説明

穀粒の汚染除去を行うための方法

本発明は、乾燥種子、特に小麦粒の汚染除去を、その乾燥種子を汚染除去溶液に接触させることにより、行う方法に関するものであり、溶液は、酢酸、プロピオン酸、その前駆体、およびそれらの混合物のうちから選択された少なくとも1つの汚染除去剤を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒を汚染除去溶液に接触させることにより穀粒、特に小麦穀粒の汚染除去を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康リスクのコントロールは、食品業界では、次第に重要性を増してきていると考えられている。穀物産業の場合、二次加工に関わるメーカーや大量販売に関わる会社は、彼らの仕入れ先に対して、消費者の健康を害する、または生産量もしくは製品の品質に悪影響を及ぼす可能性のある微生物の増殖を制限するために、出発材料(小麦、トウモロコシなど)またはそれらから得られる製品(小麦粉、粗びき粉など)の微生物汚染の防除に関して期待を新たにしている。
【0003】
一次加工産業(小麦製粉産業、トウモロコシ製粉産業)は、微生物フロラが天然に存在する農業出発材料で加工している。
【0004】
そのため、小麦粉製粉産業の特定の場合、例えば、小麦穀粒の細菌集団は、収穫時に104から106個/gの範囲であるが、菌類フロラ(またはカビ)は104個/gのオーダーである。
【0005】
従来、荷受した未加工小麦は、機械的精選(ピュリファイヤー、精選機/分離機、ブラシ、その後の除石機)の複数の段階に通され、すべての植物や無機不純物とともに、不良を示す小麦穀粒が含まれないようにされる。このような物理的処理の結果、こうして「精選済み」小麦が得られる。
【0006】
精選済み小麦は、その後、調質にかけ、すなわち、粉砕の準備が行われる。この準備は湿潤段階と寝かし段階を連続して含む。
【0007】
湿潤段階では、小麦を、荷受した小麦穀粒の含水量に応じて変わる一定量の水と混合する。供給量は、一般的に、小麦1トン当たり水15から60リットルである。湿潤を促進させ、その後の寝かし時間を制限するために、振動吸収材、例えば、Vibronet(登録商標)タイプを使用するのが好ましい。
【0008】
次いで、振動吸収材を使用する場合には8時間、一般的には18から24時間の寝かし時間の間、小麦を寝かす。この寝かし時間は、例えば、小麦が非常に乾燥しているか、または非常に硬い場合には、48時間に達することもある。調質の終わりに、小麦の含水量は、約16.5%に達する(穀粒100グラム当たり水16.5グラム)。
【0009】
次いで、「粉砕」と呼ばれる段階で、小麦の製粉を行う。次いで、分離段階で、製粉された産物、すなわち「粉砕産物」が、種々の粒子画分、すなわち「粗粒ブランド」、「細粒ブランド」、「ミドリングス」、小麦粉に分類される。「粗粒ブランド」、「細粒ブランド」、「ミドリングス」は、製粉ふすまを構成する。
【0010】
小麦粉製粉産業における小麦の処理のさまざまな段階の全フロラに対する影響は、段階に応じて変わる。小麦を精選する段階で、全フロラを約50%減少させる。小麦の湿潤と寝かしで、全フロラとカビが増大する。最後に、粉砕と分離は小麦粉の汚染を低減することに寄与し、細菌フロラは主に製粉ふすまにおいて再度発生することが考えられる。
【0011】
しかし、主要加工産業は、微生物や健康面の質に関する厳しい要求条件に直面している。穀粒の汚染除去および/または産物の粉砕のための新しい技術を探し求める過程で、この産業におけるメーカーに対し一定の関心が寄せられている。
【0012】
以下のようにさまざまなルートが調査されている。
表面における凝縮が温度の上昇をもたらし、低温殺菌効果をもたらす、穀粒の水蒸気処理。
電流通過ネジ(Spirajouリットルe(登録商標))または振動電流通過管により行われるか、または米国特許第6,086,935号で開示されているように、水蒸気がさらに穀粒中に注入されるチャンバ内での間接的加熱により行われる熱処理。
放射線を伴う処理(イオン化、マイクロ波、赤外線)。
オゾンまたは塩素化生成物などの化学試薬の利用に基づく処理。PCT/FR00/03573では、特に、オゾンによる穀粒の一次処理を開示している。
【0013】
これらの処理はすべて、高い資本コストを必要とする、オゾン化反応炉または熱処理システムなどの特定の機器を必要とする。これらは、さらに、既存の製粉所に置かれている工業機器に対する著しい改善も必要となる。
【0014】
したがって、工業的な観点からは、既存の製粉所で使用することができる穀粒の処理のための利用可能な解決手段を用意すると好都合である。この目的のために、これまで、水相に可溶性であり、湿潤段階において穀粒と接触させる化学試薬または化学試薬の組合せに頼ってきた。塩素含有殺菌剤が提案され、使用されてきた。しかし、健康安全面で問題があると思われる著しい量の塩素化誘導体が粉砕産物内に持ち込まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
既存の工場で使用することができ、特定の健康上のリスクを発生しない、小麦の汚染除去を行うための方法が必要とされている。
【0016】
