説明

積層ポリエステルフィルム

【課題】 各種の上塗り剤に対する易接着性の優れた塗布層を有する積層ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 ポリウレタンとオキサゾリン化合物とを含有する塗布液から塗布延伸法により形成された塗布層を有するポリエステルフィルムであり、前記ポリウレタンが、主鎖構造の異なる2種類のカーボネートポリオールが共重合されたポリカーボネートポリオールを構成成分として有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の上塗り剤に対する密着性の優れた塗布層を有するポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリエステルフィルムは、透明性、寸法安定性、機械的特性、耐熱性、電気的特性、ガスバリヤー性、耐薬品性などに優れ、包装材料、製版材料、表示材料、転写材料、窓貼り材料などを始め、メンブレンスイッチや、フラットディスプレイ等に用いられる反射防止フィルム、拡散シート、プリズムシート等の光学フィルム、透明タッチパネルなどに使用されている。
【0003】
しかし、かかる用途においてポリエステルフィルム上に他の材料を塗布積層する場合に、使用される材料によっては接着性が悪いという欠点がある。
【0004】
二軸延伸ポリエステルフィルムの接着性を改良する方法の一つとして、ポリエステルフィルムの表面に各種樹脂を塗布し、易接着性能を持つ塗布層を設ける方法が知られている。例えば、特許文献1、2ではポリエステル樹脂、アクリル樹脂、あるいは特定の架橋剤の使用などが開示されている。
【0005】
しかしながら、このような既存の易接着性の塗布層では、上塗り層の種類によっては、疎の接着性が依然として十分ではない場合がある。また、これらの易接着性の塗布層の種類によっては、塗布層の外観が悪く、用途によっては使用しがたい状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−281890
【特許文献2】特開平11−286092
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、上塗り剤に対する易接着性の優れた塗布層を有するポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題に関して鋭意検討を重ねた結果、特定の種類の化合物を含有する塗布層を設けることにより、上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、ポリウレタンとオキサゾリン化合物とを含有する塗布液から塗布延伸法により形成された塗布層を有するポリエステルフィルムであり、前記ポリウレタンが、主鎖構造の異なる2種類のカーボネートポリオールが共重合されたポリカーボネートポリオールを構成成分として有することを特徴とする積層ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、塗り剤に対する易接着性の優れた塗布層を有するポリエステルフィルムを提供することができ、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における積層ポリエステルフィルムのポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸のようなジカルボン酸またはそのエステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのようなグリコールとを溶融重縮合させて製造されるポリエステルである。これらの酸成分とグリコール成分とからなるポリエステルは、通常行われている方法を任意に使用して製造することができる。
【0012】
例えば、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとの間でエステル交換反応をさせるか、あるいは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接エステル化させるかして、実質的に芳香族ジカルボン酸のビスグリコールエステル、またはその低重合体を形成させ、次いでこれを減圧下、加熱して重縮合させる方法が採用される。その目的に応じ、脂肪族ジカルボン酸を共重合しても構わない。
【0013】
本発明のポリエステルとしては、代表的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられるが、その他に上記の酸成分やグリコール成分を共重合したポリエステルであってもよく、必要に応じて他の成分や添加剤を含有していてもよい。
【0014】
本発明におけるポリエステルフィルムには、フィルムの走行性を確保したり、キズが入ることを防いだりする等の目的で粒子を含有させることができる。このような粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子、さらに、ポリエステル製造工程時の析出粒子等を用いることができる。
【0015】
