説明

積層コイル部品

【課題】コイル導体同士がショートするのを防ぐことが可能な積層コイル部品を提供すること。
【解決手段】コイル導体23〜29は、一端にスルーホール導体41が接続され且つ絶縁体層11の四辺11c〜11fに沿って順に延びる第一導体部分23a〜29aと、第一導体部分23a〜29aの他端から素体の内側に延び且つ端にスルーホール導体41が接続される第二導体部分23b〜29bと、を有する。第一導体部分23a〜29aに接続されるスルーホール導体41と、第二導体部分23b〜29bに接続されるスルーホール導体41とは、第一導体部分23a〜29aの外形ECの異なる対角線D1,D2上に位置する。第二導体部分23b〜29bの長さは、第一導体部分23a〜29aにおける他端まで絶縁体層11の一辺11c〜11fに沿って延びる部分から対角線D1,D2の交点IPまでの長さよりも長い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層コイル部品として、矩形状の複数の絶縁体層を積層することによって形成された素体と、素体内に絶縁体層の積層方向に併置された複数のコイル導体と、を備え、複数のコイル導体の端部同士をスルーホール導体により接続することによりコイルが形成されているものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−192715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大きなインダクタンスを有する積層コイル部品を得ようとする場合、コイル導体により形成されるコイルのターン数を多くすることが考えられる。コイル導体の数(積層数)を増やすことにより、コイルのターン数を多くすることはできるが、素体のサイズが大きくなり、近年、電子部品に求められている小型化の要請に反してしまう。そこで、各コイル導体のターン数を増やすことで、小型化の要請に沿いつつ、コイルのターン数を多くすることが可能となる。たとえば、特許文献1に記載された積層コイル部品では、コイル導体が、略1ターンとされている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された積層コイル部品では、コイル導体の一端に接続されるスルーホール導体の位置、及び、コイル導体の他端に接続されるスルーホール導体の位置が、絶縁体層の積層方向から見て、それぞれ同じ位置とされている。すなわち、スルーホール導体が、絶縁体層の積層方向から見て、2箇所に集中することとなり、スルーホール導体が集中する箇所では、積層コイル部品を製造する際に比較的大きな圧力が作用して、スルーホール導体間に位置する絶縁体層の厚みが薄くなり、コイル導体同士がショートする懼れがある。
【0006】
本発明は、コイル導体同士がショートするのを防ぐことが可能な積層コイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、矩形状の複数の絶縁体層を積層することによって形成された素体と、素体内に絶縁体層の積層方向に併置された複数のコイル導体と、を備え、複数のコイル導体の端部同士をスルーホール導体により接続することによりコイルが形成されている積層コイル部品であって、複数のコイル導体は、一端にスルーホール導体が接続され且つ絶縁体層の四辺に沿って順に延びる第一導体部分と、第一導体部分における一端から絶縁体層の一辺に沿って延びる部分に沿って第一導体部分の他端から素体の内側に延び且つ端にスルーホール導体が接続される第二導体部分と、を有し、第一導体部分の一端に接続されるスルーホール導体と、第二導体部分の端に接続されるスルーホール導体とは、第一導体部分の矩形状を呈する外形の異なる対角線上に位置しており、第二導体部分の長さは、第二導体部分が延びる方向での、第一導体部分における他端まで絶縁体層の一辺に沿って延びる部分から異なる対角線の交点までの長さよりも長いことを特徴とする。
【0008】