本発明の目的は、このようなニーズに応えることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、この目的は、穀粒を汚染除去溶液と接触させることにより穀粒、特に小麦穀粒の汚染除去を行うための方法により達成され、前記溶液は酢酸、プロピオン酸、対応する過酸、それらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つの汚染除去剤を含むことは注目すべきである。
【0018】
汚染除去剤は、湿潤段階で穀粒に接触させることができる。既存の工場に著しい改変が不要であり、都合がよい。比較すると、オゾン単独による汚染除去の場合、1トンの小麦の汚染除去を効果的に行うためには5から12kgのオゾン量が必要であり、処理コストは10ユーロである。過酢酸の酸化能力は、オゾン(O3)の酸化能力に比べて低いが、過酢酸(PAA)の等価な量は、小麦1トン当たり0.5kgと推定され、小麦1トン当たり約1.5から2.5ユーロのコストである。本発明による方法は、したがって、経済的な観点から特に有用である。
【0019】
それに加えて、酢酸は、食材において保存料として、および/またはその官能特性については調味料として、広く使用されている。プロピオン酸は、さらに、食品添加物として人に消費されている。したがって、粉砕製品に少量の酢酸および/またはプロピオン酸が存在することは、健康安全面の問題が生じない。
【0020】
本発明による方法では、さらに、好ましくは、以下の特徴を示す。
− 前記汚染除去剤は、酢酸である。
− 前記汚染除去溶液は、穀粒1トン当たり、前記汚染除去剤を少なくとも0.5リットル、好ましくは少なくとも1.5リットル、より好ましくは少なくとも3リットル含む。
− 前記汚染除去溶液は、さらに、好ましくは過酢酸、過酸化水素、これらの混合物から選択されるの酸化剤を含む。
− 過酢酸の量は、穀粒1トン当たり0.06リットルより多く、好ましくは穀粒1トン当たり0.15リットルより多く、より好ましくは穀粒1トン当たり0.3リットルより多く、および/または穀粒1トン当たり0.6リットルより少なく、好ましくは穀粒1トン当たり0.5リットルより少なく、それによりコストとにおいを制限する。過酢酸以外の汚染除去剤の総量は、小麦1トン当たり0.3リットル、好ましくは小麦1トン当たり1.2リットル、より好ましくは小麦1トン当たり1.5リットル以上であるのが好ましい。穀粒1トン当たり0.45リットルの過酢酸の量が最適であると考えられる。
− 過酸化水素の量は、穀粒1トン当たり0.5リットルより多い。
− それに加えて、汚染除去を改善するために、前記穀粒は、オゾンに接触させるのが好ましい。好ましくは、前記汚染除去溶液は、溶存オゾンを含む。
− 前記汚染除去溶液は、水と前記汚染除去剤からなる、好ましくは、汚染除去されるべき穀粒1トン当たり3リットルの割合で穀粒と混合される、湿潤性溶液である。
− 前記湿潤性溶液中の前記汚染除去剤の濃度は、重量パーセントで、5%超、好ましくは8%超、および/または20%未満、好ましくは15%未満である。
− 前記穀粒と前記汚染除去溶液は、1時間以上の期間にわたって接触したままにする。好ましくは、前記穀粒と前記汚染除去溶液は、8時間以上の期間にわたって接触したままにする。汚染除去溶液は、次いで、汚染除去と製粉準備の二重の機能を発揮すると好都合である。本発明によるこの方法は、都合のよいことに、小麦粉と製粉ふすまの品質の改善を可能にする。
【0021】
BPMF小麦(フランス製粉製パン用小麦)の1トン分の穀粒の平均外表面積は、約140m2であると考えられる。したがって、L/トン(1トン当たりL)で与えられるデータは、0.140で割って穀粒の表面積のml/m2に変換することができる。
【0022】
したがって、本発明による方法の好ましい特徴によると、
− 前記汚染除去溶液は、前記穀粒の外表面積1平方メートル当たり少なくとも3.6ミリリットル、好ましくは少なくとも10.7ミリリットル、より好ましくは少なくとも21.4ミリリットルの前記汚染除去剤を含む。
− 過酢酸の量は、前記穀粒の外表面積に対し1.1ml/m2、好ましくは2.1ml/m2超、および/または4.3ml/m2未満である。したがって、過酢酸以外の汚染除去剤の総量は、前記穀粒の外表面積に対し2.1ml/m2、好ましくは8.6ml/m2、より好ましくは10.7ml/m2以上であるのが好ましい。前記穀粒の外表面積に対し3.2ml/m2の過酢酸の量が最適であると考えられる。
【0023】
断りのない限り、すべての割合は、重量パーセントである。
【0024】
酢酸を水で希釈したものを使用して小麦を湿潤させる(小麦1トン当たり10%酢酸水溶液約30リットル)ことは、15から18%の穀粒本体の平均含水量により反映される。これは、穀粒の微生物汚染を減らすうえで効果があることを実証している。
【0025】
従来、湿潤段階に続く寝かし段階で、汚染除去溶液の過酸は、大部分分解する。例えば、従来の小麦粉製粉方法の湿潤と寝かし条件の下では、過酢酸(PAA)の半減期は、約30分であるが、湿潤後の寝かし時間は、8時間から24時間、すなわち、半減期の16から48倍である。したがって、過酸残留物の量は、製粉ふすまではきわめて低く、現在の検出技術を使用したのでは小麦粉中で検出不可能である。都合のよいことに、小麦粉の風味は、そのため、本発明による方法により変わることがない。
【0026】
