説明

移動規制具

【課題】支持脚部を移動規制する向きを簡単に設定することができる。
【解決手段】移動規制具20は、床面に貼り付けて設置される台部21と、台部21に対して上下方向の軸周りに回転可能に設けられる規制部材30とを備える。規制部材30は、床面に設置された支持脚部10の水平方向三方を囲んで該支持脚部10の移動を規制する規制部35と、該水平方向の残りの一方に開設されて支持脚部10を挿通可能な挿通口33とを有する。従って規制部材30は、台部21に対して回転することで挿通口33の向きを変更し、支持脚部10を移動規制する向きを変更することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コピー機などの機器等の支持脚部を移動規制する移動規制具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オフィス家具等の什器や、オフィスで用いられる比較的大型のコピー機等の機器(機器等をいう)は、箱状本体の底面に設けられた支持脚やキャスターによって床面から所定間隔離間した状態で支持されている。機器等は、箱状本体の底面から突出する支持脚の長さを変更することで、箱状本体の水平を調節したり、キャスターを採用することで、適宜の移動を可能にしている。機器等は、外部からの振動や衝突等による衝撃や地震による震動によって、転倒や移動することを防止するために、例えば特許文献1に開示されているような移動規制具(固定具)で支持脚が保持される。
【0003】
特許文献1の移動規制具は、支持脚の下端を構成する円盤状の台座が挿入可能な溝状の台座挿入部を有する底板と、この底板の上面に取着され、支持脚の垂直軸が挿入可能な溝状の垂直軸挿入部を有する上板と、底板の底面に貼着され、両面粘着性を有する粘着マットとから構成される。特許文献1の移動規制具は、台座挿入部と垂直軸挿入部とを同方向に開口させることにより当該開口から支持脚を挿入可能としている。そして、垂直軸挿入部に支持脚を当接させることで支持脚の台座の上方に上板が重なり、底板の底面の粘着マットを床面に貼着することで支持脚を固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−10691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した特許文献1の移動規制具は、底板の台座挿入部と上板の垂直軸挿入部とが支持脚を挿脱するために同じ方向に開口しているので、台座挿入部および垂直軸挿入部の開口方向おいて、支持脚を移動規制することができない。すなわち、1つの移動規制具では、支持軸における水平方向の全ての移動に対応することができない不都合を有している。特許文献1では、移動規制具を複数の支持脚の夫々に取り付ける際に、台座挿入部および垂直軸挿入部の開口方向が向かい合うように隣り合う移動規制具を設置することで、複数の移動規制具の組み合わせによって機器等の水平方向の移動を規制している。しかしながら、特許文献1の移動規制具は、台座挿入部および垂直軸挿入部の開口方向を設定する際に、移動規制具全体の向きを変えなければならない。このため、支持脚が壁に近接した奥側にある等の条件によっては、移動規制具を取り付けることが難しい場合があり、設置作業性に難がある。
【0006】
すなわち本発明は、従来の技術に係る移動規制具に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、支持脚部を移動規制する向きを簡単に設定できる移動規制具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明の移動規制具は、
本体を床面から離した状態で支持する支持脚部を移動規制する移動規制具において、
両面が粘着性を有するマットで床面に貼り付けて設置される台部と、
前記台部に対して上下方向の軸周りに回転可能に設けられ、前記床面に設置された前記支持脚部の水平方向三方を囲んで該支持脚部の移動を規制する規制部および該水平方向の残りの一方に開設されて該支持脚部を挿通可能な挿通口を有する規制部材とを備え、
前記規制部材は、前記台部に対して回転することで前記挿通口の向きを変更可能に構成したことを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、規制部材を回転する簡単な操作だけで、挿通口の向きを変えることができ、これにより規制部によって支持脚部を移動規制する向きを簡単に変えることができる。すなわち、移動規制具の設置作業性がよい。
【0008】
請求項2に係る発明では、
