説明

積層セラミック電子部品の製造方法

【課題】内部電極を側面に露出させた状態のグリーンチップを得た後、内部電極の側部に保護領域を形成するため、グリーンチップの側面に露出した内部電極を覆うようにセラミックペーストを塗布するにあたって、グリーンチップの側面のみに厚みのばらつきなくセラミックペーストを能率的に塗布できる方法を提供する。
【解決手段】マザーブロックの切断後の行および列方向に配列された状態の複数のグリーンチップ19の各々の側面20に、塗布プレート44を用いてセラミックペースト43を塗布する。塗布工程では、グリーンチップ19を塗布プレート44から離隔させながら、セラミックペースト43がグリーンチップ19と塗布プレート44との双方につながっている状態で、グリーンチップ19と塗布プレート44とを側面20の延びる方向に相対的に移動させることによって、セラミックペースト43を側面20に転移させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層セラミック電子部品の製造方法に関するもので、特に、積層セラミック電子部品における内部電極の側部に保護領域を形成するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この発明が向けられる積層セラミック電子部品として、たとえば積層セラミックコンデンサがある。積層セラミックコンデンサを製造するためには、典型的には、図22(A)および(B)にそれぞれ示すように、第1の内部電極1が形成された第1のセラミックグリーンシート3と第2の内部電極2が形成された第2のセラミックグリーンシート4とを交互に複数層ずつ積層する工程が実施される。この積層工程によって、生の部品本体が得られ、生の部品本体が焼成された後、焼結した部品本体の相対向する第1および第2の端面に第1および第2の外部電極が形成される。これによって、第1および第2の端面にそれぞれ引き出された第1および第2の内部電極1および2が第1および第2の外部電極にそれぞれ電気的に接続され、積層セラミックコンデンサが完成される。
【0003】
近年、積層セラミックコンデンサは、小型化の一途をたどっており、一方で取得静電容量の高いものが求められている。この要望に応えるには、積層されるセラミックグリーンシート3および4上をそれぞれ占有する内部電極1および2の各有効面積、つまり、内部電極1および2が互いに対向する面積を増やすことが有効である。このような有効面積を増やすには、図22に示した側部の保護領域5および端部の保護領域6の寸法を減じることが重要となる。
【0004】
しかし、端部の保護領域6の寸法を減じると、不所望にも、第1の外部電極と第2の外部電極とが、内部電極1および2のいずれかを介して短絡してしまう危険性が高められる。したがって、積層セラミックコンデンサの信頼性を考慮したとき、端部の保護領域6の寸法を減じるより、側部の保護領域5の寸法を減じる方が好ましいことがわかる。
【0005】
上記のように、側部の保護領域5の寸法を減じる有効な方法として、特許文献1に記載のものがある。特許文献1では、生の状態にある複数のセラミック層と複数の内部電極とをもって構成された積層構造を有し、かつ側面に内部電極が露出した状態にある、積層体を用意し、この積層体をセラミックスラリー中に浸漬することによって側部の保護領域を形成することが記載されている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術には次のような問題点がある。
【0007】
すなわち、積層体をセラミックスラリー中に浸漬したとき、側部の保護領域となるべき面以外の、たとえば積層体の主面上にもセラミックスラリーが塗布される。また、浸漬によるセラミックスラリーの塗布の場合、塗布されたセラミックスラリーの厚みを均一にするための制御が容易ではない。たとえば、図23に示すように、積層体7にセラミックスラリー8を塗布したとき、セラミックスラリー8に働く表面張力により、積層体7のコーナー部9では、セラミックスラリー8の塗布厚が薄くなりがちで、所望の塗布厚を確保することが困難である。これらのことから、コーナー部9から水分が浸入しやすく、信頼性が低下することがある。また、得られた積層セラミックコンデンサの寸法ばらつきが生じやすい。
【0008】
なお、同様の問題は、積層セラミックコンデンサを製造する場合に限らず、積層セラミックコンデンサ以外の積層セラミック電子部品を製造する場合においても遭遇し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平3−108306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、この発明の目的は、上述したような問題を解決し得る積層セラミック電子部品の製造方法を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上述した技術的課題を解決するため、次のような構成を備えることを特徴としている。
【0012】
この発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、第1の局面では、積層された複数のセラミックグリーンシートと、セラミックグリーンシート間の複数の界面に沿ってそれぞれ配置された内部電極パターンとを含む、マザーブロックを作製する工程と、マザーブロックを互いに直交する第1方向の切断線および第2方向の切断線に沿って切断することによって、生の状態にある複数のセラミック層と複数の内部電極とをもって構成された積層構造を有し、かつ第1方向の切断線に沿う切断によって現れた切断側面に内部電極が露出した状態にある、複数のグリーンチップを得る、切断工程とをまず備えている。
【0013】
次に、上記切断側面にセラミックペーストを塗布して、生のセラミック保護層を形成することによって、生の部品本体を得る、塗布工程が実施された後、生の部品本体を焼成する工程が実施される。
【0014】
そして、この発明の第1の局面では、前述した技術的課題を解決するため、上記塗布工程が、セラミックペーストを保持した塗布プレートを用意する工程と、グリーンチップの切断側面に、塗布プレートが保持するセラミックペーストを接触させる工程と、グリーンチップを塗布プレートから離隔させながら、セラミックペーストがグリーンチップと塗布プレートとの双方につながっている状態で、グリーンチップと塗布プレートとを切断側面の延びる方向に相対的に移動させることによって、セラミックペーストをグリーンチップの切断側面に転移させる、ペースト転移工程とを含むことを特徴としている。
