説明

移動通信システム

【課題】携帯端末のスムーズなハンドオーバーを保証することができる移動通信システムを提供すること。
【解決手段】列車の軌道に沿って各固定基地局のセルの境界(ハンドオーバー領域)に予め位置情報を通知することができるセンサーを設置し、このセンサーに列車等内に設置された移動基地局を自動検知させ、センサが設置された位置に関する情報を移動基地局に送信し、固定基地局との通信を切替える(ハンドオーバー)よう通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動通信システムに関し、特に、新幹線などによって高速移動時にも移動機すなわち携帯端末による通信、通話が可能な移動通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高速移動中の携帯端末の使用の普及に伴い、途切れのないシームレスな通信サービスの実現が必須である。
【0003】
たとえば株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモによるFOMAサービスで採用しているWCDMA((Wide−band Code Division Multiple Access)方式では、移動端末は複数の基地局と同時に通信することができる。このとき、どの基地局も同じ周波数を使っているために、移動端末は、各基地局によるセルの境界付近では複数の基地局からの電波を受け、電波強度やタイミングのズレを計測し、これを収容基地局から目的基地局にネットワーク経由で報告して目的基地局のタイミングを収容基地局のタイミングに修正(アライメント)する。したがって、理論的に、安定的な受信状態を維持しながらセル間を移動することができる。
【0004】
しかしながら、列車や新幹線等に乗車しているような高速移動中においては、セルの境界では電波強度がめまぐるしく変動するため、端末からのMeasurement Reportにしたがって基地局主導でのハンドオーバーに時間がかかってしまう。こうなると、電波の途切れは改善できるものの、データの流れが止まることがしばしば発生してしまう。
【0005】
また最近では、WCDMA方式によるFOMAサービスの拡大により多くのビジネスマンは携帯電話をビジネスツールとして使うようになり、きわめて高速で移動する新幹線においても、通信の安定を維持することができる移動通信システムの開発が要望されている。
【0006】
この課題を解決するために、まず、列車などの移動体の内部空間を無線ゾーンとする移動基地局の設置が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
この特許文献1によれば、移動体の中の移動機は、この移動基地局経由で移動通信交換局との間の通信回線を確立する。したがって、移動体がトンネル内を通過中であっても通信回線を維持することができ、トンネルの出入りの際にハンドオーバを行う必要もなく、高速移動中でも通信回線を安定に維持することができる。
【0008】
また、この特許文献1では、移動基地局の中にGPS(Global Positioning System)機能をもつ区間検出装置を有し、移動基地局自身によって区間の切り替わりを検出し、移動通信交換局に通知するように提案されている。
【0009】
さらに、列車の路線区間および先の位置情報を事前にわかることから、そうした発車タイミング情報および位置情報に基づき、区間の切り替わりを移動基地局に通知するアイデアもある(特許文献2参照)。
【0010】
この特許文献2は、機列車は決まった軌道に沿って移動するため、位置特定が容易で、位置情報からハンドオーバ先を一意に予定し、移動基地局は予定通りにハンドオーバをするというものである。
【0011】
【特許文献1】特開2002−335573号公報
【特許文献2】特開2004−32155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1によれば、移動基地局を経由して移動端末と通信交換局との間の通信回線の確立をある程度は保証することができる。
【0013】
しかし、線路ごとまたは鉄道本線ごとに各列車と接近する位置に、中継ケーブルの敷設が必要であるため、設置のスペースとコストがかかるという問題がある。きわめて高速で移動する新幹線においては、固定局への無線の切り替えが望ましい一方で、タイムリーなハンドオーバーの実現は難しい。さらに、言及されているGPS機能をもつ区間検出装置もGPSの信号に左右されるため、実現が難しいと予想される。
【0014】
特許文献2は、位置情報からハンドオーバ先を一意に予定しないといけない。列車のダイヤが乱れる場合、ハンドオーバー先の基地局情報が狂う。列車の運行情報の変更に伴い位置情報の変更が必要のため、ネットワークの負担が重くなる。
【0015】
