説明

穀物乾燥装置

【課題】通風乾燥部の乾燥通路を流通する乾燥風量のムラと温度分布ムラに起因する穀物の乾燥ムラを無くすことができる穀物乾燥装置を提供する。
【解決手段】乾燥機本体1の上段に穀物貯留槽、中段に通風乾燥部3、下段に穀物取出槽4をそれぞれ設ける。穀物取出槽4内に、通風乾燥部3から流下する穀物に遠赤外線を照射する遠赤外線放射体16を設ける。通風乾燥部3は、多孔状の通気壁により形成された複数の熱風供給胴8と、多孔状の通気壁により形成された複数の排風胴9を交互に対向配置して乾燥通路10をなしている。乾燥通路10を構成する熱風供給胴8は熱風供給室11に、かつ排風胴9は排風室12にそれぞれ連通していて、排風室12の一端側には吸引送風機13を備えている。排風室12は、吸引送風機13を備えた一端側から前方側に向かって順次断面積が小さくなるように絞り風洞をなしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物を循環流動させながら流動中の穀物に熱風を浴びせて通風乾燥する穀物乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乾燥機本体の上段に穀物貯留槽、中段に通風乾燥部、下段に穀物取出槽をそれぞれ設け、穀物貯留槽に貯留した穀物を通風乾燥部、穀物取出槽、穀物貯留槽の経路で循環流動させながら乾燥する穀物乾燥装置は、特開2001−41655公報、特開2003−176984公報、特開平11−30483号公報、特開平11−83322号公報、特開平9−89453号公報および特開平8−14745号公報に記載されており、これらの穀物乾燥装置にあっては、特開平11−83322号公報に記載されたものを除けば、通風乾燥部の乾燥通路を流下する穀物に遠赤外線を照射することにより、通風による乾燥に遠赤外線による乾燥を併用している。
【0003】
【特許文献1】特開2001−41655公報
【特許文献2】特開2003−176984公報
【特許文献3】特開平11−30483号公報
【特許文献4】特開平11−83322号公報
【特許文献5】特開平9−89453号公報
【特許文献6】特開平8−14745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の穀物乾燥装置における穀物の循環乾燥において、穀物を全体にわたって均等に乾燥するには、通風乾燥部を穀物がムラ無く流下することと通風ムラが生じないようにすることが肝要であるが、通風乾燥部は、通気壁により形成された複数の熱風供給胴と、通気壁により形成された複数の排風胴を交互に対向配置して乾燥通路をなしていて、排風胴は一端側に吸引送風機を備えた排風室に連通しているので、排風室の吸引送風機に近い側と遠い側とでは吸引排風状態にかなりの差が生じて、通風乾燥部の乾燥通路を流通する乾燥風量のムラと温度分布ムラに起因する穀物の乾燥ムラが指摘されていた。
【0005】
さらに、吸引送風機に近い側と遠い側で吸引排風状態の差が生じるので、排風室では、吸引送風機から距離を設けるほど排風室底部に塵埃が堆積し、穀物乾燥終了後の排風室内の掃除の必要性が生じている。
【0006】
そこで本発明は、通風乾燥部の排風胴が連通している排風室を、吸引送風機を備えた一端側から前方側に向かって漸次断面積が小さくなるように絞り風洞とすることにより、吸引送風機による排風室全体の吸引風量を吸引送風機からの遠近にかかわらず均等にして、通風乾燥部の乾燥通路を流通する乾燥風量のムラと温度分布ムラに起因する穀物の乾燥ムラを無くすと共に、排風室では吸引送風機からの距離を設けるほどその断面積を小さくして風速を早くし、排風室底部に塵埃を堆積させることの無い穀物乾燥装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明は、請求項1ないし5に係る穀物乾燥装置を提供する。