説明

移動規制装置、搬送装置、及び記録装置

【課題】規制部材によって対象物の移動を十分に規制することが可能な移動規制装置、搬送装置、及び記録装置を提供する。
【解決手段】移動規制装置100は、用紙と当接することで該用紙の移動を規制するストッパー55と、該ストッパー55を規制位置から解除位置へ向かって付勢する引っ張りコイルばね60と、該引っ張りコイルばね60による付勢力に抗してストッパー55が規制位置から解除位置へ回動することを規制するスライダー53と、カセットが装着部へ挿入されてストッパー55に用紙が当接した後に、スライダー53によるストッパー55の回動の規制を解除させるねじりコイルばね62とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動規制装置、この移動規制装置を備えた搬送装置、及びこの搬送装置を備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体(例えばインク)を記録媒体(例えば用紙)に付着させて記録処理を施す記録装置の一種として、記録部(例えば記録ヘッド)から用紙にインクを噴射して所定の画像(文字や図形などを含む)を記録するようにしたインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター」と呼ぶ)が知られている。
【0003】
このプリンターは、複数の用紙を積層状態に載置した給紙カセット(以下、単に「カセット」と呼ぶ)から、最上位の用紙を取り出して記録部側に一枚ずつ給送することによって、用紙に画像を記録するようになっている。そのため、このプリンターには、複数の用紙が積層状態に載置されたカセットを用紙の積層方向と直交する方向に沿って挿抜することで着脱可能に装着するための装着部と、その装着部に装着された状態にあるカセットから用紙を一枚ずつ取り出して順次に記録部側に給送するための給紙ローラーが設けられている。
【0004】
また、このプリンターにおいて、カセットが装着される装着部の内奥、すなわち、その装着部に装着された状態にあるカセットの挿入方向前側の端面と対向することになる部位には、給紙ローラーによってカセット側から取り出されて給送される用紙を一枚ずつ分離しながら記録部側に案内するための分離斜面が形成されている。
【0005】
このため、カセットが使用者によって装着部に装着される場合において、装着部への挿入速度が速い場合などには、慣性力によりカセット内から積層状態の用紙が挿入方向に移動して上り勾配の分離斜面に乗り上げてしまう場合がある。そうなると、分離斜面によって用紙を一枚ずつ分離することができず、用紙が複数枚重なって給送される重送という搬送状態が生じるため、紙詰まりなどの不具合を起こす虞がある。
【0006】
この不具合を回避する手段として、特許文献1には、用紙の給紙方向で下流側の端部(以下、「紙先端部」と呼ぶ)がカセットの挿入方向に移動するのを規制するために上側の退避位置から下側の規制位置に下降するシャッター部材が設けられている。そして、このシャッター部材が各用紙の紙先端部と当接した状態にある下側の規制位置から上側の退避位置に上昇する際に、そのシャッター部材の下端部が給紙方向の上流側に向かって回動されるようになっている。これにより、シャッター部材に当接した状態にある各用紙の紙先端部が積層方向の上位側になるにつれて順次給紙方向下流側に位置した傾斜状態に揃うことを可能としている。
【0007】
しかしながら、特許文献1では、シャッター部材を回動させつつ退避位置にスライドさせているため、これらの動作をシャッター部材に行わせる回転機構及びスライド機構を設けるためのスペースが必要となる。また、これらシャッター部材、回転機構及びスライド機構を退避位置に収容するためのスペースも必要となる。したがって、これらの必要スペースにより、プリンターが大型化してしまうという問題がある。
【0008】
そこで、こうした問題を解決すべく、例えば、カセットの挿入方向前側への用紙の移動を規制する規制面を有するとともに、挿入方向に倒れるように回転動作する規制部材を設ける構造が考えられる。すなわち、この場合、用紙の移動を規制面で規制してその勢いを抑制した後、所定の時間差を有した回転動作によって規制面が倒れて分離斜面から退避することで用紙の移動の規制を解除する。
【0009】
これにより、用紙は分離斜面に乗り上げることなく、一枚ずつ分離されながら記録部に案内されるようになる。この結果、シャッター部材、回転機構及びスライド機構を退避位置に収容するための大きなスペースを必要とせず、規制部材の回転動作に要する機構分のスペースの増加だけで済むので、プリンターの大型化が抑制できる。
【0010】
そして、こうした規制部材の回転動作においては、用紙の移動の規制後に所定の時間差が生じるようにするため、ダンパー装置(移動規制装置)が用いられる。この場合、ダンパー装置の移動部材が抵抗を受けながら移動することで、用紙の移動を規制する状態から規制を解除する状態に至る規制部材の回転動作に所定の時間差を生じさせている。すなわち、規制部材に用紙の移動を規制する規制位置からその規制を解除する解除位置に至る回転動作をさせるために相対的に移動(摺動)する移動部材と該移動部材を支持する支持部材とにおいて、この2つの部材が摺動時に対向する摺動面間に粘性部材を介在させたダンパー装置によって、規制部材の回転動作において所定の時間差を生じさせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−335769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、こうした粘性部材が例えばグリスやオイルのような流体である場合には、2つの部材の当接面間に介在する粘性部材の粘性が環境によって変化するため、規制部材の回転動作タイミングにばらつきが生じてしまう。この結果、用紙の移動を十分に規制することができなくなってしまうという問題があった。
