説明

移動通信システム、基地局装置、ユーザ装置及び方法

【課題】インタラクティブMBMSが行われる移動通信システムで、下りMBMSチャネルに応答する上り回線を設定する手続の効率化を図ること。
【解決手段】移動通信システムでは、下りMBMSチャネルが複数のセルから互いに同期したタイミングで送信される。本システムは、基地局装置より上位のノードにより指定された複数のユーザ装置に対して、下りMBMSチャネルに応答するための上り回線を設定する通知を一括して送信する手段と、通知に反応したユーザ装置に対して、上り回線を設定する手段と、上り回線を通じて各ユーザ装置から受信した信号を上位のノードに転送する手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に移動通信の技術分野に関連し、特にマルチメディアブロードキャストマルチキャストサービス(MBMS)による通信に関連する。
【背景技術】
【0002】
近年の移動通信システムではユニキャストチャネルだけでなくブロードキャストチャネル、特にマルチメディアブロードキャストマルチキャストサービス(MBMS: Multimedia Broadcast Multicast Service)による通信も行われている。下りMBMSチャネルは、複数のセルから互いに同期したタイミングで同一内容で伝送される。ユーザ装置は各セルからの下りMBMSチャネルをソフトコンバイニングすることで、受信品質を高く保つことができる。特に、下りMBMSチャネルに関して複数のセルで同じスクランブルコードが使用され且つ互いに同期して同じ下りMBMSチャネルが複数のセルから送信される場合、ユーザ装置で受信される各セルからの信号は、それらがあたかも1つの基地局から送信されたマルチパス成分のように処理できる。このような技術は、SFN(Single Frequency Network)又はMBSFN(Multicast Broadcast SFN)と呼ばれる。
【0003】
更に、ユーザが下りMBMSチャネルを受信するだけでなく、ユーザ側から何らかの意思表示(回答、投票、反応等)を行うことも可能である。このようなサービスは、インタラクティブMBMSと呼ばれる(これについては、例えば本願出願時点における非特許文献1参照。)。
【非特許文献1】インターネット<URL: http://www.qualcomm.com/mediaflo/products/interactivity.shtml>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インタラクティブMBMSでは、各ユーザが意思表示をするために各ユーザについて上り回線(又は上りコネクション)が設定されなければならない。上り回線の設定については、ユニキャストチャネルの場合と同様に行うことが考えられる。ユニキャストチャネルはユーザ毎に異なる信号が異なるタイミングで伝送されることを前提とするので、上り回線の設定手順も個々のユーザに特化して処理される。しかしながらMBMS(MBSFN)の場合、複数のユーザが同じ信号を同時に受信するので、上り回線の設定手順について、ユニキャストチャネルの場合の手順をそのまま使用することは効率的でないかもしれない。
【0005】
ところで、ユニキャストチャネルでは同程度に広い帯域が上下リンクにそれぞれ用意され、上りリンクと下りリンクにトラフィックが同程度に多く発生してもそれらを十分収容できるように、システムが設計されている。ユニキャストチャネルとMBMSチャネルは、各セルからの伝送方式が異なるので、それらを時間分割多重(TDM)方式で伝送することが考えられるかもしれない。例えば、所定の周期で訪れるサブフレームで下りMBMSチャネルを伝送し、他のサブフレームではユニキャストチャネルが伝送される。MBMSの場合、上下リンクのトラフィック量は非対称になることが(下りチャネルのトラフィック量が圧倒的に多くなることが)多分に予想される。この場合、MBMSチャネルのサブフレームでは、下りチャネル用の帯域は十分に活用されるかもしれないが、上りチャネル用の帯域の利用率はかなり低くなってしまうおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、インタラクティブMBMSが行われる移動通信システムで、下りMBMSチャネルに応答する上り回線を設定する手続の効率化を図ることである。
【0007】
