説明

積層フィルム

【課題】基材層接着剤面に貼合せる貼合せ層の濡れ張力が大きく接着親和性が良好で、シール層の滑り摩擦係数が小さくアンチブロッキング性に優れ、然も、各層間の接着が強固で層間剥離がない積層フィルムを提供する。
【解決手段】シール層、中間層、貼合せ層の3層からなる積層シーラントフィルムであって、前記シール層はエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーにアンチブロッキング剤とスリップ剤とを配合した組成物からなり、前記中間層は、スリップ剤を含有せず、且つ、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体若しくはそのアイオノマー又はエチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマーと他のエチレン系重合体との重合体混合物、を樹脂成分とする組成物からなり、前記貼合せ層は、スリップ剤を含有せず、アンチブロッキング剤を配合したエチレン系重合体組成物からなることを特徴とする積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシーラント機能を有する積層フィルムに関し、より詳細には、シール層、中間層、貼合せ層の3層からなり、貼合せ層は基材フィルムとの接着性に優れ、且つ積層フィルムをロール状に巻いたり、重畳したりしても滑り性が損なわれずアンチブロッキング性に優れ、然も層間接着も強固であるためドライラミネーション法やサンドイッチラミネーション法により基材フィルムに積層して優れた包装用多層ヒートシールフィルムを得ることのできる積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品等をはじめ各種物品の包装用フィルムにはヒートシール性に加え、それぞれの用途に応じて耐熱性、透明性、気体バリア性、耐ピンホ−ル、印刷適性等の各種機能が要求される。
このため、包装用フィルムには単体フィルムが用いられることは比較的少なく、ヒートシール性を有するシーラントフィルムと二軸延伸ポリエステルフィルムや二軸延伸ポリアミドフィルム等の基材フィルムとが積層された積層フィルムが多く用いられている。
【0003】
又、自動充填等の普及に伴いこの種の積層フィルムはより一層の多層積層化が進行してきている。
例えば、特許文献1には少なくとも表面基材層、中間層及びシーラント層からなり中間層が直鎖状低密度ポリエチレンと高圧法低密度ポリエチレンとの特定配合比の樹脂組成物からなり、層間接着強度が強く自動充填適応性を有する包装用フィルムの発明が開示されている。
【0004】
更に、特許文献2には、基材層、中間層、内面層からなる積層体であって、該内面層が、更に貼合層、中芯層、シール層から形成された多層積層フィルムが開示され、密封性、低温シール性に優れ、且つバリヤ性を有する液体製品の充填に好適なフィルムが提案されている。
【0005】
最近では、前記のような包装用多層積層フィルムは、例えば、シーラント層(内面層)、緩衝又は中芯層(中間層)、貼合せ層(外面層)等からなる積層態様のシーラントフィルムを一旦作製し、これを例えば接着剤を塗布した基材フィルム面にドライラミネーション法やサンドイッチラミネーション法により貼合せ接着し、積層することにより製作されることが多く、特許文献3には、ヒートシール層表面と貼合せ層表面とをそれぞれ特定粗さの粗面状に形成し、耐熱性基材フィルムとの貼合せ界面に気泡を含まず、ラミネート外観に優れたレトルト用ポリプロピレン系多層シーラントフィルムの発明が開示されている。
【0006】
上記のような包装用多層積層フィルムは、ラミネート外観が良好なことや耐熱性に優れること等の要件の充足もさることながら、基材層の接着剤塗布面に対する貼合せ層の接着親和性が良好であること、即ち、貼合せ層の濡れ張力が大きいこと、ロール状に巻く等フィルム自身を重ねてもフィルム繰出し時に滑り性が損なわれずアンチブロッキング性に優れること、即ち、滑り摩擦係数が小さいこと、更に、前記シーラント層、緩衝又は中芯層、貼合せ層等の各層間の接着が強固で層間剥離がないこと等の要件を満たすことが特に重要とされる。
然も、用途が包装であることから、安価で且つ効率的な生産が可能であることも必要とされる。
しかしながら、上記諸要件をすべて充足する多層シーラントフィルムは、少なくとも本発明者等が知り得た限りに於いて未だ出現していない。
【0007】
【特許文献1】特開平11−10809号公報
【特許文献2】特開2000−117904号公報
