説明

積層セラミック電子部品

【課題】信頼性を向上させた積層セラミック電子部品を提供する。
【解決手段】複数の誘電体層111が積層されたセラミック素体110と、誘電体層111の少なくとも一面に形成された複数の内部電極層121,122と、内部電極層121,122が形成されない誘電体層111のマージン部に形成され、誘電体グレインのサイズが誘電体層111を形成する誘電体グレインのサイズより小さいマージン部誘電体層113と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック材料を用いる電子部品としては、キャパシタ、インダクター、圧電素子、バリスタ又はサーミスタ等がある。
【0003】
このようなセラミック電子部品のうち積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi−Layered Ceramic Capacitor)は、小型でありながらも高容量が保障され実装が容易であるという長所を有する。
【0004】
このような積層セラミックキャパシタは、コンピューター、個人携帯用端末機(PDA)又は携帯電話等の様々な電子製品の印刷回路基板に取り付けられて電気を充電又は放電させる重要な役割をするチップ状のコンデンサーであり、用途及び容量に応じて多様なサイズと積層形態を有する。
【0005】
特に、最近では、電子製品の小型化に伴い、積層セラミックキャパシタの超小型化及び超高容量化も求められている。
【0006】
よって、製品の超小型化のために誘電体層及び内部電極層の厚さを薄くし且つ超高容量化のために多数の誘電体を積層した形態の積層セラミックキャパシタが製造されている。
【0007】
従来は、内部電極層の積層性を高めるために高温及び高圧で薄膜シートを転写させる熱転写積層法を用いたが、この場合、内部電極層の伸びによってグリーンチップにおける不良が増加するという問題があった。
【0008】
また、焼成過程中に内部電極層を形成するペースト内に含まれた微粒粉末が誘電体層に出ながら内部電極層と接触する誘電体グレイン(grain)の異常粒成長を誘発して積層セラミック電子部品の信頼性が低下するという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、積層セラミックキャパシタの信頼性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、複数の誘電体層が積層されたセラミック素体と、上記誘電体層の少なくとも一面に形成された複数の内部電極層と、当該内部電極層が形成されない誘電体層のマージン部に形成され誘電体グレインのサイズが上記誘電体層を形成する誘電体グレインのサイズより小さいマージン部誘電体層と、を含む積層セラミック電子部品を提供する。
【0011】
本発明の一実施形態において、上記マージン部誘電体層の誘電体グレインの最大グレインサイズ/平均グレインサイズの値は、3.0以下であることができる。
【0012】
この際、上記マージン部誘電体層の最大グレインサイズ/平均グレインサイズの値は、当該マージン部誘電体層を形成するセラミックペースト組成物に含まれる成分及びその含量によって決められることができる。
【0013】
本発明の一実施形態において、上記マージン部誘電体層は、誘電体グレインのサイズ散布が40〜100であることができる。
【0014】
本発明の一実施形態において、上記マージン部誘電体層は、セラミック粉末とバインダーと分散剤とを含むセラミックペースト組成物で形成されることができる。
【0015】
本発明の一実施形態において、上記セラミック粉末の粒径は、80〜200nmであることができる。
【0016】
本発明の一実施形態において、上記バインダーの含量は、上記セラミック粉末100重量部に対して12〜20重量部であることができる。
【0017】
本発明の一実施形態において、上記分散剤の含量は、上記セラミック粉末100重量部に対して2〜10重量部であることができる。
【0018】
本発明の一実施形態において、上記マージン部誘電体層は、積層セラミック電子部品の長さ方向のマージン部及び幅方向のマージン部のうち少なくとも一つの領域に形成されることができる。
【0019】
本発明の一実施形態において、上記誘電体層の厚さは、0.01〜1.0μmであることができる。
【0020】
本発明の一実施形態において、上記内部電極層の厚さは、0.01〜1.0μmであることができる。
【0021】