本発明の別の課題は、インタラクティブMBMSが行われる移動通信システムで、下りMBMSチャネルに応答する上り回線の帯域利用効率を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態による移動通信システムでは、下りMBMSチャネルが複数のセルから互いに同期したタイミングで送信される。移動通信システムは、基地局装置より上位のノードにより指定された複数のユーザ装置に対して、前記下りMBMSチャネルに応答するための上り回線を設定する通知を一括して送信する手段と、前記通知に反応したユーザ装置に対して、前記上り回線を設定する手段と、前記上り回線を通じて各ユーザ装置から受信した信号を前記上位のノードに転送する手段とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インタラクティブMBMSが行われる移動通信システムで、下りMBMSチャネルに応答する上り回線を設定する手続の効率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一形態では、下りMBMSチャネルが複数のセルから互いに同期したタイミングで送信される移動通信システムにおける基地局装置が使用される。基地局装置は、当該基地局装置より上位のノードにより指定された複数のユーザ装置に対して、前記下りMBMSチャネルに応答するための上り回線を設定する通知を一括して送信する手段と、前記通知に反応したユーザ装置に対して、前記上り回線を設定する手段と、前記上り回線を通じて各ユーザ装置から受信した信号を前記上位のノードに転送する手段とを有する。
【0011】
前記の通知は、複数のユーザ装置に共通する共通制御情報と、個々のユーザ装置毎に用意された個別制御情報とを含み、前記共通制御情報と複数のユーザ装置分の個別制御情報とを含む情報が、チャネル符号化の1単位を構成してもよい。
【0012】
本発明の一形態では、下りMBMSチャネルが複数のセルから互いに同期したタイミングで送信される移動通信システムが使用される。移動通信システムは、前記下りMBMSチャネルに応答するための上り回線を設定する要求をユーザ装置から受ける手段と、前記ユーザ装置に対して、前記上り回線を設定する手段と、前記上り回線を通じて各ユーザ装置から受信した信号を、基地局装置より上位のノードに転送する手段とを有する。前記要求を受けるタイミングは、当該移動通信システムで予め決められている所定の周期で訪れるタイミングの何れかである。
【0013】
本発明の一形態では、下りMBMSチャネルが複数のセルから互いに同期したタイミングで送信される移動通信システムにおけるユーザ装置が使用される。ユーザ装置は、前記下りMBMSチャネルを受信する手段と、該下りMBMSチャネルに応答するための上り回線を設定することを要求する要求信号を基地局装置に送信する手段と、前記要求信号に応じて設定された上り回線を通じて、前記下りMBMSチャネルに応答する応答信号を基地局装置に送信する手段とを有する。前記要求信号を送信するタイミングは、前記移動通信システムで予め決められている所定の周期で訪れるタイミングの何れかである。
【0014】
本発明の一形態では、下りMBMSチャネルが複数のセルから互いに同期したタイミングで送信される移動通信システムが使用される。移動通信システムは、前記下りMBMSチャネルに応答するための上り回線を設定する要求をユーザ装置から受ける手段と、前記上り回線が設定された複数のユーザ装置に対して、前記上り回線を設定する通知を一括して送信し、前記上り回線を設定する手段と、前記上り回線を通じて各ユーザ装置から受信した信号を、基地局装置より上位のノードに転送する手段とを有する。前記要求を受けるタイミングは、当該移動通信システムで予め決められている所定の周期で訪れるタイミングの何れかである。
【0015】
本発明の一形態では、下りMBMSチャネルが複数のセルから互いに同期したタイミングで送信される移動通信システムが使用される。移動通信システムでは、上りのユニキャストチャネル用の帯域及び下りのユニキャストチャネル用の帯域とは別に、前記下りMBMSチャネル用の帯域が用意される。前記下りMBMSチャネルに応答するための上り回線は、前記上りのユニキャストチャネル用の帯域で設定される。
【0016】
発明の理解を促すため具体的な数値例を用いて説明がなされるが、特に断りのない限り、それらの数値は単なる一例に過ぎず適切な如何なる値が使用されてもよい。
【実施例1】
【0017】
<システム>
図1は本発明の一実施例による移動通信システムを示す。移動通信システムは、ユーザ装置UE及び基地局装置eNB1,eNB2,eNB3を含み、各基地局装置は不図示の上位ノード(例えば、アクセスゲートウエイ又はMME/UPE等)に接続される。ユニキャストチャネルはセル毎に異なるスクランブルコードで伝送される。下りMBMSチャネルは、複数のセルで同じスクランブルコードで且つ各セルで互いに同期して同一内容で送信される。ユーザ装置UEは、各セルから受信した下りMBMSチャネルをソフトコンバイニングする。
【0018】
