積層コンデンサ及び電子機器
【課題】 広帯域にわたっての低インピーダンス化を確実に実現することができる積層コンデンサ及び電子機器を提供する。
【解決手段】 積層コンデンサは、積層体2と、積層体2の両端側に設けられた端子電極3,4とを備えている。積層体2は、内部電極5〜8が誘電体層9を介して交互に積層されてなる構造である。内部電極5は、積層体2の端面2aに引き出され端子電極3と接続される引き出し部10を有し、内部電極6は、積層体2の端面2bに引き出され端子電極4と接続される引き出し部11を有し、内部電極7は、積層体2の側面2c,2dに引き出され端子電極3と接続される引き出し部12を有し、内部電極8は、積層体2の側面2c,2dに引き出され端子電極4と接続される引き出し部13を有している。引き出し部10,11間の距離d1は、引き出し部12,13間の距離d2よりも長くなっている。
【解決手段】 積層コンデンサは、積層体2と、積層体2の両端側に設けられた端子電極3,4とを備えている。積層体2は、内部電極5〜8が誘電体層9を介して交互に積層されてなる構造である。内部電極5は、積層体2の端面2aに引き出され端子電極3と接続される引き出し部10を有し、内部電極6は、積層体2の端面2bに引き出され端子電極4と接続される引き出し部11を有し、内部電極7は、積層体2の側面2c,2dに引き出され端子電極3と接続される引き出し部12を有し、内部電極8は、積層体2の側面2c,2dに引き出され端子電極4と接続される引き出し部13を有している。引き出し部10,11間の距離d1は、引き出し部12,13間の距離d2よりも長くなっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体と内部電極とを積層してなる積層コンデンサ及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の積層コンデンサとしては、例えば特許文献1に記載されているように、大容量のコンデンサと小容量のコンデンサとを複数個並列して一体化し、その一体化したコンデンサに入力電極及び出力電極を設けたものが知られている。
【特許文献1】特開平5−166671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術のように静電容量の異なる複数のコンデンサを一体化して、所望の共振周波数及びインピーダンスを得るのは容易ではない。従って、広帯域にわたり低インピーダンス特性を実現させることは困難である。
【0004】
本発明の目的は、広帯域にわたっての低インピーダンス化を確実に実現することができる積層コンデンサ及び電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の積層コンデンサは、第1内部電極と第2内部電極とが誘電体層を挟んで交互に積層されてなる積層体と、積層体の一端側に設けられた第1端子電極と、積層体の他端側に設けられた第2端子電極とを備え、第1内部電極には、第1端子電極と接続される第1引き出し部が設けられ、第2内部電極には、第2端子電極と接続される第2引き出し部が設けられ、第1内部電極は複数種類有し、各種類の第1内部電極の第1引き出し部の位置が異なっており、各種類の第1内部電極の第1引き出し部と第2引き出し部との距離が異なっていることを特徴とするものである。ここで、第1引き出し部と第2引き出し部との距離とは、第1引き出し部と第1端子電極との接続部と、第2引き出し部と第2端子電極との接続部との間の最短の直線距離をいう。
【0006】
このような積層コンデンサにおいては、第1内部電極を複数種類設けることにより、第1内部電極、第2内部電極及び誘電体層からなるコンデンサ部が複数形成されることとなる。ここで、一般にコンデンサの共振周波数を制御するためには、コンデンサの等価直列インダクタンス(ESL)もしくは静電容量を調整する必要がある。このとき、第1内部電極の第1引き出し部と第2内部電極の第2引き出し部との距離が小さくなるほど、コンデンサの等価直列インダクタンスが低くなり、その結果コンデンサの共振周波数が高くなる。本発明の積層コンデンサでは、各種類の第1内部電極の第1引き出し部と第2内部電極の第2引き出し部との距離が異なっているので、各種類の第1内部電極に対応する各コンデンサ部の等価直列インダクタンスが異なり、結果的に各コンデンサ部の共振周波数が異なるようになる。従って、積層コンデンサは、複数の共振周波数を有することとなる。これにより、広帯域にわたり低インピーダンスとなる積層コンデンサを確実に得ることができる。また、このとき、第1内部電極の種類が多くなるほど、積層コンデンサがもつ共振周波数の数が多くなるため、より広帯域にわたって低インピーダンス化を図ることができる。
【0007】
好ましくは、第2内部電極は複数種類有し、各種類の第2内部電極の第2引き出し部の位置が異なっており、各種類の第1内部電極の第1引き出し部と各種類の第2内部電極の第2引き出し部との距離が異なっている。この場合には、第1内部電極及び第2内部電極の種類が多くなるほど、積層コンデンサがもつ共振周波数の数が多くなるため、より広帯域にわたっての低インピーダンス化を確実に実現することができる。
【0008】
また、好ましくは、複数種類の第1内部電極の少なくとも1種類は、積層体の同一層内で複数の内部電極に分割されており、分割された各内部電極は第1引き出し部を有し、分割された各内部電極の面積が異なっている。この場合には、分割された複数の内部電極に対応してコンデンサ部が複数形成されるため、第1内部電極の層数を増大させること無く、積層コンデンサがもつ共振周波数を増やし、より広帯域にわたって低インピーダンス化を図ることができる。
【0009】
また、複数種類の第1内部電極は、積層体の同一層内に形成されていても良い。この場合には、第1内部電極の層数を最小限に抑えながらも、積層コンデンサに複数の共振周波数をもたせることができる。これにより、積層コンデンサの小型化を図りつつ、広帯域にわたって低インピーダンス化を図ることができる。
【0010】
このとき、各種類の第1内部電極の面積が異なっていることが好ましい。このように各種類の第1内部電極の面積が異なることで、各種類の第1内部電極に対応する各コンデンサ部の等価直列インダクタンスだけでなく各コンデンサ部の静電容量も異なるようになる。従って、各コンデンサ部の共振周波数をより細かく制御することが可能となる。
【0011】
また、本発明は、回路基板と、回路基板に実装された積層コンデンサとを備えた電子機器であって、積層コンデンサは、第1内部電極と第2内部電極とが誘電体層を挟んで交互に積層されてなる積層体と、積層体の一端側に設けられた第1端子電極と、積層体の他端側に設けられた第2端子電極とを備え、第1内部電極には、第1端子電極と接続される第1引き出し部が設けられ、第2内部電極には、第2端子電極と接続される第2引き出し部が設けられ、第1内部電極は複数種類有し、各種類の第1内部電極の第1引き出し部の位置が異なっており、各種類の第1内部電極の第1引き出し部と第2引き出し部との距離が異なっており、積層コンデンサは、第1内部電極及び第2内部電極が回路基板に対して縦置き状態となるように回路基板に実装されていることを特徴とするものである。
【0012】
このような電子機器においては、積層コンデンサに第1内部電極を複数種類設けることにより、第1内部電極、第2内部電極及び誘電体層からなるコンデンサ部が複数形成されることとなる。このとき、各種類の第1内部電極の第1引き出し部と第2内部電極の第2引き出し部との距離が異なっているので、各種類の第1内部電極に対応する各コンデンサ部の等価直列インダクタンスが異なり、結果的に各コンデンサ部の共振周波数が異なるようになる。従って、積層コンデンサは、複数の共振周波数を有することとなる。これにより、広帯域にわたり低インピーダンスとなる積層コンデンサを確実に得ることができる。
【0013】
また、積層コンデンサが回路基板に実装された状態では、回路基板から第1端子電極を通って第1内部電極の第1引き出し部に電流が流れるか、或いは回路基板から第2端子電極を通って第2内部電極の第2引き出し部に電流が流れるようになる。このとき、第1内部電極及び第2内部電極が回路基板に対して縦置き状態となっているので、回路基板から各層の第1内部電極または第2内部電極に流れる電流の流路を短くすることができる。これにより、積層コンデンサの等価直列インダクタンスを低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、積層コンデンサについて、広帯域にわたっての低インピーダンス化を確実に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係わる積層コンデンサ及び電子機器の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係わる積層コンデンサの第1の実施形態を示す斜視図である。同図において、本実施形態の積層コンデンサ1は、直方体形状(完全な直方体形状だけでなく略直方体形状も含む)の積層体2と、この積層体2の長手方向の一端側に設けられた端子電極3と、積層体2の長手方向の他端側に設けられた端子電極4とを備えている。