本発明の一実施形態において、上記積層セラミック電子部品は、上記セラミック素体の両側面に形成され上記内部電極層と電気的に連結された外部電極をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施形態によると、信頼性に優れた大容量の積層セラミック電子部品を具現することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを概略的に示す斜視図である。
【図2】図1のA−A’線に沿う断面図である。
【図3】図1のB−B’線に沿う断面図である。
【図4】図1に示される積層セラミックキャパシタの一部を概略的に示す分解斜視図である。
【図5】図2の一部を示す拡大図である。
【図6】本発明の実施例によるマージン部誘電体層の表面を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図7】比較例によるマージン部誘電体層の表面を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図8】本発明の実施例及び比較例によるマージン部誘電体層を形成する誘電体グレインのサイズ別の分布度を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例及び比較例によるマージン部誘電体層のIR劣化率を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例及び比較例によるマージン部誘電体層のIR劣化率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。但し、本発明の実施形態は、多様な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が後述する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当業界における通常の知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及びサイズ等は、より明確な説明のために誇張されることがある。なお、図面上において同一の符号で表示される要素は同一の要素であり、類似の機能及び作用をする部分には同一の符号を用いる。ちなみに、明細書全体において、ある構成要素を「含む」ということは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0025】
本発明は、セラミック電子部品に関し、本発明の一実施形態によるセラミック電子部品としては積層セラミックキャパシタ、インダクター、圧電体素子、バリスタ、チップ抵抗又はサーミスタ等があり、下記ではセラミック電子部品の一例として積層セラミックキャパシタを例に挙げて説明する。
【0026】
図1から図5を参照すると、本実施形態による積層セラミックキャパシタは、複数の誘電体層111が積層されたセラミック素体110と、誘電体層111の少なくとも一面に形成された複数の内部電極層121、122と、誘電体層111の一面のうち内部電極層121、122が形成されない部分(以下、「マージン部」という)に形成されたマージン部誘電体層113と、を含む。
【0027】
この際、マージン部誘電体層113を形成する誘電体グレインのサイズスペック(spec)は、最大グレインサイズを平均グレインサイズで割った値で、誘電体層111を形成する誘電体グレインのサイズスペックより小さい。
【0028】
本実施形態では、積層セラミックキャパシタの「長さ方向」を図1の「X方向」、「幅方向」を「Y方向」、「厚さ方向」を「Z方向」と定義する。
【0029】
なお、「厚さ方向(Z方向)」は、誘電体層111を積み重ねる方向、即ち、「積層方向」と同じ概念である。
【0030】
セラミック素体110は、一般的に直方体状であることができるが、これに制限されるものではない。
【0031】
また、セラミック素体110は、その寸法に特別な制限はなく、例えば、0.6mm×0.3mm等のサイズで構成されることにより、1.0μF以上、好ましくは22.5μF以上の高容量を有する積層セラミックキャパシタを具現することができる。
【0032】
また、セラミック素体110の最外郭面には、必要に応じて所定厚さのカバー部誘電体層112が形成されることができる。
【0033】
誘電体層111はキャパシタの容量形成に寄与するもので、一つの誘電体層111の厚さを積層セラミックキャパシタの容量設計に合わせて任意に変更しても良い。
【0034】
本実施形態では、焼成後の一つの誘電体層111の厚さを好ましくは1.0μm以下、より好ましくは0.01〜1.0μmとすることができる。
