説明

積層フィルム

【課題】可視光透過性能、遠赤外線反射性能、耐擦過性能を有し、屋外で長期間使用できるフィルムを提供する。
【解決手段】合成樹脂からなる基材の片面に金属層/カーボン層/ハードコート層を順に形成し、当該基材の他の片面に紫外線カット層を形成したことを特徴とする積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線反射性能、耐擦過性能および紫外線カット性能に優れ、農業用に好適な積層フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
農業用ハウスなどの温室栽培に用いる農業用フィルムには、植物の生育に必要となる太陽光(特に可視光線)を効率良く取り入れるとともに、ハウス栽培において、栽培コストの多くを占める暖房費を削減するため、暖房熱である遠赤外線を反射し、暖房効率を高めることが必要とされる。また、夏季において、農業用ハウスは日中の高温・多湿時に被覆材の裾を上げ、夕方外気温度が低下する前に裾を下げて温湿度の調節を行う。よって、被覆材として使用される農業用フィルムには、ハウス支柱との摩擦により傷がつかないよう高い耐擦過性が必要となる。さらに、屋外で長期間使用するため紫外線に対する耐久性も必要となる。
【0003】
しかし、上述した農業用フィルムの要求性能、つまり、可視光透過性能、遠赤外線反射性能に優れ、かつ、耐擦過性、紫外線カット性等の耐久性能を備えた農業用フィルムが存在しないのが実状である。
【0004】
例えば、ポリエチレン/酢酸ビニル共重合体からなるフィルムに遠赤外線吸収剤を配合した透光率80%以上の農業用被覆材が提案されている(特許文献1参照)。しかし、本方法では植物の生育に必要となる可視光線は充分透過するものの、暖房熱である遠赤外線を吸収し反射しないため、充分な保温効果を得る事ができない。また、ポリエチレン/酢酸ビニル共重合体等の合成樹脂は、
耐擦過性には優れるものの、樹脂中に紫外線吸収剤等の耐候性助剤を添加した場合においても、その耐候性は充分では無く、長期間の屋外使用に耐えることができないと推定される。
【0005】
また、プラスチックフィルムの片面に銀蒸着層を形成し、その上に銀蒸着層を保護し、耐擦過性能を付与するため腐食防止層を形成し、反対面に紫外線カット層を形成した耐久性反射フィルムが提案されている(特許文献2)。しかし、本方法は屋外使用に長期間耐えうる耐候性は有しているが、可視光透過性能、遠赤外線反射性能、耐擦過性能の全てを高いレベルで発現させることが困難である。例えば、遠赤外線反射性能を高めるためには、遠赤外線を反射する銀蒸着層の膜厚を厚くし、遠赤外線を吸収する腐食防止層の膜厚を薄くする必要がある。しかし、この場合は銀蒸着層が厚くなったことにより可視光透過性能が低下し、腐食防止層が薄くなることにより耐擦過性能が低下してしまう。逆に可視光透過性能を高めるため銀蒸着層を薄くし、耐擦過性能を高めるため腐食防止層を厚くした場合、遠赤外線反射性能が低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−105215号公報
【特許文献2】特開2002−122717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、遠赤外線反射性能、耐擦過性能全てを高いレベルで発現し、農業用に好適なフィルムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明のフィルムは、以下の構成からなる。
(1)合成樹脂からなる基材の片面に金属層/カーボン層/ハードコート層を順に形成し、当該基材の他の片面に紫外線カット層を形成したことを特徴とする積層フィルム。
(2)ハードコート層が硬化した樹脂からなるものである前記積層フィルム。
(3)ハードコート層の厚みが0.5〜1μmであることを特徴とする前記いずれかの積層フィルム。
(4)紫外線カット層が波長280〜400nmの紫外線の電磁波に対して平均50%以上の遮断性能を有するものである前記いずれかの積層フィルム。
(5)金属層が、銀を主成分とする遠赤外線反射層と誘電体層からなる多層構造であることを特徴とする前記いずれかの積層フィルム。
(6)基材と前記金属層の間にアンダーコート層を形成したことを特徴とする前記いずれかの積層フィルム。