【特許文献3】特開2005−178217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者等は上記諸要件を充足する積層フィルムを開発すべく鋭意研究を重ねた結果、シーラント層を特定アイオノマーにアンチブロック剤とスリップ剤を配合した組成物で、中間層をスリップ剤を配合せず、且つ、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体若しくはそのアイオノマー、或いはエチレン・不飽和カルボン酸共重合体若しくはそのアイオノマーと他のエチレン系重合体との混合物、からなる組成物で、貼合せ層をアンチブロッキング剤を配合し、且つスリップ剤を配合しないエチレン系重合体組成物で、それぞれ構成した3層積層フィルムが上記要求の全てに適合することを見出し、この知見に基づき本発明を完成した。
【0009】
従って、本発明の目的は、基材層接着剤に貼合せる貼合せ層面の濡れ張力が大きく接着親和性が良好で、シール層の滑り摩擦係数が小さくアンチブロッキング性に優れ、且つ、各層間の接着が強固で層間剥離がない積層フィルムを提供するにある。
又、本発明の更なる目的は、基材フィルム接着剤塗布面にドライラミネーション法やサンドイッチラミネーション法により容易に貼合せ接着できて包装用多層積層フィルムとすることができ、安価で効率的な包装材生産が可能な積層フィルムを提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、シール層、中間層、貼合せ層の3層からなる積層シーラントフィルムであって、前記シール層はエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーにアンチブロッキング剤とスリップ剤とを配合した組成物からなり、前記中間層は、スリップ剤を含有せず、且つ、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、若しくはそのアイオノマー、またはエチレン・不飽和カルボン酸共重合体、若しくはそのアイオノマーと他のエチレン系重合体との重合体混合物、を樹脂成分とする組成物からなり、前記貼合せ層は、スリップ剤を含有せず、アンチブロッキング剤を配合したエチレン系重合体組成物からなることを特徴とする積層フィルムが提供される。
【0011】
また本発明によれば、前記積層フィルムがシーラントフィルムである積層フィルムを提供される。
本発明の積層フィルムに於いては、前記貼合せ層の基材と接するべき面がコロナ処理されていることが好ましい。
【0012】
又、本発明の積層フィルムに於いては、前記シール層がエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーとアンチブロッキング剤とスリップ剤の合計量100重量部に対し、アンチブロッキング剤1〜5重量部とスリップ剤0.05〜3重量部を配合した組成物からなることが好ましい。
【0013】
又、前記シール層を構成する組成物に更にポリオレフィン樹脂が前記アイオノマー100重量部に対し20重量部以下の割合で配合されている態様のものも好適に使用できる。
【0014】
更に、本発明の積層フィルムに於いては、前記中間層に於ける他のエチレン系重合体がメタロセン触媒重合低密度ポリエチレンであることが好ましい。
また本発明の積層シーラントフィルムに於いては貼合せ層が前記エチレン系重合体とアンチブロッキング剤との合計量100重量部に対し、アンチブロッキング剤0.1〜5重量部を配合した組成物からなることが好ましい。
【0015】
又、本発明の積層フィルムでは、前記貼合せ層のエチレン系共重合体がメタロセン触媒重合低密度ポリエチレン又はエチレン・不飽和カルボン酸共重合体であることが好ましい。
【0016】
本発明の積層フィルムは、ドライラミネーション法又はサンドウィチラミネーション法による多層フィルム積層に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る積層フィルムは、 シーラント層、緩衝中間層、貼合せ層に、それぞれ上記特定樹脂又は組成物を組合せて構成したことにより、基材接着面に貼合せるべき貼合せ層の濡れ張力が52mN/m以上と大きく接着親和性が良好で、シール層の滑り摩擦係数が0.4以下と小さくアンチブロッキング性に優れ、且つ、各層間の接着が強固で層間剥離がない等積層フィルムとして極めて優れた特性を有し、特に本発明に係る積層フィルムは積層シーラントフィルムとして優れた特性を有するのでシーラントフィルムとして好適に用いられる。
又、基材フィルム接着剤塗布面にドライラミネーション法やサンドイッチラミネーション法により容易に貼合せ接着できて包装用多層積層フィルムとすることができ、安価で効率的な包装材生産が可能である。
更に、得られた包装用多層積層フィルムはラミネート外観が良好で、耐熱性にも優れる。
従って、基材フィルム等に貼り合わせて多層積層フィルムとし、それから包装用成形体を容易に作製でき、例えば、食品、医薬品、化粧品、文具、日用雑貨、精密機械部品や電子製品等の工業用部品の包装用材製造に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明に係る実施の形態について具体的に説明する。