【0035】
このような誘電体層111は、セラミック粉末、例えば、BaTiO系セラミック粉末等を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0036】
上記BaTiO系セラミック粉末としては、例えば、BaTiOにCa、Zr等が一部固溶された(Ba1−xCa)TiO、Ba(Ti1−yCa)O、(Ba1−xCa)(Ti1−yZr)O又はBa(Ti1−yZr)O等があるが、これに限定されるものではない。
【0037】
また、上記セラミック粉末の粒径は、例えば、200nm以下、好ましくは80〜100nmであることができるが、これに限定されるものではない。
【0038】
また、本実施形態における誘電体層111には、上記のようなセラミック粉末と共に、例えば、遷移金属酸化物又は炭化物、希土類元素及びMg又はAl等の多様なセラミック添加剤、有機溶剤、可塑剤、結合剤又は分散剤等が添加されることができる。
【0039】
この際、分散剤の含量は、セラミック粉末100重量部に対して2〜10重量部であることができる。
【0040】
内部電極層121、122は、誘電体層111を形成するセラミックグリーンシート上に形成されて積層され、焼結によって一つの誘電体層111を介してセラミック素体110の内部に形成されることができる。
【0041】
このような内部電極層121、122は、相違する極性を有する一対の第1の内部電極層121と第2の内部電極層122とからなり、積層方向に沿って誘電体層111を介して対向して配置されることができる。
【0042】
このような第1及び第2の内部電極層121、122は、例えば、パラジウム(Pd)、パラジウム−銀(Pd−Ag)合金等の貴金属材料及びニッケル(Ni)、銅(Cu)の一つ以上の物質からなる導電性ペーストを用いて形成されることができるが、これに限定されるものではない。
【0043】
また、第1及び第2の内部電極層121、122の厚さは、用途等に応じて適宜決められ、例えば、1.0μm以下、好ましくは0.01〜1.0μmの範囲内であることができる。
【0044】
第1及び第2の内部電極層121、122の末端は、セラミック素体110の一面に露出されることができる。本実施形態では、第1及び第2の内部電極層121、122の長さ方向(X方向)の末端がセラミック素体110の対向する両側端面に交互に露出されている。
【0045】
しかしながら、本発明は、これに限定されず、第1又は第2の内部電極層121、122の末端がセラミック素体110の同じ一面に露出されるか又は二つ以上の面にそれぞれ露出される等の多様な構造が可能である。
【0046】
また、セラミック素体110の両側面には、第1及び第2の外部電極131、132が形成されることができる。第1及び第2の外部電極131、132は、セラミック素体110の一面に露出された第1及び第2の内部電極層121、122の末端と電気的に連結されることができる。
【0047】
このような第1及び第2の外部電極131、132は、好ましくは内部電極と同じ材質の導電性物質、例えば、パラジウム(Pd)、パラジウム−銀(Pd−Ag)合金等の貴金属材料及びニッケル(Ni)、銅(Cu)の一つ以上の物質からなる導電性ペーストを用いて形成されることができるが、これに限定されるものではない。
【0048】
上記第1及び第2の外部電極131、132の厚さは、用途等に応じて適宜決められ、例えば、10〜50μmであることができる。
【0049】
一方、セラミックペーストにセラミック粉末を適用する場合、当該セラミック粉末を分散させるために過量のバインダー及び分散剤が求められる。
【0050】
このような過量のバインダー及び分散剤は、セラミックキャパシタを積層及び圧着した後に内部電極層が伸びる原因となるため、結果的には、設計時のマージン部と比較して実際のマージン部の面積が減少するようになる。
【0051】
本実施形態によると、このような現象を防ぐために上記誘電体層111と類似の組成でペースト組成物を印刷することにより第1及び第2の内部電極層121、122の伸びを防止することができる。
【0052】
即ち、誘電体層111上には第1及び第2の内部電極層121、122が形成され、当該第1及び第2の内部電極層121、122が形成されないマージン部にはマージン部誘電体層113が形成される。
【0053】
マージン部は、セラミックキャパシタの幅方向(Y方向)又は長さ方向(X方向)のうち少なくとも一つの領域に形成されることができる。本実施形態では、マージン部誘電体層113が幅方向のマージン部と長さ方向のマージン部の両方ともに形成されている。