【0013】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、規制部材によって対象物の移動を十分に規制することが可能な移動規制装置、搬送装置、及び記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の移動規制装置は、軸部を中心に回動可能に構成され、対象物を収容した収容体が装着部に挿入されることによって前記収容体から前記対象物が挿入方向に移動した場合に該対象物と当接することで該対象物の移動を規制する規制部材を有し、該規制部材を前記対象物に対する移動を規制する規制位置から前記対象物に対する移動の規制を解除する解除位置へ回動させる移動規制装置であって、前記規制部材が前記規制位置から前記解除位置へ回動することを規制する規制部と、前記収容体が前記装着部へ挿入されて前記規制部材に前記対象物が当接した後に、前記規制部による前記規制部材の回動の規制を解除させる規制解除手段とを備えた。
【0015】
この発明によれば、収容体が装着部へ挿入されて規制部材に対象物が当接した後に、規制解除手段により、規制部による規制部材の回動の規制が解除される。したがって、収容体が装着部へ挿入されてから時間差を有して規制部材が規制位置から解除位置へ回動されるため、規制部材によって対象物の移動を十分に規制することが可能となる。
【0016】
本発明の移動規制装置において、前記規制解除手段は、前記収容体が前記装着部へ挿入された場合に該収容体が当接する当接部と、該当接部と前記規制部とを連結するとともに、前記収容体の前記当接部への当接に伴って前記規制部による前記規制部材の回動の規制を解除させる連結部とを備えた。
【0017】
この発明によれば、収容体が装着部へ挿入されて当接部に当接すると、規制部材に対象物が当接した後に、連結部が規制部による規制部材の回動の規制を解除するため、規制部材による対象物の移動の規制が解除される。このため、収容体の装着部への挿入動作と連動した好適なタイミングで規制部材による対象物の移動の規制を解除することが可能となる。
【0018】
本発明の移動規制装置において、前記規制部は、前記規制部材の回動を規制するロック位置と前記規制部材の回動の規制を解除する非ロック位置との間で移動可能に構成され、前記規制部が前記ロック位置から前記非ロック位置へ移動する際の時間を稼ぐための移動時間延長機構をさらに備えた。
【0019】
この発明によれば、移動時間延長機構により、規制部のロック位置から非ロック位置への移動時間を稼ぐことができるので、規制部材によって対象物の移動を十分且つ確実に規制することが可能となる。
【0020】
本発明の移動規制装置は、前記解除位置にある前記規制部材を前記規制位置へ回動させる付勢手段をさらに備えた。
この発明によれば、付勢手段の付勢力によって解除位置にある規制部材を規制位置へ回動させることが可能となる。
【0021】
本発明の搬送装置は、上記構成の移動規制装置と、該移動規制装置によって移動が規制された前記対象物を搬送経路に沿って下流側へ搬送する搬送手段とを備えた。
この発明によれば、上記移動規制装置と同様の作用効果を得ることが可能となる。
【0022】
本発明の記録装置において、上記構成の搬送装置と、該搬送装置によって搬送される前記対象物に記録処理を施す記録部とを備えた。
この発明によれば、上記移動規制装置と同様の作用効果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態におけるインクジェット式プリンターの概略構成図。
【図2】同プリンターにおけるカセットの斜視図。
【図3】同プリンターにおける移動規制装置の斜視図。
【図4】同プリンターにおける移動規制装置を構成するレバー部材の斜視図。
【図5】同プリンターにおけるストッパーの斜視図。
【図6】同プリンターの移動規制装置において、スライダー支持部からスライダーを取り外したときの状態を示す斜視図。
【図7】同プリンターにおいて、ストッパーがカセットの用紙の移動を規制位置にて規制するときの状態を示す斜視図。
【図8】同プリンターにおいて、ストッパーが解除位置に移動したときの状態を示す斜視図。
【図9】第2実施形態のプリンターにおける移動規制装置の斜視図。
【図10】図9の平面図。
【図11】同プリンターにおいて、ストッパーがカセットの用紙の移動を規制位置にて規制するときの状態を示す斜視図。
【図12】同プリンターにおいて、ストッパーが解除位置に移動したときの状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明の移動規制装置について、これを備えた搬送装置を有する記録装置としてのインクジェット式プリンターにおいて具体化した第1実施形態について、図面に従って説明する。また、以下の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は図1に矢印で示す前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。なお、図1においては、紙面と直交する方向が左右方向になっているとともに、紙面に対して手前側が左方向になっている。
【0025】
図1に示すように、記録装置としてのインクジェット式プリンター11は、筐体状をなすフレーム12内に、装着部13、給送部14、分離部15、搬送装置としての搬送部16、記録部17、及び排出部18を備えている。なお、これらは、インクジェット式プリンター11において記録処理が施される対象物としての用紙Pの搬送経路の上流側から下流側に向かって順次に配置されている。
【0026】
まず、装着部13は、フレーム12内の下部側に配置されるとともに、フレーム12における後面に開口した矩形状の挿入口19を介してフレーム12の外部と連通している。そして、この挿入口19を介して複数の用紙Pが積層状態に載置(収容)された矩形状の収容体としてのカセット20を用紙Pの積層方向(上下方向)と直交する方向(前後方向)に挿抜させることにより、カセット20と共に用紙Pを装着部13に対して着脱自在に装着できるようになっている。
【0027】
次に、給送部14は、フレーム12内において装着部13の内奥と対応する位置に配置されるとともに、図示しない給送モーターの駆動力に基づき回転するピックアップローラー14aを備えている。そして、挿入口19から装着部13に挿入されたカセット20において積層状態に載置されている用紙Pのうち、最上位の用紙Pを、このピックアップローラー14aの回転によって挿入口19とは反対の方向(前側方向)に給送するようになっている。
【0028】
