説明

移動補助装置および吊り下げ型移動システム

【課題】天井および床の状況に左右されずに対象を移動させることができる移動補助装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る移動補助装置100は、本体が鉛直上方から天井ワイヤ301A〜301Dによって吊り上げられており、移動位置を決定するための傾き情報を受け付ける傾き受信部112と、天井ワイヤ301A〜301Dの各の長さを互いに独立に調節する天井ワイヤ駆動部107A〜107Dと、傾き情報を利用して天井ワイヤ駆動部107A〜107Dの駆動を制御する制御部101と、移動させる介護者500を接続するための吊り上げワイヤ駆動部111とを備えている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動対象物を移動させる際に利用する移動補助装置、および移動補助装置を含む吊り下げ型移動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、重いものを動かすには多大な労力を要する。特に、被介護者を移動させることは容易ではなく、介護者は肉体的なストレスを受けることが多い。また、テレビおよびソファなどの生活を支援する家具および家電を移動させることも容易ではない。そのため、今日の一般的な住宅では、家具および家電を移動させて自由にレイアウト変更することが難しい。
【0003】
このような問題を解決するために、天井面を利用した、被介護者および生活支援具の運搬方法が検討されてきている。
【0004】
例えば、特許文献1には、天井走行リフトに関する技術が開示されている。特許文献1に記載の天井走行リフトは、部屋の両側壁に水平に平行に取り付けられた2本の固定レールに対して水平方向90°の向きで配置された、1本の移動レールに取り付けられている。これらのレールを利用してリフトが自由に移動することによって、空間の任意の位置に被介護者を移動させることができる。
【0005】
また、特許文献2には、生活支援具移動装置に関する技術が開示されている。特許文献2に記載の生活支援具移動装置は、家電製品などの生活支援具と天井または壁面との間に働く引力を利用し、生活支援具を天井または壁面に保持することを可能にしている。さらに、車輪を利用することで、生活支援具を天井または壁面に這わせて移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−677号公報(平成8年1月9日公開)
【特許文献2】特開2004−83260号公報(平成16年3月18日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の天井面を利用した運搬方法には、以下のような問題がある。
【0008】
特許文献1に記載の天井走行リフトでは、壁面にレール構造を敷くために特殊な工事が必要となり、システム導入が大がかりになってしまう。さらに、壁面に突起物等がある場合は、その突起物がレール構造の邪魔になってしまい、システムを利用できない。
【0009】
特許文献2に記載の生活支援具移動装置では、天井面または壁面全体に引力を持たせなければならない。また、車輪を接触させて移動させるため天井面や壁面がフラットでなければならない。
【0010】
そこで、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、天井および床の状況に左右されずに対象を移動させることができる移動補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る移動補助装置は、上記課題を解決するために、本体が鉛直上方から複数のワイヤによって吊り上げられる移動補助装置であって、移動位置を決定するための移動制御情報を受け付ける制御受付手段と、上記複数のワイヤの各の長さを互いに独立に調節する複数のワイヤ駆動手段と、上記移動制御情報を利用して上記複数のワイヤ駆動手段の駆動を制御する制御手段と、移動させる対象を接続するための対象接続手段とを備えている構成である。
【0012】
上記構成によれば、移動補助装置は、使用の際に鉛直上方から複数のワイヤによって吊り上げられる。移動補助装置は、制御受付手段と、複数のワイヤ駆動手段と、制御手段と、対象接続手段とを備えている。制御受付手段は、移動位置を決定するための移動制御情報を受け付ける。制御手段は、移動制御情報を利用して複数のワイヤ駆動手段の各の駆動を制御する。ワイヤ駆動手段は、制御手段の制御を受け、複数のワイヤの各の長さを互いに独立に調節する。移動補助装置を吊り上げている複数のワイヤの長さがそれぞれ変化することにより、ワイヤによって吊り上げられている移動補助装置は、移動制御情報によって決定される空間上の任意の位置へ動くことができる。したがって、移動させたい対象を対象接続手段に接続することによって、当該対象を所望の位置に移動させることができる。このとき、移動補助装置は、本体を吊り上げている複数のワイヤの各の長さを調節することにより本体の空間上での位置を変化させている。そのため、移動補助装置は、天井面および壁面の状態に影響されることなく、移動することができる。
【0013】
また、本発明に係る移動補助装置は、上記本体が水平であるかを検知する水平検知手段をさらに備えており、上記制御手段は、上記水平検知手段の検知結果に基づき上記本体が水平となる上記複数のワイヤの各の長さを算出し、算出結果に基づき上記ワイヤ駆動手段の駆動を制御することが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、移動補助装置は、移動補助装置本体が水平に保たれているかどうかを検知できる。移動補助装置は、この検知結果に基づき、移動補助装置本体が水平になるようなそれぞれのワイヤの長さを算出する。移動補助装置は、算出結果に基づきワイヤ駆動手段の駆動を制御して、各ワイヤの長さを調節する。これにより、移動補助装置本体が水平に保たれていない場合には、移動補助装置本体が水平になるようにワイヤの長さが適宜調節される。したがって、より安定して対象物を移動させることができる。
【0015】
また、本発明に係る移動補助装置は、移動の障害となる障害物の有無を検知する障害物検知手段をさらに備えており、上記制御手段は、上記障害物検知手段の検知結果に基づき上記本体および上記対象が上記障害物と接触しない位置となる上記複数のワイヤの各の長さを算出し、算出結果に基づき上記ワイヤ駆動手段の駆動を制御することが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、移動補助装置は、移動の障害となる障害物の有無を検知できる。移動補助装置は、検知した結果に基づき、移動補助装置本体および移動させている対象が障害物と接触しないよう位置に来るようにそれぞれのワイヤの長さを算出する。移動補助装置は、算出結果に基づきワイヤ駆動手段の駆動を制御して、各ワイヤの長さを調節する。これにより、移動経路に障害物がある場合に、移動補助装置が障害物をよけて移動するようにワイヤの長さが適宜調節される。したがって、より安定して対象物を移動させることができる。