【0054】
しかしながら、本発明はこれに限定されず、必要に応じて上記マージン部誘電体層113を幅方向のマージン部又は長さ方向のマージン部のうち一部領域のみに形成することもできる。
【0055】
また、マージン部誘電体層113は、誘電体層111上に形成された第1及び第2の内部電極層121、122の高さと同一又は類似に形成されることができる。
【0056】
したがって、マージン部誘電体層113によって、第1及び第2の内部電極層121、122による段差を解消し、第1及び第2の内部電極層121、122の伸びを防止することが可能となる。
【0057】
一方、焼成過程でマージン部の分散性が低下すると、気孔率が増加して気孔の周囲にグレインが異常粒成長し、マージン部誘電体層113を形成する誘電体グレインのサイズスペックが高すぎると、焼成後にマージン部の分散性が低下して気孔率が増加し、これにより、信頼性が低下することがある。
【0058】
このような問題を防止するために、マージン部誘電体層113を形成する誘電体グレインのサイズスペックは、3.0以下であることができる。これに関しては下記の実施例で詳述する。
【0059】
マージン部誘電体層113は、微粒のセラミック粉末を含むペースト組成物で形成されることができる。本実施形態では、マージン部誘電体層113を形成するためのペースト組成物をマージン部用セラミックペースト組成物と称する。
【0060】
このようなマージン部誘電体層113を形成する誘電体グレインのサイズは、マージン部用セラミックペースト組成物に含まれたセラミック粉末の分散程度に応じて決められることができる。
【0061】
また、マージン部誘電体層113を形成する誘電体グレインのサイズは、マージン部用セラミックペースト組成物の成分及び各成分の含量に応じて調節されることができる。
【0062】
本発明の一実施形態によると、マージン部誘電体層113のグレインのサイズを最適化するために、マージン部用セラミックペースト組成物の成分及びその含量等を調節する方法を用いることができる。
【0063】
以下、本実施形態によるマージン部用セラミックペースト組成物に関して具体的に説明する。
【0064】
なお、実施例では、マージン部用セラミックペースト組成物の製造方法を中心に説明する。これにより、マージン部用セラミックペースト組成物の成分が明確になるはずである。
【0065】
マージン部用セラミックペースト組成物を製造するために、まず、セラミック粉末と第1の溶剤とを混合して1次混合物を製造する。
【0066】
上記1次混合物には、第1の分散剤及びその他の添加剤がさらに含まれることができる。
【0067】
上記セラミック粉末としては、セラミック素体110を構成する誘電体層111に含まれるセラミック粉末と同一又は類似のものを用いることができる。
【0068】
このようなセラミック粉末の粒径は、特に制限されないが、本実施形態によりマージン部誘電体層113の誘電体グレインのサイズを調節するために決められることができる。
【0069】
したがって、セラミック粉末の平均粒径は、200nm以下、好ましくは80〜100nmであることができる。
【0070】
上記第1の溶剤としては、粘度が比較的低いもの、例えば、トルエン、エタノール及びこれらの混合溶剤を用いることができるが、これに制限されるものではない。
【0071】
次に、上記1次混合物を解砕してスラリー状の1次混合物を製造する。本実施形態では、解砕方法としてはビーズミル法を用い、解砕条件は周速6m/s及び流量50hg/hrであり(high shear micro mill適用)、固形粉は約20〜40wt/%、好ましくは30wt/%であることができる。
【0072】
解砕後にセラミック粉末の粒度、比表面積(BET)、微細形状(SEM)を測定してセラミックスラリーの分散性を確認することができる。
【0073】
上記セラミックスラリーの粘度は、10〜300cps、好ましくは50〜100cpsであることができる。
【0074】
次いで、先に製造された1次混合物に第2の溶剤、第2の分散剤及びバインダーを添加してペースト状の2次混合物を形成する。
【0075】
ペースト状の2次混合物は、印刷に適するように高粘度特性を有し、その粘度は5,000〜20,000cpsであることができる。
【0076】
2次混合物の粘度は、印刷方法に応じて適正範囲に調節され、スクリーン印刷工程に適用される場合は7,000〜25,000cpsであることができる。2次混合物は、高粘度のペースト状で、3−ロールミル等の方法により分散工程が行われることができる。