すなわち、請求項1に係る穀物乾燥装置は、乾燥機本体の上段に穀物貯留槽、中段に通風乾燥部、下段に穀物取出槽をそれぞれ設け、穀物貯留槽に貯留した穀物を通風乾燥部、穀物取出槽、穀物貯留槽の経路で循環流動させながら乾燥する穀物乾燥装置において、通風乾燥部は、通気壁により形成された複数の熱風供給胴と、通気壁により形成された複数の排風胴を交互に対向配置して乾燥通路をなし、乾燥通路を構成する熱風供給胴は熱風供給室に、かつ排風胴は排風室にそれぞれ連通していて、排風室の一端側には吸引送風機を備えており、前記排風室は、吸引送風機を備えた一端側から前方側に向かって漸次断面積が小さくなるように絞り風洞をなしていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に係る穀物乾燥装置は、請求項1記載の構成において、穀物取出槽内には、通風乾燥部から流下する穀物に遠赤外線を照射する遠赤外線放射体を設け、この遠赤外線放射体は乾燥の熱源となるバーナを備えており、乾燥通路を構成する熱風供給胴が連通している熱風供給室に、遠赤外線放射体の燃焼排熱気を吸引流通させるように構成したことを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に係る穀物乾燥装置は、請求項2記載の構成において、穀物に遠赤外線を照射する遠赤外線放射体は、円筒形であってその一端の軸心にバーナの炎熱放射筒を臨ませ、かつ他端の軸心に燃焼熱気の排気筒を接続して軸心を中心にして回転する構成とし、遠赤外線放射体の一方の回転軸受部から熱風供給室に遠赤外線放射体の燃焼排熱気を吸引流通させるように構成したことを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に係る穀物乾燥装置は、請求項1、2または3記載の構成において、吸引送風機を備えた一端側から前方側に向かって漸次断面積が小さくなるように絞り風洞をなしている排風室は、その底面が吸引送風機側に向けて下降傾斜させてあることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5に係る穀物乾燥装置は、請求項1、2、3または4記載の構成において、熱風供給室は、外気を吸引流通させる吸引風路をなしていて、熱風供給室内で遠赤外線放射体の燃焼排熱気を吸入外気に混合させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る穀物乾燥装置によれば、通風乾燥部の排風胴が連通している排風室を、吸引送風機を備えた一端側から前方側に向かって漸次断面積が小さくなるように絞り風洞とすることにより、吸引送風機による排風室全体の吸引風量を吸引送風機からの遠近にかかわらず均等にして、通風乾燥部の乾燥通路を流通する乾燥風量のムラと温度分布ムラに起因する穀物の乾燥ムラを無くすことができる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明に係る穀物乾燥装置の縦断面図、図2は同上穀物乾燥装置の一部を破断して示す斜視図、図3は同上平断面図、図4は同上一部の斜視図、図5は本発明の他の実施の形態に係る穀物乾燥装置の平断面図である。
【0014】
図1ないし図4において、1は乾燥機本体であって、乾燥機本体1の上段には穀物貯留槽2が、中段には通風乾燥部3が、さらに下段には穀物取出槽4がそれぞれ設けられている。穀物取出槽4の下部にはその前後方向全長にわたる穀物搬出コンベア5が設けられており、穀物搬出コンベア5と穀物貯留槽2の上方の上部コンベア6間は昇降機7によって連絡されていて、穀物搬出コンベア5、昇降機7および上部コンベア6を介して、穀物貯留槽2、通風乾燥部3、穀物取出槽4、穀物貯留槽槽2の経路で穀物が循環されるように構成されている。
【0015】
上記通風乾燥部3は、多孔状の通気壁により形成された複数の熱風供給胴8と、多孔状の通気壁により形成された複数の排風胴9を交互に対向配置して乾燥通路10をなしており、乾燥通路10を構成する熱風供給胴8は熱風供給室11に、かつ排風胴9は排風室12にそれぞれ連通していて、排風室12の一端側には吸引送風機13を備えている。
【0016】
前記排風室12は、吸引送風機13を備えた一端側から前方側に向かって漸次断面積が小さくなるように絞り形状の風洞をなしている。図1ないし図3及び図5に示す実施の形態では、排風室12の外側側面壁14を吸引送風機13側から前方に向けて内側に近づく斜面状をなすように設けて吸引送風機13を備えた一端側から前方側に向かって漸次断面積が小さくなるように形成している。
【0017】
また、吸引送風機13を備えた一端側から前方側に向かって漸次断面積が小さくなるように絞り風洞をなしている排風室12は、その底面15が吸引送風機13側に向けて下降傾斜させるとともに内側壁面25は吸引送風機13側から前方側に向けて外側に近づく斜面状をなし(図4参照)、排風室12の底面15は図示のように平坦な傾斜面状のほか凹面円弧状や溝状などの傾斜面とすることができる。