本発明では、第一導体部分の一端に接続されるスルーホール導体と、第二導体部分の端に接続されるスルーホール導体とが、第一導体部分の矩形状を呈する外形の異なる対角線上に位置しており、第二導体部分の長さが、第二導体部分が延びる方向での、第一導体部分における他端まで絶縁体層の一辺に沿って延びる部分から異なる対角線の交点までの長さよりも長いことから、第一導体部分と第二導体部分とを有する複数のコイル導体によりコイルを形成する場合、第一導体部分に接続されるスルーホール導体が、上記交点を基準として一方の対角線上の点対称となる位置に分散して配置されることとなり、第二導体部分に接続されるスルーホール導体が、上記交点を基準として他方の対角線上の点対称となる位置に分散して配置されることとなる。すなわち、上記スルーホール導体が、絶縁体層の積層方向から見て、4箇所に分散して配置されることとなる。このため、スルーホール導体が配置された箇所において、積層コイル部品を製造する際に比較的大きな圧力が作用することはない。したがって、スルーホール導体間に位置する絶縁体層の厚みが薄くなり難く、コイル導体同士がショートするのを防ぐことができる。
【0009】
複数のコイル導体は、異なる対角線の交点を基準として互いに点対称の関係を有する第一コイル導体及び第二コイル導体と、第一コイル導体と鏡映の関係を有する第三コイル導体と、第二コイル導体と鏡映の関係を有する第四コイル導体と、を含んでおり、第一、第二、第三、及び第四コイル導体は、積層方向に、第一コイル導体、第三コイル導体、第二コイル導体、第四コイル導体の順に配置されていてもよい。この場合、第一コイル導体と第二コイル導体とが点対称の関係を有すると共に第三コイル導体と第四コイル導体とが点対称の関係を有しているので、積層コイル部品を製造する際に用いるスクリーン製版が第一及び第二コイル導体用のものと第三及び第四コイル導体用のものとの2種類ですむ。したがって、積層コイル部品の製造が複雑化することはない。
【0010】
第一導体部分の外形が、正方形状を呈していてもよい。この場合、積層コイル部品の高さ方向での方向性を無くすことができる。
【0011】
積層方向における素体の両端部にそれぞれ配置される一対の外部電極と、外部電極とコイルのコイル端との間に積層方向に併置され、スルーホール導体により互いに接続された複数の引出導体と、を更に備えており、複数の引出導体を互いに接続するスルーホール導体は、積層方向から見て、異なる対角線の交点に位置していてもよい。この場合、複数の引出導体を互いに接続するスルーホール導体が、積層方向から見て、異なる対角線の交点に位置しているため、積層コイル部品を実装する際の方向性を無くすことができる。このとき、複数の引出導体を互いに接続するスルーホール導体は、第一導体部分に接続されるスルーホール導体及び第二導体部分に接続されるスルーホール導体から離れて位置することとなり、コイル導体同士のショートに対して悪影響を及ぼすことはない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コイル導体同士がショートするのを防ぐことが可能な積層コイル部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る積層コイル部品を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る積層コイル部品に含まれる素体の分解斜視図である。
【図3】第一〜第四コイル導体を示す平面図である。
【図4】本実施形態に係る積層コイル部品の断面構成を説明する図である。
【図5】本実施形態に係る積層コイル部品の断面構成を説明する図である。
【図6】スルーホール導体の位置を説明するための図である。
【図7】比較例に係る積層コイル部品に含まれる素体の分解斜視図である。
【図8】比較例におけるコイル導体を示す平面図である。
【図9】図7のIX−IX線に沿った断面構成を説明する図である。
【図10】スルーホール導体の位置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0015】
まず、図1〜図6を参照して、本実施形態に係る積層コイル部品1の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る積層コイル部品を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係る積層コイル部品に含まれる素体の分解斜視図である。図3は、第一〜第四コイル導体を示す平面図である。図4及び図5は、本実施形態に係る積層コイル部品の断面構成を説明する図である。図6は、スルーホール導体の位置を説明するための図である。図4は、後述する対角線D1に沿った断面構成を示し、図5は、後述する対角線D2に沿った断面構成を示す。
