説明

積層体および包装材料

【課題】本発明は、耐熱性に優れ、またアルミニウム箔とシーラント層間の密着強度に優れた、強浸透性の内容物に対する耐性を十分に持った、熱ラミネートを行うことでより強固な剥離できない積層体および包装材料を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも、最外層/厚さ9〜200μmの範囲からなり少なくともシーラント層側に表面処理が施されているアルミニウム箔層/カップリング剤またはイオン高分子錯体からなるアンカーコート層/ポリプロピレンまたはプロピレン−α−オレフィン共重合体もしくはそれらをベースに酸無水物変成したポリマーもしくはそれら2種以上の混合物系である熱可塑性樹脂からなるサンド樹脂層/シーラント層からなる積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱水変成処理を施したアルミニウム箔にカップリング剤、またはイオン高分子錯体をコートした上に、ポリエチレン、またはエチレン−α−オレフィン共重合体、またはポリプロピレン、またはプロピレン−α−オレフィン共重合体、もしくはそれらをベースに酸無水物変成したポリマー、もしくはそれら2種以上の混合物系を積層した積層体に関し、さらに詳しくはアルミニウム箔に対する密着性に優れ、かつリチウム電池の電解液のような強浸透性内容物に対する耐性に優れた包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、携帯電話などの携帯端末装置、ビデオカメラ、衛星などに用いられる電池として、超薄型化、小型化の可能なリチウム電池が盛んに開発されている。このリチウム電池用の外装材としては、従来電池包材として用いられていた金属製缶とは異なり、軽量で電池の形状を自由に選択できるという利点から、多層フィルム(例えば、最外層/バリア層/シーラント層のような構成)を袋状にしたものが用いられるようになってきた。
【0003】
リチウム電池は、電池内容物として正極材、負極材と共に、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルなどの非プロトン性溶媒にリチウム塩を溶解した電解液、もしくはその電解液を含浸させたポリマーゲルからなる電解質層を含んでいる。このような強浸透性の溶媒がシーラント層を通過すると、アルミニウム箔層とシーラント層間のラミネート強度を低下させ、最終的には電解液が漏れ出すといった問題があり、アルミニウム箔層とシーラント層との層間密着強度を強め、内容物耐性を持たせることは必須である。
【0004】
また、電池の電解質であるリチウム塩としてはLiPF6、LiBF4などの物質が用いられているが、これらの塩は水分との加水分解反応によりフッ化水素酸を発生し、このことは金属面の腐食、多層フィルムの各層間のラミネート強度低下を引き起こす。アルミニウム箔をバリア層に用いることで、包材の表面からの水分侵入はほぼ遮断される。しかし、リチウム電池用の外装材は多層フィルムをヒートシールによって貼り合わせた構造をしており、最内層であるシーラント層のシール部端面からの水分の侵入を完全に遮断することはできず、アルミニウム箔層とシーラント層間のラミネート強度をさらに強固にし、発生したフッ化水素酸によってそれらのラミネート強度が低下しないようにする必要がある。
【0005】
また、リチウム電池は携帯型のモバイルに使用されることが多く、その使用環境が真夏の車内などの60〜70℃という高温下になる場合もあり、このような状況下においても十分なシール強度を保持できるような耐熱性を兼ね備えていることも重要である。
【0006】
多層フィルムを作製する方法として最も一般的なものはドライラミネーションである。しかしながら、このラミネート用の接着剤にはポリエステル系、ポリエステルポリウレタン系、あるいはポリエーテルポリウレタン系などを用いており、これらは強浸透性内容物に対する耐性が低く、ラミネート強度の低下を引き起こすという欠点がある。
【0007】
そこで、強浸透性物質からなる内容物を包装しても、バリア層としてのアルミニウム箔とシーラント層間のラミネート強度が低下することなく密着強度に優れ、またこの積層体をヒートシールした場合に充分強いシール強度および夾雑物シール性を持たせることが可能で、さらに耐熱性を付与させることができる積層体および積層包装材料を提供すること
を目的として、特許文献1の様な技術が開示されている。
【0008】
すなわち、少なくとも、最外層/アルミニウム箔層/アンカーコート層/サンド樹脂層/シーラント層の構成からなる包装材料であって、前記アルミニウム箔層、アンカーコート層、サンド樹脂層がそれぞれ下記に示す層からなることを特徴とする積層体が公知文献として提示されている。