【0018】
穀物取出槽4は、その上部両側から穀物搬出コンベア5の搬送樋にかけて傾斜する流穀板と両側壁とで囲まれて形成されている。穀物取出槽4内には、遠赤外線放射体16が配設されており、この遠赤外線放射体16は、穀物取出槽4の前後方向略全長にわたる円筒形のものである。この遠赤外線放射体16から放射される遠赤外線は、通風乾燥部3の乾燥通路10から繰出ロール17の回転により繰り出されて、流穀板面上を穀物が散粒状ないし薄層状に流下する穀物に照射される。遠赤外線放射体16の一端には、ガンタイプのバーナ18の火炎放射筒19が軸心に臨ませてあり、遠赤外線放射体16の排気側には排気筒20が軸心に接続されている。
【0019】
遠赤外線放射体16は、両端の回転軸受部によって回転自在となっており、遠赤外線放射体16はモータまたは乾燥機本体の一部の回転体から動力を得て低速で連続回転するようになっている。ガンタイプのバーナ18と排気筒20は遠赤外線放射体16の回転を妨げない構造でそれぞれ装備されている。
【0020】
前記遠赤外線放射体16の排気側に接続された排気筒20は、熱風供給室11に接続されており、遠赤外線放射体16に設けてあるバーナ18は、乾燥の所要熱源、すなわち遠赤外線の放射と温風を生じさせるための全熱量を満たすものである。熱風供給室11の前記排気筒20を接続した部分には補助的に外気を吸入するための外気取入口21が開口している。すなわち、熱風供給室11は、外気取入口21から取り入れた外気を吸引流通させる吸引風路をなしていて、熱風供給室11内では遠赤外線放射体16の燃焼排熱気を吸入外気に混合させて、通風乾燥部3に乾燥熱風を供給するようになっている。
【0021】
本発明に係る穀物乾燥装置は、図5に示すように構成することができる。すなわち、この本発明の他の実施の形態では、熱風供給室11もその外気および遠赤外線放射体16からの排熱気取り入れ側から前方に向かって漸次断面積が小さくなるように絞り風洞を形成してあり、熱風供給室11はそのために斜面状をなす外側側面22を設けている。なお、その他の構成は図1ないし図4に示すものと同構成である。
【0022】
なお図2ないし図5に示す穀物乾燥装置は、排風室12の吸引送風機13の設置面と、熱風供給室11の外気取入口21を乾燥機本体1の同一側面に備えた構成を現したものである。
【0023】
ガンタイプバーナ18の燃焼によって発生した燃焼風は、遠赤外線放射体16から排気筒20を経て外気取入口21から熱風供給室11に侵入し、吸引送風機13によって外気取入口21から吸引される外気と熱風供給室11内で混合されて乾燥風を成し、熱風供給胴8、乾燥通路10、排風胴9を通り排風室12へ吸引され機外へ排出される構成となっている。
【0024】
通常であっては、吸引送風機13と外気取入口21を同一面上に備えた場合においては、外気取入口13と吸引送風機13を備える側面に近い熱風供給胴8、乾燥通路10、排風胴9を集中的に乾燥風が流通してしまうが、排風室12は、底面15と外側側面壁14か内側壁面25のどれかが傾斜して、更に熱風供給室11の外側側面壁22が傾斜面となって、吸引送風機13と外気取入口21を備える面からそれぞれの断面がその面積を減少させているので、熱風供給室11内の全域にわたって均一に複数の熱風供給胴8の全てに均等に乾燥風の風量を流通させることが可能となるほか、排風室12、熱風供給室11の断面積を減少させた部分において、その風速を早くすることを可能としている。
【0025】
なお、図4に示すように吸引送風機13側に対向する排風室12の前面壁23の一部に開度調節可能な補助吸気口24を設けることにより底面15付近の空気流が補助吸気口24から吸入された空気によって付勢されるため、塵埃等が排風とともに機外に排出され底面15上に堆積することをより確実に防止できる。また、排風室12の外側側面壁14は着脱可能な構成にしておくかまたは外側側面壁14に開閉可能な点検口を備えているとよい(図示せず)。
【0026】
本発明に係る穀物乾燥装置によれば、遠赤外線放射体16により被乾燥穀物に遠赤外線を照射することにより、穀物の内部を比較的短時間に加温して水分を表面に移行させ、かつ被乾燥穀物の表面に対する通風により被乾燥穀物の表面から水分を速やかに蒸発させて被乾燥穀物を比較的短時間で効率よく乾燥することができる。
【0027】