また、分離部15は、フレーム12内において、装着部13に装着された状態にあるカセット20の挿入方向(前側方向)における前側の端面と対向することになる位置に配置されるとともに、装着部13側から見た場合に上り勾配の斜面を形成する斜板21を備えている。そして、この斜板21の斜面にて構成される分離斜面21aに対して、給送部14から給送された用紙Pが紙先端を当接させつつ乗り越えるように移動することで、該用紙Pが分離部15で分離されて下流側の搬送部16に送られるようになっている。
【0029】
図1に示すように、搬送部16は、フレーム12内において、分離部15から送られた用紙Pを反転させてフレーム12内の上部に位置する記録部17側へ搬送可能な反転搬送路22を形成するように配置されている。そして、その反転搬送路22の上流部には分離ローラー23が設けられると共に、その反転搬送路22の分離ローラー23よりも下流側には搬送手段としての複数の中間搬送ローラー24が搬送方向に間隔をおいて設けられている。
【0030】
分離ローラー23は、分離斜面21aで分離されずに重なって送られた用紙Pを分離させて、中間搬送ローラー24が設けられた下流側に用紙Pを一枚ずつ確実に送るようになっている。中間搬送ローラー24は、各々が回転動作することによって用紙Pを、カセット20から分離部15への給送方向(前側方向)とは反対方向となる反転搬送方向(後側方向)に反転させながら搬送して記録部17に送るようになっている。
【0031】
また、記録部17は、既述したように、フレーム12内の上部に配置されるとともに、搬送用ローラー対25、記録ヘッド26、及び用紙Pの支持台となる支持部材27を備えている。記録ヘッド26は、ガイド軸28に沿って、用紙Pの搬送方向と直交する幅方向(左右方向)に往復移動可能なキャリッジ29に固定されている。キャリッジ29は、図示しない駆動手段(例えばキャリッジモーター)によって、ガイド軸28に沿った主走査方向(左右方向)に移動するように駆動されるとともに、その主走査方向における位置が位置検出装置(エンコーダー)30によって検出されることで、その駆動状態が制御されるようになっている。
【0032】
このような構成を有する記録部17に送られた用紙Pは、従動搬送用ローラー31と共に搬送用ローラー対25を構成する駆動搬送用ローラー32の回転に伴って、両搬送用ローラー31,32間に挟持されながら主走査方向と直交する後側方向に搬送されて記録ヘッド26と支持部材27との間を移動する。
【0033】
このとき、用紙Pは支持部材27に押し付けられながら移動するとともに、記録ヘッド26との間にはギャップPGが形成されるようになっている。そして、この状態において、記録ヘッド26は、キャリッジ29の移動とともに用紙Pの幅方向となる主走査方向(左右方向)に移動するとともに、この移動に際して図示しないノズルから、ギャップPGを介して離間する用紙Pに対して液体としてのインクを噴射することにより印刷を行う(記録処理を施す)ようになっている。そして、印刷された用紙Pは、その後、排出部18に送られる。
【0034】
排出部18は、排出用ローラー対33と排出用スタッカー34とを備えている。用紙Pは、歯車状の従動排出用ローラー35と共に排出用ローラー対33を構成する駆動排出用ローラー36の回転に伴って、両排出用ローラー35,36間に挟持されながら搬送方向下流側(図1では後側方向)に搬送されて排出用スタッカー34に排出される。
【0035】
なお、図1に示すように、本実施形態のインクジェット式プリンター11は、ピックアップローラー14aの回転によってカセット20から分離部15側に送り出されて分離斜面21aによって一枚ずつ分離されながら搬送部16に送られる用紙Pの受け渡し部分に、移動規制装置100を備えている。
【0036】
次に、カセット20の構成について詳述する。
図2に示すように、カセット20は、矩形板状のカセット本体40を備えている。カセット本体40の上面には、用紙Pの幅方向への移動を規制する左右一対の幅方向エッジガイド41が立設されている。両幅方向エッジガイド41は、カセット20に積載する用紙Pの幅に合わせて互いの間隔が調整できるように、用紙Pの幅方向(左右方向)にスライド移動可能になっている。
【0037】
さらに、カセット本体40の上面には、用紙Pの後端側への移動を規制する後端エッジガイド42が立設されている。後端エッジガイド42は、カセット20に積載する用紙Pの前後方向の長さに合わせて位置が調整できるように、前後方向にスライド移動可能になっている。また、カセット本体40の前面における左右方向の中央部よりもやや右寄りの位置には、前方に向かって突起部43が延設されている。そして、突起部43の先端部(前端部)は上側に屈曲されている。
【0038】
次に、移動規制装置100の構成について詳述する。
図3に示すように、移動規制装置100は、略矩形板状をなす台座50と、該台座50の上方に配置されたレバー受け部51と、該レバー受け部51に回動可能に支持されたレバー部材52とを備えている。さらに、移動規制装置100は、台座50上に左右方向に沿ってスライド移動可能に配置された規制部としてのスライダー53と、台座50上に設けられた略矩形板状の規制部材としてのストッパー55とを備えている。
【0039】
図3及び図4に示すように、レバー部材52は、左右方向に延びるとともにレバー受け部51に回動可能に支持される被支持軸52aと、該被支持軸52aの左端から後斜め下方に向かって延びる第1レバー52bと、該被支持軸52aの右端から後斜め下方に向かって延びる当接部としての第2レバー52cとを備えている。第1レバー52bは、第2レバー52cよりも長さが若干短くなっているとともに、その下端部が右側へ直角に屈曲している。また、第2レバー52cは、その上端部が若干後側へ突出するように屈曲している。
【0040】
そして、第2レバー52cは、その下端部が、カセット20を装着部13に装着した際に、該カセット20の突起部43(図2参照)によって前側に向かって押圧されるようになっている。すなわち、カセット20を装着部13に装着した際に、カセット20の突起部43(図2参照)が第2レバー52cの下端部に当接するようになっている。なお、レバー受け部51の後面における第1レバー52bと対応する位置には、該第1レバー52bを常に後側に向かって付勢する付勢手段としての圧縮コイルばね54が設けられている。
【0041】