【0077】
2次混合物の製造に用いられる第2の溶剤は、1次混合物の製造時に用いられた第1の溶剤に比べて高い沸点及び粘度を有するもので、当該第2の溶剤としては一般的にペーストの製造に使用されるものを用いることができる。
【0078】
溶剤としては、例えば、テルピネオール系溶剤、より具体的には、ジヒドロテルピネオール(dihydro terpineol、DHTA)を用いることができるが、その種類に特別な制限はない。
【0079】
テルピネオール系溶剤は、粘度が高くてペーストの製造に有利であり、沸点が高くて乾燥速度が遅いため、印刷された後にレベリング(leveling)特性に有利である。
【0080】
また、上記2次混合物には、第2の溶剤と共にバインダー等の添加剤が添加されることができる。
【0081】
上記バインダーとしては、揺変性(thixotropy)、接着性、相安定性及び3−ロールミリングが可能な物性を具現することができるものであれば特に制限されず、例えば、ポリビニルブチラール樹脂等の有機バインダーを用いることができる。
【0082】
また、上記2次混合物には、内部電極用導電性ペーストに用いられるエチルセルロース樹脂がさらに含まれることができる。
【0083】
このようなバインダーは、2次混合物の分散過程でセラミック粉末の表面にコーティングされるため、当該セラミック粉末の凝集を最小化し分散安定性を維持することができる。
【0084】
また、バインダーは、2次混合物がスクリーン印刷、グラビア印刷等の印刷法に適用されることができるように適正範囲の粘性及び揺変性を与える役割をする。
【0085】
バインダーの含量は、セラミック粉末の分散性と共に積層性及び脱バインダーも考慮して設定されることが好ましい。
【0086】
マージン部用セラミックペースト組成物に含有されるバインダーの含量は、誘電体層111を形成するセラミックペーストに含有されるバインダーの含量と類似の範囲で設定されることができる。
【0087】
また、上記バインダーの含量は、上記セラミック粉末100重量部に対して14〜20重量部であることができるが、これに制限されるものではない。
【0088】
上記バインダーの含量が14重量部未満の場合は、セラミックペーストの分散性又は印刷特性が低下してマージン部誘電体層113の気孔率が増加することがある。
【0089】
上記バインダーの含量が20重量部を超える場合は、脱バインダーを行うことが困難となってセラミックキャパシタの特性が低下することがある。
【0090】
また、2次混合物には、可塑剤がさらに添加されることができる。可塑剤は、トリエチレングリコール系列の可塑剤であることができ、その含量はセラミック粉末100重量部に対して5〜30重量部、好ましくは20重量部であることができるが、これに限定されるものではない。
【0091】
一方、2次混合物を形成する前に第1の溶剤を除去する段階が行われることができる。
【0092】
第1の溶剤は、沸点が低い特性を有するため、蒸留器で揮発させて除去されることができる。
【0093】
第1の溶剤を除去すると、スラリー状の1次混合物は、湿潤のケーキ状となることができる。
【0094】
したがって、湿潤のケーキ状の1次混合物に2次混合物に用いられる第2の溶剤を投入してペースト状の2次混合物を形成することができる。
【0095】
この際、第1の溶剤は、完全に除去されることが好ましいが、一部が除去されず2次混合物に残っていることがある。
【0096】
このように第1の溶剤が残留する場合、誘電体層111を損傷させる恐れがあるため、当該第1の溶剤の除去率は、できる限り高いことが好ましい。
【0097】
但し、2次混合物に第2の分散剤、バインダー又は第2の溶剤が添加される場合、第1の溶剤の除去が困難となることがあるため、当該第1の溶剤の除去率を高めるためには、当該第2の分散剤、バインダー又は第2の溶剤の添加前に当該第1の溶剤を除去する段階を行うことが好ましい。
【0098】
一般的に、内部電極層121、122を形成する金属粉末や平均粒径が大きいセラミック粉末は、高粘度で3−ロールミル(3−roll mill)を用いて分散されることができる。
【0099】
しかしながら、平均粒径が小さいセラミック粉末は、比表面積及び硬度が大きいため、高粘度で分散性を確保することが困難である。
【0100】
さらに、超小型及び超薄膜の積層セラミックキャパシタに適用するためには、より小さい粒径のセラミック粉末を用いなければならず、この場合、分散性を確保することがより困難となる。
【0101】
