説明

種子乾燥装置

【課題】種子の温湯消毒、冷水冷却及び乾燥を能率的に行なう。
【解決手段】温湯消毒タンク(1)、冷却タンク(2)及び乾燥室(3)を上手側から下手側に向けて順次配設し、通気性のある容器(8,41b)に入れた種子を温湯消毒タンク(1)、冷却タンク(2)及び乾燥室(3)の上手側から下手側に向けて順次連続的に搬送する搬送手段(5,6,7,41a)を設け、種子を入れ替えせずに温湯消毒作業、冷水冷却作業及び乾燥作業を連続的に行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温湯等に浸積して消毒した種子を乾燥する乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
種籾の消毒装置において、種籾を浸漬する温湯タンクと冷水タンクを並列配置し、種籾を収容する多孔状の種籾容器をクレーンに吊り下げて、温湯タンクに浸漬したり、冷水タンクに浸漬するものは公知である(特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−230270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来装置では、温湯消毒及び冷水冷却した種籾を例えば脱水機に移して水切り乾燥作業をしなければならず、種子の消毒冷却乾燥作業を連続的に行なうことができず、作業能率が上がらないという不具合があった。そこで、この発明はこのような不具合を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明は、乾燥室(3)内に通風乾燥する水切り室部(3a)と、温風乾燥する乾燥室部(3b)と設けると共に、種子を収容した通気性のある種子容器(8)を搬送する搬送手段(7)を設け、該搬送手段(7)は通気性のある搬送搬送ベルトを備え、水切り室部(3a)と乾燥室部(3b)とを通過する構成としたことを特徴とする種子乾燥装置とする。
【0005】
前記構成によると、種子を収容した通気性のある種子容器(8)を通気性のある搬送ベルトを備える搬送手段(7)で水切り室部(3a)と乾燥室部(3b)とを通過して乾燥する。
【0006】
請求項2の発明は、前記乾燥室(3)の上手側を通風乾燥する水切り室部(3a)とし、下手側を温風乾燥する乾燥室部(3b)としたことを特徴とする請求項1記載の種子の温湯消毒乾燥装置とする。
【0007】
前記構成によると、乾燥室(3)を搬送中の種子容器(8)に収容された種子は、上手側の水切り室部(3a)では通風乾燥されて水切り乾燥がなされ、下手側の乾燥室部(3b)では温風により乾燥される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明は、種子の収容された種子容器(8)単位で、乾燥室(3)に連続して順次搬送して乾燥作業を行なえるため、作業能率を高めることができる。また、種子容器(8)及び搬送ベルトのいずれも通気性があるため、種子容器(8)内の種子に万遍なく通風及び温風を作用することができ、乾燥ムラを少なくすることが出来る。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明の前記効果に加えて、通気性のある種子容器(8)に収容された種子は上手側の水切り室部(3a)では通風乾燥されて水切り乾燥がなされ、下手側の乾燥室部(3b)では温風により乾燥されるので、種子の乾燥能率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下図面に示す実施形態に基づき種子の温湯消毒乾燥装置について説明する。図1には温湯消毒乾燥装置の工程図が図示されている。
温湯消毒乾燥装置は、温湯消毒タンク1、冷却タンク2及び乾燥室3を上手側から下手側に向けて順次配設している。温湯消毒タンク1には、通気性のあるメッシュ材の搬送ベルトで構成した第1コンベヤ5を設けている。この第1コンベヤ5は、上手側の高位置を搬送する上手側高位置コンベヤ部5a、中途部の温湯消毒タンク1の底部を搬送する中途部低部コンベヤ部5b、及び、下手側の高位置を搬送する下手側高位置コンベヤ部5cにより構成している。
