説明

移動農機

【課題】エンジンから排出される排気ガス中から微小固形物を除去する除去フィルタと、除去フィルタに付着した付着物を加熱によって取除くことにより除去フィルタの機能を再生させる再生手段とを設けるにあたり、除去フィルタの機能再生作業を安定的に行うことが可能な移動農機を提供する。
【解決手段】エンジンの排気ガス中の微小固形物の除去を行う除去フィルタと、除去フィルタの機能を再生させる再生手段と、除去フィルタの再生制御を行う制御部と、副変速装置を介した走行変速操作を前後揺動によって行う副変速レバーとを設け、ニュートラル位置において左右方向に揺動可能なように副変速レバーを構成し、左右方向への揺動操作を検出する検出手段を設け、副変速レバーのニュートラル位置における左右方向への揺動操作が検出手段によって検出されることに起因して除去フィルタの再生制御を開始するように制御部を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバイン等の移動農機に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等のエンジンから排出される排気ガスには、環境汚染の原因になる有害物質である煤等の微小固形物(パティキュレート,黒鉛)が含まれることが広く知られているが、排気ガス中の微小固形物は、排気微粒子除去装置と呼ばれる除去フィルタによって除去することが可能であり、近年の環境問題への関心の高まりによって、この除去フィルタを、乗用車や大型トラック等の自動車のみならず、コンバインや移植機やトラクタ等の移動農機にも搭載する必要性が高まっている。
【0003】
ところで、この除去フィルタは、そのフィルタリング機能によって、排気ガス中の微小固形物等を捕捉して除去するため、除去フィルタ表面には、捕捉した微小固形物等が付着物として堆積し、時間経過とともに通気性や除去機能が低下するという問題がある。
【0004】
この問題を改善すべく、エンジンからの高温の排気ガスによって除去フィルタを加熱することにより除去フィルタ表面に付着した付着物を取除き、除去フィルタのフィルタリング機能を再生させる特許文献1に示す再生手段が公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−167950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記文献の再生手段では、排気ガスの温度を高温状態で安定させることにより除去フィルタの機能再生作業を安定的に行なうことが可能になるが、エンジン回転数やエンジン負荷が不安定に変化する場合、除去フィルタの機能再生作業を安定的に行うことは困難である。
【0007】
特に、移動農機では、走行変速を行う主変速装置が、可変容量形の油圧ポンプと油圧モータとを組合せた油圧式無段階変速装置であるHSTによって構成されることが多く、例えば、自脱式コンバインにおいては、その多くが、HSTを主変速装置として採用している。そして、このHSTは、主変速操作具のニュートラル操作に基づいて正確にニュートラル状態に切換えるために、主変速操作具や、主変速操作具からHSTまでの連係機構等の組付作業を高精度で行う必要がある。
【0008】
このため、例えば、主変速操作具によってニュートラルへの変速操作を行ったとしても、HSTがニュートラル状態にならず、走行側への動力伝動が遮断されない場合があり、この場合には、エンジン回転数やエンジン負荷が安定せず、再生手段によって除去フィルタの機能を再生する作業を安定的に行うことができない。
【0009】
本発明は、エンジンから排出される排気ガス中から微小固形物を除去する除去フィルタと、除去フィルタに付着した付着物を加熱によって取除くことにより除去フィルタの機能を再生させる再生手段とを設けるにあたり、除去フィルタの機能再生作業を安定的に行うことが可能な移動農機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明の移動農機は、第1に、エンジン11の排気ガス中の微小固形物の除去を行う除去フィルタ14と、除去フィルタ14に付着した付着物を加熱によって取除くことにより除去フィルタ14の機能を再生させる再生手段と、該再生手段を介した除去フィルタ14の再生制御を行う制御部19と、走行変速を行う主変速装置及び副変速装置と、副変速装置を介した走行変速操作を前後揺動によって行う副変速レバー33とを設け、ニュートラル位置において左右方向に揺動可能なように該副変速レバー33を構成し、副変速レバー33の上記左右方向への揺動操作を検出する検出手段36を設け、副変速レバー33のニュートラル位置における上記左右方向への揺動操作が検出手段36によって検出されることに起因して除去フィルタ14の上記再生制御を開始するように制御部19を構成したことを特徴としている。