用いる粒子の粒径や含有量はフィルムの用途や目的に応じて選択されるが、平均粒径(d50)に関しては、0.01μm〜3μm、好ましくは0.02〜2.5μm、さらに好ましくは0.03〜2μmの範囲である。平均粒径が3.0μmを超えるとフィルムの表面粗度が粗くなりすぎたり、粒子がフィルム表面から脱落しやすくなったりする。平均粒径が0.01μm未満では、表面粗度が小さすぎて、十分な易滑性が得られない場合がある。
【0016】
粒子含有量については、ポリエステルに対し、通常0.0003〜1.0重量%、好ましくは0.0005〜0.5重量%の範囲である。粒子含有量が0.0003重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、1.0重量%を超えて添加する場合には、フィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0017】
なお、フィルムの透明性、平滑性などを特に確保したい場合には、実質的に粒子を含有しない構成とすることもできる。また、適宜、各種安定剤、潤滑剤、帯電防止剤等をフィルム中に加えることもできる。
【0018】
本発明の積層ポリエステルフィルムの濁度(ヘーズ)は10%以下であることが好ましい。より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下である。この範囲より大きいと、光学フィルム用途においては、外観上使用できなくなる場合がある。
【0019】
本発明におけるフィルムの製膜方法としては、通常知られている製膜法を採用でき、特に制限はない。例えば、まず溶融押出によって得られたシートを、ロール延伸法により、70〜145℃で2〜6倍に延伸して、一軸延伸ポリエステルフィルムを得、次いで、テンター内で先の延伸方向とは直角方向に80〜160℃で2〜6倍に延伸し、さらに、150〜250℃で1〜600秒間熱処理を行うことでフィルムが得られる。さらにこの際、熱処理のゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。
【0020】
本発明におけるポリエステルフィルムは、単層または多層構造である。多層構造の場合は、表層と内層、あるいは両表層や各層を目的に応じ異なるポリエステルとすることができる。
【0021】
本発明におけるポリエステルフィルムは少なくとも片面に塗布層を有するが、フィルムの反対面に同様のあるいは他の塗布層や機能層を設けていても、本発明の概念に当然含まれるものである。
【0022】
本発明における塗布層は、フィルムの製膜中に塗布層を設ける、いわゆるインラインコーティング、特に塗布後に延伸を行う塗布延伸法が好適に用いられる。
【0023】
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押出ししてから二軸延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸シート、その後に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルムの何れかにコーティングする。特に塗布延伸法としては、一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。
【0024】
かかる方法によれば、製膜と塗布層塗設を同時に行うことができるため製造コスト上のメリットがあり、コーティング後に延伸を行うために、薄膜で均一なコーティングとなるために接着性能が安定する。また、二軸延伸される前のポリエステルフィルム上を、まず易接着樹脂層で被覆し、その後フィルムと塗布層を同時に延伸することで、基材フィルムと塗布層が強固に密着することになる。
【0025】
また、ポリエステルフィルムの二軸延伸は、テンターによりフィルム端部を把持しつつ横方向に延伸することで、フィルムが長手/横手方向に拘束されており、熱固定において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかける事ができる。それゆえ、コーティング後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、塗布層の造膜性が向上し、また塗布層とポリエステルフィルムが強固に密着する。例えば、易接着性ポリエステルフィルムとして、塗布層の均一性、造膜性の向上および塗布層とフィルムの密着は好ましい特性を生む場合が多い。
【0026】
この場合、用いる塗布液は、取扱い上、作業環境上、安全上の理由から水溶液または水分散液であることが望ましいが、水を主たる媒体としており、本発明の要旨を越えない範囲であれば、有機溶剤を含有していてもよい。
【0027】
本発明において使用する塗布液は、主鎖構造の異なる2種類のカーボネートポリオールが共重合された構造を有する共重合ポリカーボネートポリオールを構成成分として得られるポリウレタンを含有する。
【0028】
ポリカーボネートポリオールは、例えば、ジフェニルカーボネートとジオールからの反応や、ジアルキルカーボネートとジオールからの反応、アルキレンカーボネートとジオールからの反応で得られる。