【0016】
積層コイル部品1は、図1に示されるように、略直方体形状を呈する素体2と、素体2の両端部にそれぞれ配置される一対の外部電極4,5と、を備えている。素体2は、外表面として、互いに対向する一対の端面2a,2bと、一対の端面2a,2bを連結するように一対の端面2a,2bの対向方向に沿って延びる4つの側面2c,2d,2e,2fと、を有する。
【0017】
素体2は、図2に示されるように、複数の絶縁体層11が積層されることによって形成されている。各絶縁体層11は、矩形状(本実施形態では、正方形状)を呈しており、図3にも示されるように、各側面2c,2d,2e,2fを画成することとなる四辺11c,11d,11e,11fを有している。各絶縁体層11は、電気絶縁性を有する絶縁体であり、絶縁体グリーンシートの焼結体から構成される。実際の素体2では、各絶縁体層11は、その間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0018】
絶縁体層11は、たとえば、ストロンチウム、カルシウム、アルミナ及び酸化珪素からなるガラスと、アルミナとからなるガラス系セラミックから構成されている。絶縁体層11は、フェライト(たとえば、Ni−Cu−Zn系フェライト、Ni−Cu−Zn−Mg系フェライト、Cu−Zn系フェライト、又はNi−Cu系フェライトなど)から構成されていてもよい。
【0019】
外部電極4は、一方の端面2a全体と、4つの側面2c,2d,2e,2fの一部を覆うように形成されている。外部電極5は、他方の端面2b全体と、4つの側面2c,2d,2e,2fの一部を覆うように形成されている。複数の絶縁体層11の積層方向は、一対の端面2a,2bの対向方向と一致している。したがって、一対の外部電極4,5は、複数の絶縁体層11の積層方向における素体2の両端部にそれぞれ配置されることとなる。
【0020】
各外部電極4,5は、素体2の外表面にAgやPdなどを主成分とする導電性ペーストを付着させた後に焼付け、更に電気めっきを施すことにより形成される。電気めっきには、Ni、Snなどを用いることができる。
【0021】
積層コイル部品1は、図2〜図5に示されるように、複数のコイル導体21と、複数の引出導体31,33と、を備えている。複数のコイル導体21と複数の引出導体31,33とは、素体2内に絶縁体層11の積層方向に併置されている。各コイル導体21及び各引出導体31,33は、たとえばAgやPdなどの導電材を含んでいる。各コイル導体21及び各引出導体31,33は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。各導体21,31,33となる導体パターンは、当該導体パターンに対応する開口が形成されたスクリーン製版を用いて、導電性ペーストをスクリーン印刷することにより形成される。
【0022】
複数のコイル導体21の端部同士は、スルーホール導体41により接続されている。複数のコイル導体21の端部同士がスルーホール導体41により接続されることにより、素体2内にコイルCが形成されることとなる。複数の引出導体31,33は、外部電極4,5とコイルCのコイル端との間に位置しており、スルーホール導体43により互いに接続されている。コイルCのコイル端に位置することとなるコイル導体21と、当該コイル導体21と隣り合う引出導体33とは、スルーホール導体45により互いに接続されている。これらにより、外部電極4,5とコイルCとが電気的に接続されることとなる。
【0023】
複数のコイル導体21は、図3の(a)〜(d)にも示されるように、第一コイル導体23、第二コイル導体25、第三コイル導体27、及び第四コイル導体29を含んでいる。各コイル導体23,25,27,29は、絶縁体層11の積層方向に、第一コイル導体23、第三コイル導体27、第二コイル導体25、第四コイル導体29の順に配置されている。各コイル導体23,25,27,29は、第一導体部分23a,25a,27a,29aと、第二導体部分23b,25b,27b,29bと、を有している。各コイル導体23,25,27,29は、略1ターンのパターンとされている。
