説明

移植機

【課題】苗搬送台が標準位置から水平回動姿勢にあり、機体が走行開始操作状態にあることを検出し警報することにより、苗搬送台の標準姿勢への戻し操作を促し、移植作業をスムーズに行うことができる移植機を提供する。
【解決手段】走行機体から立設した支持フレーム19に支持されて予備苗を機体前方から後方に向けて搬送供給する苗搬送台7を設けた移植機であって、前記苗搬送台7を機体前後方向に沿った標準位置と、該標準位置から外方位置の水平回動姿勢に姿勢変更自在に設け、且つ苗搬送台7の上記水平回動姿勢を検出する検出手段12と、機体の走行開始操作を検出する検出手段とを備え、上記苗搬送台7が標準姿勢以外にあり、且つ機体が走行開始操作状態にあるとき、検出手段12と検出手段との検出信号により警報を発する警報手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予備苗を前方から後方に搬送供給する苗搬送台を備えた移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植付装置を備えた走行機体の前部側方に立設した支持フレームに支持されて、予備苗を機体前方から後方に向けて供給する苗搬送台(搬送装置)を設けた移植機は既に公知である(例えば特許文献1。)。
上記移植機は、肥料タンクへの肥料供給を行うとき、苗搬送台は後支持杆を支点に前方を上方に回動させて肥料供給姿勢に姿勢変更した状態で、肥料供給作業を行うように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009―153423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示される移植機は、苗搬送台が後方に向けて大きく傾斜された姿勢になるため、予備苗を載置したままで姿勢変更をすると予備苗が後方にずれ落ちるので、肥料供給を行う際には苗搬送台上の予備苗を無くした状態で姿勢変更をしなければならず、肥料供給作業が煩雑になる。また苗搬送台の前部を高く変更させた肥料供給姿勢において、苗搬送台が作業者の頭部に接触するため、肥料の供給作業は肥料タンクの側方に限定される等の欠点がある。
【0005】
一方、上記欠点を解消する移植機としては、苗搬送台を支持フレームに回動支点部を介して、前後方向に位置する標準位置と、該標準位置から外方位置の水平回動姿勢に姿勢変更自在に設けることにより、予備苗を載置したまま苗搬送台を外方位置へ水平回動姿勢にして、肥料タンクの前方を広くして肥料供給を行い易くすることができる。
然しながら、この移植機では苗補給作業を終えたとき、苗搬送台を標準姿勢に戻さないで水平回動姿勢のままで走行を行ったりすると、機体の外方に大きくはみ出した苗搬送台の前端が、物や人に接当したり、走行重心を変動させて走行を不安定にする等の課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は係る課題を解決するために、第1に、走行機体2から立設した支持フレーム19に支持されて予備苗を機体前方から後方に向けて搬送供給する苗搬送台7を設けた移植機1において、前記苗搬送台7を支持フレーム19の回動支点部25を中心に、機体前後方向に沿った標準位置と、該標準位置から外方位置の水平回動姿勢に姿勢変更自在に設けると共に、苗搬送台7の上記水平回動姿勢を検出する検出手段12と、機体の走行開始操作を検出する検出手段13とを備え、上記苗搬送台7が標準姿勢以外にあり、且つ機体が走行開始操作状態にあるとき、検出手段12と検出手段13との検出信号により警報を発する警報手段40を設けていることを特徴としている。
【0007】
第2に、検出手段13は、走行変速用の操作レバー38の中立位置からの変速操作をを検出することを特徴としている。
【0008】
第3に、検出手段13は、走行用のブレーキ操作具39の制動解除操作を検出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、移植機は、支持フレームの回動支点部を介し標準位置と外方位置の水平回動姿勢に姿勢変更自在に構成される苗搬送台を備え、該苗搬送台の水平回動姿勢を検出する検出手段と、機体の走行開始操作を検出する検出手段とにより、苗搬送台が標準姿勢以外にあり、且つ機体が走行開始操作状態にあることを検出し警報手段によって警報を発することができる。