【0015】
上述した切断工程において切断された複数のグリーンチップは、行および列方向に配列された状態にあり、塗布工程は、行および列方向に配列された状態の複数のグリーンチップの互いの間隔を広げた状態で、複数のグリーンチップを転動させ、それによって、複数のグリーンチップの各々の切断側面を揃って開放面とする、転動工程をさらに備え、塗布工程では、転動工程の結果、開放面とされた複数のグリーンチップの切断側面にセラミックペーストを同時に塗布するようにされることが好ましい。
【0016】
この発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、第2の局面では、積層された複数のセラミックグリーンシートと、セラミックグリーンシート間の複数の界面に沿ってそれぞれ配置された内部電極パターンとを含む、マザーブロックを作製する工程と、マザーブロックを第1方向の切断線に沿って切断することによって、生の状態にある複数のセラミック層と複数の内部電極とをもって構成された積層構造を有し、かつ第1方向の切断線に沿う切断によって現れた切断側面に内部電極が露出した状態にある、複数の棒状のグリーンブロック体を得る、第1切断工程と、切断側面にセラミックペーストを塗布して、生のセラミック保護層を形成する、塗布工程と、生のセラミック保護層が形成された棒状のグリーンブロック体を、第1方向に直交する第2方向の切断線に沿って切断することによって、複数の生の部品本体を得る、第2切断工程と、生の部品本体を焼成する工程とを備えている。
【0017】
そして、この発明の第2の局面では、前述した技術的課題を解決するため、上記塗布工程が、セラミックペーストを保持した塗布プレートを用意する工程と、棒状のグリーンブロック体の切断側面に、塗布プレートが保持するセラミックペーストを接触させる工程と、棒状のグリーンブロック体を塗布プレートから離隔させながら、セラミックペーストが棒状のグリーンブロック体と塗布プレートとの双方につながっている状態で、棒状のグリーンブロック体と塗布プレートとを切断側面の延びる方向に相対的に移動させることによって、セラミックペーストを棒状のグリーンブロック体の切断側面に転移させる、ペースト転移工程とを含むことを特徴としている。
【0018】
好ましくは、上記第1切断工程において切断された複数の棒状のグリーンブロック体は、所定方向に配列された状態にあり、塗布工程では、所定方向に配列された状態の複数の棒状のグリーンウロック体の互いの間隔を広げた状態で、複数の棒状のグリーンブロック体を転動させ、それによって、複数の棒状のグリーンブロック体の各々の切断側面を揃って開放面とする、転動工程が実施され、塗布工程では、転動工程の結果、開放面とされた複数の棒状のグリーンブロック体の切断側面にセラミックペーストを同時に塗布するようにされる。
【0019】
この発明において、上記塗布プレートとしては、グリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体の切断側面に当接する塗布面を有し、塗布面にセラミックペーストを保持するための凹部が形成され、凹部にセラミックペーストを充填した状態にあるものが用いられることが好ましい。
【0020】
また、セラミックペーストは、E型粘度計10rpmの値で100〜10000mPaの粘度を有することが好ましい。
【0021】
前述したマザーブロックを作製する工程は、好ましい実施態様では、複数のセラミックグリーンシートを用意する工程と、各セラミックグリーンシート上に、内部電極パターンを形成する工程と、セラミックグリーンシートを所定方向に所定間隔ずらしながら積層する工程とを備える。
【0022】
この発明に係る積層セラミック電子部品の製造方法において、さらに、特定の内部電極と電気的に接続されるように、部品本体の所定の面上に外部電極を形成する工程が実施されてもよい。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、セラミックペーストが塗布プレートを用いることによってグリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体の切断側面に塗布されるので、それ以外の面にセラミックペーストが付着することによる寸法ばらつきを生じにくくすることができる。
【0024】
また、グリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体を塗布プレートから離隔させながら、セラミックペーストがグリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体と塗布プレートとの双方につながっている状態で、グリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体と塗布プレートとを切断側面の延びる方向に相対的に移動させることによって、セラミックペーストを切断側面に転移させるようにしているので、グリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体の切断側面上に塗布されたセラミックペーストの厚みをより均一なものとすることができる。
【0025】
上述の塗布工程が、グリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体の内部電極が露出した面に当接する塗布面を有し、塗布面にセラミックペーストを保持するための凹部が形成され、凹部にセラミックペーストを充填した状態にある、塗布プレートを用いて実施されると、グリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体の切断側面のみにセラミックペーストをより確実に塗布することができる。
【0026】
セラミックペーストとして、E型粘度計10rpmの値で100〜10000mPaの粘度を有するものを用いると、セラミックペーストの塗布によって形成された生のセラミック保護層について良好な保形性を得ることができる。また、塗布プレートを用いる場合には、塗布プレートからグリーンチップまたは棒状のグリーンブロック体へのセラミックペーストの転移を円滑に行なうことができる。
【0027】
この発明の第1の局面において、上述したセラミックペーストの塗布が、行および列方向に配列された状態であって、各々の切断側面が揃って開放面となる方向に向けられた複数のグリーンチップに対して一挙に実施されると、第2の局面での棒状のグリーンブロック体に対して塗布工程を実施する場合と同様、塗布工程を能率的に進めることができるとともに、グリーンチップ間でのセラミックペーストの塗布厚のばらつきを生じにくくすることができる。