【0017】
また、本発明に係る移動補助装置は、上記対象接続手段に接続されている上記対象の重量を測定する重量測定手段をさらに備えていることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、移動補助装置は、対象の重量の情報を取得し、その情報を利用することができる。したがって、例えば、耐荷重量を超えた場合に移動補助装置の移動を停止させるということが可能となり、安全性が向上する。
【0019】
また、本発明に係る移動補助装置において、上記制御受付手段は、上記本体に取り付けられたボタンであることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、ユーザは移動補助装置に取り付けられたボタンを介して移動補助装置を直接移動制御できるので、例えば移動対象が被介護者である場合に、被介護者自身が移動補助装置の移動を制御できる。
【0021】
また、本発明に係る移動補助装置において、上記制御受付手段は、外部から送信される制御情報を受信する受信手段であることが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、送信手段を備えた送信装置を用いて移動補助装置の移動を制御できるため、移動補助装置の移動を遠隔操作することが可能となる。
【0023】
また、本発明に係る移動補助装置は、上記複数のワイヤの長さが変化することを防止する防止手段をさらに備えていることが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、移動補助装置は、使用しないときに、複数のワイヤの長さが変化することを防止できる。これにより、移動補助装置の相対位置が変化せず、使用しないときに一箇所に固定しておくことができる。
【0025】
また、本発明に係る移動補助装置において、上記移動制御情報は、上記対象の鉛直方向に対する傾きに関する情報であり、上記制御手段は、上記対象の上記傾きが解消される上記複数のワイヤの各の長さを算出し、算出結果に基づき上記ワイヤ駆動手段の駆動を制御することが好ましい。
【0026】
上記構成によれば、移動補助装置は、移動させている対象の鉛直方向に対する傾き度合いを取得し、その傾きが解消されるように、複数のワイヤの各の長さを算出する。移動補助装置は、その算出結果に基づきワイヤ駆動手段の駆動を制御して、各ワイヤの長さを調節する。これにより、移動補助装置は、移動させる対象が鉛直方向に対して傾いている方向に移動することになる。したがって、移動させる対象を移動させたい方向に傾けることにより、移動補助装置の移動を操作できる。
【0027】
また、本発明に係る移動補助装置は、上記本体が水平であるかを検知する水平検知手段を備えており、上記移動制御情報は、上記対象の上記本体に対する傾きに関する情報であり、上記制御手段は、上記本体が水平である場合に、上記対象の上記傾きが解消される上記複数のワイヤの各の長さを算出し、算出結果に基づき上記ワイヤ駆動手段の駆動を制御することが好ましい。
【0028】
上記構成によれば、移動補助装置は、移動させている対象の移動補助装置本体に対する傾き度合いを取得し、その傾きが解消されるように、複数のワイヤの各の長さを算出する。移動補助装置は、その算出結果に基づきワイヤ駆動手段の駆動を制御して、各ワイヤの長さを調節する。これにより、移動補助装置は、移動させる対象が移動補助装置本体に対して傾いている方向に移動することになる。したがって、移動させる対象を移動させたい方向に傾けることにより、移動補助装置の移動を操作できる。なお、移動補助装置本体が水平に保たれている場合にのみ、ワイヤの長さを調節する。そのため、移動補助装置本体が傾くことによって傾きが生じたときに、移動補助装置が移動してしまうことを防ぐことができる。
【0029】
また、本発明に係る移動補助装置において、上記移動制御情報は、上記対象の鉛直方向における位置変化に関する情報であることが好ましい。
【0030】
上記構成によれば、移動制御装置は、対象の鉛直方向における位置変化に関する情報に基づき鉛直方向への移動量を算出し、ワイヤ駆動手段の駆動を制御する。これにより、移動補助装置を水平面と平行な方向に移動させることなく、鉛直方向にのみ、移動させることが可能となる。
【0031】
また、本発明に係る移動補助装置は、上記本体の状況を外部に出力する状況出力手段をさらに備えていることが好ましい。
【0032】
上記構成によれば、移動補助装置は、移動補助装置の状況を外部に出力し、装置本体の状況をユーザに認識させることができる。
【0033】
また、本発明に係る移動補助装置において、上記状況出力手段は、表示手段、音発生手段、光発生手段、振動発生手段および外部装置への送信手段のうちの少なくとも何れかであることが好ましい。
【0034】
上記構成によれば、移動補助装置は、移動補助装置が保持する情報を、表示させるか、音としてユーザに認識させるか、光としてユーザに認識させるか、振動としてユーザに認識させるか、または外部装置へ送信することができる。移動補助装置が勝手に停止するといったエラーが発生したときに、送信手段を備えている場合、遠隔制御用リモコンなどの外部装置にエラー情報を送信することが可能となる。また、表示手段を備えている場合、エラーが発生したことを表示させ、ユーザに認識させることができる。また、音発生手段を備えている場合、エラーが発生したことを音でもってユーザに知らせることができる。また、光発生手段を備えている場合、エラーが発生したことを光でもってユーザに知らせることができる。また、振動発生手段を備えている場合、エラーが発生したことを振動でもってユーザに知らせることができる。いずれの場合においても、エラーが発生したときに、ユーザに注意を促すことができる。
【0035】
さらに、本発明に係る吊り下げ型移動方法は、上記課題を解決するために、鉛直上方から複数のワイヤによって吊り上げられており、移動させる対象を接続している移動補助装置が、該複数のワイヤの各の長さを互いに独立に調節することにより、該移動補助装置の移動を介して該対象を移動させることを特徴とする。
【0036】
上記構成によれば、本発明に係る移動補助装置と同様の効果を奏する。
【0037】
なお、上記移動補助装置を含む吊り下げ型移動システムも本発明の範疇に含まれる。
【0038】
すなわち、本発明に係る吊り下げ型移動システムは、移動補助装置と、補助装置吊り上げ装置と、対象吊り上げ装置とを含む吊り下げ型移動システムであって、上記移動補助装置は、本体が鉛直上方から複数の装置吊り上げワイヤによって吊り上げられており、移動位置を決定するための移動制御情報を受け付ける制御受付手段と、上記複数の装置吊り上げワイヤの各の長さを互いに独立に調節する複数のワイヤ駆動手段と、上記移動制御情報を利用して上記複数のワイヤ駆動手段の駆動を制御する制御手段と、移動させる対象を接続するための対象接続手段と、を備えており、上記補助装置吊り上げ装置は、上記移動補助装置を吊り上げる上記複数の装置吊り上げワイヤと、上記複数のワイヤ駆動手段の各によって制御される、上記複数の装置吊り上げワイヤの各を巻き取る複数の装置吊り上げワイヤ巻取り手段と、を備えており、上記対象吊り上げ装置は、対象を吊り上げる対象吊り上げワイヤと、対象吊り上げワイヤを巻き取る対象吊り上げワイヤ巻取り手段と、を備えており、上記対象吊り上げワイヤまたは上記対象吊り上げワイヤ巻取り手段が上記対象接続手段に接続されている、ことを特徴とする。