調質から生じる含水量の増大は、本質的に、穀粒の殻において特定されることを見いだすことが可能であった。したがって、汚染除去作用は、穀粒の表面に限局されたままであるが、酸の局所濃度は、穀粒の内部に比べてかなり高い。そのため、穀粒を製粉した後、汚染除去剤は、小麦粉と製粉ふすまとの間に不均一に分配され、小麦粉中の汚染除去剤の含量は、均一分配の平均理論的含量に比べてかなり低い。そのため、都合のよいことに、一般に人の消費を対象にした小麦粉の組成は、本発明による方法によりほとんど変わることがない。
【0027】
製粉ふすま中の汚染除去剤の含量は、小麦粉のそれの10倍のオーダーである。都合のよいことに、この高い含量により、製粉ふすまの保存の状態が改善され、動物の給餌で使用される製粉ふすまに関しては、抗生物質に頼る割合を減らせるという利点が得られる。
【0028】
汚染除去溶液の汚染除去能力を高めるために、それに少なくとも1つの過酢酸、過酸化水素、または過酢酸と過酸化水素の組合せなどの酸化剤を加えることが好ましい。都合のよいことに、これらの酸化剤の分解生成物は食品用途に適合している。
【0029】
水が存在している場合、以下の反応式(1)により過酢酸は加水分解して酢酸と過酸化水素を発生する。
【0030】
(1) CH3CO−O−OH+H2O→CH3−CO−OH+H22
【0031】
過酸化水素は、以下の反応式(2)により、分解して、水と酸素を発生する。
【0032】
(2) H22→H2O+1/2O2
【0033】
従来、小麦粉の製パン性、特にパン生地の固さを改善するために、パン生地の準備時に酸化剤が小麦粉に加えられる。都合のよいことに、酸化剤を汚染除去溶液に添加することで、パン生地に加えられる酸化剤の量が制限され、それにより、パンの製造コストが低減される。
【0034】
オゾンは、さらに、補助酸化剤として使用することもできる。
【0035】
オゾンの作用は、都合のよいことに、本発明による汚染除去溶液を使って湿潤することから生じる穀粒の酸性化により強化される。
【0036】
それに加えて、オゾンは、以下の反応式(3)により酢酸と反応し、過酢酸を形成し、その汚染除去作用は、酢酸の汚染除去作用を補完するものとなっている。
【0037】
(3) CH3CO−OH+O3→CH3CO−O−OH+O2
【0038】
しかし、オゾンの穀粒を処理するために、オゾン発生器を利用できるようにしておく必要がある。
【0039】
オゾンは、気体または液体のルートを介して加えることができる。好ましくは、オゾンは、穀粒の湿潤に使用される(複数の)酸の水溶液中に溶解される。
【0040】
最後に、一方で酢酸および/またはプロピオン酸の組合せ、他方でオゾンとの組合せにより、汚染除去に必要なオゾンの量を減らすことができる。都合のよいことに、処理コストは、それにより低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下の実験室試験は、例示のため、暗黙のうちに制限することなく、提供されている。
【0042】
第1の精選段階の後、BPMF小麦(フランス製粉製パン用小麦)の試料が工場で抽出された。そこで、小麦はすべての不純物が取り除かれ、含水量は約13%となる。
【0043】
次いで、小麦は、適宜1つまたは複数の酸を含む3%の水溶液(小麦1kg当たり30mリットル)を混合して湿潤される。
【0044】
以下の酸が使用された。
・ Proリットルaboが販売しているRP Normapur(登録商標)100%実験室用酢酸。
・ Proリットルaboが販売している、98%のプロピオン酸。
・ Brenntag(登録商標)80%工業用酢酸。
・ VWR Internationaリットルが販売している実験室用過酢酸(純度40%)。
・ Solvary濃度5%工業用過酢酸:Proxitane 5(登録商標)。
・ Solvary濃度15%工業用過酢酸:Proxitane 15(登録商標)、Proxitane 15L(登録商標)。
【0045】
混合は、手作業で、数分間、小麦と水溶液が入ったフラスコを攪拌して行った。その後、工業用小麦粉製粉における寝かし段階をシミュレートするために湿潤調整器を使用して24時間の間、毎分20回転の速さで閉鎖したフラスコを回転させる。
【0046】
次いで、小麦試料を取り出して、微生物分析を行い、汚染除去の有効性を評価する。
【0047】
小麦は、Brabender(登録商標)モデルSenior試験製粉装置を使用して、約45分間粗砕すると、収率は70%である。「収率」という用語は、製粉後得られた小麦粉の量と使用された穀粒の量との比を記述するために使用される。
【0048】
試験製粉装置は粉砕毎に清掃する。小麦粉は、その後、製粉ふすまから分離し、次いで小麦粉試料を取り出して、微生物分析を行い、小麦粉の健康に関する品質に対する穀粒汚染除去の効果を評価する。
【0049】
以下の標準に従って小麦と粉砕産物の微生物学的質が監視された。
・ 全フロラ:標準ISO 7698
・ 糞便大腸菌群:標準フランス規格協会NF V08 017
【0050】
試験毎に、殺菌済み(予め121℃の温度に15分間曝した)希釈液(トリプトン塩)中で試験されるべき試料の試験標本の希釈により母液を調製する。希釈を実施する前に、試料と希釈液を室温にする。その後、殺菌済み状態でStomacher(登録商標)バッグ内で30分間、接触させる。
【0051】
母液の組成は、以下の表1にまとめる。
【0052】
【表1】