移動通信システムは、本実施例ではロングタームエボリューション(LTE: Long Term Evolution)方式又は(E-UTRA)方式のシステムであるが、他のシステムでもよい。LTEにおける下りリンクの無線アクセス方式は、直交周波数分割多重(OFDM: Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式である。上りリンクについてはシングルキャリア周波数分割多重接続(SC-FDMA: Single-Carrier Frequency Division Multiple Access)方式が使用される。
【0019】
LTEシステムでは、下りリンクでも上りリンクでもユーザ装置に1つ以上のリソースブロック(Resource Block)を割り当てることで通信が行われる。リソースブロックはシステム内の多数のユーザ装置で共有される。基地局装置は、LTEでは1msであるサブフレーム(Sub-frame)毎に、複数のユーザ装置の内どのユーザ装置にリソースブロックを割り当てるかを決定する。サブフレームは送信時間間隔(TTI)と呼ばれてもよい。無線リソースの割り当ての決定はスケジューリングと呼ばれる。下りリンクではスケジューリングで選択されたユーザ装置宛に、基地局装置は1以上のリソースブロックで共有チャネルを送信する。この共有チャネルは、下り物理共有チャネル(PDSCH: Physical Downlink Shared CHannel)と呼ばれる。上りリンクではスケジューリングで選択されたユーザ装置が、1以上のリソースブロックで基地局装置に共有チャネルを送信する。この共有チャネルは、上り物理共有チャネル(PUSCH: Physical Uplink Shared CHannel)と呼ばれる。
【0020】
上述したような共有チャネルを用いた通信システムにおいては、サブフレーム毎にどのユーザ装置に共有チャネルを割り当てるかをシグナリング(通知)する必要がある。このシグナリングに用いられる制御チャネルは、物理下りリンク制御チャネル(PDCCH: Physical Downlink Control CHannel)または下りL1/L2制御チャネル (DL-L1/L2 Control Channel)と呼ばれる。物理下りリンク制御チャネルPDCCHには、例えば、
・物理制御フォーマットインジケータチャネル(PCFICH: Physical Control Format Indicator CHannel)、
・下りスケジューリング情報(Downlink Scheduling Information)、
・送達確認情報(ACK/NACK: Acknowledgement/Non-Acknowledgement information)、
・上りリンクスケジューリンググラント(Uplink Scheduling Grant)、
・オーバロードインジケータ(Overload Indicator)及び
・送信電力制御コマンドビット(Transmission Power Control Command Bit)等が含まれる。
【0021】
PCFICHは、PDCCHのフォーマットを通知するための情報である。より具体的には、PDCCHのマッピングされるOFDMシンボル数が、PCFICHにより通知される。LTEでは、PDCCHのマッピングされるOFDMシンボル数は1,2又は3であり、サブフレームの先頭OFDMシンボルから順にマッピングされる。
【0022】
少なくとも上記の下りスケジューリング情報は、シグナリングする必要のある情報に相当する。下りスケジューリング情報には、例えば、下りリンクの共有チャネルに関する情報が含まれ、具体的には、下りリンクのリソースブロックの割り当て情報、ユーザ装置の識別情報(UE-ID)、ストリーム数、プリコーディングベクトル(Pre-coding Vector)に関する情報、データサイズ、変調方式、HARQ(Hybrid Automatic Repeat reQuest)に関する情報等が含まれる。
【0023】
また、上りリンクスケジューリンググラントには、例えばPUSCHに関する情報が含まれ、具体的には、上りリンクのリソースの割り当て情報、ユーザ装置の識別情報(UE-ID)、データサイズ、変調方式、上りリンクの送信電力情報、アップリンクMIMO(Uplink MIMO)におけるデモジュレーションレファレンスシグナル(Demodulation Reference Signal)の情報等が含まれる。
【0024】
上りリンクではPUSCHによりユーザデータ(通常のデータ信号)及びそれに付随する制御情報が伝送される。また、PUSCHとは別に、上りリンク制御チャネル(PUCCH: Physical Uplink Control CHannel)により、下りリンクの品質情報(CQI: Channel Quality Indicator)及びPDSCHの送達確認情報(ACK/NACK)等が伝送される。CQIは、下りリンクにおける共有物理チャネルのスケジューリング処理や適応変復調及び符号化処理(AMCS: Adaptive Modulation and Coding Scheme)等に使用される。上りリンクでは、ランダムアクセスチャネル(RACH)や、上下リンクの無線リソースの割り当て要求を示す信号等も必要に応じて伝送される。