【0011】
第2に、駐車ブレーキによって機体を停止させる駐車操作を検出する駐車操作検出手段39を設け、駐車操作検出手段39によって上記駐車操作が検出された場合にのみ、除去フィルタ14の上記再生制御を開始するように制御部19を構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
以上のように構成される本発明の移動農機によれば、副変速装置がニュートラルに切換えられてエンジン回転数やエンジン負荷が変動しにくい状態において、再生手段を介した除去フィルタの機能再生が実行されるため、除去フィルタの再生を安定的且つ効率的に行うことが可能になる。
【0013】
また、駐車ブレーキによって機体を停止させる駐車操作を検出する駐車操作検出手段を設け、駐車操作検出手段によって上記駐車操作が検出された場合にのみ、除去フィルタの上記再生制御を開始するように制御部を構成すれば、傾斜地等でも確実に機体が駐車された状態で、除去フィルタの機能再生をより安定的且つ効率的に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した自脱式のコンバインの全体側面図である。
【図2】操縦部の構成を示す平面図である。
【図3】メータユニットの構成を示す平面図である。
【図4】副変速レバーの構成を示す平面図である。
【図5】本コンバインの制御ブロック図である。
【図6】本コンバインの制御内容を示すタイミングチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明を適用した自脱式のコンバインの全体側面図である。移動農機の一種であるコンバインは、左右一対のクローラ式走行装置(走行部)1L,1Rによって支持された機体フレーム2上における進行方向左(以下、左)側半部に脱穀部(図示しない)を備えるとともに、機体フレーム2上の右側半部における前側に操縦部3を、後側にグレンタンク4をそれぞれ設けることにより走行機体6を構成している。この走行機体6の前側には前処理部7が昇降可能に連結されている。
【0016】
圃場での走行中、前処理部7では、ディバイダ8によって分草され引起装置7a側に案内された圃場の穀稈が、該引起装置7aによって引起された後、刈刃7bによって刈取られ、その後、搬送装置7cによって走行機体6の前端部の脱穀部側に搬送される。脱穀部側に搬送された穀稈は、脱穀フィードチェーン(図示しない)に渡され、該脱穀フィードチェーンにより後方搬送される過程で、扱胴(図示しない)等によって扱降ろされて排藁となる。
【0017】
該排藁は、排藁搬送体(図示しない)によって後方搬送され、走行機体6の後端部から機外に排出される。一方、扱胴等によって扱降されて脱穀処理された処理物は、揺動選別体(図示しない)や、唐箕ファン等によって起風される選別風によって、藁屑等と、籾等の穀粒とに選別され、藁屑等は走行機体6の後端部から機外に排出され、穀粒はグレンタンク4に搬送されて収容される。
【0018】
グレンタンク4内の穀粒は、走行機体6の後端部の右側に基端が支持された筒状のオーガ9によって機外に排出される。ちなみに、オーガ9は、上下揺動可能且つ左右旋回可能に支持され、その内部にはオーガ排出ラセン(図示しない)が内装されており、このオーガ排出ラセンを油圧モータであるオーガ排出モータ(図示しない)によって駆動させることによりグレンタンク4内の穀粒がオーガ9の先端側から排出される。
【0019】
そして、脱穀フィードチェーン及び前処理部7側の上述した各種機器等から構成されて穀稈の刈取・搬送処理を行う刈取側作業部と、扱胴及び揺動選別体等から構成されて穀稈の脱穀・選別処理を行う脱穀側作業部と、上述の各クローラ式走行装置1L,1Rとは、エンジン動力によって、それぞれ駆動される。
【0020】
エンジン11は、操縦部3のオペレータが着座する座席12の真下側に形成されて外側方(図示する例では右側方)が開放されたエンジンルーム(図示しない)内に、収容された状態で、固定設置されたディーゼルエンジンであって、このエンジンルームの開放側は、開閉自在なエンジンカバー13によってカバーされている。
