説明

穀粒検出装置及び穀粒検出方法

【課題】処理を簡単にする。
【解決手段】穀粒検出装置10では、測定部12において、穀粒Kが一対の回転電極14間を圧砕されつつ通過して、測定値が測定される。次に、増幅器18が測定値を増幅し、A/D変換器20が測定値を変換値に変換する。さらに、CPU22が、変換値からA/D値を生成し、A/D値に対してローパスフィルタ処理を行って処理値を生成し、基準値以下の処理値を埋めて基準値を超える処理値を穀粒Kの検出とする。このように、A/D値に対してローパスフィルタ処理及び基準値以下の処理値を埋める処理を行うことで、A/D値から外来ノイズを除去できる。このため、処理値を微分処理する必要がなく、処理を簡単にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒を検出する穀粒検出装置及び穀粒検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単粒水分計としては、粉砕穀粒測定部が粉砕穀粒の水分に応じた電圧値を求め、A/D変換部が当該電圧値をデジタル値に変換し、スムージング処理部が当該デジタル値をスムージング処理してスムージングデータを生成し、微分処理部が当該スムージングデータを微分処理して微分データを生成し、判定部が当該微分データを基に粉砕穀粒を粒毎に判定するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この単粒水分計では、上述の如く、スムージング処理部がスムージング処理を行うと共に、微分処理部が微分処理を行うことで、電気的ノイズ等が粉砕穀粒の判定処理に影響を与えることが抑制されている。
【0004】
しかしながら、この単粒水分計では、微分処理部が微分処理を行う必要がある。微分処理を良好に行うためには、微分処理部に外来ノイズが侵入するのを遮断する必要がある。そのため、微分処理部全体を金属等の導電性材料のカバーで被覆するなど、ハードウェアにコストがかかるという問題があった。
【特許文献1】特開2001−249098公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、処理を簡単にできる穀粒検出装置及び穀粒検出方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の穀粒検出装置は、穀粒の水分に対応した測定値を測定する測定手段と、前記測定値をデジタル値に変換する変換手段と、前記デジタル値に対してスムージング処理して処理値を生成する処理手段と、基準値以下の前記処理値を穀粒の検出としないと共に前記基準値を超える前記処理値を穀粒の検出とする検出手段と、を備えている。
【0007】
請求項2に記載の穀粒検出装置は、請求項1に記載の穀粒検出装置において、前記処理手段は、前記デジタル値のうちの低域信号を処理値とする。
【0008】
請求項3に記載の穀粒検出装置は、請求項1又は請求項2に記載の穀粒検出装置において、前記検出手段は、前記処理値の前記基準値を超える超越部分が所定の条件を満たす際に当該超越部分を1粒の穀粒として検出する。
【0009】
請求項4に記載の穀粒検出方法は、測定手段が穀粒の水分に対応した測定値を測定し、変換手段が前記測定値をデジタル値に変換し、処理手段が前記デジタル値に対してスムージング処理して処理値を生成し、検出手段が基準値以下の前記処理値を穀粒の検出としないと共に前記基準値を超える前記処理値を穀粒の検出とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の穀粒検出装置では、測定手段が穀粒の水分に対応した測定値を測定し、変換手段が測定値をデジタル値に変換し、処理手段がデジタル値に対してスムージング処理して処理値を生成し、検出手段が基準値以下の処理値を穀粒の検出としないと共に基準値を超える処理値を穀粒の検出とする。
【0011】
ここで、処理手段及び検出手段の処理によって、ノイズを除去できる。このため、処理値を微分処理する必要がなく、処理を簡単にできる。
【0012】
請求項2に記載の穀粒検出装置では、処理手段がデジタル値のうちの低域信号を処理値とする。このため、デジタル値から高域周波数のノイズを除去して、デジタル値に対してスムージング処理できる。
【0013】
請求項3に記載の穀粒検出装置では、処理値の基準値を超える超越部分が所定の条件を満たす際に、検出手段が当該超越部分を1粒の穀粒として検出する。
【0014】
ここで、超越部分は容易かつ正確に検出できる。このため、1粒の穀粒を容易かつ正確に検出できる。
【0015】
請求項4に記載の穀粒検出方法では、測定手段が穀粒の水分に対応した測定値を測定し、変換手段が測定値をデジタル値に変換し、処理手段がデジタル値に対してスムージング処理して処理値を生成し、検出手段が基準値以下の処理値を穀粒の検出としないと共に基準値を超える処理値を穀粒の検出とする。
