説明

移動通信システム、無線基地局、無線端末、及び移動通信方法

【課題】災害発生時においてユーザに有益な情報を配信できるようにする。
【解決手段】無線基地局100は、ネットワークを介した通信を行うネットワーク通信部120と、自局の通信エリア内の無線端末との無線通信を行う無線通信部110と、ネットワーク通信部120及び無線通信部110を制御する制御部140と、を具備しており、制御部140は、災害に関する緊急警報情報を同報送信した後、コアネットワーク10を介した通信が不能であることを検知すると、災害モードであることを示す災害モード通知情報を同報送信するよう制御し、制御部140は、災害モードへの移行後に、無線端末200の現在地の状況に関する災害関連情報を無線端末200から受信すると、該受信した災害関連情報を同報送信するよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急警報情報を配信する移動通信システム、無線基地局、無線端末、及び移動通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムの標準化団体である3GPP(3rd Generation Partnership Project)で仕様が策定されているETWS(Earthquake and Tsunami Warning System)は、移動通信システムのブロードキャストチャネルを利用して、地震や津波等の災害に関する緊急警報情報を可及的速やかにユーザに通知するシステムである。
【0003】
また、移動通信システムにおいて、無線端末は、接続先の無線基地局と、ネットワーク(コアネットワーク)とを介して、通信相手(例えば、サーバや端末等)との通信を行う。このため、災害に起因して無線基地局とコアネットワークとの間の通信が不能な状態になると、被災者は、無線端末を利用して、避難所の位置を示す情報等をサーバからダウンロードできない。
【0004】
このような事情に鑑みて、災害が起こる前に、避難所の位置を含む地図の情報(以下、地図情報)を無線端末に保存しておき、災害発生時には、無線端末のGPS機能を利用して、現在地を地図上に表示するサービスが実用化されている(非特許文献1参照)。これにより、ユーザは、災害発生時において避難所の位置と現在地とを把握し、最寄りの避難所に向かうことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】災害時ナビ サービス紹介 (URL: http://www.au.kddi.com/saigaiji_navi/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載のサービスでは、災害発生時において、予め無線端末に保存しておいた地図情報を元にするため、災害発生後の建物倒壊や火災等による通行不可エリアなどの災害関連情報を地図情報に反映させることができず、避難所等に向かう途中で逆に危険なエリアを通過してしまう虞がある。
【0007】
また、非特許文献1に記載のサービスでは、全国の地図情報を常に最新の状態にしておくためには、無線端末が周期的に最新の地図情報を取得する必要があるため、負荷が大きいという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、災害発生時においてユーザに有益な情報を配信できる移動通信システム、無線基地局、無線端末、及び移動通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。
【0010】
まず、本発明に係る移動通信システムの特徴は、自局の通信エリア内への同報送信が可能な無線基地局(無線基地局100)と、前記無線基地局との無線通信を行う無線端末(無線端末200)と、を具備する移動通信システム(移動通信システム1)であって、前記無線基地局は、災害に関する緊急警報情報を同報送信した後、ネットワーク(コアネットワーク10)を介した通信が不能であることを検知すると、災害モードであることを示す災害モード通知情報を同報送信し、前記無線端末は、前記無線基地局からの前記災害モード通知情報を受信した後、自端末の現在地の状況に関する災害関連情報を前記無線基地局に送信し、前記無線基地局は、前記災害モードへの移行後に前記無線端末からの前記災害関連情報を受信すると、該受信した災害関連情報を同報送信することを要旨とする。
【0011】
このような特徴によれば、無線基地局は、災害に関する緊急警報情報を同報送信した後、ネットワークを介した通信が不能であることを検知すると、該通信不能状態の原因が災害であるとみなして、災害モードに移行する。そして、無線基地局は、災害モードにおいて、一の無線端末から提供された災害関連情報を自局の通信エリア内に同報送信する。これにより、該通信エリア内の各無線端末が、該災害関連情報を共有することができる。よって、例えばユーザが避難所等に向かう途中で通行不可エリアや危険なエリアを通過してしまうといった問題を解決できる。
【0012】
本発明に係る移動通信システムの他の特徴は、上記特徴に係る移動通信システムにおいて、前記災害関連情報は、前記無線端末の現在地を示す位置情報と、該現在地における被害状況を示す情報とを含むことを要旨とする。
【0013】
このような特徴によれば、無線基地局の通信エリア内の各無線端末は、該通信エリア内の位置における被害状況を知ることができるため、例えばユーザが避難所等に向かう途中で通行不可エリアや危険なエリアを通過してしまうといった問題をより確実に解決できる。
【0014】
本発明に係る移動通信システムの他の特徴は、上記特徴に係る移動通信システムにおいて、前記無線基地局は、避難所の位置を含む地図情報を記憶しており、前記無線基地局は、前記災害モードへの移行後に前記無線端末からの前記災害関連情報を受信すると、該受信した災害関連情報を前記地図情報に反映させることによって前記地図情報を更新し、該更新した地図情報を同報送信することを要旨とする。
【0015】
このような特徴によれば、予め地図情報を保存していない無線端末であっても地図情報を得ることができる。また、該地図情報には災害関連情報が反映されているため、ユーザが避難所等に向かう途中で通行不可エリアや危険なエリアを通過してしまうといった問題を解決できる。
【0016】
本発明に係る移動通信システムの他の特徴は、上記特徴に係る移動通信システムにおいて、前記無線基地局は、前記更新した地図情報と共に、該地図情報の更新番号を同報送信することを要旨とする。
【0017】
このような特徴によれば、地図情報及び更新番号を受信した無線端末は、該更新番号に基づいて、該地図情報が最新のものであるか否かを知ることができる。
【0018】