このように、セラミック粉末の分散性が十分に確保されないと、焼成後にマージン部誘電体層113の気孔率が増加して信頼性低下が発生することがある。
【0102】
本実施形態によると、微粒のセラミック粉末に合うように低粘度を有する第1の溶剤を用い、解砕及び分散してセラミック粉末の凝集を最小化することにより分散性を確保することができる。
【0103】
以後、高粘度を有する第2の溶剤を用いて印刷のための高粘度のペーストを製造することができる。これにより、微粒のセラミック粉末を含むことが可能となる。
【0104】
また、既存より分散性に優れたセラミックペーストを製造しこれを用いることにより、マージン部誘電体層113の誘電体グレインのサイズスペックを3.0以下とすることができる 。
【0105】
以下、本実施形態による積層セラミックキャパシタの製造方法を説明する。
【0106】
まず、複数のセラミックグリーンシートを準備する。
【0107】
上記セラミックグリーンシートは、セラミック粉末とバインダーと溶剤とを混合して製造されたスラリーをドクターブレード法により数μmの厚さを有するシート状に製作したものである。
【0108】
上記スラリーは、セラミック素体110を形成する誘電体層111及びカバー部誘電体層112を形成するセラミックグリーンシート用スラリーである。
【0109】
次に、上記セラミックグリーンシート上に内部電極用導電性ペーストを塗布して第1及び第2の内部電極層121、122を形成する。
【0110】
上記第1及び第2の内部電極層121、122は、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法により形成されることができる。
【0111】
次いで、第1及び第2の内部電極層121、122が形成されないセラミックグリーンシートのマージン部にマージン部誘電体層113を形成する。
【0112】
この際、前述した本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタ用セラミックペーストを第1及び第2の内部電極層121、122が形成されないセラミックグリーンシートのマージン部に印刷し焼成することにより、図4及び図5に示されるようなマージン部誘電体層113を形成することができる。
【0113】
次いで、上記複数のセラミックグリーンシートを積層し、積層方向に加圧して、積層されたセラミックグリーンシートと第1及び第2の内部電極層121、122とを圧着させる。
【0114】
このようにすることで、セラミックグリーンシートと第1及び第2の内部電極層121、122とが交互に積層されたセラミック積層体を製造することができる。
【0115】
この際、圧着過程で第1及び第2の内部電極層121、122が伸びるか又はセラミックグリーンシートの外に露出されることがある。
【0116】
しかしながら、本実施形態によると、第1及び第2の内部電極層121、122が形成されないセラミックグリーンシートのマージン部に印刷されたセラミックペーストで形成されたマージン部誘電体層131によって、当該第1及び第2の内部電極層121、122の伸びが防止されることができる。
【0117】
また、セラミック素体110において、第1及び第2の内部電極層121、122による段差の発生率を減少させることができる。
【0118】
次いで、セラミック積層体を一つのキャパシタに対応する領域毎に切断してチップ化する。
【0119】
この際、第1及び第2の内部電極層121、122の一端が側面に交互に露出されるように切断する。
【0120】
次いで、チップ化した積層体を約1050〜1200℃で焼成してセラミック素体110を製造する。
【0121】
次いで、セラミック素体110の側面に露出された第1及び第2の内部電極層121、122と電気的に連結されるように当該セラミック素体110の側面を覆う形態で第1及び第2の外部電極131、132を形成する。以後、第1及び第2の外部電極131、132の表面にニッケル又は錫等を用いてメッキ処理を施すことができる。
【0122】
従来のセラミックペースト組成物並びに本実施例の分散剤の含量及びセラミック粉末の粒径を異ならせて製造されたマージン部用セラミックペースト組成物を用いてマージン部誘電体層を形成し、様々な特性を測定して下記表1及び表2に示した。
【0123】
下記表1のサンプル1〜4は、マージン部用セラミックペースト組成物のうち、分散剤の含量のみが異なり、他の条件は同一である。
【0124】
下記表2のサンプル5〜7は、マージン部用セラミックペースト組成物のうち、セラミック粉末の粒径のみが異なり、他の条件は同一である。
【0125】
【表1】

