説明

種々のグルコース濃度の混合透析液を用いる腹膜透析治療転帰の予測

腹膜透析処置のための方法は、(i)異なる混合デキストロースレベルの透析溶液のうちの複数に関する患者治療転帰の複数の結果を予測する工程;(ii)上記結果に基づいて、患者についての上記混合デキストロースレベルの溶液のうちの1つを選択する工程;および(iii)上記選択した混合デキストロースレベルの溶液を使用して達成される同様の累積濃度をシミュレートするように組み合わせた異なる非混合デキストロースレベルの溶液を使用して、少なくとも1種の治療を行う工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
本開示は、医療用流体送達およびより具体的には、腹膜透析(「PD」)に関する。
【背景技術】
【0002】
PD流体(透析液といわれる)は、代表的には、標準グルコースレベルで提供される。例えば、米国では、透析液は、代表的には、1.36%、2.27%および3.86%の標準化グルコースレベル(それぞれ、1.5%、2.5%および4.25%のデキストロースレベルに対応する)で提供される。上記グルコースレベルが高いほど、上記透析液によって引き起こされる浸透圧勾配は高くなり、大量の限外濾過物(「UF」)もしくは排水が上記患者から除去される。しかし、上記グルコースレベルが高くなるほど、上記透析液によって提供されるカロリーは高くなり、そして上記患者が潜在的に増やしてしまう重量はより大きい。
【0003】
よって、患者は、代表的には、UFの必要量を除去する、可能な最低限のグルコースレベルの透析液を使用する。しかし、ときおり、上記患者の治療は、1.36%、2.27%および3.86%の上記標準化グルコースレベルの間にある必要がある。例えば、2.0% グルコースのブレンドしたグルコースレベルを使用することが望ましいことがある。
【0004】
試験は、上記患者に対して、特定の透析液が廃棄物およびUFを患者から除去するときに、どの程度有効であるかを理解するために行われ得る。例えば、腹膜平衡試験(「PET」)が行われ得、この試験は、上記患者の腹膜内での異なる滞留期間後に採取した透析液サンプルを分析する。上記PETはまた、上記患者の血液の分析を要する。よって、上記PETは、代表的には、診療所で行われる。
【0005】
臨床状況において、異なるグルコースレベルの透析液溶液をブレンドして、望ましいハイブリッドグルコースレベルを達成することは、不可能ではないかもしれないが、困難であり得る。従って、ハイブリッドグルコースレベルの透析液を容易に設計する方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
本開示は、ブレンドしたもしくはハイブリッドグルコースレベルの透析液を設計するための正確でかつ容易に実行される方法を提供する。上記方法は、各グルコースレベルの透析液成分を別個に分析し、その結果を合計するかまたは積分する。これは、上記組成のグルコースレベルの透析液を実際にブレンドするのとは対照的に行われ、上記透析液を手動でもしくは自動的にブレンドする必要性を排除し、かつブレンドする際のエラーの可能性を防止する。ブレンドするにおけるエラーにより、例えば、想定されるものとは異なるグルコースレベルブレンドへの患者の応答を予測する結果がもたらされる。
【0007】
本発明者らは、数学的モデルを使用して(例えば、スリーポア動力学的モデル(three−pore kinetic modeling)を介して)、異なるグルコースレベルを有する個々の透析液の結果を合計することが、上記成分の各々のブレンドの結果にほぼ近似する総合的結果を生じることを見いだした。例えば、全体のUF、尿素Kt/V、除去される累積クレアチニン、吸収される総炭水化物(「CHO」)および除去される総ナトリウムについての結果は、4つの2.0% デキストロースレベルの充填物に対して、2つの1.5%デキストロースレベル+2つの2.5%デキストロースレベルの充填物(それぞれ、1.36%もしくは2.27%のグルコースレベルに対応する)について非常に良好な相関を示した。行われかつ以下に詳細に議論される試験はまた、高い、並に高い(high average)、並に低いおよび低患者タイプを含む、異なる腹膜輸送タイプを有する患者について良好な相関を示した。上記試験を、以下でより詳細に議論される改変型スリーポア動力学的モデルを介してシミュレートした設計を使用して行った。
【0008】