【0024】
各第一導体部分23a,25a,27a,29aは、その一端から他端に向けて、絶縁体層11の四辺11c,11d,11e,11fに沿って順に延びている。第一導体部分23aは、その一端から他端に向けて、絶縁体層11の辺11c、辺11e、辺11d、辺11fの順に沿って延びている。第一導体部分25aは、その一端から他端に向けて、絶縁体層11の辺11d、辺11f、辺11c、辺11eの順に沿って延びている。第一導体部分27aは、その一端から他端に向けて、絶縁体層11の辺11e、辺11c、辺11f、辺11dの順に沿って延びている。第一導体部分29aは、その一端から他端に向けて、絶縁体層11の辺11f、辺11d、辺11e、辺11cの順に沿って延びている。
【0025】
各第二導体部分23b,25b,27b,29bは、第一導体部分23a,25a,27a,29aにおける一端から絶縁体層11の一辺11c,11d,11e,11fに沿って延びる部分に沿って、第一導体部分23a,25a,27a,29aの他端から素体2の内側に延びている。第二導体部分23bは、第一導体部分23aにおける一端から絶縁体層11の一辺11cに沿って延びる部分に沿って延びている。第二導体部分25bは、第一導体部分23aにおける一端から絶縁体層11の一辺11dに沿って延びる部分に沿って延びている。第二導体部分27bは、第一導体部分23aにおける一端から絶縁体層11の一辺11eに沿って延びる部分に沿って延びている。第二導体部分29bは、第一導体部分23aにおける一端から絶縁体層11の一辺11fに沿って延びる部分に沿って延びている。
【0026】
各第一導体部分23a,25a,27a,29aの外形ECが、絶縁体層11の積層方向から見て、矩形状(本実施形態では、正方形状)を呈している。各第一導体部分23a,25a,27a,29aの一端は、第一導体部分23a,25a,27a,29aの矩形状を呈する外形ECの一の対角線D1上に位置している。各第二導体部分23b,25b,27b,29bの端は、第一導体部分23a,25a,27a,29aの矩形状を呈する外形ECの上記対角線D1とは異なる対角線D2上に位置している。
【0027】
各第二導体部分23b,25b,27b,29bの長さは、各第二導体部分23b,25b,27b,29bが延びる方向での、第一導体部分23a,25a,27a,29aにおける他端まで絶縁体層11の一辺11c,11d,11e,11fに沿って延びる部分から一対の対角線D1,D2の交点IPまでの長さよりも長く設定されている。第二導体部分23bの長さは、第二導体部分23bが延びる方向での、第一導体部分23aにおける他端まで絶縁体層11の一辺11fに沿って延びる部分から交点IPまでの長さl1よりも長く設定されている。第二導体部分25bの長さは、第二導体部分25bが延びる方向での、第一導体部分25aにおける他端まで絶縁体層11の一辺11eに沿って延びる部分から交点IPまでの長さl2よりも長く設定されている。第二導体部分27bの長さは、第二導体部分27bが延びる方向での、第一導体部分27aにおける他端まで絶縁体層11の一辺11dに沿って延びる部分から交点IPまでの長さl3よりも長く設定されている。第二導体部分29bの長さは、第二導体部分29bが延びる方向での、第一導体部分29aにおける他端まで絶縁体層11の一辺11cに沿って延びる部分から交点IPまでの長さl4よりも長く設定されている。
【0028】
第一コイル導体23と第二コイル導体25とは、交点IPを基準として互いに点対称の関係を有している。第三コイル導体27と及び第四コイル導体29とは、交点IPを基準として互いに点対称の関係を有している。第一コイル導体23と第三コイル導体27とは、鏡映の関係を有している。第二コイル導体25と第四コイル導体29とは、鏡映の関係を有している。
【0029】
第一コイル導体23と第三コイル導体27とは、互いに第二導体部分23b,27bの端同士がスルーホール導体41により接続されている。第三コイル導体27と第二コイル導体25とは、互いに第一導体部分27a,25aの一端同士がスルーホール導体41により接続されている。第二コイル導体25と第四コイル導体29とは、互いに第二導体部分25b,29bの端同士がスルーホール導体41により接続されている。第四コイル導体29と第一コイル導体23とは、互いに第一導体部分29a,23aの一端同士がスルーホール導体41により接続されている。