【0017】
端子電極3は、積層体2の一端面及び積層体2の4つの側面における一端面側部分を覆うように設けられ、端子電極4は、積層体2の他端面及び積層体2の4つの側面における他端面側部分を覆うように設けられている。端子電極3,4は、例えばCuやAg等の焼付電極層上にNiめっき層及びSnめっき層を順に形成してなるものである。
【0018】
図2は、積層体2の分解斜視図である。同図において、積層体2は、形状の異なる複数種類(ここでは4種類)の内部電極(内部電極層)5〜8が複数ずつ上から誘電体層9を介して交互に積層されてなる構造を有している。積層体2の最上部及び最下部には、誘電体層9が積層されている。内部電極5〜8は、例えばNiやNi合金等で形成されている。誘電体層9は、例えばBaTiO3系セラミック等の誘電体材料で形成されている。
【0019】
図2及び図3に示すように、内部電極5は、積層体2の一方の端面2aに引き出され端子電極3と接続される引き出し部10を有している。内部電極6は、積層体2の他方の端面2bに引き出され端子電極4と接続される引き出し部11を有している。内部電極7は、積層体2の対向する側面2c,2dにそれぞれ引き出され端子電極3と接続される1対の引き出し部12を有している。これらの引き出し部12は、側面2c,2dにおける互いに対応する位置に引き出されている。内部電極8は、積層体2の側面2c,2dに引き出され端子電極4と接続される1対の引き出し部13を有している。これらの引き出し部13は、側面2c,2dにおける互いに対応する位置に引き出されている。内部電極5〜8において誘電体層9を介して互いに重なり合う領域は、矩形状を呈している。
【0020】
このような積層コンデンサ1を製造する場合には、まずBaTiO3系セラミック等のセラミック粉体、有機バインダ及び溶剤を含むセラミックペースト(誘電体ペースト)を例えばドクターブレード法によりPETフィルム上に塗布することにより、上記の誘電体層9となる長方形状のグリーンシートを複数枚作製する。続いて、グリーンシートを乾燥させた後、例えばスクリーン印刷法を用いて、グリーンシートの上面に上記の内部電極5〜8となる電極パターンを形成する。続いて、電極パターンが形成されたグリーンシート及び単なるグリーンシートを所定の順序で複数枚積層することにより、グリーン積層体を形成する。続いて、グリーン積層体をプレス加工した後、グリーン積層体の脱バインダ処理及び焼成処理を行うことにより、上記の積層体2を得る。最後に、例えばペースト浸漬法及び電気めっき法により、積層体2に端子電極3,4を形成する。以上により、上記の積層コンデンサ1が完成する。
【0021】
このようにして作製された積層コンデンサ1においては、互いに異極性となる内部電極5,6と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC1が形成され、互いに異極性となる内部電極7,8と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC2が形成される。
【0022】
ところで、コンデンサの等価直列インダクタンス(ESL)をL、静電容量をCとすると、コンデンサの共振周波数frは、下記式で表される。
【数1】
【0023】
従って、コンデンサの等価直列インダクタンスLや静電容量Cの値を変えることで、コンデンサの共振周波数frを変えることができる。このとき、異極性となる2つの内部電極の引き出し部間の距離が小さくなるほど、等価直列インダクタンスLが低くなるため、共振周波数frが高くなる。
【0024】
本実施形態の積層コンデンサ1では、内部電極5の引き出し部10は積層体2の端面2aに引き出され、内部電極5と同極の内部電極7の引き出し部12は積層体2の側面2c,2dに引き出されているので、引き出し部10,12の形成位置は当然異なっている。内部電極6の引き出し部11は積層体2の端面2bに引き出され、内部電極6と同極の内部電極8の引き出し部13は積層体2の側面2c,2dに引き出されているので、引き出し部11,13の形成位置も当然異なっている。
【0025】
コンデンサC1における引き出し部10,11間の距離d1は、コンデンサC2における引き出し部12,13間の距離d2よりも長くなっている。具体的には、引き出し部10,11間の距離d1は、引き出し部10と端子電極3との接続点と、引き出し部11と端子電極4との接続点との間の最短直線距離をいい、引き出し部12,13間の距離d2は、引き出し部12と端子電極3との接続点と、引き出し部13と端子電極4との接続点との間の最短直線距離をいう。
【0026】
このため、コンデンサC2の等価直列インダクタンス(ESL)がコンデンサC1のESLよりも低くなるので、上記式から、コンデンサC2の共振周波数がコンデンサC1の共振周波数よりも高くなる。
【0027】
具体的には、積層コンデンサ1の周波数−インピーダンス特性は、図4に示すようなものとなる。図4に示すグラフにおいて、横軸は周波数を表し、縦軸はインピーダンスを表している。グラフ中の細かい破線は、コンデンサC1単体の特性(共振周波数fr1)を表しており、粗い破線は、コンデンサC2単体の特性(共振周波数fr2)を表している。従って、積層コンデンサ1の周波数−インピーダンス特性としては、コンデンサC1単体でのインピーダンスの共振点とコンデンサC2単体でのインピーダンスの共振点とを通るものとなる(グラフ中の実線参照)。つまり、積層コンデンサ1は、2つの共振周波数fr1,fr2を有することとなる。
【0028】
従って、本実施形態の積層コンデンサ1にあっては、特に静電容量の異なる2つのコンデンサを一体化させる構造としなくても、共振周波数fr1,fr2を含む広い周波数帯域にわたってインピーダンスが低くなる。これにより、広周波数帯域にわたり低インピーダンス特性を有する積層コンデンサ1を構造的にも製造的にも比較的簡単に実現することができる。
【0029】
図5は、上記の積層コンデンサ1を含む電子機器を示す斜視図である。同図において、電子機器14は、回路基板15と、この回路基板15に実装された積層コンデンサ1とを備えている。回路基板15には、積層コンデンサ1の端子電極3,4とそれぞれ電気的に接続される電極パターン16,17が設けられている。積層コンデンサ1は、内部電極5〜8が回路基板15に対して垂直に立った状態(縦置き状態)となるように回路基板15に実装されている。
【0030】
このような電子機器14において、例えば積層コンデンサ1の端子電極3を正極(+)側電極とし、端子電極4を負極(−)側電極とすると、回路基板15の電極パターン16から端子電極3を介して内部電極5,7に電流が流れる。
【0031】
ところで、内部電極5〜8が回路基板15に対して通常の横置き状態となるように積層コンデンサ1を回路基板15に実装した場合には、回路基板15に対して内部電極5〜8の高さ位置が高くなるほど、電極パターン16から内部電極5〜8までの電流の流路が長くなるため、積層コンデンサ1のESLの増大につながってしまう。
【0032】
これに対し本実施形態では、内部電極5〜8が回路基板15に対して縦置き状態となっているので、電極パターン16から内部電極5,7に流れる電流の流路長さが内部電極5,7の位置に係わらず同じになる。しかも、内部電極7の引き出し部12は積層体2の側面に引き出されているので、電流が端子電極3から回路基板15側の引き出し部12を通って内部電極7に流れることで、端子電極3から内部電極7への電流の回り込みが少なくて済む。これにより、積層コンデンサ1のESLを低減することができる。
【0033】
図6は、本発明に係わる積層コンデンサの第2の実施形態における内部電極層を示す断面図である。図中、第1の実施形態と同一または同等の要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0034】
同図において、本実施形態の積層コンデンサの積層体2は、第1の実施形態と同様の内部電極6〜8が複数ずつ上から誘電体層9を介して交互に積層されてなる構造を有している。
【0035】
このような積層コンデンサにおいては、互いに異極性となる内部電極6,7と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC1が形成され、互いに異極性となる内部電極7,8と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC2が形成される。従って、第1の実施形態に比べて、内部電極の種類を少なくしつつ、2つのコンデンサC1,C2を形成することができる。
【0036】