【0029】
例えば、上記反応に用いられるジオール成分としては下記のようなものが挙げられる。1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0030】
共重合ポリカーボネートポリオールは例えば、これらのジオール成分にカーボネートを付加させ、末端にカーボネートを有するモノマーユニットを形成し、それらのモノマーユニットを2種類以上共重合させる、あるいは、2種類以上のジオールカーボネートを付加させつつ共重合する、等の方法で得ることができる。これらの共重合ポリカーボネートポリオールをポリカーボネートポリウレタンのポリオール成分として用いる。
【0031】
共重合ポリカーボネートポリウレタンを構成する共重合ポリカーボネートポリオールは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、100〜3000が好ましい。より好ましくは200〜2500、さらに好ましくは400〜2000である。この範囲より大きいと、耐ブロッキング性が悪化し、この範囲より小さいと、密着性に劣る場合がある。
【0032】
また、これらの共重合体の構造としては、ランダム共重合、グラフト共重合、ブロック共重合など特に限定されるものではない。
【0033】
共重合ポリカーボネートポリウレタンとしては、上記の共重合ポリカーボネートポリオールを含有していれば、その他のポリオール(例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールなど)が含まれていても構わない。
【0034】
本発明における共重合ポリカーボネートを構成成分とするポリウレタンの、ポリイソシアネート成分の例としては、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどがある。特に脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネートが塗布層の接着性に優れ、着色しにくい等の特性が得られ、好ましい。
【0035】
本発明における共重合ポリカーボネートを構成成分とするポリウレタンは、溶剤を媒体とするものであっても良いが、好ましくは水を媒体とするものである。ポリウレタンを水に分散、または溶解させるには、乳化剤を用いる強制乳化型、ポリウレタン樹脂中に親水性基を導入する自己乳化型あるいは水溶型がある。特に、ポリウレタン樹脂の骨格中に親水性基を導入した自己乳化タイプが、液の貯蔵安定性や得られる塗布層の耐水性、透明性に優れており好ましい。
【0036】
また、導入する親水性基としてはカルボキシル基、スルホン基、リン酸、ホスホン酸、4級アンモニウム、ポリエチレングリコール等、種々のものが挙げられる。
【0037】
ポリウレタン中の親水性基の量は、0.05〜8重量%が好ましい。少ない親水性基量では、ポリウレタンの水溶性あるいは水分散性が悪くなる傾向があり、多い親水性基量では、塗布後の塗布層の耐水性が劣ったり、吸湿してフィルムが相互に固着しやすくなったりすることがある。
【0038】
次に、本発明において使用するオキサゾリン化合物について説明する。本発明で用いられるオキサゾリン化合物とは、分子中に少なくとも一つのオキサゾリン環を持つ化合物を指す。オキサゾリン環を有するモノマーや、オキザゾリン化合物を原料モノマーの一つとして合成されるポリマーも含まれる。分子中に少なくとも一つのオキサゾリン環を持つ化合物としては、特にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩類等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、 n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα,β−不飽和モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、等のα,β−不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
【0039】
本発明では、フィルムに易滑性を与えたり、ブロッキングを軽減したりするために塗布層に粒子を含有してもよい。粒子の含有量があまりに多すぎると、塗布層の透明性が低下したり、塗布層の連続性が損なわれ、塗膜強度が低下したりする、あるいは易接着性が低下したりすることがあるため、15重量%以下、さらには10重量%以下が好適である。また、粒子含有量の下限については特に限定はない。
【0040】
用いる粒子としては、例えば、シリカやアルミナ、酸化金属等の無機粒子、あるいは架橋高分子粒子等の有機粒子等を用いることができる。特に、塗布層への分散性や得られる塗膜の透明性の観点からは、シリカ粒子が好適である。
【0041】
粒子の粒径は、小さすぎると易滑性やブロッキング防止の効果が得られにくく、大きすぎると塗膜からの脱落などが起きやすい。平均粒径として、塗布層の厚さの1/2〜10倍程度が好ましい。さらに、粒径が大きすぎると、塗布層の透明性が劣ることがあるので、平均粒径として、300nm以下、さらには150nm以下であることが好ましい。ここで述べる粒子の平均粒径は、粒子の分散液をマイクロトラックUPA(日機装社製)にて、個数平均の50%平均径を測定することで得られる。
