説明

移動端末装置、無線基地局装置及び無線通信方法

【課題】協調マルチポイント送信において、正確なプリコーディングウェイトを生成することができる移動端末装置、無線基地局装置及び無線通信方法を提供すること。
【解決手段】本発明の無線通信方法は、移動端末装置(10)において、下りリンク参照信号を用いてチャネル推定し、得られたチャネル推定値を用いてPMIを選択し、少なくともチャネル推定値及びPMIを用いてIQIを測定し、少なくともPMI及びIQIを無線基地局装置に送信し、無線基地局装置において、PMI及びIQIを用いてプリコーディングウェイトを生成し、プリコーディングウェイトを用いたMIMO伝送を利用して協調マルチポイント送信することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動端末装置、無線基地局装置及び無線通信方法に関し、特に、マルチアンテナ伝送に対応する移動端末装置、無線基地局装置及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)ネットワークにおいては、周波数利用効率の向上、データレートの向上を目的として、HSDPA(High Speed Downlink Packet Access)やHSUPA(High Speed Uplink Packet Access)を採用することにより、W-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)をベースとしたシステムの特徴を最大限に引き出すことが行われている。このUMTSネットワークについては、更なる高速データレート、低遅延などを目的としてロングタームエボリューション(LTE:Long Term Evolution)が検討されている。
【0003】
第3世代のシステムは、概して5MHzの固定帯域を用いて、下り回線で最大2Mbps程度の伝送レートを実現できる。一方、LTE方式のシステムにおいては、1.4MHz〜20MHzの可変帯域を用いて、下り回線で最大300Mbps及び上り回線で75Mbps程度の伝送レートを実現できる。また、UMTSネットワークにおいては、更なる広帯域化及び高速化を目的として、LTEの後継のシステムも検討されている(例えば、LTEアドバンスト(LTE−A))。例えば、LTE−Aにおいては、LTE仕様の最大システム帯域である20MHzを、100MHz程度まで拡張することが予定されている。
【0004】
また、LTE方式のシステムにおいては、複数のアンテナでデータを送受信し、データレート(周波数利用効率)を向上させる無線通信技術としてMIMO(Multi Input Multi Output)システムが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。MIMOシステムにおいては、送受信機に複数の送信/受信アンテナを用意し、異なる送信アンテナから同時に異なる送信情報系列を送信する。一方、受信機側では、送信/受信アンテナ間で異なるフェージング変動が生じることを利用して、同時に送信された情報系列を分離して検出することにより、データレート(周波数利用効率)を増大することが可能である。
【0005】
LTE方式のシステムにおいては、異なる送信アンテナから同時に送信する送信情報系列が、全て同一のユーザのものであるシングルユーザMIMO(SU−MIMO(Single User MIMO))伝送と、異なるユーザのものであるマルチユーザMIMO(MU−MIMO(Multiple User MIMO))伝送とが規定されている。これらのSU−MIMO伝送及びMU−MIMO伝送においては、受信機側で送信機のアンテナに設定すべき位相・振幅制御量(プリコーディング行列(プリコーディングウェイト))と、このプリコーディング行列に対応づけられるPMI(Precoding Matrix Indicator)とを複数定めたコードブックから最適なPMIを選択し、これを送信機にフィードバックする。送信機側では、受信機からフィードバックされたPMIに基づいて各送信アンテナに対するプリコーディングを行って送信情報系列を送信する。プリコーディング手法の代表的なものとして、ZF(Zero forcing)、BD(Block diagonalization)ZF、MMSE(Minimum mean square error)、SLNR(Signal to Leakage plus Noise Ratio)などがある。
【0006】
ここで、SLNRプリコーディングについて着目する。SLNRプリコーディングにおいては、受信機(例えば、移動端末装置)において受信される所望信号の電力を、協調クラスタ内にある他の移動端末装置における信号の「漏れ」に起因する干渉と雑音と全電力との和で除した値を最大にする。このSLNRプリコーディングによりプリコーディングウェイトを算出する場合、移動端末装置における平均受信SINR(Signal to Interference plus Noise Ratio)が必要となる(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】3GPP TR 25.913“Requirements for Evolved UTRA and Evolved UTRAN”
【非特許文献2】M. Sadek et al.,“A leakage-based precoding scheme for downlink multi-user MIMO channels,” IEEE Trans. Wireless Commun., vol. 6, no. 5, pp. 1713, May 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
Rel-8 LTEシステムに対してさらにシステム性能を向上させるための有望な技術の一つとして、セル間直交化がある。Rel-10以降のLTEシステム(LTE−Aシステム)では、上下リンクとも直交マルチアクセスによりセル内の直交化が実現されている。すなわち、下りリンクでは、周波数領域において移動端末装置(User Equipment)間で直交化されている。しかしながら、セル間はW−CDMAと同様、1セル周波数繰り返しによる干渉ランダム化が基本である。3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、セル間直交化を実現するための技術として、協調マルチポイント送受信(CoMP)が検討されている。CoMP送受信では、1つあるいは複数の移動端末装置(UE)に対して複数のセルが協調して送受信の信号処理を行う。具体的には、下りリンクでは、プリコーディングを適用する複数セル同時送信、協調スケジューリング/ビームフォーミングなどが検討されている。
【0009】
移動端末装置から無線基地局装置へフィードバックされた、瞬時のチャネル品質情報CQI(Channel Quality Indicator)とPMIを用いて、SLNRプリコーディングを用いる下りリンク協調スケジューリング/ビームフォーミング送信を適用する場合には、瞬時CQIを用いて平均受信SINRの計算を行う(下記式(1)、式(2))。
式(1)
移動端末装置iからのCQIフィードバック

i,j:1,2,…(移動端末装置iと無線基地局装置jの番号)
:無線基地局装置jと態移動端末装置iの間の下りリンクのチャネル状態
:移動端末装置iからのPMIフィードバック
avg,j:無線基地局装置jの平均総送信電力
ICI:移動端末装置iにおいて移動端末装置iでのCoMPセットに属していないセルからの干渉
:移動端末装置iにおける受信機の平均ノイズ
ここで、移動端末装置iが無線基地局装置iに接続しているため、以下では無線基地局装置iが移動端末装置iの接続基地局と呼び、またその他のクラスタ内の無線基地局装置j≠iを協調基地局と呼ぶ。
式(2)