本発明に係る移動通信システムの他の特徴は、上記特徴に係る移動通信システムにおいて、前記無線端末は、前記無線基地局からの前記地図情報を前記更新番号と対応付けて記憶しており、前記無線端末は、前記無線基地局から前記地図情報及び前記更新番号を受信した際、前記記憶している更新番号よりも前記受信した更新番号が新しい場合に、前記記憶している地図情報を前記受信した地図情報を用いて更新することを要旨とする。
【0019】
このような特徴によれば、無線端末は、無線基地局から新たに受信した地図情報が保存済みのものである場合には、該新たに受信した地図情報を用いた更新処理を省略することができるため、無線端末の処理負荷を軽減できる。
【0020】
本発明に係る移動通信システムの他の特徴は、上記特徴に係る移動通信システムにおいて、前記無線基地局は、前記ネットワークを介した通信が可能である場合には、前記ネットワークを介した通信を行うことによって、前記記憶している地図情報を周期的に更新することを要旨とする。
【0021】
このような特徴によれば、無線基地局は、災害発生時において同報配信すべき地図情報を、災害発生前において最新の状態にしておくことができる。
【0022】
本発明に係る移動通信システムの他の特徴は、上記特徴に係る移動通信システムにおいて、前記地図情報は、前記無線基地局に隣接する無線基地局の方角を示す隣接基地局情報を含むことを要旨とする。
【0023】
このような特徴によれば、隣接基地局情報を含む地図情報を受信した無線端末は、隣接基地局の方角を知ることができる。
【0024】
本発明に係る移動通信システムの他の特徴は、上記特徴に係る移動通信システムにおいて、前記無線基地局は、自局に隣接する無線基地局から自局へ接続先を切り替えた無線端末から、前記隣接する無線基地局がネットワークを介した通信が可能であることを示す通信可能基地局情報を受信すると、前記隣接基地局情報を前記通信可能基地局情報を用いて更新することを要旨とする。
【0025】
このような特徴によれば、隣接基地局が通信可能状態であるか否かを隣接基地局情報に反映させることができる。また、通信可能状態にある隣接基地局の方角を示すように隣接基地局情報を構成することで、無線端末のユーザは、どの方角に移動すれば通信可能になるかを知ることができる。
【0026】
本発明に係る無線基地局の特徴は、ネットワーク(コアネットワーク10)を介した通信を行うネットワーク通信部(ネットワーク通信部120)と、自局の通信エリア内の無線端末(無線端末200)との無線通信を行う基地局無線通信部(無線通信部110)と、前記ネットワーク通信部及び前記基地局無線通信部を制御する基地局制御部(制御部140)と、を具備する無線基地局(無線基地局100)であって、前記基地局制御部は、災害に関する緊急警報情報を同報送信した後、前記ネットワークを介した通信が不能であることを検知すると、災害モードであることを示す災害モード通知情報を同報送信するよう制御し、前記基地局制御部は、前記災害モードへの移行後に、前記無線端末の現在地の状況に関する災害関連情報を前記無線端末から受信すると、該受信した災害関連情報を同報送信するよう制御することを要旨とする。
【0027】
本発明に係る無線端末の特徴は、無線基地局(無線基地局100)との無線通信を行う端末無線通信部(無線通信部210)と、前記端末無線通信部を制御する端末制御部(制御部240)と、を具備する無線端末(無線端末200)であって、前記端末制御部は、災害モードであることを示す災害モード通知情報を前記無線基地局から受信した後、自端末の現在地の状況に関する災害関連情報を前記無線基地局に送信するよう制御することを要旨とする。
【0028】
本発明に係る移動通信方法の特徴は、無線基地局が、災害に関する緊急警報情報を同報送信した後、ネットワークを介した通信が不能であることを検知すると、災害モードであることを示す災害モード通知情報を同報送信するステップと、無線端末が、前記無線基地局からの前記災害モード通知情報を受信した後、自端末の現在地の状況に関する災害関連情報を前記無線基地局に送信するステップと、前記無線基地局は、前記災害モードへの移行後に前記無線端末からの前記災害関連情報を受信すると、該受信した災害関連情報を同報送信するステップとを具備することを要旨とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、災害発生時においてユーザに有益な情報を配信できる移動通信システム、無線基地局、無線端末、及び移動通信方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態の概要を説明するための図である。
【図2】実施形態に係る無線基地局の構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態に係る無線端末の構成を示すブロック図である。
【図4】実施形態に係る移動通信システムのプロトコルスタックを示す図であり、図4(a)は通常モード時のプロトコルスタックを示し、図4(b)は災害モード時のプロトコルスタックを示す。
【図5】実施形態に係る無線基地局の概略動作を示すフローチャートである。
【図6】実施形態に係る無線端末の概略動作を示すフローチャートである。
【図7】実施形態に係る無線基地局から同報送信される災害モード通知情報の構成例を示す図である。
【図8】災害モード初期画面の画面表示例を示す図である。
【図9】地図表示が選択された場合の画面表示例を示す図である。
【図10】情報提供が選択された場合の画面表示例を示す図である。
【図11】地図配信機能及び情報提供機能を説明するための動作シーケンス例を示すシーケンス図である。
【図12】トランシーバ機能を説明するための動作シーケンス例を示すシーケンス図である。
【図13】実施形態の応用例を説明するための動作シーケンス例を示すシーケンス図である。
【図14】実施形態の応用例を説明するための動作シーケンス例を示す動作シーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。以下の実施形態における図面において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付す。
【0032】
(1)移動通信システムの概要
図1は、本実施形態の概要を説明するための図である。本実施形態に係る移動通信システム1は、3GPPで仕様が策定されているLTE(Long Term Evolution)に基づいて構成されている。また、移動通信システム1は、ETWS、又はETWSに基づく技術であるPWS(Public Warning System)をサポートする。
【0033】