これにより、作業者が苗搬送台を外方位置に水平回動姿勢に姿勢変更して苗補給作業や肥料供給作業を行ったのち、苗搬送台を標準姿勢に戻すことを失念したまま走行を開始したとしても、作業者は警報によって苗搬送台が外方位置であることを認知することができ、苗搬送台を標準位置に速やかに戻すことができる。従って、苗搬送台を水平回動姿勢で機体の外方に大きくはみ出したままでの走行を防止することができるので、移植作業をスムーズに行うことができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、検出手段によって、走行変速用の操作レバーの中立位置からの変速操作を検出するようにしたことにより、検出手段を操作レバーのレバーガイドに対して、簡単な構成によって取付け易くすることができる。
【0011】
請求項3の発明によれば、検出手段は、走行用のブレーキ操作具の制動解除操作を検出するようにしたことにより、検出手段をブレーキ操作具の近傍に簡単な構成によって取付けることができ、また調整等も行い易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る移植機の側面図。
【図2】移植機の左右の苗搬送台が標準姿勢にある状態を示す平面図である。
【図3】移植機の左側の苗搬送台を外方位置に姿勢変更した状態を示す平面図である。
【図4】移植機の左側の苗搬送台を外方位置にさらに大きく姿勢変更した状態を示す平面図である。
【図5】移植機の左側の苗搬送台を内方位置に姿勢変更した状態を示す平面図である。
【図6】左側の苗搬送台の苗搬送台取付部の構成を示す斜視図である。
【図7】操作レバー及び検出手段の要部の構成を示す背面図である。
【図8】レバーガイドに検出手段を設けた状態を示す平面図である。
【図9】ブレーキ操作具に検出手段を設けた状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図5において符号1は移植機(乗用田植機)であって、前輪1aと後輪1bを左右に有する走行機体2の前側にエンジンを搭載してボンネット3で覆い、後方にハンドル4a及び座席4b等からなる操縦部4を設置し、機体後部に構成される3点リンク方式の昇降機構5に植付装置6を装着している。
この移植機1は、苗箱やスクレーパ等の苗トレーに収容されたマット苗(予備苗)を畔から機体後部に補給するための予備苗載台としての苗搬送台7を、肥料タンク9の上方に設置している。肥料タンク9はボンネット3の左右に配設されており、内部に収容されるペースト肥料を肥料ポンプを介して施肥ノズル8から圃場に供給(施肥)する。
【0014】
上記肥料タンク9は、走行機体2の前部左右に突設されるタンク支持フレーム2aに底部側を載せて支持しており、フラットな天井面に形成される肥料供給口を覆うタンク蓋9aを、後部の回動支点9bを中心に前方から後方に向けて回動すると、肥料供給口を開けることができる。またタンク蓋9aは、肥料供給口の前部側で肥料タンク9側のフック片に蓋側の係合部を係脱自在に係止する蓋閉部9cによって開閉自在に閉鎖することができる。
図示例の植付装置6は、8条分の予備苗を左右並列状に載置する苗載台10を前高後低状に傾斜させて設けており、該苗載台10の下端部において植付爪11によって1株毎の苗を掻取って苗を圃場に植付けることができる。
【0015】
そして、上記苗載台10に対して畔側から行う苗補給作業は、走行機体2を畔に横付けすることなく機体前部を畔に向けて接近させた状態で、機体前部から機体後部に亘って伸展姿勢で設置される苗搬送台7の前端部に、予備苗を載置する動作によって後述するように行うことができる。
さらに、移植機1は予備苗の供給作業をする際に、苗搬送台7の水平回動姿勢を検出する検出手段12と、機体の走行開始操作を検出する検出手段13と、両者の検出信号に基づき警報を発する警報手段14等からなる苗搬送台姿勢警報構造を備えている。
【0016】
先ず、図1〜図6を参照し苗搬送台7について説明をする。この苗搬送台7は、梯子状に枠組みされたコンベアフレーム15に、複数の搬送ローラ16を搬送方向に並設したローラコンベア方式としている。そして、苗搬送台7は走行機体2の前部左右の外側寄りに設けるに当たり、前方を高くし後方がやや低くなるように後傾斜状に配設される。
これにより苗搬送台7は、畦側から補助作業者によって数箱分の予備苗を供給載置することができ、ローラ16上を転動させて後端に到達させることができる。
尚、苗搬送台7に列設する複数のローラ16のうち、搬送方向下流側における任意のローラ16を、隣接するローラ16のローラ軸の高さよりやや高い位置に配設すると、当該ローラ16を搬送面より突出させることができ、搬送中のマット苗に搬送抵抗を付与し減速させて停止することができる。