【0039】
上記構成によれば、本発明に係る移動補助装置と同様の効果を奏する。
【0040】
また、本発明に係る吊り下げ型移動システムは、上記対象吊り上げ装置は、上記対象吊り上げワイヤの鉛直方向に対する傾きを検出するワイヤ傾き検出手段と、検出した傾きを示す傾き情報を上記移動補助装置に送信する傾き送信手段とを備えており、上記制御受付手段は、上記対象吊り上げ装置から送信される傾き情報を受信し、上記制御手段は、受信した傾き情報に基づき上記傾きが解消される上記複数の装置吊り上げワイヤの各の長さを算出し、算出結果に基づき上記ワイヤ駆動手段の駆動を制御することが好ましい。
【0041】
上記構成によれば、移動補助装置は、対象吊り上げ装置が検出した対象吊り上げワイヤの傾きを示す情報を受信し、受信した情報に基づき、対象吊り上げワイヤの傾きが解消されるように、ワイヤ駆動手段を介して各装置吊り上げワイヤの長さを調節する。これにより、移動補助装置は、対象吊り上げワイヤが傾いている方向に移動することになる。したがって、移動させる対象を吊り上げている対象吊り上げワイヤを移動させたい方向に傾けることにより、移動補助装置の移動を操作できる。
【0042】
また、本発明に係る吊り下げ型移動システムにおいて、上記対象吊り上げ装置は、対象吊り上げワイヤが上記対象吊り上げワイヤの鉛直下方にある対向物に到達しているかを検知する床面検知手段をさらに備えていることが好ましい。
【0043】
上記構成によれば、対象吊り上げワイヤを引き出したときに、対象吊り上げワイヤが鉛直下方の対向物、たとえば床面および床面上に配置されているものなどに達しているか否かを検知できる。したがって、対象吊り上げワイヤが床面および床面上に配置されているものなどに到達したときに対象吊り上げワイヤがそれ以上引き出されることを自動で停止させることが可能となる。
【0044】
また、本発明に係る吊り下げ型移動システムにおいて、上記補助装置吊り上げ装置は、上記装置吊り上げワイヤの長さが調節されて上記移動補助装置が移動する際に上記装置吊り上げワイヤの障害となる障害物の有無を検知する、吊り上げワイヤ障害物検知手段をさらに備えており、上記制御手段は、上記吊り上げワイヤ障害物検知手段の検知結果に基づき、上記装置吊り上げワイヤが上記障害物と接触しない位置となる上記複数の装置吊り上げワイヤの各の長さを算出し、算出結果に基づき上記ワイヤ駆動手段の駆動を制御することが好ましい。
【0045】
上記構成によれば、補助装置吊り上げ装置は、装置吊り上げワイヤに対する障害物の有無を検知する。装置吊り上げワイヤに対する障害物を検知した場合には、移動補助装置は、装置吊り上げワイヤがその障害物に引っかからないように、装置吊り上げワイヤを調節することができる。そのため、装置吊り上げワイヤが障害物に引っかかり移動補助装置および対象の移動が妨げられてしまうことを防ぐことができる。
【0046】
また、本発明に係る吊り下げ型移動システムにおいて、上記移動制御情報は、移動元位置と移動先位置とを指定する情報であることが好ましい。
【0047】
上記構成によれば、移動元となる位置の位置情報と移動先となる位置の位置情報に基づいて、ワイヤ駆動手段を制御することができる。そのため、位置情報を入力することで、移動制御装置を移動先まで自動で移動させることができる。
【0048】
また、本発明に係る吊り下げ型移動システムは、遠隔制御装置をさらに含み、上記遠隔制御装置は、上記移動補助装置を制御する制御情報をユーザが入力するための入力手段と、該制御情報を表示する制御情報表示手段と、該制御情報を上記移動補助装置に送信する制御情報送信手段とを備えており、上記移動制御情報は、上記遠隔制御装置から送信される上記制御情報であり、上記制御手段は、上記制御情報に基づき上記ワイヤ駆動手段の駆動を制御することが好ましい。
【0049】
上記構成によれば、遠隔制御装置を用いて、移動補助装置に対する制御情報を入力し、入力した制御情報を移動補助装置に送信することができる。移動補助装置は受信した制御情報に基づきワイヤ駆動手段の駆動を制御して、移動補助装置本体を移動させる。したがって、遠隔制御装置を用いることにより、移動補助装置の移動を遠隔操作することが可能となる。
【0050】
また、本発明に係る吊り下げ型移動システムにおいて、上記移動補助装置は、上記遠隔制御装置への送信手段をさらに備えており、上記遠隔制御装置は、上記送信手段から送信される情報を受信する補助装置情報受信手段と、受信結果に基づき受信内容をユーザに認識させる提示手段とをさらに備えていることが好ましい。
【0051】
上記構成によれば、移動補助装置が勝手に停止するといったエラーが発生したときに、移動補助装置は遠隔制御用装置にエラー情報を送信することが可能となる。遠隔制御装置は、受信した情報に基づき、エラーが発生したことをユーザに認識させ、ユーザに注意を促すことができる。
【0052】
また、本発明に係る吊り下げ型移動システムにおいて、上記提示手段は、受信結果に基づき音を発生させる制御装置音発生手段、光を発生させる制御装置光発生手段、振動を発生させる制御装置振動発生手段、および受信情報を表示する受信情報表示手段の少なくとも何れかであることが好ましい。
【0053】
上記構成によれば、移動補助装置が勝手に停止するといったエラーが発生したときに、遠隔制御装置はその情報を受信し、受信した情報に基づき、エラーが発生したことを音でもってユーザに知らせるか、光でもってユーザに知らせるか、振動でもってユーザに知らせるか、またはその情報を表示させることでユーザに知らせることができる。いずれの場合においても、移動補助装置にエラーが発生したときに、ユーザに注意を促すことができる。
【0054】
また、本発明に係る吊り下げ型移動システムにおいて、上記入力手段はタッチパネルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0055】
以上のように、本発明に係る移動補助装置は、移動補助装置を吊り上げている複数のワイヤの各の長さを互いに独立に調節するワイヤ駆動手段と、移動制御情報を利用して複数のワイヤ駆動手段の駆動を制御する制御手段とを備えている。移動制御情報を利用して、移動補助装置を吊り上げている複数のワイヤの各の長さを互いに独立に調節できるため、空間の所望の位置に移動補助装置を移動させることができ、それにより移動対象物を所望の位置に移動できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態における移動補助装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態における吊り下げ型移動システムの構成を示す概略図である。
