説明

移動通信端末装置、その制御方法及びプログラム

【課題】サービスを利用可能な公衆回線に接続された無線基地局の圏外にある状態のとき、ユーザ操作を必要とせずにいち早くサービスを利用可能な公衆回線に接続された無線基地局の検索を行う。
【解決手段】携帯電話機10は、複数の無線基地局と送受信可能な移動通信端末装置である。制御部104は、携帯電話機10が移動した距離である移動量を加速度センサ108が出力する情報に基づいて測定する移動量測定手段と、測定した移動量が記憶部107が記憶する所定の閾値Lthを超えたことを判定する移動量判定手段と、前記移動量判定手段により測定した移動量が所定の閾値を超えたと判断された場合に無線基地局の検索を行う検索制御手段として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信端末装置、その制御方法及びプログラムに関し、特に、無線基地局の検索動作の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する技術として、特許文献1に記載のものを挙げる。特許文献1には、段落0028等を参照すると、衝撃センサや加速度センサや装置本体の移動速度を測定するジャイロ等、複数種類のセンサを用いて移動端末装置の移動状態を示す情報を測定することが記載されている。また、段落0030等を参照すると、複数の基地局から信号を受信し、最も受信状態のよい受信信号の受信状態を記録することが記載されている。
【特許文献1】特開2004−104265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
携帯電話機では、待ち受けや通話などの使用可能時間の延長が常に望まれている。そのため携帯電話機がサービスを利用可能な公衆回線に接続された無線基地局には待ち受けることができない場合にも消費電流が削減できるような無線基地局の検索方法が検討されている。一般的な方法として、サービスを利用可能な公衆回線に接続された無線基地局の検索周期を徐々に大きくしていく、という方法が挙げられる。
【0004】
このような場合、一定時間以上サービスを利用可能な公衆回線に接続された無線基地局には待ち受けられず、この無線基地局を検索する周期が長くなった後に、サービスを利用可能な公衆回線に接続された無線基地局の電波を受信可能なエリアに移動した際、待ち受け状態への移行に時間がかかってしまうという不利益が生じていた。
【0005】
また、強制的に無線基地局の検索を行わせる方法として、キー入力、携帯電話機の開閉等が考えられているが、いずれもユーザの利便性を損なうものである。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、サービスを利用可能な公衆回線に接続された無線基地局の圏外にある状態のとき、ユーザ操作を必要とせずにいち早くサービスを利用可能な公衆回線に接続された無線基地局の検索を行うことが可能な移動通信端末装置、その制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は以下の構成を備える。
【0008】
本発明に係る移動通信端末装置は、複数の無線基地局と送受信可能な移動通信端末装置であって、装置本体が移動した距離である移動量を測定する移動量測定手段と、測定した移動量が所定の閾値を超えたことを判定する移動量判定手段と、前記移動量判定手段により測定した移動量が所定の閾値を超えたと判断された場合に無線基地局の検索を行う検索制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る移動通信端末装置の制御方法は、複数の無線基地局と送受信可能な移動通信端末装置の制御方法であって、装置本体が移動した距離である移動量を測定する移動量測定工程と、測定した移動量が所定の閾値を超えたことを判定する移動量判定工程と、前記移動量判定工程にて測定した移動量が所定の閾値を超えたと判断された場合に無線基地局の検索を行う検索制御工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明に係るプログラムは、複数の無線基地局と送受信可能な移動通信端末装置を、装置本体が移動した距離である移動量を測定する移動量測定手段と、測定した移動量が所定の閾値を超えたことを判定する移動量判定手段と、前記移動量判定手段により測定した移動量が所定の閾値を超えたと判断された場合に無線基地局の検索を行う検索制御手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ユーザ操作を必要とせずにいち早くサービスを利用可能な公衆回線に接続された無線基地局の検索を行うことが可能な移動通信端末装置、その制御方法及びプログラムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1、図2を参照すると、本実施形態に係る携帯電話機10の構成が示されている。図1に示すように携帯電話機10は、無線部101、ベースバンド部102、送受話部103、制御部104、操作キー105、LCD表示部106、記憶部107及び加速度センサ108を備え、これら各部を用いて、公衆回線に接続された複数の無線基地局と複数の周波数帯にて符号分割多重あるいは時分割多重無線伝送路で送受信可能である。
【0014】