既に述べたとおり本発明は、シール層、中間層、貼合せ層がこの順に積層された3層積層フィルムの発明であって、シール層がエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーにアンチブロッキング剤とスリップ剤とを配合した組成物からなり、中間層が、スリップ剤を含有せず、且つ、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、若しくはそのアイオノマーまたはエチレン・不飽和カルボン酸共重合体、若しくはそのアイオノマーと他のエチレン系重合体との重合体混合物、を樹脂成分とする組成物からなり、貼合せ層は、スリップ剤を含有せず、アンチブロッキング剤を配合したエチレン系重合体組成物からなることを構成上の特徴とする。
【0019】
本発明の積層フィルムに於けるシール層に用いられるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマーのベース樹脂であるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体としては、エチレンとアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、無水マレイン酸、イタコン酸及び無水イタコン酸等との共重合体を例示することができる。
これらの内では、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体が好ましい。
【0020】
又、本発明で用いるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体には、更に、他の不飽和単量体、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルのような不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニルのようなビニルエステル等が共重合されたものでも良く、このような多元共重合体として、エチレン・メタクリル酸・アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン・アクリル酸・メタクリル酸アルキルエステル共重合体等のエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸アルキルエステル多元共重合体を例示出来る。
アルキルエステル基のアルキル基としては、炭素数1〜12のものを挙げることができ、より具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、セカンダリーブチル、2−エチルヘキシル、イソオクチル等のアルキル基を例示することができる。
これらの内ではアクリル酸又はメタクリル酸のメチル、エチル、イソブチルエステルが好ましい。
このような多元共重合体の場合、他の不飽和単量体の含有量は全共重合体成分に対して20重量%以下であることが好ましい。
又、上記2元又は多元のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は2種以上が混合されていても良い。
【0021】
このようなエチレン・不飽和カルボン酸共重合体に於けるエチレン含有量は60〜98重量%、不飽和カルボン酸含有量は2〜20重量%の範囲にあることが好ましく、又メルトフローレート(MFR)(JIS K7210−1999に準拠)は0.01〜500g/10分(2160g荷重、190℃)の範囲にあるものが好ましい。
【0022】
又、前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーとしては、上記の不飽和カルボン酸を含有する2元又は3元以上の共重合体を金属イオン、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等の金属イオンで中和した塩を例示できる。
上記金属イオンは2種以上混合されていても良い。
これら金属イオンによる中和度は0超〜85%、特に0.1〜85%が好ましい。
又、アイオノマーとしてのメルトフローレート(MFR)(JIS K7210−1999に準拠)は0.01〜100g/10分(2160g荷重、190℃)の範囲にあるものが好ましい。
【0023】
本発明のシール層に配合されるアンチブロッキング剤としては、タルク、シリカ、炭酸カルシウム、合成ゼオライト、デンプン等を例示できる。
これらの内では、合成ゼオライト、シリカ等が好ましい。
又、アンチブロッキング剤は2種以上を混合して又は層毎に異なっていても良い。
【0024】