【0010】
しかしながら、上記式(1)の分子にある送信電力成分は時間方向に平均された値ではなく瞬時値である。また、平均受信SINRとして用いる瞬時CQIは量子化誤差(所望のビーム方向との間のズレ)が考慮されていない。このため、瞬時CQIを平均受信SINRとしてSLNRプリコーディングを行うと、正確なプリコーディングウェイトを生成することができない。
【0011】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、協調マルチポイント送信(CoMP)において、正確なプリコーディングウェイトを生成することができる移動端末装置、無線基地局装置及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の移動端末装置は、下りリンク参照信号を用いてチャネル推定するチャネル推定部と、前記チャネル推定部で得られたチャネル推定値を用いてPMIを選択するPMI選択部と、少なくとも前記チャネル推定値及び前記PMIを用いてIQI(Interference Quality Indicator)を測定するIQI測定部と、少なくとも前記PMI及び前記IQIを無線基地局装置に送信する送信部と、を具備することを特徴とする。
【0013】
本発明の無線基地局装置は、移動端末装置からフィードバックされたPMI及びIQIを用いてプリコーディングウェイトを生成するプリコーディングウェイト生成部と、前記プリコーディングウェイトを用いたMIMO伝送を利用して協調マルチポイント送信する送信部と、を具備することを特徴とする。
【0014】
本発明の無線通信方法は、移動端末装置において、下りリンク参照信号を用いてチャネル推定する工程と、得られたチャネル推定値を用いてPMIを選択する工程と、少なくとも前記チャネル推定値及び前記PMIを用いてIQIを測定する工程と、少なくとも前記PMI及び前記IQIを無線基地局装置に送信する工程と、前記無線基地局装置において、前記PMI及び前記IQIを用いてプリコーディングウェイトを生成する工程と、前記プリコーディングウェイトを用いたMIMO伝送を利用して協調マルチポイント送信する工程と、を具備することを特徴とする。なお、本発明において、SLNRプリコーディングを算出するために、協調クラスタ内(CoMPセット内)における無線基地局間でPMIの他にIQIを交換しても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、移動端末装置において少なくともチャネル推定値及びPMIを用いてIQIを測定し、無線基地局装置においてPMI及びIQIを用いてプリコーディングウェイトを生成し、プリコーディングウェイトを用いたMIMO伝送を利用して協調マルチポイント送信するので、協調マルチポイント送信のMIMO伝送において、各無線基地局からの平均送信電力及び移動端末装置での瞬時量子化誤差を考慮したIQIを平均受信SINRとして用いて正確なSLNRプリコーディングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】CS/CB型のCoMPを説明するための図である。
【図2】MIMO伝送を説明するための図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る移動通信システムの構成を説明するための図である。
【図4】上記実施の形態に係る移動端末装置の構成を示すブロック図である。
【図5】上記実施の形態に係る無線基地局装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、下りリンクのCoMP送信について説明する。下りリンクのCoMP送信としては、Coordinated scheduling/Coordinated beamforming(CS/CB)と、Joint processingとがある。Coordinated scheduling/Coordinated beamformingは、図1に示すように、1UEに対して1セルからのみ送信する方法であり、他セルからの干渉や他セルへの干渉を考慮して周波数/空間領域における無線リソースの割り当てを行う方法である。一方、Joint processingは、プリコーディングを適用する複数セル同時送信であり、1UEに対して複数のセルから送信するJoint transmissionと、瞬時にセルを選択するDynamic Cell Selectionとがある。
【0018】
次に、MIMO技術について説明する。
図2に示すMIMOシステムの下りリンクMIMO伝送におけるプリコーディングでは、移動端末装置UEにおいて、各アンテナからの受信信号を用いてチャネル係数を測定し、測定したチャネル係数に基づいて、無線基地局装置eNBの各送信アンテナからの送信データを合成した後のスループットが最大となる位相・振幅制御量(プリコーディングウェイト)に応じたPMI及びRI(Rank Indicator)をプリコーディングコードブックから選択する。そして、この選択したPMI及びRIを、チャネル品質情報CQIとともに上りリンクで無線基地局装置eNBにフィードバックする。無線基地局装置eNBにおいては、送信信号をチャネル符号化及びデータ変調し(AMC:Adaptive Modulation and Coding)、移動端末装置(UE)からフィードバックされたPMI及びRIに基づいて送信データにプリコーディングを行う。これにより、送信アンテナ毎に位相・振幅をそれぞれ制御(シフト)する。その後、位相・振幅シフトされた送信データを各アンテナから送信する。
【0019】
CS/CB型のCoMP送信において、SLNRプリコーディングを行う際に、瞬時CQIを平均受信SINRとして用いると、上述したように、上記式(1)の分子にある送信電力成分が平均ではなく瞬時であり、瞬時CQIが量子化誤差を考慮していないので、正確なプリコーディングウェイトを生成することができない。
【0020】
そこで、本発明者らは、平均の送信電力成分を含み、量子化誤差を補正する新しいフィードバック情報を定義し、このフィードバック情報を用いてSLNRプリコーディングを行うことにより、正確なプリコーディングウェイトを生成することができることを見出し本発明をするに至った。
【0021】
すなわち、本発明の骨子は、少なくともチャネル推定値及びPMIを用いてIQIを測定し、PMI及びIQIを用いてプリコーディングウェイトを生成し、プリコーディングウェイトを用いたMIMO伝送を利用して協調マルチポイント送信することにより、協調マルチポイント送信のMIMO伝送において、各無線基地局からの平均送信電力及び移動端末装置側の量子化誤差を考慮したIQIを用いて正確なSLNRプリコーディングを行うことである。
【0022】
本発明においては、正確なプリコーディングウェイトを生成するために、SLNRプリコーディングの際に、新たに干渉品質指標(IQI:Interference Quality Indicator)を定義する。したがって、本発明においては、下りリンクの協調マルチポイント送信の際に、移動端末装置から無線基地局装置に、フィードバック情報としてPMI,CQIに加えてIQIをフィードバックする。
【0023】
IQIは下記式(3)の通り計算される。また,移動端末装置における受信信号yは所望信号成分および量子化誤差とノイズを含む干渉信号成分から下記式(4)の通り計算される。
式(3)

j:無線基地局装置jの平均送信電力
QEi,j:移動端末装置iにおける無線基地局装置jと移動端末装置iの間のチャネルの量子化誤差
ICI:移動端末装置iでのCoMPセットに属するセルからの干渉を除く干渉
:移動端末装置iの受信機における平均ノイズ
式(4)