(7)金属層の厚みが5〜20nm、カーボン層の厚みが1〜20nm、紫外線カット層が波長315〜400nmの電磁波を各波長において70%以上遮断するものである前記いずれかの積層フィルム。
(8)農業用である前記いずれかの積層フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可視光透過性能、遠赤外線反射性能、耐擦過性能の全てを高いレベルで発現し、屋外で長期間使用可能な耐候性を有する農業用に好適なフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の積層フィルムは、合成樹脂からなる基材の片面に金属層/カーボン層/ハードコート層を順に形成し、当該基材の他の片面に紫外線カット層を形成することが必須である。本発明で用いる基材は、可視光透過性能、耐候性に優れていれば特に限定されることはないが、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル、ナイロンなどが好ましく、いずれもコロナ処理、プラズマ処理、ケン化などの表面処理を施したり、易接着層を形成したものであっても良い。基材の厚みについては、特に制限はなく、用途、使用年数により使い分ければ良いが、農業用フィルムとして展張した場合の取扱い性、機械的強度、耐熱性等の点から10〜150μmであることが好ましく、さらに好ましくは20〜100μmである。
【0011】
金属層は遠赤外線反射性能を発現し、金属を含有する層である。金属層については、電気伝導度が高い物質ほど遠赤外線反射性能に優れるという観点から、一般的な金属のうち電気伝導度が高い銀、銅、金等の金属の1種またはこれを含むまたはその他の金属を2種以上含む合金を使用することが好ましい。このうち、電気伝導度が最も高い銀を金属層に使用することがより好ましいことである。さらに、銀が大気中の硫黄、酸素などによって腐食することを抑制するため、金等の耐腐食性に優れる金属を混合し、合金化することも好ましい使用態様である。厚みは特に制限はないが、必要とする遠赤外線反射性能と可視光透過性能を考慮し、5〜20nmの範囲で適宜選択することが好ましい。厚みが低いと可視光透過性能は高い値を示すが、遠赤外線反射性能が低下してしまう。逆に厚すぎると透明性が低下し、植物の生育に必要である可視光透過性能が得られないばかりか、金属の使用量が増加し経済的にも好ましくない。金属層は上述した遠赤外線反射性能を発現する層(以下、遠赤外線反射層とする)の単層構造としても良いが、遠赤外線反射層の上に誘電体層を積層したり、遠赤外線反射層を誘電体層でサンドイッチした多層構造であっても良い。本発明における誘電体層は、透明で屈折率の高い誘電体からなる層であり、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、錫ドープ酸化インジウム(ITO)等の金属酸化物を挙げることができる。これら誘電体層を形成することにより可視光透過性能が向上するため、植物の生育上好ましいことである。誘電体層の厚みについては、10〜100nmであることが好ましく、さらに好ましくは30〜60nmである。誘電体層の厚みが小さいと可視光透過性能の大幅な向上は見られない。逆に過大に積層しても可視光透過性能の更なる向上は得られないばかりか、経済的に好ましくない。これら金属層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法など公知の技術を用い製膜することができる。
【0012】
また、基材と金属層の間にアンダーコート層を形成しても良い。アンダーコート層を形成することにより、積層フィルムとしての耐擦過性が向上するため好ましいことである。アンダーコート層を形成する樹脂は、高透明で耐久性があるものであれば特に限定されることはないが、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂などを単独、または混合物として使用することができる。これらアンダーコート層は、グラビアコーティング法、リバースロールコーティング法、ロールコーティング法、ディップコーティング法などの公知の技術で塗布し、乾燥した後、必要に応じて紫外線、電子線などを照射し硬化させることにより形成することができる。アンダーコート層の厚みについては、0.5〜5μmであることが好ましく、1〜3μmであることがより好ましい。アンダーコート層の厚みが0.5μm未満では、基材表面を均一に被覆することができないばかりか、耐擦過性を向上させる効果が得られない。逆に、5μmを超えて形成しても、更なる耐擦過性向上は見られず、経済的にも劣り好ましくない。