【0016】
ここで、処理手段及び検出手段の処理によって、ノイズを除去できる。このため、処理値を微分処理する必要がなく、処理を簡単にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1には、本発明の穀粒検出方法が適用されて構成された実施の形態に係る穀粒検出装置10が概略図にて示されている。
【0018】
本実施の形態に係る穀粒検出装置10は、測定手段としての測定部12を備えている。測定部12には、ローラ状の回転電極14が一対設けられており、一対の回転電極14は、それぞれ水平かつ互いに平行に配置されて、隙間があけられた状態で隣設されている。一対の回転電極14は、駆動装置(図示省略)に接続されており、一対の回転電極14は、駆動装置によって、それぞれの隣設部位が下側へ向かう方向へ回転される。これにより、回転される一対の回転電極14間に上側から穀粒Kが1粒ずつ供給(投入、落下)されることで、穀粒Kが一対の回転電極14間を圧砕されつつ通過して、一対の回転電極14間から下側へ排出される。
【0019】
一方の回転電極14には、電源16が接続されており、電源16が一方の回転電極14に所定の電圧を付与することで、測定部12が一対の回転電極14間の電圧値である測定値を測定する。また、一対の回転電極14間を穀粒Kが通過する際における一対の回転電極14間の電圧値は、穀粒Kの水分値(水分含有率)が高くなる程、低くなる。
【0020】
測定部12(他方の回転電極14)には、増幅手段としての増幅器18が接続されており、増幅器18は、測定部12が測定した測定値(測定信号)を増幅する。
【0021】
増幅器18には、変換手段としてのA/D変換器20が接続されており、A/D変換器20は、増幅器18が増幅したアナログ値(アナログ信号)である測定値をデジタル値(デジタル信号)である変換値(変換信号)に変換する。
【0022】
A/D変換器20には、処理手段及び検出手段としてのCPU22が接続されており、CPU22は、A/D変換器20が変換した変換値からデジタル値(デジタル信号)であるA/D値(A/D信号)を演算して生成する。なお、A/D値は、穀粒Kの水分値が高い程、高くなる。
【0023】
さらに、CPU22では、A/D値に対してスムージング処理して、処理値(処理信号)を生成する。具体的には、CPU22では、A/D値に対してローパス(低域通過)フィルタ処理を行うことで、A/D値から高域信号(高周波信号)を除去して、A/D値のうちの低域信号(低周波信号)を処理値にする。このため、A/D値のうちの細かく振動して乱れる外来ノイズである高域信号(図3参照)が、平滑化される(図4参照)。
【0024】
しかも、CPU22では、外来ノイズより高い基準値以下の処理値(ローパスフィルタ処理されたA/D値)を埋める(除去する)ことで、基準値以下の処理値は穀粒Kの検出(測定データ)としないと共に、基準値を超える処理値は穀粒Kの検出(測定データ)とする(図5参照)。
【0025】
また、CPU22では、処理値が基準値を超える超過部分24の処理値H、時間幅W及び面積(処理値Hを時間幅Wの範囲で積分したもの)等に対して、それぞれ閾値が設定されており、1つの超過部分24の処理値H、時間幅W及び面積等がそれぞれの閾値を超える場合に、当該超過部分24を1粒の穀粒Kとして検出する。
【0026】
さらに、CPU22では、1粒の穀粒Kとして検出した超過部分24における処理値Hの最大値に所定の係数を掛けることで、当該穀粒Kの水分値を検出(換算)する。
【0027】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0028】
以上の構成の穀粒検出装置10では、測定部12において、回転される一対の回転電極14間に上側から穀粒K(図3〜図5では水分値11%の籾、図6〜図7では水分値10%の大粒大豆、図8では水分値30%の大麦)が1粒ずつ供給されることで、穀粒Kが一対の回転電極14間を圧砕されつつ通過して、一対の回転電極14間から下側へ排出される。さらに、一対の回転電極14間の電圧値である測定値が測定される。
【0029】
次に、増幅器18において、測定部12が測定した測定値(測定信号)を増幅して、A/D変換器20において、増幅器18が増幅した測定値を変換値(変換信号)に変換する。
【0030】
次に、CPU22において、図3及び図6に示す如く、A/D変換器20が変換した変換値からA/D値(A/D信号)を演算して生成する。さらに、図4に示す如く、A/D値に対してローパスフィルタ処理を行って、A/D値のうちの低域信号を処理値(処理信号)にする。しかも、図5、図7及び図8に示す如く、外来ノイズより高い基準値(例えばA/D値600)以下の処理値(ローパスフィルタ処理されたA/D値)を埋めることで、基準値以下の処理値は穀粒Kの検出としないと共に、基準値を超える処理値は穀粒Kの検出とする。