【0021】
動力伝動構造について説明すると、上述の刈取側作業部には、動力を無段階に変速伝動する油圧式無段階変速装置である搬送HST(図示しない)を介して、エンジン動力が無段階で変速伝動される。この他、搬送HSTから前処理部7側(具体的には、引起装置7a、刈刃7b、搬送装置7c等)への動力伝動経路には、前処理部7側へのエンジン動力の伝動を断続する刈取クラッチ(図示しない)が配置されている。ちなみに、搬送HSTから前処理部7への動力伝動経路と、搬送HSTから脱穀フィードチェーンへの動力伝動経路は、独立して各別に設けられているため、刈取クラッチの断続によっては、上述した脱穀フィードチェーンへの動力伝動は、断続されない。
【0022】
上述の脱穀側作業部には、脱穀クラッチ(図示しない)を介して、エンジン動力が断続伝動される。ちなみに、図示するコンバインでは、エンジン11から搬送HSTへの動力伝動経路の途中に脱穀クラッチが配置されているため、該脱穀クラッチの切断作動によって、脱穀作業部側への動力伝動が切断される他、刈取作業部側への動力伝動も切断される。
【0023】
上述の左右のクローラ式走行装置1L,1Rには、走行変速装置を構成する図示しない副変速装置及び主変速装置を介して、エンジン動力が変速伝動される。主変速装置は、エンジン11からの動力を無段階で変速伝動する油圧式無段階変速装置である走行HSTによって構成されている。副変速装置は、走行HSTから各クローラ式走行装置1L,1Rへの動力伝動経路の途中に配置され、シフト部材(図示しない)を介した機械的な切換作動によって変速切換が行われるように構成されている。
【0024】
ちなみに、副変速装置は、路上走行等のためにクローラ式走行装置1L,1Rに高速動力を伝動する高速状態への切換と、圃場における作業走行等のためにクローラ式走行装置1L,1Rに低速動力を伝動する低速状態への切換と、各クローラ式走行装置1L,1Rへの動力伝動を遮断するニュートラル状態への切換と、左右のクローラ式走行装置1L,1Rの一方側に正転動力を伝動するとともに他方側に逆転動力を伝動することにより機体をその場で左右旋回させるスピン旋回状態への切換と、を上述のシフト部材によって行う。
【0025】
これに加えて、上述したオーガ排出モータは、エンジン動力によって駆動される油圧ポンプによって圧送される作動油によって駆動される。
【0026】
このようにして、前処理部7や脱穀フィードチェーンや脱穀側作業機部等の複数の各作業機が、エンジン動力によって駆動されるが、このエンジン11から排出される排気ガス中に含まれる煤等の有害な微小固形物は、DPF(登録商標)と呼ばれる除去フィルタ14によって除去される。
【0027】
導入管16を介してエンジン11から除去フィルタ14側に導入された排気ガスは、該除去フィルタ14によって微小固形物が除去された後、排気管17を介して機外に排出される。この除去フィルタ14は、通過する排気ガス中から微小固形物を捕捉するように構成されているため、表面に捕捉した微小固形物等が付着物として付着し、時間経過に伴って堆積されていく。この付着物の堆積量が多くなると、通気性が悪くなり、除去フィルタ14のフィルタリング機能が低下する他、導入管16と排気管17との圧力差が大きくなって種々の問題が発生する可能性がある。
【0028】
このため、本コンバインには、除去フィルタ14に付着した付着物を加熱することによって取除き、そのフィルタリング機能を再生させる再生手段が設けられている。この再生手段は、エンジン回転数を制御可能なECUと呼ばれるエンジン制御マイコン18(図5参照)と、エンジン11自体とによって構成されている。
【0029】
エンジン制御マイコン18は、シリアル接続やCAN(Controller Area Network)接続等によって、メインの制御部であるマイコン19(図5参照)に、相互通信可能に接続されており、該マイコン19は、エンジン回転数が高い状態で略一定となるように(安定するように)エンジン制御マイコン18を介してエンジン11を制御し、排気ガスの温度を上昇させ、この高温となった排気ガスによって除去フィルタ14の表面を加熱して上記付着物の除去を行う。
【0030】
