、部材の軽量化が図られている。
【0032】
第1ブラケット40−1、40−2は、上下方向に延在して上部及び下部が開放された円筒状でかつ下方向に移行するに従って縮径する半割りテーパ状に形成されたブッシング受部42を備え、このブッシング受部42の上部の開放端縁に沿って、ブッシング受部42の外方に向かって突出する半割り状のフランジ部42aが形成される。半割り状に形成されたブッシング受部42は、半割りされた一端側がヒンジ42cによって揺動自在に係合されるとともに、半割りされた他端側にボルトによって係合されるホルダ42bが形成される。このブッシング受部42が、平板状に形成された取付基部44に、継手部44aを介して結合される。
【0033】
第1ブラケット40−1、40−2が取り付けられた第1基体30−1、30−2のブラケット取付部32が、張り出し部24aにおける変圧器車10の前後方向FRに延在する前端縁と連続するように、フレーム22の張り出し部24aにボルト36によって取り付けられる。また、第2ブラケット40−3が取り付けられた第3基体30−3のブラケット取付部32の取付面が、凹部24bにおける台車28の幅方向Wの後側縁部と連続するように、第2ブラケット40−3がフレーム22に取り付けられる。
【0034】
そして、第1ブラケット40−1、40−2の取付基部44に穿孔されたボルト孔46が、第1基体30−1、30−2のブラケット取付部32に形成されたブラケット取付長孔32aに重ね合わせられ、取付ボルト48aがワッシャ48cを介してボルト孔46に挿入されてナット48bと螺合され、移動用変圧器ユニット20が電力施設の所定箇所に配置される際に、第1ブラケット40−1、40−2が第1基体30−1、30−2に着脱自在に取り付けられる。
【0035】
図5は、移動用ケーブル62−1〜62−3がブッシング保持ブラケット40に保持される状態を説明する図である。図示のように、変圧器26aに外部電力を供給する移動ケーブル62−1〜62−3は、絶縁用ブッシング64−1〜64−3に挿通保持される。
【0036】
この絶縁用ブッシング64−1〜64−3は円筒状に形成され、その上部範囲が上方から下方に移行するに従って漸次拡径し、その下部範囲が、上部範囲の最大拡径部分から下方に移行するに従って漸次縮径して形成される。かかる構成を有する絶縁用ブッシング64−1〜64−3が、その下部範囲においてブッシング受部42によって挟持されて、第1ブラケット40−1、40−2に保持される。
【0037】
図6は、変圧器車10の運用状態を説明する図である。図示のように、電力施設70は、高圧送電線80から電力供給を受けている。この電力施設70で稼動していた変圧器(図示しない)が老朽化あるいは災害等で故障した場合に、この変圧器に代えて変圧器車10が用いられる。すなわち、変圧器車10の変圧器26aにおける2次ブッシング25−1〜25−3に、移動ケーブル62−1〜62−3の一端が接続されるとともに、移動ケーブル62−1〜62−3の他端側において、絶縁用ブッシング64−1〜64−3が第1ブラケット40−1、40−2及び第2ブラケット40−3にクランプされて、ホルダ42bがボルトによって係合されて保持される。そして、移動ケーブル62−1〜62−3の他端が電力施設70の第1設備72に接続される。このとき、ランディングギヤ29が操作されて移動用変圧器ユニット20がランディングギヤ29によって支持される。そして、トラクタ50と移動用変圧器ユニット20との連結が解除される。
【0038】
そして、変圧器26aの3次ブッシング(図示しない)からケーブル73を介して電力供給を受けた第2設備76によって、架空送電設備82に電力が供給される。
【0039】
以上のような構成とすることにより、保持手段を構成するブッシング保持基体部30及びブッシング保持ブラケット40が、変圧器車10の移動用変圧器ユニット20に設置されているので、移動ケーブル62−1〜62−3を保持する絶縁用ブッシング64−1〜64−3を中継保持する架台を、変圧器車10と別体に設置する必要がないので、変圧器26aへの交換作業の際に生じる架台の設置作業の負担を軽減することができる。
【0040】
従って、電力施設70において故障した変圧器に代えて移動用変圧器ユニット20の変圧器26aへの切替えまでの時間が短縮化されて交換作業がスムーズに実現されるので、故障からの復旧が迅速に行われる。一方、移動用変圧器ユニット20の変圧器26aから新たな変圧器への切替えまでの時間も短縮化されて交換作業がスムーズに実現されるので、電力供給信頼度を向上させることができる。
【0041】
また、変圧器車10とは別の車両によって、架台のみを電力施設70まで搬送する必要がないので、搬送作業の煩雑さを回避することができる。更に、保持手段が移動用変圧器ユニット20に固定設置されているので、変圧器車10とは別体で架台を設置するためのスペースを確保する必要がなく、比較的狭隘な領域であっても変圧器車10を設置することができる。一方、変圧器26aへの交換作業の際の作業スペースを増大させることができるので、狭隘な作業現場であっても変圧器26aへの交換作業をスムーズに実現することができる。
【0042】
そして、第1ブラケット40−1、40−2が第1枠体30−1、30−2を介してフレーム22に形成された張り出し部24aに取り付けられて、第1ブラケット40−1及び40−2が変圧器車10の後方の両側縁部に設置され、第2ブラケット40−3が第2基体30−3を介して台車28に形成された凹部24bにおける台車28の後側縁部に沿って第2基体40−3のブラケット取付部32が取り付けられる。従って、3基の保持手段が移動用変圧器ユニット20に設置されているので、移動ケーブル62−1〜62−3間の空気絶縁性を確保した上で、移動ケーブル62−1〜62−3を中継保持できる。その結果、三相交流発電機からの移動ケーブル62−1〜62−3を中継させるための架台を設置する必要がなく、変圧器車10の移動用変圧器ユニット20において、各相間の離間距離を適切に確保しつつ移動ケーブル62−1〜62−3を中継保持することができる。