(1)アルミニウム箔層が、厚さ9〜200μmの範囲からなり、少なくともシーラント層側に表面処理が施されている層。
(2)アンカーコート層が、カップリング剤からなる層。
(3)サンド樹脂層を構成する熱可塑性樹脂が、エチレンまたはエチレン−α−オレフィン共重合体、もしくはそれらをベースに酸無水物変成した高分子、もしくはそれら2種以上の混合物系であるものからなる層。
【0009】
しかしながら、サンド樹脂層を構成する熱可塑性樹脂が、エチレンまたはエチレン−α−オレフィン共重合体、もしくはそれらをベースに酸無水物変成した高分子、もしくはそれら2種以上の混合物系であるものからなるため、これでも耐熱性が十分でないという欠点がある。
【0010】
特許文献は以下の通り。
【特許文献1】特開2004−42477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、耐熱性に優れ、またアルミニウム箔とシーラント層間の密着強度に優れた、強浸透性の内容物に対する耐性を十分に持った積層体を得ることが可能である。さらに、熱ラミネートを行うことでより強固な剥離できない積層体および包装材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために考え出されたものであり、
請求項1記載の発明は、少なくとも、最外層/アルミニウム箔層/アンカーコート層/サンド樹脂層/シーラント層の構成からなる包装材料であって、前記アルミニウム箔層、アンカーコート層、サンド樹脂層がそれぞれ下記に示す層からなることを特徴とする積層体である。
(1)アルミニウム箔層が、厚さ9〜200μmの範囲からなり、少なくともシーラント層側に表面処理が施されている層。
(2)アンカーコート層が、カップリング剤、またはイオン高分子錯体からなる層。
(3)サンド樹脂層が、ポリプロピレン、またはプロピレン−α−オレフィン共重合体、もしくはそれらをベースに酸無水物変成したポリマー、もしくはそれら2種以上の混合物系である熱可塑性樹脂からなる層
請求項2記載の発明は、前記アンカーコート層を構成するカップリング剤が、シラン系カップリング剤であることを特徴とする請求項1記載の積層体である。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記アンカーコート層を構成するイオン高分子錯体が、ポリエチレンイミンとカルボキシル基を有する多糖類からなることを特徴とする請求項1記載の積層体である。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記アンカーコート層を構成するイオン高分子錯体が、ポリエチレンイミンおよびエチレンとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体からなるこ
とを特徴とする請求項1記載の積層体である。
【0015】
請求項5記載の発明は、前記アンカーコート層をアルミニウム箔表面上に1.0g/m2以下の範囲で塗布した後に、サンド樹脂層を積層させたことを特徴とする請求項1〜4記載の積層体である。
【0016】
請求項6記載の発明は、前記アルミニウム箔に施した表面処理が、熱水変成処理であることを特徴とする請求項1〜5記載の積層体である。
【0017】
請求項7記載の発明は、前記熱水変成処理が、ベーマイト処理であることを特徴とする請求項6記載の積層体である。
【0018】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の積層体を作製する段階で、もしくは作製した後に、熱ラミネートを施したことを特徴とする積層体である。
【0019】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の積層体を最小単位として用いたことを特徴とする包装材料である。
【0020】
請求項10記載の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の積層体をリチウム電池用包装材料として用いたことを特徴とする包装材料である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の積層体は、熱水変成処理を施したアルミニウム箔上に、アンカーコート層としてカップリング剤、またはイオン高分子錯体を塗布し、ポリプロピレン、またはプロピレン−α−オレフィン共重合体、もしくはそれらをベースに酸無水物変成したポリマー、もしくはそれら2種以上の混合物系のサンド樹脂層でシーラント層を貼り合わせた構成をしている。