前記台部は、2つの台部分体から構成されて、各台部分体の上面に突出形成された嵌合部に対して前記規制部を嵌め合わせて、前記規制部材が2つの台部分体に跨って回転可能に設けられることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、台部を2つの台部分体で構成することで、各台部分体を支持脚部に対して設置し易い。
【0009】
請求項3に係る発明では、
前記規制部材は、前記挿通口を介して前記支持脚部を規制部に挿脱し、前記嵌合部に対して側方から着脱可能に構成されることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、規制部材を本体の底面と床面との間の隙間を介して側方から着脱し得るので、移動規制具の設置作業を簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る移動規制具によれば、支持脚部を移動規制する向きを簡単に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の好適な実施例に係る移動規制具によりキャスターを移動規制した状態を示す斜視図である。
【図2】実施例の移動規制具の構成部材を示す分解斜視図である。
【図3】(a)は、床面に設置した台部の台部分体の間にキャスターを位置決めする状態を示す説明図であり、(b)は、第2規制部が設けられた筒体部を台部の各台部分体に仮セットする状態を示す説明図である。
【図4】(a)は、台部の各台部分体に仮セットした規制部材を上下方向の軸周りに回転させる状態を示し、(b)は、規制部材の回転により第2規制部を第2状態とした状態を示す説明図である。
【図5】(a)は、底面にキャスターを配設した本体を概略的に示す説明図であり、(b)は、キャスターの斜視図である。
【図6】本体の4個のキャスターの夫々に対し、規制部材の挿通口を夫々異なる方向に向けて実施例の移動規制具を配設した状態を示す説明図である。
【図7】移動規制具の変更例を示す斜視図である。
【図8】移動規制具の別の変更例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る移動規制具につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。実施例では、移動規制具20により固定される支持脚部として、図5(a)に示すように、支持対象物であるオフィス家具や事務機器(コピー機やファクシミリ機)等の本体18の底面18Aに設けられて該本体18を床面19から離間させた状態で支持するキャスター10を例示する。なお実施例では、後述する台部21の嵌合部24,24がキャスター10を挟んで向き合う方向を「第1方向」、この第1方向と水平に直交する方向を「第2方向」と指称する。
【実施例】
【0013】
キャスター10は、図1、図3および図5(b)に示すように、本体18の底面18Aに設けたキャスター支持部に支持軸16を介して回転可能に取り付けられる支持体12と、この支持体12に各々独立回転可能に支持される一対の車輪14,14とを備えている。支持体12は、両車輪14,14の略上半分を覆う半円筒形状の傘部12Aと、この傘部12Aの下側に設けられた支持壁部12Bと、傘部12Aの上部に上方へ突出するように設けられ、支持軸16を垂直上方へ突出した状態に保持する円筒状の保持部12Cとを備えている。支持壁部12Bには、両側へ水平に突出した回転支軸17が設けられ、各車輪14,14が該支持壁部12Bを挟んで該回転支軸17に回転自在に配設されている。そしてキャスター10は、図3(a)に示すように、平面視における形状が略矩形となっており、平面視において支持軸16を中心とする最大半径が、支持体12の角部までの距離(以降「最大半径L」という)となっている。
【0014】
実施例の移動規制具20は、図1および図2に示すように、床面19に置かれたキャスター10を挟んで対向配置される台部21と、この台部21に対して上下方向の軸周りに回転可能に設けられ、キャスター10の水平方向三方を囲んで該キャスター10の移動を規制する規制部35が設けられた規制部材30とを備えている。そして、実施例の移動規制具20は、台部21に対して規制部材30を上下方向の軸周りに回転することで、規制部35の向きを変更可能に構成されている。
【0015】