:下りリンクのチャネル状態
:移動端末装置iからのPMIフィードバック
【0024】
本発明においては、具体的なフィードバック情報であるIQIを5つの態様で定義する。
【0025】
(第1態様)
この態様においては、IQIを下記式(5)で定義する。
式(5)

avg,j:無線基地局装置jの平均総送信電力
【0026】
上記式(5)において、分子Pavg,jは平均送信電力を示し、ICI+Nは移動端末装置側での他セル(CoMPセット以外のセル)からの干渉+平均ノイズを示し、Pavg,j×‖H−(Fは量子化誤差を示す。
【0027】
このように、IQIの計算式には、各無線基地局からの平均送信電力及び移動端末装置側の量子化誤差の項が含まれているので、IQIは両者を考慮したパラメータである。無線基地局装置においては、このIQIを用いてSLNRプリコーディングを行うので、正確なプリコーディングウェイトを生成することができる。
【0028】
なお、上記式(5)において、Hの代わりに下記式(6)のようなノールムで正規化した正規化Hを用いても良い。
式(6)

【0029】
また、IQIについて、上記式(5)の代わりに下記式(7)を用いても良い。なお、Fは下記式(8)に示すようにノールム1のベクトルである。
式(7)

なお、上記式と同じパラメータの説明は上記式と同様であるので省略する。
式(8)

【0030】
この態様において、IQIの定義は上記式(5)及び式(7)に限定されず、式変換等により実質的に等価な式すべてについて適用することができる。
【0031】
(第2態様)
この態様においては、IQIを下記式(9)で定義する。この態様においては、接続セル(サービングセル)(図1のeNB)についてのIQIと協調セル(図1のeNB)についてのIQIとを別に定義する。すなわち、IQIの計算において、接続セルについては、量子化誤差が小さいとみなして接続セルのIQI計算式で考慮せず、協調セルのみについて量子化誤差を考慮する。
式(9)

なお、上記式と同じパラメータの説明は上記式と同様であるので省略する。
【0032】
このように、IQIの計算式には、各無線基地局からの平均送信電力及び移動端末装置側の量子化誤差の項が含まれているので、IQIは両者を考慮したパラメータである。無線基地局装置においては、このIQIを用いてSLNRプリコーディングを行うので、正確なプリコーディングウェイトを生成することができる。この場合において、接続セルについては、量子化誤差を考慮しないので、IQI計算量を減らすことができる。なお、この態様において、IQIの定義は上記式(9)に限定されず、式変換等により実質的に等価な式すべてについて適用することができる。
【0033】
(第3態様)
この態様においては、IQIを下記式(10)で定義する。この態様においても、接続セル(サービングセル)(図1のeNB)についてのIQIと協調セル(図1のeNB)についてのIQIとを別に定義する。すなわち、IQIの計算において、量子化誤差を考慮する際に、接続セルについては量子化誤差が小さいので量子化誤差の重みを小さくする。具体的には、接続セルについては、チャネル行列Hiの固有分解による固有値の最大値を用いる。
式(10)

なお、上記式と同じパラメータの説明は上記式と同様であるので省略する。
【0034】
(第4態様)
この態様においては、IQIの計算において、下記式(11)で定義する通り量子化誤差を考慮する際に、接続セル及び協調セルについては量子化誤差の重みを小さくする。具体的には、接続セル及び協調セルについては、固有分解による固有値の最大値を用いる。
式(11)

なお、上記式と同じパラメータの説明は上記式と同様であるので省略する。
【0035】
(第5態様)
この態様においては、接続セル及び協調セルのすべてに対して瞬時量子化誤差を考慮しない。
式(12)

【0036】
このように、IQIの計算式には、平均送信電力の項及び移動端末装置における量子化誤差の項が含まれているので、IQIは両者を考慮したパラメータである。無線基地局装置においては、このIQIを用いてSLNRプリコーディングを行うので、正確なプリコーディングウェイトを生成することができる。この場合において、接続セル及び協調セルについては、重み付けを変えて量子化誤差を計算しているので、より正確に量子化誤差を計算することができる。なお、この態様において、IQIの定義は上記式(10)に限定されず、式変換等により実質的に等価な式すべてについて適用することができる。
【0037】
IQIのフィードバック方法としては、移動端末装置において、下りリンク参照信号を用いてIQIを計算し、計算したIQIを移動端末装置が上りリンクで無線基地局装置に送信しても良く(第1フィードバック方法)、移動端末装置において、IQIの計算に必要となる一部の値(移動端末装置でのみ計算できる値)(上記式(5)、上記式(7)、上記式(9)、上記式(10)、上記式(11)における分母の計算値:IQIi,UE)を求め、求めた計算値を移動端末装置が上りリンクで無線基地局装置に送信し、無線基地局装置において、当該計算値を用いてIQIを計算しても良い(第2フィードバック方法)。後者のようなフィードバック方法を採ることにより、フィードバック情報量を削減することができる。
【0038】
後者のようなフィードバック方法において、例えば、第1態様では、移動端末装置がフィードバックする計算値IQIi,UEは下記式(13)に示す値である。この計算値IQIi,UEを無線基地局装置に送信する。無線基地局装置においては、無線基地局装置jの平均総送信電力(Pavg,j)とが既知である(クラスタ内にある無線基地局間情報交換などにより)ので、このパラメータを用いてIQIi,eNB=IQIを求める(下記式(14))。
式(13)

式(14)