本発明の目的は上記の問題点を解消し、携帯端末のスムーズなハンドオーバーを保証することができる移動通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、列車の軌道に沿って各固定基地局のセルの境界(ハンドオーバー領域)に予め位置情報を通知することができるセンサーを設置し、このセンサーに列車等内に設置された移動基地局を自動検知させる。
【0017】
その列車等がセンサーに接近するとき、センサーは列車の進行方向およびセル電波強度を判断し、移動基地局に目的基地局へのスイッチングを通知する。移動基地局はセンサーの指示を受け、固定基地局とコミュニケーションし、携帯端末のスムーズなハンドオーバーを保証する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、列車の運行状況が変っても、常にハンドオーバー先のセル情報を通知することができる。さらに、固定基地局と通信する携帯端末が高速移動しているときに固定基地局とのハンドオーバを行わずに済む。
【0019】
また本発明によれば、列車内に設置されている移動基地局とセンサーとの情報交換により、携帯端末ではユーザが欲しい情報(たとえば近隣の各種施設(百貨店、映画館、病院、銀行等)の情報)等を容易に入手することができる。
【0020】
また、ユーザが列車からいつ下車しても、携帯端末では、その駅近辺の周辺セル情報を事前に入手することができ、セルサーチの対象セルの数が少なくて済むし、セルサーチの時間短縮もできる。また、これまで周辺セル情報やセル周辺の局所的な情報を一手に管理する情報センターの負担を大幅に減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明による移動通信システムの一実施の形態のシステム構成を示すブロック図である。
【0023】
図1によれば、列車の通過エリアを複数のセルによってカバーしている。
【0024】
セル201は、固定基地局301によってカバーされる領域であり、セル202は、固定基地局302によってカバーされる領域であり、セル203は、固定基地局303によってカバーされる領域である。
【0025】
線路204上を運行する列車には移動基地局101Aが搭載されている。
【0026】
センサーは列車の軌道に沿ってセルの境界(ハンドオーバー領域)ごとに敷設される。この実施の形態では、セル201とセル202との境界にセンサー10が敷設され、セル202とセル203との境界にセンサー20が敷設される。
【0027】
図2は、図1に示した実施の形態において、各構成の関連を示すブロック図である。
【0028】
センサー10や20には位置情報サーバが搭載されており、この位置情報サーバには自センサーが敷設されている場所における固定基地局の情報などの位置情報が記憶されている。
【0029】
センサー10や20は、列車101内に搭載された移動基地局101Aとの間で無線通信を行う。
【0030】
センサー10や20は、移動基地局101Aからの電波を受信し、その強度を検出する手段や、その強度の時間的変化に基づき、移動基地局101Aが搭載された列車101がセンサーに対して近づいてきているのか、遠ざかっているのかすなわち列車101の進行方向を求める手段を備えている。
【0031】
列車101内の携帯端末102から発信要求があった場合、移動基地局101A、固定基地局301を介して、電話網であるネットワーク400に送信される。
【0032】
図3は、センサー10の周辺環境に関する情報について説明するブロック図である。
【0033】
図3に示すように、センサー10または固定基地局301は、列車101すなわち列車101に搭載した移動基地局102や、周辺の各種施設(百貨店、映画館、病院、銀行等)の位置情報を管理し、その情報を記憶してある。
【0034】
これらの位置情報は、たとえばセンサー10に内蔵される位置情報サーバに蓄積され、携帯端末102からリクエストに応じ、移動基地局101Aを介して携帯端末102に送信され、ユーザーはこれを参照することができる。
【0035】
次に、本実施の形態の移動通信システムの動作について、図面を参照してさらに詳しく説明する。
【0036】
図4は、図1に示した移動通信システムの動作を示すフローチャートである。
【0037】
図1に示すように、移動基地局101Aを搭載した列車101がセンサー10に接近すると、センサー10は図、4に示されるように条件判断を行う。
【0038】
センサー10は、移動基地局101Aを搭載した列車101がセンサー10に接近、通過したならば(A−1)、移動基地局101Aからの電波の強度の時間的な変化に基づいて列車101の進行方向を判断する(A−2)。
【0039】
固定基地局301からの信号が固定基地局302からの信号よりも弱まる方向に進行しているのであれば、通信相手を固定基地局302に切り替えるように、移動基地局101Aに通知する(A−3)。
【0040】
反対に、固定基地局301からの信号が固定基地局302からの信号よりも強まる方向に進行しているのであれば、通信相手を固定基地局301に切り替えるように、移動基地局101Aに通知する(A−4)。
【0041】