次に、本発明のシール層に配合されるスリップ剤としては、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、ポリエチレンワックス等の炭化水素系ワックス類、ステアリン酸、1,2ーヒドロキシステアリン酸、ステアリルアルコール等の脂肪酸系又は高級アルコール系ワックス類、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、N−オレイルパルミトアミド等のアミド系ワックス類、ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の金属石けん類の他、シリコーン、アクリル系高分子滑剤等を例示出来る。
これらの内では、ベヘン酸アミド、N−オレイルパルミトアミド、エルカ酸アミド等が好ましい。
スリップ剤は2種以上を混合して用いても良い。
【0025】
本発明のシール層は、前記エチレン・不飽和カルボン酸アイオノマーに前記アンチブロッキング剤とスリップ剤とを配合した樹脂組成物から構成されるが、シール層にアンチブロッキング剤とスリップ剤とを組み合わせで配合することにより、本発明のシール層はヒートシール性を損なうことなく優れたアンチブロッキング性能を発揮する。
アンチブロッキング剤とスリップ剤の両方、或いはそれらの何れかが配合されない樹脂組成物では得られる積層フィルムの滑り摩擦性が充分でなく、アンチブロッキング性に欠けるため好ましくない。
シール層を構成する樹脂組成物は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーとアンチブロッキング剤とスリップ剤の合計量100重量部に対し、アンチブロッキング剤0.5〜5重量部、より好ましくは1.0〜4.0重量部、スリップ剤0.05〜3重量部、より好ましくは0.4〜2.0重量部を配合したものからなることが好ましい。
前記アンチブロッキング剤及び/又はスリップ剤の配合が少な過ぎるとアンチブロッキング性が充分でなく、配合が多過ぎるとヒートシール性に影響する。
【0026】
又、シール層の樹脂成分には、前記エチレン・不飽和カルボン酸アイオノマーに少量の他樹脂成分、例えば、20重量部未満のエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン等軟質のポリオレフィン樹脂が配合された物でも良く、このような樹脂成分としてはポリプロピレンが好ましい。
前記シール層にはそのアンチブロッキング性等の層特性を損なうことがない限度に於いて他の添加剤、例えば酸化防止剤等を適宜配合しても良い。
【0027】
次に、本発明の積層フィルムに於ける中間層には、
i)エチレン・不飽和カルボン酸共重合体を樹脂成分とし、スリップ剤を配合しない樹脂層、
ii)エチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマーを樹脂成分とし、スリップ剤を配合しない樹脂層、
iii)エチレン・不飽和カルボン酸共重合体と他のエチレン系重合体との重合体混合物であって、スリップ剤を配合しない樹脂組成物層、
iv)エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーと他のエチレン系重合体との重合体混合物であって、スリップ剤を配合しない樹脂組成物層、
の4態様がある。
【0028】
前記i)の態様の中間層に於いて用いられるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体としては、前記シール層で用いられるアイオノマーのベース樹脂として挙げられた2元又は3元系以上のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体が例示できるが、貼合せ層がポリエチレンやエチレン・α−オレフィン共重合体からなる層の場合には、該層との層間接着強度の観点から、不飽和カルボン酸の含有率が10重量%以下、特に1〜7重量%の低不飽和カルボン酸含有率のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体を用いることが好ましい。
【0029】
前記ii)の態様の中間層に於いて用いられるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体アイオノマーとしては前記シール層に用いられるアイオノマーとして挙げられたアイオノマーが例示できる。
また前記iii)の態様の中間層に於いて用いられるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体も、前記シール層で用いられるアイオノマーのベース樹脂として挙げられた2元又は3元系以上のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体を例示できる。
【0030】