【0017】
図示例の苗搬送台7は、前後に等しい大きさに3分割して形成されており、前後に配設される前側コンベア7aと後側コンベア7bとを、中側コンベア7cに対しヒンジ部7dを介して、上方側に折畳み回動自在に接続している。これにより苗搬送台7は苗を供給する図示の搬送姿勢から、後側コンベア7bをヒンジ部7dを支点に折畳み、次いで前側コンベア7aを折畳み、両者を中側コンベア7cの上に重ねた格納姿勢にすることができる。
そして、走行機体2から肥料タンク9の内側で上方に向けて立設される下向きU字状のパイプ材からなる支持フレーム19に、中側コンベア7cを後述する苗搬送台取付構造によって取付けると共に、苗搬送台7を機体の直進方向に沿う標準姿勢と、進行方向に対し左または右に回動させた斜向姿勢(水平回動姿勢)とに切換自在にしている。
【0018】
即ち、苗搬送台取付構造は、走行機体2から立設される前記支持フレーム19の機体外側寄りの上部に、図6で示すように略コ字状をなすフレームブラケット20がハンドル4aの側方近傍となる位置に固設されている。このフレームブラケット20には、上板20aと下板20bとの間に支点パイプ21を縦向きに固設している。支点パイプ21には、中側コンベア7cが取付けられる苗搬送台ステー22の後端部に下向きに突設した軸部を、ベアリングを介し回転自在に差し込んだ状態で留具23により締着して軸の抜止めをしている。
【0019】
そして、苗搬送台取付構造は、これらフレームブラケット20、支点パイプ21及び苗搬送台ステー22の軸部によって、苗搬送台7の回動支点(回動中心)Rを形成する回動支点部25を構成しており、これにより苗搬送台7は支持フレーム19(走行機体2)に支持された状態で、軸部中心を回動支点Rとして機体左右方向に回動自在に設けられている。
また、上記フレームブラケット20の上板20aには、回動支点Rを中心とする円弧状の長孔26を穿設し、他方苗搬送台ステー22の後端部に溶接されたステーブラケット27には、上記長孔26に嵌挿される案内ピン29を下向きに突設している。
そして、上記長孔26に案内ピン29を挿入することにより、該案内ピン29が長孔26の両端に当接した位置で、回動支点Rを支点として水平回動する苗搬送台7の回動範囲を規制するようにしている。
【0020】
さらに、フレームブラケット20の上板20aには、長孔26の他に少なくとも3個(図示例では4個)のロック孔30が回動支点Rを中心とする円周上に穿孔しており、ロックピン31が後述するように各ロック孔30の一つを選択して挿入することができる構成にしている。これにより、苗搬送台7を図2で示す標準位置から、図3〜図5で示す各種の水平回動姿勢に姿勢変更可能にしている。
即ち、左側の苗搬送台7は、図2で示す標準位置から、図3で示す左外側に回動させた第1外方位置(外向き姿勢)と、該第1外方位置からさらに左外側に回動させた図4で示す第2外方位置と、図5で示すように右側(内側)に回動させた内方位置(内向き姿勢)とに姿勢変更することができる。また右側の苗搬送台7は、上記左側の苗搬送台7と対称位置において同様な操作によって姿勢変更をさせることができる。
【0021】
前記ロックピン31は、その中途部に一体に取付けられた座板31aを、ステーブラケット27側に縮設されるコイルスプリング32によってロック孔30側に向けて付勢されていると共に、座板31aには1対のプレート部材33を対設している。
上記プレート部材33の基部は、ステーブラケット27に突設したブラケット片27aと、苗搬送台ステー22に突設した耳部22aに回動自在に支承された操作レバー35に固設している。尚、プレート部材33の一方は操縦部4側に向けて延長させた操作レバー部33aを形成している。また操作レバー35は、その前端を下向きに屈曲させた畦側レバー35aを形成し、機体前部側からの操作を可能にしている。
【0022】
これにより、操作レバー部33a又は畦側レバー35aの操作に基づき、プレート部材33がロックピン31を上下動させて、ピン下部をロック孔 30に抜き差しすることができ、苗搬送台7を前記標準位置と外方位置及び内方位置に位置決めする位置決め部36を構成している。また上記支持フレーム19、苗搬送台ステー22、回動支点部25及び位置決め部36等により、苗搬送台7を走行機体2に取付ける苗搬送台取付部37が構成される。尚、苗搬送台7の標準位置において、苗搬送台ステー22又はコンベアフレーム15等を支持フレーム19に対し、連結杆(図示せず)によって係脱自在自在に連結するようにすると、この場合には苗搬送台7の防振支持をより高めることができる。