【0028】
また、この発明の第2の局面において、上記第1切断工程を実施することによって得られた複数の棒状のグリーンブロック体が、所定方向に配列された状態にあるとき、塗布工程では、所定方向に配列された状態の複数の棒状のグリーンウロック体の互いの間隔を広げた状態で、複数の棒状のグリーンブロック体を転動させ、それによって、複数の棒状のグリーンブロック体の各々の切断側面を揃って開放面とする、転動工程を実施し、塗布工程では、転動工程の結果、開放面とされた複数の棒状のグリーンブロック体の切断側面にセラミックペーストを同時に塗布するようにされると、塗布工程を一層能率的に進めることができるとともに、第2切断工程で得られた生の部品本体間でのセラミックペーストの塗布厚のばらつきを一層生じにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の第1の実施形態による製造方法によって得られた積層セラミック電子部品の一例としての積層セラミックコンデンサ11の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示した積層セラミックコンデンサ11に備える部品本体12の外観を示す斜視図である。
【図3】図2に示した部品本体12を得るために用意されるグリーンチップ19の外観を示す斜視図である。
【図4】図3に示したグリーンチップ19を得るために用意される内部電極パターン32が形成されたセラミックグリーンシート31を示す平面図である。
【図5】図4に示したセラミックグリーンシート31を所定間隔ずらしながら積層する工程を説明するための平面図である。
【図6】(1)は、図5を用いて説明した積層工程によって得られたマザーブロック35を切断して得られた複数のグリーンチップ19を示す平面図であり、(2)は、(1)において行および列方向に配列された状態の複数のグリーンチップ19の互いの間隔を広げた状態を示す平面図である。
【図7】図6(2)に示した複数のグリーンチップ19を転動させる転動工程を説明するためのもので、グリーンチップ19の端面方向から示した図である。
【図8】図7に示した転動工程の結果、開放面とされたグリーンチップ19の第1の切断側面20にセラミックペースト43を塗布して、生の第1のセラミック保護層22を形成する、塗布工程を説明するためのもので、グリーンチップ19の主面方向から示した図である。
【図9】図8に示した塗布プレート44の平面図である。
【図10】図8に示した塗布工程において実施されるグリーンチップ19と塗布プレート44とを切断側面20の延びる方向に相対的に移動させる工程を説明するためのもので、グリーンチップ19の切断側面方向から示した図である。
【図11】図8に示した塗布工程の結果、グリーンチップ19の第1の切断側面20に生の第1のセラミック保護層22が形成された状態を、グリーンチップ19の端面方向から示す図である。
【図12】図11に示した複数のグリーンチップ19を再び転動させる転動工程を説明するためのもので、グリーンチップ19の端面方向から示した図である。
【図13】図12に示した転動工程の結果、開放面とされたグリーンチップ19の第2の切断側面21にセラミックペースト43を塗布して、生の第2のセラミック保護層23を形成する、塗布工程を説明するためのもので、グリーンチップ19の主面方向から示した図である。
【図14】図13に示した塗布工程の結果、グリーンチップ19の第2の切断側面21に生の第2のセラミック保護層23が形成されることによって得られた生の部品本体12を端面方向から示す図である。
【図15】図14に示した粘着シート38から生の部品本体12を回収する工程を、生の部品本体12の端面方向から示す図である。
【図16】この発明の第2の実施形態を説明するためのもので、第1の変形例としての塗布プレート44aを示す平面図である。
【図17】この発明の第3の実施形態を説明するためのもので、第2の変形例としての塗布プレート44bを示す平面図である。
【図18】この発明の第4の実施形態を説明するためのもので、第3の変形例としての塗布プレート44cを示す断面図である。
【図19】この発明の第5の実施形態を説明するためのもので、第4の変形例としての塗布プレート44dを示す正面図である。
【図20】この発明の第6の実施形態を説明するためのもので、グリーンチップ19aの外観を示す斜視図である。
【図21】図20に示したグリーンチップ19aを得るために用意される内部電極パターン32aが形成されたセラミックグリーンシート31aを示す平面図である。
【図22】従来の積層セラミックコンデンサの一般的な製造方法を説明するためのもので、第1の内部電極1が形成された第1のセラミックグリーンシート3と第2の内部電極2が形成された第2のセラミックグリーンシート4とを示す平面図である。
【図23】従来の積層セラミックコンデンサの製造方法において遭遇し得る問題を説明するためのもので、積層体7にセラミックスラリー8を塗布したときに生じ得る現象を示す積層体7の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、この発明を実施するための形態を説明するにあたり、積層セラミック電子部品として、積層セラミックコンデンサを例示する。
【0031】
図1ないし図15は、この発明の第1の実施形態を説明するためのものである。
【0032】
まず、図1に示すように、積層セラミックコンデンサ11は、部品本体12を備えている。部品本体12は、図2に単独で示されている。部品本体12は、互いに対向する1対の主面13および14と、互いに対向する1対の側面15および16と、互いに対向する1対の端面17および18とを有する、直方体状またはほぼ直方体状をなしている。
【0033】
部品本体12の詳細を説明するにあたり、部品本体12を得るために用意されるグリーンチップ19の外観を示す図3をも参照する。なお、部品本体12は、後の説明から明らかになるように、図3に示したグリーンチップ19の互いに対向する1対の側面(以下、「切断側面」という。)20および21上に生のセラミック保護層22および23をそれぞれ形成したものを焼成して得られたものに相当する。以後の説明において、焼成後の部品本体12におけるグリーンチップ19に由来する部分を積層部24と呼ぶことにする。
【0034】