【0022】
この様に、サンド樹脂層に酸無水物変成ポリプロピレン、シーラント層にポリプロピレン系フィルムを用いると、耐熱性に優れ、またアルミニウム箔とシーラント層間の密着強度に優れた、強浸透性の内容物に対する耐性を十分に持った積層体を得ることが可能である。さらに、熱ラミネートを行うことでより強固な剥離できない積層体を得ることが可能である。
【0023】
本発明の積層体およびそれを用いた包装材料は、リチウム電池用包装材料や浴用剤の包装材料、および蓋材以外にもその強浸透性内容物耐性から、殺菌剤、湿布剤などの包装材料として使用することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の積層体の構成の一例を示す断面図である。図2は、本発明の積層包装材料をリチウム電池外装材として用いた電池包装体の一例を示す斜視図である。
【0025】
本発明の積層体は、上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1記載の発明は、少なくとも、最外層11/アルミニウム箔層12/アンカーコート層13/サンド樹脂層14/シーラント層15の構成からなり、アルミニウム箔層12、アンカーコート層13、サンド樹脂層14がそれぞれ以下に示すような層であることを特徴とする積層体10である。
【0026】
アルミニウム箔層12は、厚さ9〜200μmからなり、少なくともシーラント層側に
表面処理が施されている層である。
【0027】
アンカーコート層13は、カップリング剤、またはイオン高分子錯体からなる層である。
【0028】
サンド樹脂層14は、ポリプロピレン、またはプロピレン−α−オレフィン共重合体、もしくはそれらをベースに酸無水物変成したポリマー、もしくはそれら2種以上の混合物系である熱可塑性樹脂からなる層である。
【0029】
アルミニウム箔層12は外からの水分を遮断するバリア層として用いられ、樹脂層との密着強度(ラミネート強度)を向上させるために、表面のサンド樹脂層側もしくは両面に熱水変成処理が施されている。
【0030】
このようなアルミニウム箔の熱水変成処理方法としては、クロム酸クロメート処理、リン酸クロメート処理のような化成処理、アルマイトを形成する陽極酸化処理などの公知の表面処理技術を用いることができるが、純水に少量のアンモニアやトリエタノールアミンなどのアルカリを添加し、80℃以上の温度で表面処理を施す、ベーマイト処理が好ましく用いられる。
【0031】
ベーマイト処理に用いる処理水としては水道水、脱イオン水、蒸留水、あるいは脱イオン後に蒸留した蒸留水などいずれも使用可能であるが、特に、脱イオン化された蒸留水が好ましく、その指標として電気伝導度1μS/cm以下の水を使用するのが好ましい。また、これらの処理水には、少量のアンモニアやトリエタノールアミンなどのアミン類のようなアルカリを0.1〜1%添加し、
常圧下で80〜100℃、さらに好ましくは90〜100℃の範囲でベーマイト処理を施した方がよい。
【0032】
上記のような熱水変成処理をアルミニウム箔表面に施すことで、表面に凹凸を作って表面形状を粗くすることができ、また同時に、水酸基などの官能基を表面に形成させることも可能である。表面の粗さによる投錨効果、および官能基とサンド樹脂とで水素結合などが起こる結果により、アルミニウム箔層と樹脂層との密着強度を強くすることができる。密着をよくすることで、ヒートシール強度向上や、層間からの水分の侵入を遮断することが可能である。
【0033】
アルミニウム箔12としては、バリア性、耐ピンホール性、加工性を考慮して9〜200μm、好ましくは15〜100μmの範囲の厚みのものを使用できる。また、その材質は一般の軟質アルミニウム箔を用いることができるが、さらなる耐ピンホール性、および成形時の延展性を付与させる目的で、鉄含有率が0.1〜9.0wt%、好ましくは0.5〜2.0wt%の範囲のアルミニウム箔を用いるのがよい。鉄含有率が0.1wt%以下であると耐ピンホール性、延展性を十分に付与させることができず、9.0wt%以上になると柔軟性が損なわれる。
【0034】
熱水変成処理を施したアルミニウム箔上に直接熱可塑性樹脂を押出ラミネーションなどの方法を用いて積層しても十分なラミネート強度は得られるが、強浸透性内容物に対する耐性を持たせるために、アルミニウム箔上にアンカーコート層をグラビアコーティングなどの方法により設けることができる。
【0035】
アンカーコート層13には、シラン系カップリング剤、またはイオン高分子錯体を用いる。シラン系カップリング剤としては、その分子中にアルミニウムなどの金属との結合をする部位、およびこの上に積層させる接着性樹脂と反応する官能基を有しているものが用