【0031】
次に、CPU22において、処理値の基準値を超える超過部分24の処理値H、時間幅W及び面積等がそれぞれの閾値を超える場合に、当該超過部分24を1粒の穀粒Kとして検出する。さらに、1粒の穀粒Kとして検出した超過部分24における処理値Hの最大値に所定の係数を掛けることで、当該穀粒Kの水分値を検出する。
【0032】
ところで、測定部12では、一対の回転電極14がアンテナになり、一対の回転電極14から大量の外来ノイズが入ってくる。
【0033】
このため、測定部12において回転される一対の回転電極14間に上側から穀粒Kが供給されない際に、CPU22において、A/D値を生成しても、ローパスフィルタ処理及び基準値以下の処理値を埋める処理を行わないと、図2に示す如く、大量の外来ノイズによるA/D値が生成されて、1粒の穀粒Kを検出する基準が不安定な状態となる。
【0034】
さらに、穀粒Kの水分値は範囲が広く(穀粒Kの抵抗値の範囲が数kΩ〜数MΩであり)、特に穀粒Kの水分値が低い場合(測定値が高くA/D値が低い場合)には、A/D値が外来ノイズに埋もれ易い。
【0035】
このため、CPU22において、A/D値を生成しても、ローパスフィルタ処理及び基準値以下の処理値を埋める処理を行わないと、図3及び図6に示す如く、測定値の他に大量の外来ノイズを含むA/D値が生成されて、大量の外来ノイズに穀粒Kの測定データが埋もれてしまう。
【0036】
ここで、本実施の形態では、CPU22において、生成したA/D値に対してローパスフィルタ処理を行うことで、図4に示す如く、A/D値から高域周波数の外来ノイズを除去した処理値を生成できる。このため、穀粒Kの測定データを検出できる。
【0037】
また、ローパスフィルタ処理した(高域周波数の外来ノイズを除去した)A/D値である処理値には、基準値以下の外来ノイズが含まれている。このため、CPU22において、図5、図7及び図8に示す如く、処理値のうちの基準値以下の処理値を埋めることで、処理値から基準値以下の外来ノイズを除去できる。
【0038】
以上により、A/D値に対してローパスフィルタ処理及び基準値以下の処理値を埋める処理を行うことで、A/D値から外来ノイズを除去できる。このため、処理値を微分処理する必要がなく、処理を簡単にできる。
【0039】
さらに、レベルや周期が一定でない外来ノイズの除去は通常容易ではないが、A/D値に対してローパスフィルタ処理及び基準値以下の処理値を埋める処理を行うことで、A/D値からレベルや周期が一定でない外来ノイズを容易に除去できる。
【0040】
また、外来ノイズを除去するために、アナログのノイズフィルタ回路を、測定部12における一方の回転電極14と電源16との間の電源ラインや、他方の回転電極14と増幅器18との間又は増幅器18とA/D変換器20との間等の信号ラインに入れる必要がない。このため、アナログのノイズフィルタ回路の温度や電圧によって信号が変動したり信号の形が歪んだりすることを防止できる。
【0041】
しかも、金属等の導電性材料のカバーによって穀粒検出装置10(特に測定部12)を被覆して、穀粒検出装置10(特に測定部12)への外来ノイズの侵入を遮断する必要がない。このため、構成を簡単にできると共に、穀粒検出装置10を被覆するカバーの形状や材料の自由度を増すことができる。
【0042】
また、上述の如く、CPU22において、処理値の基準値を超える超過部分24の処理値H、時間幅W及び面積等がそれぞれの閾値を超える場合に、当該超過部分24を1粒の穀粒Kとして検出する。さらに、1粒の穀粒Kとして検出した超過部分24における処理値Hの最大値に所定の係数を掛けることで、当該穀粒Kの水分値を検出する。
【0043】
ここで、超過部分24の処理値H(処理値Hの最大値を含む)、時間幅W及び面積等は、容易かつ正確に検出できる。このため、1粒の穀粒K及び当該穀粒Kの水分値を容易かつ正確に検出できる。
【0044】
また、超過部分24の時間幅Wが小さい場合には、穀粒Kが未熟粒である可能性がある。さらに、低水分の大粒大豆(例えば図6〜図7の水分値10%の大粒大豆)は、測定部12において回転される一対の回転電極14間に上側から供給された際に割れ易く、当該大粒大豆から割れた破片が一対の回転電極14間を当該大粒大豆から分離されて通過し易い。このため、例えば図7に示す如く、超過部分24の処理値H、時間幅W及び面積等の少なくとも1つがそれぞれの閾値を超えない場合に、当該超過部分24(例えば図7の超過部分24A)を1粒の穀粒Kとして検出しないことで、当該未熟粒や破片を除外できて、必要な穀粒Kの測定データのみを収集できる。
【0045】
さらに、図8に示す如く、測定部12において回転される一対の回転電極14間に上側から水分値30%の大麦が供給された際でも、A/D値に対してローパスフィルタ処理及び基準値以下の処理値を埋める処理を行うことで、処理値の基準値を超える超過部分24を良好に検出できる。このため、高水分の穀粒Kであっても、1粒の穀粒Kを適切に検出できると共に、穀粒Kの水分値を適切に検出できる。
