説明

穀物粉調整品及びその製造方法

【課題】従来から食品製造用原料として供されてきた小麦粉などの穀物粉とバターを主な原料とする穀物調整品を作製するにあたり、穀物粉とバターの均一混合を容易にするために取られてきたバターを室温で軟質化して使う方法、バターを加熱し流動化して使用する方法、バター製造機から出てきた直後の結晶が安定しない柔らかいバターを使う方法らが持つ問題を解決する。
【解決手段】 穀物粉とバターを主な原料とする穀物調整品を作製するにあたり、低温で固形状を呈するバターを、暖房ならびに冷房機能を持つ空気循環型室温調整設備を施した室内で軟質化することにより、季節に影響されることなく、1週間以内にバターを軟質化することを可能とし、新鮮な状態を保ったバターと穀物粉を容易に均一混合することを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品製造用原料として好適な穀物粉調整品とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小麦粉などの穀物粉とバターなどを混合し作製される穀物粉とバターを主原料とする穀物粉調整品の作製に使用されるバターは、通常、クリームを原料とし、前処理、結晶化、バター製造機という工程で作製された後、1個当たり25キログラムのブロック形態で包装、箱詰めされ、1パレット当たり40個を積み重ねた状態でパレットに積まれ冷凍保管あるいは冷蔵保管されるが、バターは、通常、低温で固形状を呈するため、そのままの状態では穀物粉との混合は容易ではなく、穀物粉とバターを主原料とする穀物粉調整品を作製するにあたり、穀物粉とバターの均一混合を容易にするために、バターを室温で軟質化して使う方法、バターを加熱し流動化して使う方法、バターを微細化し熱伝導面積を増やして使う方法、バターを固形状のままで伝熱面の温度コントロールが可能である熱伝導設備により軟質化して使う方法、あるいは、バター製造機から出てきた直後の結晶が安定しない柔らかいバターを使う方法などが取られる。
しかし、バターを室温で軟質化して使う方法には、軟質化期間の長さが季節により変わるという問題と、その期間が1週間から8週間程度の長期に渡るという問題に加え、軟質化期間中にバターにカビが繁殖することがあるという問題、バターが発酵臭を持つことがあるという問題、および、穀物粉調整品自身が発酵臭を持ったものとなることがあるという問題がある。さらに、バターを加熱し流動化して使用する方法には、バターの乳化が壊れるという問題がある。また、バター製造機から出てきた直後の結晶が安定しない柔らかいバターを使う方法には、バターを製造していない季節に穀物粉調整品を作製できないという需要供給面での問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、従来から食品製造用原料として供されてきた小麦粉などの穀物粉とバターを主な原料とする穀物調整品を作製するにあたり、穀物粉とバターの均一混合を容易にするために取られてきたバターを室温で軟質化して使う方法、バターを加熱し流動化して使用する方法、バター製造機から出てきた直後の結晶が安定しない柔らかいバターを使う方法らが持つ問題を解決することを課題とする。
即ち、通常1個当たり25キログラムのブロック形態で1パレット当たり40個を積み重ねた状態でパレットに積まれ冷凍保管あるいは冷蔵保管されている固形状を呈するバターを室温で軟質化して使う方法が持つ、軟質化期間の長さが季節により変わるという問題、その期間が1週間から8週間程度の長期に渡るという問題、その軟質化期間中にバターにカビが繁殖することがあるという問題、バターが発酵臭を持つことがあるという問題、作製した穀物粉調整品が発酵臭を持ったものとなることがあるという問題を解決すること、さらに、バターを加熱し流動化して使用する方法が持つバターの乳化が壊れるという問題を解決すること、および、バター製造機から出てきた直後の結晶が安定しない柔らかいバターを使う方法が持つバターを製造していない季節に穀物粉調整品を作製できないという需要供給面での問題を解決すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従来から食品製造用原料として供されてきた低温で固形状を呈するバターを、暖房ならびに冷房機能を持つ空気循環型室温調整設備を施した室内で軟質化することにより、季節に影響されることなく、1週間以内にバターを軟質化することを可能とし、バターを新鮮な状態を保ったまま穀物粉と容易に均一混合することを可能にし、課題を解決する。