いられる。そのようなシランカップリング剤の例としては、イソシアネート基を有するγ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、エポキシ環を有するβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、もしくはアミノ基を有するγ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0036】
イオン高分子錯体としては、一つは、ポリエチレンイミンを主成分とし、カルボキシル基を有する多糖類とのキレート錯体である。多糖類としてはデンプン、セルロース、キチン、ペクチン、植物ゴム(例えばアラビアゴム)などが挙げられるがそれらに限られない。それら多糖類をカルボキシル基に誘導体化したものが用いられる。
【0037】
もう一つは、同様にポリエチレンイミンを主成分とし、エチレンとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体とのキレート錯体である。カルボキシル基を有するモノマーとしてはα、β−不飽和カルボン酸などのアクリル酸、メタクリル酸が代表的で、それらをエチレンなどと共重合させイオン架橋したアイオノマーもキレート錯体を形成できる。さらにはフマル酸やマレイン酸などもエチレンやα−オレフィンなどと共重合して用いることも可能である。
【0038】
両アンカーコート剤ともポリエチレンイミンとのキレート錯体で、ポリエチレンイミン単独と比較するとアルミニウム箔に対する濡れ特性が向上することにより、耐湿性、耐熱性、および耐内容物特性に優れる。
【0039】
アンカーコート層13は塗布量1.0g/m2以下の範囲、好ましくは0.5g/m2以下の範囲である。塗布量が1.0g/m2以上であると、アンカーコート層での凝集剥離が起きてラミネート強度が低くなる場合がある。
【0040】
次に、サンド樹脂層14について詳細な説明をする。包材のシーラント層とアンカーコート層を施したアルミニウム箔層とを貼り合わせる方法としては、ドライラミネーション、ウェットラミネーションなどの接着剤を使用する方法とがある。しかしながら、このような方法に使用する接着剤には強浸透性の内容物に対する耐性がないものが多く、特にリチウム電池用の電解液のような内容物を入れると、接着剤が膨潤してデラミネーションが起こる。
【0041】
従って、シーラント層15とアルミニウム箔層12とを接着する場合には、接着剤を必要としない押出ラミネーションが好ましく用いられる。そこでサンド樹脂としては、ポリプロピレン、またはプロピレン−α−オレフィン共重合体、もしくはそれらをベースに酸無水物変成したポリマー、もしくはそれら2種以上の混合物系などが用いられるが、包材への耐熱性の付与や、アルミニウム箔上に塗布したアンカーコート層13との層間密着強度向上を考慮すると、酸無水物変成したポリプロピレンが好ましい。このベースとなるポリプロピレンとしては特に制限を受けることなく、ホモタイプ、ブロックタイプ、ランダムタイプを選定することができる。
【0042】
サンド樹脂層14の厚みは30μm以下であることが好ましい。30μmより厚いとシーラント層と貼り合わせた際の全体の厚みが厚くなり、シール不良を引き起こす原因となることがある。
【0043】
シーラント層15は包装材料を形成する際に、積層体同士をヒートシールするために積層するものである。シーラント層15としては、サンド樹脂との接着性を考慮すると同種
のものが好ましい。さらに包材の耐熱性を考慮すると、ポリプロピレン系が好ましく用いられ、単層でも、ランダム/ホモなどの2層構成でも、ランダム/ホモ/ランダム、ランダム/ブロック/ランダムなどのような3層構成でもかまわない。
【0044】
シーラント層15の厚みは20〜100μmの範囲がよく、好ましくは30〜70μmの範囲のものである。厚みが薄すぎるとシール強度が弱くなり、厚すぎると積層体全体の厚みが厚くなるためにシール不良が起こる、またシーラント端面からの水分侵入が起こりやすくなる可能性がある。
【0045】
バリア層として用いるアルミニウム箔が最外層になった場合、加工、流通などのときにピンホールが発生する恐れがあるため、これを防ぐ目的でアルミニウム箔の外に最外層を設けることができる。また、リチウム電池用外装材として用いる場合には、アルミニウムとハードとの直接の接触を避ける必要もある。これらのことを考慮して、最外層は絶縁性のある樹脂層が好ましく用いられる。そのような樹脂層の例として、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルムなどの延伸もしくは未延伸フィルムを単層、または2層以上積層した多層フィルムを使用することができる。耐ピンホール性、絶縁性を向上させるために6μm以上、また成形性を考慮すると40μm以下の厚みのフィルムがよく、好ましくは15〜25μmのものである。