【0053】
母液は、穀粒に対しては30秒間2回、小麦粉に対しては60秒間2回、Stomacher(登録商標)を使用して均質化させる。試料の溶解は、10-1の希釈となる。
【0054】
母液1mlを、殺菌希釈液9mlを含む管に加えて、10-2の希釈を得て、次いで、渦均質化またはまたは反転による均質化を実施する。表2に示されている希釈が得られるまで、カスケード希釈を実施する。
【0055】
【表2】

【0056】
試料の溶解と希釈の調製は、ブンゼンバーナーの近くで実施する。
【0057】
希釈管と殺菌ペトリ皿を、きれいな汚染除去された実験室用ベンチトップ上に置く。希釈毎に、それぞれの結果を2回得るように2つのペトリ皿に接種し、識別する(試料の参照、培地、希釈の性質)。さまざまな培地に対し追加の皿を用意し、試料を含む皿と同じ条件の下で培地のみを含む対照皿のインキュベートを行う(培地上の無菌テスト)。
【0058】
使用する培地は、AES Laboratoire(フランス、コンブール)が販売している、すぐ使える培地(200mlフラスコ)である。
【0059】
PCA(プレート・カウント寒天培地)上で全フロラを、YGC(酵母グルコース・クロラムフェニコール)上で酵母とカビを、VRBL(バイオレットレッド胆汁乳糖寒天培地)上で大腸菌を計数する。希釈培地はトリプトン塩である。
【0060】
ストローピペットを使用して、適切な溶液1mlを、対照皿を除くそれぞれの皿に堆積させる。その後、約45℃に冷ました培地約20ml(還流水槽内で予め再生されている寒天培地)をそれぞれの皿に注ぎ込み、穏やかな均質化を実施する。培地が固化したら、蓋の上で皿をひっくり返す。
【0061】
この手順は、追加の段階を必要とするVRBLを除き3つの寒天培地に共通のものである。VRBL培地が固化したら、寒天の第2の層を冷ます(5ml)。培地の固化の後、皿をひっくり返す。次いで、以下の表3に示されている、期間と温度について皿を培養する。
【0062】
【表3】