図3及び図5に示すように、ストッパー55は、台座50の上面の後端部における第1レバー52bと前後方向において対向する位置に立設されている。ストッパー55は、その下端部に軸線S(回動軸線)が左右方向に延びる軸部55aを備えるとともに、該軸部55aは回動可能に台座50に支持されている。したがって、ストッパー55は、台座50上において軸部55aを中心に回動可能になっている。この場合、ストッパー55は、直立状態よりも後側に向かっては回動不能になっている。
【0042】
ストッパー55の後面は、カセット20を装着部13に装着した際に、該カセット20の挿入方向である前側方向に移動しようとする用紙Pと当接して該用紙Pの移動を規制する矩形状の規制面55bとされている。一方、ストッパー55の前面における左右両端縁部には、略三角板状をなす一対の舌片部55cが前方に向かって延設されている。そして、両舌片部55c間には、左右方向に延びる略円柱状の接続バー55dが架設されている。
【0043】
台座50上におけるストッパー55の後側には前後方向から見て略逆U字状をなす接続部59が設けられるとともに、該接続部59と接続バー55dとは引っ張りコイルばね60を介して接続されている。したがって、ストッパー55は、接続バー55dにおいて引っ張りコイルばね60の付勢力によって常に前側に引っ張られるようになっている。この引っ張りコイルばね60は、圧縮コイルばね54よりも付勢力が小さくなるように設定されている。
【0044】
また、両舌片部55cの前面における接続バー55dよりもやや上側には、レバー部材52の第1レバー52bの下端部が当接している。この場合、ストッパー55は、引っ張りコイルばね60よりも付勢力の大きい圧縮コイルばね54の付勢力(押圧力)を、第1レバー52bを介して前側から受けるため、前側に倒れないように(前側に回動しないように)なっている。
【0045】
すなわち、ストッパー55に第1レバー52bの下端部が当接した状態、すなわちカセット20が装着部13に装着されていない状態では、該ストッパー55が直立するようになっている。そして、ストッパー55は、直立状態にあるときの位置態様が規制位置(図3に示す位置)とされるとともに、該規制位置にある状態では、カセット20を装着部13に装着した際に、該カセット20の挿入方向である前側方向に移動しようとする用紙Pの移動を規制するようになっている。
【0046】
図3及び図6に示すように、台座50上におけるストッパー55の右側には、スライダー53を左右方向にスライド移動可能に支持するスライダー支持部56が左右方向に沿って延設されている。スライダー支持部56の上面には、互いに平行且つ等間隔で左右方向に沿って延びる3つの溝部56aが形成されている。そして、各溝部56a内には、グリスなどの粘性部材(図示略)が塗布されている。
【0047】
スライダー53は、矩形板状のベース部57と、該ベース部57の下面から下方に向かって突設された3つのスライド部57aと、該ベース部57の上面における左端部に設けられたブロック状の係合部58とを備えている。
【0048】
各スライド部57aは、各溝部56aと対応する矩形板状をなしているとともに、該各溝部56a内に摺動可能に挿入されている。この場合、各スライド部57aが各溝部56a内を摺動する際には、粘性部材(図示略)による抵抗を受ける。したがって、本実施形態では、粘性部材(図示略)が塗布された各溝部56a及び該各溝部56a内を摺動する各スライド部57aが移動時間延長機構を構成している。なお、係合部58には、該係合部58を前後方向に貫通する貫通孔58aが形成されている。
【0049】
図3に示すように、台座50上におけるスライダー支持部56の前側であって接続部59の右側の位置には略円柱状の支持突起61が設けられるとともに、該支持突起61には連結部としてのねじりコイルばね62が支持されている。すなわち、支持突起61は、ねじりコイルばね62に挿通されて該ねじりコイルばね62を回動可能に支持している。ねじりコイルばね62の一端部62aは、後側に向かって真っ直ぐに延びている。一方、ねじりコイルばね62の他端部62bは、後斜め右側に向かって真っ直ぐに延びた後、U字状に湾曲して左側に向かって真っ直ぐに延びている。
【0050】
そして、ねじりコイルばね62の一端部62aはスライダー53の係合部58の貫通孔58aに挿通される一方、ねじりコイルばね62の他端部62bには第2レバー52cの下端部が内側から係合している。
【0051】
また、カセット20が装着部13に装着されていないときのスライダー53の位置態様、すなわちスライダー支持部56上において最も左側にスライド移動したときのスライダー53の位置態様はロック位置(図3に示す位置)とされている。そして、スライダー53がロック位置にある場合には、スライダー53のベース部57の後面における左端部がストッパー55の前面における下端部と係合することで、ストッパー55が前側へ回動すること(前側に倒れること)が規制されるようになっている。
【0052】
一方、カセット20が装着部13に装着されたときのスライダー53の位置態様、すなわちスライダー支持部56上において最も右側にスライド移動したときのスライダー53の位置態様は非ロック位置(図8に示す位置)とされている。そして、スライダー53が非ロック位置にある場合には、該スライダー53によるストッパー55が前側へ回動すること(前側に倒れること)の規制状態が解除されるようになっている。
【0053】
なお、本実施形態では、レバー部材52とねじりコイルばね62とにより規制解除手段が構成されている。
次に、移動規制装置100の作用について詳述する。
【0054】
さて、装着部13にカセット20が装着されていない状態では、図3に示すように、スライダー53がロック位置にあるとともにストッパー55が規制位置にある状態になっている。この状態から、複数の用紙Pが積層状態で収容されたカセット20が挿入口19から装着部13に勢いよく挿入方向に沿って挿入して装着されると、カセット20の突起部43(図2参照)が第2レバー52cを前側に向かって押圧する。
【0055】
すると、レバー部材52は、圧縮コイルばね54の付勢力に抗して右側から見て被支持軸52aを回動軸として反時計方向に回動するため、図7に示すように、第1レバー52bの下端部及び第2レバー52cの下端部は、同時に前側に向かって移動する。これにより、第1レバー52bの下端部がストッパー55から離間して該第1レバー52bによるストッパー55の前側への回動の規制が解除されるとともに、第2レバー52cがねじりコイルばね62の他端部62bを平面視で反時計方向に回動させる。
