説明

移載装置

【課題】電子部品を所定のキャリアに貼着する場合、電子部品とキャリアの粘着シールの間に気泡が生じると、後工程で電子部品の設置高さが異なり接点の位置がずれたり、ワイヤボンディングの際の押圧で電子部品が暴れて不良品の発生が多い原因になっていた。
【解決手段】本発明ではキャリアフレームの升目状枠の下に弾性体を置くことで気泡の発生を防止し、不良品の発生率を激減することが出来る。また、スローリークする導電性のゲル素材を用いることにより、電子部品の回路に影響することなく静電気をアースすることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウエハリング等で提供された電子部品(以下チップと称す)を剥離・移載して所定の搬送荷姿に変更する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常ウエハリングで提供されたチップは指定されたキャリアやトレイに各々のチップを微動しないように粘着シート等に貼着して区分けした状態の荷姿で次工程に搬送される。
近年カメラ付き携帯電話やデジタルカメラなどの普及が急速に進んでおり、これらの小型電子機器にはCCDイメージセンサ等の小型で精密な電子部品(チップ)が多用されている。
CCDの基板や半導体回路の印刷されたチップは、製作直後にはウエハリングに貼着された状態で供給されるが、実際の製品に装填するためには其々に供給しやすい形状のトレイやキャリア、エンボステープ等に配置され埃や傷が付かないように密封されたな姿で供給される。
【0003】
一般にはウエハリングから剥離されたチップは移載装置のヘッドによって保持されてキャリアやトレイの所定位置に搬送され、チップはキャリアやトレイ内の下部に固着された粘着シートに貼着される。これによってチップが微動することなく搬送されるので後工程での位置決めが正確に行えると共に搬送中にチップがキャリアやトレイと干渉して破損しないようにすることができる。
このようなチップは一辺が5〜15ミリメートル程度の小さいものであり手作業で多数のチップを短時間で正確に移載することは困難である。
【0004】
しかし貼着時にチップと粘着シートの間に気泡が発生するとチップの高さにばらつきが生じ後工程での組み立て不良の原因になる。そのために粘着シートは皺が発生しないようにトレイやキャリア内に固着されており指定された枠内にチップを貼着すればよいように構成されている。
しかしチップを保持したヘッドが粘着シートに対して降下するようにして貼着するとチップの底面と粘着シート粘着面の互いが平面なので空気を挟み込んで貼着するために、気泡が発生してしまうことが多かった。
【0005】
気泡が発生すると不良品を発生する原因になっていた。例えば後工程でチップをワイヤボンディングする場合、チップから周囲の接点にワイヤ配線する際に気泡によってチップの高さが異なるためにワイヤの接触位置が異なり、数ミクロン以内の精度誤差が守れず不良品を発生する原因になることがある。また、気泡がクッションになってチップが動いてしまうので、ワイヤボンディング時に配線のため軽く押圧するだけでもチップがバウンドして正確な配線作業ができないことが問題になっていた。
【0006】
そこで従来は図6に示すような特開2006-56536のような提案がなされていた。但し該出願はチップにラベル90を貼付するために吸着プレート92を工夫したものである。これによりチップの平滑面に気泡や皺が入らずにラベル90を貼付しラベル90の美観を損なうことなく且つ剥がれ難く貼付できることが提案されている。
該特許文献はロッド95先端部に吸着口93を複数備えた吸着プレート92を備え、その吸着プレート92には均一な厚みの弾性体91が貼りあわされた構成となっている。
【0007】
吸着プレート92は中央部分で最も凸となる曲線状に形成されており、吸着口93から空気を吸引することによりラベル90を曲面吸着面94に沿った弾性体91に吸引して保持する構成になっている。
吸着されたラベル90はロッド95を伸長させる等して先端部を降下させることによりチップの表面を弾性体91によって均一に押圧してラベル90をチップの表面に皺や気泡が発生しないように貼付するように構成されている。
【特許文献1】特開2006-56536