【0039】
同様に、第2態様では、移動端末装置がフィードバックする計算値IQIi,UEは上記式(9)の分母で計算される値である。この計算値IQIi,UE(接続セル及び協調セル)を無線基地局装置に送信する。無線基地局装置においては、無線基地局装置iの平均総送信電力(Pavg,j)とが既知であるので、このパラメータを用いてIQIi,eNB=IQIを求める。また、同様に、第3態様では、移動端末装置がフィードバックする計算値IQIi,UEは上記式(8)の分母で計算される値である。この計算値IQIi,UE(接続セル及び協調セル)を無線基地局装置に送信する。無線基地局装置においては、無線基地局装置iの平均総送信電力(Pavg,j)とが既知であるので、このパラメータを用いてIQIi,eNB=IQIを求める。
【0040】
上述した第1態様〜第5態様において、量子化誤差を考慮したIQIの計算では、瞬時値を用いている。IQIを用いてプリコーディングウェイトを生成する場合に、さらに精度を高くするためには、IQI値を時間平均化することが望ましい。具体的には、下記式(15)に示すように、時刻TにおけるIQIの平均値及び時刻T+1におけるIQI瞬時値を用いて、時刻T+1におけるIQIの平均値(時間平均値)を求めて、この時間平均値を無線基地局装置にフィードバックする。
【0041】
式(15)

(IQIT+1:サブフレーム(T+1)におけるIQIの瞬時値
(IQIi,avgT+1:IQIのサブフレーム(T+1)における平均値
T+1:平均化の時間窓の長さ
【0042】
IQIの時間平均化については、移動端末装置側で行っても良く、無線基地局装置側で行っても良い。すなわち、移動端末装置において、IQI瞬時値を求めて、このIQI瞬時値を無線基地局装置にフィードバックし、無線基地局装置において、上記式(15)に示すように、IQIの時間平均化を行っても良い。なお、一般的には、IQIの時間平均区間の方がCQIの時間平均区間よりも長い。
【0043】
また、下記式(16)に示すように、時刻T+1におけるIQI瞬時値と時刻TにおけるIQI平均値とについて重み付けをして平均化しても良い。この場合において、平均値に比較し瞬時値への重み付けを高くしたい場合には、時刻T+1におけるIQI瞬時値の重みを大きくし、瞬時値に比較し平均値への重み付けを高くしたい場合には、時刻TにおけるIQI平均値の重みを大きくする。これにより、αの値を変化させて、瞬時値及び平均値に対する重み付けを調整することができる。
式(16)

