説明

積層体の分離法

【課題】積層体の接着部を剥離することが、剥離剤等で化学的に剥離することが困難な場合に、積層体の剥離・分離を可能とする。
【解決手段】接着部の接着強度が温度を上げて低下させることができる場合、超音波カッターの振動摩擦熱で、積層体の接着部の温度を上げて強度を低下させ、超音波カッターにて接着部を切断する方法で、積層体の種類、条件および接着剤の種類によって超音波カッターの種類、予備加熱条件を変えて対応ができる積層体の分離装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラーパネル等の積層体の分離をする際に、積層部がエポキシ接着剤等で固定されているものを、積層されている各層を破壊することなくもしくは破壊しても実害ないように分離する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層体の中には、ガラス層、シリコン素子層またはシリコン素子を固定し、発生した電気を電導する銀線および銅線を固定する固定板からなっている。その内容を再資源化する時に、内容物がガラス層、シリコン素子層、固定板に分離することが難しく、各層が混在し再資源化する際に、様々な障害をもたらしている。そこで各層の分離を各層が混在しないように分離する方法を明らかにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005‐504873 構造化層を有する積層体
【0004】
この特表2005‐504873 構造化層を有する積層体の発明であり、その請求項25のように、テープの所定剥離強度を有するテープに関する特許であるが、本発明においては、積層体を作りあげる特許ではなく、積層体を剥離または分離するもので構成が異なる。
【0005】
【特許文献2】特開2010‐58437 樹脂シートの製造方法
【0006】
この特開2010‐58437 樹脂シートの製造方法はシートの製造に関するものであり、超音波カッターを使用しているが本特許目指すところの積層体の分離・剥離とは目的が異なっている。
【0007】
【特許文献3】特開2008‐128388 切断装置
【0008】
この特開2008‐128388 切断装置の目指すところは、多層フィルムを積層体の層に垂直に切断することを目的としており、本勅許の目指すところの積層体を層に水平に、しかも接着部を切断し剥離・分離するものとは異なる。
【0009】
【特許文献4】特開2008-154785 超音波刃物装置
【0010】
この特開2008-154785 超音波刃物装置の超音波カッターは、長刃の超音波カッターであるが、この方式を使用しても良いし、のみ型で縦振動する方式または円盤回転鋸でねじり振動する方式でも良いので、必ずしもこの特許に抵触するとは限らない。また、この特許では、振動摩擦によって刃先または被切断物の温度上昇が問題とされて、長刃カッターを採用しているが、本特許では刃先または被切断物の温度上昇を期待して、超音波カッターを採用しているので、目的が異なる。

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
積層体は、板状の物を接着剤でもって接着し積層体を形成しているが、この接着剤層を剥離剤等で剥離したり、分離することは、簡単に行われず剥離・分離に時間を要する。
【0012】
一方、接着剤層を強制的に剥がそうと板状の物を引き剥がすと、互いの層の物質が他方の層に引きちぎられ、リサイクル等で使用する場合、その目的に合わない場合が多い。
【0013】
積層体の接着剤は温度が上がることによって、80℃から軟化することがわかった。そこで超音波カッターの振動摩擦によって刃先または被切断物の温度上昇がなされる事実を活用し、接着剤層の接着力を低下させ、合わせて接着剤層の切断を意図して、超音波カッターを採用して、効率的に接着剤層の切断を実施し、積層体を板状の物に剥離・分離する。
【0014】
この時、のみ型超音波カッター、円盤回転超音波カッター、帯鋸状超音波カッターの順に温度が上がり難くなることから、振動摩擦によって刃先または被切断物の温度上昇がなされる熱量が少なくなり、また、積層体の熱容量によっても刃先または被切断物の温度上昇が変化すること、また外気温にも影響されることから、接着部の最適切断温度を獲得するため、超音波カッターで切断する前に、遠赤外線ヒーター等で積層体接着部を適温に加熱して、超音波カッター装置に挿入することを特徴とする。