【0023】
また苗搬送台7は、前記位置決め部36を肥料タンク9の後部上方に配置した状態で、回動支点部25を中心に水平方向に回動自在に設けられる。
苗搬送台ステー22は、中側コンベア7cのコンベアフレーム15に設けた前後のステー部15aの内側端に固設することにより、コンベアフレーム15の内側寄りに平行状をなし、走行機体2と肥料タンク9との間の上方に延設されている。また苗搬送台ステー22は、前端を下向きに屈曲させた把手22bを形成している。
【0024】
そして、上記のように構成される苗搬送台7を備えた移植機1は、前記苗搬送台姿勢警報構造を、苗搬送台7の水平回動姿勢(斜向姿勢)を検出する検出手段(姿勢検出手段)12と、機体の走行開始操作を検出する検出手段(走行検出手段)13と、当該検出手段12と検出手段13との検出信号により警報を発する警報手段40とによって構成している。即ち、この苗搬送台姿勢警報構造は、苗搬送台7が標準姿勢以外の姿勢(水平回動姿勢)にあり、且つ走行操作レバー38が機体の走行発進を可能とする操作(走行開始操作)がなされた状態であることを、姿勢検出手段12と走行検出手段13とによって同時に検出した場合に、警報手段40を鳴らして警報(警報音)を発する警報回路によって構成されている。尚、実施例の警報手段40は、図2で示す操縦部4に常設される、警笛用のホーン40を利用して警報音を発するように回路構成している。
【0025】
図6で示すように上記検出手段12は、位置決め部36においてフレームブラケット20の上板20aに穿設された4個のロック孔30のうち、苗搬送台7の標準姿勢を位置決めするロック孔(標準ロック孔)30の下部に対向させ、上板20aの下面に固設したブラケット41に取付けている。この検出手段12はスイッチ片等の接触部が押動されることによりON(通電)動作するスイッチとしており、上記標準ロック孔30に挿入係合したロックピン31の下端が接触部を押動するときONとなり、且つロックピン31が別のロック孔30に挿入される操作によってOFFになる。
【0026】
尚、検出手段12は上記のような接触部を有するスイッチの他に、近接型スイッチや光電型スイッチにしてもよく、この場合の検出手段12の設置箇所は、上記フレームブラケット20に限定することなく、苗搬送台7の水平回動姿勢を検出可能な箇所にすることができる。
そして、この移植機1が備える検出手段13は、図7,図8に示すように操縦部4に配設される操作レバー38の操作位置に関連して、機体の走行開始操作を検出する操作レバー方式の走行開始検出手段としている。尚、上記検出手段13は図9に示すように、ブレーキペダル39の操作位置に関連して、機体の走行開始操作を検出するブレーキ操作具方式の検出手段にすることもできる。
【0027】
先ず、図7,図8を参照し上記操作レバー方式の検出手段について説明する。上記操作レバー38はその基部を、ハンドルコラム43のブラケット44に突設したレバー軸45に前後方向に回動操作自在に軸支された状態で、操作方向と交差する左右方向にも回動自在に支持されている。そして、操作レバー38の中途部をレバーガイド46のガイド溝47に挿通させて、前後左右の操作移動を規制案内するようにしている。
【0028】
図8で示すように上記レバーガイド46は、ガイド溝47を平面視でクランク形状の溝にしており、横向きの中立位置溝47aの右端と左端に、それぞれ前後方向の前進走行溝47bと後進走行溝47cとを一連に形成しており、上記中立位置溝47aの右側でガイド板の下面に検出手段13を取付けている。尚、上記構成において操作レバー38は、スプリング38aによって右方向に向けて付勢されており、中立位置溝47aにあるとき右端に接当するように付勢支持される。
【0029】
この検出手段13は、スイッチ片等の接触部13aが押動されるとON(通電)動作するスイッチとしており、上記操作レバー38が図示する中立位置にあるとき接触部13aが押動されてONになり、操作レバー38が前進方向及び前後方向に操作移動されると、接触部13aの押動解除により制御部への入力が0FFになる。これにより検出手段13は、操作レバー38の操作位置に関連して機体の走行開始操作状態であることを検出する。尚、図示例の操作レバー38は、その基部側に備えるリンク部38bを介して、前後進と走行速度変速の切換を共に司るHST装置に連結している。
【0030】