部品本体12における積層部24は、主面13および14の方向に延びかつ主面13および14に直交する方向に積層された複数のセラミック層25と、セラミック層25間の界面に沿って形成された複数対の第1および第2の内部電極26および27とをもって構成された積層構造を有している。また、部品本体12は、その側面15および16をそれぞれ与えるように積層部24の切断側面20および21上に配置される1対のセラミック保護層22および23を有している。セラミック保護層22および23は、好ましくは、互いに同じ厚みとされる。
【0035】
なお、図1等において、積層部24とセラミック保護層22および23の各々との境界が明瞭に図示されているが、境界を明瞭に図示したのは説明の便宜のためであり、実際には、このような境界は明瞭に現れるものではない。
【0036】
第1の内部電極26と第2の内部電極27とはセラミック層25を介して互いに対向する。この対向によって、電気的特性が発現する。すなわち、この積層セラミックコンデンサ11の場合には、静電容量が形成される。
【0037】
第1の内部電極26は、部品本体12の第1の端面17に露出する露出端を持ち、第2の内部電極27は、部品本体12の第2の端面18に露出する露出端を持っている。しかし、前述したセラミック保護層22および23が配置されるため、内部電極26および27は、部品本体12の側面15および16には露出しない。
【0038】
積層セラミックコンデンサ11は、さらに、内部電極26および27の各々の露出端にそれぞれ電気的に接続されるように、部品本体12の少なくとも1対の端面17および18上にそれぞれ形成された、外部電極28および29を備えている。
【0039】
内部電極26および27のための導電材料としては、たとえば、Ni、Cu、Ag、Pd、Ag−Pd合金、Auなどを用いることができる。
【0040】
セラミック層25ならびにセラミック保護層22および23を構成するセラミック材料としては、たとえば、BaTiO、CaTiO、SrTiO、CaZrOなどを主成分とする誘電体セラミックを用いることができる。
【0041】
セラミック保護層22および23を構成するセラミック材料は、セラミック層25を構成するセラミック材料と少なくとも主成分が同じであることが好ましい。この場合、最も好ましくは、同じ組成のセラミック材料が、セラミック層25とセラミック保護層22および23との双方に用いられる。
【0042】
なお、この発明は、積層セラミックコンデンサ以外の積層セラミック電子部品にも適用することができる。積層セラミック電子部品が、たとえば、圧電部品の場合には、PZT系セラミックなどの圧電体セラミック、サーミスタの場合には、スピネル系セラミックなどの半導体セラミックが用いられる。
【0043】
外部電極28および29は、前述したように、部品本体12の少なくとも1対の端面17および18上にそれぞれ形成されるが、この実施形態では、主面13および14ならびに側面15および16の各一部にまで回り込んだ部分を有している。
【0044】
外部電極28および29は、図示しないが、下地層と下地層上に形成されるめっき層とで構成されることが好ましい。下地層のための導電材料としては、たとえば、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag−Pd合金、Auなどを用いることができる。下地層は、導電性ペーストを未焼成の部品本体12上に塗布して部品本体12と同時焼成するコファイア法を適用することによって形成されても、導電性ペーストを焼成後の部品本体12上に塗布して焼き付けるポストファイア法を適用することによって形成されてもよい。あるいは、下地層は、直接めっきにより形成されてもよく、熱硬化性樹脂を含む導電性樹脂を硬化させることにより形成されてもよい。
【0045】
下地層上に形成されるめっき層は、好ましくは、Niめっきおよびその上のSnめっきの2層構造とされる。
【0046】
次に、図4ないし図15をさらに参照しながら、上述した積層セラミックコンデンサ11の製造方法について説明する。
【0047】
まず、図4にその一部を示すように、セラミック層25となるべきセラミックグリーンシート31が用意される。より詳細には、図示しないキャリアフィルム上で、ダイコータ、グラビアコータ、マイクログラビアコータなどを用いて、セラミックグリーンシート31が成形される。セラミックグリーンシート31の厚みは、好ましくは、3μm以下とされる。
【0048】
次に、同じく図4に示すように、セラミックグリーンシート31上に、所定のパターンをもって導電性ペーストが印刷される。これによって、内部電極26および27の各々となるべき内部電極パターン32が形成されたセラミックグリーンシート31が得られる。より具体的には、セラミックグリーンシート31上に、帯状の内部電極パターン32が複数列形成される。内部電極パターン32の厚みは、好ましくは、1.5μm以下とされる。
【0049】
図5において、帯状の内部電極パターン32が延びる長手方向(図5による左右方向)の切断線33およびこれに対して直交する幅方向(図5による上下方向)の切断線34の各一部が図示されている。帯状の内部電極パターン32は、2つ分の内部電極26および27が各々の引出し部同士で連結されたものが、長手方向に沿って連なった形状を有している。なお、図5は図4より拡大されている。
【0050】
次に、上述のように内部電極パターン32が形成されたセラミックグリーンシート31を、図5(A)と(B)とに示すように、幅方向に沿って所定間隔、すなわち内部電極パターン32の幅方向寸法の半分ずつ、ずらしながら所定枚数積層し、その上下に導電性ペーストが印刷されていない外層用セラミックグリーンシートを所定枚数積層することが行なわれる。切断線33および34が図5(A)および(B)に共通して図示されていることから、図5(A)と(B)とを対照すれば、セラミックグリーンシート31の積層時のずらせ方が容易に理解される。
【0051】
上述した積層工程の結果、図6(1)に示したマザーブロック35が得られる。図6において、マザーブロック35の内部に位置する最も上の内部電極パターン32ないしは内部電極26が破線で示されている。
【0052】
次に、マザーブロック35は、静水圧プレスなどの手段により積層方向にプレスされる。
【0053】
次に、マザーブロック35は、互いに直交する第1方向の切断線34および第2方向の切断線33に沿って切断され、図6(1)に示すように、行および列方向に配列された状態の複数のグリーンチップ19が得られる。この切断には、ダイシング、押切り、レーザカットなどが適用される。なお、図6(1)等の図面では、図面作成上の問題から、1個のマザーブロック35は、そこから6個のグリーンチップ19が取り出されるような寸法とされたが、実際には、より多数のグリーンチップ19が取り出される寸法とされる。