図1に示すように、移動通信システム1は、無線基地局100と、無線基地局100の通信エリア内にある複数の無線端末200(200#1〜200#n)と、無線基地局101と、無線基地局101の通信エリア内にある複数の無線端末201(201#1〜201#n)とを具備する。無線基地局100及び無線基地局101は、コアネットワーク10に接続されている。
【0034】
コアネットワーク10には、情報配信サーバ15が接続されている。情報配信サーバ15は、地震や津波等の災害に関する緊急警報情報を配信するサーバである。緊急警報情報とは、「地震発生」や「津波発生」といったように、ユーザに差し迫った災害を通知するための情報である。このような情報配信サーバ15は、CBE(Cell Broadcast Entity)又はCBC(Cell Broadcast Center)と称される。
【0035】
コアネットワーク10は、ルータや交換局によって構成されており、情報配信サーバ15と、無線基地局100及び101との間で送受信される情報を中継する。
【0036】
無線基地局100及び101のそれぞれは、S1インタフェースと称されるコネクションを介してコアネットワーク10に接続されており、コアネットワーク10上のサーバ等との通信を行うように構成されている。また、無線基地局100及び101のそれぞれは、X2インタフェースと称されるコネクションを介して基地局間通信を行うように構成されている。X2インタフェースは、例えば、基地局間で干渉制御情報を送受信したり、ハンドオーバ時のシグナリング及びデータフォワーディングを行うためのものである。
【0037】
無線基地局100及び101のそれぞれは、無線通信エリアの最小単位であるセルを少なくとも1つ含んで構成される通信エリアを管理する。無線基地局100及び101のそれぞれは、ブロードキャストチャネルによって、情報配信サーバ15からの緊急警報情報を同報送信することができる。
【0038】
無線端末200及び201は、ユーザが所持する可搬型の無線通信装置であり、ユーザ機器(UE)とも称される。無線端末200は、待ち受け中の状態(アイドル状態と称される)、及び通信実行中の状態(コネクテッド状態と称される)において、無線基地局100から同報送信される緊急警報情報を受信して出力(表示又は音声出力)することができる。同様に、無線端末201は、無線基地局101から同報送信される緊急警報情報を受信して出力(表示又は音声出力)することができる。
【0039】
このような移動通信システム1において、無線基地局100は、コアネットワーク10を介して、情報配信サーバ15からの緊急警報情報を受信し、自局の通信エリア内の複数の無線端末200に対して、緊急警報情報を同報送信する。そして、無線基地局100は、緊急警報情報の受信及び送信後に、コアネットワーク10を介した通信が不能であることを検知すると、該通信不能の原因が災害であるとみなして、災害モードに移行する。無線基地局101についても同様である。災害モードの詳細については後述する。
【0040】
(2)無線基地局の構成
図2は、無線基地局100の構成を示すブロック図である。無線基地局101は無線基地局100と同様に構成されるため、無線基地局101の構成の説明は省略する。
【0041】
図2に示すように、無線基地局100は、無線通信部110と、ネットワーク通信部120と、記憶部130と、制御部140とを含む。
【0042】
無線通信部110は、無線周波数(RF)回路やベースバンド(BB)回路等を用いて構成され、無線端末200との無線通信を行うように構成される。無線通信部110は、下り無線信号を送信するための送信部と、上り無線信号を受信するための受信部とを含む。送信部は、制御部140からの送信信号の符号化、変調、アップコンバート、及び増幅を行って無線信号を生成し、当該無線信号をアンテナから送信する。受信部は、アンテナが受信した無線信号の増幅、ダウンコンバート、復調、及び復号を行って受信信号を生成し、当該受信信号を制御部140に出力する。
【0043】
ネットワーク通信部120は、コアネットワーク10及び他の無線基地局(無線基地局101等)に接続されており、ネットワーク(バックホールネットワーク)側との通信を行うように構成されている。ネットワーク通信部120は、情報配信サーバ15からの緊急警報情報を受信する。無線通信部110は、ネットワーク通信部120が受信した緊急警報情報を同報送信する。
【0044】
記憶部130は、例えばメモリを用いて構成され、無線基地局100の制御等に用いられる各種の情報を記憶する。記憶部130は、少なくとも自局の通信エリア内の避難所の位置を含む地図情報を記憶している。該地図情報は、無線基地局100に隣接する無線基地局(無線基地局101等)の方角を示す隣接基地局情報を含む。
【0045】
制御部140は、例えばCPUを用いて構成され、無線基地局100が備える各種の機能、具体的には、無線通信部110及びネットワーク通信部120を制御する。
【0046】
制御部140は、緊急警報情報の受信及び送信後に、ネットワーク通信部120の通信不能状態を検知すると、通常モードから災害モードに移行するよう制御する。本実施形態では、ネットワーク通信部120の通信不能状態とは、S1インタフェースを用いた通信、及びX2インタフェースを用いた通信の両方が不能である状態を意味するが、S1インタフェースを用いた通信が不能であってX2インタフェースを用いた通信が可能である状態であってもよい。例えば、ネットワーク通信部120はS1インタフェース及びX2インタフェースのそれぞれについてキープアライブ処理を行っており、該処理の結果をネットワーク通信部120から制御部140に通知することによって通信不能状態を検知できる。
【0047】
ここで、通常モードとは、無線基地局100の本来の機能を発揮するモードであり、コアネットワーク10上のサーバ等と無線端末200との通信(すなわち上位レイヤの通信)を中継するモードである。制御部140は、通常モード時(すなわち、コアネットワーク10を介した通信が可能である場合)には、コアネットワーク10を介して、図示を省略する地図情報配信サーバとの通信を行うことによって、記憶部130が記憶している地図情報を周期的に更新する。
【0048】
一方、災害モードとは、無線基地局100を特定の機能に限定して運用するモードであり、該特定の機能は、地図配信機能、情報提供機能、及びトランシーバ機能を含む。
【0049】
地図配信機能は、制御部140が、記憶部130に記憶されている地図情報を、無線通信部110から自局の通信エリア内に同報送信するよう制御する機能である。
【0050】