【0030】
したがって、図6にも示されるように、絶縁体層11の積層方向から見て、第一導体部分23a,25a,27a,29aの一端に接続されるスルーホール導体41は対角線D1上に位置し、第二導体部分23b,25b,27b,29bの端に接続されるスルーホール導体41は対角線D2上に位置しており、それぞれ異なる対角線D1,D2上に位置している。
【0031】
各引出導体31は、上記交点IPに対応する位置に配置されている。引出導体33は、交点IPに対応する位置から第一導体部分23a,29aの一端に対応する位置に向けて延びている。したがって、スルーホール導体43は、図6にも示されるように、絶縁体層11の積層方向から見て、交点IPに対応する位置に配置されている。スルーホール導体45は、絶縁体層11の積層方向から見て、対角線D1上に対応する位置に配置されている。
【0032】
複数のコイル導体21(第一〜第四コイル導体23,25,27,29)により形成されるコイルCのコイル軸芯は、絶縁体層11の積層方向から見て、交点IPと略一致する。積層コイル部品1は、コイルCのコイル軸芯が、外部機器(たとえば、電子部品や基板など)の実装面に対して、略平行となるように外部機器に実装される。
【0033】
以上のように、本実施形態では、第一導体部分23a,25a,27a,29aの一端に接続されるスルーホール導体41と、第二導体部分23b,25b,27b,29bの端に接続されるスルーホール導体41とが、異なる対角線D1,D2上に位置しており、各第二導体部分23b,25b,27b,29bの長さは、各第二導体部分23b,25b,27b,29bが延びる方向での、第一導体部分23a,25a,27a,29aにおける他端まで絶縁体層11の一辺11c,11d,11e,11fに沿って延びる部分から交点IPまでの長さよりも長く設定されている。このため、第一導体部分23a,25a,27a,29aと第二導体部分23b,25b,27b,29bとを有する複数のコイル導体21(第一〜第四コイル導体23,25,27,29)によりコイルCを形成する場合、第一導体部分23a,25a,27a,29aに接続されるスルーホール導体41が、交点IPを基準として対角線D1上の点対称となる位置に分散して配置されることとなり、第二導体部分23b,25b,27b,29bに接続されるスルーホール導体41が、交点IPを基準として対角線D2上の点対称となる位置に分散して配置されることとなる。すなわち、上記スルーホール導体41が、絶縁体層11の積層方向から見て、4箇所に分散して配置されることとなる。このため、スルーホール導体41が配置された箇所において、積層コイル部品1を製造する際に比較的大きな圧力が作用することはない。したがって、スルーホール導体41間に位置する絶縁体層11の厚みが薄くなり難く、コイル導体21(第一〜第四コイル導体23,25,27,29)同士がショートするのを防ぐことができる。
【0034】
ここで、図7〜図10を参照して、本実施形態に対する比較例に係る積層コイル部品の構成を説明する。図7は、比較例に係る積層コイル部品に含まれる素体の分解斜視図である。図8は、比較例におけるコイル導体を示す平面図である。図9は、比較例に係る積層コイル部品の断面構成を説明する図である。図10は、スルーホール導体の位置を説明するための図である。図5は、後述する対角線D1’に沿った断面構成を示す。
【0035】
比較例の積層コイル部品は、図7〜図9に示されるように、複数のコイル導体121と、複数の引出導体131と、を備えている。比較例の積層コイル部品は、上述した本実施形態に係る積層コイル部品1と、複数のコイル導体121の形状に関して相違する。比較例の積層コイル部品が備えるコイルのターン数は、上述した本実施形態に係る積層コイル部品1が備えるコイルCのターン数と同じである。
【0036】
複数のコイル導体121は、図8の(a)及び(b)にも示されるように、第一コイル導体123及び第二コイル導体125を含んでいる。各コイル導体123,125は、絶縁体層11の積層方向に、第一コイル導体123、第二コイル導体125の順に配置されている。各コイル導体123,125は、第一導体部分123a,125aと、第二導体部分123b,125bと、を有している。各コイル導体123,125は、略1ターンのパターンとされている。