また、上記モデルが、異なるグルコース濃度を有する複数の溶液バッグの累積であるグルコース濃度に基づいて、上記UFおよびKt/Vを概算する方法を提供し、これは、上記溶液の注入順序(the order of infusion)およびグルコース含有量とは無関係であることが見いだされた。さらに、線形的な関係が、(i)除去されるUFおよび% グルコースと、(ii)Kt/Vおよび% グルコースとの間に存在することが見いだされた。従って、1つのこの線形的な関係が上記患者について知られると、任意の所望の最終グルコース濃度(容易に入手可能な溶液バッグを混合することによって得られ得るものだけでない)が、予測され得る。
【0009】
よって、本開示の利点は、異なるグルコースレベルの透析液を実際にブレンドする必要なくして、このような透析液からブレンドした透析液を使用する透析処置についての結果を容易にかつ正確に予測するための方法を提供することである。
【0010】
本開示の別の利点は、異なるPD輸送特性を有する患者のためのブレンドしたPD透析液療法の結果を予測することである。
【0011】
本開示のさらなる利点は、除去されるUFおよびKt/Vについての結果が、任意の最終的にブレンドしたグルコースレベルについて予測され得るように、除去されるUFおよびKt/V 対 グルコースパーセンテージの線形的な関係を確立することである。
【0012】
本開示のさらに別の利点は、上記一次方程式のデータベースを生成することであり、このデータベースは、二次元チャートを使用してアクセスされ、ここで一次元は、特定の治療(例えば、8時間、4回交換、2リットル治療)をマップする二次元に対して、高い(「H」)、並に高い(「HA」)、並に低い(「LA」)、および低い(「L」)輸送としての輸送状態をマップする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、非混合溶液および混合溶液の設計において使用した、異なる輸送状態を有する4名の患者についての身体的特徴を例示するチャートである。
【図2】図2は、図1に示される4名の患者についての概算される腹膜輸送パラメーターを示し、このようなデータは、上記患者データと組み合わせる、異なるデキストロース濃度についての動力学的設計に使用した。
【図3】図3は、混合したかブレンドしたデキストロース濃度の同様の容積に対して、異なる非混合デキストロース濃度を使用して各々設計した、3種の溶液組み合わせを図示する。
【図4】図4は、図3に示す組み合わせのうちの1つについての正味の限外濾過物について設計した結果の比較を図示するもので、図1に示す患者の輸送カテゴリーの各々について示している(個々の例)。
【図5】図5は、図3に示す組み合わせのうちの1つについての尿素Kt/Vについて設計した結果の比較を図示するもので、図1に示す患者の輸送カテゴリーの各々について示している(個々の例)。
【図6】図6は、図1で図示される各患者の輸送カテゴリーについての正味の限外濾過物と溶液濃度との間の相関を図示する。
【図7】図7は、図1で図示される各患者の輸送カテゴリーについての尿素Kt/Vと溶液濃度との間の相関を図示する。
【図8A】図8Aは、本開示の方法論および対応する装置の1つの使用を示す模式的フロー図である。
【図8B】図8Bは、本開示の方法論および対応する装置の別の使用を示す模式的フロー図である。
【図9】図9は、尿素Kt/Vおよび除去される限外濾過物についての保存された方程式のマトリックスであり、これは、処方される治療および患者の輸送状態に基づいて選択される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(詳細な説明)
本開示は、少なくとも2種の異なる濃度のグルコースが混合されて、新たなブレンドした溶液(これは、特定の患者に適するようにカスタマイズされる)を形成する場合に、上記腹膜透析(「PD」)治療転帰を知ることが益々必要になっているということに対処する。本明細書で議論される方法論は、カスタマイズされたグルコースの結果が予測されることを可能にし、このことは、標準溶液の好ましい混合物をもたらし、この混合物は、自動腹膜透析(「APD」)装置によって、リアルタイムで混合され得る。
【0015】
上記方法論は、混合した最終溶液グルコース濃度を治療転帰(例えば、正味の限外濾過物(「UF」)、1週間の尿素Kt/V、およびクレアチニンクリアランス)に関連する比較的単純な、一次方程式を使用する。
【0016】