次に以上のように構成した移植機1の移植作業及び苗の補給作業等について説明する。先ず作業者は、苗載台10及び苗搬送台7に予備苗を充填載置すると共に、肥料タンク9に肥料を満タンにした状態において作業を開始する。これにより移植機1は、植付爪11によって1株毎の苗の掻取りを圃場に植付けると共に、同時に肥料タンク9に貯留されたペースト肥料を施肥ノズル8から移植苗に対し施肥をする。次いで、作業に伴い苗載台10に載置された予備苗が少なくなると、各苗搬送台7に載せてある予備苗を順次苗載台10に供給することによって連続した移植作業を行う。
【0031】
そして、苗搬送台7上の苗もなくなる頃合を見はかり、苗補給のために畦に対して走行機体2をつける。このとき、 整地された矩形圃場の場合、作業者は畦際のトラックに対して垂直に走行機体2を停止させる。そして、補助者は伸展状態で標準位置にある苗搬送台7の前端部から予備苗を供給する。これにより苗搬送台7に供給された予備苗は、傾斜に沿って搬送ローラ16上を機体後方側に自走し苗搬送台7の後端部まで搬送され、作業者によって苗載台10に充填載置される。
【0032】
一方、補助者が三角圃場(変形圃場)の頂点部にいる場合や、畦側のトラックに対して走行機体2がずれて停車していた場合には、補助者が畦側レバー35aを介して操作レバー35を時計周りに回動させロックピン31をロック孔30から抜くと共に、苗搬送台7の内側縁に対して操縦部4側に配設している苗搬送台ステー22の把持部22bを掴んで、苗搬送台7を標準位置(図2)から、図3,図4,図5で示す外方位置又は内方位置とを選択して水平回動することにより、適正姿勢変更後に操作レバー35の復帰操作を行い回動位置を固定する。
従って、移植機1は圃場の形状或いは走行機体2の停止位置の状況に応じ、畦側から予備苗の補給が行い易い適応した苗搬送台7の苗補給姿勢を選択することができ、左右の苗搬送台7に対する苗補給作業を簡単且つ能率よく行うことができ、植付作業を速やかに再開することができる。
【0033】
また苗搬送台7が上記の標準位置にあるとき肥料補給作業を前方から行いたい場合には、前記したと同様に操作レバー35の固定解除操作と苗搬送台ステー22による外方回動操作とを行い苗搬送台7を外方位置に固定すると、肥料タンク9の前方及び上方を広く開放することができる。また苗搬送台7は回動支点部25を中心に平面的に外方位置に水平回動させるので、予備苗が載置された状態であっても予備苗を滑落させたりすることなく、外方位置にスムーズに姿勢変更することができる。
【0034】
従って、苗搬送台7は予備苗を載置したまま外方位置への姿勢変更ができるため、肥料補給作業を肥料タンク9の前方から随時楽な姿勢で能率よく行うことができる。
さらに、苗搬送台7は回動支点部25を支持フレーム19の後方側に設ける簡単な構成によって、苗搬送台7の後端部に比して畦側の前端部を大きく回動させるので、補助者等が苗を供給する畦側の回動範囲を大きくすることができ、また苗搬送台7を外方位置に姿勢変更して行う肥料補給作業時に、肥料タンク9の前方により広いスペースを形成でき肥料補給を行い易くすることができる等の特徴がある。
【0035】
一方、上記のように苗搬送台7を外方位置に回動して苗補給作業又は肥料補給作業を行い、移植作業を再開するとき、苗搬送台7を標準姿勢に戻すことを失念したまま走行を開始してしまうことがある。このような場合に、苗搬送台7の上記水平回動姿勢を検出する検出手段12と、機体の走行開始操作を検出する検出手段13とを備える移植機1は、苗搬送台7側に設置した検出手段12は、苗搬送台7が水平回動姿勢であることを検出し、また操作レバー38側に設置される検出手段13は、走行開始操作状態であることを検出することから、警報手段40を作動させて警報音を発して警報する。
【0036】
これにより作業者は、苗搬送台7が外方位置であることを看過することなく認知し得て、操縦部4側の操作レバー部33aを操作し苗搬送台7を前記標準位置に速やかに戻すことができる。このとき検出手段12は、標準ロック孔30に挿入されるロックピン31により押動されて検出信号OFFとなるため、警報手段40の警報作動を停止する。
従って、苗搬送台7が外方位置の水平回動姿勢で、その先端を機体の外方に大きくはみ出させたまま走行することによる、物との接当に伴う危険や、走行重心の変動による不安定走行等の発生を防止することができるので、移植作業をスムーズに能率よく行うことができる。
【0037】