【0063】
コロニーは、その後、皿全体にわたってコロニー計数法ペンでコーティングする。YGC培地とPCA培地では、1皿当たり最大300コロニーが許容される。VRBL培地では、1皿当たり最大150コロニーが許容される。これらの閾値を超える希釈は不適切であるとみなし、皿を破棄する。
【0064】
従来、試料1グラム当たりの微生物個数は、以下の式を使って計算する。
C/((n1+0.1*n2)*d)
ただし、式中、
・ Cは、すべての皿の上で計数され、2つの連続する希釈で選択されたコロニーの総和である。
・ dは、第1の希釈の程度であり、第2の希釈の程度は0.1*dに等しい。
・ n1:第1の希釈で計数され、選択された皿の枚数である。
・ n2:第2の希釈で計数され、選択された皿の枚数である。
【0065】
例えば、次のようである。
【表4】

試料1グラム当たり(55+33+6+5)/(2+2*0.1)*10-3=45000個の微生物
得られた結果を以下の表にまとめた。
以下の省略記号を使用する。
・ TF:全フロラの計数。
・ TC:全大腸菌類の計数。
・ YM:酵母およびカビの計数。
・ Cw:湿潤水中に組み込まれた産物の濃度。
・ AA:純酢酸の含有量。
・ PAA:純過酢酸の含有量。
・ R:低減度。
【0066】
これらの結果は、コロニー形成単位(CFU)/gで表される。
【0067】
これらの結果から、汚染除去の効果は、必ずしも用量に比例せず、有意な汚染レベルの変動が出現するように思われる。これらの観察結果を説明する以下のような理由が考えられる。
【0068】
・ 湿潤が手動で実施され、その結果自動的に、小麦へのこの産物の適用の均質性に関して変化が生じる。
・ 小麦のサンプリングの不均質または取り扱い作業中の小麦の再汚染の可能性。
・ 微生物学的測定法の精度は、0.5から1 logのオーダーである。測定誤差は、汚染が増えるとともに増大する。
・ 出発小麦の汚染は変動し(制御不可能なパラメータ)、その結果、一方の系列から他方の系列までの間に観察される有効性に違いが生じる得る。
【0069】
これらのさまざまな理由から、試験は、準体系的に繰り返され、計数は、試験毎に正副2回実施された(2回の接種)。
【実施例】
【0070】
実施例1から3は、酢酸水溶液を使って湿潤を用いて小麦に対し実施した試験に関係する。
【0071】
実施例1
【表5】

【0072】
実施例1は、湿潤水中の濃度5%を超える酢酸は、全フロラについては4より大きく、全大腸菌類について10、酵母とカビについては3の低減度をもたらすことを示している。酢酸10%の用量を加えることで、考察対象のフロラに応じて、45から100の低減を得ることが可能である。このよう低減因子は、製粉作業で現在適切に精選技術を使用して得られているものよりかなり大きい。
【0073】
実施例2
【表6】

【0074】
実施例2により、5から10%までの範囲の用量の有効性の評価を精密化することが可能である。8から10%の範囲の用量では、非常に満足の行く低減度、すなわち全フロラに関して約100、全大腸菌類に関して25〜30、酵母とカビに関して10超であることを確認する。
【0075】
実施例3
【表7】

【0076】
実施例3は、市販の酢酸で得られた比較可能な効果を示している。低減度は、上記よりいっそう高く、これは、汚染の初期レベルが高い結果として説明されうる(特に、全大腸菌類と酵母/カビにおいて)ことがわかる。そのため、3リットル/トンでの処理では、実験室での産物と似たフロラのレベルが得られる。
【0077】
実施例4から6は、酢酸水溶液を使って湿潤させた小麦穀粒を粉砕することにより得られる小麦粉に対し実施した試験に関係する。
【0078】
実施例4
【表8】