【0011】
また、温湯消毒タンク1の近傍には温水ボイラ19を配設し、温水戻りパイプ19aから戻った温湯を温水ボイラ19で加温し、温水供給パイプ19bを経由して温湯消毒タンク1の上手側に還流し、タンク内の温湯を所定温度に保ち、高い殺菌効果を維持するようにしている。
【0012】
前記構成によると、種籾計量装置(図示省略)からメッシュ状の種子袋8に所定量詰められた種籾が、上手側高位置コンベヤ部5aに供給されて搬送され、次いで、中途部低部コンベヤ部5bにより種籾袋8は温湯消毒タンク1の低部に搬送されて浸漬され、例えば60度Cの温湯により所定時間にわたり消毒され、次いで、下手側高位置コンベヤ部5cに搬送されて引き揚げられて水切りされ、次工程の冷水タンク2に搬送される。
【0013】
冷水タンク2には通気性のあるメッシュ材の搬送ベルトで構成した第2コンベヤ6を設け、冷水タンク2内の冷水を戻りパイプ9aを経由して冷却装置9に戻し、冷却装置9で冷却した後に送り出しパイプ9bを経て冷水タンク2の上手側部分に送り込み、冷水タンク2内の冷水を所定温度に維持するように構成している。第2コンベヤ6は、冷水タンク2の底部を搬送する上手側低位置コンベヤ部6a、及び、高位置を搬送する下手側高位置コンベヤ部6bにより構成されていて、第1コンベヤ5の下手側高位置コンベヤ部5cから種籾の入った種子袋8が冷水タンク2に落し込まれると、上手側低位置コンベヤ部6aで受けて冷水に浸漬しながら下手側に搬送されながら、例えば10度Cの冷水により冷却され、次いで、下手側高位置コンベヤ6bに引継ぎ搬送されて水切りされ、種籾の冷却を確実に且つ迅速化に行い、次工程の乾燥室3に搬送される。
【0014】
なお、第2コンベヤ2の下手側高位置コンベヤ部6bの下方には、種子袋8の種子から水切りされた冷水を受ける冷水受けタンク10を設け、戻しポンプ10aにより冷水を冷水タンク2に還流するように構成している。
【0015】
乾燥室3の下部には通気性のメッシュ材の搬送ベルトからなる第3コンベヤ7を設けている。乾燥室3を上手側の水切り室部3aと下手側の乾燥室部3bに仕切り壁16により仕切り、第3コンベヤ7の部分を連通している。水切り室部3aの下部に位置する水切りコンベヤ部7aには、高圧ブロワ11から水切り送風パイプ11aを経由して、水切りコンベヤ部7aの搬送面下方に設けた水切り吹出しパイプ7bに強風を圧送し、水切りコンベヤ部7aのメッシュ材の搬送ベルトに載置されている種子袋8に向けて乾燥風を吹出して種子袋8内の種籾の水切りをし、水切り後の風は水切り用排気ファン14により排気するように構成している。
【0016】
また、乾燥室3の下部には第3コンベヤ7の乾燥室コンベヤ部7bを配置し、乾燥室コンベヤ部7bの下手側下方部位に排出口3jを設け、排出口3jには開閉自在で且つバネにより常時閉鎖側に付勢している排出用開閉ドア3iを設け、乾燥室コンベヤ部7bの下手側に搬送された種子袋8が、排出用開閉ドア3iのバネに抗して開け排出口3bから排出すると、後続の排出用コンベヤ21に受け継がれ排出搬送され、種子袋8の排出後はバネにより排出用開閉ドア3iを閉鎖するように構成している。
【0017】
また、水切り室部3aの上手側にも同様に構成した搬入口3k、搬入用開閉ドア3mを設けている。前記構成により、搬入用開閉ドア3m及び排出用開閉ドア3iの最小限の開閉により、種子袋8を搬入搬出をすることができ、乾燥室3の機密性を高めることができる。
【0018】
また、加熱装置12により温めた空気を送風ファン13から送風ダクト13aを経由して乾燥室コンベヤ部7bの下方に温風を送り込み、メッシュ材の搬送ベルトに載置された種子袋8に温風を吹出して乾燥し、乾燥後の温風は乾燥用排気ファン15により排気するように構成している。
【0019】
従来装置では、温湯消毒及び冷水冷却した種籾を脱水機で水切りするために種子を入れ替える必要があり、種子の消毒冷却乾燥作業を連続運転することができず、作業能率が上がらないという不具合があった。
【0020】
しかし、前記構成によると、温湯殺菌及び冷水冷却及び乾燥作業をメッシュ材のコンベヤ5,6,7により連続的に行なうことができ、能率的で安定した消毒・乾燥作業をすることができる。