【0046】
最外層11のフィルムとアルミニウム箔層12はドライラミネーション、ウェットラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出ラミネーションなどの公知の手法により貼り合わせることができる。
【0047】
さらに、この積層体の層間密着性を向上させるために熱ラミネートを行うことがより好ましい。熱ラミネート方法は公知のラミネート技術を用いることができる。本積層体の熱ラミネート方法としては2つの方法があるが、1つは、最外層/アルミニウム箔層/アンカーコート層/サンド樹脂層/シーラント層の構成からなる積層体を作製した後に、加熱ロールとプレスロール間に通すことによって加熱加圧処理を行う方法である。もう一つは、熱水変成処理を施したアルミニウム箔層上にあらかじめアンカーコート層を設け、サンド樹脂層として溶剤に分散させた酸無水物変成ポリプロピレン溶液をグラビアコーティングなどの方法を用いて設け、その面とシーラント層を重ね合わせて加熱ロールとプレスロール間に通すことによって加熱加圧処理を行い、その後最外層を設ける方法である。このときの酸無水物変成ポリプロピレン溶液の塗布量は、0.5〜5g/m2の範囲、好ましくは1〜4g/m2の範囲である。
【0048】
どちらの方法で熱ラミネートを行ってもよいが、熱ラミネートによりアルミニウム箔とシーラント層間の密着がより向上し、リチウム電池の電解液のような強浸透性内容物に対する耐性も著しく向上する。
【0049】
本発明の積層体は、単体もしくは各層間に中間層を設けることで、各種包装材料として用いることが可能である。以下に、構成例を示す。
1)熱可塑性樹脂層(最外層)/熱可塑性樹脂層(中間層)/AL/ac/サンド/シーラント層
2)熱可塑性樹脂層(最外層)/紙層(中間層)/AL/ac/サンド/シーラント層
3)熱可塑性樹脂層(最外層)/AL/ac/サンド/シーラント層
なお、上記のALはアルミニウム箔層、acはアンカーコート層、サンドはサンド樹脂層をそれぞれ示す。最外層、および中間層はドライラミネーション、ウェットラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出ラミネーションなどの公知の手法により貼り合わせることができる。
【0050】
本発明の積層包装材料を、リチウム電池用の外装材として用いることも可能である。図2に示すように、本発明の積層包装材料をリチュウム電池外装材として用いた電池包装体の一例を示す斜視図である。電池包装体20は、一例として、本発明の積層包装材料を容器21に成形し、電池構成材料を収納した後、電極端子22,23が包装体内部から開口部を通して外側に延長し、その開口部のシール部24を熱融着によりシールされている。
【0051】
また、本発明の積層体は、リチウム電池用の包装材料だけでなく、浴用剤用の包装材料や蓋材などにも用いることが可能である。
【実施例1】
【0052】
以下に、本発明の実施例を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
<アルミニウム箔>
AL−1 ベーマイト処理を施したもの
AL−2 処理を施していないもの
<アンカーコート剤>
ac−1 イソシアネート型シランカップリング剤
ac−2 エポキシ型シランカップリング剤
ac−3 アミン型シランカップリング剤
ac−4 ポリエチレンイミン/カルボキシメチルセルロース 錯体
ac−5 ポリエチレンイミン/エチレン−アクリル酸共重合体 錯体
<サンド樹脂>
サンド−1 酸無水物変成ポリプロピレン(ランダムベース 融点140℃ 15μm)サンド−2 酸無水物変成ポリプロピレン(ホモベース 融点165℃ 15μm)
サンド−3 溶剤分散型酸無水物変成ポリプロピレン溶液(3g/m2
<シーラントフィルム(40μm)>
シ−1 ポリプロピレン系3層フィルム(ランダム/ホモ/ランダム)
以下に評価方法を示す。
【0053】
[評価]
<評価方法1>
評価用サンプルのシーラント層同士を、190℃、3kg/cm2、3sec、シール幅15mmの条件にてヒートシールしたサンプルの剥離試験を行い、ヒートシール強度を測定した。
<評価方法2>
100℃雰囲気下におけるヒートシール強度を、評価方法1と同様の方法で測定した。<評価方法3>