前記台部21は、図1〜図3に示すように、前記キャスター10を挟んで配設される2つの台部分体22,22から形成されている。各台部分体22,22は、第2方向に長く、第2方向に沿う直線部22Aおよび該直線部22Aの両端に連設される円弧部22Bとからなる輪郭形状に構成され、該円弧部22Bに沿って所謂三日月形をなす支持板部23が設けられている。この支持板部23は、その上面23Aが平坦に形成されて、前述した規制部材30を、スライド移動および回転移動が可能に載置し得るようになっている。また、支持台部21の下面23Bは、床面19の相対するよう平坦に形成されて、後述するマット28が装着されるようになっている。
【0016】
また、各台部分体22,22には、直線部22A側に、上方へ突出すると共に第2方向へ延在する嵌合部24が設けられている。この嵌合部24は、該嵌合部24の支持板部23側に位置して、第2方向に沿って延在する直面部25と、この直面部25における第2方向の両端に位置する曲面部26,26とを備えている。直面部25は、各台部分体22,22を所定位置に配設した後に、支持板部23上へ規制部材30を移動させる際の案内部として機能するようになっている。また各曲面部26,26は、規制部材30の側壁部32の内周面に夫々面接触する曲率および位置関係で形成されており、両台部分体22,22の支持板部23上で規制部材30を上下方向の軸周りに回転させる際の案内部として機能すると共に、該規制部材30の位置決め部としても機能するようになっている。
【0017】
なお、図2〜図4に示すように、一対の台部分体22,22の一方(実施例では、キャスター10の左側に設置される台部分体)には、嵌合部24の上面後側における曲面部26に隣接する部位に、上方へ突出した第1ストッパー27が設けられている。この第1ストッパー27は、図4(b)に示すように、規制部材30の側壁部32の内周面に設けた後述の第2ストッパー34に対し、規制部35が第1状態から第2状態となった際に当接する位置関係で設けられ、規制部材30の回転変位を規制して規制部35を第2状態に位置決め保持するようになっている。
【0018】
前述のように形成された台部21の各台部分体22,22は、図1および図3(a)に示すように、嵌合部24が形成された直線部22Aをキャスター10側に向けた姿勢で該キャスター10に隣接してセットされ、キャスター10を挟んで平行に向かい合った状態で前記床面19に夫々配置される。なお、両台部分体22,22の第1方向における配置間隔H1は、図3(a)に示すように、キャスター10の全幅H2より適宜大きくなるように設定されている。そして、両台部分体22,22が適切な配置間隔H1で対向配置された状態では、図3(a)および図4(a)に示すように、両台部分体22,22の各曲面部26が、規制部材30における側壁部32の内周面の内径と同一径の円周上に位置するように設定されている。
【0019】
各台部分体22,22における支持板部23の下面23Bには、図1および図2に示すように、該台部分体22を床面19に設置するマット28が配設されている。このマット28は、例えば熱可塑性エラストマやゴム等からシート状に形成され、ゲル状をなすものが好適に使用される。これによりマット28は、ゲル状をなすので粘弾性を有しており、防振性を備えると共に、衝撃吸収性等も兼ね備えている。またマット28は、粘弾性を有しているので、厚み方向の両面(台部分体22の下面23Bに接触するマット上面28Aおよび床面19に接触するマット下面28B)に自己粘着性を有しており、この自己粘着性を利用して前記台部分体22を床面19に貼り付けて設置することが可能である。従ってマット28は、台部分体22の下面23Bに相対するマット上面28Aを該下面23Bに密着させて押し付けることで、該台部分体22に対して自己粘着力により容易に剥離しない強さで装着されている。またマット28は、床面19に相対するマット下面28Bを該床面19に押し付けることで、該床面19に対して自己粘着力により容易に剥離しない強さで保持され、対象の台部分体22を該床面19に対して移動不能に設置し得る。なおマット28は、マット上面28Aおよびマット下面28Bの両面に粘着剤を備えたものであれば、この粘着剤の粘着力を利用して前記台部分体22を床面19に貼り付けて設置することが可能である。またマット28は、台部21の下面23Bと同じ輪郭形状に形成されて該下面23Bの全体に被着される単一のものを例示しているが、該下面23Bとは異なる形状であってもよい。また、配設数は、1つに限らず、複数であってもよい。
【0020】