一実施形態において、PD輸送の改変型スリーポア動力学的モデルを、予測の数学的モデルについてのベースとして使用した。1つの適切な改変型スリーポア動力学的モデルは、Rippe B.,Sterlin G.,and Haraldsson B.,Computer Simulations of Peritoneal Fluid Transport in CAPD,Kidney Int.1991;40:315〜325において記載される。別の適切な改変型スリーポア動力学的モデルは、Vonesh E.F. and Rippe B.,Net Fluid Adsorption Under Membrane Transport Models of Peritoneal Dialysis,Blood Purif.1992;10:209〜226(これらの各々の内容全体は、本明細書に参考として援用され、依拠する)に記載される。MatlabTM(バージョン 7.5.0.342,Mathworks Inc.)を使用して、上記モデルを構築した。
【0017】
本発明の方法を説明するために使用した患者パラメーターを、国家適切性イニシアティブプログラム(national adequacy initiative program)に参加している米国およびカナダにある施設によって、1999年に、本開示の譲受人に提出されたデータから得た。上記データを、高い(「H」)、並に高い(「HA」)、並に低い(「LA」)、および低い(「L」)輸送状態として、患者の腹膜輸送状態によって、カテゴリーに分類した。各カテゴリーについての代表的な患者を、図1および図2に示されるように選択した。図1は、患者の身体的特徴を示す。図2は、各患者についての生理学的特性および動力学的パラメーター、ならびに対応する輸送カテゴリーを示す。BSAは、「体表面積」を表し、TBWは、「体内全水分量」を表す。MTACは、「物質輸送面積係数(mass transport area coefficient)」を表す。LPAは、限外濾過係数を表す。A0/dxは、単位拡散距離に対する非制限孔面積を表す。図2に認められるように、各クリアランス値は、HからLへの輸送状態移行として低下した。
【0018】
図3は、種々の濃度のデキストロースで行われたシミュレーションの3つのセットを示す。組み合わせAは、ブレンドした2.0% デキストロース濃度を使用する4つの処置についての同様の容積に対して、標準1.5% デキストロース濃度および2.5% デキストロース濃度の処置の各々2つを使用する4つの非混合処置に取り組んでいる。組み合わせBは、ブレンドした2.88% デキストロース濃度を使用する4つの処置について同様の容積に対して、標準1.5% デキストロース濃度および4.25% デキストロース濃度の処置の各々2つを使用する4つの非混合処置に取り組んでいる。組み合わせCは、ブレンドした3.56% デキストロース濃度を使用する4つの処置に対して、1つの標準1.5% デキストロース濃度および3つの標準4.25% デキストロース濃度の処置を使用する4つの非混合デキストロース濃度処置に取り組んでいる。各組み合わせA〜Cについての非混合およびブレンドした濃度を使用する処置の結果が、少なくとも実質的に同じであることを示すことが、そして実際に、出願人らが示すことが望ましい。
【0019】
各組み合わせA〜Cについて、8時間、4回交換治療を、各非混合もしくはブレンドした濃度について、2Lの充填物を使用して分析した。上記の非混合溶液条件と混合溶液条件との間のシミュレートした転帰における差異を、重要なパラメーター(例えば、正味のUF、尿素Kt/V、クレアチニンクリアランス、吸収されるグルコース、および除去されるナトリウム)について要約した。詳細な結果を、以下の表1A、表1B、表2A、表2B、表3Aおよび表3Bに示す。表1A、表1B、表2A、表2B、表3Aおよび表3Cは、各患者(上記表中、患者2、患者5、患者8および患者11として同定される)についておよび従って、各患者のクリアランスタイプ、それぞれH、HA、L、LAについて、各組み合わせA〜Cについての優れた相関を示す。
【0020】
患者2(高クリアランス)についての表1Bは、組み合わせAを、1.5% 対 2.5% デキストロース濃度組み合わせの2つの異なる組み合わせ順序において設計した場合に、その設計した混合2.0%濃度についての結果が、両方の非混合組み合わせ順序に非常に近く適合したことを示す。患者8についての表2B(低クリアランス)は、組み合わせBを、1.5% 対 4.25% デキストロース濃度組み合わせの2つの異なる組み合わせ順序において設計した場合に、その設計した混合2.88%濃度についての結果は、両方の非混合組み合わせ順序に非常に近く適合することを示す。患者5についての表3B(並に高いクリアランス)は、組み合わせCを、1.5% 対 4.5% デキストロース濃度組み合わせの2つの異なる組み合わせ順序において設計した場合、その設計した混合3.56%についての結果は、両方の非混合組み合わせ順序に非常に適合していることを示す。
【0021】
表1A、表1B、表2A、表2B、表3Aおよび表3B
(表1A) 組み合わせAについて−結果(1.5%および2.5% 1:1)