【0044】
このように、IQIを時間平均化することにより、IQI算出精度を向上することができ、SLNRプリコーディングウェイトの精度を向上することができる。
【0045】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。ここでは、LTE−Aシステムに対応する無線基地局装置及び移動端末装置を用いる場合について説明する。
【0046】
図3を参照しながら、本発明の一実施の形態に係る移動端末装置(UE:User Equipment)10及び無線基地局装置(eNodeB)20を有する移動通信システム1について説明する。図3は、本発明の一実施の形態に係る移動端末装置10及び無線基地局装置20を有する移動通信システム1の構成を説明するための図である。なお、図3に示す移動通信システム1は、例えば、LTEシステム又はSUPER 3Gが包含されるシステムである。また、この移動通信システム1は、IMT−Advancedと呼ばれても良いし、4Gと呼ばれても良い。
【0047】
図3に示すように、移動通信システム1は、無線基地局装置20と、この無線基地局装置20と通信する複数の移動端末装置10(10、10、10、・・・10、nはn>0の整数)とを含んで構成されている。無線基地局装置20は、上位局装置30と接続され、この上位局装置30は、コアネットワーク40と接続される。移動端末装置10は、セル50において無線基地局装置20と通信を行っている。なお、上位局装置30には、例えば、アクセスゲートウェイ装置、無線ネットワークコントローラ(RNC)、モビリティマネジメントエンティティ(MME)等が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0048】
各移動端末装置(10、10、10、・・・10)は、同一の構成、機能、状態を有するので、以下においては、特段の断りがない限り移動端末装置10として説明を進める。また、説明の便宜上、無線基地局装置20と無線通信するのは移動端末装置10であるものとして説明するが、より一般的には移動端末装置も固定端末装置も含むユーザ装置(UE)でよい。
【0049】
移動通信システム1においては、無線アクセス方式として、下りリンクについてはOFDMA(直交周波数分割多元接続)が、上りリンクについてはSC−FDMA(シングルキャリア−周波数分割多元接続)が適用される。OFDMAは、周波数帯域を複数の狭い周波数帯域(サブキャリア)に分割し、各サブキャリアにデータをマッピングして通信を行うマルチキャリア伝送方式である。SC−FDMAは、システム帯域を端末毎に1つ又は連続したリソースブロックからなる帯域に分割し、複数の端末が互いに異なる帯域を用いることで、端末間の干渉を低減するシングルキャリア伝送方式である。
【0050】
ここで、LTEシステムにおける通信チャネルについて説明する。下りリンクについては、各移動端末装置10で共有されるPDSCHと、下りL1/L2制御チャネル(PDCCH、PCFICH、PHICH)とが用いられる。このPDSCHにより、ユーザデータ、すなわち、通常のデータ信号が伝送される。送信データは、このユーザデータに含まれる。なお、無線基地局装置20で移動端末装置10に割り当てたCCやスケジューリング情報は、L1/L2制御チャネルにより移動端末装置10に通知される。
【0051】
上りリンクについては、各移動端末装置10で共有して使用されるPUSCH(Physical Uplink Shared Channel)と、上りリンクの制御チャネルであるPUCCH(Physical Uplink Control Channel)とが用いられる。このPUSCHにより、ユーザデータが伝送される。また、PUCCHにより、下りリンクの無線品質情報(CQI:Channel Quality Indicator)などが伝送される。
【0052】
図4は、本実施の形態に係る移動端末装置10の構成を示すブロック図である。図5は、本実施の形態に係る無線基地局装置20の構成を示すブロック図である。なお、図4及び図5に示す移動端末装置10及び無線基地局装置20の構成は、本発明を説明するために簡略化したものであり、それぞれ通常の無線基地局装置及び移動端末装置が有する構成は備えているものとする。
【0053】
図4に示す移動端末装置10において、無線基地局装置20から送出された送信信号は、受信アンテナRX#1〜RX#Nにより受信され、デュプレクサ(Duplexer)101#1〜101#Nにて送信経路と受信経路とに電気的に分離された後、RF受信回路102#1〜102#Nに出力される。そして、RF受信回路102#1〜102#Nにて、無線周波数信号からベースバンド信号に変換する周波数変換処理が施される。周波数変換処理が施されたベースバンド信号は、サイクリックプレフィクス(CP)除去部103#1〜103#NにてCPが除去された後、高速フーリエ変換部(FFT部)104#1〜104#Nに出力される。受信タイミング推定部105は、受信信号に含まれるリファレンス信号から受信タイミングを推定し、その推定結果をCP除去部103#1〜103#Nに通知する。FFT部104#1〜104#Nは、入力された受信信号にフーリエ変換を施し、時系列の信号から周波数領域の信号に変換する。周波数領域の信号に変換された受信信号は、データチャネル信号復調部106に出力される。
【0054】
データチャネル信号復調部106は、FFT部104#1〜104#Nから入力された受信信号を、例えば、平均2乗誤差最小(MMSE:Minimum Mean Squared Error)や最尤推定検出(MLD:Maximum Likelihood Detection)信号分離法により分離する。これにより、無線基地局装置20から到来した受信信号は、ユーザ#1〜ユーザ#kに関する受信信号に分離され、移動端末装置10のユーザ(ここでは、ユーザkとする)に関する受信信号が抽出される。チャネル推定部107は、FFT部104#1〜104#Nから出力された受信信号に含まれるリファレンス信号からチャネル状態を推定し、推定したチャネル状態をデータチャネル信号復調部106と、後述するチャネル品質測定部110及びPMI選択部111とに通知する。データチャネル信号復調部106においては、通知されたチャネル状態に基づいて、受信信号を上述したMLD信号分離法により分離する。これにより、ユーザkに関する受信信号が復調される。
【0055】
なお、データチャネル信号復調部106による復調処理に先だって、抽出されたユーザkに関する受信信号は、不図示のサブキャリアデマッピング部にてデマッピングされて時系列の信号に戻されているものとする。データチャネル信号復調部106で復調されたユーザkに関する受信信号は、チャネル復号部108に出力される。そして、チャネル復号部108にてチャネル復号処理が施されることで送信信号#kが再生される。
【0056】
IQI測定部109は、IQI測定部109は、少なくともチャネル推定部107から通知されたチャネル状態(チャネル推定値)及び後述するPMI選択部111で選択されたPMIを用いてIQIを測定する。すなわち、IQI測定部109は、少なくとも各無線基地局装置の平均送信電力及び移動端末装置側の量子化誤差を用いて上記式によりIQIを求める。例えば、第1態様においては、接続セルのIQI及び協調セルのIQIを上記式(5)又は式(7)により算出する。また、第2態様においては、接続セルのIQI及び協調セルのIQIを上記式(9)により算出する。第3態様においては、接続セルのIQI及び協調セルのIQIを上記式(10)により算出する。第4態様においては、接続セルのIQI及び協調セルのIQIを上記式(11)により算出する。
【0057】
IQI測定部109は、上述した第1フィードバック方法においては、少なくともチャネル状態及びPMIを用いて上記式(5)、式(7)、式(9)、式(10)、式(11)によりIQIを算出し、上述した第2フィードバック方法においては、少なくともチャネル状態及びPMIを用いて上記式(5)、式(7)、式(9)、式(10)、式(11)の分母の計算値(IQIi,UE)を算出する。IQI測定部109は、算出されたIQIあるいはIQIi,UEをフィードバック制御信号生成部112に出力する。また、IQI測定部109は、必要に応じて、上記式(15)、式(16)によりIQIを時間平均化する。
【0058】
チャネル品質測定部110は、チャネル推定部107から通知されたチャネル状態に基づいてチャネル品質(CQI)を測定する。そして、測定結果であるCQIをフィードバック制御信号生成部110に出力する。PMI選択部111は、チャネル推定部107から通知されたチャネル状態に基づいて、PMIを選択する。そして、選択したPMIをフィードバック制御信号生成部112に出力する。
【0059】
フィードバック制御信号生成部112においては、IQI測定部109からのIQIあるいはIQIi,UE、チャネル品質測定部110からのCQI、及びPMI選択部111からのPMIを用いて、これらを無線基地局装置20にフィードバックする制御信号(例えば、PUCCH)が生成される。フィードバック制御信号生成部112で生成された制御信号は、マルチプレクサ(MUX)117に出力される。
【0060】
上位レイヤから送出されたユーザ#kに関する送信データ#kは、チャネル符号化部113によりチャネル符号化された後、データ変調部114にてデータ変調される。データ変調部114にてデータ変調された送信データ#kは、不図示の直並列変換部で、時系列の信号から周波数領域の信号に変換されてサブキャリアマッピング部115に出力される。
【0061】
サブキャリアマッピング部115においては、送信データ#kを、無線基地局装置20から指示されたスケジュール情報に応じてサブキャリアにマッピングする。このとき、サブキャリアマッピング部115は、不図示の参照信号生成部により生成された参照信号#kを、送信データ#kと共にサブキャリアにマッピング(多重)する。このようにしてサブキャリアにマッピングされた送信データ#kがプリコーディング乗算部116に出力される。
【0062】
プリコーディング乗算部116は、PMI選択部111で選択されたPMIから得られるプリコーディングウェイトに基づいて、受信アンテナRX#1〜RX#N毎に送信データ#kを位相及び/又は振幅シフトする。プリコーディング乗算部116により位相及び/又は振幅シフトされた送信データ#kは、マルチプレクサ(MUX)117に出力される。