【0005】
即ち、本発明の第一は、低温で固形状を呈するバターを暖房ならびに冷房機能を持つ空気循環型室温調整設備を施した室内で軟質化することにより作製する穀物調整品に関する。より好ましい態様は、穀物粉が大麦粉、小麦粉、ライ麦粉、裸麦粉、鳩麦粉、燕麦粉、米粉、玉蜀黍粉、黍粉、蕎麦粉、稗粉、粟粉、高粱粉、大豆粉、小豆粉、緑豆粉のうちから選ばれる少なくとも1種類であり、本発明の第2は、低温で固体状を呈するバターを暖房ならびに冷房機能を持つ空気循環型室温調整設備を施した室内で軟質化することにより作製する穀物調整品の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の穀物粉調整品の作製にあたり、低温で固形状を呈するバターを暖房ならびに冷房機能を持つ空気循環型室温調整設備を施した室内で軟質化することにより、季節に影響されることなく、1週間以内にバターを軟質化することが可能になり、新鮮な状態を保ったバターと穀物粉を容易に均一混合することが可能となる。
本発明により、穀物粉とバターを主な原料とする穀物調整品を作製するにあたり穀物粉とバターの均一混合を容易にするために取られてきた低温で固形状を呈するバターを室温で軟質化して使う方法が持つ軟質化期間の長さが季節により変わるという問題、その期間が1週間から8週間程度の長期に渡るという問題、その軟質化期開中にバターにカビが繁殖することがあるという問題、バターが発酵臭を持つことがあるという問題、作製した穀物粉調整品が発酵臭を持ったものとなることがあるという問題、そして、バターを加熱し流動化して使用する方法が持つバターの乳化が壊れるという問題、および、バター製造機から出てきた直後の結晶が安定しない柔らかいバターを使う方法が持つバターを製造していない季節に穀物粉調整品を作製できないという需要供給面での問題、を解決するという課題を解決する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の穀物粉調整品の作製にあたり、低温で固形状を呈するバターを暖房ならびに冷房機能を持つ空気循環型室温調整設備を施した室内で軟質化することにより、季節に影響されることなく、1週間以内に新鮮な状態を保ちながら軟質化することを可能とし、新鮮な状態を保ったバターと穀物粉を容易に均一混合することが可能とする。
【0008】
穀物粉としては、大麦粉、小麦粉、ライ麦粉、裸麦粉、鳩麦粉、燕麦粉、米粉、玉蜀黍粉、黍粉、蕎麦粉、稗粉、粟粉、高粱粉、大豆粉、小豆粉、緑豆粉が挙げられるが、入手のしやすさの点で小麦粉、米粉が好ましく、需要の大きさの点から小麦粉、米粉が特に好ましい。
【0009】
本発明の穀物粉調整品を作製するための原料混合割合は以下の通りである。
(イ)穀物粉と乳脂肪製品以外にその他原料を使わない場合は、穀物粉50.1%以上、バター49.9%以下である。
(ロ)穀物粉とバター以外にその他原料を使う場合は、バターの配合率およびその他原料の配合率は、穀物粉の配合率を超えてはいけない。
【0010】
本発明の穀物粉調整品を作製するにあたって使用する暖房ならびに冷房機能を持つ空気循環型室温調整設備の風量は多ければ多いほど良く、その室温調整機能は、バターと穀物粉との混合のし易さの点から摂氏12度以上、バターの乳化が壊れないという点から摂氏34度以下の範囲、即ち、摂氏12度以上摂氏34度以下の範囲であることが好ましい。
【0011】
本発明の穀物粉調整品を作製するにあたって軟質化するバターの形状は、熱伝導を促進するという点から小さければ小さいほど良いが、通常の25kgダンボ−ル箱に詰められたままの形態でもかまわない。また、バターをダンボール箱から取り出し内装のみの状態にすることは、熱伝導を促進すると言う点から特に好ましい。
【0012】
本発明の穀物粉調整品を作製するにあたって軟質化されるバターは、循環空気が通り抜けるに十分な空隙を確保するという点から、それぞれが10mm以上離れた状態で置かれることがこの好ましく、それが棚に置かれる場合は、棚を、たとえば、スノコ状や網目状にするなど、バターと空気の接触面積を最大限にする工夫をすることが特に好ましい。
【0013】