【課題を解決するための手段】
【0015】
特許請求の範囲として、以下の項目を列挙している。この内容について以下説明を加える。
請求項1として、積層体のエポキシ接着剤の接着部を超音波カッターの振動摩擦熱で加熱し、超音波カッターの刃先を分離しようとする接着部に当てて、積層体を分離する方法
請求項2として、請求項1の装置は、積層体を出側ガイドローラーで挟んで積層体の接着部の高さを超音波カッターの刃先の位置に保ち、超音波カッターの刃先幅内に積層体の幅が入るように出側ガイドローラーで固定し送り込み、積層体の接着部が一定速度で超音波カッターにて切断され2層に分離された積層体は、上下の分離ガイドによって、回収箱または回収台に回収される分離装置
請求項3として、請求項1および請求項2の装置は、超音波カッターの振動摩擦によって発生する摩擦熱によって、接着部を加熱し接着力を弱め、接着剤毎の要求加熱温度に合わせ、超音波カッターの形式、形状、超音波発信器の条件を選択し、また切断時の切断大気環境に応じて加熱条件を変更できる加熱装置をガラス板等側に有する積層体の分離装置
請求項4として、上記の請求項の中で、分離された上下2層の積層体で、両方が平板のまま回収される場合には、上下2層の積層体をゆるやかに分離し、破壊を防止することのできる分離ガイドを有する積層体の分離装置
を記述した。
【0016】
積層体は、例えば5mm厚のガラス板等1および3mm厚のプラスチック板等2が接着剤で接着させられ接着部を形成している。この接着剤および接着部3を超音波カッター装置7で切断し、ガラス板等1をプラスチック板等2から分離し、それぞれの板を得ることを目的としている。
【0017】
超音波カッターの刃先7aまで、積層体が挿入される場合、積層体は出側ガイドローラー4aにて定位置(高さ、横・長さ方向、挿入速度)に規定され、超音波カッターの刃先
7aのX方向Y方向の振動、またはZ方向の振動強度に耐えられるだけの挟み力を要し、そのための摩擦力を維持するための摩擦係数を有する素材で作成されている。特に赤外線ヒーター等6の加熱後を分担する出側ガイドローラー4aは、耐熱ゴムで覆われたガイドローラーであることが求められる。さらに積層体の挿入を安定させるには入側ガイドローラー4bを設置すると良い。
【0018】
積層体の温度、超音波カッターの刃先7aの形式に合わせて、積層体の温度を決めて、赤外線ヒーター等6で加熱し、積層体移動方向5に出側ガイドローラー4aで速度調整して、超音波カッターの刃先7aに接着部を導入して行きます。
【0019】
接着剤および接着部3の厚み、強度により,超音波カッターの刃先7aの形式をのみ型超音波カッター、円盤回転超音波カッター、帯鋸状超音波カッターとし、作業場環境温度等、積層体熱容量、積層体移動速度などの条件によって最適条件を決定する。
【0020】
リサイクルの目的等から、ガラス板等1とプラスチック板等2の上下関係を決定し、超音波カッターの刃先7aは、出側ガイドローラー4aで積層体を適当な強さで挟んだ状態で、下部出側ガイドローラー4a上面高さにガラス板等1の厚さ5mmを足した高さとし、超音波カッターの刃先7aで接着剤および接着部3を切断し、分離された積層体は分離ガイド8でもって、上下に分離される。この分離ガイド8の角度を緩やかにして、積層体の分離状態を上下とも平板にすることも可能である。
【0021】
用語の説明をする。
ガラス板等1とは、太陽光および熱を通過、伝達するガラス状の板および帯またはプラスチック。
プラスチック板等2とは、シリコン素子またはその他の発電素子を内包し、発電素子で発生した電気を蓄電池等に電送する銀線及び銅線等を保持している広義のプラスチック板等を指す。
接着剤および接着部3は、接着部の温度が上がると接着強度が低下する感圧接着剤、エポキシ接着剤、構造用接着剤および接合用接着剤によってガラス板等1とプラスチック板等2が接着されてできた接着部を指す。
ガイドローラー4は、積層体を挟圧し、接着剤および接着部3を一定高さ位置に維持して、積層体に傷を付けることなく積層体を積層体移動方向5に移動させるローラーまたローラーは耐熱ゴム等で包まれる。出側ガイドローラー4a、入側ガイドローラー4b、入側ガイドローラーはコロでも良いとする。
積層体移動方向5は、超音波カッターにて、積層体を剥離・分離させる方向に積層体を移動させる方向
赤外線ヒーター等6は、積層体の温度、超音波カッターの刃先7aの形式に合わせて、積層体の接着部3の温度を決めて、振動摩擦によって超音波カッターの刃先7aまたは被切断物の温度上昇がなされ最適温度で、超音波カッター装置7で剥離・分離されます。
超音波カッター装置7は、超音波カッターの刃先7aと超音波カッターの超音波カッターの超音波発信器7bからなり、超音波カッターの刃先7aはのみ型超音波カッター、円盤回転超音波カッター、帯鋸状超音波カッターの中から被切断積層体および接着部3の性質によって択ばれます。
分離ガイド8は、積層体が分離される時に必要な場合設置されます。
ガラス板等回収箱9は、分離されたガラス板等1を回収するための箱
プラスチック板等回収台10は、分離されたプラスチック板等を回収するための台