コンデンサC1における引き出し部11,12間の距離d1は、コンデンサC2における引き出し部12,13間の距離d2よりも長くなっている。このため、第1の実施形態と同様に、コンデンサC2のESLがコンデンサC1のESLよりも低くなるので、コンデンサC2の共振周波数fr2がコンデンサC1の共振周波数fr1よりも高くなる(前述の図4参照)。従って、積層コンデンサは2つの共振周波数fr1,fr2を有するので、広周波数帯域にわたり低インピーダンス化を図ることができる。
【0037】
図7は、本発明に係わる積層コンデンサの第3の実施形態における内部電極層を示す断面図である。図中、第1の実施形態と同一または同等の要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0038】
同図において、本実施形態の積層コンデンサの積層体2は、内部電極(内部電極層)21〜28が複数ずつ下から誘電体層9を介して交互に積層されてなる構造を有している。
【0039】
内部電極21は、積層体2の端面2aに引き出され端子電極3と接続される引き出し部29を有している。内部電極22は、積層体2の端面2bに引き出され端子電極4と接続される引き出し部30を有している。内部電極23は、積層体2の側面2c,2dに引き出され端子電極3と接続される1対の引き出し部31を有している。内部電極24は、積層体2の側面2c,2dに引き出され端子電極4と接続される1対の引き出し部32を有している。内部電極25は、積層体2の側面2c,2dに引き出され端子電極3と接続される1対の引き出し部33を有している。内部電極26は、積層体2の側面2c,2dに引き出され端子電極4と接続される1対の引き出し部34を有している。内部電極27は、積層体2の側面2c,2dに引き出され端子電極3と接続される1対の引き出し部35を有している。内部電極28は、積層体2の側面2c,2dに引き出され端子電極4と接続される1対の引き出し部36を有している。内部電極21〜28において誘電体層9を介して互いに重なり合う領域は、矩形状を呈している。
【0040】
このような積層コンデンサにおいては、互いに異極性となる内部電極21,22と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC1が形成され、互いに異極性となる内部電極23,24と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC2が形成され、互いに異極性となる内部電極25,26と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC3が形成され、互いに異極性となる内部電極27,28と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC4が形成される。
【0041】
ここで、端子電極3と接続される引き出し部31,33,35の形成位置は、積層体2の長手方向に沿ってずれている。端子電極4と接続される引き出し部32,34,36の形成位置は、積層体2の長手方向に沿ってずれている。このため、コンデンサC1における引き出し部29,30間の距離d1、コンデンサC2における引き出し部31,32間の距離d2、コンデンサC3における引き出し部33,34間の距離d3、コンデンサC4における引き出し部35,36間の距離d4の関係は、下記のようになる。
d1>d2>d3>d4
【0042】
よって、コンデンサC1〜C4の等価直列インダクタンス(ESL)L1〜L4は、下記のような関係を有する。
L1>L2>L3>L4
【0043】
従って、コンデンサC1〜C4の共振周波数fr1〜fr4は、下記の関係を有することになるため、図8に示すような周波数−インピーダンス特性が得られる。
fr1<fr2<fr3<fr4
【0044】
このように積層コンデンサは4つの共振周波数fr1〜fr4を有しているので、第1の実施形態よりも広い周波数帯域にわたって低インピーダンスとなる積層コンデンサを比較的簡単に得ることができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、端子電極3,4と接続される内部電極としてそれぞれ4種類使用したが、端子電極3,4と接続される内部電極の種類としては、それぞれ3種類でも良いし、或いはそれぞれ5種類以上としても良い。
【0046】
図9は、本発明に係わる積層コンデンサの第4の実施形態における内部電極層を示す断面図である。図中、第1及び第3の実施形態と同一または同等の要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
同図において、本実施形態の積層コンデンサの積層体2は、内部電極層41〜47が複数ずつ下から誘電体層9を介して交互に積層されてなる構造を有している。
【0048】
内部電極層41は、第3の実施形態と同様の内部電極22から構成され、内部電極層43は、第3の実施形態と同様の内部電極24から構成され、内部電極層45は、第3の実施形態と同様の内部電極26から構成され、内部電極層47は、第3の実施形態と同様の内部電極28から構成されている。内部電極層42,44,46は、内部電極48から構成されている。内部電極48は、積層体2の端面2a及び側面2c,2dに引き出され端子電極3と接続される引き出し部49を有している。これらの内部電極において誘電体層9を介して互いに重なり合う領域は、矩形状を呈している。
【0049】
内部電極48の引き出し部49は、積層体2の端面2a及び側面2c,2dにU字状に引き出されているので、他の引き出し部よりも大きな幅寸法を有している。このため、例えば内部電極48を正極(+)側電極として使用する場合には、端子電極3の広い領域から効果的に内部電極48に電流が流れ込むようになるため、積層コンデンサのESL低減に寄与することができる。
【0050】
このような積層コンデンサにおいて、互いに異極性となる内部電極48,22(内部電極層42,41)と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC1が形成され、互いに異極性となる内部電極48,24(内部電極層42,43)と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC2が形成され、互いに異極性となる内部電極48,26(内部電極層44,45)と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC3が形成され、互いに異極性となる内部電極48,28(内部電極層46,47)と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC4が形成される。
【0051】
このとき、コンデンサC1における引き出し部49,30間の距離d1、コンデンサC2における引き出し部49,32間の距離d2、コンデンサC3における引き出し部49,34間の距離d3、コンデンサC4における引き出し部49,36間の距離d4の関係は、下記のようになる。
d1>d2>d3>d4
【0052】
つまり、第3の実施形態と同様に、積層コンデンサは4つの共振周波数fr1〜fr4を有しているので、十分広い周波数帯域にわたって低インピーダンス化を図ることができる。
【0053】
なお、上記実施形態では、端子電極4と接続される内部電極として4種類使用したが、端子電極4と接続される内部電極の種類は、もちろん3種類でも良いし、5種類以上でも構わない。
【0054】
図10は、本発明に係わる積層コンデンサの第5の実施形態における内部電極層を示す断面図である。図中、第1の実施形態と同一または同等の要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
同図において、本実施形態の積層コンデンサの積層体2は、内部電極層51〜53が複数ずつ下から誘電体層9を介して交互に積層されてなる構造を有している。
【0056】
内部電極層51は、第1の実施形態と同様の内部電極6から構成され、内部電極層52は、第1の実施形態と同様の内部電極7から構成されている。内部電極層53は、内部電極54,55から構成されている。
【0057】
内部電極54は、積層体2の側面2dに引き出され端子電極4と接続される引き出し部56を有している。内部電極55は、積層体2の側面2cに引き出され端子電極4と接続される引き出し部57を有している。引き出し部57は、引き出し部56に対応する位置に形成されている。内部電極54,55は、実質的に第1の実施形態と同様の内部電極8を2つに分割した構造となっている。また、内部電極54は、内部電極55よりも大きな面積を有している。
【0058】
このような積層コンデンサにおいて、互いに異極性となる内部電極7,6と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC1が形成され、互いに異極性となる内部電極7,54と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC2が形成され、互いに異極性となる内部電極7,55と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC3が形成される。