【図3】本発明の一実施形態における吊り上げワイヤの構成を示す概略図である。
【図4】本発明の一実施形態における天井ワイヤの構成を示す概略図である。
【図5】本発明の一実施形態における遠隔制御用リモコンの構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の吊り下げ型移動システムを用いて被介護者を移動させる方法を示す図である。
【図7】本発明の吊り下げ型移動システムを用いて被介護者を移動させる別の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明に係る吊り下げ型移動システムの実施形態について、図1〜図7に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本実施の形態においては、移動対象物を被介護者とし、天井ワイヤを4本とした場合について説明するがこれに限定されるものではない。
【0058】
〔吊り下げ型移動システムの構成〕
はじめに、本実施形態に係る吊り下げ型移動システムの構成について、図2を参照して以下に説明する。
【0059】
図2は、本発明に係る吊り下げ型移動システム1の一実施形態を示す概略構成図である。図2に示すように、吊り下げ型移動システム1は、移動補助装置100と、移動補助装置100に取り付けられた吊り上げワイヤ装置(対象吊り上げ装置)200と、移動補助装置100に取り付けられた4つの天井ワイヤ装置(補助装置吊り上げ装置)300とを含んで構成されている。天井ワイヤ装置300は、天井400にさらに取り付けられている。吊り上げワイヤ装置200は、下端に被介護者500を保持する。移動補助装置100が移動することにより、被介護者500は部屋の中を自由に移動できる。
【0060】
(移動補助装置)
移動補助装置100の構成について、図1を参照して以下に説明する。
【0061】
図1は、移動補助装置100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、移動補助装置100は、吊り上げワイヤ装置200と接続され、後述する吊り上げワイヤ巻取り部を介して吊り上げワイヤ装置200のワイヤの長さを調節する吊り上げワイヤ駆動部(対象接続手段)111と、天井ワイヤ装置300と接続して各天井ワイヤ装置300のワイヤの長さを調節する天井ワイヤ駆動部(ワイヤ駆動手段、防止手段)107A〜107Dと、吊り上げワイヤ装置200から送信される傾きに関する情報を受信する傾き受信部(制御受付手段)112と、移動補助装置100が移動時に水平に安定しているかどうかを検知する水平センサ(水平検知手段)104と、移動場所が安全かどうかを検知する障害物センサ部(障害物検知手段)105と、吊り上げた被介護者500の重量を測定するための重量測定部(重量測定手段)106と、傾き受信部112が受信した情報、各センサ104、105が検知した情報、重量測定部106が測定した情報、ワイヤの長さおよび部屋の大きさなどの情報を管理する情報管理部102と、これらの情報をもとに天井ワイヤ駆動部107A〜107Dの制御し、移動補助装置100本体の移動を制御する制御部(制御手段、防止手段)101とを備えている。制御部101は、例えば中央処理ユニット(CPU:Central Processing Unit)などの装置を用いることができる。また、情報管理部102としては、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリおよびRAMなどの記憶装置を用いることができる。
【0062】
また、ユーザが移動指示を直接入力するボタン(制御受付手段)をさらに備えていてもよい。この場合、たとえば、上下左右の移動ボタンであり得る。ユーザが上下左右の移動ボタンを押下した場合に、制御部101にボタン押下の情報が伝えられる。その情報に従い、移動補助装置が押下された方向に移動することで、それに合わせて被介護者を自動的に移動させることができる。本ボタンは、移動時にトラブルが発生した場合等の停止ボタンであってもよい。さらには移動開始用のボタンであってもよい。または、移動補助装置100を制御するための移動情報を、外部のリモコンなどから受信するリモコン受信部(制御受付手段、受信手段)103を備えていてもよい。さらに、移動補助装置100のエラー情報を外部のリモコンに送信するエラー送信部(送信手段)を備えていてもよい。外部のリモコンとの通信方式としては、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)および無線LANなどを用いることができる。
【0063】
水平センサ104は、水平方向の傾きを検出した際、制御部101にその情報を通知する。制御部101は、その情報に基づき移動補助装置100本体が安定状態になるように天井ワイヤ301A〜301Dのそれぞれの長さを制御する。水平センサ104としては、例えばジャイロセンサを利用できる。
【0064】
障害物センサ部105には、例えば赤外線センサを利用できる。
【0065】
重量測定部106は、被介護者500の重量を測定するものであり、重量測定センサを搭載させることができる。重量測定センサを利用することで、移動させる被介護者500の重量を測定することができる。制御部101は、測定結果が耐荷重量を超えた場合に移動補助装置100を安全停止する機能を有していてもよい。また、被介護者は寝たきりであることが多く、体重測定などの健康管理をおこなうことが困難である。重量測定部センサを利用することで、移動の際に体重を測定することができ、被介護者の健康管理を実現できる。
【0066】
移動補助装置100は、移動対象物(ここでは、被介護者500)の重量の変化を検知して、その検知結果に基づき移動補助装置100の移動を停止させる転倒検知機能を有する転倒検知部をさらに備えていてもよい。移動補助装置100が移動している最中に、移動対象物の重量が明らかに変化した場合には、移動対象物が転倒または落下している可能性がある。転倒検知部が重量の変化を検知したら、制御部101はその検知結果に基づき天井ワイヤ駆動部107A〜107Dを制御することによって、移動補助装置100の移動を停止させる。
【0067】
移動補助装置100は、遠隔制御用リモコン(遠隔制御装置)600に情報を送信するためのリモコン送信部(送信手段、状況出力手段)113をさらに備えていてもよい。移動補助装置100が何らかの原因により停止したときに、エラー情報をリモコン送信部113から遠隔制御用リモコン600に送信することで、介護者などのユーザに注意を促すことができる。または、表示部(表示手段、状況出力手段)114を備えていてもよい。この場合には、表示部114にエラー情報を表示させることでユーザに注意を促すことができる。または、音発生部(音発生手段、状況出力手段)(図示せず)、光発生部(光発生手段、状況出力手段)(図示せず)、振動発生部(振動発生手段、状況出力手段)(図示せず)を備えていてもよい。この場合には、エラーが発生したことを、それぞれ、音、光および振動でもってユーザに通知することができる。なお、音、光、振動および画面表示について説明しているが、ユーザが認識し得る出力態様であればこれらに限定されるものではない。