情報提供機能は、制御部140が、災害モードへの移行後に、無線端末200の現在地の状況に関する災害関連情報を無線端末200から受信すると、該受信した災害関連情報を記憶部130内の地図情報に反映させることによって、地図配信機能によって配信されるべき地図情報を更新する機能である。なお、無線端末200からの災害関連情報は、該無線端末200の現在地を示す位置情報と、該現在地における被害状況を示す情報とを含む。制御部140は、地図情報を更新する度に、地図情報の更新番号も更新する。地図情報が同報送信される際には、該地図情報の更新番号も同報送信される。
【0051】
トランシーバ機能は、制御部140が、コアネットワーク10を介さずに複数の無線端末200間で行われる通信を自局が中継する機能である。本実施形態では、コアネットワーク10を介さずに複数の無線端末200間で行われる通信とは、IP層よりも下位のレイヤ(データリンク層、物理層)による同報半二重通信であるが、IPレイヤ以上のレイヤによる通信であってもよい。
【0052】
制御部140は、災害モードに移行する際、及び災害モード中において、災害モードであることを示す災害モード通知情報を周期的に同報送信するよう無線通信部110を制御する。本実施形態では、制御部140は、地図配信機能による地図情報、及びトランシーバ機能による音声データを、災害モード通知情報に含めて同報送信するよう制御する。
【0053】
また、制御部140は、災害モードに移行した後、ネットワーク通信部120の通信可能状態を検知すると、災害モードから通常モードに復帰するよう制御する。制御部140は、通常モードに復帰する際、通常モードに復帰することを示す通常モード復帰情報を同報送信するよう無線通信部110を制御する。
【0054】
(3)無線端末の構成
図3は、無線端末200の構成を示すブロック図である。無線端末201は無線端末200と同様に構成されるため、無線端末201の構成の説明は省略する。
【0055】
図3に示すように、無線端末200は、無線通信部210と、ディスプレイ221と、ボタン222と、スピーカ223と、マイク224と、記憶部230と、制御部240と、バッテリ250と、GPS受信機260とを含む。
【0056】
無線通信部210は、無線周波数(RF)回路やベースバンド(BB)回路等を用いて構成され、無線基地局100との無線通信を行うように構成される。無線通信部210は、上り無線信号を送信するための送信部と、下り無線信号を受信するための受信部とを含む。送信部は、制御部240からの送信信号の符号化、変調、アップコンバート、及び増幅を行って無線信号を生成し、当該無線信号をアンテナから送信する。受信部は、アンテナが受信した無線信号の増幅、ダウンコンバート、復調、及び復号を行って受信信号を生成し、当該受信信号を制御部240に出力する。
【0057】
ディスプレイ221、ボタン222、スピーカ223、及びマイク224は、無線端末200のユーザとのインターフェイスとして機能する。ディスプレイ221は、制御部240からの入力に基づいて文字や画像を表示する。ボタン222は、ユーザからの操作入力を受け付けて、操作信号を制御部240に出力する。なお、ディスプレイ221がタッチパネルである場合には、ボタン222の少なくとも一部がディスプレイ221と一体化されていてもよい。スピーカ223は、制御部240からの入力に基づいて音声を出力する。マイク224は、ユーザからの音声入力を受け付けて、音声信号を制御部240に出力する。
【0058】
記憶部230は、例えばメモリを用いて構成され、無線端末200の制御等に用いられる各種の情報を記憶する。制御部240は、例えばCPUを用いて構成され、無線端末200が備える各種の機能、具体的には、無線通信部210、及びユーザインターフェイス部(ディスプレイ221、ボタン222、スピーカ223、及びマイク224)を制御する。バッテリ250は、電力を蓄えており、蓄えている電力を無線端末200の各ブロックに供給する。GPS受信機260は、GPS信号を受信して制御部240に出力する。
【0059】
制御部240は、災害モード通知情報を無線通信部210が受信すると、災害モード通知情報に含まれる地図情報及びその更新番号を記憶部230に記憶させる。制御部240は、無線通信部210が地図情報及び更新番号を受信した際、記憶部230が記憶している更新番号よりも、無線通信部210が受信した更新番号が新しい場合に、記憶部230が記憶している地図情報を、無線通信部210が受信した地図情報を用いて更新する。一方、記憶部230が記憶している更新番号よりも、無線通信部210が受信した更新番号が新しくない場合には、制御部240は、無線通信部210が受信した地図情報を用いた更新処理を省略する。
【0060】
また、制御部240は、災害モード通知情報を無線通信部210が受信すると、災害モード発動中である旨の表示を行うようディスプレイ221を制御する。なお、制御部240は、表示に加えて、災害モード発動中である旨の音声出力を行うようスピーカ223を制御してもよい。該表示は、地図配信機能、情報提供機能、トランシーバ機能の各機能の選択をユーザに促すための領域を含む。
【0061】
ボタン222を用いて地図配信機能が選択されると、制御部240は、記憶部230が記憶している地図情報を表示するようディスプレイ221を制御する。
【0062】
ボタン222を用いて情報提供機能が選択されると、制御部240は、ボタン222を用いて入力される被害状況を示す情報と、GPS受信機260が受信したGPS信号を用いて構成される現在地情報とを含む災害関連情報を生成し、該災害関連情報を無線基地局100に送信するよう制御する。
【0063】
ボタン222を用いてトランシーバ機能が選択されると、制御部240は、無線基地局100の通信エリア内の他の無線端末200との通信(本実施形態では、IP層よりも下位のレイヤによる同報半二重通信)を行うよう制御する。具体的には、制御部240は、マイク224を用いて生成される音声データを無線基地局100に送信するよう無線通信部210を制御すると共に、無線通信部210が受信した音声データに対応する音声を出力するようスピーカ223を制御する。
【0064】
(4)移動通信システムの概略動作
次に、移動通信システム1の概略動作について、(4.1)プロトコルスタック、(4.2)無線基地局の概略動作、(4.3)無線端末の概略動作の順に説明する。
【0065】
(4.1)プロトコルスタック
図4は、移動通信システム1のプロトコルスタックを示す図である。図4(a)は通常モード時のプロトコルスタックを示し、図4(b)は災害モード時のプロトコルスタックを示す。
【0066】