【0059】
コンデンサC2における引き出し部12,56間の距離d2と、コンデンサC3における引き出し部12,57間の距離d3とは等しくなっている。また、コンデンサC1における引き出し部11,12間の距離d1は、当該距離d2,d3よりも大きい。このため、コンデンサC2のESLとコンデンサC3のESLとは等しく、コンデンサC1のESLはコンデンサC2,C3のESLよりも大きくなる。
【0060】
ただし、コンデンサC2の一部を構成する内部電極54の面積はコンデンサC3の一部を構成する内部電極55の面積よりも大きいので、コンデンサC2の静電容量はコンデンサC3の静電容量よりも大きくなる。
【0061】
その結果、コンデンサC1〜C3の共振周波数fr1〜fr3は、下記のような関係を有するようになるため、図11に示すような周波数−インピーダンス特性が得られる。
fr1<fr2<fr3
【0062】
このように積層コンデンサは3つの共振周波数fr1〜fr3を有しているので、広い周波数帯域にわたって低インピーダンス化を図ることができる。また、内部電極層53は面積の異なる内部電極54,55から構成されているので、内部電極層の層数を必要以上に増やすことなく、共振周波数fr1〜fr3を有する積層コンデンサを得ることができる。
【0063】
なお、上記実施形態では、内部電極層53を2つの内部電極からなる構造としたが、3つ以上の内部電極からなる構造としても良い。また、内部電極層51についても、複数の内部電極からなる構造としても良い。
【0064】
図12は、本発明に係わる積層コンデンサの第6の実施形態における内部電極層を示す断面図である。図中、第1及び第4の実施形態と同一または同等の要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
同図において、本実施形態の積層コンデンサの積層体2は、内部電極層61,62が複数ずつ上から誘電体層9を介して交互に積層されてなる構造を有している。
【0066】
内部電極層61は、第4の実施形態と同様の内部電極48から構成されている。内部電極層62は、積層体2の長手方向に並ぶように形成された内部電極63,64から構成されている。内部電極63は、積層体2の側面2c,2dに引き出され端子電極4と接続される1対の引き出し部65を有している。内部電極64は、積層体2の側面2c,2dに引き出され端子電極4と接続される引き出し部66を有している。また、内部電極63は、内部電極64よりも大きな面積を有している。
【0067】
このような積層コンデンサでは、互いに異極性となる内部電極48,63と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC1が形成され、互いに異極性となる内部電極48,64と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC2が形成される。
【0068】
コンデンサC2における引き出し部49,66間の距離d2は、コンデンサC1における引き出し部49,65間の距離d1よりも長い。このため、コンデンサC2のESLはコンデンサC1のESLよりも大きくなる。しかし、コンデンサC1の一部を構成する内部電極63の面積はコンデンサC2の一部を構成する内部電極64の面積よりも大きくなっているため、コンデンサC1の静電容量はコンデンサC2の静電容量よりも大きくなる。
【0069】
このとき、引き出し部49,65間の距離d1及び引き出し部49,66間の距離d2によるESLの影響に比べて、内部電極63,64の面積による静電容量の影響が大きい場合には、コンデンサC1の共振周波数fr1がコンデンサC2の共振周波数fr2よりも低くなり、結果的に前述の図4に示すような周波数−インピーダンス特性が得られるようになる。
【0070】
このように本実施形態においては、コンデンサC1,C2のESLの調整だけでなく、コンデンサC1,C2の静電容量も適宜調整することにより、適切な2つの共振周波数を有する積層コンデンサを確実に得ることができる。これにより、広い周波数帯域にわたって低インピーダンス化が図られた積層コンデンサを得ることができる。また、2種類の内部電極層61,62だけを用いて、2つの共振周波数を有する積層コンデンサが得られるので、積層コンデンサの簡素化及び小型化を図ることが可能となる。
【0071】
なお、上記実施形態では、内部電極層62を2つの内部電極63,64からなる構造としたが、勿論3つ以上の内部電極からなる構造としても構わない。
【0072】
以上、本発明に係わる積層コンデンサの好適な実施形態について幾つか説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、内部電極の形状や、内部電極の引き出し部の形成位置、形状、数等については、特に上記実施形態には限られない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係わる積層コンデンサの第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示した積層体の分解斜視図である。
【図3】図2に示した内部電極層を示す断面図である。
【図4】図1に示した積層コンデンサの周波数−インピーダンス特性を表すグラフである。
【図5】図1に示した積層コンデンサが回路基板に実装された状態を示す斜視図である。
【図6】本発明に係わる積層コンデンサの第2の実施形態における内部電極層を示す断面図である。
【図7】本発明に係わる積層コンデンサの第3の実施形態における内部電極層を示す断面図である。
【図8】図7に示した積層コンデンサの周波数−インピーダンス特性を表すグラフである。
【図9】本発明に係わる積層コンデンサの第4の実施形態における内部電極層を示す断面図である。
【図10】本発明に係わる積層コンデンサの第5の実施形態における内部電極層を示す断面図である。
【図11】図10に示した積層コンデンサの周波数−インピーダンス特性を表すグラフである。
【図12】本発明に係わる積層コンデンサの第6の実施形態における内部電極層を示す断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1…積層コンデンサ、2…積層体、3…端子電極(第1端子電極)、4…端子電極(第2端子電極)、5,7…内部電極(第1内部電極)、6,8…内部電極(第2内部電極)、9…誘電体層、10,12…引き出し部(第1引き出し部)、11,13…引き出し部(第2引き出し部)、14…電子機器、15…回路基板、21,23,25,27…内部電極(第1内部電極)、22,24,26,28…内部電極(第2内部電極)、29,31,33,35…引き出し部(第1引き出し部)、30,32,34,36…引き出し部(第2引き出し部)、48…内部電極(第1内部電極)、49…引き出し部(第1引き出し部)、54,55…内部電極(第2内部電極)、56,57…引き出し部(第2引き出し部)、63,64…内部電極(第2内部電極)、65,66…引き出し部(第2引き出し部)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体と内部電極とを積層してなる積層コンデンサ及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の積層コンデンサとしては、例えば特許文献1に記載されているように、大容量のコンデンサと小容量のコンデンサとを複数個並列して一体化し、その一体化したコンデンサに入力電極及び出力電極を設けたものが知られている。
【特許文献1】特開平5−166671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術のように静電容量の異なる複数のコンデンサを一体化して、所望の共振周波数及びインピーダンスを得るのは容易ではない。従って、広帯域にわたり低インピーダンス特性を実現させることは困難である。
【0004】
本発明の目的は、広帯域にわたっての低インピーダンス化を確実に実現することができる積層コンデンサ及び電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の積層コンデンサは、第1内部電極と第2内部電極とが誘電体層を挟んで交互に積層されてなる積層体と、積層体の一端側に設けられた第1端子電極と、積層体の他端側に設けられた第2端子電極とを備え、第1内部電極には、第1端子電極と接続される第1引き出し部が設けられ、第2内部電極には、第2端子電極と接続される第2引き出し部が設けられ、第1内部電極は複数種類有し、各種類の第1内部電極の第1引き出し部の位置が異なっており、各種類の第1内部電極の第1引き出し部と第2引き出し部との距離が異なっていることを特徴とするものである。ここで、第1引き出し部と第2引き出し部との距離とは、第1引き出し部と第1端子電極との接続部と、第2引き出し部と第2端子電極との接続部との間の最短の直線距離をいう。