【0056】
このとき、ねじりコイルばね62の他端部62bの回動に伴って一端部62aも平面視で反時計方向に回動されようとするため、スライダー53がスライダー支持部56に沿って右側へ付勢される。しかしながら、スライダー53の各スライド部57aとスライダー支持部56の各溝部56aとの間に介在する粘性部材(図示略)の抵抗により、該スライダー53が直ちに右側にスライド移動することはない。
【0057】
このため、コイルばね62は、その両端部62a,62bのうち他端部62bのみが平面視で反時計方向に回動されて撓んだ状態(図7に示す状態)になる。すなわち、ねじりコイルばね62の他端部62bが回動するタイミングと、該ねじりコイルばね62の他端部62bの回動に伴う弾性力が一端部62aを介してスライダー53に伝達されて該スライダー53が右側にスライド移動するタイミングとの間には、若干の時間差がある。
【0058】
さらにこのとき、カセット20の装着部13への装着時の勢いによって用紙Pが挿入方向である前側に移動しようとするが、該用紙Pはストッパー55の規制面55bに当接することでその移動が規制される。そして、この用紙Pの規制面55bへの当接時の衝撃により、ストッパー55が右側から見て軸部55aを中心に時計方向に回動しようとするが、スライダー53がロック位置にあるため、該スライダー53によりストッパー55の回動が規制される。
【0059】
この場合、スライダー53の移動方向は、ストッパー55の軸部の軸線Sと直交する平面に対して直交しているため、用紙Pの規制面55bへの当接時の衝撃がストッパー55を介してスライダー53に加わる方向とスライダー53の移動方向とがほぼ直交する。このため、用紙Pの規制面55bへの当接時の衝撃によってスライダー53がロック位置から非ロック位置へ移動することが好適に抑制されるので、該衝撃がスライダー53によって効果的に受け止められる。この結果、スライダー53によってストッパー55が規制位置で確実にロックされるため、該ストッパー55によって用紙Pの移動が十分且つ確実に抑制される。
【0060】
そして、ストッパー55によって用紙Pの移動が十分に抑制された後には、ねじりコイルばね62の弾性力(付勢力)が一端部62aを介してスライダー53に伝達される。そして、このねじりコイルばね62の弾性力によってスライダー53の各スライド部57aが粘性部材(図示略)の抵抗を受けながらスライダー支持部56に沿って非ロック位置へスライド移動する。この場合、スライダー53のロック位置から非ロック位置への移動時間は、各スライド部57aが粘性部材(図示略)の抵抗を受ける分だけ長くなる。すなわち、各スライド部57aが粘性部材(図示略)の抵抗を受けることで、スライダー53のロック位置から非ロック位置への移動速度が遅くなるため、スライダー53のロック位置から非ロック位置への移動時間が稼がれる。
【0061】
すると、スライダー53によるストッパー55の回動の規制状態が解除されるため、図8に示すように、ストッパー55が引っ張りコイルばね60の付勢力によって前側に引っ張られる。これにより、ストッパー55が前側に倒れるように回動して最大限傾斜する。このときのストッパー55の位置は解除位置(図8に示す位置)とされている。そして、ストッパー55が解除位置にあるときには、用紙Pの前側への移動の規制が解除される、すなわち用紙Pの前側への移動が許容されるため、カセット20から分離斜面21aへの用紙Pの移動がストッパー55によって妨げられることはない。
【0062】
このように、本実施形態のインクジェット式プリンター11では、カセット20を装着部13に装着するタイミングに遅延して(時間差を有して)ストッパー55が規制位置から解除位置へ回動するようになっている。このため、カセット20の装着部13への装着の際に用紙Pが前側へ移動することをストッパー55によって十分に抑制することができるとともに、カセット20から分離斜面21aへ用紙Pを搬送する際には、ストッパー55によって該用紙Pの搬送が妨げられないようにすることができる。
【0063】
また、カセット20に収容された用紙Pがなくなって、該カセット20に用紙Pを補充するべく、装着部13からカセット20を後側に向かって引き抜くと、レバー部材52は、圧縮コイルばね54の付勢力によって右側から見て被支持軸52aを回転軸として時計方向に回動される。すると、第1レバー52bの下端部及び第2レバー52cの下端部は、同時に後側に向かって移動する。これにより、第1レバー52bの下端部がストッパー55を後側へ向かって押圧するため、引っ張りコイルばね60が引き伸ばされながらストッパー55が解除位置から規制位置へ回動される。
【0064】
このとき、第2レバー52cがねじりコイルばね62の他端部62bを平面視で時計方向に回動させるため、該他端部62bの回動に伴って一端部62aも平面視で時計方向に回動されようとする。このため、ねじりコイルばね62によってスライダー53がスライダー支持部56に沿って左側へ付勢されるが、スライダー53の各スライド部57aとスライダー支持部56の各溝部56aとの間に介在する粘性部材(図示略)の抵抗により、該スライダー53が直ちに左側にスライド移動することはない。
【0065】
このため、コイルばね62は、その両端部62a,62bのうち他端部62bのみが平面視で時計方向に回動されて撓んだ状態になる。すなわち、ねじりコイルばね62の他端部62bが回動するタイミングと、該ねじりコイルばね62の他端部62bの回動に伴う弾性力が一端部62aを介してスライダー53に伝達されて該スライダー53が左側にスライド移動するタイミングとの間には、若干の時間差がある。
【0066】
したがって、ストッパー55が解除位置から規制位置へ回動されるタイミングよりもスライダー53が非ロック位置からロック位置へスライド移動されるタイミングの方が確実に遅くなるので、スライダー53によりストッパー55が規制位置で確実にロックされる。
【0067】
因みに、ストッパー55が解除位置から規制位置へ回動されるタイミングよりもスライダー53が非ロック位置からロック位置へスライド移動されるタイミングの方が早くなってしまうと、ストッパー55の右側面にスライダー53がぶつかってしまうため、スライダー53によってストッパー55が規制位置でうまくロックされなくなってしまう。
【0068】