【発明の効果】
【0022】
積層体は、板を接着剤で貼り合わせて構成されている。エポキシ接着剤は80℃以上になると軟化する。一方、超音波カッターは振動回数が多く、振動摩擦によって刃先が高温に加熱されることから、接着部の温度を上げて、接着部を切断するには超音波カッターは接着部の切断に適している。
【0023】
接着部の切断をする場合、積層体の熱容量、切断を実施する際の切断環境(気温、湿度、風向等)または超音波カッターの形式により、刃先の温度上昇の程度が異なるなどから、場合によっては、赤外線ヒーター等でガラス板等側から積層体を加熱して、接着部を切断する必要が生ずる。
【0024】
接着部の温度が上がり、凝集破壊(接着剤部分の切断)または接着破壊(ガラス板等もしくはプラスチック板等の面での切断)が行われると、積層体の必要とする各層の健全性が維持され、ソーラーパネルのリサイクルにおいてシリコン素子を回収する場合などで有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】積層体の分離装置
【発明を実施するための形態】
【0026】
積層体の先端が赤外線ヒーター等6で加熱され、所定の温度50〜80℃に積層体の先端の接着剤または接着部3がなった時点で、稼動した超音波カッターの刃先7aに接触する状態にする。
【0027】
超音波カッターの刃先7aは、接着剤または接着部3部分を切断するように設定され、超音波カッターの振動周波数は17〜60kHz、刃の振動振幅は5〜30μmとする。
【0028】
積層体の送り込み速度は、50mm/分〜2000mm/分に設定し、剥離・分離面の要求精度により、刃の形状、切断速度、超音波のパワーを選択する。今回の場合、長刃カッターかのみ型カッターが使用しやすい。
【0029】
接着剤または接着部3部分が切断されると、ガラス板等1が超音波カッター7に衝突する可能性があるので、分離ガイド8でもって上下方向に押し曲げる。押し曲げられたガラス板等1はほとんどの場合亀裂が入り、下方に落下する。したがって下方にはガラス板等回収箱9が必要となる。プラスチック板等2がプラスチック板等回収台10に送られる。
【0030】
積層体の剥離・分離が進み最後になると、ガイドローラー4の出側の保持力が失われない内に切断を終了する必要があるので、超音波カッターの刃先7aは、出側ガイドローラー4aの上下ローラーの中心線に接する位置まで、前進した状態であることが求められる。


【実施例】
【0031】
ソーラーパネル(厚み8mm×幅95長さ120mm)で、ガラス板部分5mm厚をプラスチック板等3mmから剥離・分離することを目的とする。プラスチック板等はシリコン素子またはその他の発電素子を内包し、発電素子で発生した電気を蓄電池等に電送する銀線及び銅線等を保持している広義のプラスチック板等であり、有価廃棄物である。今まで剥離剤が一般的に用いられて来たが剥離には長時間が必要になり、産業化することができない。そこでソーラーパネルを加熱して、刃物でもって、接着剤および接着部を切断したが、切断に時間を要し、切断部の温度が低下してしまい、エポキシ接着剤で接着された部分の強度が復活してしまい、切断面がガラス板部分とシリコン素子層の入り混じった剥離・分離状態になっていた。しかし、今回の積層体の分離装置によって剥離・分離することによって、ガラス板部分とシリコン素子層またはシリコン素子を固定し、発生した電気を電導する銀線および銅線を固定するプラスチック板等の固定板とがそれぞれきれいに分離できるようになった。

【産業上の利用可能性】
【0032】
産業的にはソーラーパネルばかりでなく、様々な積層体たとえばセラミックス/金属積層体、金属/プラスチック積層体、セラミック/プラスチック積層体、ハニカム積層体、蛍光積層体が今後製造されると考えられる。それらの中には、高価な金属、半導体等を使用した積層体があり、これをリサイクルしなければならない産業的な要求が発生してくることが推定される。この時、接着剤および接着部を容易に切断し、積層体を剥離・分離し、容易に目的とする高価部材等を抽出できる技術を確立することが求められる。この特許は、この要求に応える一助となる。

【符号の説明】
【0033】
1 ガラス板等
2 プラスチック板等
3 接着剤および接着部
4 ガイドローラー
4a 出側ガイドローラー
4b 入側ガイドローラー
5 積層体の移動方向
6 赤外線ヒーター等
7 超音波カッター装置
7a 超音波カッターの刃先
7b 超音波カッターの超音波発信器
8 分離ガイド
9 ガラス板等回収箱
10 プラスチック等回収台


【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体のエポキシ接着剤の接着部を超音波カッターの振動摩擦熱で加熱し、超音波カッターの刃先を分離しようとする接着部に当てて、積層体を分離する方法
【請求項2】
請求項1の装置は、積層体を出側ガイドローラーで挟んで積層体の接着部の高さを超音波カッターの刃先の位置に保ち、超音波カッターの刃先幅内に積層体の幅が入るように出側ガイドローラーで固定し送り込み、積層体の接着部が一定速度で超音波カッターにて切断され2層に分離された積層体は、上下の分離ガイドによって、回収箱または回収台に回収される分離装置
【請求項3】
請求項1および請求項2の装置は、超音波カッターの振動摩擦によって発生する摩擦熱によって、接着部を加熱し接着力を弱め、接着剤毎の要求加熱温度に合わせ、超音波カッターの形式、形状、超音波発信器の条件を選択し、また切断時の切断大気環境に応じて加熱条件を変更できる加熱装置をガラス板等側に有する積層体の分離装置
【請求項4】
上記の請求項の中で、分離された上下2層の積層体で、両方が平板のままで回収する必要がある場合には、上下2層の積層体のゆるやかに分離できる分離ガイドを有する積層体の分離装置


【図1】
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【公開番号】特開2012−11479(P2012−11479A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148527(P2010−148527)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(510030021)株式会社エコサポート (4)
【出願人】(710000756)
【Fターム(参考)】