【0013】
金属層とハードコート層の間に形成するカーボン層は、炭素を主成分とする硬質膜である。ダイヤモンドやグラファイトのように規則的な構造をとる炭素素材も使用できるが、アモルファス構造をとるもののほうが好ましい。かようなカーボン層を設けることにより高い耐擦過性が得られる。明確な理由は不明であるが、無機物である金属層と有機物であるハードコート層の密着性を向上させるためと考えられる。金属層とハードコート層の密着性が向上することにより、薄いハードコート層で高い耐擦過性を発現することができる。つまり、遠赤外線を吸収するハードコート層が薄くなることにより、可視光の透過を妨げる金属層を薄くすることが可能となり、可視光透過性能、遠赤外線反射性能、耐擦過性を高いレベルで発現することができる。また、カーボン層は炭素単体で構成されていても良いが、ハードコート層との密着性を考慮し、ハードコート層の組成に合わせて窒素、水素、酸素等の元素を含有させることは好ましいことである。カーボン層を形成する手段は、スパッタリング法、化学気相成長法など既存の方法で形成することができるが、金属層と合わせてスパッタリング法で形成することは工程短縮、製造コストの点で好ましいことである。カーボン層の厚みは1〜20nm、さらには1〜10nmであることが好ましく、さらに好ましくは1〜5nmである。カーボン層は金属層とハードコート層の密着性を向上させ、耐擦過性を向上させる目的で形成していることから、膜厚が小さいとその効果が弱くなる。また膜厚みが大きいと可視光透過性能が低下することに加え、耐擦過性も低下する傾向がある。
【0014】
本発明では、基板上に形成した金属層ならびにカーボン層を保護し、耐擦過性を付与する目的でハードコート層を形成することが必須である。ハードコート層としては樹脂が好ましい。樹脂としては、高透明で耐久性(特に耐擦過性)があるものが好ましい。例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂などアンダーコート層と同様の樹脂を単独、または混合物として使用することができる。また、ハードコート層は樹脂の溶液をグラビアコーティング法、リバースロールコーティング法、ロールコーティング法、ディップコーティング法などの方法布し、乾燥する。ハードコート層としては樹脂が架橋されていることが好ましい。紫外線、電子線などを照射し架橋させることができる。また樹脂の高分子の官能基を反応しうる架橋剤を添加して、化学反応により架橋させることができる。層の厚みについては、0.5〜3μmであることが好ましく、0.5〜1μmであることがより好ましい。ハードコート層の厚みが小さいと、必要とする耐擦過性能を得られないことがある。またハードコート層が金属層ならびにカーボン層を均一に被覆することができず、長期使用により金属層およびカーボン層が腐食してしまうことがある。逆に厚い場合、ハードコート層の遠赤外線吸収量が増加し、遠赤外線反射率が低下する傾向がある。
【0015】
次に、紫外線カット層は、従来公知の有機系紫外線吸収剤や無機系紫外線遮断剤を混入した塗剤をグラビアコーティング法、リバースロールコーティング法、ロールコーティング法、ディップコーティング法などの公知の技術で塗布することにより形成することができる。本発明で用いる有機系紫外線吸収剤は、特に制限はないが、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、トリアジン系など各種のものが使用できる。また、無機系紫外線遮断剤としては、例えば酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム等の微粉末が挙げられる。これら有機系紫外線吸収剤および無機系紫外線遮断剤を混入する塗剤としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂などが挙げられる。紫外線カット層の紫外線遮断性能としては、波長280〜400nmの紫外線遮断率が平均50%以上であることが好ましく、さらに好ましくは平均70%以上遮断することが好ましい。また波長315〜400nmの紫外線を各波長において70%以上遮断する性能を有することも好ましい態様である。紫外線カット層で紫外線を遮断することにより、耐久性が向上することに加え、農業用として使用した場合、病虫害の忌避に有効で農薬の削減にも繋がり好ましいことである。