以上、詳述した第1実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)移動規制装置100は、用紙Pが積層状態で載置されたカセット20が装着部13へ挿入された場合に、レバー部材52によるストッパー55の回動の規制が解除されるとともにストッパー55に用紙Pが当接した後に、ねじりコイルばね62により、スライダー53によるストッパー55の回動の規制が解除される。したがって、カセット20が装着部13へ挿入されてから時間差を有してストッパー55を規制位置から解除位置へ回動させることができるので、ストッパー55によって用紙Pの移動を十分に規制することができる。
【0069】
(2)移動規制装置100において、スライダー53は、ロック位置から非ロック位置へ移動する際にスライダー支持部56の各溝部56aに塗布された粘性部材(図示略)の抵抗を受ける各スライド部57aを有している。このため、スライダー53のロック位置から非ロック位置への移動時間を稼ぐことができるので、カセット20が装着部13へ挿入されてからストッパー55が規制位置から解除位置へ回動し始めるまでの時間を十分に確保することができる。したがって、ストッパー55に用紙Pの移動を十分且つ確実に規制させることができる。
【0070】
(3)移動規制装置100は、解除位置にあるストッパー55を第1レバー52b越しに規制位置へ向かって付勢する圧縮コイルばね54を備えているため、手動ではなく自動的にストッパー55を解除位置から規制位置へ戻すことができる。
【0071】
(4)スライダー53はストッパー55の軸部55aの軸線Sと直交する平面に対して直交する方向(左右方向)に移動するように構成されているため、用紙Pのストッパー55への当接時の衝撃が該ストッパー55を介してスライダー53に加わる方向と、該スライダー53の移動方向とが直交する。したがって、用紙Pのストッパー55への当接時の衝撃によってスライダー53がロック位置から非ロック位置へ移動されることを効果的に抑制することができる。したがって、用紙Pのストッパー55への当接時の衝撃をスライダー53によって好適に受け止めることができる。
【0072】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態を上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
この第2実施形態は、図9〜図12に示すように、上記第1実施形態における移動規制装置100において、レバー部材52の代わりにL字状のスライド部材70を用いたものである。また、カセット20においては、突起部43が省略されるとともに、カセット本体40の前後方向(カセット20の装着部13に対する挿抜方向)の長さが該カセット本体40上に載置された用紙Pの前端よりも該カセット本体40の前端の方が前側に突出するように設定されている。
【0073】
図9及び図10に示すように、スライド部材70は、台座50上に前後方向に沿ってスライド移動可能に支持されている。スライド部材70は、台座50上におけるストッパー55の左側に位置するとともに前後方向に真っ直ぐに延びる押圧部71と、台座50上におけるストッパー55の前側に位置するとともに該押圧部71の右側面の前端部から右側に向かって真っ直ぐに延びる作動部72とを備えている。
【0074】
台座50上における押圧部71の前側には、スライド部材70を常に後側に向かって付勢する圧縮コイルばね54が設けられている。押圧部71の後面は、カセット20を装着部13に装着した際に、カセット本体40の前端面で前側に向かって押圧される押圧面71a(当接部)とされている。この場合、押圧部71の押圧面71aは、台座50の後面よりも後側に位置している。
【0075】
作動部72は、その後部がストッパー55の両舌片部55cの前面における下部に当接している。作動部72の右端部における下面には、真下に向かって突出する略円柱状の突出部72aが設けられている。突出部72aは、ねじりコイルばね62の他端部62bに内側から係合している。
【0076】
さて、装着部13にカセット20が装着されていない状態では、図9及び図10に示すように、スライダー53がロック位置にあるとともにストッパー55が規制位置にある状態になっている。この状態から、複数の用紙Pが積層状態で収容されたカセット20が挿入口19から装着部13に勢いよく挿入方向に沿って挿入して装着されると、図11に示すように、カセット本体40の前端面がスライド部材70の押圧部71の押圧面71aを前側に向かって押圧する。
【0077】
すると、スライド部材70は、圧縮コイルばね54の付勢力に抗して前側に向かってスライド移動する。これにより、作動部72の後部がストッパー55の両舌片部55cの前面から離間して該作動部72によるストッパー55の前側への回動の規制が解除されるとともに、突出部72aがねじりコイルばね62の他端部62bを平面視で反時計方向に回動させる。
【0078】
このとき、ねじりコイルばね62の他端部62bの回動に伴って一端部62aも平面視で反時計方向に回動されようとするため、スライダー53がスライダー支持部56に沿って右側へ付勢される。しかしながら、スライダー53の各スライド部57aとスライダー支持部56の各溝部56aとの間に介在する粘性部材(図示略)の抵抗により、該スライダー53が直ちに右側にスライド移動することはない。
【0079】
このため、コイルばね62は、その両端部62a,62bのうち他端部62bのみが平面視で反時計方向に回動されて撓んだ状態(図11に示す状態)になる。すなわち、ねじりコイルばね62の他端部62bが回動するタイミングと、該ねじりコイルばね62の他端部62bの回動に伴う弾性力が一端部62aを介してスライダー53に伝達されて該スライダー53が右側にスライド移動するタイミングとの間には、若干の時間差がある。
【0080】
さらにこのとき、カセット20の装着部13への装着時の勢いによって用紙Pが挿入方向である前側に移動しようとするが、該用紙Pはストッパー55の規制面55bに当接することでその移動が規制される。そして、この用紙Pの規制面55bへの当接時の衝撃により、ストッパー55が右側から見て軸部55aを中心に時計方向に回動しようとするが、スライダー53がロック位置にあるため、該スライダー53によりストッパー55の回動が規制される。
【0081】
