説明

移動通信端末装置

【課題】緊急災害情報受信時に、個々のユーザ毎に異なるニーズを反映した情報表示及び行動支援を行う移動通信端末装置を提供する。
【解決手段】緊急災害情報の第1報を受信したUE100の緊急対応部102は、測位部104にUE100の現在地の位置情報の測位を指示し、測位した位置情報を測位部104から取得する。緊急対応部102は、UE100の位置情報に予め対応付けられた行動支援情報及び選択メニューを情報記憶部105から読み出し、読み出した行動支援情報及び選択メニューを画面表示部103に画面表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震速報などの緊急災害情報を受信する移動通信端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地震、津波などの自然災害の多い地域では、その発生をいち早く多くの人に通知することにより、災害に対して事前に備え、被害を最小限に抑えることが検討されている。また、自然災害に限らず、テロ及び犯罪などの人為的な脅威に対しても、同様に考えられる。
【0003】
地震、津波、さらには火山噴火など、自然災害が特に多い日本において適用できるよう、自然災害の発生を緊急災害情報として配信するETWS(Earthquake and Tsunami Warning System)と呼ばれるシステムが開発されている。ETWSは、自治体又は政府など信頼のおける機関から提供される緊急災害情報を移動通信システムによって、各ユーザにいち早く配信するシステムである。
【0004】
ETWSは、最短時間での情報配信を最優先事項としており、「地震発生」などの最も急を要する最低限の情報を第1報としてまず配信し、続いて、第1報を補足する震度、「震源地」などの情報を第2報として配信することを特徴としている。
【0005】
ここで、ETWSによって緊急災害情報を配信する手順の一例について図1を用いて説明する。ステップ(以下、「ST」と省略する)11では、地震等の災害が発生すると、災害検知サーバ(CBC:Cell Broadcast Center)が検知し、ST12では、災害検知サーバが災害の検知情報を移動通信システムにおける移動通信制御サーバ(RNC:Radio Network Controller)に通知する。
【0006】
ST13では、移動通信制御サーバは、ページングチャネルによって、災害情報の第1報を移動通信基地局(BTS:Base Transceiver Station)を介して、移動通信端末(UE:User Equipment)に通知する。ST14では、移動通信端末の緊急対応部が、通知された第1報を画面表示部に出力し、ST15では、移動通信端末の画面表示部が通知された第1報の画面表示を行い、ユーザに通知する。
【0007】
ST16では、移動通信制御サーバは、移動通信基地局を介して、緊急速報用のチャネルのオープン、すなわち、高優先通信の準備を移動通信端末に指示し、ST17では、移動通信制御サーバは、緊急速報用のチャネルを用いて、地震の規模や津波警報といった災害情報の第2報を移動通信端末に通知する。
【0008】
ST18では、移動通信端末の緊急対応部が、通知された第2報を画面表示部に出力し、ST19では、移動通信端末の画面表示部が通知された第2報の画面表示を行い、ユーザに通知する。
【0009】
このように、ETWSによれば、より緊急性の高い第1報を最優先で配信し、第1報を補足する第2報を後から配信することにより、緊急災害情報を迅速に移動通信端末へ通知することができる。
【0010】
ところが、緊急災害情報を受信したユーザは、咄嗟にどのような行動をとればよいか分からなかったり、誤った行動をとったりしてしまうことも考えられる。
【0011】
そこで、例えば、特許文献1には、情報通知サーバが端末位置データベースに基づいて、避難場所情報を端末にローカル配信することが開示されている。この技術によれば、ユーザは、配信された避難場所に向かえばよいことが分かり、ユーザの行動支援を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−92395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述した特許文献1に開示の技術では、個々のユーザ毎に異なるニーズを反映した情報表示及び行動支援の方法は開示されていない。例えば、災害発生時に必要な行動支援情報(火の元の消火、避難路の確保、通帳の所持等)、安否確認が必要な家族及び友人等の連絡先、操作したい機器(自宅の家電、ブレーカ、ガスの元栓等)などは、ユーザ毎に異なる。さらに、ユーザが災害に遭遇する場所によっても、ユーザに必要な情報表示及び行動支援は異なる。
【0014】
本発明の目的は、緊急災害情報受信時に、個々のユーザ毎に異なるニーズを反映した情報表示及び行動支援を行う移動通信端末装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の移動通信端末装置は、緊急災害情報を受信する通信手段と、緊急災害時におけるユーザの行動を支援する行動支援情報を記憶する記憶手段と、前記緊急災害情報を受信した場合、記憶された前記行動支援情報を表示する表示手段と、を具備する構成を採る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、緊急災害情報受信時に、個々のユーザ毎に異なるニーズを反映した情報表示及び行動支援を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ETWSによって緊急災害情報を配信する手順の一例を示すシーケンス図