【0063】
マルチプレクサ(MUX)117においては、位相及び/又は振幅シフトされた送信データ#kと、フィードバック制御信号生成部112により生成された制御信号とを合成し、受信アンテナRX#1〜RX#N毎の送信信号を生成する。マルチプレクサ(MUX)117により生成された送信信号は、逆高速フーリエ変換部118#1〜118#Nにて逆高速フーリエ変換して周波数領域の信号から時間領域の信号に変換された後、CP付加部119#1〜119#NでCPが付加されてRF送信回路119#1〜119#Nへ出力される。そして、RF送信回路120#1〜120#Nで無線周波数帯に変換する周波数変換処理が施された後、デュプレクサ(Duplexer)101#1〜101#Nを介して受信アンテナRX#1〜RX#Nに出力され、受信アンテナRX#1〜RX#Nから上りリンクで無線基地局装置20に送出される。
【0064】
図5に示す無線基地局装置20において、不図示のスケジューラは、後述するチャネル推定部215#1〜215#kから与えられるチャネル推定値に基づいて多重するユーザ数(多重ユーザ数)を決定する。そして、各ユーザに対する上下リンクのリソース割り当て内容(スケジューリング情報)を決定し、ユーザ#1〜#kに対する送信データ#1〜#kを対応するチャネル符号化部201#1〜201#kに送出する。
【0065】
送信データ#1〜#kは、チャネル符号化部201#1〜201#kでチャネル符号化された後、データ変調部202#1〜202#kに出力され、データ変調される。この際、チャネル符号化及びデータ変調は、後述するCQI処理部220#1〜220#kから与えられるチャネル符号化率及び変調方式に基づいて行われる。データ変調部202#1〜202#kでデータ変調された送信データ#1〜#kは、不図示の離散フーリエ変換部で逆フーリエ変換され、時系列の信号から周波数領域の信号に変換されてサブキャリアマッピング部203に出力される。
【0066】
サブキャリアマッピング部203においては、送信データ#1〜#kを、スケジューラから与えられるスケジュール情報に応じてサブキャリアにマッピングする。このとき、サブキャリアマッピング部203は、不図示の参照信号生成部から入力される参照信号#1〜#kを、送信データ#1〜#kと共にサブキャリアにマッピング(多重)する。このようにしてサブキャリアにマッピングされた送信データ#1〜#kがプリコーディング乗算部204#1〜204#kに出力される。
【0067】
プリコーディング乗算部204#1〜204#kは、後述するプリコーディングウェイト生成部221から与えられるプリコーディングウェイトに基づいて、送信アンテナTX#1〜TX#N毎に送信データ#1〜#kを位相及び/又は振幅シフトする(プリコーディングによる送信アンテナTX#1〜送信アンテナTX#Nの重み付け)。プリコーディング乗算部204#1〜204#kにより位相及び/又は振幅シフトされた送信データ#1〜#kは、マルチプレクサ(MUX)205に出力される。
【0068】
マルチプレクサ(MUX)205においては、位相及び/又は振幅シフトされた送信データ#1〜#kを合成し、送信アンテナTX#1〜TX#N毎の送信信号を生成する。マルチプレクサ(MUX)205により生成された送信信号は、逆高速フーリエ変換部206#1〜206#Nにて逆高速フーリエ変換して周波数領域の信号から時間領域の信号に変換される。そして、サイクリックプレフィクス(CP)付加部207#1〜207#NにてCPが付加された後、RF送信回路208#1〜208#Nへ出力される。そして、RF送信回路208#1〜208#Nで無線周波数帯に変換する周波数変換処理が施された後、デュプレクサ(Duplexer)209#1〜209#Nを介して送信アンテナTX#1〜TX#Nに出力され、送信アンテナTX#1〜TX#Nから下りリンクで移動端末装置10に送出される。
【0069】
一方、移動端末装置10から上りリンクで送出された送信信号は、送信アンテナTX#1〜TX#Nにより受信され、デュプレクサ(Duplexer)209#1〜209#Nにて送信経路と受信経路とに電気的に分離された後、RF受信回路210#1〜210#Nに出力される。そして、RF受信回路210#1〜210#Nにて、無線周波数信号からベースバンド信号に変換する周波数変換処理が施される。周波数変換処理が施されたベースバンド信号は、CP除去部211#1〜211#NにてCPが除去された後、高速フーリエ変換部(FFT部)212#1〜212#Nに出力される。受信タイミング推定部213は、受信信号に含まれるリファレンス信号から受信タイミングを推定し、その推定結果をCP除去部211#1〜211#Nに通知する。FFT部212#1〜212#Nは、入力された受信信号にフーリエ変換を施し、時系列の信号から周波数領域の信号に変換する。これらの周波数領域の信号に変換された受信信号は、データチャネル信号分離部214#1〜214#kに出力される。
【0070】
データチャネル信号分離部214#1〜214#kは、FFT部212#1〜212#kから入力された受信信号を、例えば、平均2乗誤差最小(MMSE:Minimum Mean Squared Error)や最尤推定検出(MLD:Maximum Likelihood Detection)信号分離法により分離する。これにより、移動端末装置10から到来した受信信号は、ユーザ#1〜ユーザ#kに関する受信信号に分離される。チャネル推定部215#1〜215#kは、FFT部212#1〜212#kから出力された受信信号に含まれるリファレンス信号からチャネル状態を推定し、推定したチャネル状態をデータチャネル信号分離部214#1〜214#k及び制御チャネル信号復調部216#1〜216#kに通知する。データチャネル信号分離部214#1〜214#kにおいては、通知されたチャネル状態に基づいて、受信信号を上述したMLD信号分離法により分離する。
【0071】
データチャネル信号分離部214#1〜214#kにより分離されたユーザ#1〜ユーザ#kに関する受信信号は、不図示のサブキャリアデマッピング部にてデマッピングされて時系列の信号に戻された後、不図示のデータ復調部でデータ復調される。そして、チャネル復号部217#1〜217#kにてチャネル復号処理が施されることで送信信号#1〜送信信号#kが再生される。
【0072】
制御チャネル信号復調部216#1〜216#kは、FFT部212#1〜212#kから入力された受信信号に含まれる制御チャネル信号(例えば、PDCCH)を復調する。この際、制御チャネル信号復調部216#1〜216#kは、それぞれユーザ#1〜ユーザ#kに対応する制御チャネル信号を復調する。この際、制御チャネル信号復調部216#1〜216#kにおいては、チャネル推定部215#1〜215#kから通知されたチャネル状態に基づいて制御チャネル信号を復調する。制御チャネル信号復調部216#1〜216#kにより復調された各制御チャネル信号は、PMI処理部218#1〜218#k、IQI処理部219#1〜219#k、及びCQI処理部220#1〜220#kとに出力される。
【0073】
PMI処理部218#1〜218#kは、制御チャネル信号復調部216#1〜216#kから入力された各制御チャネル信号(例えば、PUCCH)に含まれる情報からPMIを抽出する。PMI処理部218#1〜218#kにより再生されたPMIは、プリコーディングウェイト生成部221に出力される。
【0074】
IQI処理部219#1〜219#kは、制御チャネル信号復調部216#1〜216#kから入力された各制御チャネル信号(例えば、PUCCH)に含まれる情報からIQIあるいはIQIi,UEを抽出する。また、IQI処理部219#1〜219#kは、上述した第1フィードバック方法においては、抽出したIQIをプリコーディングウェイト生成部221に出力する。IQI処理部219#1〜219#kは、上述した第2フィードバック方法においては、移動端末装置(UE)からの少なくともチャネル推定値及びPMIを含むIQI測定に必要な情報(上記式(5)、式(7)、式(9)、式(10)、式(11)に含まれるパラメータ)を用いてIQIを求める。すなわち、IQI処理部219#1〜219#kは、抽出したIQIi,UEを用いて上記式(5)、式(7)、式(9)、式(10)、式(11)によりIQIを算出し、IQIをプリコーディングウェイト生成部221に出力する。
【0075】
後者の場合、IQI処理部219#1〜219#kは、例えば、第1態様においては、接続セルのIQI及び協調セルのIQIを上記式(5)又は式(7)により算出する。また、第2態様においては、接続セルのIQI及び協調セルのIQIを上記式(9)により算出する。第3態様においては、接続セルのIQI及び協調セルのIQIを上記式(10)により算出する。また、IQI処理部219#1〜219#kは、必要に応じて、上記式(15)、式(16)によりIQIを時間平均化する。
【0076】
CQI処理部220#1〜220#kは、制御チャネル信号復調部216#1〜216#kから入力された各制御チャネル信号(例えば、PUCCH)に含まれる参照信号からCQIを測定すると共に、常にCQI情報を最新の状態に更新する。CQI処理部220#1〜220#kに更新されるCQI情報は、それぞれチャネル符号化部201#1〜201#k、データ変調部202#1〜202#kに出力される。
【0077】
プリコーディングウェイト生成部221は、PMI処理部218#1〜218#kから出力されたPMI及びIQI処理部219#1〜219#kから出力されたIQIを用いて、送信データ#1〜#kに対する位相及び/又は振幅シフト量を示すプリコーディングウェイトを生成する。生成された各プリコーディングウェイトは、プリコーディング乗算部204#1〜204#kに出力され、送信データ#1〜送信データ#kのプリコーディングに利用される。
【0078】
プリコーディングウェイト生成部220においては、以下のようにしてプリコーディングウェイトを生成する。まず、下記式(17)に示すようにPMIをチャネル係数とする(協調クラスタ内の無線基地局装置が3つ移動端末側の受信アンテナ数を2つと前提した場合)。
式(17)