【0021】
また、乾燥工程を水切り工程と温風乾燥工程に分けて連続的に行なうことにより、乾燥速度を速くし乾燥精度を高めることができる。
また、図1に示すように、加熱装置12により温めた空気を吸入する送風ファン13の吸入部に、例えば、繊維フィルタ、光触媒フィルタ、活性炭フィルタ等の除菌用フィルタ17を装着し、除菌した温風を送風ダクト13aから乾燥室コンベヤ部7bに送り込み、搬送中の種子袋8に温風を吹出して乾燥するように構成してもよい。このように構成することにより、温湯殺菌で種子の除菌をしても、後工程で細菌、雑菌の含まれた空気を送り込み、殺菌効果がなくなるという不具合を解消することができる。
【0022】
次に、図3に基づき乾燥室3の第3コンベヤ7の他の実施形態について説明する。乾燥室3の下部には第3コンベヤ7を配設し、第3コンベヤ7の上手側端部を乾燥室3の水切り室部3aから上手側に突出させ、第3コンベヤ7の下手側端部を乾燥室部3bから下手側に突出させている。そして、水切り室部3aの上手側部における第3コンベヤ7の上方部位に搬入用開口部3eを設け、搬入用開口部3eにはバネにより常時閉鎖側に付勢している搬入用開閉ドア3fを設け、種子袋8により搬入用開閉ドア3fをバネに抗して押し開け水切り室3aに送り込まれるように構成している。また、乾燥室部3bの排出用開口部3gには、常時閉鎖側に付勢している排出用開閉ドア3hを設け、種子袋8により排出用開閉ドア3hをバネに抗して押し開け乾燥室部3bから排出されるように構成している。
【0023】
前記構成によると、搬入、排出用開閉ドア3f,3hの最小限の開閉により種子袋8を搬入搬出をすることができ、乾燥室3を簡単な構成にしながら機密性を保持し、乾燥能率を高めることができる。
【0024】
また、図4に示すように構成してもよい。穀粒乾燥調整施設と種子消毒乾燥施設を並設し、穀粒調整施設のシュートパイプ24から乾燥調整されたバラの穀粒を計量袋詰め装置23に供給し、計量部23aで計量し、袋詰め部23bで袋詰めするように構成している。
【0025】
そして、種子消毒乾燥施設の前記排出用コンベヤ21の下手側端部を、シュートパイプ24の投入ホッパ24aの下方に挿入配設し、消毒乾燥済みの種子袋8を排出用コンベヤ21からバラ穀粒用の計量袋詰め装置23の計量部23aを通過し、袋詰め部23bで設定個数ずつの種子袋8を出荷用袋23cに袋詰めし出荷する構成としている。
【0026】
前記構成によると、穀粒乾燥調整施設の袋詰め部23bを有効活用し、消毒乾燥済みの種子袋8を能率的に出荷用袋23cに袋詰めすることができる。
次に、図5に基づき種子の消毒乾燥装置の他の実施形態について説明する。
【0027】
上手側から下手側に向けて、穀粒調整タンク31、温湯消毒槽32、冷水槽33、水切り室34、乾燥室35及び計量袋詰め装置36を配設している。荷受けホッパ31aに供給された種籾を揚穀搬送装置31bにより穀粒調整タンク31に投入し、種籾は流量調整タンク31からコンテナ41に供給される構成である。
【0028】
このコンテナ41は車輪41a,…付きで駆動装置(図示省略)により駆動され、コントローラ(図示省略)により走行速度を高低に調節設定できるように構成し、種籾を収納するコンテナ部41bは通気性のメッシュ材で四角形の箱状に構成されていて、種籾をばら積みする形態で、コンテナ部41bの種籾には液体あるいは気体が流入するように構成している。
【0029】
また、図5に示すように、水切り室34には大容量の送風ファン34aに乾燥風を送り、水切りするように構成している。また、乾燥室35を上手側乾燥室部35a及び下手側乾燥室部35bに区分し、加熱装置35dで加熱した温風を送風ファン35cから送るように構成している。送風ファン35cからの送風ダクトには切替弁34eを設けて、上手側乾燥室部35a,下手側乾燥室部35b双方への送風状態、あるいは、上手側乾燥室部35a,下手側乾燥室部35bのいずれか一方への送風状態に、切替可能に構成している。前記構成によると、乾燥室35の乾燥状態を種々に変更することにより多様な乾燥作業をすることができ、種々の種籾の乾燥を適正に行なうことができる。