規制部材30は、図1〜図3に示すように、下方が開放した円形の筒体に構成され、床面19に設置されたキャスター10の水平方向三方を囲み得ると共に該水平方向の残りの一方が該キャスター10を挿通可能に開口するよう形成されている。この規制部材30は、円形でかつ平坦状に形成された頂壁部31と、この頂壁部31の外周端に沿って円弧状に延在して下方へ延出する側壁部32とから構成され、キャスター10の支持体12および各車輪14,14を内部に収納し得る高さおよび直径に形成されている。そして、規制部材30の側壁部32の内径は、図4(a)に示すように、キャスター10の前述した最大半径Lの2倍以上に設定されている。また、規制部材30の周囲四方における側壁部32が形成されていない残りの一方は、キャスター10および各台部分体22の嵌合部24,24を挿通可能な略矩形の挿通口33が形成されている。この挿通口33の第1方向における開口幅W1(図3(a)参照)は、規定の配置間隔H1で床面19に設置された各台部分体22,22の嵌合部24に設けられた直面部25,25間の第1方向における間隔W2と同じか僅かに大きく設定されている。従って規制部材30は、図3(b)に示すように、側壁部32の下端32Aから各台部分体22,22の支持板部23の上面23Aに摺接させながら、第2方向に沿ってキャスター10へ水平に装着することが可能に構成されている。そして規制部材30は、図4(a)および図4(b)に示すように、2つの各台部分体22,22に跨がった状態で支持板部23,23に載置され、上下方向の軸周りに回転可能に配設される。
【0021】
規制部材30の頂壁部31は、図2、図3(a)および図4に示すように、挿通口33に臨む部分が直線状に切り欠かれて、平面視で略D字形に形成されている。そして頂壁部31には、該頂壁部31の中心から挿通口33に臨む切り欠かれた部分に亘り径方向へ直線に延在する規制部35が設けられている。この規制部35は、頂壁部31の中心に位置する一端36が閉塞すると共に、他端が挿通口33の上部に開放する開口37を有する切り欠き形状に形成されている。そして規制部35は、キャスター10における支持体12の保持部12Cの直径より僅かに幅広に形成され、該保持部12Cが挿通した状態で径方向へ移動可能となっている。従って、キャスター10が挿通口33側から規制部材30内へ移動する際に、支持軸16が規制部35を介して頂壁部31から上方へ延出した状態で移動するようになる(図3参照)。すなわち規制部35は、キャスター10の支持体12における保持部12Cの水平方向三方を囲み得ると共に、該水平方向の残りの一方が該保持部12Cを挿通可能に開口するよう構成されている。
【0022】
前記規制部材30は、台部21における支持板部23の上面23Aおよび嵌合部24,24に設けた各曲面部26に摺接した状態での上下方向の軸周りの回転により、挿通口33が両嵌合部24,24の間に位置する第1状態(図4(a)参照)と、挿通口33が両嵌合部24,24の外側に位置する第2状態(図4(b))とに変位して、該挿通口33の向きを変更可能に構成されている。規制部材30の第1状態では、図4(a)に示すように、挿通口33が両嵌合部24,24の間に位置すると共に、該嵌合部24,24の延在方向および規制部35の延在方向が何れも第2方向となっているので、当該規制部材30は図4(a)の左方向へのキャスター10の移動を規制することができない。一方、規制部材30の第2状態では、図4(b)に示すように、挿通口33が同図の下側に位置する嵌合部24の外側に移動すると共に、規制部35が第1方向へ延在して該規制部35の延在方向と両嵌合部24,24の延在方向とが直交するようになるので、当該規制部材30は第2方向へのキャスター10の移動を規制することが可能となる。
【0023】
〔実施例の作用〕
次に、実施例に係る移動規制具20の作用について説明する。
【0024】
床面19の所定位置に対して前記本体18の位置決めが完了したら、先ず図3(a)に示すように、台部21における一方の台部分体22を、嵌合部24をキャスター10に隣接した状態で該キャスター10の側方に位置決めして、マット28の粘着力を利用して床面19に設置する。また、台部21における他方の台部分体22を、嵌合部24をキャスター10に隣接した状態で該キャスター10を挟んで一方の台部分体22と反対側の側方に位置決めして、マット28の粘着力を利用して床面19に設置する。これにより、一対の各台部分体22,22は、各嵌合部24,24がキャスター10を挟んで第1方向で平行に対向した状態で保持される。なお、両嵌合部24,24の直面部25間の第1方向の間隔W2は、規制部材30の挿通口33の第1方向における開口幅W1と同じか僅かに小さくなっている(図3(b)参照)。
【0025】