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1に記載された装置はラベル90を吸着保持して指定された位置に吹きつけた後、弾性体で押圧して気泡を除去するものである。
しかし電子部品のように電子回路等を内蔵している細密な部品を所定のキャリアフレーム22やトレイ等の区分けした部分に移載して、かつキャリアフレーム22やトレイの底面の粘着シート25の粘着部に気泡が入らないように貼着することは考えられていない。
【0009】
また特許文献1には凸状に湾曲した曲面に一定厚さの弾性体が使用されているが、弾性体が均一厚さの為最も凸の部分に高押圧がかかることが考えられる。チップ20等は大変薄いので部分的な荷重の違いで破損することがある。
【0010】
弾性体は空気を大量に含んだ膨潤状態のゲル状素材で適度な弾性力を保有していることが望ましいが、押圧力で圧縮されても元の形状に戻るようなゲル状素材でなくてはならない。
特許文献1にはスポンジ状の素材が記載されているが、空気を含んだゲル状素材は押圧されると表面の空気が押し出されて空気穴部が吸盤状になり粘着性を発揮し粘着シート25の裏面に張り付いて不具合を発生することがある。
【0011】
また、特許文献1のラベル90であれば一旦対象物に吹き付けておいて、その後弾性体91を押し付けて気泡を除去することができるが、チップ20の場合はキャリアフレーム22に貼り付けられた粘着シート25に押し付けて貼着し気泡が発生しないようにしなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで本出願では、ヘッド部によって電子部品を保持して移送し粘着シート上に該電子部品を載置貼着する移載装置において、載置台と、前記載置台上に設置された升目状枠が形成された載置板と、前記載置板の前記升目状枠内に接着された弾性体と、下部に粘着シートが貼着・固定された前記弾性体用の前記升目状枠と同形状の電子部品枠を設けたキャリアフレームとからなる移載装置を提案するものである。
【0013】
更に前記弾性体はかまぼこ形状に形成されている、前記弾性体はPET素材で形成された下部と、ゲル素材で形成された弾性部と、ウレタン素材からなるフィルムが貼着された上部からなる、前記弾性体は導電性を有し前記電子部品を前記電子部品枠内の粘着シート上に押圧・載置の際、前記弾性部が側方に膨らむことにより載置台側に静電気をスローリークする、前記弾性体は硬いPET材の上に弾性部を固着しその上にフィルムが貼着された後抜き型で成型して製作したことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明で使用されている弾性体30は弾性体自体がかまぼこ形状をしているので粘着シート25が当接して押圧されると全体が変形し、押圧力が分散されてチップ20の一部に集中荷重がかかることがなく、折損事故を大幅に防止することができる。
弾性体30はゲル状体32の下部に硬い材料を使用した基板体31を固着し、上部にフィルム体33を貼付したので繰り返し押圧されても形状変形しない。基板体31は硬いので載置板231に貼り付けて固定した状態で使用できると共に、引き剥がして繰り返し使用することができる。
【0015】
フィルム体33は空気を通さないものを使用することにより、空気を含んで膨潤となり空気穴の多いゲル状体32の上面の吸盤性質を除去することができ粘着シート25の裏面とはべたべたせず剥離しやすくなっている。
弾性体30はかまぼこ形状なので粘着シート25裏面とは当初線接触しており、押圧されることにより気泡を傾斜方向に押し出すことができる。ゲル状体32は上面がフィルム体33で覆われているので図5の(3)のような変形をせず図5の(2)の形状で変形し効果的に気泡を押し出すことができる。フィルム体33によって上方のゲル状体32が変形することを抑制することにより気泡除去を効果的にすることができる。
つまりフィルム体33とかまぼこ形状との相乗効果でより効果的な気泡除去が可能になったものである。従来は真空脱泡装置にチップ20が移載されたキャリアフレーム22を入れて脱泡していたが本発明により脱泡工程を不要とした。
【0016】