図4(a)に示すように、通常モードにおいては、無線端末200は、無線基地局100を介して、例えばコアネットワーク10に接続されたサーバ20との通信を行う。無線端末200は、下位レイヤ(物理層、データリンク層)を用いて無線基地局100との無線通信を行うと共に、上位レイヤ(アプリケーション層、プレゼンテーション層、セッション層等)を用いてサーバ20との通信を行う。無線基地局100は、上位レイヤについては処理を行わず、下位レイヤについての処理を行っている。
【0067】
図4(b)に示すように、災害モードにおいては、無線基地局100及び無線端末200のそれぞれは、IP層のプロトコルを実行するためのプログラムに代えて、災害モードを実行するための特別なアプリケーションプログラムを起動する。災害モードに切り替わった無線基地局100及び無線端末200は、下位レイヤ(物理層、データリンク層)は標準的な機能を使用し、IP層以上は上記特別なアプリケーションプログラムを使用することで災害モードを実現する。
【0068】
(4.2)無線基地局の概略動作
次に、フローチャートを用いて、無線基地局100の概略動作を説明する。図5は、無線基地局100の概略動作を示すフローチャートである。
【0069】
図5に示すように、ステップS11において、制御部140は、ネットワーク通信部120が緊急警報情報を受信したか否かを確認する。ネットワーク通信部120が緊急警報情報を受信すると、制御部140は、該緊急警報情報を同報送信するよう無線通信部110を制御するとともに、処理をステップS12に進める。
【0070】
ステップS12において、制御部140は、制御部140に設けられているタイマを起動する。該タイマは、所定時間を計時するためのものである。
【0071】
ステップS13において、制御部140は、タイマが満了する前(すなわち、緊急警報情報の受信及び送信から所定時間内)に、ネットワーク通信部120の通信不能状態を検知したか否かを確認する。タイマが満了する前にネットワーク通信部120の通信不能状態を検知すると、制御部140は、処理をステップS14に進める。
【0072】
ステップS14において、制御部140は、記憶部130に記憶されている上記特別なアプリケーションプログラムを読み出して実行することによって、災害モードを起動する。
【0073】
ステップS15において、制御部140は、災害モード切り替えビット(又はビット列)及び地図情報等を含む災害モード通知情報を同報送信するよう無線通信部110を制御する。
【0074】
ステップS16において、制御部140は、ネットワーク通信部120が通信可能な状態になったか否かを確認する。ネットワーク通信部120が通信可能な状態になっていない場合には、制御部140は、処理をステップS15に戻す。一方、ネットワーク通信部120が通信可能な状態になった場合には、制御部140は、処理をステップS17に進める。
【0075】
ステップS17において、制御部140は、災害モードから通常モードに復帰するよう制御する。
【0076】
ステップS18において、制御部140は、通常モード切り替えビット(又はビット列)を含む通常モード復帰情報を同報送信するよう無線通信部110を制御する。
【0077】
(4.3)無線端末の概略動作
次に、フローチャートを用いて、無線端末200の概略動作を説明する。図6は、無線端末200の概略動作を示すフローチャートである。
【0078】
図6に示すように、ステップS21において、制御部240は、災害モード切り替えビット(又はビット列)及び地図情報等を含む災害モード通知情報を無線通信部210が受信した否かを監視する。
【0079】
災害モード通知情報を無線通信部210が受信すると(ステップS22;YES)、ステップS23において、制御部240は、記憶部230に記憶されている上記特別なアプリケーションプログラムを読み出して実行することによって、災害モードを起動する。
【0080】
ステップS24において、制御部240は、通常モード切り替えビット(又はビット列)を含む通常モード復帰情報を無線通信部210が受信した否かを監視する。
【0081】
通常モード復帰情報を無線通信部210が受信すると(ステップS25;YES)、ステップS26において、制御部240は、災害モードから通常モードに復帰するよう制御する。
【0082】
(5)災害モードの詳細
次に、具体例を挙げて、災害モードの詳細について説明する。
【0083】
(5.1)災害モード通知情報及び災害モード初期画面
図7は、無線基地局100から同報送信される災害モード通知情報の構成例を示す図である。図7に示すように、災害モード通知情報は、災害モード切り替えビット(又はビット列)と、トランシーバ機能による音声データと、地図配信機能による地図情報及びその更新番号とを含む。
【0084】
図8は、災害モード初期画面の画面表示例を示す図である。図8に示すように、無線端末200は、災害モード通知情報を受信すると、ディスプレイ221上に、災害モード発動中である旨の表示を行う。該表示は、地図表示をユーザが選択するための表示領域221aと、情報提供をユーザが選択するための表示領域221bと、トランシーバ機能をユーザが選択するための表示領域221cとを含む。各表示領域に対応するボタンをユーザが押下することによって、各表示領域に対応する機能が選択される。
【0085】
(5.2)地図配信機能及び情報提供機能
図9は、地図表示が選択された場合の画面表示例を示す図である。図9に示すように、地図表示画面は、ユーザの現在地を示す情報と、避難所の位置を示す情報と、通行不可/危険エリアを示す情報(図中「×」印で示されている)と、隣接基地局の方角を示す情報(図中「通信可能予想地域」と表記されている)とを含む。
【0086】
ユーザの現在地を示す情報は、無線端末200のGPS機能を用いて提供されるものである。避難所の位置を示す情報と隣接基地局の方角を示す情報とは、予め地図情報に含まれている。通行不可/危険エリアを示す情報は、災害関連情報(情報提供機能)によって提供されるものである。
【0087】
隣接基地局(無線基地局101等)がコアネットワーク10と通信可能な状態であれば、無線基地局100が通信不能な状態であっても、隣接基地局へ向けて移動すれば無線端末200は通信(上位レイヤの通信)を行うことができる。
【0088】
なお、地図表示画面は、待ち受け画面に戻すための表示領域221aと、情報提供をユーザが選択するための表示領域221bと、トランシーバ機能をユーザが選択するための表示領域221cとを含む。
【0089】
図10は、情報提供が選択された場合の画面表示例を示す図である。図10に示すように、情報提供画面は、無線端末200の現在地の被害状況を選択するための表示領域を含む。該表示領域は、火事発生、建物倒壊、水害、目立った損害なしといった選択肢を含む。ユーザは、ボタン222を用いて、各選択肢の何れかを選択する。
【0090】