【0006】
このような積層コンデンサにおいては、第1内部電極を複数種類設けることにより、第1内部電極、第2内部電極及び誘電体層からなるコンデンサ部が複数形成されることとなる。ここで、一般にコンデンサの共振周波数を制御するためには、コンデンサの等価直列インダクタンス(ESL)もしくは静電容量を調整する必要がある。このとき、第1内部電極の第1引き出し部と第2内部電極の第2引き出し部との距離が小さくなるほど、コンデンサの等価直列インダクタンスが低くなり、その結果コンデンサの共振周波数が高くなる。本発明の積層コンデンサでは、各種類の第1内部電極の第1引き出し部と第2内部電極の第2引き出し部との距離が異なっているので、各種類の第1内部電極に対応する各コンデンサ部の等価直列インダクタンスが異なり、結果的に各コンデンサ部の共振周波数が異なるようになる。従って、積層コンデンサは、複数の共振周波数を有することとなる。これにより、広帯域にわたり低インピーダンスとなる積層コンデンサを確実に得ることができる。また、このとき、第1内部電極の種類が多くなるほど、積層コンデンサがもつ共振周波数の数が多くなるため、より広帯域にわたって低インピーダンス化を図ることができる。
【0007】
好ましくは、第2内部電極は複数種類有し、各種類の第2内部電極の第2引き出し部の位置が異なっており、各種類の第1内部電極の第1引き出し部と各種類の第2内部電極の第2引き出し部との距離が異なっている。この場合には、第1内部電極及び第2内部電極の種類が多くなるほど、積層コンデンサがもつ共振周波数の数が多くなるため、より広帯域にわたっての低インピーダンス化を確実に実現することができる。
【0008】
また、好ましくは、複数種類の第1内部電極の少なくとも1種類は、積層体の同一層内で複数の内部電極に分割されており、分割された各内部電極は第1引き出し部を有し、分割された各内部電極の面積が異なっている。この場合には、分割された複数の内部電極に対応してコンデンサ部が複数形成されるため、第1内部電極の層数を増大させること無く、積層コンデンサがもつ共振周波数を増やし、より広帯域にわたって低インピーダンス化を図ることができる。
【0009】
また、複数種類の第1内部電極は、積層体の同一層内に形成されていても良い。この場合には、第1内部電極の層数を最小限に抑えながらも、積層コンデンサに複数の共振周波数をもたせることができる。これにより、積層コンデンサの小型化を図りつつ、広帯域にわたって低インピーダンス化を図ることができる。
【0010】
このとき、各種類の第1内部電極の面積が異なっていることが好ましい。このように各種類の第1内部電極の面積が異なることで、各種類の第1内部電極に対応する各コンデンサ部の等価直列インダクタンスだけでなく各コンデンサ部の静電容量も異なるようになる。従って、各コンデンサ部の共振周波数をより細かく制御することが可能となる。
【0011】
また、本発明は、回路基板と、回路基板に実装された積層コンデンサとを備えた電子機器であって、積層コンデンサは、第1内部電極と第2内部電極とが誘電体層を挟んで交互に積層されてなる積層体と、積層体の一端側に設けられた第1端子電極と、積層体の他端側に設けられた第2端子電極とを備え、第1内部電極には、第1端子電極と接続される第1引き出し部が設けられ、第2内部電極には、第2端子電極と接続される第2引き出し部が設けられ、第1内部電極は複数種類有し、各種類の第1内部電極の第1引き出し部の位置が異なっており、各種類の第1内部電極の第1引き出し部と第2引き出し部との距離が異なっており、積層コンデンサは、第1内部電極及び第2内部電極が回路基板に対して縦置き状態となるように回路基板に実装されていることを特徴とするものである。
【0012】
このような電子機器においては、積層コンデンサに第1内部電極を複数種類設けることにより、第1内部電極、第2内部電極及び誘電体層からなるコンデンサ部が複数形成されることとなる。このとき、各種類の第1内部電極の第1引き出し部と第2内部電極の第2引き出し部との距離が異なっているので、各種類の第1内部電極に対応する各コンデンサ部の等価直列インダクタンスが異なり、結果的に各コンデンサ部の共振周波数が異なるようになる。従って、積層コンデンサは、複数の共振周波数を有することとなる。これにより、広帯域にわたり低インピーダンスとなる積層コンデンサを確実に得ることができる。
【0013】
また、積層コンデンサが回路基板に実装された状態では、回路基板から第1端子電極を通って第1内部電極の第1引き出し部に電流が流れるか、或いは回路基板から第2端子電極を通って第2内部電極の第2引き出し部に電流が流れるようになる。このとき、第1内部電極及び第2内部電極が回路基板に対して縦置き状態となっているので、回路基板から各層の第1内部電極または第2内部電極に流れる電流の流路を短くすることができる。これにより、積層コンデンサの等価直列インダクタンスを低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、積層コンデンサについて、広帯域にわたっての低インピーダンス化を確実に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係わる積層コンデンサ及び電子機器の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明に係わる積層コンデンサの第1の実施形態を示す斜視図である。同図において、本実施形態の積層コンデンサ1は、直方体形状(完全な直方体形状だけでなく略直方体形状も含む)の積層体2と、この積層体2の長手方向の一端側に設けられた端子電極3と、積層体2の長手方向の他端側に設けられた端子電極4とを備えている。
【0017】
端子電極3は、積層体2の一端面及び積層体2の4つの側面における一端面側部分を覆うように設けられ、端子電極4は、積層体2の他端面及び積層体2の4つの側面における他端面側部分を覆うように設けられている。端子電極3,4は、例えばCuやAg等の焼付電極層上にNiめっき層及びSnめっき層を順に形成してなるものである。
【0018】
図2は、積層体2の分解斜視図である。同図において、積層体2は、形状の異なる複数種類(ここでは4種類)の内部電極(内部電極層)5〜8が複数ずつ上から誘電体層9を介して交互に積層されてなる構造を有している。積層体2の最上部及び最下部には、誘電体層9が積層されている。内部電極5〜8は、例えばNiやNi合金等で形成されている。誘電体層9は、例えばBaTiO3系セラミック等の誘電体材料で形成されている。
【0019】
図2及び図3に示すように、内部電極5は、積層体2の一方の端面2aに引き出され端子電極3と接続される引き出し部10を有している。内部電極6は、積層体2の他方の端面2bに引き出され端子電極4と接続される引き出し部11を有している。内部電極7は、積層体2の対向する側面2c,2dにそれぞれ引き出され端子電極3と接続される1対の引き出し部12を有している。これらの引き出し部12は、側面2c,2dにおける互いに対応する位置に引き出されている。内部電極8は、積層体2の側面2c,2dに引き出され端子電極4と接続される1対の引き出し部13を有している。これらの引き出し部13は、側面2c,2dにおける互いに対応する位置に引き出されている。内部電極5〜8において誘電体層9を介して互いに重なり合う領域は、矩形状を呈している。
【0020】
このような積層コンデンサ1を製造する場合には、まずBaTiO3系セラミック等のセラミック粉体、有機バインダ及び溶剤を含むセラミックペースト(誘電体ペースト)を例えばドクターブレード法によりPETフィルム上に塗布することにより、上記の誘電体層9となる長方形状のグリーンシートを複数枚作製する。続いて、グリーンシートを乾燥させた後、例えばスクリーン印刷法を用いて、グリーンシートの上面に上記の内部電極5〜8となる電極パターンを形成する。続いて、電極パターンが形成されたグリーンシート及び単なるグリーンシートを所定の順序で複数枚積層することにより、グリーン積層体を形成する。続いて、グリーン積層体をプレス加工した後、グリーン積層体の脱バインダ処理及び焼成処理を行うことにより、上記の積層体2を得る。最後に、例えばペースト浸漬法及び電気めっき法により、積層体2に端子電極3,4を形成する。以上により、上記の積層コンデンサ1が完成する。
【0021】
このようにして作製された積層コンデンサ1においては、互いに異極性となる内部電極5,6と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC1が形成され、互いに異極性となる内部電極7,8と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC2が形成される。
【0022】
ところで、コンデンサの等価直列インダクタンス(ESL)をL、静電容量をCとすると、コンデンサの共振周波数frは、下記式で表される。
【数1】
【0023】