【0022】
【表1A】

(表1B) 組み合わせAについて−より容易な比較のための患者ID 2についてのブレイクアウトボックス
【0023】
【表1B】

(表2A) 組み合わせBについて−結果(1.5%および4.25% 1:1)
【0024】
【表2A】

(表2B) 組み合わせBについて−より容易な比較のための患者ID 8についてのブレイクアウトボックス
【0025】
【表2B】

(表3A) 組み合わせCについて−結果(1.5%および4.25% 3:1)
【0026】
【表3A】

(表3B) 組み合わせCについて−より容易な比較のための患者ID 5についてのブレイクアウトボックス
【0027】
【表3B】

図4および図5は、組み合わせAについて、それぞれ、正味のUFおよび尿素Kt/Vについてのシミュレートした結果および組み合わせ結果をグラフに示す。図示されるように、両方のパラメーターは、別個での1.5%および2.5%の透析液溶液(2×1.5%+2×2.5%)および混合形態で(4×2.0%)の注入は、実質的に等価な転帰を生じることを示す。上記結果は、(1)混合溶液が使用される治療の転帰を予測することは可能であること、および(2)上記転帰が、混合溶液および非混合溶液について実質的に同じであることを実証する。これら予測される結果は、実際の結果に十分移されると予測され、その結果、患者は、異なる非混合溶液を使用する処置を実施して、対応する混合溶液を使用して自身が行うものに対応する実際のデータを生成することができる。従って、本発明の方法が、混合溶液と非混合溶液との間の1対1比較で所定の患者について証明されると、その方法は、その患者に関する任意の最終溶液濃度の転帰を予測するために使用され得る。
【0028】
図6および図7は、本開示の方法論についての別の有用な特徴、すなわち、転帰と混合デキストロース濃度との間に線形的関係があることを図示する。2つの例は、正味のUFおよび1週間の尿素Kt/Vについて図6および図7にそれぞれ示される。その線形的関係は、1.5%〜4.25%標準化デキストロース範囲内の任意のデキストロース濃度に基づいて、転帰の概算を可能にする方程式をもたらす。上記関係はまた、数学的にこの範囲外に及び得るか、または非混合溶液のより大きな範囲内に存在し得る。リコールおよび使用のためのコンピューターメモリ上にこれら関係を保存することが企図される。比較的単純な線形的関係を知ることの1つの重要な利益は、異なる最終混合グルコースレベルについて、患者のためにより複雑な動力学的モデルを実施することが必要ではないということである。
【0029】
図6および図7に示される方程式は、上記シミュレーションが行われた治療の状態(例えば、8時間、4回交換、2L治療)に対して特に当てはまることは理解されるべきである。患者の治療が変更される場合は、新たなモデルが生成されるべきである。
【0030】
上記のシミュレーションは、容易に入手可能なデキストロース濃度の混合物を注入することによって行われるPD治療が、累積デキストロース濃度が同じである限りにおいて、各々の従来の溶液を1度に1回注入することと等価であることを実証する。デキストロース濃度と転帰との間に線形的関係が存在することもまた、示される。
【0031】
このような等価性を示す能力は、種々の方法において重要である。第1に、上記方法論は、溶液混合の分野における規制的主張(regulatory claims)を裏付ける有用な方法を提供する。第2に、図8Aに示されるように、シミュレートした転帰は、「特に使い慣れた(favorite)」もしくは「最適な」、または「カスタマイズした」混合溶液を選択するために使用され得る。それらのシミュレートした結果は、次いで、非混合標準デキストロース溶液を使用した実際の試験を使用して確認され、その試験により、最終的な所望の好ましい混合溶液が既存の溶液の組み合わせにより得られ得ると仮定して、その好ましい混合溶液を使用して得られる累積濃度が提供される。従って、混合溶液が使用について承認されるまで実際の混合を行う必要はない。第3に、図8Bに認められるように、患者は、実際の治療のために混合溶液をシミュレートするために必要とされる順序で、非混合溶液を使用し続ける。ここで、実際の混合は、決して行わない。図8Aの両方の適用において、単一の混合濃度もしくは非混合濃度の組み合わせのいずれかを使用して、シミュレーション工程を行うことが企図される。すなわち、そうすることがより容易であれば、単一の混合濃度が、上記設計のために使用され得る。上記標準濃度を実際に混合する必要はないという利点は、次いで、図8Aの実際の確認工程もしくは図8Bの実際の治療実施工程において達成される。
【0032】