このステップ(A−3)、(A−4)では、移動基地局101Aにハンドオーバー先セル情報の指示を発信する。なお、センサー10は次のセルに入る隣接点に敷設され、移動基地局101Aとの通信に十分な時間的余裕が得られる位置に敷設されている。
【0042】
図5は、図1に示した移動通信システムの各構成どうしの通信タイミングを示すタイミングチャートである。
【0043】
本実施の形態の各構成のうち携帯端末102、移動基地局101A、センサー10、固定基地局301、固定基地局302、ネットワーク400は以下に説明するように通信を行う。なお、この例は、列車101がセル201からセル202に移動する場合のものである。
【0044】
携帯端末102が移動基地局101Aと通信中(S601)の状態において、列車101がセンサー10を通過するとき、センサー10は列車101の位置判断(S602)を上述のようにして行い、無線通信によって移動基地局101Aに通知する。移動基地局101Aはその指示を受け、固定基地局301にハンドオーバーのリクエストを出す。固定基地局301はその指示を受け、ネットワーク400に通知し、固定基地局302にハンドオーバーする(S603、S604、S605、S606)。センサー10は移動基地局101Aに固定基地局302への切り替え指示を出すとともに、固定基地局302の周辺セル情報、および周辺の各種施設(百貨店、映画館、病院、銀行等)の位置情報を位置情報サーバから提供する。
【0045】
携帯端末102は、移動基地局101Aを介して固定基地局301、ネットワーク400と通信し、ハンドオーバー後は、携帯端末102は、移動基地局101Aを介して固定基地局302、ネットワーク400と通信する。
【0046】
上述のように、携帯端末102や移動基地局101Aは、センサー10と情報交換することによって、移動基地局101Aは列車のダイヤが乱れたとしても、実際の運行状況に応じて行き先の各セル201、202、203の情報とそれに対応する位置情報を事前に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明による移動通信システムの一実施の形態のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した実施の形態において、各構成の関連を示すブロック図である。
【図3】センサー10の周辺環境に関する情報について説明するブロック図である。
【図4】図1に示した移動通信システムの動作を示すフローチャートである。
【図5】図1に示した移動通信システムの各構成どうしの通信タイミングを示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0048】
10、20 センサー
101 列車
101A 移動基地局
102 携帯端末(移動機)
201、202、203 セル
301、302、303 固定基地局
400 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体内に移動基地局を搭載し、前記移動体内の移動機の通信を、前記移動基地局を介し該移動基地局と固定基地局とが通信することによって行う移動通信システムにおいて、
前記固定基地局が複数設けられ、該複数の固定基地局のうちの所定の固定基地局によるセルと別の固定基地局によるセルとの境界にセンサーを敷設し、
前記センサーに前記移動基地局が近づいたときに、該センサーと該移動基地局とが通信することを特徴とする移動通信システム。
【請求項2】
前記センサーに前記移動基地局が近づいたときに、該センサーが、該センサーが敷設された位置に関する位置情報を該移動基地局に対して送信することを特徴とする請求項1に記載の移動通信システム。
【請求項3】
前記センサーに前記移動基地局が近づいたときに、該センサーが、該移動基地局が通信する前記固定基地局のハンドオーバーに関する情報を該移動基地局に対して送信することを特徴とする請求項1に記載の移動通信システム。
【請求項4】
前記センサーが前記移動基地局の進行方向を判断する手段を備えたことを特徴とする請求項3に記載の移動通信システム。
【請求項5】
前記センサーに前記移動基地局が近づいたときに、該センサーが、該センサーが敷設された位置の周辺の施設に関する情報を該移動基地局に対して送信することを特徴とする請求項1に記載の移動通信システム。
【請求項6】
請求項1から5のうちのいずれか1項に記載のセンサー。
【請求項7】
請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の移動基地局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−235541(P2007−235541A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54650(P2006−54650)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】