【0079】
次いで、式(17)で得られたチャネル係数とIQIとから、下記式(18)により、接続セル(図1のeNB)及び協調セル(図1のeNB)のチャネル共分散行列を求める。
式(18)
(接続セル)

(協調セル)

【0080】
その後、接続セル及び協調セルのチャネル共分散行列から、下記式(19)によりSLNRプリコーディングにおけるプリコーディングウェイトを求める。
式(19)

【0081】
(第1フィードバック方法)
上記構成を有する移動通信システムにおいては、移動端末装置(UE)において、チャネル推定部107で下りリンク参照信号を用いてチャネル推定する。そして、PMI選択部111において、チャネル推定部107で得られたチャネル推定値を用いてPMIを選択する。次いで、IQI測定部109において、少なくともチャネル推定値及びPMIを用いてIQIを測定する。このとき、IQI測定部109は、上記第1態様〜第3態様にしたがって式(5)、式(7)、式(9)、式(10)、式(11)によりIQIを算出する。このIQIは無線基地局装置eNBにフィードバックされる。
【0082】
無線基地局装置eNBにおいては、プリコーディングウェイト生成部221で、フィードバックされたPMI及びIQIを用いてプリコーディングウェイトを生成する。このとき、プリコーディングウェイト生成部221は、上記式(17)〜式(19)によりプリコーディングウェイトを生成する。次いで、無線基地局装置eNBは、得られたプリコーディングウェイトを用い、MIMO伝送を利用して協調マルチポイント送信する。
【0083】
(第2フィードバック方法)
上記構成を有する移動通信システムにおいては、移動端末装置(UE)において、チャネル推定部107で下りリンク参照信号を用いてチャネル推定する。そして、PMI選択部111において、チャネル推定部107で得られたチャネル推定値を用いてPMIを選択する。次いで、IQI測定部109において、少なくともチャネル推定値及びPMIを用いてIQIi,UEを算出する。このとき、IQI測定部109は、上記第1態様〜第3態様にしたがって式(5)、式(7)、式(9)、式(10)、式(11)によりIQIi,UEを算出する。このIQIi,UEは無線基地局装置eNBにフィードバックされる。
【0084】
無線基地局装置eNBにおいては、IQI処理部219でIQIi,UEを用いてIQIを測定する。このとき、IQI処理部219は、上記第1態様〜第3態様にしたがって式(5)、式(7)、式(9)、式(10)、式(11)によりIQIを算出する。次いで、プリコーディングウェイト生成部221で、フィードバックされたPMI及び算出されたIQIを用いてプリコーディングウェイトを生成する。このとき、プリコーディングウェイト生成部221は、上記式(17)〜式(19)によりプリコーディングウェイトを生成する。次いで、無線基地局装置eNBは、得られたプリコーディングウェイトを用い、MIMO伝送を利用して協調マルチポイント送信する。
【0085】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0086】
1 移動通信システム
10 移動端末装置
20 無線基地局装置
30 上位局装置
40 コアネットワーク
50 セル
101,209 デュプレクサ(Duplexer)
102,210 RF受信回路
103,211 CP除去部
104,212 FFT部
105,213 受信タイミング推定部
106 データチャネル信号復調部
107,215 チャネル推定部
108,217 チャネル復号部
109 IQI測定部
110 チャネル品質測定部
111 PMI選択部
112 フィードバック制御信号生成部
113,201 チャネル符号化部
114,202 データ変調部
115,203 サブキャリアマッピング部
116,204 プリコーディング乗算部
117,205 マルチプレクサ(MUX)
118,206 IFFT部
120,208 RF送信回路
214 データチャネル信号分離部
216 制御チャネル信号復調部
218 PMI処理部
219 IQI処理部
220 CQI処理部
221 プリコーディングウェイト生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下りリンク参照信号を用いてチャネル推定するチャネル推定部と、前記チャネル推定部で得られたチャネル推定値を用いてPMI(Precoding Matrix Indicator)を選択するPMI選択部と、少なくとも前記チャネル推定値及び前記PMIを用いてIQI(Interference Quality Indicator)を測定するIQI測定部と、少なくとも前記PMI及び前記IQIを無線基地局装置に送信する送信部と、を具備することを特徴とする移動端末装置。
【請求項2】
前記IQI測定部は、少なくとも各無線基地局装置の平均送信電力及び移動端末装置側の量子化誤差を用いてIQIを求めることを特徴とする請求項1記載の移動端末装置。
【請求項3】
前記IQI測定部は、下記式(5)を用いてIQIを求めることを特徴とする請求項1記載の移動端末装置。
式(5)