【0042】
易接着性の塗布層を設けるための塗布液中には、必要に応じて上記述べた成分以外を含むことができる。例えば、界面活性剤、その他のバインダー、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等である。これらの添加剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0043】
なお塗布液中にはその他の成分を含有していても構わない。得られる塗布層は、各成分が反応しきっていない場合は、各成分の未反応物と反応生成物との双方が含まれることとなる。
【0044】
本発明におけるポリエステルフィルムに塗布液を塗布する方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような塗布技術を用いることができる。具体的には、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、カレンダコーター、押出コーター、バーコーター等のような技術が挙げられる。
【0045】
なお、塗布液のフィルムへの塗布性、接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理やコロナ放電処理、プラズマ処理等を施してもよい。
【0046】
ポリエステルフィルム上に設けられる塗布層の塗工量は、最終的な被膜としてみた際に、通常0.002〜1.0g/m、好ましくは0.005〜0.5g/m、さらに好ましくは0.01〜0.2g/mである。塗工量が0.002g/m未満の場合は十分な接着性能が得られない恐れがあり、1.0g/mを超える塗布層は、外観・透明性の悪化や、フィルムのブロッキング、コストアップを招きやすい。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価方法は下記のとおりである。
【0048】
(1)ポリエステルの極限粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0049】
(2)ポリエステルフィルム中に添加する粒子の平均粒径(d50)
島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置SA-CP3型を用いてストークスの抵抗則にもとづく沈降法によって粒子の大きさを測定した。
【0050】
(3)接着性
ポリエステルフィルムの塗布層上に、下記に示すとおりの活性エネルギー線硬化樹脂組成物を硬化後の厚さが7μmになるように塗布し、120W/cmのエネルギーの高圧水銀灯を使用し、照射距離100mmにて約10秒間照射し硬化を行って、<ポリエステルフィルム/易接着性塗布層/活性エネルギー線硬化樹脂層>という構成の積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの活性エネルギー線硬化樹脂層に、1インチ幅に碁盤目が100個になるようクロスカットを入れ、その上に18mm幅のテープ(ニチバン社製セロテープ(登録商標)CT−18)を貼り付け、急速剥離テストを実施し、剥離面積によりその密着性を評価した。判定基準は以下のとおりである。
◎:碁盤目剥離個数=0
○:1≦碁盤目剥離個数≦10
△:11≦碁盤目剥離個数≦20
×:21<碁盤目剥離個数
××:全面が剥離
硬化樹脂組成物:日本化薬社製KAYARAD DPHAを80部、日本化薬社製KAYARAD R−128Hを20部、チバスペシャルティケミカル社製IRGACURE651を5部よりなる組成物
【0051】
(4)透明性−1
JIS K 7136(ISO14782)にしたがって、濁度計NDH2000(日本電色工業社製)を用いてフィルムの濁度(ヘーズ)を測定した。ヘーズが低いほど、透明性に優れているといえる。
【0052】
(5)透明性−2
透明性−1の評価方法において、塗布層を設けたフィルムの濁度(ヘーズ)を測定し、同様に測定した塗布層を設けていないフィルムに対するヘーズの上昇を求めた。塗布層を設けていないフィルムに対して、塗布層を設けることによるヘーズの上昇が小さいほど、塗布層の透明性が優れているといえる。透明性を下記基準により判定した。
○:ヘーズの上昇が0.3%未満
×:ヘーズの上昇が0.3%以上
【0053】
(6)耐ブロッキング性
測定するポリエステルフィルムを2枚用意し、一枚のフィルムの塗布層を設けた面ともう一枚のフィルムの塗布層を設けていない面を重ね合わせて、12cm×10cmの面積をプレスする。条件は、40℃、80%RH、10kg/cm、20時間。その後、フィルム同士をASTM−D−1893に規定された方法に準じて剥離し、その剥離荷重を測定する。剥離荷重が軽いものほどブロッキングしにくく良好と言える。荷重が150g/10cmを超えるものは実用上問題となる場合が出てくる。なお、両面に塗布層を設けた場合は、他の塗布層を設けていないフィルムを用いることもできる。