【0068】
(吊り上げワイヤ装置の構成)
吊り上げワイヤ装置200の構成について、図3を参照して以下に説明する。
【0069】
図3は、吊り上げワイヤ装置200の構成を示す概略図である。図3に示すように、吊り上げワイヤ装置200は、被介護者500を吊り上げるための吊り上げワイヤ(対象吊り上げワイヤ)201と、吊り上げワイヤ201を巻き上げることにより吊り上げワイヤ201の長さを調節可能な吊り上げワイヤ巻取り部(対象吊り上げワイヤ巻取り部)202と、被介護者500をバランスよく保持するための吊上部203と、天井ワイヤ駆動部107A〜107Dを制御するために必要な情報をセンシングする傾きセンサ(ワイヤ傾き検出手段)204と、傾きセンサ204が検知した傾きを傾き情報として移動補助装置100に送信する傾き送信部(傾き送信手段)(図示せず)と、吊り上げワイヤ201が床面に到達しているかを検知する床面反応センサ(床面検知手段)205とを備えている。さらに、吊り上げワイヤ201の長さを調節するための上下ボタン(図示せず)を備えていてもよい。
【0070】
吊り上げ巻取り部202は、移動補助装置100に取り付けられ、吊り上げワイヤ駆動部111による制御によって、吊り上げワイヤ201の長さを調節する。これにより、被介護者500の垂直方向の移動が可能となる。また、吊り上げワイヤ201が完全に巻き取られたか否かを検知し、その結果を移動補助装置100に通知する。また、引き出した吊り上げワイヤ201がたるんでいるか否かを検知し、その結果を移動補助装置100に通知するか、その結果に基づき吊り上げワイヤ201の引き出しを自動で停止する。
【0071】
傾きセンサ204としては、例えばジャイロセンサを利用できる。また、床面反応センサ205としては、例えば赤外線センサを利用できる。
【0072】
(天井ワイヤ装置の構成)
天井ワイヤ装置300の構成について、図4を参照して以下に説明する。
【0073】
図4は、天井ワイヤ装置300の構成を示す概略図である。図4に示すように、天井ワイヤ装置300は、移動補助装置100を吊り上げるための天井ワイヤ(ワイヤ、装置吊り上げワイヤ)301A〜301Dと、天井ワイヤ301A〜301Dを巻き上げることにより天井ワイヤ301A〜301Dの長さを調節可能な天井ワイヤ巻取り部(装置吊り上げワイヤ巻取り部)305A〜305Dと、天井ワイヤ301A〜301Dを吊り下げる機構の天井ワイヤ接続部309A〜309Dとを備えている。天井ワイヤ装置300は、移動の途中に天井ワイヤ301A〜301Dがひっかかってしまう障害物がないかを検知する天井ワイヤ用障害物センサ(吊り上げワイヤ障害物検知手段)を、さらに備えていてもよい。
【0074】
天井ワイヤ巻取り部305A〜305Dは、移動補助装置100に取り付けられ、天井ワイヤ駆動部107A〜107Dによる制御によって、天井ワイヤ301A〜301Dの長さを調節する。これにより、移動補助装置100、ひいては被介護者500の、主に水平方向の移動が可能となる。また、天井ワイヤ巻取り部305A〜305Dをロックすることで、天井ワイヤ301A〜301Dの長さが変化しなくなり、移動補助装置100本体を所定の位置に固定させることができる。
【0075】
なお、本実施の形態においては、天井ワイヤ301A〜301Dは、天井ワイヤ巻取り部305A〜305Dを介して移動補助装置100を吊り上げているが、天井400側に天井ワイヤ巻取り部305A〜305Dを設け、天井ワイヤ301A〜301Dが直接、移動補助装置100に接続されていてもよい。この場合、移動補助装置100の天井駆動ワイヤ部107A〜107Dは、有線または無線通信を介して、天井ワイヤ巻取り部305A〜305Dを制御すればよい。
【0076】
本実施の形態において、天井ワイヤ接続部309A〜309Dは、天井400からむき出しの構造となっているが、天井裏に収納されていてもよい。
【0077】
天井400からの天井ワイヤ接続部309A〜309Dの取り付けにおいて、天井をグリッド構造とすることで、容易に吊り下げ位置の変更ができ、また吊り下げ機構の設置も容易となる。また、部屋のレイアウト変更にも容易に対応可能となる。
【0078】
なお、天井ワイヤ接続部309A〜309Dは、天井400ではなく、壁の上部、天井400に近いところと接続しているものであってもよい。
【0079】
(遠隔制御用リモコンの構成)
移動補助装置100がリモコン受信部103を備えている場合には、介護者が遠隔制御用リモコンを用いて、移動補助装置100を遠隔から制御できる。これにより、介護者が遠隔から操作して、移動補助装置100および被介護者500を簡単に移動させることができる。
【0080】
図5は、遠隔制御用リモコン600の構成を示すブロック図である。図5に示すように、遠隔制御用リモコン600は、介護者などのユーザが移動制御情報を入力するリモコン入力部(入力手段)602と、入力された情報を制御するリモコン制御部601と、入力した制御情報を表示させる表示部(制御情報表示手段、受信情報表示手段、提示手段)603と、制御情報を移動補助装置100へ送信するための通信部(制御情報送信手段、補助装置情報受信手段)604とを備えている。通信部604は、移動補助装置100から送信されるエラー情報を受信するものでもあり得る。この場合、遠隔制御用リモコン600は、エラー情報を受信した際に音を発生させるリモコン音発生部(制御装置音発生手段、提示手段)(図示せず)、光を発生させるリモコン光発生部(制御装置光発生手段、提示手段)(図示せず)および振動を発生させるリモコン振動発生部(制御装置振動発生手段、提示手段)(図示せず)の少なくともいずれかをさらに備えている。または、表示部603にエラー情報を表示させるものであってもよい。なお、音、光、振動および画面表示について説明しているが、ユーザが認識し得る提示態様であればこれらに限定されるものではない。遠隔制御用リモコン600として、例えば、携帯電話およびPDAなどの携帯端末や、TVおよびパソコンなどの固定で設置された機器を利用してもよい。
【0081】
リモコン入力部602は、ユーザからの制御情報または管理情報を入力する機構である。リモコン入力部602は、例えば十字キーが可能であるが、他にも上下ボタン、数字キーおよびタッチパネルなどを利用してもよい。リモコン入力部602を利用して、移動補助装置100の移動をコントロールすることにより、被介護者の移動をコントロールする。
【0082】
通信部604は、ユーザが入力した制御情報および管理情報を移動補助装置100へ送信するためのものであり、また、移動補助装置100から送信される情報を受信するためのものである。通信方式としては、赤外線通信、Bluetooth(登録商標)および無線LANなどを用いることができる。
【0083】
なお、移動補助装置100が管理している情報を遠隔制御用リモコン600が受信し利用することも可能である。
【0084】
〔吊り下げ型移動システムの動作〕
次に、以上のように構成された吊り下げ型移動システム1を利用して、介護者が被介護者を手動で移動させる場合の、具体的な動作について説明する。