なお、情報提供画面は、待ち受け画面に戻すための表示領域221aと、次の情報提供をユーザが選択するための表示領域221bと、トランシーバ機能をユーザが選択するための表示領域221cとを含む。
【0091】
図11は、地図配信機能及び情報提供機能を説明するための動作シーケンス例を示すシーケンス図である。本動作シーケンスは、無線端末200#1が地図表示を行った後に情報提供を行う一例を示す。
【0092】
図11に示すように、ステップS101において、無線基地局100は、コアネットワーク10を介して地図情報配信サーバに対して地図情報要求を送信する。
【0093】
ステップS102において、無線基地局100は、コアネットワーク10を介して地図情報配信サーバから地図情報を受信する。
【0094】
ステップS103において、無線基地局100は、地図情報配信サーバからの地図情報を用いて、それまで記憶していた地図情報を更新する。
【0095】
ステップS104において、無線基地局100は、コアネットワーク10を介して情報配信サーバ15から緊急警報情報を受信する。
【0096】
ステップS105において、無線基地局100は、自局の通信エリア内に緊急警報情報を同報送信する。無線基地局100の通信エリア内の複数の無線端末200(200#1〜200#n)は緊急警報情報を受信する。
【0097】
ステップS106において、複数の無線端末200(200#1〜200#n)のそれぞれは、緊急警報情報を表示する。
【0098】
ステップS107において、無線基地局100は、緊急警報情報の受信及び送信後の所定時間内において、コアネットワーク10を介した通信が不可であることを検知し、災害モードに移行する。
【0099】
ステップS108において、無線基地局100は、自局の通信エリア内に災害モード通知情報を同報送信する。災害モード通知情報は、地図情報及びその更新番号を含む。無線基地局100の通信エリア内の複数の無線端末200(200#1〜200#n)は災害モード通知情報を受信する。
【0100】
ステップS109において、複数の無線端末200(200#1〜200#n)のそれぞれは、災害モード画面(図8参照)を表示する。
【0101】
ステップS110において、無線端末200#1は、ユーザからの地図表示選択操作を受け付ける。
【0102】
ステップS111において、無線端末200#1は、ユーザからの地図表示選択操作に応じて、地図表示画面(図9参照)を表示する。
【0103】
ステップS112において、無線端末200#1は、ユーザからの情報提供選択操作を受け付け、被害状況の情報の選択(図10参照)を受け付ける。そして、無線端末200#1は、現在地の情報と被害状況の情報とを含む災害関連情報を生成する。
【0104】
ステップS113において、無線端末200#1は、生成した災害関連情報を無線基地局100に送信する。無線基地局100は、災害関連情報を受信する。
【0105】
ステップS114において、無線基地局100は、無線端末200#1からの災害関連情報を用いて地図情報を更新する。具体的には、それまで記憶していた地図情報に対し、災害関連情報によって示される位置における被害状況(通行不可/危険)を反映させる処理を行う。その際、無線基地局100は、地図情報の更新番号をインクリメントする。
【0106】
ステップS115において、無線基地局100は、更新後の地図情報及びその更新番号を含む災害モード通知情報を自局の通信エリア内に同報送信する。無線基地局100の通信エリア内の複数の無線端末200(200#1〜200#n)は災害モード通知情報を受信する。
【0107】
ステップS116において、複数の無線端末200(200#1〜200#n)のそれぞれは、更新後の地図情報及びその更新番号を記憶し、必要に応じて該地図情報を表示する。
【0108】
このように、地図配信機能によれば、無線基地局100は、自局エリア内の無線端末200に対して避難所や周辺施設の情報を提供することができる。さらに、隣接基地局の情報をユーザに伝えることにより、隣接基地局エリアへユーザを誘導することができる。また、情報提供機能によれば、無線端末200からの通行不可エリア等の情報を地図に反映させることにより、ユーザが危険と予想されるエリアを避けて通ることができるようになる。
【0109】
(5.3)トランシーバ機能
図12は、トランシーバ機能を説明するための動作シーケンス例を示すシーケンス図である。本動作シーケンスは、災害モード移行後において、無線端末200#1と無線端末200#nとの間でトランシーバ機能による通信を行う一例を示す。
【0110】
図12に示すように、ステップS201において、複数の無線端末200(200#1〜200#n)のそれぞれは、災害モード画面(図8参照)を表示する。
【0111】
ステップS202において、無線端末200#1は、ユーザからのトランシーバ機能選択操作を受け付ける。
【0112】
ステップS203において、無線端末200#1は、ユーザからの音声入力を受け付けて、音声データを生成する。
【0113】
ステップS204において、無線端末200#1は、生成した音声データを無線基地局100に送信する。無線基地局100は、音声データを受信する。
【0114】
ステップS205において、無線基地局100は、受信した音声データに対し、下位レイヤ(物理層、データリンク層)の処理を行う。
【0115】
ステップS206において、無線基地局100は、下位レイヤ(物理層、データリンク層)の処理後の音声データを自局の通信エリア内に同報送信する。無線端末200#nは、音声データを受信する。
【0116】
ステップS207において、無線端末200#nは、受信した音声データに対応する音声を出力する。
【0117】
このように、トランシーバ機能によれば、救助を必要とする被災者は相手の電話番号を知らなくても周囲の人間に救助を要請できる。また、エリア内にいる人はだれでも救助要請を聞くことができるので、救助隊の到着を待つことなく被災者の救助活動を開始することができる。
【0118】
(6)実施形態の効果
以上説明したように、本実施形態では、無線基地局100は、緊急警報情報の受信及び送信後に、コアネットワーク10を介した通信が不能であることを検知すると、該通信不能の原因が災害であるとみなして、災害モードに移行する。そして、無線基地局100は、災害モードにおいて、自局の通信エリア内の複数の無線端末200間で行われる通信を中継する。これにより、各無線端末200は、無線基地局100との無線通信機能を有していれば、コアネットワーク10を介さずに他の無線端末200との通信を行うことができる。また、該他の無線端末200は、無線基地局100の通信エリア内であること(すなわち、周囲であること)が保証されるため、該他の無線端末200に救助を要請することで迅速な救助が可能になる。従って、災害発生時において、ユーザが周囲にいる者に対して救助を要請できる。