従って、コンデンサの等価直列インダクタンスLや静電容量Cの値を変えることで、コンデンサの共振周波数frを変えることができる。このとき、異極性となる2つの内部電極の引き出し部間の距離が小さくなるほど、等価直列インダクタンスLが低くなるため、共振周波数frが高くなる。
【0024】
本実施形態の積層コンデンサ1では、内部電極5の引き出し部10は積層体2の端面2aに引き出され、内部電極5と同極の内部電極7の引き出し部12は積層体2の側面2c,2dに引き出されているので、引き出し部10,12の形成位置は当然異なっている。内部電極6の引き出し部11は積層体2の端面2bに引き出され、内部電極6と同極の内部電極8の引き出し部13は積層体2の側面2c,2dに引き出されているので、引き出し部11,13の形成位置も当然異なっている。
【0025】
コンデンサC1における引き出し部10,11間の距離d1は、コンデンサC2における引き出し部12,13間の距離d2よりも長くなっている。具体的には、引き出し部10,11間の距離d1は、引き出し部10と端子電極3との接続点と、引き出し部11と端子電極4との接続点との間の最短直線距離をいい、引き出し部12,13間の距離d2は、引き出し部12と端子電極3との接続点と、引き出し部13と端子電極4との接続点との間の最短直線距離をいう。
【0026】
このため、コンデンサC2の等価直列インダクタンス(ESL)がコンデンサC1のESLよりも低くなるので、上記式から、コンデンサC2の共振周波数がコンデンサC1の共振周波数よりも高くなる。
【0027】
具体的には、積層コンデンサ1の周波数−インピーダンス特性は、図4に示すようなものとなる。図4に示すグラフにおいて、横軸は周波数を表し、縦軸はインピーダンスを表している。グラフ中の細かい破線は、コンデンサC1単体の特性(共振周波数fr1)を表しており、粗い破線は、コンデンサC2単体の特性(共振周波数fr2)を表している。従って、積層コンデンサ1の周波数−インピーダンス特性としては、コンデンサC1単体でのインピーダンスの共振点とコンデンサC2単体でのインピーダンスの共振点とを通るものとなる(グラフ中の実線参照)。つまり、積層コンデンサ1は、2つの共振周波数fr1,fr2を有することとなる。
【0028】
従って、本実施形態の積層コンデンサ1にあっては、特に静電容量の異なる2つのコンデンサを一体化させる構造としなくても、共振周波数fr1,fr2を含む広い周波数帯域にわたってインピーダンスが低くなる。これにより、広周波数帯域にわたり低インピーダンス特性を有する積層コンデンサ1を構造的にも製造的にも比較的簡単に実現することができる。
【0029】
図5は、上記の積層コンデンサ1を含む電子機器を示す斜視図である。同図において、電子機器14は、回路基板15と、この回路基板15に実装された積層コンデンサ1とを備えている。回路基板15には、積層コンデンサ1の端子電極3,4とそれぞれ電気的に接続される電極パターン16,17が設けられている。積層コンデンサ1は、内部電極5〜8が回路基板15に対して垂直に立った状態(縦置き状態)となるように回路基板15に実装されている。
【0030】
このような電子機器14において、例えば積層コンデンサ1の端子電極3を正極(+)側電極とし、端子電極4を負極(−)側電極とすると、回路基板15の電極パターン16から端子電極3を介して内部電極5,7に電流が流れる。
【0031】
ところで、内部電極5〜8が回路基板15に対して通常の横置き状態となるように積層コンデンサ1を回路基板15に実装した場合には、回路基板15に対して内部電極5〜8の高さ位置が高くなるほど、電極パターン16から内部電極5〜8までの電流の流路が長くなるため、積層コンデンサ1のESLの増大につながってしまう。
【0032】
これに対し本実施形態では、内部電極5〜8が回路基板15に対して縦置き状態となっているので、電極パターン16から内部電極5,7に流れる電流の流路長さが内部電極5,7の位置に係わらず同じになる。しかも、内部電極7の引き出し部12は積層体2の側面に引き出されているので、電流が端子電極3から回路基板15側の引き出し部12を通って内部電極7に流れることで、端子電極3から内部電極7への電流の回り込みが少なくて済む。これにより、積層コンデンサ1のESLを低減することができる。
【0033】
図6は、本発明に係わる積層コンデンサの第2の実施形態における内部電極層を示す断面図である。図中、第1の実施形態と同一または同等の要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0034】
同図において、本実施形態の積層コンデンサの積層体2は、第1の実施形態と同様の内部電極6〜8が複数ずつ上から誘電体層9を介して交互に積層されてなる構造を有している。
【0035】
このような積層コンデンサにおいては、互いに異極性となる内部電極6,7と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC1が形成され、互いに異極性となる内部電極7,8と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC2が形成される。従って、第1の実施形態に比べて、内部電極の種類を少なくしつつ、2つのコンデンサC1,C2を形成することができる。
【0036】
コンデンサC1における引き出し部11,12間の距離d1は、コンデンサC2における引き出し部12,13間の距離d2よりも長くなっている。このため、第1の実施形態と同様に、コンデンサC2のESLがコンデンサC1のESLよりも低くなるので、コンデンサC2の共振周波数fr2がコンデンサC1の共振周波数fr1よりも高くなる(前述の図4参照)。従って、積層コンデンサは2つの共振周波数fr1,fr2を有するので、広周波数帯域にわたり低インピーダンス化を図ることができる。
【0037】
図7は、本発明に係わる積層コンデンサの第3の実施形態における内部電極層を示す断面図である。図中、第1の実施形態と同一または同等の要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0038】
同図において、本実施形態の積層コンデンサの積層体2は、内部電極(内部電極層)21〜28が複数ずつ下から誘電体層9を介して交互に積層されてなる構造を有している。
【0039】
内部電極21は、積層体2の端面2aに引き出され端子電極3と接続される引き出し部29を有している。内部電極22は、積層体2の端面2bに引き出され端子電極4と接続される引き出し部30を有している。内部電極23は、積層体2の側面2c,2dに引き出され端子電極3と接続される1対の引き出し部31を有している。内部電極24は、積層体2の側面2c,2dに引き出され端子電極4と接続される1対の引き出し部32を有している。内部電極25は、積層体2の側面2c,2dに引き出され端子電極3と接続される1対の引き出し部33を有している。内部電極26は、積層体2の側面2c,2dに引き出され端子電極4と接続される1対の引き出し部34を有している。内部電極27は、積層体2の側面2c,2dに引き出され端子電極3と接続される1対の引き出し部35を有している。内部電極28は、積層体2の側面2c,2dに引き出され端子電極4と接続される1対の引き出し部36を有している。内部電極21〜28において誘電体層9を介して互いに重なり合う領域は、矩形状を呈している。
【0040】
このような積層コンデンサにおいては、互いに異極性となる内部電極21,22と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC1が形成され、互いに異極性となる内部電極23,24と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC2が形成され、互いに異極性となる内部電極25,26と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC3が形成され、互いに異極性となる内部電極27,28と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC4が形成される。
【0041】
ここで、端子電極3と接続される引き出し部31,33,35の形成位置は、積層体2の長手方向に沿ってずれている。端子電極4と接続される引き出し部32,34,36の形成位置は、積層体2の長手方向に沿ってずれている。このため、コンデンサC1における引き出し部29,30間の距離d1、コンデンサC2における引き出し部31,32間の距離d2、コンデンサC3における引き出し部33,34間の距離d3、コンデンサC4における引き出し部35,36間の距離d4の関係は、下記のようになる。
d1>d2>d3>d4
【0042】
よって、コンデンサC1〜C4の等価直列インダクタンス(ESL)L1〜L4は、下記のような関係を有する。
L1>L2>L3>L4
【0043】
従って、コンデンサC1〜C4の共振周波数fr1〜fr4は、下記の関係を有することになるため、図8に示すような周波数−インピーダンス特性が得られる。