【0054】
実施例、比較例中で使用したポリエステル原料は次のとおりである。
(ポリエステル1):実質的に粒子を含有しない、極限粘度0.66のポリエチレンテレフタレート
(ポリエステル2):平均粒径(d50)が1.6μmの非晶質シリカを0.3重量%含有する、極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレート
【0055】
また、塗布組成物としては以下を用いた。ただし、文中「部」とあるのは、樹脂有効成分での重量比を表す。
(U1):共重合ポリカーボネートポリオールを構成成分として持つポリウレタンである、F−2967D(第一工業製薬社製)
(U2):下記式(1)と(2)の構造を、70モル%/30モル%の比率で共重合された構造の数平均分子量が約1000のポリカーボネートジオールを202部と、水添ジフェニルメタンジイソシアネートを78.6部と、ジメチロールプロピオン酸を6.7部とからなるプレポリマーを、トリエチルアミンで中和し、ジプロピレントリアミン6.5部で鎖延長して得られるウレタン樹脂の水分散体
【0056】
【化1】

【0057】
【化2】

【0058】
(U3):1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートからなる数平均分子量2000のポリカーボネートポリオールを400部、ネオペンチルグリコールを10.4部、イソホロンジイソシアネート58.4部、ジメチロールブタン酸が74.3部からなるプレポリマーをトリエチルアミンで中和し、イソホロンジアミンで鎖延長して得られるポリウレタン樹脂の水分散体
(F1):平均粒径0.07μmのシリカゾル水分散体
(C1):オキサゾリン基がアクリル系樹脂にブランチされたポリマー型架橋剤であるエポクロス WS−700(日本触媒社製)
(C2):オキサゾリン基がアクリル系樹脂にブランチされたポリマー型架橋剤であるエポクロス WS−500(日本触媒社製、1−メトキシ−2−プロパノール溶剤約38重量%を含有するタイプ)
(C3):オキサゾリン基がアクリル系樹脂にブランチされたポリマー型架橋剤であるエポクロス WS−300(日本触媒社製)
(C4):脂環族多官能イソシアネート架橋剤であるエラストロン MF−25K(第一工業製薬社製)
【0059】
実施例1:
ポリエステル1とポリエステル2とを重量比で92/8でブレンドしたものをA層、ポリエステル1のみのものをB層の原料として、二台のベント式二軸押出機にそれぞれを供給し、285℃に加熱溶融し、A層を二分配して再外層(表層)、B層を中間層とする二種三層(A/B/A)の層構成で共押出し、静電密着法を用いて表面温度40〜50℃の鏡面冷却ドラムに密着させながら冷却固化させて、厚み構成比がA/B/A=3/94/3となる未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを作成した。このフィルムを85℃の加熱ロール郡を通過させながら長手方向に3.7倍延伸し、一軸配向フィルムとした。この一軸配向フィルムの片面に、表1に示すとおりの塗布組成物を塗布した。次いでこのフィルムをテンター延伸機に導き、100℃で幅方向に4.0倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施した後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、フィルム厚みが100μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、表1の塗布量を示す量の塗布層が設けられた積層ポリエステルフィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。
【0060】
実施例2〜11、比較例1〜8:
実施例1と同様の工程において、塗布液を表1に示すように変更し、フィルム厚みが100μmの基材フィルムの上に表1に示す量の塗布層を設けた塗布フィルムを得た。このフィルムの特性を、表2に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のフィルムは、優れた密着性を必要とする用途における二軸延伸ポリエステルフィルムとして、好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンとオキサゾリン化合物とを含有する塗布液から塗布延伸法により形成された塗布層を有するポリエステルフィルムであり、前記ポリウレタンが、主鎖構造の異なる2種類のカーボネートポリオールが共重合されたポリカーボネートポリオールを構成成分として有することを特徴とする積層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2012−223928(P2012−223928A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91627(P2011−91627)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】