ベースバンド部102は送受話部103に音声データを入出力し、符号化したデータを無線部101に入出力する。無線部101は制御部104に指定されたモードで動作し、無線基地局と無線伝送路でデータの送受信を行う。加速度センサ108は、振動量及び振動時間のデータを測定し、測定結果を制御部104に対して出力する。記憶部107は、携帯電話機10の移動量を判定するための移動量のしきい値Lthを格納している。操作キー105、LCD表示部106はユーザインタフェースである。
【0015】
制御部104は図2に示すように、移動量判定手段201、検索制御手段202を有する構成である。なお、これら各手段は、携帯電話機10の備えるマイコン(図示せず)と、これを利用して所定の情報処理を行うソフトウェアプログラムとの協働によって実現するものであってもよい。
【0016】
移動量判定手段201は、携帯電話機10がサービスを利用可能な公衆回線に接続された無線基地局と同期を取れない状態にあるとき、加速度センサ108から出力された振動量及び振動時間のデータに基づく移動量を計算し、計算結果の移動量を記憶部107に格納されているしきい値Lthと比較し、携帯電話機10の移動量が一定値以上であるかどうかを判定する。
【0017】
検索制御手段202は移動量の判定結果より、移動量がある一定値Lthより大きければサービスを利用可能な公衆回線に接続された無線基地局を検索する検索周期をリセットし前記サービスを利用可能な公衆回線に接続された無線基地局の検索を行う。また、移動量が一定値Lthより大きくなければ検索周期の変更は行わない。
【0018】
図3を参照すると、本実施形態に係る携帯電話機10を含むシステムの構成図が示されている。図3中、無線基地局301及び302はサービスを利用可能な公衆回線に接続されており、無線基地局303及び304は緊急呼のみ利用可能な公衆回線に接続されている。
【0019】
なお、図3に示す例は、携帯電話機10が例えば事業者AのSIM(Subscriber Identity Module)カードを使用しており、無線基地局301及び302が事業者Aのサービスを利用可能な公衆回線に接続された無線基地局であり、無線基地局303や304が他の通信事業者の無線基地局であるようなケースを示している。移動通信システムの仕様や通信事業者間の契約によって、無線基地局303,304から事業者AのSIMを使用する端末は緊急呼が発信できる。
【0020】
接続可能範囲305は、その範囲内で本実施形態に係る携帯電話機10が無線基地局301との無線接続が可能であるような範囲である。同様に、接続可能範囲306内では無線基地局302との無線接続が可能であり、接続可能範囲307内では無線基地局303との無線接続が可能であり、接続可能範囲308内では無線基地局304との無線接続が可能である。
【0021】
したがって、図3中に示した携帯電話機10の内、携帯電話機10aは無線基地局301との無線接続が可能であり、事業者の提供するサービスが利用可能である。また、携帯電話機10bは緊急呼のみ利用可能な公衆回線に接続されている無線基地局304の接続可能範囲308内ではあるが、サービスを利用可能な公衆回線に接続されている無線基地局302の接続範囲306内でもあるので、やはり事業者の提供するサービスが利用可能である。
【0022】
一方、携帯電話機10cは、無線基地局301あるいは302の接続可能範囲外であり、かつ無線基地局303の接続範囲内にあるため、緊急呼のみ利用可能となる。以下で説明する本実施形態の動作は、携帯電話機10が携帯電話機10cの位置にあるような場合(サービスを利用可能な公衆回線に接続された無線基地局に待ち受けられない様な場合)を前提にしている。
【0023】
次に、本実施形態の動作について図4を参照して説明する。
【0024】
図4は本実施形態に係る携帯電話機の制御部104の動作を示すフローチャートである。図4に示す動作の前提として、携帯電話機10はサービスを利用可能な公衆回線に接続された無線基地局には待ち受けられない状態(緊急呼のみ利用可能な公衆回線に接続された無線基地局と同期を取っている状態を含む)にあることとする。
【0025】
図4において制御部104は、加速度センサ108から振動量及び振動時間のデータを入手し(ステップS101)、入手した振動量及び振動時間のデータに基づく移動量を計算し、計算結果の移動量を記憶部107に格納している移動量のしきい値Lthと比較し、携帯電話機10の移動量が一定の値Lthより大きいかどうかを判定する(ステップS102)。
【0026】
判定の結果、移動量がしきい値Lthより大きい場合(ステップS102/Yes)、検索制御手段202は、サービスを利用可能な公衆回線に接続された無線基地局の検索を実行すると共に(ステップS103)、サービスを利用可能な公衆回線に接続された無線基地局の検索周期を短い周期T1に変更する(ステップS104)。一方移動量がしきい値Lthより小さい場合は(ステップS102/No)、検索周期を変更しない。
【0027】
次に、無線基地局を検索する検索周期について図5を参照して説明する。
【0028】
図5は本実施形態による無線基地局検索タイミングの一例である。携帯電話機10がサービスを利用可能な公衆回線に接続された無線基地局には待ち受けられず、緊急呼のみ利用可能な公衆回線に接続された無線基地局に同期を取っている状態に移行した直後(例えば、図3における10aから10cの位置に移動したような場合)は、短い周期T1でサービスを利用可能な公衆回線に接続された無線基地局の検索を行う。
【0029】
検索した結果待ち受けることができなければ、T1より長い周期T2で前記サービスを利用可能な公衆回線に接続された無線基地局の検索を行う。以降検索周期を徐々に長くして検索動作を行う。ここで検索周期T1〜T5は、T1<T2<T3<T4<T5となっている。