ゲル状体32は導電性の素材を使用することにより、押圧して弾性体30が変形したときに押圧方向とは直行した横方向に膨らみ、載置板231の壁面に接触しチップ20の静電気をアースすることができる。
ゲル状体32の横部分は露出されているので吸盤性があり載置板231の壁面にべたつきながら接触するので通電は確実に行われる。このことによりチップ20が粘着シート25と接触した際に発生した静電気やそれ以前から持っていた静電気をアースすることができる。
【0017】
また、ゲル状体32の導電性はスローリークするものが使用されており少量ずつ電気を流す素材を選ぶことにより、チップ20の急激な電荷の変化を防止している。チップ20は急激な電圧変化で組み込まれた回路にショートを発生させることがないようにしなければならない。
【0018】
弾性体30は基板体31の上にかまぼこ形状のゲル状体32を固着させ、その上にフィルム体33を貼り付けて、トムソン型などの抜き型で成型したかまぼこ形状なので、押圧時は導電性のある側面が膨らんで載置板231の壁面に当接させることができるので、押圧されたときのみアースすることができる。したがって押圧されていないときには通電しないので外部の静電気などが弾性体30に溜まることもない。
弾性体30はキャリアフレーム22のような形式の搬送手段だけではなくて、エンボステープ等の下において同様に気泡や静電気の除去に使用することができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は供給された電子部品(チップ)20を吸着保持して載置部19の粘着シート25に貼着する際、チップ20と粘着シート25の間に気泡が発生しないように貼着するようにした装置である。
このことによって粘着シート25にチップ20が貼着された状態で後工程において両者の間に発生した気泡によって不具合を生じさせないようにしたものである。
【実施例】
【0020】
図1に基づいて本体1について説明する。本体1にはウエハリング5によって供給されたチップ20を搭載したウエハリング台6がウエハリング移動テーブル15によってXY方向に移動することができ指定の位置にチップ20を移動できるようになっている。
【0021】
図1の場合は第一のカメラ7の直下に指定のチップ20が来るようにウエハリング移動テーブル15を駆動させてウエハリング台6を移動させてチップ20の位置決めを正確に行うものである。
その位置にヘッド部10がモータ102の駆動によってX方向に移動してヘッド部10の下端部に装着されたヘッド21によってチップ20を吸着しヘッド21をモータ103を駆動させてZ方向に上昇しウエハリング5から剥離して載置部19に移載する。
【0022】
モータ102,103はねじ軸104,105を回転させることにより、ねじ軸受けをX方向ないしZ方向に移動させるよう構成されている。
其々のモータにはロータリーエンコーダが内蔵されており、どちらの方向にどれだけ回転したかのパルスを制御部2に送信することで制御部2ではヘッド部10の位置やヘッド21の位置を把握するように構成されている。
【0023】
ウエハリング移動テーブル15や載置部移動テーブル16等のモータとねじ軸で駆動する箇所も上述したヘッド部10と同様な構成になっておりモータとねじ軸とねじ軸受けを制御部2によって制御されている。
モータ101はヘッド21の駆動部にベルトが掛け渡されて連結されており、モータ101の回転を制御部2によって制御することによってヘッド21を回転してチップ20の角度の微調整ができるようになっている。以上のような構成で制御部2は本体1の全体を制御している。
【0024】
ウエハリング5から剥離してヘッド21に吸着保持された状態のチップ20は第二のカメラ8の上部を通過する際に、ウエハリング5からチップ20を剥離する時に微細に向きが変わったり吸着部がチップ20の中心からずれたりした状況であることが多いので、第二のカメラ8によって撮像され位置決め補正されて載置部19の所定位置に移載される。
【0025】
また、載置部19の状況はヘッド部10の横に取り付けられた第三のカメラ9によって撮像され、載置部19の位置補正がなされ、ヘッド21は第二第三のカメラ8,9の撮像に基づいて所定の角度回転しXY方向に微調整された状体でZ方向に下降し載置部19の粘着シート25の所定位置に押圧して貼着される。
【0026】