そして、マイコン19は、再生手段を介した除去フィルタ14のフィルタリング機能再生を安定的且つ効率的に行う再生制御を行う他、上述したエンジン動力によって駆動される複数の各作業機の駆動制御も行うように構成されている。なお、エンジン制御マイコン18を設けずに、メインのマイコン19内でエンジン回転数を制御してもよく、この場合には、該マイコン19及びエンジン11によって再生手段が構成される。
【0031】
次に、図1乃至6に基づき操縦部3及びマイコン11の構成について詳述する。
図2は、操縦部の構成を示す平面図であり、図3は、メータユニットの構成を示す平面図であり、図4は、副変速レバーの構成を示す平面図である。操縦部3には、上述の座席12の他、座席12前方のフロント操作パネル21と、側方(さらに具体的には左側方)のサイド操作パネル22と、後方のリヤ操作パネル23とが設置され、平面視で座席12とフロント操作パネル21との間には床面となるフロアステップ24が形成されている。
【0032】
上記フロント操作パネル21の右側には、前処理部7の昇降操作具及び操向操作具として機能するレバー操作具であるマルチレバー26が前後揺動可能且つ左右揺動可能に取付支持され、フロント操作パネル21の左側には、メータユニット27が設置されている。
【0033】
マルチレバー26は、前後揺動によって前処理部7の昇降操作を行うとともに、左右揺動によって機体の操向操作を行う。メータユニット27には、エンジン回転数を表示するメータ28等と、上記再生制御の最中に点灯するランプである再生インジケータ29とが、座席3側から視認可能なように設置されている。
【0034】
上記リヤ操作パネル23には、オーガ排出モータを介したオーガ排出ラセンの駆動・駆動停止を入切操作によって行う排出操作具である押ボタン式のモミ排出スイッチ31が設置されている。
【0035】
上記サイド操作パネル22には、走行HSTを介して走行変速操作を行う主変速操作具である主変速レバー32と、副変速装置を介した走行変速装置を行う副変速操作具である副変速レバー33と、上述の脱穀クラッチ及び刈取クラッチの断続操作を行う断続操作具であるパワークラッチスイッチ(駆動操作検出手段)34とが設けられている。
【0036】
主変速レバー32は、サイド操作パネル22から上方側に突出した先端部にグリップ32aが形成されるとともに、その基端部が、走行HSTの斜板の傾きを変更させることにより該走行HSTを無段階で変速作動させる操作軸であるトラニオン軸(図示しない)に機械的に連結されており、該主変速レバー32のニュートラル位置での左右一方側(図示する例では右側)端部への揺動によって前方揺動可能な状態となる一方で、ニュートラル位置での左右他方側端部への揺動によって後方揺動可能な状態となる。
【0037】
そして、ニュートラル位置からの前方揺動量が多い程、走行HSTが機体前進走行側に増速される一方で、ニュートラル位置からの後方揺動量が多い程、走行HSTが機体後進走行側に増速される。すなわち、主変速レバー32は、前後揺動によって無段階の走行変速操作を行うとともに、中立位置における左右揺動によって前後進切換操作を行うように構成されている。ちなみに、この主変速レバー32の揺動案内は、サイド操作パネル22に穿設されて主変速レバー32の中途部が挿通されるガイド孔22aによって行われる。
【0038】
副変速レバー33は、サイド操作パネル22から上方側に突出した先端部にグリップ33aが形成されるとともに、その基端部が、副変速装置のシフト部材と機械的に連結されており、該副変速レバー33を前後揺動することにより、副変速装置を介した走行変速操作を行う。
【0039】
具体的には、副変速レバー33の前後中立位置が副変速装置をニュートラル状態に切換えるニュートラル位置Nになり、副変速レバー33の後方揺動位置が副変速装置を低速状態に切換える低速位置Lになり、副変速レバー33の前方揺動位置が副変速装置を高速状態に切換える高速位置Hになり、副変速レバー33の低速位置からの左右一方側(図示する例では左側)端部への揺動位置が副変速装置をスピン旋回状態に切換える旋回位置Sになる。
【0040】
これ加えて、副変速レバー33はニュートラル位置Nにおいて左右方向に揺動操作可能に構成されており、この左右揺動操作によって、ニュートラル位置の副変速レバー33は、低速位置Lや高速位置Hへの前後揺動が許容される通常位置N1と、前後揺動が許容されない再生位置N2との何れかに揺動操作可能になる。ちなみに、この副変速レバー33の揺動案内は、サイド操作パネル22に穿設されて副変速レバー33の中途部が挿通されるガイド孔22bによって行われる。