炭酸エチル/炭酸エチルメチル=1/1溶液にLiPF6を1.5Nとなるように調製したリチウム電池用電解液中に、15mm幅にカットした評価用サンプルを浸漬して、85℃で2週間保存した後に、アルミニウム箔層とシーラント層間のラミネート強度、および外観を評価した。
<評価方法4>
強浸透性の内容物である香料を含んだ浴用剤粉末を、三方製袋したパウチに入れてシールして密封、40℃で1ヵ月保存した後、アルミニウム箔層とシーラント層間のラミネート強度、および外観を評価した。
【0054】
以下にこれに基づいた実施例1を示す。
<実施例1>
最外層として厚さ25μmの二軸延伸ナイロンフィルムと、アルミニウム箔AL−1を
ドライラミネーションにより貼り合わせた。次に、AL−1のベーマイト処理面にアンカーコート層としてac−1の固形分5wt%酢酸エチル溶液を、乾燥後の塗布量が0.5g/m2以下になるように塗布し、サンド樹脂としてサンド−1を押出ラミネートすることによりシーラント層であるシ−1を貼り合わせた。このときサンド樹脂層の厚みは15μmとした。この評価用サンプルを用いて、前記評価方法1〜4を行った。結果を表1に示した。
【実施例2】
【0055】
<実施例2>
アルミニウム箔にAL−1、アンカーコート剤にac−2、サンド樹脂にサンド−2、シーラント層にシ−1を用いた以外は実施例1と同様にして評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルを用いて、前記評価方法1〜4を行った。結果を表1に示した。
【実施例3】
【0056】
<実施例3>
アルミニウム箔にAL−1、アンカーコート剤にac−3、サンド樹脂にサンド−1、シーラント層にシ−1を用いた以外は実施例1と同様にして評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルを用いて、前記評価方法1〜4を行った。結果を表1に示した。
【実施例4】
【0057】
<実施例4>
アルミニウム箔にAL−1、アンカーコート剤にac−4(固形分1wt%水−メタノール溶液を、乾燥後の塗布量が0.5g/m2以下になるように塗布)、サンド樹脂にサンド−2、シーラント層にシ−1を用いた以外は実施例1と同様にして評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルを用いて、前記評価方法1〜4を行った。結果を表1に示した。
【実施例5】
【0058】
<実施例5>
実施例4で得られた積層体を、200℃の加熱ロールとプレスロール間に通すことによって熱ラミネートを行い、評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルを用いて、前記評価方法1〜4を行った。結果を表1に示した。
【実施例6】
【0059】
<実施例6>
アルミニウム箔AL−1のベーマイト処理面にアンカーコート層としてac−5の固形分1wt%水−メタノール溶液を、乾燥後の塗布量が0.5g/m2以下になるように塗布した。次に、この塗布面にサンド樹脂としてサンド−3を乾燥後の塗布量が3g/m2になるように塗布し、シーラント層であるシ−1と重ね合わせ、200℃の加熱ロールとプレスロール間に通すことによって熱ラミネートを行った。その後、この積層体と最外層として厚さ25μmの二軸延伸ナイロンフィルムをドライラミネーションにより貼り合わせ、評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルを用いて、前記評価方法1〜4を行った。結果を表1に示した。
【実施例7】
【0060】
<比較例1>
アルミニウム箔にAL−2を用いた以外は実施例1と同様にして評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルを用いて、前記評価方法1〜4を行った。結果を表1に示した。
【実施例8】
【0061】
<比較例2>
アルミニウム箔にAL−2を用いた以外は実施例2と同様にして評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルを用いて、前記評価方法1〜4を行った。結果を表1に示した。
【実施例9】
【0062】
<比較例3>
アルミニウム箔にAL−2を用いた以外は実施例3と同様にして評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルを用いて、前記評価方法1〜4を行った。結果を表1に示した。
【実施例10】
【0063】
<比較例4>
アルミニウム箔にAL−2を用いた以外は実施例4と同様にして評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルを用いて、前記評価方法1〜4を行った。結果を表1に示した。