本発明の方法についての別の重要な局面は、UFおよび尿素Kt/Vについての線形的な単純な関係の生成である。このことは、任意の適切なグルコース濃度が予測されることを可能にする。図9は、関係についての二次元のマトリックス(例えば、図6および図7に示されるもの)を図示する。上記マトリックスのx軸は、高い(「H」)、並に高い(「HA」)、並に低い(「LA」)、および低い(「L」)輸送として輸送状態をマップする。上記マトリックスのy軸は、治療のタイプ(例えば、(i)8時間、4回交換、2Lの治療 対 (ii)9時間、5回交換、1.75Lの治療)をマップする。各交線は、UFおよび尿素Kt/V 対 グルコースレベルについての対応する方程式を含む。上記マトリックスは、特定の輸送状態に関する単一の患者の入力データもしくは特定の輸送状態についての平均化データ(もしくは範囲データの中央)に基づく方程式を含み得る。いずれにしても、上記マトリックスは、特定の輸送状態に陥る新たな患者にいくらかの指示、どの結果が、特定のグルコースレベルの透析液(そのグルコースレベルは標準もしくはブレンドしたグルコースレベルである)を使用する特定の治療のためのものであるか、を提供するために使用され得る。ブレンドしたグルコースレベルの場合、本発明の方法は、ブレンドしたグルコースレベル処置を模倣するかもしくはこれに等しいように組み合わせる標準グルコースレベルの透析液を使用する処方を条件に企図される。
【0033】
開示される方法論および得られる装置は、非グルコースベースの溶液、より低い濃度のナトリウムを有するグルコースベースの溶液、もしくは2峰性(bi−modal)溶液に及び得ることが認識されるべきである。
【0034】
本明細書に記載される現在好ましい実施形態に対する種々の変更および改変は、当業者に明らかであることが理解されるべきである。このような変更および改変は、本発明の事項の趣旨および範囲から逸脱することなく、かつその意図した利点を低減させることなく行われ得る。従って、このような変更および改変は、添付の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なるグルコースレベルを有する複数の透析液からブレンドした透析液を使用して、患者のための腹膜透析治療の結果を予測するための方法であって、該方法は、
該グルコースレベルのうち第1のグルコースレベルを有する該透析液の中から第1の透析液を使用して、該患者についての治療転帰パラメーターを決定する工程;
該グルコースレベルのうち第2のグルコースレベルを有する該透析液の中から第2の透析液を使用して、該患者についての該治療転帰パラメーターを決定する工程;
該第1の接触透析液および該第2の接触透析液の使用から得られた該治療転帰パラメーターを組み合わせて、組み合わせた治療転帰パラメーターを形成する工程;ならびに
該組み合わせた治療転帰パラメーターを、該第1の透析液および該第2の透析液からブレンドした透析液を使用して、総計した治療転帰パラメーターであると仮定する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記組み合わせた治療転帰パラメーターを、前記第1の透析液について使用される容積および前記第2の透析液について使用される容積から総計した容積のためのものであると仮定する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記治療転帰パラメーターを組み合わせる工程は、該治療転帰パラメーターを合計する工程を包含する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記治療転帰パラメーターを組み合わせる工程は、(i)除去される正味のUF;(ii)除去される累積尿素;(iii)除去される累積クレアチニン;(iv)吸収される総炭水化物;および(v)除去される総ナトリウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の透析液および前記第2の透析液からの少なくとも一方についての前記治療転帰パラメーターを決定する工程は、数学的モデルを使用する工程を包含する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のグルコースレベルおよび前記第2のグルコースレベルは、1.36%、2.27%および3.86%のうちの1つである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の透析液および前記第2の透析液からの一方を使用する工程は、該透析液の複数の充填物を使用する工程を包含する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