説明

積層セラミックキャパシタの製造方法

【課題】積層セラミックキャパシタの製造方法に関し、圧着工程時に積層体に与える熱変形を最少化して不良率を低減する。
【解決手段】電極パターンが印刷されたセラミック材質のグリーンシートを複数積層して積層体10を形成する段階と、上記積層体10の一側面に第1複合積層プレート21を積層し、他側面に第2複合積層プレート22を積層して拘束する段階と、上記第1複合積層プレート21及び第2複合積層プレート22を通して上記積層体10を圧着することにより、積層セラミックキャパシタを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層セラミックキャパシタの製造方法に関するもので、さらに詳しくは複合積層プレートの熱膨張係数を選択的に調節して圧着工程時にセラミックシート積層体から発生する面方向への熱変形を最少化することが可能な積層セラミックキャパシタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に積層セラミックキャパシタ(Multi−layer Ceramic Capacitor、MLCC)は電気を一時的に備蓄することが可能な部品で、交流は通過し直流は通過できない特性を利用して移動通信機器、デジタルAV機器、コンピュータなどの電子機器でDC−blocking、By−passing、カップリングなどの多様な用途に使用される電子部品である。
【0003】
このようなMLCCはニッケルペースト(phaste)を通して内部電極として使用される電極パターンが印刷された薄膜の誘電体シート(セラミックシート)を数十枚ないし数百枚を積層圧着して高温で焼結させ、外部電極を塗布した後焼付して端子電極部を形成しこれをメッキすることにより製造される。
【0004】
圧着工程のため、従来にはアルミニウムベースプレート上にMLCC積層体を配置し、再度その上にSUSからなる圧着プレートを積層してこれを所定の温度及び圧力を与える方式で圧着工程を行った。
【0005】
しかし、上記MLCC積層体はセラミックシートにニッケルなどの金属電極が印刷され積層された形態で、異方性(anisotropic)の特性を有しており、このような異方性は等方性(isotropic)材料とは異なって材料の物性が方向性を有するという特徴がある。
【0006】
従って、MLCC積層体の場合x軸及びy軸方向に相違する熱的、機械的な物性を示すこととなり、このような物性が積層体変形発生の根本的な原因として作用する。
【0007】
特に、セラミックシートを作製するため熱膨張の特性が大きい多量のバインダー、可塑剤、添加剤などが使用されるが、これは圧着工程上で起こる熱荷重の条件により積層体の変形を発生させる主要原因と知られている。
【0008】
このような積層体の変形は切断工程時に各チップの切断マージン部に対する規格を満たすことが出来なくなり製品不良を誘発させる原因の一つで、これに対する改善を通して不良率を低減することが求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述の従来技術の問題点を解決するために案出されたもので、圧着工程時に積層体に与える熱変形を最少化して製品の不良率を低減することが出来る積層セラミックキャパシタの製造方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような目的を達成すべく技術的な構成として、本発明による積層セラミックキャパシタの製造方法は、電極パターンが印刷されたセラミック材質のグリーンシートを複数積層して積層体を形成する段階と、上記積層体の一側面に第1複合積層プレートを積層し、上記積層体の他側面に第2複合積層プレートを積層して拘束する段階と、上記第1複合積層プレート及び第2複合積層プレートを通して上記積層体を圧着する段階と、を含む。
【0011】
好ましく、本発明は上記第1複合積層プレート及び第2複合積層プレートの少なくとも一つに少なくとも一つの追加積層体を積層する段階と、上記追加積層体に追加複合積層プレートを積層して拘束する段階と、をさらに含む。
【0012】
好ましく、上記第1複合積層プレート及び第2複合積層プレートは、少なくとも一つのプリプレグが積層されて形成されることを特徴とする。
【0013】
さらに好ましく、上記第1複合積層プレート及び第2複合積層プレートは、上記プリプレグの積層角度が調節されて積層されることを特徴とする。
【0014】
さらに好ましく、上記第1複合積層プレート及び第2複合積層プレートは、積層されるプリプレグの中心層を基準として積層数及び積層角度が実質的に上下対称を成すことを特徴とする。
【0015】
さらに好ましく、上記第1複合積層プレート及び第2複合積層プレートは、プリプレグの積層数及び積層角度が相互実質的に同一であることを特徴とする。
【0016】
好ましく、本発明は上記積層体から上記第1複合積層プレート及び第2複合積層プレートを除去した後表面を研磨する段階をさらに含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、複合積層プレートの熱膨張係数を選択的に調節することにより圧着工程時にセラミックグリーンシート積層体から発生する面方向への熱変形を最少化してチップ不良の発生を低減することが出来るという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明による積層セラミックキャパシタの製造方法に関する具体的な事項を図面を参照に説明する。
【0019】