【実施例11】
【0064】
<比較例5>
アルミニウム箔にAL−2を用いた以外は実施例5と同様にして評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルを用いて、前記評価方法1〜4を行った。結果を表1に示した。
【実施例12】
【0065】
<比較例6>
アルミニウム箔にAL−2を用いた以外は実施例6と同様にして評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルを用いて、前記評価方法1〜4を行った。結果を表1に示した。
【0066】
表は以下の通り。
【0067】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0068】
パソコン、携帯電話などの携帯端末装置、ビデオカメラ、衛星などに用いられる電池として利用されるリチウム電池に用いられる技術である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の積層体の構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の積層包装材料をリチウム電池外装材として用いた電池包装体の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0070】
10…積層体
11…最外層
12…アルイニウム箔層
13…アンカーコート層
14…サンド樹脂層
15…シーラント層
20…電池包装体
21…容器
22、23…電極
24…シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、最外層/アルミニウム箔層/アンカーコート層/サンド樹脂層/シーラント層の構成からなる包装材料であって、前記アルミニウム箔層、アンカーコート層、サンド樹脂層がそれぞれ下記に示す層からなることを特徴とする積層体。
(1)アルミニウム箔層が、厚さ9〜200μmの範囲からなり、少なくともシーラント層側に表面処理が施されている層。
(2)アンカーコート層が、カップリング剤、またはイオン高分子錯体からなる層。
(3)サンド樹脂層が、ポリプロピレン、またはプロピレン−α−オレフィン共重合体、もしくはそれらをベースに酸無水物変成したポリマー、もしくはそれら2種以上の混合物系である熱可塑性樹脂からなる層。
【請求項2】
前記アンカーコート層を構成するカップリング剤が、シラン系カップリング剤であることを特徴とする請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記アンカーコート層を構成するイオン高分子錯体が、ポリエチレンイミンとカルボキシル基を有する多糖類からなることを特徴とする請求項1記載の積層体。
【請求項4】
前記アンカーコート層を構成するイオン高分子錯体が、ポリエチレンイミンおよびエチレンとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体からなることを特徴とする請求項1記載の積層体。
【請求項5】
前記アンカーコート層をアルミニウム箔表面上に1.0g/m2以下の範囲で塗布した後に、サンド樹脂層を積層させたことを特徴とする請求項1〜4記載の積層体。
【請求項6】
前記アルミニウム箔に施した表面処理が、熱水変成処理であることを特徴とする請求項1〜5記載の積層体。
【請求項7】
前記熱水変成処理が、ベーマイト処理であることを特徴とする請求項6記載の積層体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の積層体を作製する段階で、もしくは作製した後に、熱ラミネートを施したことを特徴とする積層体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の積層体を最小単位として用いたことを特徴とする包装材料。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の積層体をリチウム電池用包装材料として用いたことを特徴とする包装材料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−7563(P2006−7563A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187540(P2004−187540)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】