床面19に対する各台部分体22,22の設置が完了したら、図3(b)に示すように、規制部材30を、本体18の底面18Aと床面19との間の隙間を介して第2方向から移動させる。この際に規制部材30は、挿通口33の両端を各台部分体22,22の嵌合部24の直面部25,25に整合させると共に、側壁部32の下端32Aを各台部分体22,22の支持板部23上に載せたもとで、キャスター10に向けて移動させる。これにより、規制部材30の挿通口33がキャスター10の支持体12に整合すると共に、規制部35の開口37が該キャスター10の保持部12Cまたは支持軸16に整合するようになり、規制部材30は、各台部分体22,22に跨がった状態でキャスター10を覆うようにセットされる(図5(a)参照)。
【0026】
規制部材30を所定位置まで移動させると、各台部分体22,22の嵌合部24に設けた曲面部26,26が、該規制部材30の側壁部32の内周面に当接し、該規制部材30は第1状態となる。次いで、図4(a)に示すように、規制部材30を、上下方向の軸周りにおいて上から見て反時計方向へ90度回転させると、該規制部材30の側壁部32の内周面に設けた第2ストッパー34が、一方の台部分体22の嵌合部24の上面に設けた第1ストッパー27に当接するようになる(図4(b)参照)。そして、両ストッパー27,34が当接することで、規制部材30は第2状態となる。これにより、規制部材30に設けた挿通口33が各嵌合部24,24の間から一方の嵌合部24の外側へ移動すると共に、規制部35が第1方向へ延在するようになるので、キャスター10は第2方向の移動が不能に保持される。
【0027】
実施例の移動規制具20では、台部21に回転可能に配設された規制部材30を、該台部21に対して上下方向の軸周りに回転する簡単な操作により、該規制部材30に設けた挿通口33および規制部35の向きを変えることができ、これにより該規制部材30によってキャスター10を移動規制する向きを簡単に変えることができる。従って、キャスター10が壁や他の物品等に近接した奥側等に位置していても、移動規制具20を設置し易い側から床面19に設置した後に規制部材30を回転させることで、該キャスター10を移動規制する向きを変えることができ、該移動規制具20の設置作業性がよい。
【0028】
また、台部21を2つの台部分体22,22で構成したので、各台部分体22,22をキャスター10に対して設置し易く、移動規制具20の設置作業性を向上することができる。更に、規制部材30を本体18の底面18Aと床面19との間の隙間を介して側方から着脱し得るので、移動規制具20の設置作業を簡単に行なうことができる。
【0029】
4個のキャスター10が配設されている本体18では、図6に示すように、4個の各キャスター10に実施例の移動規制具20を夫々配設して、各移動規制具20毎に規制部材30よるキャスター10の移動規制方向を異ならせることで、本体18の床面19に対する全方向の移動を適切に規制することができる。図6では、後側に位置する垂直壁部40に隣接して本体18が設置された状態を示している。ここで、本体18の左後隅部に位置するキャスター10に配設される移動規制具20(20A)は、台部21の各台部分体22,22を左側からキャスター10の前後に設置した後、規制部材30を左側からセットすると共に上から見て反時計方向へ回転させることで、挿通口33が後側(垂直壁部40)を向いている。本体18の右後隅部に位置するキャスター10に配設される移動規制具20(20B)は、台部21の各台部分体22,22を右側からキャスター10の前後に設置した後、規制部材30を右側からセットすると共に上から見て反時計方向へ回転させることで、挿通口33が前側を向いている。本体18の左前隅部に位置するキャスター10に配設される移動規制具20(20C)は、台部21の各台部分体22,22を前側からキャスター10の左右に設置した後、規制部材30を前側からセットすると共に上から見て時計方向へ回転させることで、挿通口33が右側を向いている。本体18の右前隅部に位置するキャスター10に配設される移動規制具20(20D)は、台部21の各台部分体22,22を前側からキャスター10の左右に設置した後、規制部材30を前側からセットすると共に上から見て反時計方向へ回転させることで、挿通口33が左側を向いている。すなわち、4個のキャスター10に夫々配設した4個の移動規制具20は、規制部材30による移動規制方向が前後左右の4方向で異なっており、よって各移動規制具20により本体18の床面19に対する全方向の移動を適切に規制することができる。
【0030】
〔変更例〕
本願の移動規制具は、実施例に例示した形態に限定されず、様々に変更が可能である。