【0016】
本発明の積層フィルムを農業用ハウスに用いる場合において、栽培コストの多くを占める暖房費を削減し、かつ、植物の生育に必要となる可視光を効率良く取り入れるため、遠赤外線反射率、可視光透過率の性能を高いレベルで発現することが好ましく、具体的にはJIS R3106に準じて算出した5.5〜50μmの遠赤外線の反射率が70%以上、400〜780nmの可視光の透過率が50%以上であることが好ましく、遠赤外線の反射率が80%以上、可視光の透過率が60%以上であることが、さらに好ましい。
【0017】
また本発明の積層フィルムは280〜400nmの紫外線遮断率が平均50%以上、好ましくは80%以上、さらには90%以上であることが好ましい。
【実施例】
【0018】
以下に本発明について、実施例を用いてさらに具体的に説明するが、実施例中に示す特性値の測定・算出方法は次のとおりである。
【0019】
A.評価用試験体の作製
遠赤外線反射率、可視光透過率、耐擦過性の試験に供する試験体の作製方法を以下に示す。
(1)積層フィルムを50mm角にカットする。
(2)前記(1)項でカットしたフィルムの紫外線カット層面の相対する2辺に7.5mm幅の両面テープ(PROSELFNo.539R:株式会社ニトムズ製)を接着する。
(3)前記(2)項で作製したフィルムを50mm角フロートガラス(3mm厚み)に貼合し評価用試験体とする。
【0020】
B.遠赤外線反射率
(1)規格:JIS R3106−1998に準拠
(2)測定方法:(i)分光測光器「IR Prestige−21(株式会社島津製作所製)」、正反射測定ユニット「SRM−8000A(株式会社島津製作所製)」を用い、評価用試験体の波長5〜25μmの分光反射率を測定する。なお、標準板にはAl蒸着鏡を用いる。(ii)前記分光反射率からJIS本文付表3に記載の番号λ1(波長5.5μm)〜λ30(波長50μm)の選定波長における分光反射率を抽出する。なお、λ25(波長25.2μm)〜λ30(波長50μm)の反射率はλ24(波長23.3μm)の値を用いる。(iii)抽出した分光反射率にそれぞれJIS本文付表3に記載のAl蒸着鏡の標準反射率を乗じ、λ1〜λ30の選定波長における評価試験体の反射率とする。(iv)前記反射率の平均値を遠赤外線反射率とする。
(3)測定条件:波長範囲「5〜25μm」アボダイス係数「Happ−Genzel」、積算回数「10回」、分解能「4.0cm−1」。
【0021】
C.可視光透過率
(1)規格:JIS R3106−1998に準拠
(2)測定方法:(i)分光測光器「UV−3150(株式会社島津製作所製)」を用い、評価用試験体の波長400〜780nmの分光透過率を10nm間隔で測定する。(ii)前記透過率にJIS本文付表1に記載の重価係数を乗じた後、平均値を算出し可視光透過率(%)とした。
(3)測定条件:波長範囲「400〜780nm」、スキャンスピード「高速」、
分解能力「10nm」 。
【0022】
D.耐擦過性
前記A項で作製した評価用試験体を用い、下記測定装置・測定条件で評価を実施した。
(1)測定装置:RT−200(株式会社大栄科学精器製作所製)
(2)測定条件:擦過速度「10往復/分」、擦過回数「100往復」、荷重「500gf/2.5cm2」、摩擦子(スチールウール)仕様「ボンスター#0000番(日本スチールウール株式会社製)」
(3)評価:試験終了後、目視にて「傷」の発生本数を計測した。◎:5本未満/10mm幅、○:5本以上、10本未満/10mm幅、△:10本以上/10mm幅、×:ハードコート層下の金属層に剥離が発生 。
【0023】
E.紫外線遮断性能
(1)測定方法:(i)分光測光器「UV−3150(株式会社島津製作所製)」を用い、評価用試験体の波長280〜400nmの分光透過率を5nm間隔で測定する。(ii)各波長における紫外線遮断率を下式に基づき算出し、平均値を紫外線遮断性能とする。
