説明

積層体

【課題】蓄熱性が低く、耐候性、木目調模様の着色性、耐熱性等に優れた成形品を提供する。
【解決手段】基材と、それに積層された木目調模様を有する層とを備えてなる積層体であって、前記木目調模様を有する層は熱可塑性樹脂(A)を含む低蓄熱性樹脂組成物からなり、該組成物は、赤外線反射特性を有する無機顔料(B)を該組成物全体に対して0.5〜13質量%含有し、かつ、該組成物の下記試験条件で得られる温度上昇が73℃以下である。
〔試験条件〕
前記低蓄熱性樹脂組成物からなる成形品(長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mm)を、温度25±2℃、湿度50±5%RHに調節された室で60分間状態調節した後、高さ200mmからその表面に赤外線ランプ(出力100W)を60分間照射した後の成形品の表面温度を測定し、赤外線ランプ照射前の初期温度との差を温度上昇とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材とそれに積層された低蓄熱性樹脂組成物からなる木目調模様を有する層とを備えてなる積層体に関する。
【0002】
従来、成形時に木目調模様を発現する熱可塑性樹脂組成物としては、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)を主成分とするものが知られており、窓枠などの成形品として使用されている(特許文献1及び2参照)。
しかし、ポリ塩化ビニル樹脂は耐熱性が十分でないため、該樹脂製の窓枠は太陽光の照射によって温度が上昇し、変形や収縮等の寸法変化を生じ、その結果、窓枠の気密性、保温性、開閉機能等が損なわれるという欠点があった。また、ポリ塩化ビニル樹脂に着色剤を配合した場合には、その着色剤が暗色系顔料などのように太陽光照射によって発熱するものである場合、成形品の温度上昇が一層促進されるため、着色の選択肢が制限されていた。
一方、スチレン系樹脂についても、成形時に木目調の模様を発現する組成物が提案されており(参考文献3参照)、また、太陽光照射時の蓄熱が少ない組成物も提案されている(特許文献4及び5参照)。しかし、スチレン系樹脂はポリ塩化ビニル樹脂に比べて高価であり、また、耐候性が十分でないことがあった。
【0003】
【特許文献1】特開2002―3675号公報
【特許文献2】特開2002―194160号公報
【特許文献3】特開平11―310683号公報
【特許文献4】特開2004―124042号公報
【特許文献5】特開2004―250553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、太陽光の照射時においても温度上昇が抑制された、木目調模様を有する層を備えてなることにより、蓄熱性が低く、耐候性、木目着色性、耐熱性(寸法安定性)等に優れた積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定の無機顔料を配合してなる低蓄熱性樹脂組成物からなる層を基材に積層することにより、蓄熱性が低く、耐候性、木目調模様の着色性、耐熱性(寸法安定性)等に優れた木目調模様を有する積層体が提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、基材と、それに積層された木目調模様を有する層とを備えてなる積層体であって、前記木目調模様を有する層は熱可塑性樹脂(A)を含む低蓄熱性樹脂組成物からなり、該組成物は、赤外線反射特性を有する無機顔料(B)を該組成物全体に対して0.5〜13質量%含有し、かつ、該組成物の下記試験条件で得られる温度上昇が73℃以下であることを特徴とする積層体が提供される。
〔試験条件〕
前記低蓄熱性樹脂組成物からなる成形品(長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mm)を、温度25±2℃、湿度50±5%RHに調節された室で60分間状態調節した後、高さ200mmからその表面に赤外線ランプ(出力100W)を60分間照射した後の成形品の表面温度を測定し、赤外線ランプ照射前の初期温度との差を温度上昇とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の積層体において、基材に積層された木目調模様を有する層は、赤外線反射特性を有する無機顔料を所定量含有することにより光照射時の温度上昇が所定温度以下に抑制された低蓄熱性樹脂組成物から形成されているため、基材に木目調模様の外観を付与できるだけでなく、基材の蓄熱を低減させ、基材の耐候性、木目調模様の着色性、耐熱性(寸法安定性)をも改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本明細書において、「(共)重合」とは、単独重合及び共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
【0008】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
本発明の積層体の木目調模様を有する層は、低蓄熱性樹脂組成物から形成される。この低蓄熱性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)を含むものであれば特に限定されない。
熱可塑性樹脂(A)としては、ゴム強化ビニル系樹脂;ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン・α−オレフィン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;ポリ酢酸ビニル樹脂;飽和ポリエステル系樹脂;(メタ)アクリル酸エステル化合物の(共)重合体等のアクリル系樹脂;フッ素樹脂;アクリロニトリル・スチレン樹脂、芳香族ビニル化合物等の(共)重合体などのスチレン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、ゴム強化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル系樹脂が好ましく、ゴム強化ビニル系樹脂が特に好ましい。
【0009】
ゴム強化ビニル系樹脂は、ビニル系樹脂中に、その耐衝撃性等を改良するためにゴム質重合体(a)を含有してなるものである。