載置部19は載置部移動テーブル16によってY方向に移動し所定位置が微調整される。載置部19がX方向に微調整が必要な場合はヘッド部10がX方向に移動することによって調整される。
ヘッド21の回転はモータ101を駆動することによって回転可能になっている。以上のような制御を制御部2によって行っている。
【0027】
ヘッド部10先端のヘッド21には小さな穴が開けられておりその穴から空気を吸入することによりチップ20をヘッド21に吸着保持するよう構成されている。
ウエハリング5の上のチップ20にヘッド21を軽く押圧して吸着を開始しそのままヘッド21を上昇してチップ20をウエハリング5から剥離する。
【0028】
その後ヘッド部10はX方向に移動して載置部19の所定位置にヘッド21を移動した後粘着シート25に押圧してチップ20を貼着させる。貼着を完了したヘッド21は吸着を停止してチップを開放しヘッド21のみを上昇させて貼着を完了する。
以上のように制御部2によって制御されて移載が完了する。
【0029】
次に載置部19について説明する。図2の構成に基づいて説明する。
載置部19は載置部移動テーブル16上に載置台23が固定されておりその上部に構成されている。載置台23上部には升目状枠が形成された載置板231が置かれており其々の升目状枠内には弾性体30が載置される構成になっている。
【0030】
載置板231の升目状枠はチップ20の形状に応じて製作される。同様に弾性体30もチップの形状に応じて製作される。
載置台23には位置決めピン233が複数取り付けられており、位置決めピン233はキャリアフレーム22に設けられた位置決め穴221と係合するように構成されていることにより、キャリアフレーム22が位置決めされるようになっている。
【0031】
キャリアフレーム22は位置決めピン233によってXY方向は固定されるがZ方向は移動可能に取り付けられている。キャリアフレーム22の下面には粘着シート23が貼り付けられており、キャリアフレーム22の升目枠222が形成されており升目状枠222内は粘着シート25の表面251が露出した状態になっておりチップ20が貼着されるよう構成されている。
【0032】
粘着シート25の表面251は粘着性があるが裏面252は粘着性がなく弾性体30に接触しても接着することはない。
またキャリアフレーム22の升目状枠222は載置板231の升目状枠232と同様にチップ20の大きさに応じて適時製作されている。
【0033】
図3は載置部19が組みつけられた状体を図示したものである。チップ20を吸着したヘッド21はキャリアフレーム22の升目状枠222内の所定位置にチップ20を降下させて粘着シート22の表面251に押圧して貼着させる。
【0034】
キャリアフレーム22に貼られた粘着シート25は弾性体30に当初は乗せられているだけで、粘着シート25の裏面252が弾性体30のかまぼこ型凸状頂点部301に線接触している。
ヘッド21がチップ20を吸着した状体で粘着シート25を押圧することにより弾性体30が歪み粘着シート25がZ方向に降下し粘着シート25が貼り付けられたキャリアフレーム22が位置決めピン233に位置決め穴223が沿って降下する。以上の構成によってチップ20と粘着シート25にはさまれて出来た気泡を外部に押し出すものである。
【0035】
キャリアフレーム22はステンレス等の金属で客先の仕様に応じて製作されることが多く、後工程の作業までチップ20を貼着した状態で搬送されるためそのつど仕様が異なる場合がある。
以上のように載置部19は形成されておりヘッド21によってピックアップしたチップ20を粘着シート25上に貼り付けられる。
なおチップ20は厚みが0.6ミリメートル程度で7×7ミリメートルないし12×12ミリメートルの形状をしている。
粘着シート25は加熱もしくはUV照射されると硬化して粘着性がなくなるものが使用され、後工程作業直前に粘着性がなくなるようにUV硬化ないし熱硬化するように前処理されチップ20が剥離しやすいように処理される。
【0036】
次に弾性体30について説明する。図4に図示されるように弾性体30はかまぼこ形状に形成される。その形状により上部からキャリアフレーム22に貼り付けられた粘着シート25が乗せられるとかまぼこ形状の凸状頂点部201に線接触し、当初から空気が入りにくく気泡が出来にくい。