この場合、スライダー53の移動方向は、ストッパー55の軸部の軸線Sと直交する平面に対して直交しているため、用紙Pの規制面55bへの当接時の衝撃がストッパー55を介してスライダー53に加わる方向とスライダー53の移動方向とがほぼ直交する。このため、用紙Pの規制面55bへの当接時の衝撃によってスライダー53がロック位置から非ロック位置へ移動することが好適に抑制されるので、該衝撃がスライダー53によって効果的に受け止められる。この結果、スライダー53によってストッパー55が規制位置で確実にロックされるため、該ストッパー55によって用紙Pの移動が十分且つ確実に抑制される。
【0082】
そして、ストッパー55によって用紙Pの移動が十分に抑制された後には、ねじりコイルばね62の弾性力(付勢力)が一端部62aを介してスライダー53に伝達される。そして、このねじりコイルばね62の弾性力によってスライダー53の各スライド部57aが粘性部材(図示略)の抵抗を受けながらスライダー支持部56に沿って非ロック位置へスライド移動する。この場合、スライダー53のロック位置から非ロック位置への移動時間は、各スライド部57aが粘性部材(図示略)の抵抗を受ける分だけ長くなる。すなわち、各スライド部57aが粘性部材(図示略)の抵抗を受けることで、スライダー53のロック位置から非ロック位置への移動速度が遅くなるため、スライダー53のロック位置から非ロック位置への移動時間が稼がれる。
【0083】
すると、スライダー53によるストッパー55の回動の規制状態が解除されるため、図12に示すように、ストッパー55が引っ張りコイルばね60の付勢力によって前側に引っ張られる。すると、図12に示すように、ストッパー55が規制位置から解除位置に回動する。
【0084】
また、カセット20に収容された用紙Pがなくなって、該カセット20に用紙Pを補充するべく、装着部13からカセット20を後側に向かって引き抜くと、スライド部材70は、圧縮コイルばね54の付勢力によって後側に向かってスライド移動する。すると、スライド部材70の作動部72がストッパー55を後側へ向かって押圧するため、引っ張りコイルばね60が引き伸ばされながらストッパー55が解除位置から規制位置へ回動される。
【0085】
このとき、突出部72aがねじりコイルばね62の他端部62bを平面視で時計方向に回動させるため、該他端部62bの回動に伴って一端部62aも平面視で時計方向に回動されようとする。このため、ねじりコイルばね62によってスライダー53がスライダー支持部56に沿って左側へ付勢されるが、スライダー53の各スライド部57aとスライダー支持部56の各溝部56aとの間に介在する粘性部材(図示略)の抵抗により、該スライダー53が直ちに左側にスライド移動することはない。
【0086】
このため、コイルばね62は、その両端部62a,62bのうち他端部62bのみが平面視で時計方向に回動されて撓んだ状態になる。すなわち、ねじりコイルばね62の他端部62bが回動するタイミングと、該ねじりコイルばね62の他端部62bの回動に伴う弾性力が一端部62aを介してスライダー53に伝達されて該スライダー53が左側にスライド移動するタイミングとの間には、若干の時間差がある。
【0087】
したがって、ストッパー55が解除位置から規制位置へ回動されるタイミングよりもスライダー53が非ロック位置からロック位置へスライド移動されるタイミングの方が確実に遅くなるので、スライダー53によりストッパー55が規制位置で確実にロックされる。
【0088】
以上、詳述した第2実施形態によれば、上記(1)〜(4)の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
(5)レバー部材52の代わりにL字状のスライド部材70を用いたため、レバー受け部51を省略することができる。このため、第1実施形態に比べて、移動規制装置100を構成する部品点数を削減することができるとともに、移動規制装置100の小型化に寄与できる。
(変更例)
なお、上記各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
【0089】
・ねじりコイルばね62を、該ねじりコイルばね62と同じ形状で且つ支持突起61に回動可能に支持された弾力性を有さない剛体に変更してもよい。この場合、カセット20が装着部13へ挿入されることで、ストッパー55に用紙Pが当接した後に、スライダー53によるストッパー55の回動の規制が解除されるように、剛体に対して遊びを持たせた状態で第2レバー52c(突出部72a)を係合させる必要がある。
【0090】
・スライダー53はストッパー55の軸部55aの軸線Sと直交する平面に対して交差する方向に移動するように構成してもよい。このようにすれば、用紙Pのストッパー55への当接時の衝撃が該ストッパー55を介してスライダー53に加わる方向と、該スライダー53の移動方向とが異なる(交差する)ため、用紙Pのストッパー55への当接時の衝撃によってスライダー53がロック位置から非ロック位置へ移動されることを抑制することができる。したがって、用紙Pのストッパー55への当接時の衝撃をスライダー53によって受け止めることができる。
【0091】
・移動規制装置100は、ねじりコイルばね62を省略し、スライダー53をアクチュエーターによってロック位置及び非ロック位置間でスライド移動させるように構成してもよい。この場合、移動規制装置100に、アクチュエーターの駆動を制御する制御装置と、レバー部材52(スライド部材70)によるストッパー55の回動の規制が解除されたか否かを検出するセンサーとを設ける必要がある。そして、制御装置は、センサーからの検出信号に基づいてレバー部材52(スライド部材70)によるストッパー55の回動の規制が解除されたと判断した場合に、用紙Pのストッパー55への当接に遅れてスライダー53がロック位置から非ロック位置へスライド移動するようにアクチュエーターの駆動を制御する。なお、この場合には、レバー部材52(スライド部材70)、アクチュエーター、制御装置、及びセンサーによって規制解除手段が構成される。
【0092】
・移動規制装置100は、ねじりコイルばね62の代わりに、互いに径の異なる複数の歯車を用いるようにしてもよい。この場合、各歯車は、レバー部材52が回動するとき(スライド部材70がスライド移動するとき)の力を、スライダー53をロック位置及び非ロック位置間でスライド移動させるための力として、該レバー部材52の回動動作(スライド部材70のスライド移動動作)に遅れて伝達するように設けられる。なお、この場合には、レバー部材52(スライド部材70)及び各歯車によって規制解除手段が構成される。