【0119】
本実施形態では、無線基地局100は、災害モードにおいて、自局の通信エリア内の複数の無線端末200間で行われる通信として、IPレイヤよりも下位のレイヤ(データリンク層、物理層)による同報半二重通信を中継する。これにより、上位レイヤの通信が不能である状況下でも、必要最小限の通信を実行可能とすることができる。
【0120】
本実施形態では、無線基地局100が災害モード通知情報を周期的に同報送信するため、他の無線基地局100の通信エリアから該無線基地局100の通信エリアに移動してきた無線端末200に対しても、災害モードが発動中であることを知らせることができる。
【0121】
本実施形態では、無線基地局100は、通常モードに復帰する際、通常モードに復帰することを示す通常モード復帰情報を送信する。これにより、災害モードから通常モードに復帰したことを無線端末200に知らせることができる。
【0122】
本実施形態では、無線基地局100は、災害モードにおいて、一の無線端末200から提供された災害関連情報を含めて更新した地図情報を自局の通信エリア内に同報送信する。これにより、該通信エリア内の各無線端末200が、該災害関連情報を共有することができるため、該通信エリア内の位置における被害状況を知ることができるため、例えばユーザが避難所等に向かう途中で通行不可エリアや危険なエリアを通過してしまうといった問題をより確実に解決できる。また、予め地図情報を保存していない無線端末200であっても地図情報を得ることができる。
【0123】
本実施形態では、無線基地局100は、更新した地図情報と共に、該地図情報の更新番号を同報送信する。これにより、地図情報及び更新番号を受信した無線端末200は、該更新番号に基づいて、該地図情報が最新のものであるか否かを知ることができる。
【0124】
本実施形態では、無線端末200は、無線基地局100から地図情報及び更新番号を受信した際、記憶している更新番号よりも受信した更新番号が新しい場合に、記憶している地図情報を受信した地図情報を用いて更新する。これにより、無線端末200は、無線基地局100から新たに受信した地図情報が保存済みのものである場合には、該新たに受信した地図情報を用いた更新処理を省略することができるため、無線端末200の処理負荷を軽減できる。
【0125】
本実施形態では、無線基地局100は、コアネットワーク10を介した通信が可能である場合には、コアネットワーク10を介した通信を行うことによって、記憶している地図情報を周期的に更新する。これにより、災害発生時において同報配信すべき地図情報を、災害発生前において最新の状態にしておくことができる。
【0126】
本実施形態では、地図情報は、無線基地局100に隣接する無線基地局100の方角を示す隣接基地局情報を含むため、隣接基地局情報を含む地図情報を受信した無線端末200は、隣接基地局の方角を知ることができる。
【0127】
(7)その他の実施形態
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0128】
(7.1)応用例1
上述した実施形態に係るトランシーバ機能と情報提供機能とは、個別に実施する場合に限らず、組み合わせて実施可能である。本応用例では、複数の無線端末200のそれぞれは、他の無線端末200から提供される情報であって他の無線端末200の現在地に関する災害関連情報を無線基地局100を介して受信すると、該受信した災害場所情報を用いて、記憶している地図情報を更新する。
【0129】
図13は、本応用例を説明するための動作シーケンス例を示すシーケンス図である。
【0130】
図13に示すように、ステップS301において、無線端末200#1は、情報提供機能且つトランシーバ機能の選択操作を受け付ける。
【0131】
ステップS302において、無線端末200#1は、ユーザからの情報提供選択操作を受け付け、被害状況の情報の選択を受け付ける。そして、無線端末200#1は、現在地の情報と被害状況の情報とを含む災害関連情報を生成する。
【0132】
ステップS303において、無線端末200#1は、生成した災害関連情報を無線基地局100に送信する。無線基地局100は、災害関連情報を受信する。
【0133】
ステップS304において、無線基地局100は、受信した災害関連情報に対し、下位レイヤ(物理層、データリンク層)の処理を行う。
【0134】
ステップS305において、無線基地局100は、下位レイヤ(物理層、データリンク層)の処理後の災害関連情報を自局の通信エリア内に同報送信する。無線端末200#nは、音声データを受信する。
【0135】
ステップS306において、無線端末200#nは、無線端末200#1からの災害関連情報を用いて地図情報を更新する。具体的には、それまで記憶していた地図情報に対し、災害関連情報によって示される位置における被害状況(通行不可/危険)を反映させる処理を行う。
【0136】
このように、本応用例によれば、無線端末200は、他の無線端末200から提供される災害関連情報を用いて、自端末が記憶している地図情報を更新することによって、災害発生後の建物倒壊や火災等による通行不可エリアなどの情報を地図上に反映させることができ、ユーザが避難所等に向かう途中で危険なエリアを通過してしまうことを防止できる。
【0137】
(7.2)応用例2
上述した実施形態では、隣接基地局の方角を地図情報に含めていたが、該隣接基地局が通信可能な状態にあるか否かは不明である。そこで、本応用例では、無線基地局100は、該隣接基地局の通信エリアから移動してきた無線端末からの報告に基づいて、該隣接基地局が通信可能な状態にあるか否かを判断して地図情報を更新する。
【0138】
具体的には、無線基地局100は、隣接基地局から自局へ接続先を切り替えた無線端末200から、隣接する無線基地局100がコアネットワーク10を介した通信が可能であることを示す通信可能基地局情報を受信すると、隣接基地局情報を通信可能基地局情報を用いて更新する。
【0139】
図14は、本応用例を説明するための動作シーケンス例を示す動作シーケンス図である。
【0140】
図14に示すように、ステップS401において、無線端末200は、無線基地局101を介してコアネットワーク10上のサーバ等との通信を行っている。
【0141】
ステップS402において、無線端末200は、災害モードに移行中の無線基地局100の方向へ移動し、無線基地局101との接続を切断する。
【0142】
ステップS403において、無線端末200は、無線基地局100からの災害モード通知情報を受信する。
【0143】