【0037】
その後前述したようにヘッド21によってチップ20が粘着シート25に押圧され、図5の(2)のように弾性体30が圧縮される。
接触面は当初凸状頂点部301だけであったが、斜面方向のF1、F2方向に広がるようになるので、気泡がF1,F2方向に沿って押し出され、チップ20と粘着シート25の間に空気が溜まりにくくなる。
【0038】
弾性体30の形状が球面であったり中央部が凸になった円錐形状であってもよい。しかしヘッド21に微小な傾きが生じることがあり、その場合二点に面接触してしまうことや均一に接触面が拡大していかないことがあり空気を取り込んでしまうように弾性体30を変形してしまうことがあり気泡が発生してしまうことが多い。
【0039】
弾性体30の下部は基板体31で構成されており基板体31は弾性体30の様な弾性力がなく、変形しにくい材料で作られており載置板231の升目状枠232に何度も貼着剥離を繰り返しても形状変化しないように構成されている。
このことにより気泡が発生しなくなり従来のようにチップ20を移載したキャリア22を脱泡装置に装填して脱泡作業を省略することが出来る。
【0040】
基板体31は一般にはPET素材が用いられており弾性体30の中間部のゲル状体32からはみ出さないように成型されるのが望ましい。基板体は導電性がなくても良く、ゲル状体32だけでは何度も貼着剥離を繰り返すことが出来ないので硬いPET素材が使用される。
例えばゲル状体32が上部から見て12×12ミリメートル角の正方形であれば、基板体31は11.6〜11.7ミリメートル角の様に小さく製作することが望ましい。
フィルム体33にはウレタン素材が好ましくゲル状体32の吸盤性質を除去する。PET素材は硬いのでやわらかく空気を通さないウレタン素材がフィルム体33には好ましい。
【0041】
弾性体30の中間部はゲル素材を用いたゲル状体32で形成されている。このゲル素材は硬度15〜30程度の導電性ゲル又は導電性ゴムが用いられている。
ゲル状体32の導電性は10の−8条オーム程度の抵抗を持った導電性で、通常スローリークする素材と呼ばれるものが使用されている。
【0042】
導電性はチップ20に生じた静電気を、ゲル状体32を通じて載置台23にアースする為のものである。但し導電性がよすぎるとチップ20の電荷が急激な変化を生じ半導体回路を破壊することがある。したがってスローリークする素材でチップ20をアースすることが望ましい。
【0043】
ゲル状体32の上部にはフィルム体33が貼り付けられている。フィルム体33の素材はウレタン素材が使用される。フィルム体33は導電性であって必ずしもスローリークしなくてもよい。チップ20の静電気を粘着シート25からゲル状体32に通電する機能があればよい。
【0044】
ゲル状体32は空気を大量に含んでいることで弾性力を発揮するが、その表面部は空気の微小な穴が吸盤と同じ働きをして粘着性が発生する。ゲル状体32の上面にフィルム体33が貼り付けられることにより粘着性をなくすことが出来る。
但しゲル状体32の側面までフィルム体33で密封すると変形が抑制され本来の弾性力及びスローリーク導電性などの特性が損なわれる。したがってゲル状体32の側面もフィルム体33で覆う場合はゲル状体32の特性を損なわないように考慮する必要がある。
【0045】
また弾性体30は基板体31の上にかまぼこ状のゲル状体32を接着しその上にフィルム体33を接着した後トムソン型等の抜き型で一体成型して製作されると、形状が崩れず、ゲル状体32の側面が露出して弾性力と導電性が確保されるので望ましい形状が製作される。
【0046】
以上のように構成された移載装置の動作について説明する。
ウエハリング5に貼着されて供給されたチップ20はウエハリング台6に装填される。ウエハリング5上のチップ20はヘッド部10先端のヘッド21によって吸着されウエハリング5から剥離されて保持される。
【0047】
第一〜第三のカメラ7.8.9の撮像によってチップ20は正確に位置決めされて載置台23上のキャリアフレーム22の升目状枠222の粘着シート25上に貼着される。
これらの動作は本体1に備えられた制御部2によって制御される。
【0048】
粘着シート25に貼着される動作状態は図5(1)(2)に図示される。図5(1)に示すようにヘッド21に吸着保持されたチップ20はモータ103を駆動させることによってZ方向に移動する。