図1は電極パターンが印刷された複数のセラミックグリーンシートが積層された積層体を表した斜視図で、図2は図1の積層体の両側面に複合積層プレートを積層して拘束した状態を表した斜視図及び断面図である。
【0020】
先ず、図1のようにガラス粉末と無機物フィラーが混合された混合粉末に有機溶媒及びバインダーと可塑剤などを混合し、ドクターブレード法などでテープ成形した後所定の大きさに裁断してセラミックグリーンシート1を成形する。
【0021】
ここで、ガラス粉末は10〜55wt%CaO、45〜70wt%SiO2、0〜30wt%Al2O3、10wt%以内の不純物で構成され、無機物フィラーとしては石英、ジルコニア、アルミナなどが挙げられる。
【0022】
次に、上記グリーンシート1上には電極パターン2が備えられるようスクリーン印刷方式などを通して導電性電極パターン2を印刷した後、製品を形成するのに必要な数だけ複数層に重ねて積層し積層体10を形成する。
【0023】
その後、図2のように上記積層された積層体10の一側面には第1複合積層プレート21を積層し、上記積層体10の他側面には第2複合積層プレート22を積層して上記積層体10を拘束する。
【0024】
この際、上記積層体10と上記第1複合積層プレート21及び第2複合積層プレート22との間には向後圧着工程の後分離が容易であるようシリコンがコーティングされたPETフィルム11を積層することが好ましい。
【0025】
本発明の好ましい実施例では第1複合積層プレート21と第2複合積層プレート22との間に一つの積層体10が積層されることについて図示しているが、これに限定されず複数の積層体が積層される場合も含まれることが出来る。
【0026】
この場合、上記第1複合積層プレート21及び第2複合積層プレート22の少なくとも一つに少なくとも一つの追加積層体をさらに積層し、また上記追加積層体に上記第1複合積層プレート21及び第2複合積層プレート22のいずれか一つを積層して上記追加積層体を拘束する。
【0027】
上記のように、第1複合積層プレート21と第2複合積層プレート22との間に上記積層体10を積層して拘束されるようにした後、ビニルバックに入れて真空包装した後密封して圧着工程を用意する。
【0028】
本圧着工程は85℃条件で静水圧を加えることが出来る装備(未図示)内に上記のように真空包装した積層体を配置し、1時間ないし2時間程度100MPaの圧力を加えて加圧成形する。
【0029】
従来にはアルミニウムプレート及びSUSプレートを使用して積層体を拘束し圧着したが、本発明では複合材料からなる積層プレートを使用して熱膨張係数(CTE)を調節することにより圧着工程時に発生する積層体の変形を最少化することが出来るようにした。
【0030】
図2で図示する第1複合積層プレート21及び第2複合積層プレート22に関するより具体的な構成について図3(a)、図3(b)を参照に説明する。
【0031】
図3(a)は図2の複合積層プレートを表した斜視図で、図3(b)は積層角度によってプリプレグが積層された状態を表した切開斜視図である。
【0032】
図3(a)に図示されたように、上記第1複合積層プレート21及び第2複合積層プレート22は少なくとも一つのプリプレグ30が積層されて形成されるもので、一種の複合材料からなるプレート部材である。
【0033】
上記プリプレグ30はエポキシ樹脂に炭素ファイバ31を一定の方向に含浸させ形成したもので、単方向(uni−direction)のプリプレグであることが好ましい。
【0034】
本発明の好ましい実施例では炭素ファイバからなるプリプレグについて説明しているが、これに限定されずガラスファイバからなるプリプレグも含まれることが出来る。
【0035】
一方、図3(b)のように上記複合積層プレート21、22はx軸とy軸方向の熱膨張係数が設計された数値を有するようプリプレグ30の積層角度θを調節して積層する。
【0036】
即ち、セラミック積層体10の物性によってプリプレグ30の積層角度による積層順番を調節することにより、上記積層体10を両側面で拘束する複合積層プレート21、22のx軸及びy軸方向への熱膨張係数を任意で設計し、所望の熱的特性を具現することが出来るようにする。
【0037】
好ましく、上記第1複合積層プレート21及び第2複合積層プレート22は積層されるプリプレグ30の中心層を基準として上記プリプレグ30の積層数及び積層角度が実質的に上下対称を成すようにする。
【0038】
図4では、上記説明したような積層角度によるプリプレグ30の積層順番による複合積層プレートを多様な実施例を通して図示している。
【実施例1】
【0039】
積層順番:[(θ/−θ)
図4(a)のように、本発明の一実施例による複合積層プレート21、22は中心層のプリプレグ30の積層角度が−θ°で、その上に積層されるプリプレグ30の積層角度がθ°の場合で、4回を繰り返して積層され、上記中心層を基準として実質的に上下対称の構造を有し全体16層のプリプレグ30が積層された構造を有する。
【実施例2】
【0040】
積層順番:[(θ/−θ)/02]
図4(b)では、本発明の他の実施例による複合積層プレート21'、22'を図示しており、中心層を基準として積層されるプリプレグ30の積層角度が0°、0°、−θ°、θ°、−θ°、θ°で、上記中心層を基準として対称の構造を有し全体12層のプリプレグ30が積層された構造を有する。
【実施例3】
【0041】
積層順番:[(θ/−θ)/0/90]