【0030】
また携帯電話10は、緊急呼のみ利用可能な公衆回線に接続された無線基地局の送信信号を定期的に受信しており、時刻T501は携帯電話機10の移動量がしきい値Lthより大きくなった時点を示している。時刻T501で移動量がしきい値Lthより大きくなったため(図4のステップS102/Yes)、即サービスを利用可能な公衆回線に接続された無線基地局の検索動作を行い(図4のステップS103)、検索後の検索周期を短い周期T1にリセットする(図4のステップS104)。
【0031】
本実施形態は、以上に説明したような構成を備えているため、ユーザ操作無しにサービスを利用可能な公衆回線に接続された無線基地局の検索を迅速に行うことができる。
【0032】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0033】
上記実施形態においては、移動量を計測し始める時点を特に限定しなかったが、移動量判定手段201による移動量の計測を、無線基地局の検索動作を行った時点から始めることとしてもよい。サービスを利用可能な公衆回線に接続された無線基地局の検索に失敗した最後の時点から計測を始めるため、最新の情報に基づいて移動量を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例による携帯電話機の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例による携帯電話機の制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例による無線電話システムの構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施例による制御部104の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例による無線基地局検索タイミングの一例である。
【符号の説明】
【0035】
10,10a,10b,10c 携帯電話機
101 無線部
102 ベースバンド部
103 送受話部
104 制御部
105 操作キー
106 LCD表示部
107 記憶部
108 加速度センサ
201 移動量判定手段
202 検索制御手段
301,302 (サービスを利用可能な公衆回線に接続された)無線基地局
303,304 (緊急呼のみ利用可能な公衆回線に接続された)無線基地局
305,306,307,308 接続可能範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線基地局と送受信可能な移動通信端末装置であって、
装置本体が移動した距離である移動量を測定する移動量測定手段と、
測定した移動量が所定の閾値を超えたことを判定する移動量判定手段と、
前記移動量判定手段により測定した移動量が所定の閾値を超えたと判断された場合に無線基地局の検索を行う検索制御手段と、
を備えることを特徴とする、移動通信端末装置。
【請求項2】
前記検索制御手段は、前記移動量判定手段により測定した移動量が所定の閾値を超えたと判断された場合に無線基地局の検索を行うと共に、検索周期の短縮を行うことを特徴とする、請求項1記載の移動通信端末装置。
【請求項3】
前記移動量測定手段は、装置本体が最後に無線基地局の検索を行った時点から装置本体が移動した距離を移動量として測定することを特徴とする、請求項1又は2記載の移動通信端末装置。
【請求項4】
前記検索制御手段が検索する無線基地局は、通信事業者が提供するサービスが利用可能な公衆回線に接続された無線基地局であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項記載の移動通信端末装置。
【請求項5】
前記移動量測定手段は、加速度センサが出力する振動量及び振動時間の情報に基づいて前記移動量を測定することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項記載の移動通信端末装置。
【請求項6】
複数の無線基地局と送受信可能な移動通信端末装置の制御方法であって、
装置本体が移動した距離である移動量を測定する移動量測定工程と、
測定した移動量が所定の閾値を超えたことを判定する移動量判定工程と、
前記移動量判定工程にて測定した移動量が所定の閾値を超えたと判断された場合に無線基地局の検索を行う検索制御工程と、
を含むことを特徴とする、移動通信端末装置の制御方法。
【請求項7】
前記検索制御工程は、前記移動量判定工程にて測定した移動量が所定の閾値を超えたと判断された場合に無線基地局の検索を行うと共に、検索周期の短縮を行うことを特徴とする、請求項6記載の移動通信端末装置の制御方法。
【請求項8】
複数の無線基地局と送受信可能な移動通信端末装置を、
装置本体が移動した距離である移動量を測定する移動量測定手段と、
測定した移動量が所定の閾値を超えたことを判定する移動量判定手段と、
前記移動量判定手段により測定した移動量が所定の閾値を超えたと判断された場合に無線基地局の検索を行う検索制御手段として機能させることを特徴とする、プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−109517(P2010−109517A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277684(P2008−277684)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】