前記iii)またはiv)の態様の中間層で前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体と組合せで配合される他のエチレン系重合体とは、前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマーを除くエチレン重合体及びエチレンを主成分とする(エチレン成分を50重量%以上含む)共重合体を意味する。
より具体的には、エチレン単独重合体、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィン(プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等)との共重合体、例えば、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、中・高密度ポリエチレン、メタロセン触媒重合エチレン(共)重合体(メタロセン触媒の存在下で重合されたエチレン(共)重合体)を例示でき、更に、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のエチレン・ビニルエステル共重合体類、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル等のエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体類等を例示出来る。エチレン系重合体はそのメルトフローレート(MFR)(JIS K7210−1999に準拠)は0.1〜100g/10分(2160g荷重、190℃)の範囲にあるものが好ましい。
本発明ではこれらのエチレン系重合体の内で、エチレン単独重合体、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体が好ましく、特に、密度900〜950kg/mのメタロセン触媒重合エチレン(共)重合体が好ましい。
【0031】
iii)の態様の中間層の構成樹脂には、前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体と前記他のエチレン系重合体との重合体混合物が用いられるが、その配合割合は重量比で7:3〜3:7の範囲が好ましい。
又、iii)態様の中間層の場合も、積層される貼合せ層がポリエチレンやエチレン・α−オレフィン共重合体からなる層の場合には、該重合体混合物中に於ける不飽和カルボン酸含有率が10重量%以下、より好ましくは1〜7重量%となるように調節することが層間接着性の観点からより好ましい。
【0032】
前記ii)またはiv)の態様の中間層に於いて用いられるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーも、前記シール層で用いられるアイオノマーとして挙げられた2元又は3元系以上のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体の金属イオンアイオノマーを例示できる。
前記ii)またはiv)態様の中間層で用いられるアイオノマーのベース樹脂共重合体であるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体に於ける不飽和カルボン酸の含有率は、特に限定されないが、通常2〜20重量%、より好ましくは2〜10重量%の共重合体が用いられる。
【0033】
前記iv)の態様の中間層で前記アイオノマーと組合せで配合される他のエチレン系重合体としては、前記iii)態様の中間層で例示されたエチレン系重合体を挙げることができ、前記iii)と同様、ポリエチレン、特にメタロセン触媒重合低密度ポリエチレンが好ましい。
【0034】
iv)の態様の中間層の構成樹脂には、前記アイオノマーと前記他のエチレン系重合体との重合体混合物が用いられるが、その配合割合は重量比で7:3〜3:7の範囲が好ましい。
又、iv)態様の中間層も、積層される貼合せ層がポリエチレンやエチレン・α−オレフィン共重合体からなる層の場合には、アイオノマーと他のエチレン系重合体との重合体混合物の配合比は、該混合物中に於けるイオン化、非イオン化不飽和カルボキシ基の含有率が10重量%以下、より好ましくは1〜7重量%となるようにその配合比を調節したものであることが好ましい。
【0035】
中間層が、上記4態様の樹脂又は樹脂組成物以外から構成されるものはシール層や貼合せ層との層間接着性が充分でなかったり、該両層間の物性の相違を緩衝する作用が充分でなかったりする。
又、スリップ剤が配合されたものを中間層に用いた場合は、スリップ剤が貼合せ層に移行し、該層の基材貼合せ面の濡れ張力の低下をもたらすため好ましくない。
【0036】
本発明に於いて、貼合せ層は、エチレン系重合体にアンチブロッキング剤を配合した樹脂組成物から構成される。
アンチブロッキング剤が配合されない樹脂組成物では、例えシール層がアンチブロッキング剤を配合した組成物からなったものであっても、得られた積層フィルムは必ずしも充分なアンチブロッキング性を有さない。