fr1<fr2<fr3<fr4
【0044】
このように積層コンデンサは4つの共振周波数fr1〜fr4を有しているので、第1の実施形態よりも広い周波数帯域にわたって低インピーダンスとなる積層コンデンサを比較的簡単に得ることができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、端子電極3,4と接続される内部電極としてそれぞれ4種類使用したが、端子電極3,4と接続される内部電極の種類としては、それぞれ3種類でも良いし、或いはそれぞれ5種類以上としても良い。
【0046】
図9は、本発明に係わる積層コンデンサの第4の実施形態における内部電極層を示す断面図である。図中、第1及び第3の実施形態と同一または同等の要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
同図において、本実施形態の積層コンデンサの積層体2は、内部電極層41〜47が複数ずつ下から誘電体層9を介して交互に積層されてなる構造を有している。
【0048】
内部電極層41は、第3の実施形態と同様の内部電極22から構成され、内部電極層43は、第3の実施形態と同様の内部電極24から構成され、内部電極層45は、第3の実施形態と同様の内部電極26から構成され、内部電極層47は、第3の実施形態と同様の内部電極28から構成されている。内部電極層42,44,46は、内部電極48から構成されている。内部電極48は、積層体2の端面2a及び側面2c,2dに引き出され端子電極3と接続される引き出し部49を有している。これらの内部電極において誘電体層9を介して互いに重なり合う領域は、矩形状を呈している。
【0049】
内部電極48の引き出し部49は、積層体2の端面2a及び側面2c,2dにU字状に引き出されているので、他の引き出し部よりも大きな幅寸法を有している。このため、例えば内部電極48を正極(+)側電極として使用する場合には、端子電極3の広い領域から効果的に内部電極48に電流が流れ込むようになるため、積層コンデンサのESL低減に寄与することができる。
【0050】
このような積層コンデンサにおいて、互いに異極性となる内部電極48,22(内部電極層42,41)と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC1が形成され、互いに異極性となる内部電極48,24(内部電極層42,43)と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC2が形成され、互いに異極性となる内部電極48,26(内部電極層44,45)と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC3が形成され、互いに異極性となる内部電極48,28(内部電極層46,47)と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC4が形成される。
【0051】
このとき、コンデンサC1における引き出し部49,30間の距離d1、コンデンサC2における引き出し部49,32間の距離d2、コンデンサC3における引き出し部49,34間の距離d3、コンデンサC4における引き出し部49,36間の距離d4の関係は、下記のようになる。
d1>d2>d3>d4
【0052】
つまり、第3の実施形態と同様に、積層コンデンサは4つの共振周波数fr1〜fr4を有しているので、十分広い周波数帯域にわたって低インピーダンス化を図ることができる。
【0053】
なお、上記実施形態では、端子電極4と接続される内部電極として4種類使用したが、端子電極4と接続される内部電極の種類は、もちろん3種類でも良いし、5種類以上でも構わない。
【0054】
図10は、本発明に係わる積層コンデンサの第5の実施形態における内部電極層を示す断面図である。図中、第1の実施形態と同一または同等の要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
同図において、本実施形態の積層コンデンサの積層体2は、内部電極層51〜53が複数ずつ下から誘電体層9を介して交互に積層されてなる構造を有している。
【0056】
内部電極層51は、第1の実施形態と同様の内部電極6から構成され、内部電極層52は、第1の実施形態と同様の内部電極7から構成されている。内部電極層53は、内部電極54,55から構成されている。
【0057】
内部電極54は、積層体2の側面2dに引き出され端子電極4と接続される引き出し部56を有している。内部電極55は、積層体2の側面2cに引き出され端子電極4と接続される引き出し部57を有している。引き出し部57は、引き出し部56に対応する位置に形成されている。内部電極54,55は、実質的に第1の実施形態と同様の内部電極8を2つに分割した構造となっている。また、内部電極54は、内部電極55よりも大きな面積を有している。
【0058】
このような積層コンデンサにおいて、互いに異極性となる内部電極7,6と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC1が形成され、互いに異極性となる内部電極7,54と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC2が形成され、互いに異極性となる内部電極7,55と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC3が形成される。
【0059】
コンデンサC2における引き出し部12,56間の距離d2と、コンデンサC3における引き出し部12,57間の距離d3とは等しくなっている。また、コンデンサC1における引き出し部11,12間の距離d1は、当該距離d2,d3よりも大きい。このため、コンデンサC2のESLとコンデンサC3のESLとは等しく、コンデンサC1のESLはコンデンサC2,C3のESLよりも大きくなる。
【0060】
ただし、コンデンサC2の一部を構成する内部電極54の面積はコンデンサC3の一部を構成する内部電極55の面積よりも大きいので、コンデンサC2の静電容量はコンデンサC3の静電容量よりも大きくなる。
【0061】
その結果、コンデンサC1〜C3の共振周波数fr1〜fr3は、下記のような関係を有するようになるため、図11に示すような周波数−インピーダンス特性が得られる。
fr1<fr2<fr3
【0062】
このように積層コンデンサは3つの共振周波数fr1〜fr3を有しているので、広い周波数帯域にわたって低インピーダンス化を図ることができる。また、内部電極層53は面積の異なる内部電極54,55から構成されているので、内部電極層の層数を必要以上に増やすことなく、共振周波数fr1〜fr3を有する積層コンデンサを得ることができる。
【0063】
なお、上記実施形態では、内部電極層53を2つの内部電極からなる構造としたが、3つ以上の内部電極からなる構造としても良い。また、内部電極層51についても、複数の内部電極からなる構造としても良い。
【0064】
図12は、本発明に係わる積層コンデンサの第6の実施形態における内部電極層を示す断面図である。図中、第1及び第4の実施形態と同一または同等の要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0065】
同図において、本実施形態の積層コンデンサの積層体2は、内部電極層61,62が複数ずつ上から誘電体層9を介して交互に積層されてなる構造を有している。
【0066】
内部電極層61は、第4の実施形態と同様の内部電極48から構成されている。内部電極層62は、積層体2の長手方向に並ぶように形成された内部電極63,64から構成されている。内部電極63は、積層体2の側面2c,2dに引き出され端子電極4と接続される1対の引き出し部65を有している。内部電極64は、積層体2の側面2c,2dに引き出され端子電極4と接続される引き出し部66を有している。また、内部電極63は、内部電極64よりも大きな面積を有している。
【0067】
このような積層コンデンサでは、互いに異極性となる内部電極48,63と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC1が形成され、互いに異極性となる内部電極48,64と両者間に存在する誘電体層9とによりコンデンサC2が形成される。
【0068】
コンデンサC2における引き出し部49,66間の距離d2は、コンデンサC1における引き出し部49,65間の距離d1よりも長い。このため、コンデンサC2のESLはコンデンサC1のESLよりも大きくなる。しかし、コンデンサC1の一部を構成する内部電極63の面積はコンデンサC2の一部を構成する内部電極64の面積よりも大きくなっているため、コンデンサC1の静電容量はコンデンサC2の静電容量よりも大きくなる。
【0069】