粘着シート25にチップ20を貼着する為にヘッド21は下降し図5の(2)の状態となり、更に粘着シート25に弾性体30の上面全体が密着するまで押圧され、チップ20全体を粘着シート25の表面251(粘着面)に貼着する。押圧力はチップ20の条件によって異なり2キログラム〜200グラム程度の力で押圧される。
【0049】
弾性体30は前述したようにかまぼこ形状しており当初は図5(1)に図示されるように粘着シート25と凸状頂点部301が線接触している。
図5(2)の様にヘッド21によって押圧されると粘着シート25と弾性体30との接触面は面接触となる。このとき弾性体30のかまぼこ形状によってF1,F2方向に空気が押し出され粘着シート25とチップ20間に気泡が発生しないように貼着される。
【0050】
弾性体30の上部はフィルム体33に覆われているので図5(2)のように弾性体30が変形する。フィルム体33が貼り付けられていない場合は、押圧されたゲル状体32は図5(3)のように表面部分のみの変形で押圧力を吸収してしまうので、弾性体30全体が図5(2)の様に変形することが出来ない。
図5(3)の様な状体では粘着シート25とチップ20の間に気泡が発生する可能性が高い。
【0051】
図5(2)の状体であれば弾性体30は載置板231の升目状枠232と接触部235において接触するので、スローリークする導電性を持つゲル状体32によってチップ20が帯びていた静電気が粘着シートを経由して弾性体30のゲル状体32から載置板231から載置台23にアースされる。
このことによりチップ20の静電気は急激な電荷の変化を伴うことなくアースすることが出来る。また、金属製のキャリアフレーム22に静電気が伝達されたとしても位置決めピン233を導電性のないものを使用していれば、チップ20の静電気はすべてゲル状体32を経由してアースされるのでチップ20の回路を破損することがなく導電性のゲル状体32を使用した相乗効果で気泡と静電気の両方が一度に除去される。
【0052】
以上のように本発明で使用されている弾性体30は弾性体自体がかまぼこ形状をしているので粘着シート25が当接して押圧されると全体が変形し、押圧力が分散されてチップ20の一部に集中荷重がかかることがなく、折損事故を大幅に防止することができる。
弾性体30はゲル状体32の下部に硬い材料を使用した基板体31を固着し、上部にフィルム体33を貼付したので繰り返し押圧されても形状変形しない。基板体31は硬いので載置板231に貼り付けて固定した状態で使用できると共に、貼着剥離を繰り返して使用することができる。
【0053】
フィルム体33は空気を通さないものを使用することにより、空気を含んで膨潤となり空気穴の多いゲル状体32の上面の吸盤性質を除去することができ粘着シート25の裏面とはべたべたせず剥離しやすくなっている。
弾性体30はかまぼこ形状なので粘着シート25裏面とは当初線接触しており、押圧されることにより気泡を傾斜方向に押し出すことができる。ゲル状体32は上面がフィルム体33で覆われているので図5の(3)のような変形をせず図5の(2)の形状で効果的に気泡を押し出すことができる。フィルム体33によって上方のゲル状体32が変形することを抑制することにより気泡除去を効果的にすることができる。
つまりフィルム体33とかまぼこ形状との相乗効果でより効果的な気泡除去が可能になったものである。従来は真空脱泡装置にチップ20が移載されたキャリアフレーム22を入れて真空状態にして脱泡していたが本発明により脱泡工程を不要とした。
【0054】
ゲル状体32は導電性の素材を使用することにより、押圧して弾性体30が変形したときに押圧方向とは直行した横方向に膨らみ、載置板231の壁面に接触しチップ20の静電気をアースすることができる。
ゲル状体32の横部分は露出されているので吸盤性があり載置板231の壁面にべたつきながら接触するので通電は確実に行われる。このことによりチップ20が粘着シート25と接触した際に発生した静電気やそれ以前から何らかの摩擦等によって発生し、蓄電していた静電気をアースすることができる。
【0055】