【0093】
・スライダー53の代わりにピックアップローラー14aの回転に連動してストッパー55の回動を規制する位置とストッパー55の回動の規制を解除する位置との間で移動する移動部材を規制部として用いてもよい。この場合、移動部材は、ピックアップローラー14aの停止時にストッパー55の回動を規制する位置に位置するとともに、ピックアップローラー14aの回転時にストッパー55の回動の規制を解除する位置に位置するように設けられる。このようにすれば、用紙Pの給紙時には、ピックアップローラー14aの回転に伴って移動部材によるストッパー55の回動の規制が解除されることで、ストッパー55が確実に解除位置へ回動するので、カセット20から分離斜面21aへの用紙Pの移動がストッパー55によって妨げられることを防止できる。また、移動部材がピックアップローラー14aの動力で動作するため、合理的である。
【0094】
・用紙Pの代わりにプラスチックフィルムや金属の薄板などを対象物として用いてもよい。
・インクジェット式プリンター11は、記録ヘッドが固定されていて、その下を搬送される用紙に対してインクを噴射する、いわゆるラインヘッドプリンターであってもよい。
【0095】
・上記各実施形態では、記録装置をインクジェット式プリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【0096】
さらに、上記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)前記規制部は、前記規制部材の回動軸線と直交する平面に対して交差する方向に移動することを特徴とする請求項3に記載の移動規制装置。
【0097】
この構成によれば、対象物の規制部材への当接時の衝撃が該規制部材を介して規制部に加わる方向と、該規制部の移動方向とが交差するため、対象物の規制部材への当接時の衝撃によって規制部がロック位置から非ロック位置へ移動されることを抑制することが可能となる。したがって、対象物の規制部材への当接時の衝撃を規制部によって受け止めることが可能となる。
【0098】
(ロ)前記規制部は、前記規制部材の回動軸線と直交する平面に対して直交する方向に移動することを特徴とする上記(イ)または請求項3に記載の移動規制装置。
この構成によれば、対象物の規制部材への当接時の衝撃が該規制部材を介して規制部に加わる方向と、該規制部の移動方向とが直交するため、対象物の規制部材への当接時の衝撃によって規制部がロック位置から非ロック位置へ移動されることを効果的に抑制することが可能となる。すなわち、対象物の規制部材への当接時の衝撃を規制部によって好適に受け止めることが可能となる。
【符号の説明】
【0099】
11…記録装置としてのインクジェット式プリンター、13…装着部、16…搬送装置としての搬送部、17…記録部、20…収容体としてのカセット、24…搬送手段としての中間搬送ローラー、52…規制解除手段を構成するレバー部材、52c…当接部としての第2レバー、53…規制部としてのスライダー、54…付勢手段としての圧縮コイルばね、55…規制部材としてのストッパー、55a…軸部、56a…移動時間延長機構を構成する溝部、57a…移動時間延長機構を構成するスライド部、62…規制解除手段を構成する連結部としてのねじりコイルばね、70…規制解除手段を構成するスライド部材、71a…当接部としての押圧面、100…移動規制装置、P…対象物としての用紙、S…回動軸線としての軸線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部を中心に回動可能に構成され、対象物を収容した収容体が装着部に挿入されることによって前記収容体から前記対象物が挿入方向に移動した場合に該対象物と当接することで該対象物の移動を規制する規制部材を有し、該規制部材を前記対象物に対する移動を規制する規制位置から前記対象物に対する移動の規制を解除する解除位置へ回動させる移動規制装置であって、
前記規制部材が前記規制位置から前記解除位置へ回動することを規制する規制部と、
前記収容体が前記装着部へ挿入されて前記規制部材に前記対象物が当接した後に、前記規制部による前記規制部材の回動の規制を解除させる規制解除手段と
を備えたことを特徴とする移動規制装置。
【請求項2】
前記規制解除手段は、
前記収容体が前記装着部へ挿入された場合に該収容体が当接する当接部と、
該当接部と前記規制部とを連結するとともに、前記収容体の前記当接部への当接に伴って前記規制部による前記規制部材の回動の規制を解除させる連結部と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の移動規制装置。
【請求項3】
前記規制部は、前記規制部材の回動を規制するロック位置と前記規制部材の回動の規制を解除する非ロック位置との間で移動可能に構成され、
前記規制部が前記ロック位置から前記非ロック位置へ移動する際の時間を稼ぐための移動時間延長機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の移動規制装置。
【請求項4】
前記解除位置にある前記規制部材を前記規制位置へ回動させる付勢手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の移動規制装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の移動規制装置と、該移動規制装置によって移動が規制された前記対象物を搬送経路に沿って下流側へ搬送する搬送手段とを備えたことを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項5に記載の搬送装置と、該搬送装置によって搬送される前記対象物に記録処理を施す記録部とを備えたことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−20850(P2012−20850A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160868(P2010−160868)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】