【0054】
各グリーンチップ19は、図3に単独で示すように、生の状態にある複数のセラミック層25と複数の内部電極26および27とをもって構成された積層構造を有している。グリーンチップ19の切断側面20および21は、第1方向の切断線34に沿う切断によって現れた面であり、端面36および37は第2方向の切断線33の切断によって現れた面である。切断側面20および21には、内部電極26および27のすべてが露出している。また、一方の端面36には、第1の内部電極26のみが露出し、他方の端面37には、第2の内部電極27のみが露出している。
【0055】
図6(1)に示すように、行および列方向に配列された状態の複数のグリーンチップ19は、拡張性のある粘着シート38上に貼り付けられる。そして、粘着シート38は、図示しないエキスパンド装置によって、矢印39で示すように拡張される。これによって、図6(2)に示すように、行および列方向に配列された状態の複数のグリーンチップ19は、互いの間隔を広げた状態とされる。
【0056】
このとき、後で実施される転動工程において、複数のグリーンチップ19同士がぶつからず、円滑に転動させることを可能とする程度に、粘着シート38が拡張される。グリーンチップ19の寸法にもよるが、一例として、粘着シート38は、元の寸法の160%程度拡張される。
【0057】
上述の粘着シート38としては、たとえば、塩化ビニル樹脂からなり、粘着層がアクリル系粘着剤によって与えられるものが用いられる。この粘着シート38は、一旦拡張されると、完全に元の形態には戻らない可塑性を有している。したがって、拡張された後の粘着シート38のハンドリングが容易である。たとえば、マザーブロック35の切断によって複数のグリーンチップ19を得た後、グリーンチップ19に含まれるバインダによって、隣り合うグリーンチップ19の切断側面20および21同士あるいは端面36および37同士が再接着する可能性があるが、粘着シート38は、一旦拡張されると、完全に元の形態には戻らないため、切断側面20および21同士あるいは端面36および37同士が接触することがなく、よって、再接着するような事態を避けることができる。
【0058】
次に、複数のグリーンチップ19を転動させ、それによって、複数のグリーンチップ19の各々の第1の切断側面20を揃って開放面とする、転動工程が実施される。
【0059】
そのため、図7(1)に示すように、複数のグリーンチップ19が、粘着シート38とともに、支持台40上に置かれ、他方、転動作用板41がグリーンチップ19に対して上から作用し得る状態に置かれる。支持台40および転動作用板41は、好ましくは、シリコーンゴムから構成される。
【0060】
次に、支持台40が転動作用板41に対して矢印42方向へ移動される。これによって、図7(2)に示すように、複数のグリーンチップ19が一挙に90度回転し、その第1の切断側面20を上方へ向けた状態とされる。この状態で転動作用板41を除去すれば、第1の切断側面20が開放面となる。
【0061】
なお、上記のグリーンチップ19の転動をより円滑に生じさせるようにするため、粘着シート38から粘着性ゴムシート上へグリーンチップ19を移し替えてから転動操作を行なってもよい。この場合、粘着性ゴムシートは、弾性率が50MPa以下で厚さが5mm以下であることが好ましい。
【0062】
次に、図8に示すように、開放面とされたグリーンチップ19の第1の切断側面20にセラミックペースト43を塗布して、生の第1のセラミック保護層22(図2参照)を形成する、塗布工程が実施される。
【0063】
そのため、図8および図9に示す塗布プレート44が用意される。塗布プレート44は、グリーンチップ19の切断側面20に当接する塗布面45を有し、塗布面には、セラミックペースト43を保持するための凹部46が形成され、凹部46には、セラミックペースト43が充填されている。この実施形態では、凹部46は、図9によく示されているように、複数の溝によって与えられる。
【0064】
塗布工程を実施するにあたり、図8に示すように、グリーンチップ19の切断側面20に、塗布プレート44の塗布面45を当接させるとともに、凹部46に充填されたセラミックペースト43を接触させる工程と、グリーンチップ19を塗布プレート44から離隔させながら、凹部46に充填されたセラミックペースト43をグリーンチップ19の切断側面20に転移させる工程とが実施される。この場合、毛細管現象等も働いて、グリーンチップ19の切断側面20全面にセラミックペースト43が塗布され、他方、切断側面20以外の面にはセラミックペースト43は付与されない。セラミックペースト43の塗布厚みは、凹部46の幅、深さもしくは配列ピッチ、またはセラミックペースト43の粘度もしくはそこに含まれる固形分濃度などによって調整することができる。また、重力によりセラミックペースト43がグリーンチップ19側に転移されやすくするように、グリーンチップ19側を下に、セラミックペースト43側を上にしてもよい。
【0065】
なお、塗布プレート44へのグリーンチップ19の単純な近接・離隔動作だけでは、離隔動作の際、セラミックペースト43が糸引きするため、切断側面20の中央部で厚く、四隅部で薄く、セラミックペースト43が付与されたり、切断側面20と塗布面45とが接触した部分に接触痕が残ったりするといった不具合のため、セラミックペースト43を均一な厚みで塗布することができない場合がある。
【0066】
このような不都合を低減するため、グリーンチップ19を塗布プレート44から離隔させる際、セラミックペースト43がグリーンチップ19と塗布プレート44との双方につながっている状態で、グリーンチップ19と塗布プレート44とを切断側面20の延びる方向に相対的に移動させる工程が実施される。
【0067】
上記の相対的移動の態様としては、図10に示すように、切断側面20の長辺方向の往復運動47、短辺方向の往復運動48、対角線方向の往復運動49もしくは50、円もしくは楕円運動51、これらを複合した運動、またはランダムな方向の運動などがあり得る。特に、対角線方向の往復運動49と対角線方向の往復運動50とを組み合わせることにより、セラミックペーストの塗布厚が薄くなりがちな切断側面20の四隅部にまで十分にセラミックペーストを行きわたらせることが容易である。したがって、四隅部でのセラミックペーストの厚みを所定以上に確保することが容易であり、得られた積層セラミックコンデンサ11の耐湿性の向上を期待することができる。
【0068】