【0025】
<(a)NW側からの契機で自動的に上り回線を設定する>
図2は一実施例による動作例を説明する際の比較例として従来の動作例を示す。ステップS1で基地局装置eNBから各ユーザ装置UE1,UE2,UE3にMBMSチャネルが伝送され始める。
【0026】
ステップS2では、或る1つのユーザ装置UE1に対して、上り回線を設定する旨の通知が行われる。
【0027】
ステップS3では、別の1つのユーザ装置UE2に対して、上り回線を設定する旨の通知が行われる。
【0028】
ステップS4では、更に別の1つのユーザ装置UE3に対して、上り回線を設定する旨の通知が行われる。
【0029】
ステップS5では、ユーザ装置UE1が、ステップS2で受けた通知に応答する。これにより、ユーザ装置UE1に対する上り回線の設定手続が開始される。
【0030】
ステップS6では、ユーザ装置UE2が、ステップS3で受けた通知に応答する。これにより、ユーザ装置UE2に対する上り回線の設定手続が開始される。
【0031】
ステップS7では、ユーザ装置UE3が、ステップS4で受けた通知に応答する。これにより、ユーザ装置UE3に対する上り回線の設定手続が開始される。
【0032】
図3は本発明の一実施例による動作例を示す。図2の場合と同様に、ステップS1で基地局装置eNBから各ユーザ装置UE1,UE2,UE3にMBMSチャネルが伝送され始める。
【0033】
ステップS2では、全ユーザ装置UE1,UE2,UE3に対して、上り回線を設定する旨の通知が一括して行われる。この点、そのような通知がユーザ装置毎になされている図2の動作と大きく異なる。この場合における全ユーザ装置とは、下りMBMSチャネルを受けるユーザ装置の全てを意味し、より厳密には、下りMBMSチャネルの内ユーザからの何らかの応答を期待する下りMBMSチャネルを受けるユーザ装置の全てを意味する。或るユーザ装置が、そのような全てのユーザ装置に該当するか否かは、一例として、基地局装置より上位のノードで管理される。
【0034】
「通知が一括して行われる」とは、UE1に通知すべき情報と、UE2に通知すべき情報と、UE3に通知すべき情報とを含む信号が、1つのチャネル符号化単位を形成していることを意味する。図4に示されるように、波線枠で囲まれた情報部分が、1つのチャネル符号化単位を構成する。
【0035】
図3のステップS3では、ユーザ装置UE1が、ステップS2で受けた通知に応答する。これにより、ユーザ装置UE1に対する上り回線の設定手続が開始される。
【0036】
ステップS4では、ユーザ装置UE2が、ステップS2で受けた通知に応答する。これにより、ユーザ装置UE2に対する上り回線の設定手続が開始される。
【0037】
ステップS5では、ユーザ装置UE3が、ステップS2で受けた通知に応答する。これにより、ユーザ装置UE3に対する上り回線の設定手続が開始される。
【0038】
ステップS3,S4,S5での応答は、図2のステップS5,S6,S7で行われる応答と同じでもよいし、異なってもよい。例えば、ステップS2の通知に応じて、ユーザ装置UE1が、上り回線の設定を要求する信号を送信してもよい。この場合、ステップS2の通知は、「上り回線が設定されることを通知する」、というよりも「上り回線の設定を要求するよう促す」にすぎず、要求するか否かをユーザが判断することがより明確化される。このようにすると、何らかの要求を求める信号は、常にユーザ側から発せられるようにすることができ、動作手順の統一化を図ることができる。
【0039】
<(b)UE側からの契機で上り回線を設定する>
図5は本発明の一実施例による別の動作例を示す。図2及び図3の場合と同様に、ステップS1で基地局装置eNBから各ユーザ装置UE1,UE2,UE3にMBMSチャネルが伝送され始める。
【0040】
ステップS2では、ユーザ装置UE1が、上り回線の設定を要求する信号を基地局装置eNBに送信する。これにより、ユーザ装置UE1に対する上り回線の設定手続が開始される。
【0041】
ステップS3では、別のユーザ装置UE2が、上り回線の設定を要求する信号を基地局装置eNBに送信する。これにより、ユーザ装置UE2に対する上り回線の設定手続が開始される。
【0042】
ステップS4では、ユーザ装置UE3が、上り回線の設定を要求する信号を基地局装置eNBに送信する。これにより、ユーザ装置UE3に対する上り回線の設定手続が開始される。
【0043】