【0079】
実施例5
【表9】

【0080】
小麦粉に関するこの第2の系列の結果から、低減率は、考察対象のフロラが何であれ、小麦1トン当たり2.4から3リットルの酢酸の量に対し10を超えることが明らかになっている。出発小麦がかなり大きく汚染されているが、本発明の方法では、それにより、十分な微生物学的質の小麦粉を生産することが可能である。
【0081】
実施例6
【表10】

【0082】
実施例6から、Brenntagにより販売されている酢酸を使用した、穀粒1トン当たり酢酸3リットルの用量が特に好ましいことが確認される。そのため、小麦の初期汚染が何であれ、湿潤水中酢酸8から10%の濃度が、残留汚染が非常に低い小麦粉を生産するのに適している。
【0083】
実施例7
実施例7は、酢酸とプロピオン酸の水溶液を使って湿潤された小麦穀粒を粉砕することにより得られる小麦粉に対し実施した試験に関係する。これら2つの酸の組合せは、実験計画(22中心複合計画)を使用して試験された。
【0084】
【表11】

【0085】
実施例7の結果は、それぞれの産物の0.4から1.25%の用量の汚染結果を湿潤水中の重量パーセントとして示している。観察された低減は、全フロラ、酵母/カビ、糞便大腸菌群について5から10分の1である。全大腸菌類に関しては平均して低減は観察されていない。この実施例の統計分析により、さらに、これら2種類の酸による酸性化は小麦粉の汚染の全体的状態を低減するうえで有効であり、プロピオン酸は酵母とカビ、全フロラと全大腸菌類に関して著しい微生物活性を有しており、酢酸は小麦粉の耐熱大腸菌類のレベルを著しく下げることに寄与していることがわかる。
【0086】
実施例8から11は、酢酸と酸化剤、この場合、過酢酸の水溶液を使って湿潤により処理された小麦に対し実施した試験に関係する。
【0087】
実施例8
2種類の実験室用酸が使用された。酢酸の一定用量で加えられた過酢酸の用量の効果を以下の表にまとめた。
【0088】
【表12】

【0089】
これらの結果から、全体として、酢酸の一定用量で過酢酸を加えると、小麦1トン当たり1500mlの酢酸は、殺菌効果は実質的に0であるが、過酢酸の存在下では、全フロラと全大腸菌類について15から200分の1の低減が、酵母とカビについて500分の1未満の低減が観察されうるため、酢酸の汚染除去効果が向上することがわかる。
【0090】
実施例9
この実施例では、単独で使用された、濃縮された実験室用過酢酸の効果が推定された。
【0091】
【表13】

【0092】
全フロラに関して観察された効果は顕著なものである。しかし、全大腸菌類に対する効果および酵母とカビに対する効果は低く、なおいっそう限られた量の酢酸の存在下よりかなり低い(実施例8を参照)。
【0093】
実施例10
小麦に関して最適な汚染除去用量を評価するために、Solvary、Proxitane 5(登録商標)からの工業用過酢酸を使用した。Proxitane 5(登録商標)は、すでに酢酸を含んでいる。
【0094】
【表14】

【0095】
これらの結果から、過酢酸調製の殺菌効果が確認される。さらに、これらは、小麦1トン当たり150から600mlの範囲の過酢酸の濃度と小麦1トン当たり300から1200mlの範囲の濃度について著しい低減を示している。
【0096】
実施例11
小麦に関する試験は、他のさらに濃度の高い(15%)過酢酸調製、Proxitane 15L(登録商標)を評価することにより続けられた。この組成は、Proxitane 5(登録商標)に比べて低レベルの酢酸であることを示している。都合のよいことに、使用した量は、低減できることがわかっている。
【0097】
【表15】

【0098】
湿潤水中で8%の濃度から始めると(小麦1トン当たり360mlのPAA)、小麦について観察された汚染除去は、微生物フロラが何であれ、非常に著しい。
【0099】
実施例12は、酢酸と過酢酸の水溶液を使って湿潤された小麦から得られた小麦から形成された小麦粉に対し実施した試験に関係する。
【0100】
実施例12
試験は、小麦1トン当たり3リットルの用量のProxitane 15L(登録商標)を使用して行った(湿潤水の10%)。2種類の小麦について2系列の試験を実施した。
【0101】
【表16】