【0085】
(収納状態)
吊り下げ型移動システム1を使用していない場合、移動補助装置100は、吊り上げワイヤ巻取り部202により吊り上げワイヤ201を引き出し部分は残して完全に巻き取った状態となっている。また、移動補助装置100を天井面の任意の位置(例えば4隅のいずれかの位置)に天井400ギリギリの高さで収納しておくために、移動補助装置100は、天井ワイヤ巻取り部305A〜305Dにより短く巻き取られている。なお、吊り上げワイヤ201がある一定の巻取り位置を越えたと吊り上げワイヤ巻取り部202が検知して制御部101に通知した場合、制御部101は、天井ワイヤ駆動部107A〜107Dを介して天井ワイヤ巻取り部305A〜305Dにロックをかけ、天井ワイヤ301A〜301Dの長さが変化することを防止し、移動補助装置100が移動できない状態にする。
【0086】
(吊り上げ開始点への移動)
被介護者500を吊り上げるために、移動補助装置100を吊り上げ開始点、すなわち被介護者500がいる位置に移動させる。
【0087】
まず、引き出し部分は残して完全に巻き取られている吊り上げワイヤ201を下方向に一定の長さだけ吊り上げワイヤ巻取り部202から引き出す。これにより、天井ワイヤ巻取り部305A〜305Dのロックが解除され、移動補助装置100は移動可能な状態となる。
【0088】
次に、移動補助装置100を移動させる方法について説明する。なお、被介護者500を保持している場合であっても同様の方法で移動させることが可能なため、ここでは、被介護者500を保持している状態を表している図6を参照して説明する。
【0089】
吊り上げワイヤ装置200の傾きセンサ204は、吊り上げワイヤ201の鉛直方向gに対する傾きθを検知する。傾き送信部は、傾きセンサ204が検知した傾きの情報を移動補助装置100に送信する。移動補助装置100の制御部101は、傾きθが解消されるような4本の天井ワイヤ301A〜301Dの長さを算出し、天井ワイヤ駆動部107A〜107Dにその長さの変化量を伝達する。天井ワイヤ駆動部107A〜107Dは、この変化量に基づき天井ワイヤ巻取り部305A〜305Dを作動させ、4本の天井ワイヤ301A〜301Dの長さを調整する。これにより、移動補助装置100は、吊り上げワイヤ201の傾きが解消される方向M1に移動する。
【0090】
したがって、移動させたい方向へ力F1を加え、吊り上げワイヤ201を傾けることで、移動させたい方向M1へ移動補助装置100が自動的に移動する。
【0091】
傾きθが解消されるような天井ワイヤ301A〜301Dの長さの調整方法の一例として、進行方向M1と逆側にある天井ワイヤ2本を長くし、進行方向M1側にある天井ワイヤ2本を短くしていくことで移動補助装置100を水平方向に移動させることができる。このとき垂直方向(鉛直方向)gの加速度が発生しないようにすべての天井ワイヤをバランスよく制御する必要がある。
【0092】
図7は、傾きを利用して移動方向を決定する場合の別の実施形態を表す図である。上述の実施形態では、傾きセンサ204が吊り上げワイヤ201の鉛直方向に対する傾きθを検知し、この傾き情報を利用しているが、図7に示すように、移動補助装置100本体に対する対象の傾きθ’を利用するものであってもよい。この場合には、移動補助装置100の水平センサ104の検知結果を利用し、移動補助装置100本体が水平に保たれている場合にのみ行われることが好ましい。
【0093】
なお、吊り下げた物の重心が吊り上げワイヤ201上端の真下に無いときは、傾きθや傾きθ’の角度が0にならないため、移動させようとする前の状態を基準とするなどの方法を用いることが好ましい。
【0094】
(吊り上げ開始点での被介護者の取り付け)
移動補助装置100が吊り上げ開始点の真上に到達したら、吊り上げワイヤ201を吊り上げワイヤ巻取り部202から引き出して、先端に被介護者500を取り付ける。
【0095】
なお、吊り上げワイヤ装置200には、上下ボタンが取り付けられた構成でもよい。取り付けられた上下ボタンを利用して、吊り上げワイヤ201を引き出すことができる。また、万が一、吊り上げワイヤ201が床面に到達した場合には、床面反応センサ205が反応し、吊り上げワイヤ巻取り部202がロックされ、吊り上げワイヤ201の引き出しが自動的に停止する。なお、吊り上げワイヤ201と被介護者500との接続は、被介護者を乗せるための椅子のようなものと吊り上げワイヤ201とを接続するなどの方法がある。また、接続には、フックおよびロープなどを利用しての手動接続でもよいし、強磁石などを利用した自動接続でもよい。
【0096】
(吊り上げ開始点から移動先への移動)
吊り上げ開始点で被介護者500を吊り上げ装置200に取り付けたら、移動したい位置、すなわち移動先へ移動させる。
【0097】
まず、被介護者500が適切な高さとなるように、吊り上げワイヤ装置200の上下ボタンを操作して、吊り上げワイヤ201を適切な長さまで巻取り、移動させる際の高さに調節する。このとき、高さを床からある程度の高さを保つことで、部屋にある家具および家電などの障害物を避けることができる。
【0098】
図6に示すように、被介護者500を任意の高さまで引き上げた後、被介護者500または吊り上げワイヤ装置200に対して、移動させたい方向へ力F1を加え、吊り上げワイヤ201を傾けて傾きθを生じさせる。移動補助装置100は、吊り上げワイヤ201の傾きを利用して、加えた力と同じ方向M1へ移動する。最終的に移動補助装置100を移動先まで移動させる。これにより、被介護者500を移動先まで移動させることができる。
【0099】
移動補助装置100が障害物に近づいた場合に、障害物を避けるために、障害物センサ部105を利用して自動的に移動を停止する機能を有していればよい。例えば、障害物センサ部105に赤外線センサを搭載し、赤外線出力光に対する反射光の距離で障害物の有無を判定する場合、移動中に一定間隔で進行方向に赤外線を照射し、反射光が受光されるまでの時間で障害物との距離を測定する。障害物との距離がある一定値以内になったときに、障害物ありと判定する。判定結果は、制御部101に送信される。なお、障害物センサが赤外線センサの場合は、移動補助装置100の各の面に最低1つずつ搭載することが望ましく、複数個搭載することがより望ましい。また障害物センサは、赤外線センサ以外に、超音波センサ等も利用できる。
【0100】
さらに、制御部101に送信された判定結果に基づき、移動補助装置100は、水平または鉛直方向の位置を調整し、障害物をよけるように移動する。移動補助装置100の移動は、移動補助装置100を左右上下方向に移動させて障害物を回避する際、障害物を検知した場所から移動先に対して距離が最小となる方向へ一定距離移動させるなどの方法で実現できる。また、制御部101において移動補助装置100の鉛直方向の移動量が決定されることで、障害物回避が可能となる。
【0101】