このとき、引き出し部49,65間の距離d1及び引き出し部49,66間の距離d2によるESLの影響に比べて、内部電極63,64の面積による静電容量の影響が大きい場合には、コンデンサC1の共振周波数fr1がコンデンサC2の共振周波数fr2よりも低くなり、結果的に前述の図4に示すような周波数−インピーダンス特性が得られるようになる。
【0070】
このように本実施形態においては、コンデンサC1,C2のESLの調整だけでなく、コンデンサC1,C2の静電容量も適宜調整することにより、適切な2つの共振周波数を有する積層コンデンサを確実に得ることができる。これにより、広い周波数帯域にわたって低インピーダンス化が図られた積層コンデンサを得ることができる。また、2種類の内部電極層61,62だけを用いて、2つの共振周波数を有する積層コンデンサが得られるので、積層コンデンサの簡素化及び小型化を図ることが可能となる。
【0071】
なお、上記実施形態では、内部電極層62を2つの内部電極63,64からなる構造としたが、勿論3つ以上の内部電極からなる構造としても構わない。
【0072】
以上、本発明に係わる積層コンデンサの好適な実施形態について幾つか説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、内部電極の形状や、内部電極の引き出し部の形成位置、形状、数等については、特に上記実施形態には限られない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係わる積層コンデンサの第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示した積層体の分解斜視図である。
【図3】図2に示した内部電極層を示す断面図である。
【図4】図1に示した積層コンデンサの周波数−インピーダンス特性を表すグラフである。
【図5】図1に示した積層コンデンサが回路基板に実装された状態を示す斜視図である。
【図6】本発明に係わる積層コンデンサの第2の実施形態における内部電極層を示す断面図である。
【図7】本発明に係わる積層コンデンサの第3の実施形態における内部電極層を示す断面図である。
【図8】図7に示した積層コンデンサの周波数−インピーダンス特性を表すグラフである。
【図9】本発明に係わる積層コンデンサの第4の実施形態における内部電極層を示す断面図である。
【図10】本発明に係わる積層コンデンサの第5の実施形態における内部電極層を示す断面図である。
【図11】図10に示した積層コンデンサの周波数−インピーダンス特性を表すグラフである。
【図12】本発明に係わる積層コンデンサの第6の実施形態における内部電極層を示す断面図である。
【符号の説明】
【0074】
1…積層コンデンサ、2…積層体、3…端子電極(第1端子電極)、4…端子電極(第2端子電極)、5,7…内部電極(第1内部電極)、6,8…内部電極(第2内部電極)、9…誘電体層、10,12…引き出し部(第1引き出し部)、11,13…引き出し部(第2引き出し部)、14…電子機器、15…回路基板、21,23,25,27…内部電極(第1内部電極)、22,24,26,28…内部電極(第2内部電極)、29,31,33,35…引き出し部(第1引き出し部)、30,32,34,36…引き出し部(第2引き出し部)、48…内部電極(第1内部電極)、49…引き出し部(第1引き出し部)、54,55…内部電極(第2内部電極)、56,57…引き出し部(第2引き出し部)、63,64…内部電極(第2内部電極)、65,66…引き出し部(第2引き出し部)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1内部電極と第2内部電極とが誘電体層を挟んで交互に積層されてなる積層体と、
前記積層体の一端側に設けられた第1端子電極と、
前記積層体の他端側に設けられた第2端子電極とを備え、
前記第1内部電極には、前記第1端子電極と接続される第1引き出し部が設けられ、
前記第2内部電極には、前記第2端子電極と接続される第2引き出し部が設けられ、
前記第1内部電極は複数種類有し、前記各種類の第1内部電極の前記第1引き出し部の位置が異なっており、
前記各種類の第1内部電極の前記第1引き出し部と前記第2引き出し部との距離が異なっていることを特徴とする積層コンデンサ。
【請求項2】
前記第2内部電極は複数種類有し、前記各種類の第2内部電極の前記第2引き出し部の位置が異なっており、
前記各種類の第1内部電極の前記第1引き出し部と前記各種類の第2内部電極の前記第2引き出し部との距離が異なっていることを特徴とする請求項1記載の積層コンデンサ。
【請求項3】
前記複数種類の第1内部電極の少なくとも1種類は、前記積層体の同一層内で複数の内部電極に分割されており、
前記分割された各内部電極は前記第1引き出し部を有し、
前記分割された各内部電極の面積が異なっていることを特徴とする請求項1記載の積層コンデンサ。
【請求項4】
前記複数種類の第1内部電極は、前記積層体の同一層内に形成されていることを特徴とする請求項1記載の積層コンデンサ。
【請求項5】
前記各種類の第1内部電極の面積が異なっていることを特徴とする請求項4記載の積層コンデンサ。
【請求項6】
回路基板と、前記回路基板に実装された積層コンデンサとを備えた電子機器であって、
前記積層コンデンサは、第1内部電極と第2内部電極とが誘電体層を挟んで交互に積層されてなる積層体と、前記積層体の一端側に設けられた第1端子電極と、前記積層体の他端側に設けられた第2端子電極とを備え、
前記第1内部電極には、前記第1端子電極と接続される第1引き出し部が設けられ、
前記第2内部電極には、前記第2端子電極と接続される第2引き出し部が設けられ、
前記第1内部電極は複数種類有し、前記各種類の第1内部電極の前記第1引き出し部の位置が異なっており、
前記各種類の第1内部電極の前記第1引き出し部と前記第2引き出し部との距離が異なっており、
前記積層コンデンサは、前記第1内部電極及び前記第2内部電極が前記回路基板に対して縦置き状態となるように前記回路基板に実装されていることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
第1内部電極と第2内部電極とが誘電体層を挟んで交互に積層されてなる積層体と、
前記積層体の一端側に設けられた第1端子電極と、
前記積層体の他端側に設けられた第2端子電極とを備え、
前記第1内部電極には、前記第1端子電極と接続される第1引き出し部が設けられ、
前記第2内部電極には、前記第2端子電極と接続される第2引き出し部が設けられ、
前記第1内部電極は複数種類有し、前記各種類の第1内部電極の前記第1引き出し部の位置が異なっており、
前記各種類の第1内部電極の前記第1引き出し部と前記第2引き出し部との距離が異なっていることを特徴とする積層コンデンサ。
【請求項2】
前記第2内部電極は複数種類有し、前記各種類の第2内部電極の前記第2引き出し部の位置が異なっており、
前記各種類の第1内部電極の前記第1引き出し部と前記各種類の第2内部電極の前記第2引き出し部との距離が異なっていることを特徴とする請求項1記載の積層コンデンサ。
【請求項3】
前記複数種類の第1内部電極の少なくとも1種類は、前記積層体の同一層内で複数の内部電極に分割されており、
前記分割された各内部電極は前記第1引き出し部を有し、
前記分割された各内部電極の面積が異なっていることを特徴とする請求項1記載の積層コンデンサ。
【請求項4】
前記複数種類の第1内部電極は、前記積層体の同一層内に形成されていることを特徴とする請求項1記載の積層コンデンサ。
【請求項5】
前記各種類の第1内部電極の面積が異なっていることを特徴とする請求項4記載の積層コンデンサ。
【請求項6】
回路基板と、前記回路基板に実装された積層コンデンサとを備えた電子機器であって、
前記積層コンデンサは、第1内部電極と第2内部電極とが誘電体層を挟んで交互に積層されてなる積層体と、前記積層体の一端側に設けられた第1端子電極と、前記積層体の他端側に設けられた第2端子電極とを備え、
前記第1内部電極には、前記第1端子電極と接続される第1引き出し部が設けられ、
前記第2内部電極には、前記第2端子電極と接続される第2引き出し部が設けられ、
前記第1内部電極は複数種類有し、前記各種類の第1内部電極の前記第1引き出し部の位置が異なっており、
前記各種類の第1内部電極の前記第1引き出し部と前記第2引き出し部との距離が異なっており、
前記積層コンデンサは、前記第1内部電極及び前記第2内部電極が前記回路基板に対して縦置き状態となるように前記回路基板に実装されていることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−71811(P2008−71811A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246935(P2006−246935)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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