ステップS2,S3,S4からそれぞれ送信される信号は、或る一定の時間枠の中で伝送されるように、各ユーザ装置からの送信タイミング又は基地局装置での受信タイミングが揃っている点で従来の方法と大きく異なる。そのような或る一定の時間枠は、ステップS1の下りMBMSチャネルの送信開始後、一定の周期(開始前に既知の周期)で訪れてもよいし、或るいはそのような時間枠が何時であるかを示す情報が必要に応じて各ユーザ装置に通知されてもよい。いずれにせよ、基地局装置は、上り回線の設定を要求する信号を各ユーザ装置から比較的短時間の内に受信する。これにより、基地局装置は各ユーザ装置から信号を受けたことを上位ノードにまとめて報告できる。ステップS2,S3,S4でユーザ装置が送信する信号は、一例として、未だコネクションが設定されていなければランダムアクセスチャネル(RACH)でもよいし、既にコネクションが設定済みであれば、スケジューリングを要求する信号でもよい。
【0044】
<(c)組み合わせ>
図3及び図5を参照しながら説明された方法は、個々に使用されてもよいし、組み合わせて使用されてもよい。例えば、図3のステップS2で上り回線の設定を促す信号がユーザ装置UE1,UE2,UE3に一括して送信された後、図3のステップS3,S4,S5の上り回線を要求する信号が、図5で説明された或る時間枠の中で伝送されてもよい。
【0045】
或いは逆に、図5で説明されたステップS2,S3,S4の後に、基地局装置eNBからの応答信号(上り回線の設定を要求する信号に応答する信号)が、図3のステップS2のように各ユーザ装置に一括して送信されてもよい。
【0046】
<シグナリングの共通化>
基地局装置からユーザ装置に伝送される制御情報には、ユーザ装置毎の個別情報と、複数のユーザ装置に共通する共通情報とがある。図3のステップS2のように、上り回線の設定を促す信号が基地局装置から送信される場合、その信号の内容は、個別情報として用意されてもよいし、共通情報として用意されてもよい。なお、制御情報は、PDCCHのような物理チャネルで伝送されてもよい。
【0047】
図6は、上り回線の設定を促す信号(全UE用のシグナリング情報)が、個別情報として用意される様子を示す。ユーザ装置UE1に関する個別情報は、UE-ID#1、全UE用のシグナリング情報及びUE#1用のシグナリング情報を含む。ユーザ装置UE2に関する個別情報は、UE-ID#2、全UE用のシグナリング情報及びUE#2用のシグナリング情報を含む。ユーザ装置UE3に関する個別情報は、UE-ID#3、全UE用のシグナリング情報及びUE#3用のシグナリング情報を含む。これら3つの個別情報を含む信号が、1つのチャネル符号化単位を構成し、一括して基地局装置から各ユーザ装置へ伝送される。図示の便宜上、この場合におけるチャネル符号化単位は図示されていない。
【0048】
ところで、これら3つの個別情報中の「全UE用のシグナリング情報」は、同じ内容である。従って図7に示されるように、この情報を共通情報として用意することも考えられる。この場合、ユーザ装置UE1に関する個別情報は、UE-ID#1及びUE#1用のシグナリング情報を含む。ユーザ装置UE2に関する個別情報は、UE-ID#2及びUE#2用のシグナリング情報を含む。ユーザ装置UE3に関する個別情報は、UE-ID#3及びUE#3用のシグナリング情報を含む。図中波線枠で示されるように、これら3つの個別情報と1つの共通情報とが1つのチャネル符号化単位に含まれる。各ユーザ装置は、自装置宛の個別情報を読み取るだけでなく、共通情報をも読み取る必要がある。
【0049】
<下りMBMSチャネルに専用の帯域を用意する>
背景技術で言及したように、ユニキャストチャネルでは同程度に広い帯域が上下リンクにそれぞれ用意され、上りリンクと下りリンクにトラフィックが同程度に多く発生してもそれらをシステムに収容できるように設計されている。
【0050】
図8上段はそのように上下リンクに同程度に広いシステム帯域が用意されている様子を示す。
【0051】
ユニキャストチャネルとMBMSチャネルについては、各セルからの伝送方式が異なるので、それらを時間分割多重(TDM)方式で伝送することが考えられるかもしれない。例えば、所定の周期で訪れるサブフレームでMBMSチャネルを伝送し(図8中段)、他のサブフレームではユニキャストチャネルが伝送されるようにしてもよい(図8上段)。
【0052】
図8中段に示されるように、MBMSの場合、上下リンクのトラフィック量は非対称になることが多分に予想される。この場合、上りチャネル用の帯域の利用率はかなり低くなってしまうおそれがある。
【0053】
図8下段に示されるように、本発明の一実施例では、下りMBMSチャネルに専用の帯域がユニキャストチャネル用の帯域とは別に用意される。下りMBMSチャネルに対する応答は(上記の上り回線)は、上りユニキャストチャネルの帯域で伝送される。例えば、上下リンクのユニキャストチャネル用の帯域は2GHz帯に用意され、下りMBMSチャネルに専用の帯域が1.7GHz帯に用意されてもよい。上りリンクに関し、上りユニキャストチャネルだけでなく、下りMBMSチャネルに対する応答信号も同じ帯域で伝送されることになるので、その分だけ輻輳することが予想される。しかしながら、そのような応答信号の数やデータサイズは一般に小さいので、既存のユニキャストチャネルの通信を大きく制限することにはならない。本実施例では、ユニキャストチャネルを通信するシステムは、LTE方式のシステムであるが、それは本発明に必須でなく、上り回線を設定する適切な如何なるシステムでよい。例えば、下りMBMSチャネルに応答するための上り回線が、W-CDMA方式のシステムで用意されてもよいし、WiMAX方式のシステムで用意されてもよい。下りMBMSチャネルに対するユーザの意思表示が、下りMBMSチャネルの送信元に届けばよいからである。