ステップS404において、無線端末200は、無線基地局100との接続処理(再接続処理)を行う。
【0144】
ステップS405において、無線端末200は、無線基地局101が通信可能な状態にあることを示す通信可能基地局情報を無線基地局100に送信する。無線基地局100は、通信可能基地局情報を受信する。
【0145】
ステップS406において、無線基地局100は、受信した通信可能基地局情報を用いて地図情報を更新する。
【0146】
このように、本応用例によれば、隣接基地局が通信可能状態であるか否かを地図情報に反映させることができる。また、通信可能状態にある隣接基地局の方角を示すように地図情報を構成することで、無線端末200のユーザは、どの方角に移動すれば通信可能になるかを知ることができる。
【0147】
(7.3)応用例3
上述した実施形態においては、無線端末200が地図情報を予め保存していないケースを想定してたが、無線端末200が地図情報を予め保存していてもよい。この場合、無線基地局100は、地図情報全体を同報送信するのではなく、無線端末200から提供された災害関連情報のみを同報送信し、該災害関連情報を受信した無線端末200が、予め保存しておいた地図情報に災害関連情報を反映させてもよい。
【0148】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0149】
1…移動通信システム、10…コアネットワーク、15…情報配信サーバ、20…サーバ、100,101…無線基地局、110…無線通信部、120…ネットワーク通信部、130…記憶部、140…制御部、200,201…無線端末、210…無線通信部、221…ディスプレイ、222…ボタン、223…スピーカ、224…マイク、230…記憶部、240…制御部、250…バッテリ、260…GPS受信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自局の通信エリア内への同報送信が可能な無線基地局と、
前記無線基地局との無線通信を行う無線端末と、
を具備する移動通信システムであって、
前記無線基地局は、災害に関する緊急警報情報を同報送信した後、ネットワークを介した通信が不能であることを検知すると、災害モードであることを示す災害モード通知情報を同報送信し、
前記無線端末は、前記無線基地局からの前記災害モード通知情報を受信した後、自端末の現在地の状況に関する災害関連情報を前記無線基地局に送信し、
前記無線基地局は、前記災害モードへの移行後に前記無線端末からの前記災害関連情報を受信すると、該受信した災害関連情報を同報送信する、
ことを特徴とする移動通信システム。
【請求項2】
前記災害関連情報は、前記無線端末の現在地を示す位置情報と、該現在地における被害状況を示す情報とを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の移動通信システム。
【請求項3】
前記無線基地局は、避難所の位置を含む地図情報を記憶しており、
前記無線基地局は、前記災害モードへの移行後に前記無線端末からの前記災害関連情報を受信すると、該受信した災害関連情報を前記地図情報に反映させることによって前記地図情報を更新し、該更新した地図情報を同報送信する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の移動通信システム。
【請求項4】
前記無線基地局は、前記更新した地図情報と共に、該地図情報の更新番号を同報送信する、
ことを特徴とする請求項3に記載の移動通信システム。
【請求項5】
前記無線端末は、前記無線基地局からの前記地図情報を前記更新番号と対応付けて記憶しており、
前記無線端末は、前記無線基地局から前記地図情報及び前記更新番号を受信した際、前記記憶している更新番号よりも前記受信した更新番号が新しい場合に、前記記憶している地図情報を前記受信した地図情報を用いて更新する、
ことを特徴とする請求項4に記載の移動通信システム。
【請求項6】
前記無線基地局は、前記ネットワークを介した通信が可能である場合には、前記ネットワークを介した通信を行うことによって、前記記憶している地図情報を周期的に更新する、
ことを特徴とする請求項3〜5の何れか一項に記載の移動通信システム。
【請求項7】
前記地図情報は、前記無線基地局に隣接する無線基地局の方角を示す隣接基地局情報を含む、
ことを特徴とする請求項3〜6の何れか一項に記載の移動通信システム。
【請求項8】
前記無線基地局は、自局に隣接する無線基地局から自局へ接続先を切り替えた無線端末から、前記隣接する無線基地局がネットワークを介した通信が可能であることを示す通信可能基地局情報を受信すると、前記隣接基地局情報を前記通信可能基地局情報を用いて更新する、
ことを特徴とする請求項7に記載の移動通信システム。
【請求項9】
ネットワークを介した通信を行うネットワーク通信部と、
自局の通信エリア内の無線端末との無線通信を行う基地局無線通信部と、
前記ネットワーク通信部及び前記基地局無線通信部を制御する基地局制御部と、
を具備する無線基地局であって、
前記基地局制御部は、災害に関する緊急警報情報を同報送信した後、前記ネットワークを介した通信が不能であることを検知すると、災害モードであることを示す災害モード通知情報を同報送信するよう制御し、
前記基地局制御部は、前記災害モードへの移行後に、前記無線端末の現在地の状況に関する災害関連情報を前記無線端末から受信すると、該受信した災害関連情報を同報送信するよう制御する、
ことを特徴とする無線基地局。
【請求項10】
無線基地局との無線通信を行う端末無線通信部と、
前記端末無線通信部を制御する端末制御部と、
を具備する無線端末であって、
前記端末制御部は、災害モードであることを示す災害モード通知情報を前記無線基地局から受信した後、自端末の現在地の状況に関する災害関連情報を前記無線基地局に送信するよう制御する、
ことを特徴とする無線端末。
【請求項11】
無線基地局が、災害に関する緊急警報情報を同報送信した後、ネットワークを介した通信が不能であることを検知すると、災害モードであることを示す災害モード通知情報を同報送信するステップと、
無線端末が、前記無線基地局からの前記災害モード通知情報を受信した後、自端末の現在地の状況に関する災害関連情報を前記無線基地局に送信するステップと、
前記無線基地局は、前記災害モードへの移行後に前記無線端末からの前記災害関連情報を受信すると、該受信した災害関連情報を同報送信するステップと、
を具備することを特徴とする移動通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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