【0041】
副変速レバー33の基端側には、副変速レバー33のニュートラル位置Nにおける通常位置N1から再生位置N2への左右方向の揺動操作を検出する手動再生スイッチ(検出手段,再生操作検出手段)36(図5参照)が設けられており、この手段再生スイッチ36によって、副変速レバー33のニュートラル位置Nにおける通常位置N1から再生位置N2への左右方向の揺動操作を検出した際、後述する所定条件を満たしている場合には、マイコン19が上述の再生制御を行う。すなわち、副変速レバー33のニュートラル位置Nにおける通常位置N1から再生位置N2への左右揺動操作が、除去フィルタ14の上記再生制御を実行する操作となる。
【0042】
パワークラッチスイッチ34は、左右両端部をそれぞれ各別に押し操作可能なモーメンタリスイッチであって、パワークラッチスイッチ34の左右一方側端部を押す操作が、駆動信号がマイコン19側に入力される駆動側操作になり、パワークラッチスイッチ34の左右他方側端部を押す操作が、停止信号がマイコン19側に入力される停止側操作になる。ちなみに、駆動側操作と停止側操作に基づいて、刈取クラッチと脱穀クラッチがどのように断続制御されるかについては、後述する。
【0043】
上記フロアステップ24は、座席12、フロント操作パネル21、サイド操作パネル22及びリヤ操作パネル23の何れよりも低い位置に形成されている。本コンバインには、機体を停止させることにより、その場で機体を駐車させる駐車ブレーキ(図示しない)が設けられているが、上述のフロアステップ24の左部には、この駐車ブレーキの駐車・解除操作(入切操作)を行う駐車ブレーキ操作具となる駐車ブレーキペダル37が設置されている。
【0044】
具体的には、駐車ブレーキペダル37は、前方に向かって水平方向を向いて駐車ブレーキを駐車作動させる駐車操作姿勢と、前方に向かって上方傾斜して駐車ブレーキを解除作動させる解除操作姿勢とに姿勢切換可能なように上下揺動可能に支持されており、オペレータの下方側への踏込み操作毎に、駐車ブレーキペダル37の駐車操作姿勢と解除操作姿勢とが切換るように構成され、この姿勢切換によって機体の駐車状態と非駐車状態とが切換えられる。
【0045】
図5は、本コンバインの制御ブロック図である。マイコン19は、上述したようにエンジン制御マイコン18が双方向通信可能に接続される。また、マイコン19の入力側には、上述した手動再生スイッチ36、パワークラッチスイッチ34及びモミ排出スイッチ31の他、主変速レバーの前後揺動角を検出する変速操作位置検出手段である主変速レバーポテンショ38と、駐車ブレーキの駐車操作姿勢を検出する駐車ブレーキスイッチ(駐車操作検出手段)39と、がそれぞれ接続されている。
【0046】
マイコン19の出力側には、上述した再生インジケータ29の他、駆動速度変更手段である搬送HST制御モータ41と、刈取クラッチ及び脱穀クラッチをそれぞれ各別に断続させる断続手段である脱穀・刈取クラッチモータ42と、オーガ排出モータへの作動油の供給・排出を制御することにより該オーガ排出モータの駆動・駆動停止を行うオーガ排出制御手段であるオーガ排出ソレノイド43と、がそれぞれ接続されている。
【0047】
搬送HST制御モータ41は、搬送HSTの斜板の傾きを変更させる操作軸であるトラニオン軸を回転駆動するように構成され、搬送HST制御モータ41の駆動によって斜板の傾きが変更されることにより、該搬送HSTが無段階で変速作動する。
【0048】
マイコン19は、主変速レバーポテンショ38によって本コンバインの走行速度(車速)を間接的に検出し、搬送HSTを介して脱穀フィードチェーン及び前処理部7の駆動速度を、検出された前記車速に連動させる車速連動制御を行うように構成されている。具体的には、走行停止時には搬送HSTをニュートラルにして脱穀フィードチェーン及び前処理部7の駆動を停止させる一方で、走行時の車速の上昇に伴って脱穀フィードチェーン及び前処理部7の駆動速度を比例的に増加させ且つ走行時の車速の下降に伴って脱穀フィードチェーン及び前処理部7の駆動速度を比例的に減少させる。
【0049】
また、マイコン19は、刈取クラッチと脱穀クラッチが共に切断状態となる切断モードと、刈取クラッチが切断状態となる一方で脱穀クラッチが接続状態となる手扱ぎモードと、刈取クラッチと脱穀クラッチが共に接続状態となる接続モードとを有しており、これらのモードがパワークラッチスイッチ34の駆動側操作及び停止側操作によって切換えられる。