又、アンチブロッキング剤に替えて、又は、それに加えてスリップ剤を配合したものは濡れ張力が低下し、基材との接着性に劣るものとなるため好ましくない。
【0037】
貼合せ層を構成するエチレン系重合体とは、エチレン重合体及びエチレンを主成分とする共重合体を意味し、具体的には、前記中間層のiii)またはiv)態様で他のエチレン系重合体として挙げられたエチレン系重合体、及びエチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマーが挙げられる。
前記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマーとしては、具体的には、前記シール層構成樹脂として例示した2元又は3元以上の共重合体及びその金属イオンアイオノマーを挙げることができ、それ以外のエチレン系重合体としては、前記中間層の他のエチレン系重合体で例示したものを挙げることができる。
本発明ではこれらの中でも貼合せ層を構成するエチレン系重合体として、エチレン単独重合体、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体が好ましく、特に、密度900〜950kg/mのメタロセン触媒重合エチレン(共)重合体及びエチレン・不飽和カルボン酸共重合体、(特にエチレン・メタクリル酸共重合体)が好ましい。
【0038】
又、該貼合せ層に配合されるアンチブロッキング剤としては、これも前記シール層構成樹脂に配合されるものと同様のものを挙げることができるが、天然シリカ又は合成ゼオライト微粉末が特に好ましい。
又、貼合せ層を構成する樹脂組成物は前記エチレン系重合体とアンチブロッキング剤との合計量100重量部に対し、アンチブロッキング剤0.1〜5重量部、より好ましくは0.1〜3重量部を配合した組成物からなることが好ましい。
アンチブロッキング剤の配合量が少なすぎると、得られる積層フィルムのアンチブロッキング性が必ずしも充分でなく、配合量が多すぎるとシール性が低下する傾向がある。
【0039】
上記各層を構成する樹脂組成物を調製する場合、アイオノマーに直接アンチブロッキング剤やスリップ剤を配合して充分均一になるまでタンブラー等でドライブレンドするか、押出機、バンバリーミキサー等で溶融混練して組成物とすることもできるが、例えば、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体等のアイオノマーベース樹脂と同じ樹脂を希釈樹脂とし、その少量に予め上記アンチブロッキング剤及び/又はスリップ剤を配合して均一分散させたマスターバッチを用いるとより便利である。
【0040】
前記各層の厚さは特に限定されるものでなく通常、積層フィルムで採用される各層厚さに適宜設定されて良いが、シール層は5〜50μm程度、中間層は5〜50μm程度、貼合せ層は5〜50μm程度が一般的である。
又、積層フイルム全体の厚さは通常15〜150μm程度が好ましい。
【0041】
上記本発明の積層フィルムを製造する方法としては、この種の積層フィルムの製造に通常用いられる方法、例えば、各層の樹脂組成物をTダイキャスト、インフレーション等の押出又は共押出フィルム成形法を用いてたとえば130〜230℃で積層し、積層フィルムとすることができる。
【0042】
本発明のシール層/中間層/貼合せ層の3層構成の積層フィルムには、その貼合せ層表面(基材フィルムに接着される側の面)にコロナ処理を施すことが好ましく、ドライラミネーション法により連続積層する場合には特にコロナ処理が有効である。
このような本発明の積層フィルムは、その貼合せ層の基材フィルム接着側面での濡れ張力が52mN/m以上、シール層表面での滑り摩擦係数が0.4以下で、且つ、支持基材フィルムを積層し、該積層フィルムをヒートシールした後の剥離試験で層間剥離は見られない。
【0043】
本発明の積層フィルムに接着積層する支持基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリ塩化ビニル;フッ素樹脂;ナイロン等のポリアミド;ポリカーボネート;ポリイミド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルケトンエラストマー;ポリウレタン;ポリエーテルサルフォン;ポリフェニレンサルファイド;ポリアミドイミド等の層が挙げられる。
これらの層を構成するフィルムは、必要に応じて延伸が施されていてもよい。延伸は一軸延伸又は二軸延伸のいずれでもよい。
【0044】
又、上記熱可塑性樹脂フィルムに金属、金属酸化物等を蒸着したり、樹脂をコーティングしたりすることにより製造された蒸着又は表面コートフィルム等を用いることができる。