【図2】本発明の一実施の形態に移動通信端末装置の構成を示すブロック図
【図3】図2に示した画面表示部における画面表示の一例を示す図
【図4】本発明の一実施の形態に係る緊急災害情報配信システムによる緊急災害情報の配信手順を示すシーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
(一実施の形態)
図2は、本発明の一実施の形態に移動通信端末装置(以下、「UE」という)100の構成を示すブロック図である。図2において、通信部101は、図示せぬ移動通信基地局装置(以下、「BTS」という)と無線通信を行い、災害発生時にBTSから配信される緊急災害情報を受信し、受信した緊急災害情報を緊急対応部102に出力する。通信部101は、後述する機器遠隔操作部106から出力されたプロトコル(機器制御情報)をBTSに送信する。
【0020】
緊急対応部102は、通信部101から出力された緊急災害情報がETWSに規定される第1報であるか第2報であるかを判断し、第1報である場合、第1報の情報を画面表示部103に出力すると共に、測位部104にUE100自身の現在地の測位を指示する。緊急対応部102は、測位部104からUE100の位置情報を取得すると、位置に応じて予め対応付けられた行動支援情報及び選択メニューを情報記憶部105から読み出し、読み出した行動支援情報及び選択メニューを画面表示部103に出力する。
【0021】
また、緊急対応部102は、通信部101から出力された緊急災害情報が第2報である場合、第2報の情報を画面表示部103に出力する。
【0022】
画面表示部103は、緊急対応部102から出力された情報を画面表示し、ユーザに通知する。
【0023】
測位部104は、緊急対応部102から測位指示を受けると、GPS(Global Positioning System)等の測位システムにより、UE100の現在地を測位し、測位したUE100の位置情報を緊急対応部102に出力する。
【0024】
情報記憶部105は、位置に応じて予め対応付けられた情報が記憶されており、緊急対応部102から出力されたUE100の位置情報に対応する情報を緊急対応部102に出力する。位置に対応付けられる情報としては、例えば、自宅における行動支援情報、会社又は学校等における行動支援情報、それ以外の外出先における行動支援情報などが考えられる。この行動支援情報は、ユーザが予め必要と思われる事項を自在に設定することができる。
【0025】
具体的には、自宅における行動支援情報として、火の元の確認、避難路の確保、通帳等の所持、家族及び友人等への連絡などが挙げられる。また、会社又は学校等における行動支援情報として、自宅又は家族への連絡、自宅の機器(家電、ブレーカ及びガスの元栓等)の遠隔操作などが挙げられる。さらに、それ以外の外出先における行動支援情報として、最寄りの避難場所の確認、自宅へのルート確認、自宅の機器の遠隔操作などが挙げられる。
【0026】
機器遠隔操作部106は、ユーザの入力指示を受けて、外出先から遠隔地の機器又は設備を遠隔操作する。遠隔地の機器又は設備としては、例えば、自宅の電化機器、ブレーカ、ガス供給などが考えられる。この遠隔操作は、uPnP(Universal Plug and Play)やDLNA(Digital Living Network Alliance)といった汎用的なネットワークプロトコルを用いることで比較的容易に実現可能である。すなわち、機器遠隔操作部106は、ユーザの指示に対応したプロトコルを生成し、生成したプロトコルを通信部101に出力する。
【0027】
図3は、図2に示した画面表示部103における画面表示の一例を示す図である。表示領域201には、緊急災害情報の第1報として、例えば、「地震に備えてください」などの文字情報が表示される。また、表示領域202には、緊急災害情報の第2報として、例えば、「推定震度5、津波注意」などの文字情報が表示される。また、表示領域203には、現在地に応じた行動支援情報として、例えば、ユーザが予め登録した「会社近くの避難場所は○○公園です」などの文字情報が表示される。さらに、表示領域204には、UE100が実行可能かつ現在地に応じた選択メニューとして、例えば、「自宅に電話発信」、「自宅ブレーカOFF」、「自宅ガス供給OFF」などの文字情報が表示される。ユーザが表示された選択メニューのいずれか又は全てを選択することにより、UE100は選択された機能を実行することができる。
【0028】
このように、UE100は、災害等の緊急事態に遭遇したユーザに、その現在地に応じた行動支援情報を通知することにより、混乱が生じやすい状況にあっても、ユーザの的確な行動を促すことができる。
【0029】
図4は、本発明の一実施の形態に係る緊急災害情報配信システムによる緊急災害情報の配信手順を示すシーケンス図である。この図において、ST301では、地震等の災害が発生すると、災害検知サーバが災害の発生を検知し、ST302では、災害検知サーバが災害の検知情報を移動通信システムにおける移動通信制御サーバに通知する。
【0030】