の透析液もしくは前記第2の透析液からの複数の充填物を使用して、前記治療転帰パラメーターを決定する工程は、該複数の充填物の該治療転帰パラメーターを組み合わせる工程を包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の充填物の前記治療転帰パラメーターを組み合わせる工程は、該治療転帰パラメーターを合計する工程を包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記組み合わされた治療転帰パラメーターを仮定する工程は、前記患者に関する患者輸送状態の特定のタイプについて仮定する工程を包含する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の透析液および前記第2の透析液からの少なくとも一方に関する前記治療転帰パラメーターを決定する工程は、前記患者に属する患者輸送状態に基づく少なくとも1つの値を入力する工程を包含する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの入力される値は、グルコース物質輸送面積係数(「MTAC」)、尿素MTAC、クレアチニンMTAC、限外濾過係数(「LPA」)、および単位拡散距離に対する非制限孔面積(「Ao/dx」)からなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記グルコースレベルのうち第3のグルコースレベルを有する前記透析液の中から第3の透析液を使用して、前記患者についての前記治療転帰パラメーターを決定する工程、ならびに前記第1、第2の、および該第3の透析液の使用からの前記治療転帰パラメーターを組み合わせて、組み合わされた治療転帰を形成する工程を包含する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法を行うために改変した、コンピューター読み取り可能媒体。
【請求項15】
異なるグルコースレベルを有する複数の透析液からブレンドした透析液を使用して、患者のための腹膜透析治療の結果を予測するための方法であって、該方法は、
該グルコースレベルのうち第1のグルコースレベルを有する該透析液の中から第1の透析液を使用して、該患者に関して除去される限外濾過物を決定する工程;
該グルコースレベルのうち第2のグルコースレベルを有する該透析液の中から第2の透析液を使用して、該患者に関して除去される該限外濾過物を決定する工程;
該第1の透析液および該第2の透析液の使用から得られた該除去される限外濾過物を添加して、組み合わせた除去される限外濾過物を形成する工程;ならびに
該組み合わせた除去される限外濾過物を、該第1の透析液および該第2の透析液から実際にブレンドした透析液を使用して除去される、ブレンドした限外濾過物であると仮定する工程
を包含する、方法。
【請求項16】
異なるグルコースレベルを有する複数の透析液からブレンドした透析液を使用して、患者のための腹膜透析治療の結果を予測するための方法であって、該方法は、
該グルコースレベルのうち第1のグルコースレベルを有する該透析液の中から第1の透析液を使用して、該患者についての尿素Kt/Vを決定する工程;
該グルコースレベルのうち第2のグルコースレベルを有する該透析液の中から第2の透析液を使用して、該患者についての該尿素Kt/Vを決定する工程;
該第1の透析液および該第2の透析液の使用から得られた、組み合わせた尿素Kt/Vを決定する工程;ならびに
該組み合わせた尿素Kt/Vを、該第1の透析液および該第2の透析液から実際にブレンドした透析液を使用して、ブレンドした尿素Kt/Vであると仮定する工程、
を包含する、方法。
【請求項17】
異なるグルコースレベルを有する複数の透析液からブレンドした透析液を使用して、患者のための腹膜透析治療の結果を予測するための方法であって、該方法は、
該グルコースレベルのうち第1のグルコースレベルを有する該透析液の中から第1の透析液を使用して、該患者についての除去されるクレアチニンを決定する工程;
該グルコースレベルのうち第2のグルコースレベルを有する該透析液の中から第2の透析液を使用して、該患者についての該除去されるクレアチニンを決定する工程;
該第1の透析液および該第2の透析液の使用から、組み合わせた、除去したクレアチニンを決定する工程;ならびに
該組み合わせた、除去したクレアチニンを、該第1の透析液および該第2の透析液から実際にブレンドした透析液を使用して除去されるブレンドしたクレアチニンであると仮定する工程、
を包含する、方法。
【請求項18】
患者のために透析溶液を選択するための方法であって、該方法は、