また、セラミックペースト43を均一な厚さで塗布するために、複数回の塗布工程が実施されてもよい。たとえば、塗布プレート44の接触痕が残った状態で一度セラミックペースト43を乾燥させた後、さらに、平板上に均一な厚みをもって形成されたセラミックペースト膜に、グリーンチップ19の切断側面20側を浸漬すれば、塗布プレート44の接触痕が消え、均一な厚みでセラミックペーストを塗布することができる。
【0069】
セラミックペースト43の粘度は、凹部46内からグリーンチップ19に円滑に転移される程度に低く、他方、セラミックペースト43によって形成された生のセラミック保護層22の形状が表面張力で流動しない程度に高いことが望ましい。好ましい粘度は、E型粘度計10rpmの値で100〜10000mPaである。なお、セラミックペースト43の粘度は、そこに含まれる溶剤とバインダと比率の調整、またはバインダの種類などによって調整することができる。
【0070】
図11には、複数のグリーンチップ19が粘着シート38を介して支持台40によって支持されながら、上述した塗布工程の結果、グリーンチップ19の第1の切断側面20に生の第1のセラミック保護層22が形成された状態が示されている。
【0071】
塗布工程の後、必要に応じて、乾燥工程が実施される。乾燥工程では、第1のセラミック保護層22が形成されたグリーンチップ19が、たとえば、120℃に設定されたオーブンに5分間入れられる。このとき、熱風式オーブンを用いると、セラミック保護層22を形成するセラミックペースト43の表面から乾燥が進み、厚みの比較的薄い周辺部分から乾いていくことで塗布厚みが不均一になりやすい。このような不都合を減じるためには、遠赤外線ヒータまたは近赤外線ヒータを熱源とするオーブンを用いることが好ましい。遠赤外線ヒータまたは近赤外線ヒータによれば、セラミックペースト43の内部までほぼ均一に熱せられるため、塗布厚みが不均一になることを抑制できる。
【0072】
次に、図7を参照して説明した工程と同様の転動工程が実施される。すなわち、複数のグリーンチップ19を転動させ、それによって、複数のグリーンチップ19の各々の第2の切断側面21を揃って開放面とする、転動工程が実施される。
【0073】
そのため、図12(1)に示すように、粘着シート38を介して支持台40によって支持された複数のグリーンチップ19に対して、転動作用板41が上から作用し得る状態に置かれる。
【0074】
次に、支持台40が転動作用板41に対して矢印52方向へ移動される。これによって、複数のグリーンチップ19が一挙に90度回転することを2回繰り返し、図12(2)に示すように、複数のグリーンチップ19が各々の第2の切断側面21を上方へ向けた状態とされる。この状態で転動作用板41を除去すれば、第2の切断側面21が開放面となる。
【0075】
次に、図13に示すように、開放面とされたグリーンチップ19の第2の切断側面21にセラミックペースト43を塗布して、生の第2のセラミック保護層23(図2参照)を形成する、塗布工程が実施される。この工程では、図8を参照して前述した工程の場合と同様、塗布プレート44が用意され、グリーンチップ19の切断側面21に、塗布プレート44の塗布面45を当接させるとともに、凹部46に充填されたセラミックペースト43を接触させ、次いで、グリーンチップ19を塗布プレート44から離隔させながら、凹部46に充填されたセラミックペースト43をグリーンチップ19の切断側面21に転移させることが行なわれる。
【0076】
上記の2回目の塗布工程においても、グリーンチップ19を塗布プレート44から離隔させる際、セラミックペースト43がグリーンチップ19と塗布プレート44との双方につながっている状態で、グリーンチップ19と塗布プレート44とを切断側面21の延びる方向に相対的に移動させる工程が実施される。
【0077】
図14には、複数のグリーンチップ19が粘着シート38を介して支持台40によって支持されながら、上述した2回の塗布工程の結果、グリーンチップ19の第1および第2の切断側面20および21の各々に生の第1および第2のセラミック保護層22および23が形成された状態にある生の部品本体12が示されている。
【0078】
2回目の塗布工程の後も、必要に応じて、乾燥工程が実施される。
【0079】
次に、複数の生の部品本体12が粘着シート38とともに支持台40から外された後、図15に示すように、生の部品本体12から粘着シート38を剥離することによって、生の部品本体12が回収される。この工程では、生の部品本体12が粘着シート38から垂れ下がった状態としながら、ナイフエッジ53を上方から粘着シート38に押し当てることにより、粘着シート38を下方へ突出するように屈曲させることが行なわれる。生の部品本体12は、粘着シート38が屈曲されることにより、粘着シート38から剥がれ、下方へ落下し、回収される。
【0080】
次に、生の部品本体12が焼成される。焼成温度は、積層用セラミックグリーンシート31ならびにセラミックペースト43に含まれるセラミック材料や内部電極26および27に含まれる金属材料にもよるが、たとえば900〜1300℃の範囲に選ばれる。
【0081】
次に、焼成後の部品本体12の両端面17および18に導電性ペーストを塗布し、焼き付け、さらに、必要に応じて、めっきが施されることによって、外部電極28および29が形成される。なお、導電性ペーストの塗布は、生の部品本体12に対して実施され、生の部品本体12の焼成時に、導電性ペーストの焼付けを同時に行なうようにしてもよい。
【0082】
このようにして、図1に示した積層セラミックコンデンサ11が完成される。
【0083】
以上、この発明を特定的な実施形態に関連して説明したが、この発明の範囲内において、その他種々の変形例が可能である。
【0084】
たとえば、図8、図9および図13に示した塗布プレート44については、以下のような変形例も可能である。図16、図17、図18および図19は、それぞれ、塗布プレートの第1、第2、第3および第4の変形例を示すものである。図16ないし図19において、図8、図9および図13に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0085】
図16に示した塗布プレート44aは、グリーンチップの側面に当接する塗布面45を有し、この塗布面45には、平面形状がたとえば円形の複数の凹部46が形成されている。複数の凹部46は、塗布面45においてほぼ等間隔に分布している。凹部46には、セラミックペースト43が充填されている。
【0086】