ST303では、移動通信制御サーバが、ページングチャネルによって、災害情報の第1報をBTSを介して、UE100に通知する。ST304では、UE100の緊急対応部102が通知された第1報を画面表示部103に出力し、ST305では、UE100の画面表示部103が通知された第1報の画面表示を行い、ユーザに通知する。
【0031】
ST306では、UE100の緊急対応部102が測位部104にUE100の現在地の測位を指示し、ST307では、移動通信制御サーバは、RTSを介して、緊急速報用のチャネルのオープン、すなわち、高優先通信の準備をUE100に指示する。
【0032】
ST308では、測位指示を受けたUE100の測位部104が現在地の位置情報を取得し、ST309では、取得した位置情報を測位部104から緊急対応部102に出力し、ST310では、UE100の緊急対応部102が取得したUE100の現在地に対応する行動支援情報及び選択メニューを情報記憶部105から読み出し、読み出した行動支援情報及び選択メニューを画面表示部103に出力し、ST311では、UE100の画面表示部103が通知された行動支援情報及び選択メニューの画面表示を行い、ユーザに通知する。
【0033】
ST312では、移動通信制御サーバは、緊急速報用のチャネルを用いて、地震の規模や津波警報といった災害情報の第2報をUE100に通知し、ST313では、UE100の緊急対応部102が通知された第2報を画面表示部103に出力し、ST314では、UE100の画面表示部103が通知された第2報の画面表示を行い、ユーザに通知する。
【0034】
ST315では、UE100の画面表示部103に表示された選択メニューのうちいずれか又は全てが、UE100の機器遠隔操作部106を介してユーザ操作によって選択され、選択されたメニューが機器の遠隔操作である場合には、ST316において、該当する機器を遠隔操作する。
【0035】
このように、本実施の形態によれば、緊急災害情報を受信したUEが、UE自身の現在地の位置情報を取得し、予め位置に対応付けられた行動支援情報のうち、現在地に対応する行動支援情報を画面表示することにより、個々のユーザ毎に異なるニーズを反映した情報表示及び行動支援を行うことができるので、場所に応じたユーザの的確な行動を促すことができる。
【0036】
なお、本実施の形態では、外出先から自宅までの遠隔操作のネットワーク接続手段として、移動通信を用いるものとして説明したが、本発明はこれに限らず、無線LAN(Local Area Network)やWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)といった他の無線通信方式を用いてもよい。
【0037】
また、本実施の形態は、本発明の一つの実施形態であり、本発明の主旨を逸脱しない範疇で任意の応用が可能である。例えば、UEの位置情報に関しては、その情報取得に時間がかかることを見越して、まずは位置情報に依存しないメッセージ及び機能実行メニューを画面に表示させた後に、位置情報の取得を開始するといった設計応用も可能である。その他、画面の表示形式や緊急災害情報の通知方式についても、本実施の形態の記載に限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明にかかる移動通信端末装置は、3GPP(3rd Generation Partnership Project)等で規格化された無線通信システムに適用できる。
【符号の説明】
【0039】
101 通信部
102 緊急対応部
103 画面表示部
104 測位部
105 情報記憶部
106 機器遠隔操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊急災害情報を受信する通信手段と、
緊急災害時におけるユーザの行動を支援する行動支援情報を記憶する記憶手段と、
前記緊急災害情報を受信した場合、記憶された前記行動支援情報を表示する表示手段と、
を具備する移動通信端末装置。
【請求項2】
前記緊急災害情報を受信した場合、前記移動通信端末装置の現在地を測位する測位手段を具備し、
前記表示手段は、前記記憶手段に記憶され、かつ、前記現在地に対応付けられた行動支援情報を表示する請求項1に記載の移動通信端末装置。
【請求項3】
前記表示手段は、前記記憶手段に記憶され、かつ、前記移動通信端末装置が実行可能な選択メニューを表示する請求項1に記載の移動通信端末装置。
【請求項4】
前記緊急災害情報を受信した場合、前記移動通信端末装置の現在地を測位する測位手段を具備し、
前記表示手段は、前記記憶手段に記憶され、かつ、前記現在地に対応付けられた前記選択メニューを表示する請求項3に記載の移動通信端末装置。
【請求項5】
前記選択メニューは、予め登録された電話番号への電話発信、予め登録されたアドレスへの電子メール送信、及び、予め登録された機器の遠隔操作のいずれかを含む請求項3又は請求項4に記載の移動通信端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−5165(P2013−5165A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133363(P2011−133363)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】