具体例としてシリカ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム、アルミナ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。
更に、上記熱可塑性樹脂フィルム以外にも各種紙、金属箔等を支持機材として用いてもよい。
又、上記支持フィルムと本発明の積層シーラントフィルムとの間にポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン中間層を挟み込んだものでも良い。
【0045】
上記支持基材フィルムに本発明に係る積層シーラントフィルムを積層するには、上記基材フィルム接着面を塗布等により接着剤で表面被覆し、ドライラミネーション法やサンドイッチラミネーション法で積層するのが一般的である。
具体的には、上記支持基材フィルムのコロナ処理面にエポキシ系、ポリウレタン系、アクリル系等の接着剤を塗布等により施し、ドライラミネーターで上記熱可塑性樹脂フィルムをドライラミネーションする方法や、支持基材にアンカーコート剤を塗布した後に、その支持基材アンカーコート剤塗布面と上記熱可塑性樹脂フィルム間にエチレン・アクリル酸共重合体又はエチレン・メタクリル酸共重合体等接着樹脂の押出しラミネートをするサンドイッチラミネーションにより積層体とする方法等を例示出来る。
【0046】
本発明の積層シーラントフィルムを貼合せ積層した積層体の層構成例として、
ポリエステル(PET)、ナイロン(NY)等の支持基材層/本発明の積層シーラント層、
支持基材層/ポリエチレン(PE)層等の中間層/本発明の積層(シーラント)フィルム層、
支持基材層/ポリエチレン層(中間層)/Al箔又はAl蒸着膜層(中間層)/本発明の積層(シーラント)フィルム層、
支持基材層/アルミナ蒸着膜層(中間層)/本発明の積層(シーラント)フィルム層、
表面コート支持基材層/本発明の積層(シーラント)フィルム層、
本発明の積層(シーラント)フィルム層/PE(中間層)/支持基材層/PE(中間層)/本発明の積層(シーラント)フォルム層、
等を挙げることができる。
【0047】
このような本発明のフィルム・シート状積層体は食品、医薬品、化粧品、工業用部品等の包装袋、容器、容器蓋等の成形体の製造に好適である。
【実施例】
【0048】
[実施例1]
エチレン・メタクリル酸・アクリル酸イソブチル共重合体[メタクリル酸含量9.7重量%、アクリル酸イソブチル含量8.3重量%]の亜鉛アイオノマー[中和度32.2%、MFR(190℃、2160g荷重)4.0g/10分](IOー1)85重量部と、アンチブロッキング剤とスリップ剤を配合したマスターバッチ[アンチブロッキング剤(合成ゼオライト)20重量部、スリップ剤A(N−オレイルパルミトアミド)4重量部、スリップ剤B(ベヘン酸アミド)2重量部、エチレン・メタクリル酸共重合体74重量部からなるマスターバッチ;MFR=17.0g/10分](MB−1)15重量部を混練(ドライブレンド)してシール層用の組成物を調製した。
【0049】
次いで、エチレン・メタクリル酸共重合体[メタクリル酸含量5.5重量%、MFR1.5g/分](EMAAー1)を混練して中間層用の組成物とした。
【0050】
更に、メタロセン触媒重合線状低密度ポリエチレン[MFR1.9g/分; 密度925kg/m3;プライムポリマー社製;SP2520](mPE)95重量部に該ポリエチレン用のアンチブロッキング剤配合マスターバッチ[アンチブロッキング剤10重量%含有;プライムポリマー社製](MB−2)5重量部を混練して貼合せ層用の組成物を調製した。
【0051】
そして、これら3種の組成物を多層インフレーション成形機を用いて170℃で製膜し、厚さを異にする2種類の3層積層フィルムを作製した[(実施例フィルム1:厚さ30μm:シール層(10)/中間層(10)/貼合せ層(10):実施例フィルム2:厚さ51μm:シール層(17)/中間層(17)/貼合せ層(17)]。
そしてこれら積層シーラントフィルムの貼合せ層表面の濡れ張力(測定方法JIS K6768準拠)とシール層表面の滑り摩擦係数(測定方法JIS K7125準拠)をそれぞれ測定した。
結果を表1に示した。
【0052】
次いで積層フィルムの貼合せ層表面をコロナ処理した後、押出積層成形機を用いて、該積層フィルムの貼合せ層のコロナ処理面が2軸延伸PET基材フィルムの接着剤塗布面に接するように該積層フィルムを基材フィルムにドライラミネーションし、層構成が基材層/接着剤層/貼合せ層/中間層/シール層からなる積層フィルムを得た。
そして得られた積層フィルムのシール層面同士を重ね、面々ヒートシール(180℃、実圧0.2MPa、時間0.5秒)した後、手で剥離させ、貼合せ層/中間層及び中間層/シール層の層間剥離の有無を目視で評価した(貼合せ層/中間層、中間層/シール層の層間接着力が充分強いとシール部で切断が起こり、弱いと層間剥離が起こる)。
結果を表1に併せて示した。
【0053】
[実施例2]