図17に示した塗布プレート44bは、グリーンチップの側面に当接する塗布面45を有するが、この塗布面45は、平面形状がたとえば円形の複数の凸部の上面によって与えられる。複数の凸部は、塗布プレート44bの面方向に分布しており、凸部以外の部分が凹部46とされる。凹部46には、セラミックペースト43が充填されている。
【0087】
図18に示した塗布プレート44cは、図16に示した塗布プレート44aの場合と同様、グリーンチップの側面に当接する塗布面45を有し、この塗布面45には、複数の凹部46が形成され、複数の凹部46は、塗布面45においてほぼ等間隔に分布している。この塗布プレート44cの特徴となるところは、凹部46が貫通孔によって与えられるとともに、塗布プレート44cは、セラミックペースト43を収容するペースト槽54の上面開口を閉じるように配置されることである。
【0088】
図18に示した塗布プレート44cによれば、前述した塗布プレート44、44aおよび44bに比べて、凹部46に底面が無い分、凹部46内におけるセラミックペースト43と塗布プレート44cとの接触面積を小さくすることができるので、セラミックペースト43をグリーンチッ19側により転移させやすくすることができる。
【0089】
図19に示した塗布プレート44dは、単なる平板形状であり、その上方主面上にセラミックペースト43からなる比較的薄い層が形成されている。想像線で示すグリーンチップ19をセラミックペースト43からなる層に接触させることにより、セラミックペースト43をグリーンチップ19のたとえば第1の切断側面20に塗布することができる。
【0090】
また、内部電極および内部電極パターンは、たとえば、以下のように変更することもできる。図20は、図3に対応する図であって、グリーンチップ19aの外観を示す斜視図であり、図21は、図5に対応する図であって、図20に示したグリーンチップ19aを得るために用意される内部電極パターン32aが形成されたセラミックグリーンシート31aを示す平面図である。
【0091】
グリーンチップ19aは、図20に示すように、生の状態にある複数のセラミック層25aと複数の内部電極26aおよび27aとをもって構成された積層構造を有している。第1の内部電極26aと第2の内部電極27aとは、積層方向において交互に配置される。
【0092】
他方、図21に示すように、セラミックグリーンシート31a上に形成される内部電極パターン32aは、網状をなしており、内部電極26aの主要部としての対向部となるべき部分と内部電極27aの主要部としての対向部となるべき部分とが上下方向に交互に連結されながら連なった形態を有している。
【0093】
図21において、第1方向、すなわち左右方向の切断線34aおよびこれに対して直交する第2方向、すなわち上下方向の切断線33aが図示されている。前述したグリーンチップ19aにおいて、切断側面20aおよび21aは、第1方向の切断線34aに沿う切断によって現れた面であり、端面36aおよび37aは第2方向の切断線33aの切断によって現れた面である。切断側面20aおよび21aには、内部電極26aおよび27aのすべてが露出している。また、一方の端面36aには、第1の内部電極26aのみが露出し、他方の端面37aには、第2の内部電極27aのみが露出している。
【0094】
図21に示した網状の内部電極パターン62aには、内部電極パターンが形成されない上下方向に長手の八角形状の穴あき部65が千鳥状に配置されている。上下方向に隣接する穴あき部65間には、内部電極26aおよび27aの引出し部となるべき部分が位置している。
【0095】
セラミックグリーンシート31aを積層するにあたっては、図21(A)と同(B)とに示すように、穴あき部65の左右方向の間隔分ずつ、内部電極パターン62aを左右方向にずらすように、セラミックグリーンシート31aがずらされながら積層される。
【0096】
上述の積層によって得られたマザーブロックは、図21に示した切断線33aおよび34aに沿って切断され、図20に示すようなグリーンチップ19aが得られる。第2方向の切断線33aの各々は、穴あき部65を左右方向において2等分するように位置しており、第1方向の切断線34aは、その2本が1つの穴あき部65を横切るように位置している。
【0097】
図20および図21を参照して説明した実施形態では、内部電極26aおよび27aの各々の引出し部は、各々の対向部より狭い幅を有し、かつ一定の幅をもって延びている。また、対向部の、引出し部へと連なる領域では、引出し部の幅と等しくなるように、幅が次第に狭くなっている。
【0098】
上述した実施形態において、穴あき部65の形状を変更することにより、内部電極26aおよび27aの引出し部およびそれらに連なる対向部の端部の形状を種々に変更することができる。たとえば、穴あき部65の形状を長方形に変更することも可能である。
【0099】
また、前述した実施形態では、マザーブロック35から、図5に示した切断線33および34の各々に沿う切断工程を実施して、複数のグリーンチップ19を得てから、切断側面20および21にセラミック保護層22および23を形成するためのセラミックペースト43を塗布する工程を実施したが、以下のように変更することも可能である。
【0100】
すなわち、マザーブロック35を得た後、マザーブロック35を図5に示した第1方向の切断線34のみに沿って切断することによって、第1方向の切断線34に沿う切断によって現れた切断側面20および21に内部電極26および27が露出した状態にある、複数の棒状のグリーンブロック体を得る、第1切断工程がまず実施される。
【0101】
次に、棒状のグリーンブロック体は、拡張性のある粘着シートに貼り付けられ、図7ないし図14を参照して前述した転動工程を含む塗布工程と実質的に同様の転動工程を含む塗布工程が実施されることによって、切断側面20および21にセラミックペースト43が塗布され、棒状のグリーンブロック体に生のセラミック保護層22および23が形成される。
【0102】
次に、生のセラミック保護層22および23が形成された棒状のグリーンブロック体を、上記第1方向に直交する第2方向の切断線33に沿って切断することによって、複数の生の部品本体12を得る、第2切断工程が実施される。
【0103】
その後、前述した実施形態の場合と同様、生の部品本体12が焼成され、以降同様の工程が実施されることにより、積層セラミックコンデンサ11が完成される。
【符号の説明】
【0104】
11 積層セラミックコンデンサ
12 部品本体
19,19a グリーンチップ
20,21,20a,21a グリーンチップの切断側面
22,23 セラミック保護層