図4(c)では、本発明のさらに他の実施例による複合積層プレート21"、22"を図示しており、中心層を基準として積層されるプリプレグ30の積層角度が90°、0°、−θ°、θ°、−θ°、θ°、−θ°、θ°で、上記中心層を基準として対称の構造を有し全体16層のプリプレグ30が積層された構造を有する。
【0042】
図5(a)〜5(c)では、上記プリプレグ30の積層順番の変化によって複合積層プレートのx軸及びy軸方向に熱膨張係数の変化がどのように表れるのかをグラフを通して図示している。これを通じて任意の熱膨張係数の設計が可能であることが分かる。
【0043】
従来のアルミニウムプレートと本発明による複合積層プレートの熱変形量を比較して表1に表した。両側のプレートは何れも178mm×178mmの大きさを有し、圧着工程時の温度は85℃で、常温(20℃)との温度差(ΔT)は65℃であり、圧力は100MPaの条件下で変形量を導き出すことが出来る。
【0044】
【表1】

【0045】
上記表1のように、複合積層プレートでの変形量に比べてアルミニウムプレートから発生する面方向への変形量は非常に大きいと表れ、これは上記アルミニウムプレートにより拘束される積層体の変形を加重させる要因となる。
【0046】
しかし、本発明のように複合積層プレートを使用する場合には、積層体から発生する変形を低減させる効果があることが分かる。
【0047】
一方、上記第1複合積層プレート21及び第2複合積層プレート22は、プリプレグ30の積層数及び/または積層角度が相互実質的に同一であるようにする。
【0048】
従って、上記第1複合積層プレート21及び第2複合積層プレート22が同一な物性を有するようプリプレグ30の積層数及び積層角度を同一にすることができ、かつ積層数と積層角度を相違にするか、そのいずれか一つを相違するようにして上記第1複合積層プレート21及び第2複合積層プレート22が異なる物性を有するようにすることも出来る。
【0049】
上記のように圧着工程が完了した後は上記積層体10から上記第1複合積層プレート21及び第2複合積層プレート22を除去した後、上記積層体10の表面を研磨して平らにする。
【0050】
その後、切断工程を通して切断線に沿って上記積層体10を切断してMLCCを製造する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】電極パターンが印刷された複数のセラミックグリーンシートが積層された積層体を表した斜視図である。
【図2】図1の積層体の両側面に複合積層プレートを積層して拘束した状態を表した斜視図及び断面図である。
【図3】図2の複合積層プレートを表した斜視図及び積層角度によって積層された状態を表した切開斜視図である。
【図4】プリプレグの積層角度及び積層順番を変えて形成される複合積層プレートを表した断面図である。
【図5】図4のプリプレグの積層順番の変化による複合積層プレートのx軸及びy軸方向に熱膨張係数の変化を表したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極パターンが印刷されたセラミック材質のグリーンシートを複数積層して積層体を形成する段階と、
前記積層体の一側面に第1複合積層プレートを積層し、前記積層体の他側面に第2複合積層プレートを積層して拘束する段階と、
前記第1複合積層プレート及び第2複合積層プレートを通して前記積層体を圧着する段階と、を含む積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項2】
前記第1複合積層プレート及び第2複合積層プレートの少なくとも一つに少なくとも一つの追加積層体を積層する段階と、
前記追加積層体に追加複合積層プレートを積層して拘束する段階と、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項3】
前記第1複合積層プレート及び第2複合積層プレートは、少なくとも一つのプリプレグが積層されて形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項4】
前記第1複合積層プレート及び第2複合積層プレートは、前記プリプレグの積層角度が調節されて積層されることを特徴とする請求項3に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項5】
前記第1複合積層プレート及び第2複合積層プレートは、積層されるプリプレグの中心層を基準として積層数及び積層角度が実質的に上下対称を成すことを特徴とする請求項3に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項6】
前記第1複合積層プレート及び第2複合積層プレートは、プリプレグの積層数及び積層角度が相互実質的に同一であることを特徴とする請求項3に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。
【請求項7】
前記積層体から前記第1複合積層プレート及び第2複合積層プレートを除去した後表面を研磨する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の積層セラミックキャパシタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−260217(P2009−260217A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229634(P2008−229634)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】