積層フィルムの紫外線遮断率(%)=(1−積層フィルムの透過率/積層フィルム未挿入時の透過率)×100
紫外線カット層の紫外線遮断率(%)=(1−積層フィルムの透過率/紫外線カット層積層前の積層フィルムの透過率)×100
(2)測定条件:波長範囲「280〜400nm」、スキャンスピード「高速」、
分解能力「5nm」 。
【0024】
F.金属層、カーボン層、ハードコート層の厚み
高速分光エリプソメーターを用い、反射光の偏光状態の変化を計測し、屈折率、消衰係数、膜厚をMSE(最小二乗誤差)が最小になるようにフィッティング解析し、各層の膜厚とした。
(1)測定装置:M−2000(J.A.Woollam社製)
(2)測定条件:入射角「65、70、75度」、測定波長「195〜1680nm」、ビーム計「12nm」 。
[実施例1]PETフィルム(100μm厚)の片面にベンゾフェノン系紫外線吸収剤を添加したアクリル系樹脂からなる層(1μm厚)を形成し、紫外線カット層とした。次に前記PETフィルムの反対面に銀による金属層(12nm厚)、カーボン層(3nm厚)の順にスパッタリングし、さらに当該カーボン層上に光硬化性アクリル系樹脂「オプスター(登録商標)Z7535:JSR(株)製」(をコーティング、乾燥した後にUV照射し0.8μm厚のハードコート層として層を形成させ多層フィルムを得た。
【0025】
[実施例2]PETフィルムと銀層の間にアンダーコート層として、アクリル系樹脂「オプスター(登録商標)Z7535:JSR(株)製」を3μm厚形成したことを除き、実施例1と同様の方法で多層フィルムを得た。
【0026】
[実施例3]銀層の厚みを10nmに変更した点を除き、実施例2と同様の方法で多層フィルムを得た。
【0027】
[実施例4]銀層の厚みを15nmに変更した点を除き、実施例2と同様の方法で多層フィルムを得た。
【0028】
[実施例5]カーボン層の厚みを1nmに変更した点を除き、実施例2と同様の方法で多層フィルムを得た。
【0029】
[実施例6]カーボン層の厚みを5nmに変更した点を除き、実施例2と同様の方法で多層用フィルムを得た。
【0030】
[実施例7]ハードコート層の厚みを0.6μmに変更した点を除き、実施例2と同様の方法で農業用フィルムを得た。
【0031】
[実施例8]ハードコート層の厚みを1.0μmに変更した点を除き、実施例2と同様の方法で多層用フィルムを得た。
【0032】
[実施例9]金属層とカーボン層の間に誘電体層としてITO層(50nm)をスパッタリングしたことを除き、実施例2と同様の方法で農業用フィルムを得た。
【0033】
[比較例1]PETフィルム(100μm厚)の片面に実施例1と同様に有機系紫外線吸収剤を混入したアクリル系樹脂層(1μm厚)を形成し、紫外線カット層とした。次に前記PETフィルムの反対面に銀からなる金属層(12nm厚)スパッタリングし、さらに当該銀層上にアクリル系樹脂「オプスターZ7535:JSR(株)製」をコーティング、乾燥した後にUV照射し0.8μm厚のハードコート層を形成させ農業用フィルムを得た。
【0034】
[比較例2]PETフィルムと銀層の間にアンダーコート層として、アクリル系樹脂「オプスター(登録商標)Z7535:JSR(株)製」を3μm厚形成したことに加え、ハードコート層の厚みを2.5μmに変更したことを除き、比較例1と同様の方法で試験体を得た。
【0035】
[比較例3]PETフィルムと銀層の間にアンダーコート層として、アクリル系樹脂「オプスター(登録商標)Z7535:JSR(株)製」を0.8μm厚形成したことに加え、銀層の厚みを25nmに変更したことを除き、比較例1と同様の方法で試験体を得た。
【0036】
各試験体の遠赤外線反射率、可視光透過率および耐擦過性の評価結果を表1、表2に示す。
【0037】
実施例1の紫外線カット層(1μm)/PET(100μm)/金属層(12nm)/カーボン(3nm)/ハードコート層(0.8μm)の構成において、遠赤反射率87%、可視光透過率55%で、耐擦過性は「○」であった。なお、紫外線カット層の紫外線遮断率は97%であり、積層フィルムとしての紫外線遮断率は99%であった。実施例2では、PETと銀層の間にアンダーコート層として、アクリル樹脂(3μm)を積層した。その結果、遠赤反射率85%、可視光透過率56%で、耐擦過性は「◎」となり、アンダーコート層の導入により耐擦過性が向上することを確認した。