(1)図7に示すように、台部21は、キャスター10の挿入側および該キャスター10が位置する各嵌合部24,24の間の部分だけを取り除いた単一部材としてもよい。この場合では、床面19に台部21を設置するに際して、一対の嵌合部24,24の直面部25間の第1方向での間隔W2が一義的に決定されるので、該台部21の設置作業を簡易かつ短時間で行なうことができる。なお、マット28の形状は、支持板部23の下面23Bの形状に合わせるのが望ましい。
(2)規制部材30に設けた挿通口33は、図7に示すように、各台部分体22,22の嵌合部24,24に対応する部分だけを幅広とし、該嵌合部24,24から外れた位置は、キャスター10の全幅より僅かに幅広にするように構成してもよい。これにより、挿通口33の開口面積が小さくなり、規制部材30内への塵埃の侵入を抑えることができる。
(3)移動規制具20は、図8に示すように、台部21の一対の台部分体22,22の直線部22A,22A間の第1方向の設置間隔W3を、キャスター10の最大半径Lの2倍以上に設定してもよい。この場合では、上下方向に延在する支持軸16周りでのキャスター10の向きに関係なく、台部21の各台部分体22,22の設置方向を自由に設定でき、キャスター10の移動方向に対して斜めに交差する方向を各台部分体22,22が対向する第1方向とすることができる。
(4)規制部材30の第2状態は、第1状態に対して90度回転した位置に限定されず、該規制部35の開口37と台部分体22の嵌合部24とが重なるようになれば、90度未満または90度以上に回転した位置であってもよい。また、第1状態に対する第2状態の方向は、実施例とは逆方向へ回転させた位置としてもよい。
(5)第1状態から上下方向の軸周りに回転する規制部材30を、所要角度毎に複数の位置で停止保持可能に構成して、キャスター10の移動規制する方向を段階的に変更し得るようにしてもよい。
(6)規制部材30に設けた規制部35は、直線状に延在する切り欠き形状に限らず、曲線状に延在する切り欠き形状や、所要の角度で屈曲して延在する切り欠き形状等であってもよい。
(7)マット28は、マット上面28Aおよびマット下面28Bの両面が粘着剤等により粘着力を有するよう構成したものであれば、ゲル状ではない材料から形成されたものであってもよい。また、マット28の材質も、実施例で例示したものに限定されない。
(8)移動規制具20による固定対象としての支持脚部は、本体18の底面18Aに配設されて該本体18の真下に設けられたものに限らず、本体18の底面18Aから側方へ外れた部位、すなわち本体18から側方へ突出して上方が開放している部位に設けられたものであってもよい。このような支持脚部であっても、支持脚部に対して台部21をセットした後に、該台部21に対して規制部材30をセットすることができる。
(9)移動規制具20による固定対象としての支持脚部は、実施例で例示したキャスター10に限らず、棒状の脚部やボルト等の様々な形態のものが対象とされる。
【符号の説明】
【0031】
10キャスター(支持脚部),18 本体,18A 底面,19 床面,21 台部
22 台部分体,24 嵌合部,28 マット,30 規制部材,33 挿通口,35 規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体を床面から離した状態で支持する支持脚部を移動規制する移動規制具において、
両面が粘着性を有するマットで床面に貼り付けて設置される台部と、
前記台部に対して上下方向の軸周りに回転可能に設けられ、前記床面に設置された前記支持脚部の水平方向三方を囲んで該支持脚部の移動を規制する規制部および該水平方向の残りの一方に開設されて該支持脚部を挿通可能な挿通口を有する規制部材とを備え、
前記規制部材は、前記台部に対して回転することで前記挿通口の向きを変更可能に構成した
ことを特徴とする移動規制具。
【請求項2】
前記台部は、2つの台部分体から構成されて、各台部分体の上面に突出形成された嵌合部に対して前記規制部を嵌め合わせて、前記規制部材が2つの台部分体に跨って回転可能に設けられる請求項1記載の移動規制具。
【請求項3】
前記規制部材は、前記挿通口を介して前記支持脚部を規制部に挿脱し、前記嵌合部に対して側方から着脱可能に構成される請求項2記載の移動規制具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−85769(P2013−85769A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230139(P2011−230139)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】