【0054】
<基地局装置(eNB)>
図9は、本発明の一実施例による基地局装置(eNB)200を示す。基地局装置はアンテナ202を有する。基地局装置はアンプ部204を有する。基地局装置は送受信部206を有する。基地局装置はベースバンド処理部208を有する。基地局装置は呼処理部210を有する。基地局装置は伝送路インターフェース212を有する。
【0055】
上りリンクに関し、アンテナ202で受信された上りリンクの信号は、アンプ部204で適切に増幅され、送受信部206に与えられる。送受信部206では無線周波数信号がベースバンド信号に変換される。ベースバンド処理部208では、物理レイヤに関する処理、MACレイヤに関する処理及びRLCレイヤに関する処理等が行われる。
【0056】
上りリンクの物理レイヤに関する処理は、チャネル復号化、離散フーリエ変換(DFT)、周波数デマッピング、逆フーリエ変換(IFFT)、データ復調等の処理を含む。上りリンクのMACレイヤに関する処理は、受信した信号に対するMACレイヤでの再送制御(HARQ)、上りリンクに対するスケジューリング、PUSCHの伝送フォーマットの選択、PUSCHのリソースブロックの選択等の処理を含む。上りリンクのRLCレイヤに関する処理は、受信したパケットに対して、パケットの分割、パケットの結合、RLCレイヤでの再送制御等の処理を含む。
【0057】
呼処理部210は、通信チャネルの設定及び解放等の呼処理、基地局の状態管理、無線リソースの管理等を行う。
【0058】
伝送路インターフェース212は上りリンクで受信したユーザデータを上位ノードに伝送する。
【0059】
図5で説明されたような或る一定の時間枠内で受信された信号の受信処理は、ベースバンド処理部208で行われ、各ユーザ装置からそのような信号を受けたことは、上位ノードにまとめて報告される。
【0060】
一方、下りリンクに関し、伝送路インターフェース212で受信されたユーザデータ又は下りMBMSチャネルは、ベースバンド処理部208に与えられる。ベースバンド処理部208では、RLCレイヤに関する処理、MACレイヤに関する処理、物理レイヤに関する処理等が行われる。
【0061】
下りリンクの物理レイヤに関する処理は、チャネル符号化、データ変調、周波数マッピング、逆フーリエ変換(IFFT)等の処理を含む。下りリンクのMACレイヤに関する処理は、送信する信号に対するMAC再送制御、下りリンクに対するスケジューリング、PDSCHの伝送フォーマットの選択、PDSCHのリソースブロックの選択等の処理を含む。下りリンクのRLCレイヤに関する処理は、パケットの分割、パケットの結合、RLCレイヤでの再送制御等を含む。
【0062】
下りデータは送受信部206で無線周波数信号に変換され、アンプ部204で増幅され、アンテナ202から送信される。
【0063】
ユーザ装置UE1,UE2,UE3に対する上り回線の設定を促す信号は、ベースバンド信号処理部208で作成される。各ユーザ装置に一括して送信される情報は、1つのチャネル符号化単位を構成する。
【0064】
<ユーザ装置(UE)>
図10は、本発明の一実施例によるユーザ装置UEを示す。ユーザ装置はアンテナ102を有する。ユーザ装置はアンプ部104を有する。ユーザ装置は送受信部106を有する。ユーザ装置はベースバンド処理部108を有する。ユーザ装置は呼処理部110を有する。ユーザ装置はアプリケーション部112を有する。
【0065】
下りリンクに関し、アンテナ102で受信された上りリンクの信号は、アンプ部104で適切に増幅され、送受信部106に与えられる。送受信部106では無線周波数信号がベースバンド信号に変換される。ベースバンド処理部108では、物理レイヤに関する処理、MACレイヤに関する処理及びRLCレイヤに関する処理等が行われる。
【0066】
下りリンクの物理レイヤに関する処理は、チャネル復号化、高速フーリエ変換(FFT)、周波数デマッピング、データ復調等の処理を含む。下りリンクのMACレイヤに関する処理は、受信した信号に対するMACレイヤでの再送制御(HARQ)、下りスケジューリング情報の解析(PDSCHの伝送フォーマットの特定、PDSCHのリソースブロックの特定等)を含む。下りリンクのRLCレイヤの処理は、受信したパケットの分割、パケットの結合、RLCレイヤでの再送制御等を含む。
【0067】