【0037】
各第一導体部分123a,125aは、その一端から他端に向けて、絶縁体層11の四辺11c,11d,11e,11fに沿って順に延びている。各第一導体部分123a,125aの外形EC’が、絶縁体層11の積層方向から見て、正方形状を呈している。第一導体部分123a,125aの一端は、第一導体部分123a,125aの外形EC’の一の対角線D1’上に位置している。各第二導体部分123b,125bは、第一導体部分123a,125aの他端から外形EC’の異なる対角線D1’,D2’の交点IP’まで延びている。
【0038】
第一コイル導体123と第二コイル導体125とは、スルーホール導体141により接続されている。したがって、図10にも示されるように、絶縁体層11の積層方向から見て、スルーホール導体141は、対角線D1’上と交点IP’上とに位置している。
【0039】
各引出導体131は、上記交点IP’に対応する位置に配置されている。したがって、引出導体131同士を接続するスルーホール導体143、及び、引出導体131とコイル導体121とを接続するスルーホール導体145も、図10にも示されるように、絶縁体層11の積層方向から見て、交点IP’に対応する位置に配置されている。
【0040】
このように、比較例の積層コイル部品では、複数のコイル導体121(第一コイル導体123及び第二コイル導体125)同士を接続するスルーホール導体141が、絶縁体層11の積層方向から見て、2箇所に集中して配置されることとなる。更に、比較例の積層コイル部品では、引出導体131同士を接続するスルーホール導体143も、交点IP’上に位置することとなる。このため、スルーホール導体141が集中する箇所では、積層コイル部品を製造する際に比較的大きな圧力が作用して、スルーホール導体141間に位置する絶縁体層11の厚みが薄くなり、コイル導体121(第一コイル導体123及び第二コイル導体125)同士がショートする懼れがある。
【0041】
本実施形態では、複数のコイル導体21は、交点IPを基準として互いに点対称の関係を有する第一及び第二コイル導体23,25と、第一コイル導体23と鏡映の関係を有する第三コイル導体27と、第二コイル導体25と鏡映の関係を有する第四コイル導体29と、を含んでおり、各コイル導体23,25,27,29は、絶縁体層11の積層方向に、第一コイル導体23、第三コイル導体27、第二コイル導体25、第四コイル導体29の順に配置されている。この場合には、第一コイル導体23と第二コイル導体25とが点対称の関係を有すると共に第三コイル導体27と第四コイル導体29とが点対称の関係を有しているので、積層コイル部品1を製造する際に用いるスクリーン製版が第一及び第二コイル導体23,25用のものと第三及び第四コイル導体27,29用のものとの2種類ですむ。したがって、積層コイル部品1の製造が複雑化することはない。
【0042】
本実施形態では、第一導体部分23a,25a,27a,29aの外形ECが、正方形状を呈している。これにより、積層コイル部品1の高さ方向での方向性を無くすことができる。
【0043】
本実施形態では、積層コイル部品1は、一対の外部電極4,5と、外部電極4,5とコイルCのコイル端との間に絶縁体層11の積層方向に併置され、スルーホール導体43により互いに接続された複数の引出導体31,33と、を備えており、複数の引出導体31,33を互いに接続するスルーホール導体43は、絶縁体層11の積層方向から見て、交点IPに位置している。これにより、スルーホール導体43が、絶縁体層11の積層方向から見て、交点IPに位置しているため、積層コイル部品1を実装する際の方向性を無くすことができる。このとき、スルーホール導体43は、スルーホール導体41から離れて位置することとなり、コイル導体21(第一〜第四コイル導体23,25,27,29)同士のショートに対して悪影響を及ぼすことはない。
【0044】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0045】
本実施形態では、各第一導体部分23a,25a,27a,29aの外形ECが、絶縁体層11の積層方向から見て、正方形状を呈しているが、これに限られない。各第一導体部分23a,25a,27a,29aの外形ECは、長方形状を呈していてもよい。この場合、各絶縁体層11は、長方形状を呈していてもよい。