本発明の作製方法により軟質化されたバターは、それを穀物粉と混合する前に、視覚、嗅覚などによる官能検査を実施してカビの繁殖や腐敗が無いことを確認してから使うことが好ましく、簡易微生物検査などによって微生物数を確認してから使うことは特に好ましい。
【0014】
本発明の穀物粉調整品において、穀物粉とバターが主要構成成分であるが、本発明の効果を失わない範囲で、従来から食品製造用に使われている成分を添加しても問題ない。その成分としては、水、油脂、ショートニング、イースト、イーストフード、粉乳、脱脂粉乳、練乳、加糖練乳、バターミルク粉、チーズホエー粉、保存料、防ばい剤、殺菌料、酸化防止剤、白色料、小麦粉改良剤、湖料、着香料、香料、発色剤、色調安定剤、着色料、色素、調味料酸味料、甘味料、砂糖、ブドウ糖、乳糖、果糖、麦芽糖、転化糖、蜂蜜、メープルシロップ、糖蜜、水飴、乳化剤、膨張剤、強化剤、塩、卵、卵黄、卵白、全卵粉、卵黄粉、卵白粉、香辛料、食用油脂、食用油、ピーナッツ、アーモンド、アーモンド粉、マカデミアンナッツ、カシューナッツ、栗、松の実、胡桃、ココナッツ、ココア、チョコレート、コーヒー、レーズン、乾燥野菜、桃、杏、梨、桜桃、苺、林檎、レモン、李、ライム、ラズベリー、ブルーベリー、パイナップル、いちじく、なつめやし、柚子の皮、オレンジの皮、レモンの皮、ライムの皮、コーンフレーク、リキュール、ブランディーなどが挙げられる。
【0015】
本発明の穀物粉調整品は、包装あるいは容器充填された後、室温保管、冷蔵保管あるいは冷凍保管され、食品製造用原料として使用あるいは販売される。
【実施例】
【0016】
(実施例1)
冷蔵保管されていた固形を呈する無塩バターを、暖房ならびに冷房機能を持つ空気循環型室温調整設備により摂氏20度に温度コントロールされた室内で5日間軟質化した結果、バターの温度は摂氏20度を示し、軟質化していたが、官能検査でカビの繁殖、腐敗臭は観察されなかった。このバター48部と、小麦粉52部を混合し作製した小麦粉調整品は、発酵臭が無い良好な風味を持った小麦粉調整品となった。
【0017】
(比較例1)
冷蔵保管されていた無塩バターを、摂氏20度から摂氏35度の室温で6週間、軟質化した5個の内の1個に黒緑色のカビの繁殖が観察された。カビの繁殖が観察されなかった4個の内の1個に発酵臭があり、発酵臭を持ったバターを使って実施例1の配合で作製した小麦粉調整品に発酵臭があった。
【0018】
(実施例2)
実施例1で作製した小麦粉調整品240と、薄力粉80グラム、グラニュー糖60グラム、食塩一つまみ、全卵2分の1個、ベーキングパウダー小匙3分の1を良く混合し、しっとりとしたクッキー生地にし、冷蔵庫内で30分間冷やした後、麺棒で5mmの厚さに伸ばし、直径6cmに切り抜いたものを、摂氏160度に熱したオーブンで12分間焼成して作製したアイスボックスクッキーは、発酵臭が無く、良好な風味を持っていた。
【0019】
(実施例3)
大さじ8杯の分量の実施例1で作製した小麦粉調整品を弱火にかけた鍋で炒めた後、あらかじめ室温に暖温度調整しておいた牛乳2カップを少量づつ加え、塩、コショウで味を調えて作製したホワイトソースは、発酵臭が無く、良好な風味を持っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物粉とバターからなる穀物粉調整品。
【請求項2】
穀物粉が、大麦粉、小麦粉、ライ麦粉、裸麦粉、鳩麦粉、燕麦粉、米粉、玉蜀黍粉、黍粉、蕎麦粉、稗粉、粟粉、高粱粉、大豆粉、小豆粉、緑豆粉のうちから選ばれる少なくとも1種類である請求項1記載の穀物粉調整品。
【請求項3】
バターが暖房ならびに冷房機能を持つ空気循環型室温調整設備を施した室内で軟質化されたものであることを特徴とする請求項1−2記載の穀物粉調整品。
【請求項4】
穀物粉が小麦粉である請求項1−3記載の穀物粉調整品。
【請求項5】
請求項3記載の穀物粉調整品の製造方法。
【請求項6】
請求項4記載の穀物粉調整品の製造方法。

【公開番号】特開2006−25774(P2006−25774A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236860(P2004−236860)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(504080249)
【Fターム(参考)】