【0043】
また、第1ブラケット40−1、40−2が、フレーム22の両側縁部の外側に突出して設けられているので、第2ブラケット40−3に保持される移動ケーブル62−3からの離間距離を十分に確保できるので、空気絶縁性をより向上させた上で、相間短絡を防止することができる。
【0044】
更に、第2ブラケット40−3が取り付けられた第2枠体30−3は、フレーム22に形成された凹部24bにおけるフレーム22の後側縁部に沿って取り付けられているので、第2ブラケット40−3がフレーム22の内方側に固定設置され、凹部24bが形成されていないフレーム22の後側縁部に取り付けられた場合と比較すると、変圧器車10の後方側の設置スペース及び設置作業スペースを増大させることができる。
【0045】
また、第1ブラケット40−1、40−2及び第2ブラケット40−3は、第1枠体30−1、30−2及び第2枠体30−3に対して、取付ボルト48a及びナット48bによって着脱自在に取り付けられているので、変圧器車10の走行時にはブッシング保持ブラケット40を取り外して、車幅方向のクリアランスを確保して、円滑な走行状態を実現することができる。
【0046】
更に、保持手段を第1基体30−1、30−2、第2基体30−3及び、第1ブラケット40−1、40−2、第2ブラケット40−3という簡易な構成によって形成できるので、製造コストを抑制することができるとともに、保持手段を製造する作業負担も大幅に軽減することが可能となる。
【0047】
そして、第1基体30−1、30−2、第2基体30−3及び、第1ブラケット40−1、40−2、第2ブラケット40−3の接地は、移動用変圧器ユニット20の接地と共用することができるので、図示しない1つの接地線によって行うことができる。従って、保持手段に接地線を設けるコスト及び作業負担を軽減することができる。
【0048】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。上記実施の形態では、変圧器車10がトラクタ50及び移動用変圧器ユニット20によって構成され、移動用変圧器ユニット20がトラクタ50に牽引されるいわゆるトレーラ型である場合を説明したが、例えば、トラック型の貨物自動車に変圧器26aを搭載してもよい。
【0049】
また、上記実施の形態では、フレーム22により台車28の後部が被覆されておらず、台車28の後側縁部の幅方向における略中央位置から内方側に向かって、車輪28aの後端まで切り欠かれて凹部24bが形成された場合を説明したが、フレーム22により台車28の後部が被覆されている場合は、フレーム22の後側縁部にも台車28の後側縁部と同様に凹部が形成されることによって、第2ブラケット40−3に支持される絶縁用ブッシング64−2をフレーム22の内方側で保持することができる。
【0050】
また、上記実施の形態では、変圧器26aに形成されたブッシングが2次ブッシング25−1〜25−3である場合を説明したが、例えば、1次ブッシングまたは3次ブッシングであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 移動用変圧器搭載車両
20 移動用変圧器ユニット(架台部)
22 フレーム
24a 張り出し部
24b 凹部
25−1〜25−3 2次ブッシング
26a 変圧器(移動用変圧器)
30 ブッシング支持枠体(支持枠体)
30−1、30−2 第1枠体
30−3 第2枠体
32 ブッシング取付部
40 ブッシング支持ブラケット(支持ブラケット)
40−1、40−2 第1ブラケット
40−3 第2ブラケット
42 ブッシング受部
50 トラクタ
70 電力施設
62−1〜62−3 移動ケーブル(電力供給線)
64−1〜64−3 絶縁用ブッシング(保持手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動用変圧器を架台部に搭載した移動用変圧器搭載車両において、
外部からの電力を前記移動用変圧器に対して供給する電力供給線を絶縁状態で中継して保持する保持手段が前記架台部に固定設置されたことを特徴とする移動用変圧器搭載車両。
【請求項2】
前記架台部は、平面視略矩形に形成され、
前記保持手段は、
前記架台部の幅方向の両側縁部の所定位置及び後側縁部の略中央位置にそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項1に記載の移動用変圧器搭載車両。
【請求項3】
前記架台部は、
前記後側縁部の略中央位置に前記架台部を内方側に切り欠いた凹部を有し、
前記後側縁部に設けられる保持手段が前記凹部内に設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の移動用変圧器搭載車両。
【請求項4】
前記保持手段は、
前記架台部の上面に前記両側縁部及び後側縁部から非突出状態で固定された基体部と、
該基体部に着脱可能に装着され、装着された状態で前記架台部の外側に突出する保持ブラケットと、を備え、
該保持ブラケットに前記電力供給線の絶縁用ブッシングが嵌合保持されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の移動用変圧器搭載車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−142764(P2011−142764A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2567(P2010−2567)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】