一方、上りリンクに関し、アプリケーション部112で発生したデータは、ベースバンド処理部108に与えられる。ベースバンド処理部108では、RLCレイヤに関する処理、MACレイヤに関する処理、物理レイヤに関する処理等が行われる。以後、上りデータは送受信部106で無線周波数信号に変換され、アンプ部104で増幅され、アンテナ102から送信される。
【0068】
上りリンクの物理レイヤに関する処理は、チャネル符号化、データ変調、離散フーリエ変換(DFT)、周波数マッピング、逆フーリエ変換(IFFT)等の処理を含む。上りリンクのMACレイヤに関する処理は、送信する信号に対するMAC再送制御、上りスケジューリング情報の解析(PUSCHの伝送フォーマットの特定、PUSCHのリソースブロックの特定等の処理、TPCビットの特定)を含む。上りリンクのRLCレイヤの処理は、送信するパケットの分割、パケットの結合、RLCレイヤでの再送制御等を含む。
【0069】
以上本発明は特定の実施例を参照しながら説明されてきたが、実施例は単なる例示に過ぎず、当業者は様々な変形例、修正例、代替例、置換例等を理解するであろう。発明の理解を促すため具体的な数値例を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数値は単なる一例に過ぎず適切な如何なる値が使用されてもよい。説明の便宜上、本発明の実施例に係る装置は機能的なブロック図を用いて説明されたが、そのような装置はハードウエアで、ソフトウエアで又はそれらの組み合わせで実現されてもよい。本発明は上記実施例に限定されず、本発明の精神から逸脱することなく、様々な変形例、修正例、代替例、置換例等が本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】移動通信システムを示す図である。
【図2】従来の動作例を示す図である。
【図3】一実施例による動作例を示す図である。
【図4】チャネル符号化単位を示す図である。
【図5】一実施例による別の動作例を示す図である。
【図6】制御情報が個別情報として用意される様子を示す図である。
【図7】制御情報が個別情報及び共通情報を含む様子を示す図である。
【図8】下りMBMSチャネルに専用の帯域が用意される様子を示す図である。
【図9】基地局装置(eNB)を示す図である。
【図10】ユーザ装置(UE)を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
100,UE ユーザ装置
102 送受信アンテナ
104 アンプ部
106 送受信部
108 ベースバンド処理部
112 アプリケーション部
200,eNB 基地局装置
202 送受信アンテナ
204 アンプ部
206 送受信部
208 ベースバンド信号処理部
210 呼処理部
212 伝送路インターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチメディアブロードキャストマルチキャストサービスによる下りチャネル(下りMBMSチャネル)が複数のセルから互いに同期したタイミングで送信される移動通信システムであって、
基地局装置より上位のノードにより指定された複数のユーザ装置に対して、前記下りMBMSチャネルに応答するための上り回線を設定する通知を一括して送信する手段と、
前記通知に反応したユーザ装置に対して、前記上り回線を設定する手段と、
前記上り回線を通じて各ユーザ装置から受信した信号を前記上位のノードに転送する手段と、
を有する移動通信システム。
【請求項2】
前記の通知は、複数のユーザ装置に共通する共通制御情報と、個々のユーザ装置毎に用意された個別制御情報とを含み、前記共通制御情報と複数のユーザ装置分の個別制御情報とを含む情報が、チャネル符号化の1単位を構成するようにした請求項1記載の移動通信システム。
【請求項3】
マルチメディアブロードキャストマルチキャストサービスによる下りチャネル(下りMBMSチャネル)が複数のセルから互いに同期したタイミングで送信される移動通信システムで使用される基地局装置であって、
当該基地局装置より上位のノードにより指定された複数のユーザ装置に対して、前記下りMBMSチャネルに応答するための上り回線を設定する通知を一括して送信する手段と、
前記通知に反応したユーザ装置に対して、前記上り回線を設定する手段と、
前記上り回線を通じて各ユーザ装置から受信した信号を前記上位のノードに転送する手段と、
を有する基地局装置。
【請求項4】
前記の通知は、複数のユーザ装置に共通する共通制御情報と、個々のユーザ装置毎に用意された個別制御情報とを含み、前記共通制御情報と複数のユーザ装置分の個別制御情報とを含む情報が、チャネル符号化の1単位を構成する請求項3記載の基地局装置。
【請求項5】
マルチメディアブロードキャストマルチキャストサービスによる下りチャネル(下りMBMSチャネル)が複数のセルから互いに同期したタイミングで送信される移動通信システムで使用される方法であって、