本実施の形態では、障害物センサは、移動補助装置100に搭載されているが、天井ワイヤ用障害物センサ(図示せず)が天井ワイヤに搭載されていてもよい。移動の途中に天井ワイヤ301A〜301Dがシャンデリア等の障害物にひっかかるおそれがある場合には、天井ワイヤ用障害物センサが障害物を検知し、ワイヤの長さを調節することで、障害物をよけることができる。または、吊り上げワイヤ用障害物センサ(図示せず)が吊り上げワイヤ201に搭載されていてもよい。移動の途中に吊り上げワイヤ201または被介護者500などの移動対象物が家具等の障害物にひっかかるおそれがある場合には、吊り上げワイヤ用障害物センサが障害物を検知し、その結果に基づきワイヤの長さを調節することで、障害物をよけることができる。例えば、天井ワイヤ用障害物センサが上記と同様に赤外線センサであるとすると、赤外線センサで判定された判定結果を制御部101に送信する。制御部101は、天井ワイヤ301A〜301Dの長さを調節し、天井ワイヤ301A〜301Dの位置を鉛直または水平面方向へ変化させることで、天井ワイヤ301A〜301Dが障害物と接触してしまうことを回避することが可能となる。
【0102】
(移動先での吊り上げワイヤの解除)
移動補助装置100が移動先に到達したら、吊り上げワイヤ装置200の上下ボタンを操作して、吊り上げワイヤ201を床面に到達するまで引き出す。つまり、吊り上げワイヤ201のたるみを検知したら、吊り上げワイヤ巻取り部202は、自動的に吊り上げワイヤ201の引き出しを停止する。吊り上げワイヤ201の引き出しが停止した後、被介護者500を解放する。本実施の形態では、吊り上げワイヤ201を引き下げることによって、被介護者500を解放しているが、移動補助装置100の上下移動を利用して被介護者500を解放してもよい。すなわち移動補助装置100自体を床面付近まで下げることによって、被介護者500を解放することも可能である。
【0103】
(収納状態への移動)
被介護者500を解放した後、吊上げワイヤ装置200の上下ボタンを操作して、吊り上げワイヤ巻取り部202に吊り上げワイヤ201を巻き取らせ、さらに移動補助装置100を天井400の収納位置に移動させる。
【0104】
最後に吊り上げワイヤ201をある一定の巻取り位置を越えた状態とすることで、天井ワイヤ巻取り部305A〜305Dをロックし、移動補助装置100を動かないようにする。
【0105】
本実施の形態では、移動対象物を被介護者として説明したが、家電および家具を移動させることも可能である。
【0106】
さらに、家電および家具の移動だけでなく、移動対象物を吊り上げたまま移動補助装置100を天井400付近に固定しておくことで、天井400付近を収納スペースとして利用することができる。
【0107】
さらに、本実施の形態において、移動補助装置100の移動は手動でおこなう方法を記載したが、遠隔制御リモコン600等を用いて外部からの制御情報を利用して移動させてもよい。
【0108】
また、本実施の形態では、移動に合わせて移動方向を決定し、その方向に力を加える、または遠隔制御リモコン600を利用して、移動補助装置100を移動させているが、以下のように、移動先の位置を指定して、自動的に移動補助装置100を制御する移動方法であってもよい。位置の指定には、移動補助装置100および遠隔制御リモコン600等への入力を利用する。入力方法としては、移動補助装置100が移動可能な範囲においてその範囲をブロックごとに区画分けし、移動したい区画を指定する等の入力方法が挙げられる。移動補助装置100は指定された移動先情報(移動制御情報)と現在ある位置の位置情報(移動制御情報)を取得し、それに合わせて移動できる。これにより、コンピュータ等による自動制御、またはその場にいない人が遠隔で制御することも可能になる。
【0109】
以上のように、本発明に係る天井吊り下げ型移動システム1によれば、人および物の移動の際に、天井および床の状況に左右されなくなり、利用の自由度が向上する。さらには、少ない労力で人および物を移動させることができる。また、通常使用しない物を天井付近に待避させることで、収納用途にも利用でき、空間を有効に活用できるという効果も奏する。
【0110】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、被介護者ならびに家電および家具など移動させることが困難な対象を移動させる移動システムに広くに利用することができ、健康医療業界および住宅業界において利用され得る。
【符号の説明】
【0112】
1 吊り下げ型移動システム
100 移動補助装置
101 制御部(制御手段、防止手段)
102 情報管理部
103 リモコン受信部(制御受付手段、受信手段)
104 水平センサ(水平検知手段)
105 障害物センサ部(障害物検知手段)
106 重量測定部(重量測定手段)
107A〜107D 天井ワイヤ駆動部(ワイヤ駆動手段、防止手段)
111 吊り上げワイヤ駆動部(対象接続手段)
112 傾き受信部(制御受付手段)
113 リモコン送信部(送信手段、状況出力手段)
114 表示部(表示手段、状況出力手段)
200 吊り上げワイヤ装置(対象吊り上げ装置)
201 吊り上げワイヤ(対象吊り上げワイヤ)
202 吊り上げワイヤ巻取り部(対象吊り上げワイヤ巻取り部)
203 吊上部
204 傾きセンサ(ワイヤ傾き検出手段)
205 床面反応センサ(床面検知手段)
300 天井ワイヤ装置(補助装置吊り上げ装置)
301A〜301D 天井ワイヤ(ワイヤ、装置吊り上げワイヤ)
305A〜305D 天井ワイヤ巻取り部(装置吊り上げワイヤ巻取り部)
309A〜309D 天井ワイヤ接続部
400 天井
500 被介護者(対象)
600 遠隔制御用リモコン(遠隔制御装置)
601 リモコン制御部
602 リモコン入力部(入力手段)
603 表示部(制御情報表示手段、受信情報表示手段、提示手段)
604 通信部(制御情報送信手段、補助装置情報受信手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体が鉛直上方から複数のワイヤによって吊り上げられる移動補助装置であって、
移動位置を決定するための移動制御情報を受け付ける制御受付手段と、
上記複数のワイヤの各の長さを互いに独立に調節する複数のワイヤ駆動手段と、
上記移動制御情報を利用して上記複数のワイヤ駆動手段の駆動を制御する制御手段と、
移動させる対象を接続するための対象接続手段とを備えていることを特徴とする移動補助装置。
【請求項2】
上記本体が水平であるかを検知する水平検知手段をさらに備えており、
上記制御手段は、上記水平検知手段の検知結果に基づき上記本体が水平となる上記複数のワイヤの各の長さを算出し、算出結果に基づき上記ワイヤ駆動手段の駆動を制御することを特徴とする請求項1に記載の移動補助装置。
【請求項3】
移動の障害となる障害物の有無を検知する障害物検知手段をさらに備えており、
上記制御手段は、上記障害物検知手段の検知結果に基づき上記本体および上記対象が上記障害物と接触しない位置となる上記複数のワイヤの各の長さを算出し、算出結果に基づき上記ワイヤ駆動手段の駆動を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の移動補助装置。