<マージン部用セラミックペースト組成物の分散剤の含量による特性及び誘電体グレインのサイズ>
【0126】
上記表1を参照すると、サンプル2〜4は、マージン部用セラミックペースト組成物に含まれる分散剤の含量が制御されて焼成後にマージン部誘電体層113の分散性が0.012μm以下、最大グレインサイズが529.7nm、平均グレインサイズが181.3nm以下を示した。
【0127】
これに対し、サンプル1は、分散剤の含量が少なくて焼成後にマージン部誘電体層113の分散性が0.048μm、最大グレインサイズが727.4nm、平均グレインサイズが183.2nmを示し、最大グレインサイズが相対的に大きいことが分かる。
【0128】
【表2】

<マージン部用セラミックペースト組成物のセラミック粉末の粒径による特性及び誘電体グレインのサイズ>
【0129】
上記表2を参照すると、サンプル5及び6は、マージン部用セラミックペースト組成物に含まれるセラミック粉末の粒径が80nm以下のもので、焼成後にマージン部誘電体層113の最大グレインサイズがそれぞれ480.6nm及び428.8nm、平均グレインサイズがそれぞれ159.8nm及び176.9nmを示した。
【0130】
これに対し、サンプル7は、セラミック粉末の粒径が100nmのもので、サンプル5及び6に比べて大きいため、焼成後にマージン部誘電体層113の最大グレインサイズが641.5nm、平均グレインサイズが207.2nmを示し、サンプル5及び6に比べて相対的に大きいことが分かる。
【0131】
また、従来のマージン部用セラミックペースト組成物及び本発明の一実施例により製造されたマージン部用セラミックペースト組成物でそれぞれマージン部誘電体層113を形成し、その特性を下記表3に示した。
【0132】
下記表3のサンプルA〜Dは、マージン部用セラミックペースト組成物のうち、バインダーの含量のみが異なり、他の条件は同一である。
【0133】
【表3】

<マージン部用セラミックペースト組成物のバインダーの含量による特性及び誘電体グレインのサイズ>
【0134】
上記表3を参照すると、サンプルB〜Dは、マージン部用セラミックペースト組成物に含まれるバインダーの含量が制御されて焼成後にマージン部誘電体層113の最大グレインサイズが520nmを超えておらず、サイズ散布が75±nm以下を示した。
【0135】
これに対し、比較例であるサンプルAは、バインダーの含量が少なくて分散が円滑に行われず粒子が凝集しすぎて焼成後にマージン部誘電体層113の気孔率がサンプルA〜Dの中で最大値である14.3%を示した。
【0136】
また、サンプルAの場合、グレインサイズが650nmを超える異常粒成長粒子が見られ、サイズ散布も100±nmを超えた。
【0137】
一方、図6は、サンプル1の微細構造を走査電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)でスキャンした写真であり、図7は、最も好ましい結果を示すサンプルCの微細構造を走査電子顕微鏡でスキャンした写真であり、図8は、サンプルA及びサンプルCの誘電体グレインのサイズ別の分布度を示すグラフであり、図9及び10は、本発明の実施例及び比較例によるマージン部誘電体層のIR劣化率を示すグラフである。
【0138】
上記表3及び図6〜10を参照すると、特に、バインダーの含量が15%であるサンプルCの場合、マージン部誘電体層113の分散性は0.007μm、気孔率は7.3%と最も良く、最大グレインサイズは428.8nm、サイズ散布は50.21±nmと最も小さかった。
【0139】
逆に、サンプルAの場合、マージン部誘電体層113の分散性は0.041μm、気孔率は14.3%であり、最大グレインサイズは687.1nm、サイズ散布は102.2±nmと最も悪かった。
【0140】
上記表3は、信頼性検査である8585検査の結果であって、n=400/lot、85℃、85%RH、6.5V/9.45Vの条件で400個のチップを12時間検査した結果が示されている。
【0141】
これを参照すると、分散性が低いサンプルBの場合、信頼性検査時に劣化するチップの数が増加することが分かる。また、図9及び図10を参照すると、比較例であるサンプルAが本発明の実施例であるサンプルB〜Dに比べて相対的に劣化が多く発生することが分かる。
【0142】
即ち、本実施形態によると、焼成後にマージン部誘電体層113の気孔率を減少させるための好ましい誘電体グレインのサイズスペックの範囲が存在することが分かる。
【0143】