当該基地局装置より上位のノードにより指定された複数のユーザ装置に対して、前記下りMBMSチャネルに応答するための上り回線を設定する通知が基地局装置から一括して送信されるステップと、
前記通知に反応したユーザ装置に対して、前記上り回線を設定するステップと、
前記上り回線を通じて各ユーザ装置から受信した信号を前記基地局装置から前記上位のノードへ転送するステップと、
を有する方法。
【請求項6】
マルチメディアブロードキャストマルチキャストサービスによる下りチャネル(下りMBMSチャネル)が複数のセルから互いに同期したタイミングで送信される移動通信システムであって、
前記下りMBMSチャネルに応答するための上り回線を設定する要求をユーザ装置から受ける手段と、
前記ユーザ装置に対して、前記上り回線を設定する手段と、
前記上り回線を通じて各ユーザ装置から受信した信号を、基地局装置より上位のノードに転送する手段と、
を有し、前記要求を受けるタイミングは、当該移動通信システムで予め決められている所定の周期で訪れるタイミングの何れかであるようにした移動通信システム。
【請求項7】
マルチメディアブロードキャストマルチキャストサービスによる下りチャネル(下りMBMSチャネル)が複数のセルから互いに同期したタイミングで送信される移動通信システムで使用される基地局装置であって、
前記下りMBMSチャネルに応答するための上り回線を設定する要求をユーザ装置から受ける手段と、
前記ユーザ装置に対して、前記上り回線を設定する手段と、
前記上り回線を通じて各ユーザ装置から受信した信号を、基地局装置より上位のノードに転送する手段と、
を有し、前記要求を受けるタイミングは、当該移動通信システムで予め決められている所定の周期で訪れるタイミングの何れかであるようにした基地局装置。
【請求項8】
マルチメディアブロードキャストマルチキャストサービスによる下りチャネル(下りMBMSチャネル)が複数のセルから互いに同期したタイミングで送信される移動通信システムで使用されるユーザ装置であって、
前記下りMBMSチャネルを受信する手段と、
該下りMBMSチャネルに応答するための上り回線を設定することを要求する要求信号を基地局装置に送信する手段と、
前記要求信号に応じて設定された上り回線を通じて、前記下りMBMSチャネルに応答する応答信号を基地局装置に送信する手段と、
を有し、前記要求信号を送信するタイミングは、前記移動通信システムで予め決められている所定の周期で訪れるタイミングの何れかであるようにしたユーザ装置。
【請求項9】
マルチメディアブロードキャストマルチキャストサービスによる下りチャネル(下りMBMSチャネル)が複数のセルから互いに同期したタイミングで送信される移動通信システムで使用される方法であって、
前記下りMBMSチャネルに応答するための上り回線を設定する要求をユーザ装置から受けるステップと、
前記ユーザ装置に対して、前記上り回線を設定するステップと、
前記上り回線を通じて各ユーザ装置から受信した信号を、基地局装置より上位のノードに転送するステップと、
を有し、前記要求を受けるタイミングは、前記移動通信システムで予め決められている所定の周期で訪れるタイミングの何れかであるようにした方法。
【請求項10】
マルチメディアブロードキャストマルチキャストサービスによる下りチャネル(下りMBMSチャネル)が複数のセルから互いに同期したタイミングで送信される移動通信システムであって、
前記下りMBMSチャネルに応答するための上り回線を設定する要求をユーザ装置から受ける手段と、
前記上り回線が設定された複数のユーザ装置に対して、前記上り回線を設定する通知を一括して送信し、前記上り回線を設定する手段と、
前記上り回線を通じて各ユーザ装置から受信した信号を、基地局装置より上位のノードに転送する手段と、
を有し、前記要求を受けるタイミングは、当該移動通信システムで予め決められている所定の周期で訪れるタイミングの何れかであるようにした移動通信システム。
【請求項11】
マルチメディアブロードキャストマルチキャストサービスによる下りチャネル(下りMBMSチャネル)が複数のセルから互いに同期したタイミングで送信される移動通信システムであって、
上りのユニキャストチャネル用の帯域及び下りのユニキャストチャネル用の帯域とは別に、前記下りMBMSチャネル用の帯域が用意され、
前記下りMBMSチャネルに応答するための上り回線が、前記上りのユニキャストチャネル用の帯域で設定されるようにした移動通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−147537(P2009−147537A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320979(P2007−320979)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】