【0030】
前記構成によると、コンテナ41を温湯消毒槽32、冷水槽33、水切り室34及び乾燥室35を移動することにより、温湯消毒、冷水冷却、水切り乾燥、温風乾燥の一連の作業をすることができ能率的である。
【0031】
また、水切り室34及び乾燥室35を図6に示すように構成してもよい。
水切り室34、乾燥室35の底部にコンテナ搬送コンベヤ34n,35nを設け、コンテナ41をコンテナ搬送コンベヤ34n,35nに載せて搬送するように構成し、コンテナ搬送コンベヤ34n,35nの速度をコントローラ(図示省略)により速度調節できるように構成する。なお、コンテナ41を作業者が押してコンテナ搬送コンベヤ34n,35nに載替える。
【0032】
種籾のバラ積みされたコンテナ41は、温湯消毒槽32で所定温度の温湯により消毒され、冷水槽33で所定温度の冷水により冷却された後に水切り室34に搬送され。水切り室34ではコンテナ41をコンテナ搬送コンベヤ34nに載せて搬送し、送風ファン33aにより大風量の通風乾燥されて水切りされ、次いで、乾燥室35に搬送されて、乾燥室35ではコンテナ41をコンテナ搬送コンベヤ35nに載せ搬送し、温風送風ファン35dからの温風により乾燥される。次いで、乾燥済みのコンテナ41は計量袋詰め装置36に搬送される。計量袋詰め装置36では、コンテナ41の種籾はホッパ36aに流下排出され、揚穀搬送装置36bにより計量袋詰め装置36の計量タンク36cに搬送され、計量袋詰め装置36cにより計量袋詰めされて出荷される。
【0033】
また、水切り室34及び乾燥室35を図7に示すように構成してもよい。この乾燥室35は上手側乾燥室部35a,下手側乾燥室部35b,…に区分されていて、加熱装置35dにより温められた温風が送風ファン35cdから切替バルブ35e,35fを経て送風され、水切り室34、上手側乾燥室部35a,下手側乾燥室部35bに送風あるいは送風停止をできるように構成している。従って、複数の水切り室34、上手側乾燥室部35a,下手側乾燥室部35bの全体で乾燥されたり、その一部で乾燥作業がされるように構成している。
【0034】
前記構成によると、種籾の水切り状態を確認しながら水切り室34、上手側乾燥室部35a,下手側乾燥室部35bへの温風供給を調節することにより、水分むらを解消し安定した乾燥作業をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】温湯消毒乾燥装置の工程図
【図2】第3コンベヤの側面図
【図3】乾燥室の切断側面図
【図4】計量袋詰め装置の側面図
【図5】温湯消毒乾燥装置の工程図
【図6】水切り室、乾燥室の工程図
【図7】水切り室、乾燥室の工程図
【符号の説明】
【0036】
1 温湯消毒タンク
2 冷却タンク
3 乾燥室
3a 水切り室部
3b 乾燥室部
5 搬送手段(第1コンベヤ)
6 搬送手段(第2コンベヤ)
7 搬送手段(第3コンベヤ)
8 通気性の種子容器(種子袋)
41 コンテナ
41a 搬送手段(車輪)
41b 種子容器(コンテナ部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥室(3)内に通風乾燥する水切り室部(3a)と、温風乾燥する乾燥室部(3b)と設けると共に、種子を収容した通気性のある種子容器(8)を搬送する搬送手段(7)を設け、該搬送手段(7)は通気性のある搬送搬送ベルトを備え、水切り室部(3a)と乾燥室部(3b)とを通過する構成としたことを特徴とする種子乾燥装置。
【請求項2】
前記乾燥室(3)の上手側を通風乾燥する水切り室部(3a)とし、下手側を温風乾燥する乾燥室部(3b)としたことを特徴とする請求項1記載の種子乾燥装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−164198(P2008−164198A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352385(P2006−352385)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】