【0038】
なお、紫外線カット層の紫外線遮断率は97%であり、積層フィルムとしての紫外線遮断率は99%であった。実施例3ならびに実施例4では、銀層の厚みをそれぞれ10nm、15nmに変更した。その結果、銀層の厚みに比例し、遠赤反射率が向上し、可視光透過率が低下することが確認できた。なお、紫外線カット層の紫外線遮断率は実施例3で97%、実施例4で97%であり、積層フィルムとしての紫外線遮断率は、実施例3で99%、実施例4で99%であった。実施例5ならびに実施例6では、カーボン層の厚みをそれぞれ1nm、5nmに変更したが、耐擦過性は「○」以上であった。なお、紫外線カット層の紫外線遮断率は実施例5で97%、実施例6で96%であり、積層フィルムとしての紫外線遮断率は、実施例5で99%、実施例6で98%であった。実施例7ならびに実施例8では、ハードコート層のアクリル樹脂の膜厚をそれぞれ0.6μm、1.0μmに変更した。その結果、遠赤反射率はそれぞれ89%、80%、可視光透過率は54%、55%であり、耐擦過性は「○」以上であった。なお、紫外線カット層の紫外線遮断率は実施例7で96%、実施例8で96%であり、積層フィルムとしての紫外線遮断率は、実施例7で98%、実施例8で98%であった。実施例9では、誘電体層としてITO(錫ドープ酸化インジウム)をハードコート層と銀層の間に50nm積層することにより、可視光透過率が65%まで向上することを確認した。なお、紫外線カット層の紫外線遮断率は96%であり、積層フィルムとしての紫外線遮断率は99%であった。
一方、比較例1は、カーボン層が無いことを除き実施例1と同一の構成であるが、耐擦過性評価は「×」であった。なお、紫外線カット層の紫外線遮断率は95%であり、積層フィルムとしての紫外線遮断率は98%であった。
【0039】
その他、比較例2として表2に示したとおりの構成とし、その物性について表2に示す。上述した実施例と比較例とを対比すると、本発明で金属層とハードコート層の間にカーボン層が存在することにより耐擦過性能が向上し、遠赤外線反射性能、紫外線カット性能に優れた多層フィルムが得られる。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の多層フィルムは、遠赤外線反射性能、紫外線カット性能および耐擦過性に優れているので、農業用フィルム、例えば温室用に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂からなる基材の片面に金属層/カーボン層/ハードコート層を順に形成し、当該基材の他の片面に紫外線カット層を形成したことを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
ハードコート層が硬化した樹脂からなるものである請求項1記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記ハードコート層の厚みが0.5〜1μmであることを特徴とする請求項1または2の積層フィルム。
【請求項4】
紫外線カット層が波長280〜400nmの紫外線の電磁波に対して平均50%以上の遮断性能を有するものである請求項1〜3いずれかの積層フィルム。
【請求項5】
前記金属層が、銀を主成分とする遠赤外線反射層と誘電体層からなる多層構造であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記基材と前記金属層の間にアンダーコート層を形成したことを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の積層フィルム。
【請求項7】
金属層の厚みが5〜20nm、カーボン層の厚みが1〜20nm、紫外線カット層が波長315〜400nmの紫外線を各波長において70%以上遮断するものである請求項1〜6いずれかに記載の積層フィルム。
【請求項8】
農業用である請求項1〜7いずれかに記載の積層フィルム。

【公開番号】特開2012−206430(P2012−206430A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74634(P2011−74634)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】