24 積層部
25,25a セラミック層
26,27,26a,27a 内部電極
28,29 外部電極
31,31a セラミックグリーンシート
32,32a 内部電極パターン
33,34,33a,34a 切断線
35 マザーブロック
38 粘着シート
40 支持台
41 転動作用板
43 セラミックペースト
44,44a,44b,44c 塗布プレート
45 塗布面
46 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数のセラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシート間の複数の界面に沿ってそれぞれ配置された内部電極パターンとを含む、マザーブロックを作製する工程と、
前記マザーブロックを互いに直交する第1方向の切断線および第2方向の切断線に沿って切断することによって、生の状態にある複数のセラミック層と複数の内部電極とをもって構成された積層構造を有し、かつ前記第1方向の切断線に沿う切断によって現れた切断側面に前記内部電極が露出した状態にある、複数のグリーンチップを得る、切断工程と、
前記切断側面にセラミックペーストを塗布して、生のセラミック保護層を形成することによって、生の部品本体を得る、塗布工程と、
前記生の部品本体を焼成する工程と
を備え、
前記塗布工程は、
前記セラミックペーストを保持した塗布プレートを用意する工程と、
前記グリーンチップの前記切断側面に、前記塗布プレートが保持する前記セラミックペーストを接触させる工程と、
前記グリーンチップを前記塗布プレートから離隔させながら、前記セラミックペーストが前記グリーンチップと前記塗布プレートとの双方につながっている状態で、前記グリーンチップと前記塗布プレートとを前記切断側面の延びる方向に相対的に移動させることによって、前記セラミックペーストを前記グリーンチップの前記切断側面に転移させる、ペースト転移工程と
を含む、
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記切断工程において切断された複数の前記グリーンチップは、行および列方向に配列された状態にあり、
前記塗布工程は、前記行および列方向に配列された状態の複数の前記グリーンチップの互いの間隔を広げた状態で、複数の前記グリーンチップを転動させ、それによって、複数の前記グリーンチップの各々の前記切断側面を揃って開放面とする、転動工程をさらに備え、
前記塗布工程では、前記転動工程の結果、前記開放面とされた複数の前記グリーンチップの前記切断側面に前記セラミックペーストを同時に塗布するようにされる、
請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項3】
積層された複数のセラミックグリーンシートと、前記セラミックグリーンシート間の複数の界面に沿ってそれぞれ配置された内部電極パターンとを含む、マザーブロックを作製する工程と、
前記マザーブロックを第1方向の切断線に沿って切断することによって、生の状態にある複数のセラミック層と複数の内部電極とをもって構成された積層構造を有し、かつ前記第1方向の切断線に沿う切断によって現れた切断側面に前記内部電極が露出した状態にある、複数の棒状のグリーンブロック体を得る、第1切断工程と、
前記切断側面にセラミックペーストを塗布して、生のセラミック保護層を形成する、塗布工程と、
前記生のセラミック保護層が形成された前記棒状のグリーンブロック体を、前記第1方向に直交する第2方向の切断線に沿って切断することによって、複数の生の部品本体を得る、第2切断工程と、
前記生の部品本体を焼成する工程と
を備え、
前記塗布工程は、
前記セラミックペーストを保持した塗布プレートを用意する工程と、
前記棒状のグリーンブロック体の前記切断側面に、前記塗布プレートが保持する前記セラミックペーストを接触させる工程と、
前記棒状のグリーンブロック体を前記塗布プレートから離隔させながら、前記セラミックペーストが前記棒状のグリーンブロック体と前記塗布プレートとの双方につながっている状態で、前記棒状のグリーンブロック体と前記塗布プレートとを前記切断側面の延びる方向に相対的に移動させることによって、前記セラミックペーストを前記棒状のグリーンブロック体の前記切断側面に転移させる、ペースト転移工程と
を含む、
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記第1切断工程において切断された複数の前記棒状のグリーンブロック体は、所定方向に配列された状態にあり、
前記塗布工程は、前記所定方向に配列された状態の複数の前記棒状のグリーンウロック体の互いの間隔を広げた状態で、複数の前記棒状のグリーンブロック体を転動させ、それによって、複数の前記棒状のグリーンブロック体の各々の前記切断側面を揃って開放面とする、転動工程をさらに備え、
前記塗布工程では、前記転動工程の結果、前記開放面とされた複数の前記棒状のグリーンブロック体の前記切断側面に前記セラミックペーストを同時に塗布するようにされる、
請求項3に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記塗布プレートは、前記切断側面に当接する塗布面を有し、前記塗布面に前記セラミックペーストを保持するための凹部が形成され、前記凹部に前記セラミックペーストを充填した状態にある、請求項1ないし4のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記セラミックペーストは、E型粘度計10rpmの値で100〜10000mPaの粘度を有する、請求項1ないし5のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記マザーブロックを作製する工程は、複数の前記セラミックグリーンシートを用意する工程と、各前記セラミックグリーンシート上に、内部電極パターンを形成する工程と、前記セラミックグリーンシートを所定方向に所定間隔ずらしながら積層する工程とを備える、請求項1ないし6のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項8】
特定の前記内部電極と電気的に接続されるように、前記部品本体の所定の面上に外部電極を形成する工程をさらに備える、請求項1ないし7のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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