【0050】
具体的には、マイコン19は、切断モード時に駆動側操作を検出した場合に手扱ぎモードに移行し、手扱ぎモード時に駆動側操作を検出した場合に接続モードに移行し、手扱ぎモード時に停止側操作を検出した場合に切断モードに移行し、接続モード時に停止側操作を検出した場合に手扱ぎモードに移行するように構成されている。ちなみに、接続モード時には、原則として、上述した車速連動制御が行われるようにマイコン19を構成している。
【0051】
また、マイコン19は、モミ排出スイッチ31の入状態(ON状態)を検出した場合には、オーガ排出ソレノイド43を介してオーガ排出ラセンを駆動させる一方で、モミ排出スイッチ31の切状態(OFF状態)を検出した場合には、オーガ排出ソレノイド43を介してオーガ排出ラセンを駆動停止状態にするように構成されている。
【0052】
さらに、マイコン19は、手動再生スイッチ36の入作動(ON作動)によって、副変速レバー33の再生位置N2への揺動操作を検出した際には、上述の切断モードに切換えられている状態であって且つ駐車ブレーキスイッチ39の入状態(ON状態)によって駐車ブレーキペダル37が駐車操作されて駐車姿勢に切換えられていることが検出された場合にのみ、上述の再生手段を介した再生制御を開始する。
【0053】
一方、マイコン19は、手動再生スイッチ36の入作動(ON作動)によって、副変速レバー33の再生位置N2への揺動操作を検出した際であっても、上述の切断モードに切換えられていない状態(具体的には手扱ぎモード又は接続モードに切換えられている状態)か、若しくは、駐車ブレーキスイッチ39の切状態(OFF状態)によって駐車ブレーキペダル37が駐車操作されていない状態が検出された場合には、上述の再生手段を介した再生制御を実行しない。
【0054】
この再生制御は、開始されてから所定時間Tが経過すると終了されるが、この再生制御の実行中は、パワークラッチスイッチ34の駆動側操作が検出された場合でも、該駆動側操作をキャンセルして、手扱ぎモードへの移行を行わないようにマイコン19は構成されている。また、マイコン19は、再生制御の実行中には再生インジケータ29を点灯させ、再生制御を実行していないときには再生インジケータ29を消灯する。
【0055】
すなわち、副変速レバー33の再生位置N2への左右方向の揺動操作に起因して再生制御が開始されるが、この際、駐車ブレーキによって傾斜地等においても機体が確実に停止された状態で、再生手段を介したフィルタリング機能の再生作業が行われるため、再生作業を安定的に行うことが容易になる他、エンジン動力によって駆動され且つその駆動がマイコン19によって制御される前処理部7、脱穀フィードチェーン又は脱穀側作業部等の複数の作業機の何れか駆動される手扱ぎモード時や接続モード時には再生制御の開始がキャンセルされるため、エンジン回転数やエンジン負荷が安定した状態で、再生制御を効率的に実行することができる。くわえて、再生制御の実行中は、手扱ぎモードや接続モードへの移行がキャンセルされ、各種作業機が駆動されることが防止されるため、再生制御中、エンジン回転数やエンジン負荷が変化することも防止される。
【0056】
図6は、本コンバインの制御内容を示すタイミングチャート図である。同図に示す例では、まず、マイコン19が切断モードに切換えられ、主変速レバー32がニュートラル位置に操作され、副変速レバー33が再生位置N2以外の位置に操作され、駐車ブレーキペダル37が解除姿勢に操作されている。この状態では、エンジン制御マイコン18を介して、アイドリング状態になるようにエンジン11が予め定められた低い回転数で回転(アイドリング回転)され、搬送HSTがニュートラル状態に切換えられる。
【0057】
続いて、副変速レバーを再生位置N2に揺動操作させるが(同図a参照)、この際には、駐車ブレーキペダルが解除姿勢で、機体が非駐車状態であるため、再生制御の実行はキャンセルされる。その後、副変速レバーは再生位置N2以外の位置に戻される。
【0058】