【請求項4】
上記対象接続手段に接続されている上記対象の重量を測定する重量測定手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の移動補助装置。
【請求項5】
上記制御受付手段は、上記本体に取り付けられたボタンであることを特徴とする請求項1から4までの何れか1項に記載の移動補助装置。
【請求項6】
上記制御受付手段は、外部から送信される制御情報を受信する受信手段であることを特徴とする請求項1から4までの何れか1項に記載の移動補助装置。
【請求項7】
上記複数のワイヤの長さが変化することを防止する防止手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1から6までの何れか1項に記載の移動補助装置。
【請求項8】
上記移動制御情報は、上記対象の鉛直方向に対する傾きに関する情報であり、上記制御手段は、上記対象の上記傾きが解消される上記複数のワイヤの各の長さを算出し、算出結果に基づき上記ワイヤ駆動手段の駆動を制御することを特徴とする請求項1から7までの何れか1項に記載の移動補助装置。
【請求項9】
上記本体が水平であるかを検知する水平検知手段を備えており、
上記移動制御情報は、上記対象の上記本体に対する傾きに関する情報であり、
上記制御手段は、上記本体が水平である場合に、上記対象の上記傾きが解消される上記複数のワイヤの各の長さを算出し、算出結果に基づき上記ワイヤ駆動手段の駆動を制御することを特徴とする請求項1から7までの何れか1項に記載の移動補助装置。
【請求項10】
上記移動制御情報は、上記対象の鉛直方向における位置変化に関する情報であることを特徴とする請求項1から7までの何れか1項に記載の移動補助装置。
【請求項11】
上記本体の状況を外部に出力する状況出力手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1から10までの何れか1項に記載の移動補助装置。
【請求項12】
上記状況出力手段は、表示手段、音発生手段、光発生手段、振動発生手段および外部装置への送信手段のうちの少なくとも何れかであることを特徴とする請求項1から11までの何れか1項に記載の移動補助装置。
【請求項13】
鉛直上方から複数のワイヤによって吊り上げられており、移動させる対象を接続している移動補助装置が、該複数のワイヤの各の長さを互いに独立に調節することにより、該移動補助装置の移動を介して該対象を移動させることを特徴とする吊り下げ型移動方法。
【請求項14】
移動補助装置と、補助装置吊り上げ装置と、対象吊り上げ装置とを含む吊り下げ型移動システムであって、
上記移動補助装置は、
本体が鉛直上方から複数の装置吊り上げワイヤによって吊り上げられており、
移動位置を決定するための移動制御情報を受け付ける制御受付手段と、
上記複数の装置吊り上げワイヤの各の長さを互いに独立に調節する複数のワイヤ駆動手段と、
上記移動制御情報を利用して上記複数のワイヤ駆動手段の駆動を制御する制御手段と、
移動させる対象を接続するための対象接続手段と、を備えており、
上記補助装置吊り上げ装置は、
上記移動補助装置を吊り上げる上記複数の装置吊り上げワイヤと、
上記複数のワイヤ駆動手段の各によって制御される、上記複数の装置吊り上げワイヤの各を巻き取る複数の装置吊り上げワイヤ巻取り手段と、を備えており、
上記対象吊り上げ装置は、
対象を吊り上げる対象吊り上げワイヤと、
対象吊り上げワイヤを巻き取る対象吊り上げワイヤ巻取り手段と、を備えており、
上記対象吊り上げワイヤまたは上記対象吊り上げワイヤ巻取り手段が上記対象接続手段に接続されている、ことを特徴とする吊り下げ型移動システム。
【請求項15】
上記対象吊り上げ装置は、上記対象吊り上げワイヤの鉛直方向に対する傾きを検出するワイヤ傾き検出手段と、検出した傾きを示す傾き情報を上記移動補助装置に送信する傾き送信手段とを備えており、
上記制御受付手段は、上記対象吊り上げ装置から送信される傾き情報を受信し、
上記制御手段は、受信した傾き情報に基づき上記傾きが解消される上記複数の装置吊り上げワイヤの各の長さを算出し、算出結果に基づき上記ワイヤ駆動手段の駆動を制御することを特徴とする請求項14に記載の吊り下げ型移動システム。
【請求項16】
上記対象吊り上げ装置は、上記対象吊り上げワイヤが上記対象吊り上げワイヤの鉛直下方にある対向物に到達しているかを検知する床面検知手段をさらに備えていることを特徴とする請求項14または15に記載の吊り下げ型移動システム。
【請求項17】
上記補助装置吊り上げ装置は、上記装置吊り上げワイヤの長さが調節されて上記移動補助装置が移動する際に上記装置吊り上げワイヤの障害となる障害物の有無を検知する、吊り上げワイヤ障害物検知手段をさらに備えており、
上記制御手段は、上記吊り上げワイヤ障害物検知手段の検知結果に基づき、上記装置吊り上げワイヤが上記障害物と接触しない位置となる上記複数の装置吊り上げワイヤの各の長さを算出し、算出結果に基づき上記ワイヤ駆動手段の駆動を制御することを特徴とする請求項14から16までの何れか1項に記載の吊り下げ型移動システム。
【請求項18】
上記移動制御情報は、移動元位置と移動先位置とを指定する情報であることを特徴とする請求項14から17までの何れか1項に記載の吊り下げ型移動システム。
【請求項19】
遠隔制御装置をさらに含み、
上記遠隔制御装置は、
上記移動補助装置を制御する制御情報をユーザが入力するための入力手段と、
該制御情報を表示する制御情報表示手段と、
該制御情報を上記移動補助装置に送信する制御情報送信手段とを備えており、
上記移動制御情報は、上記遠隔制御装置から送信される上記制御情報であり、
上記制御手段は、上記制御情報に基づき上記ワイヤ駆動手段の駆動を制御することを特徴とする請求項14から18までの何れか1項に記載の吊り下げ型移動システム。
【請求項20】
上記移動補助装置は、上記遠隔制御装置への送信手段をさらに備えており、
上記遠隔制御装置は、上記送信手段から送信される情報を受信する補助装置情報受信手段と、受信結果に基づき受信内容をユーザに認識させる提示手段とをさらに備えていることを特徴とする請求項19に記載の吊り下げ型移動システム。
【請求項21】
上記提示手段は、受信結果に基づき音を発生させる制御装置音発生手段、光を発生させる制御装置光発生手段、振動を発生させる制御装置振動発生手段、および受信情報を表示する受信情報表示手段の少なくとも何れかであることを特徴とする請求項20に記載の吊り下げ型移動システム。
【請求項22】
上記入力手段はタッチパネルであることを特徴とする請求項19から21までの何れか1項に記載の吊り下げ型移動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−235230(P2010−235230A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83471(P2009−83471)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】