【0102】
【表17】

【0103】
これらの結果から、小麦粉は、外皮を取り除いた結果、小麦より汚染を少なくすることが可能であることがわかる。第1系列は、酸による湿潤で得られた小麦粉は、従来の湿潤で得られたものより著しく量が少ない(全フロラと全大腸菌類)ことを示している。第2の系列は、2種類の小麦粉の間の差を明らかにしていない。これは、例えば、測定の不確定性(1 log)により説明することができるが、比較的低い微生物汚染を持つ出発小麦の結果としても説明できる。
【0104】
上記の試験では、これにより、小麦の湿潤時に加えられた過酢酸(小麦1トン当たりProxitane 15L(登録商標)3リットル)で、小麦の非常に著しい微生物汚染除去が可能になることを示している。この効果は、小麦が通常の微生物汚染(全フロラの105〜108、全大腸菌類の103〜104)を有する場合に対応する小麦粉について確認されている。
【0105】
実施例13は、プロピオン酸単独の水溶液を使って(試験1から5)、またプロピオン酸と酢酸の混合物を含む水溶液を使って(試験6から10)湿潤された2003 BPMF小麦について実施した。小麦は非常に乾燥しているので、湿潤液の量は、穀粒1トン当たり40リットルであった。
【0106】
実施例13
【表18】

【0107】
これらの試験では、プロピオン酸を含む水溶液を使って、またもう一度プロピオン酸と酢酸を含む水溶液を使って、小麦穀粒を湿潤させることが有効であることを実証している。
【0108】
高用量では、プロピオン酸は、小麦の官能特性に実質的影響を及ぼす。プロピオン酸の量は、小麦1トン当たり2400ml未満であるのが好ましい。小麦1トン当たり、プロピオン酸約2400mlと酢酸2400mlを湿潤水に加えるのが好ましい。
【0109】
もちろん、本発明は、説明されている実施形態に限定されない。
【0110】
特に、この方法を使用することは、小麦の処理に限定されない。食品加工業で使用される穀類はすべて、本発明による方法を使って汚染除去することができる。とりわけ、トウモロコシ、ライ麦、大麦、燕麦、米、または豆類である。
【0111】
本発明による方法は、特に、製粉前の穀粒を湿らせる段階での使用に適している。都合のよいことに、必要な資本コストは、かなり低減される。しかし、本発明による方法は、他の段階でも実施することが可能であろう。
【0112】
本発明による方法は、穀類の処理と加工用の工場を衛生的にする、特に製粉機を衛生的にするために実施することができる。この目的のために、所望の汚染除去レベルに応じて決定される一定用量の汚染除去剤を、体系的に、当該機器と接触することが意図されている穀類に加える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粒を湿潤させる段階と寝かし段階を連続的に含む穀粒、特に小麦穀粒を調質する方法であって、前記湿潤段階において、前記穀粒を、酢酸、プロピオン酸、対応する過酢酸、これらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つの汚染除去剤を含む汚染除去溶液を使って湿潤させることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記汚染除去剤は、酢酸であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記汚染除去溶液は、穀粒1トン当たり少なくとも0.5リットルの前記汚染除去剤を含むことを特徴とする請求項1と2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記汚染除去溶液は、前記穀粒の表面積1平方メートル当たり少なくとも3.6ミリリットルの前記汚染除去剤を含むことを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記汚染除去溶液は、穀粒1トン当たり少なくとも3リットルの前記汚染除去剤を含むことを特徴とする請求項4と5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記汚染除去溶液は、酸化剤も含むことを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記酸化剤は、過酢酸、過酸化水素、これらの混合物から選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記過酢酸の量は、穀粒1トン当たり0.15リットル超であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記過酢酸の量は、穀粒1m2当たり1.1ミリリットル超であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記過酢酸の量は、穀粒1トン当たり0.6リットル未満であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記過酸化水素の量は、穀粒1トン当たり0.5リットル超であることを特徴とする請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記穀粒を、オゾンに接触させることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記汚染除去溶液中の前記汚染除去剤の濃度は、重量パーセントで5%を超えることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記穀粒と前記汚染除去溶液を、8時間を超える期間にわたって接触させたままにすることを特徴とする前記請求項のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−509203(P2008−509203A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525323(P2007−525323)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002074
【国際公開番号】WO2006/021680
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(507047595)
【Fターム(参考)】