実施例1の中間層を構成するエチレン・メタクリル酸共重合体(EMAAー1)に替えて、エチレン・メタクリル酸共重合体[メタクリル酸含量9.0重量%、MFR2.7g/分;](EMAAー2)50重量部とメタロセン触媒重合線状低密度ポリエチレン(mPE)50重量部とを混合した重合体混合物を用いた以外は実施例1と同様にして積層シーラントフィルムを作製し、貼合せ層表面の濡れ張力とシール層表面の滑り摩擦係数をそれぞれ測定した。
結果を表1に示した。
又、実施例1と同様に基材フィルムを積層し、得られた積層フィルムの層間剥離の有無を同様に評価した。
結果を表1に併せて示した。
【0054】
[実施例3]
実施例1の中間層樹脂(EMAA−1)に替えて、実施例1のシール層に用いたと同じアイオノマー(IOー1)50重量部と実施例2の中間層に用いたメタロセン触媒重合線状低密度ポリエチレン(mPE)50重量部とを混合した重合体混合物を用いた以外は実施例1と同様にして積層シーラントフィルムを作製し、貼合せ層表面の濡れ張力とシール層表面の滑り摩擦係数をそれぞれ測定した。
結果を表1に示した。
又、実施例1と同様に基材フィルムを積層し、得られた積層フィルムの層間剥離の有無を同様に評価した。
結果を表1に併せて示した。
【0055】
[比較例1]
実施例1の中間層樹脂(EMAA−1)に替えて、アイオノマー(IOー1)85重量部にアンチブロッキング剤とスリップ剤を配合した別組成のマスターバッチ[合成ゼオライト20重量部、Nーオレイルパルミトアミド1重量部、エチレン・メタクリル酸共重合体79重量部からなるマスターバッチ;MFR=10.0g/10分](MB−3)15重量部を配合、混練した組成物を用いた以外は実施例1と同様にして積層シーラントフィルムを作製し、貼合せ層表面の濡れ張力とシール層表面の滑り摩擦係数をそれぞれ測定した。
結果を表1に示した。
又、実施例1と同様に基材フィルムを積層し、得られた積層フィルムの層間剥離の有無を同様に評価した。
【0056】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シール層、中間層、貼合せ層の3層からなる積層フィルムであって、前記シール層はエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーにアンチブロッキング剤とスリップ剤とを配合した組成物からなり、前記中間層は、スリップ剤を含有せず、且つ、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、若しくはそのアイオノマーまたはエチレン・不飽和カルボン酸共重合体若しくはそのアイオノマーと他のエチレン系重合体との重合体混合物、を樹脂成分とする組成物からなり、前記貼合せ層は、スリップ剤を含有せず、アンチブロッキング剤を配合したエチレン系重合体組成物からなることを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
積層フィルムがシーラントフィルムである請求項1記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記貼合せ層の基材と接するべき面がコロナ処理されている請求項1又は2記載のフィルム。
【請求項4】
前記シール層がエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーと、アンチブロッキング剤とスリップ剤との合計量100重量部に対し、アンチブロッキング剤0.5〜5重量部とスリップ剤0.05〜3重量部を配合した組成物からなる請求項1〜3の何れかに記載のフィルム。
【請求項5】
前記シール層を構成する組成物に更にポリオレフィン樹脂が前記アイオノマー100重量部に対し20重量部以下の割合で配合されている請求項1〜4の何れかに記載のフィルム。
【請求項6】
前記中間層に於ける他のエチレン系重合体がメタロセン触媒重合低密度ポリエチレンである請求項1〜5の何れかに記載のフィルム。
【請求項7】
前記貼合せ層のエチレン系共重合体がメタロセン触媒重合低密度ポリエチレン又はエチレン・不飽和カルボン酸共重合体である請求項1〜6の何れかに記載のフィルム。
【請求項8】
貼合せ層が前記エチレン系重合体とアンチブロッキング剤との合計量100重量部に対し、アンチブロッキング剤0.1〜5重量部を配合した組成物からなる請求項1〜7のいずれかに記載のフィルム。
【請求項9】
ドライラミネーション又はサンドイッチラミネーションに用いられる請求項1〜8の何れかに記載のフィルム。

【公開番号】特開2009−291974(P2009−291974A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145569(P2008−145569)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】