【0046】
絶縁体層11の積層数、複数のコイル導体21の積層数、及び複数の引出導体31の積層数は、上述した実施形態における積層数に限られない。
【0047】
本実施形態では、積層コイル部品1として、一対の外部電極4,5が絶縁体層11の積層方向における素体2の両端部にそれぞれ配置された積層コイル部品、いわゆる縦巻構造である積層コイル部品が採用されているが、これに限られない。積層コイル部品1として、一対の外部電極4,5が絶縁体層11の積層方向に直交する方向における素体2の両端部にそれぞれ配置された積層コイル部品、いわゆる横巻構造である積層コイル部品が採用されてもよい。
【0048】
本発明は、積層チップインダクタや積層チップビーズなどの積層コイル部品に適用できる。
【符号の説明】
【0049】
1…積層コイル部品、2…素体、4,5…外部電極、11…絶縁体層、11c,11d,11e,11f…辺、21…コイル導体、23…第一コイル導体、23a…第一導体部分、23b…第二導体部分、25…第二コイル導体、25a…第一導体部分、25b…第二導体部分、27…第三コイル導体、27a…第一導体部分、27b…第二導体部分、29…第四コイル導体、29a…第一導体部分、29b…第二導体部分、31,33…引出導体、41,43,45…スルーホール導体、C…コイル、D1,D2…対角線、EC…外形、IP…交点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の複数の絶縁体層を積層することによって形成された素体と、前記素体内に前記絶縁体層の積層方向に併置された複数のコイル導体と、を備え、前記複数のコイル導体の端部同士をスルーホール導体により接続することによりコイルが形成されている積層コイル部品であって、
前記複数のコイル導体は、一端にスルーホール導体が接続され且つ前記絶縁体層の四辺に沿って順に延びる第一導体部分と、前記第一導体部分における前記一端から前記絶縁体層の一辺に沿って延びる部分に沿って前記第一導体部分の他端から前記素体の内側に延び且つ端にスルーホール導体が接続される第二導体部分と、を有し、
前記第一導体部分の前記一端に接続される前記スルーホール導体と、前記第二導体部分の前記端に接続される前記スルーホール導体とは、前記第一導体部分の矩形状を呈する外形の異なる対角線上に位置しており、
前記第二導体部分の長さは、前記第二導体部分が延びる方向での、前記第一導体部分における前記他端まで前記絶縁体層の一辺に沿って延びる部分から前記異なる対角線の交点までの長さよりも長いことを特徴とする積層コイル部品。
【請求項2】
前記複数のコイル導体は、前記異なる対角線の前記交点を基準として互いに点対称の関係を有する第一コイル導体及び第二コイル導体と、前記第一コイル導体と鏡映の関係を有する第三コイル導体と、前記第二コイル導体と鏡映の関係を有する第四コイル導体と、を含んでおり、
前記第一、前記第二、前記第三、及び前記第四コイル導体は、前記積層方向に、前記第一コイル導体、前記第三コイル導体、前記第二コイル導体、前記第四コイル導体の順に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の積層コイル部品。
【請求項3】
前記第一導体部分の前記外形が、正方形状を呈していることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層コイル部品。
【請求項4】
前記積層方向における前記素体の両端部にそれぞれ配置される一対の外部電極と、
前記外部電極と前記コイルのコイル端との間に前記積層方向に併置され、スルーホール導体により互いに接続された複数の引出導体と、を更に備えており、
前記複数の引出導体を互いに接続する前記スルーホール導体は、前記積層方向から見て、前記異なる対角線の前記交点に位置していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層コイル部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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