:下りリンクのチャネル状態
:移動端末装置iからのPMIフィードバック
avg,i:無線基地局装置iの平均総送信電力
ICI:移動端末装置iでのCoMPセットに属するセルからの干渉を除く干渉
N:平均ノイズ
【請求項4】
前記IQI測定部は、下記式(9)を用いてIQIを求めることを特徴とする請求項1記載の移動端末装置。
式(9)

:下りリンクのチャネル状態
:移動端末装置iからのPMIフィードバック
avg,j:無線基地局装置jの平均総送信電力
ICI:移動端末装置iでのCoMPセットに属するセルからの干渉を除く干渉
N:平均ノイズ
【請求項5】
前記IQI測定部は、下記式(10)を用いてIQIを求めることを特徴とする請求項1記載の移動端末装置。
式(10)

:下りリンクのチャネル状態
:移動端末装置iからのPMIフィードバック
avg,i:無線基地局装置iの平均総送信電力
ICI:移動端末装置iでのCoMPセットに属するセルからの干渉を除く干渉
:移動端末装置iの受信機における平均ノイズ
【請求項6】
前記IQI測定部は、下記式(15)を用いて時間平均化されたIQIを求めることを特徴とする請求項1記載の移動端末装置。
式(15)

(IQIT+1:サブフレーム(T+1)におけるIQIの瞬時値
(IQIi,avgT+1:IQIのサブフレーム(T+1)における平均値
T+1:平均化の時間窓の長さ
【請求項7】
前記IQI測定部は、下記式(16)を用いて重み付けをして時間平均化されたIQIを求めることを特徴とする請求項1記載の移動端末装置。
式(16)

【請求項8】
移動端末装置からフィードバックされたPMI(Precoding Matrix Indicator)及びIQI(Interference Quality Indicator)を用いてプリコーディングウェイトを生成するプリコーディングウェイト生成部と、前記プリコーディングウェイトを用いたMIMO伝送を利用して協調マルチポイント送信する送信部と、を具備することを特徴とする無線基地局装置。
【請求項9】
移動端末装置からの少なくとも前記チャネル推定値及び前記PMIを含むIQI測定に必要な情報を用いてIQIを求めるIQI処理部をさらに具備することを特徴とする請求項8記載の無線基地局装置。
【請求項10】
前記IQI処理部は、下記式(15)を用いて時間平均化されたIQIを求めることを特徴とする請求項8記載の無線基地局装置。
式(15)

(IQIT+1:サブフレーム(T+1)におけるIQIの瞬時値
(IQIi,avgT+1:IQIのサブフレーム(T+1)における平均値
T+1:平均化の時間窓の長さ
【請求項11】
前記IQI処理部は、下記式(16)を用いて重み付けをして時間平均化されたIQIを求めることを特徴とする請求項8記載の無線基地局装置。
式(16)

【請求項12】
移動端末装置において、下りリンク参照信号を用いてチャネル推定する工程と、得られたチャネル推定値を用いてPMI(Precoding Matrix Indicator)を選択する工程と、少なくとも前記チャネル推定値及び前記PMIを用いてIQI(Interference Quality Indicator)を測定する工程と、少なくとも前記PMI及び前記IQIを無線基地局装置に送信する工程と、
前記無線基地局装置において、前記PMI及び前記IQIを用いてプリコーディングウェイトを生成する工程と、前記プリコーディングウェイトを用いたMIMO伝送を利用して協調マルチポイント送信する工程と、を具備することを特徴とする無線通信方法。
【請求項13】
少なくとも各無線基地局装置の平均送信電力及び移動端末装置側の量子化誤差を用いてIQIを求めることを特徴とする請求項12記載の無線通信方法。
【請求項14】
下記式(5)を用いてIQIを求めることを特徴とする請求項12記載の無線通信方法。
式(5)

:下りリンクのチャネル状態
:移動端末装置iからのPMIフィードバック
avg,j:無線基地局装置jの平均総送信電力
ICI:移動端末装置iでのCoMPセットに属するセルからの干渉を除く干渉
:移動端末装置iの受信機における平均ノイズ
【請求項15】
下記式(9)を用いてIQIを求めることを特徴とする請求項12記載の無線通信方法。
式(9)

:下りリンクのチャネル状態
:移動端末装置iからのPMIフィードバック
avg,j:無線基地局装置jの平均総送信電力
ICI:移動端末装置iでのCoMPセットに属するセルからの干渉を除く干渉
:移動端末装置iの受信機における平均ノイズ
【請求項16】
下記式(10)を用いてIQIを求めることを特徴とする請求項12記載の無線通信方法。
式(10)

:下りリンクのチャネル状態
:移動端末装置iからのPMIフィードバック
avg,j:無線基地局装置jの平均総送信電力
ICI:移動端末装置iでのCoMPセットに属するセルからの干渉を除く干渉
:移動端末装置iの受信機における平均ノイズ
【請求項17】
移動端末装置において、下りリンク参照信号を用いてチャネル推定する工程と、得られたチャネル推定値を用いてPMI(Precoding Matrix Indicator)を選択する工程と、少なくとも前記チャネル推定値及び前記PMIを用いてIQI(Interference Quality Indicator)を測定する工程と、少なくとも前記PMI及び前記IQIを無線基地局装置に送信する工程と、
前記無線基地局装置において、協調クラスタ内に含まれる各無線基地局装置にフィードバックされた前記PMI及びIQIを無線基地局装置間で交換する工程と、協調クラスタ内の各無線基地局装置にある自基地局及び協調基地局のPMI及びIQIを用いてプリコーディングウェイトを生成する工程と、前記プリコーディングウェイトを用いたMIMO伝送を利用して協調マルチポイント送信する工程と、を具備することを特徴とする無線通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−186631(P2012−186631A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47972(P2011−47972)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】