また、ゲル状体32の導電性はスローリークするものが使用されており少量ずつ電気を流す素材を選ぶことにより、チップ20の急激な電荷の変化を防止している。チップ20は急激な電圧変化で組み込まれた回路にショートを発生させることがないようにしなければならないので、ゲル状体32のスローリークする導電性は好ましいものである。
弾性体30は基板体31の上にかまぼこ形状のゲル状体32を固着させ、その上にフィルム体33を貼り付けて、トムソン型などの抜き型で成型したかまぼこ形状なので、押圧時は導電性のある側面が膨らんで載置板231の壁面に当接させることができるので、押圧されたときのみアースすることができる。したがって押圧されていないときには通電しないので外部の静電気などが弾性体30に逐電されることもない。

【産業上の利用可能性】
【0056】
弾性体30はキャリアフレーム22のような形式の搬送手段だけではなくて、エンボステープ等の下において同様に気泡や静電気の除去に使用することができる。
本件ではチップ20を貼り付けることを想定して記載したが、本装置であればガラスやプラスチック等の小部品を移動搭載する場合にも応用することができる。

【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】移載装置の全体図である。
【図2】載置部の分解図である。
【図3】ヘッド部と載置部の組図である。
【図4】弾性体の図である。
【図5】弾性体の押圧される状体を示す図である。
【図6】従来のラベル貼着装置である。
【符号の説明】
【0058】
1
本体
2
制御部
5 ウエハリング
6 ウエハリング台
7 第一のカメラ
8 第二のカメラ
9 第三のカメラ
10 ヘッド部
101 モータ(ヘッド回転用)
102 モータ(ヘッド部X方向移動用)
103 モータ(ヘッドZ方向移動用)
104 ねじ軸(ヘッド部X方向移動用)
105 ねじ軸(ヘッドZ方向移動用)
15 ウエハリング移動テーブル
16 載置部移動テーブル
19 載置部
20 チップ
21 ヘッド
22 キャリアフレーム
222 升目状枠(キャリアフレーム)
223 位置決め穴
23 載置台
231 載置板
232 升目状枠(載置板)
233 位置決めピン
235 接触部
25 粘着シート
251 表面(粘着シート粘着面)
252 裏面(粘着シート非粘着面)
30 弾性体
301 凸状頂点部
31 基板体
32 ゲル状体
33 フィルム体
90 ラベル(従来例)
91 弾性体(従来例)
92 吸着プレート(従来例)
93 吸着口(従来例)
94 曲面吸着面(従来例)
95 ロッド(従来例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド部によって電子部品を保持して移送し粘着シート上に該電子部品を載置貼着する移載装置において、
載置台と、
前記載置台上に設置された升目状枠が形成された載置板と、
前記載置板の前記升目状枠内に接着された弾性体と、
下部に粘着シートが貼着・固定された前記弾性体用の前記升目状枠と同形状の電子部品枠を設けたキャリアフレームとからなる移載装置。

【請求項2】
前記弾性体はかまぼこ形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の移載装置。

【請求項3】
前記弾性体はPET素材で形成された下部と、ゲル素材で形成された弾性部と、ウレタン素材からなるフィルムが貼着された上部からなることを特徴とする請求項1記載の移載装置。

【請求項4】
前記弾性体は導電性を有し前記電子部品を前記電子部品枠内の粘着シート上に押圧・載置の際、前記弾性部が側方に膨らむことにより載置台側に静電気をスローリークすることを特徴とする請求項1記載の移載装置。

【請求項5】
前記弾性体は硬いPET材の上に弾性部を固着しその上にフィルムが貼着された後抜き型で成型して製作したことを特徴とする請求項1記載の移載装置。

【請求項6】
前記載置板には位置決めピンが設けられ前記キャリアフレームに設けられた位置決め穴と係合することにより位置決めすることを特徴とする請求項1記載の移載装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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