したがって、上記表3及び図6〜10を参照すると、サンプルB〜Dは、マージン部用セラミックペースト組成物に含まれるバインダーの含量が14〜16に制御されるため、BDV散布及びIR劣化チップの発生率において優れた結果を示すことが分かる。
【0144】
即ち、誘電体グレインのサイズスペックが3.0以下の場合、BDV散布が30V以下、IR劣化チップの発生率も10%以下と低いため、積層セラミックキャパシタの信頼性が向上することが分かる。
【0145】
本発明は、上述した実施形態及び添付図面によって限定されることなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載の本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で多様な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これもまた本発明の範囲に属する。
【符号の説明】
【0146】
110 セラミック素体
111 誘電体層
112 カバー部誘電体層
113 マージン部誘電体層
121、122 第1及び第2の内部電極層
131、132 第1及び第2の外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層が積層されたセラミック素体と、
前記誘電体層の少なくとも一面に形成された複数の内部電極層と、
前記内部電極層が形成されない誘電体層のマージン部に形成され、誘電体グレインのサイズが前記誘電体層を形成する誘電体グレインのサイズより小さいマージン部誘電体層と、
を含む、積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記マージン部誘電体層の誘電体グレインの最大グレインサイズ/平均グレインサイズの値は、3.0以下である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記マージン部誘電体層の最大グレインサイズ/平均グレインサイズの値は、当該マージン部誘電体層を形成するセラミックペースト組成物に含まれる成分及びその含量によって決められる、請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記マージン部誘電体層は、誘電体グレインのサイズ散布が40〜100である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記マージン部誘電体層は、セラミック粉末とバインダーと分散剤とを含むセラミックペースト組成物で形成される、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記セラミック粉末の粒径は、80〜200nmである、請求項5に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記バインダーの含量は、前記セラミック粉末100重量部に対して12〜20重量部である、請求項5に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記分散剤の含量は、前記セラミック粉末100重量部に対して2〜10重量部である、請求項5に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項9】
前記マージン部誘電体層は、積層セラミック電子部品の長さ方向のマージン部及び幅方向のマージン部のうち少なくとも一つの領域に形成される、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項10】
前記誘電体層の厚さは、0.01〜1.0μmである、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項11】
前記内部電極層の厚さは、0.01〜1.0μmである、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項12】
前記セラミック素体の両側面に形成され前記内部電極層と電気的に連結された外部電極をさらに含む、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−89946(P2013−89946A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−43079(P2012−43079)
【出願日】平成24年2月29日(2012.2.29)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】