そして、本発明に係る穀物乾燥装置によれば、通風乾燥部3の排風胴9が連通している排風室12を、吸引送風機13を備えた一端側から前方側に向かって漸次断面積が小さくなるように絞り風洞としてあることにより、吸引送風機13による排風室12内の全体の吸引風量を吸引送風機13からの遠近にかかわらず均等に保つことができる。このため、通風乾燥部3の乾燥通路10を流通する乾燥風量のムラと温度分布のムラに起因する穀物の乾燥ムラを無くすことができる。
【0028】
また、本発明に係る穀物乾燥装置によれば、排風室12内の吸引送風機13側から離れた位置でも十分な風量が保たれると共に、吸引送風機13の前方側に向かって漸次断面積が小さくなってその風速を増しているので、吸引送風機13から離れた排風室12の場所であっても、底部15に塵埃等の堆積を防止することを可能とする。特に図4に示す底部15を吸引送風機13側に向けて下降傾斜させる構成と、調節可能な補助空気口24を備えることによって、その塵埃堆積防止効果を確実なものと出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る穀物乾燥装置全体の縦断面図である。
【図2】同上穀物乾燥装置の一部を破断して示す斜視図である。
【図3】同上平断面図である。
【図4】同上一部の斜視図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係る穀物乾燥装置の平断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 乾燥機本体
2 穀物貯留槽
3 通風乾燥部
4 穀物取出槽
5 穀物搬出コンベア
6 上部コンベア
7 昇降機
8 熱風供給胴
9 排風胴
10 乾燥通路
11 熱風供給室
12 排風室
13 吸引送風機
14 外側側面壁
15 底面
16 遠赤外線放射体
17 繰出ロール
18 ガンタイプのバーナ
19 火炎放射筒
20 排気筒
21 外気取入口
22 外側側面
23 前面壁
24 補助吸気口
25 内側壁面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥機本体の上段に穀物貯留槽、中段に通風乾燥部、下段に穀物取出槽をそれぞれ設け、穀物貯留槽に貯留した穀物を通風乾燥部、穀物取出槽、穀物貯留槽の経路で循環流動させながら乾燥する穀物乾燥装置において、
通風乾燥部は、通気壁により形成された複数の熱風供給胴と、通気壁により形成された複数の排風胴を交互に対向配置して乾燥通路をなし、
乾燥通路を構成する熱風供給胴は熱風供給室に、かつ排風胴は排風室にそれぞれ連通していて、排風室の一端側には吸引送風機を備えており、
前記排風室は、吸引送風機を備えた一端側から前方側に向かって順次断面積が小さくなるように絞り風洞をなしている
ことを特徴とする穀物乾燥装置。
【請求項2】
穀物取出槽内には、通風乾燥部から流下する穀物に遠赤外線を照射する遠赤外線放射体を設け、この遠赤外線放射体は乾燥の熱源となるバーナを備えており、
乾燥通路を構成する熱風供給胴が連通している熱風供給室に、遠赤外線放射体の燃焼排熱気を吸引流通させるように構成したことを特徴とする請求項1記載の穀物乾燥装置。
【請求項3】
穀物に遠赤外線を照射する遠赤外線放射体は、円筒形であってその一端の軸心にバーナの炎熱放射筒を臨ませ、かつ他端の軸心に燃焼熱気の排気筒を接続して軸心を中心にして回転する構成とし、遠赤外線放射体の一方の回転軸受部から熱風供給室に遠赤外線放射体の燃焼排熱気を吸引流通させるように構成したことを特徴とする請求項2記載の穀物乾燥装置。
【請求項4】
吸引送風機を備えた一端側から前方側に向かって順次断面積が小さくなるように絞り風洞をなしている排風室は、その底面が吸引送風機側に向けて下降傾斜させてあることを特徴とする請求項1、2または3記載の穀物乾燥装置。
【請求項5】
熱風供給室は、外気を吸引流通させる吸引風路をなしていて、熱風供給室内で遠赤外線放射体の燃焼排熱気を吸入外気に混合させることを特徴とする請求項2、3または4記載の穀物乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−292337(P2007−292337A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117966(P2006−117966)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000001465)金子農機株式会社 (53)
【Fターム(参考)】