異なる混合デキストロースレベル透析溶液のうちの複数に関する患者治療転帰の複数の結果を予測する工程;
該結果に基づいて、患者のために該混合デキストロースレベルの溶液の中から1つを選択する工程;ならびに
該選択した混合デキストロースレベルの溶液を使用して同様の累積濃度をシミュレートするように組み合わせる異なる非混合デキストロースレベルの溶液を使用して、一群の治療を処方することによって、該結果を確認する工程、
を包含する、方法。
【請求項19】
前記異なる混合デキストロースレベル透析溶液のうちの複数に関する前記患者治療転帰の複数の結果を予測する工程は、前記特定の混合デキストロースレベルの溶液を使用して、同様の累積濃度をシミュレートするように組み合わせる非混合デキストロースレベルの溶液を使用する工程を包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記異なる混合デキストロースレベル透析溶液のうちの複数に関する前記患者治療転帰の複数の結果を予測する工程は、単一の混合デキストロースレベル濃度を使用する工程を包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
腹膜透析処置のための方法であって、該方法は、
異なる混合デキストロースレベル透析溶液のうちの複数に関する患者治療転帰の複数の結果を予測する工程;
該結果に基づいて、患者のために該混合デキストロースレベルの溶液の中から1つを選択する工程;ならびに
異なる非混合デキストロースレベルの溶液を使用して、該選択した混合デキストロースレベルの溶液を使用して達成される同様の累積濃度をシミュレートするように組み合わせる少なくとも1つの治療を行う工程、
を包含する、方法。
【請求項22】
前記異なる混合デキストロースレベル透析溶液のうちの複数に関する前記患者治療転帰の複数の結果を予測する工程は、前記特定の混合デキストロースレベルの溶液を使用して同様の累積濃度をシミュレートするように組み合わせる非混合デキストロースレベルの溶液を使用する工程を包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記異なる混合デキストロースレベル透析溶液のうちの複数に関する前記患者治療転帰の複数の結果を予測する工程は、単一の混合デキストロースレベル濃度を使用する工程を包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
腹膜透析処置のための方法であって、該方法は、
第1のグルコースレベルの透析液および第2のグルコースレベルの透析液についての結果に基づいて、患者限外濾過物(「UF」)もしくは患者Kt/Vの関係を決定する工程;ならびに
該関係を使用して、第3のグルコースレベルの透析液に関するUFもしくは患者尿素Kt/Vを予測する工程、
を包含する、方法。
【請求項25】
前記第1のグルコースレベルの透析液および前記第2のグルコースレベルの透析液に関する前記限外濾過物(「UF」)の結果もしくは患者尿素Kt/Vの結果を予測する工程を包含する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第3のグルコースレベルの透析液を使用する治療を処方する工程を包含し、該第3のグルコースレベルは、非標準のグルコースレベルである、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記治療を処方する工程は、前記非標準の第3のグルコースレベルの透析液を模倣するように組み合わせる標準グルコースレベルの透析液の組み合わせを使用する工程を包含する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第3のグルコースレベルは、前記第1のグルコースレベルと前記第2のグルコースレベルとの間である、請求項24〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記関係は線形性である、請求項24〜28のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−518480(P2012−518480A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551251(P2011−551251)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/024750
【国際公開番号】WO2010/096662
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】