次に、図9を参照しブレーキ操作具方式の検出手段13について説明する。ブレーキペダル39は、その基部に固設したボス49を、機体フレーム2aに設けたブラケット2bを介して横向きに突設されるペダル軸50に回動自在に軸支している。上記ボス49の外周下部と上部には、ブレーキ部と接続させるブレーキ杆51と、ブレーキペダル39を戻し方向(非制動方向)に付勢するスプリング52を備える板状の作動片53とを突設している。またブレーキペダル39は、その中途に突設したピン55を、機体フレーム2a側に姿勢変更可能に軸支されるブレーキロック片56と係合及び解除可能とするブレーキロック機構(駐車ブレーキ)57を備えている。
【0038】
この検出手段13は、機体フレーム2aから突設したブラケット59に取付けられており、ブレーキペダル39を非制動状態から、図示するように少し踏み込んで下降回動させる制動開始位置において、接触部13aが前記作動片53の板面と接触を開始する位置に取付けている。
これにより、ブレーキペダル39がさらに踏み込まれた制動状態、及びブレーキロック機構57によって制動状態が保持された駐車ブレーキ状態になるとき、検出手段13は接触部13aが作動片53に押動されてONになる。また上記制動状態を解除するとブレーキペダル39は、スプリング52によって元の非制動状態に戻されると共に、作動片53が退動して接触部13aから離間するので、検出手段13のOFFが制御部に入力され機体が走行開始操作状態であることを検出する。
【0039】
以上のように苗搬送台姿勢警報構造を備える移植機1は、畦側に移動したのちエンジンを停止させることなく、苗補給場所に機体を停止させてマット苗の補給をするような場合に、苗搬送台7がいずれの水平回動姿勢になっていたとしても、操作レバー38は中立位置溝47aに戻されていること、或いはブレーキペダル39は制動姿勢に保持されているため、警報手段40による警報の発生は規制される。
【0040】
また苗補給作業時において、ブレーキロック機構57によるブレーキペダル39の駐車ブレーキをしない状態では、その検出手段13による検出信号OFFに基づいて、警報手段40から警報させるようにすることもできるので、この警報を認知しブレーキロック機構57を速やかに駐車ブレーキ状態にすることができる。従って、苗補給作業中の不慮の機体発進を心配することなく作業を行うことができる等の特徴がある。
【0041】
また前記検出手段13は、走行変速用の操作レバー38が中立位置に操作された位置にあることを検出するように設けることにより、検出手段13をレバーガイド46の裏側等に対して、簡単な構成によって取付けることができると共に、取付け位置の調整等を行い易くすることができる。また検出手段13を、走行用のブレーキ操作具39が制動位置に操作された位置にあることを検出するように設けることにより、ブレーキペダル39の近傍に簡単な構成によって取付けることができ、また調整等を行い易くすることができる等の特徴がある。
【符号の説明】
【0042】
1 移植機(乗用田植機)
2 走行機体
6 植付装置
7 苗搬送台
9 肥料タンク
12,13 検出手段
19 支持フレーム
25 回動支点部
37 苗搬送台取付部
38 操作レバー
39 ブレーキ操作具(ブレーキペダル)
40 警報手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(2)から立設した支持フレーム(19)に支持されて予備苗を機体前方から後方に向けて搬送供給する苗搬送台(7)を設けた移植機(1)において、前記苗搬送台(7)を支持フレーム(19)の回動支点部(25)を中心に、機体前後方向に沿った標準位置と、該標準位置から外方位置の水平回動姿勢に姿勢変更自在に設けると共に、苗搬送台(7)の上記水平回動姿勢を検出する検出手段(12)と、機体の走行開始操作を検出する検出手段(13)とを備え、上記苗搬送台(7)が標準姿勢以外にあり、且つ機体が走行開始操作状態にあるとき、検出手段(12)と検出手段(13)との検出信号により警報を発する警報手段(40)を設けていることを特徴としている。
【請求項2】
検出手段(13)は、走行変速用の操作レバー(38)の中立位置からの変速操作を検出することを特徴とする請求項1記載の移植機。
【請求項3】
検出手段(13)は、走行用のブレーキ操作具(39)の制動解除操作を検出することを特徴とする請求項1記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−75346(P2012−75346A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221243(P2010−221243)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】