【0046】
なお、本実施の形態では、超過部分24の処理値H、時間幅W及び面積等がそれぞれの閾値を超える場合に当該超過部分24を1粒の穀粒Kとして検出する構成としたが、超過部分24の処理値H、時間幅W及び面積等の少なくとも1つがそれぞれの閾値を超える場合に当該超過部分24を1粒の穀粒Kとして検出する構成であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態に係る穀粒検出装置を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る穀粒検出装置において測定部に穀粒が供給されない際における時間とA/D値(ローパスフィルタ処理及び基準値以下の処理値を埋める処理を行わないA/D値)との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の実施の形態に係る穀粒検出装置において測定部に水分値11%の籾が供給された際における時間とA/D値(ローパスフィルタ処理及び基準値以下の処理値を埋める処理を行わないA/D値)との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の実施の形態に係る穀粒検出装置において測定部に水分値11%の籾が供給された際における時間とA/D値(ローパスフィルタ処理を行い基準値以下の処理値を埋める処理を行わないA/D値である処理値)との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態に係る穀粒検出装置において測定部に水分値11%の籾が供給された際における時間とA/D値(ローパスフィルタ処理及び基準値以下の処理値を埋める処理を行ったA/D値である処理値)との関係を示すグラフである。
【図6】本発明の実施の形態に係る穀粒検出装置において測定部に水分値10%の大粒大豆が供給された際における時間とA/D値(ローパスフィルタ処理及び基準値以下の処理値を埋める処理を行わないA/D値)との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の実施の形態に係る穀粒検出装置において測定部に水分値10%の大粒大豆が供給された際における時間とA/D値(ローパスフィルタ処理及び基準値以下の処理値を埋める処理を行ったA/D値である処理値)との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の実施の形態に係る穀粒検出装置において測定部に水分値30%の大麦が供給された際における時間とA/D値(ローパスフィルタ処理及び基準値以下の処理値を埋める処理を行ったA/D値である処理値)との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0048】
10 穀粒検出装置(穀粒検出方法)
12 測定部(測定手段)
20 A/D変換器(変換手段)
22 CPU(処理手段、検出手段)
24 超過部分
24A 超過部分
K 穀粒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粒の水分に対応した測定値を測定する測定手段と、
前記測定値をデジタル値に変換する変換手段と、
前記デジタル値に対してスムージング処理して処理値を生成する処理手段と、
基準値以下の前記処理値を穀粒の検出としないと共に前記基準値を超える前記処理値を穀粒の検出とする検出手段と、
を備えた穀粒検出装置。
【請求項2】
前記処理手段は、前記デジタル値のうちの低域信号を処理値とする請求項1記載の穀粒検出装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記処理値の前記基準値を超える超越部分が所定の条件を満たす際に当該超越部分を1粒の穀粒として検出する請求項1又は請求項2記載の穀粒検出装置。
【請求項4】
測定手段が穀粒の水分に対応した測定値を測定し、
変換手段が前記測定値をデジタル値に変換し、
処理手段が前記デジタル値に対してスムージング処理して処理値を生成し、
検出手段が基準値以下の前記処理値を穀粒の検出としないと共に前記基準値を超える前記処理値を穀粒の検出とする
穀粒検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−48769(P2010−48769A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215468(P2008−215468)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000144898)株式会社山本製作所 (144)
【Fターム(参考)】