続いて、パワークラッチスイッチ34の駆動側操作が検出されると(同図b参照)、手扱ぎモードに移行し、脱穀クラッチと刈取クラッチの内、脱穀クラッチのみが接続され、エンジン制御マイコン18を介して、エンジン11が予め定められた高い回転数で回転(定格回転)されるが、搬送HSTの低速伝動によって脱穀側作業部及び脱穀フィードチェーンが低速駆動される。この状態では、作業者が、刈取られた穀稈を手動で脱穀フィードチェーンに渡して該穀稈を脱穀処理する手扱ぎ作業を行うことが可能になる。
【0059】
続いて、パワークラッチスイッチ34の駆動側操作が検出されると(同図c参照)、接続モードに移行し、脱穀クラッチと刈取クラッチの両方が接続され、エンジン11が定格回転された状態で保持され、車速連動制御が開始される。
【0060】
この車速連動制御中に、主変速レバー32を介して車速を変更させると(同図d参照)、搬送HSTを介して、車速に連動して前処理部7及び脱穀フィードチェーンの駆動速度が変更される。
【0061】
続いて、パワークラッチスイッチ34の停止側操作が検出されると(同図e参照)、手扱ぎモードに移行し、脱穀クラッチと刈取クラッチの内、脱穀クラッチのみが接続され、エンジン11が定格回転された状態で保持され、車速連動制御が終了されて脱穀側作業部及び脱穀フィードチェーンの上記低速駆動が開始される。
【0062】
続いて、パワークラッチスイッチ34の停止側操作が検出されると(同図f参照)、切断モードに移行し、脱穀クラッチと刈取クラッチの両方が切断され、搬送HSTがニュートラル状態になり、エンジン制御マイコン18を介して、エンジン11がアイドリング回転され、アイドリング状態になる。
【0063】
続いて、駐車ブレーキペダル37が駐車操作された後(同図g参照)、副変速レバー33の再生位置N2への揺動操作が検出されると(同図h参照)、上述した所定条件を満たした状態になるため、再生制御が実行されるとともに再生インジケータ29が点灯する。
【0064】
この再生制御の実行中は、エンジン11が定格回転されるが、この際に、パワークラッチスイッチ34の駆動側操作が検出されても(同図i参照)、この駆動側操作はキャンセルされ、手扱ぎモードへの移行は行われない。そして、再生制御の開始から上記所定時間Tが経過すると、副変速レバーが再生位置N2に操作されている状態でも、再生制御が終了され、再生インジケータ9が消灯される。
【0065】
なお、再生制御の実行中に、主変速レバー32を介して走行HSTを変速作動させ、エンジン11に一定負荷が安定的に掛かるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
11 エンジン(ディーゼルエンジン)
14 除去フィルタ(排気微粒子除去装置)
19 マイコン(制御部)
33 副変速レバー(副変速操作具)
36 手動再生スイッチ(検出手段,再生操作検出手段)
39 駐車ブレーキスイッチ(駐車操作検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(11)の排気ガス中の微小固形物の除去を行う除去フィルタ(14)と、除去フィルタ(14)に付着した付着物を加熱によって取除くことにより除去フィルタ(14)の機能を再生させる再生手段と、該再生手段を介した除去フィルタ(14)の再生制御を行う制御部(19)と、走行変速を行う主変速装置及び副変速装置と、副変速装置を介した走行変速操作を前後揺動によって行う副変速レバー(33)とを設け、ニュートラル位置において左右方向に揺動可能なように該副変速レバー(33)を構成し、副変速レバー(33)の上記左右方向への揺動操作を検出する検出手段(36)を設け、副変速レバー(33)のニュートラル位置における上記左右方向への揺動操作が検出手段(36)によって検出されることに起因して除去フィルタ(14)の上記再生制御を開始するように制御部(19)を構成した移動農機。
【請求項2】
駐車ブレーキによって機体を停止させる駐車操作を検出する駐車操作検出手段(39)を設け、駐車操作検出手段(39)によって上記駐車操作が検出された場合にのみ、除去フィルタ(14)の上記再生制御を開始するように制御部(19)を構成した請求項1の移動農機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−157945(P2011−157945A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22693(P2010−22693)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】