ゴム質重合体(a)としては、ジエン系ゴム質重合体及び非ジエン系ゴム質重合体の何れも使用できる。本明細書において、非ジエン系ゴム質重合体は、主鎖の一部に二重結合を備えても良く、許容される二重結合の量の上限はゴム質重合体の種類によって異なり一義的には決められないが、種類毎に適宜実験を行うことにより決めることができる。
ジエン系ゴム質重合体としては、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
非ジエン系ゴム質重合体としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体、エチレン・ブテン−1・非共役ジエン共重合体、イソブチレン・イソプレン共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体、アクリル系ゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴムの他、上記ジエン系ゴム質重合体の水素添加物等が挙げられる。この水素添加物には、上記ブロック共重合体の水素添加物の他に、スチレンブロックとスチレン・ブタジエンランダム共重合体の水素添加物等が含まれる。水素添加物の好ましい水素添加率は共役ジエン単位部分の90モル%以上である。
本発明においては、これらのうち、耐候性及び木目調模様の鮮映性の点から、非ジエン系ゴム質重合体を用いることが好ましく、上記水素添加物及びアクリル系ゴムが更に好ましく、アクリル系ゴムが特に好ましい。
上記ゴム質重合体(a)は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、本発明のゴム強化ビニル系樹脂は、1種のゴム質重合体を使用して得られたゴム強化ビニル系樹脂単独からなるものであっても、異なるゴム質重合体を使用して得られた2種以上のゴム強化ビニル系樹脂を組み合わせたものであってもよい。本発明においては、ゴム強化ビニル系樹脂を乳化重合により得る場合には、ラテックス状のゴム質重合体が好ましい。
【0010】
ゴム質重合体(a)を乳化重合で得る場合、そのゲル含率は、好ましくは98質量%以下であり、更に好ましくは40〜98質量%である。この範囲とすることにより耐衝撃性及び表面外観に優れた木目調模様の層を得ることができる。
ゲル含率は、以下に示す方法により求めることができる。
先ず、ゴム質重合体1gをトルエン100mlに投入し、室温で48時間静置する。その後、100メッシュの金網(質量をWグラムとする)で濾過したトルエン不溶分と金網を、温度80℃で6時間真空乾燥して秤量(質量Wグラムとする)する。W及びWを、下記式(1)に代入して、ゲル含率を得る。
ゲル含率=〔{W(g)−W(g)}/1(g)〕×100 (1)
【0011】
尚、ゲル含率は、ゴム質重合体の製造時に、架橋性単量体の種類及びその使用量、分子量調節剤の種類及びその使用量、重合時間、重合温度、重合転化率等を適宜設定することにより調整される。
【0012】
上記ラテックスを用いる場合の、ラテックス中のゴム質重合体(a)の重量平均粒子径は、好ましくは500〜8000Åであり、更に好ましくは1000〜5000Å、特に好ましくは1000〜4000Åである。500Å未満では成形品の耐衝撃性が劣る傾向にあり、8000Åを超えると木目調模様の層の表面光沢が劣る場合がある。
【0013】
上記ゴム質重合体(a)を製造する方法としては、平均粒子径の調整等を考慮し、通常、乳化重合法が好ましいが、この場合、平均粒子径は乳化剤の種類・量、開始剤の種類・量、重合時間、重合温度及び攪拌条件等の製造条件を適宜選択することにより調整することができる。また、粒子径分布の他の調整方法としては、異なる粒子径の上記ゴム質重合体(a)の少なくとも2種類をブレンドする方法でもよい。
【0014】
上記ゴム強化ビニル系樹脂のビニル系樹脂を構成するビニル系単量体成分(b)としては特に限定されず、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、シアン化ビニル化合物、マレイミド系化合物、酸無水物等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエン、メチル−α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、臭素化スチレン等が挙げられる。これらのうち、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンが好ましい。また、これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。これらのうち、メタクリル酸メチルが好ましい。また、これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。また、これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
マレイミド系化合物としては、例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらのうち、N−フェニルマレイミドが好ましい。また、これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。尚、マレイミド系化合物を導入する他の方法としては、例えば、無水マレイン酸を共重合し、その後イミド化する方法でもよい。
【0018】
酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。また、これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
上記ビニル系単量体成分(b)は、芳香族ビニル化合物を含むことが好ましく、その場合、芳香族ビニル化合物(b1)と、それ以外のビニル系単量体(b2)との重合割合(成分(b1)/成分(b2))は、これらの合計を100質量%とした場合、好ましくは10〜95/5〜90(単位:質量%)、より好ましくは20〜85/15〜80(単位:質量%)である。芳香族ビニル化合物(b1)の使用量が少なすぎると、成形加工性、成形品の美的外観性が劣る傾向にあり、多すぎると、ビニル系単量体(b2)の使用による効果が十分に発揮できない傾向にある。尚、上記ビニル系単量体(b2)は、好ましくは(メタ)アクリル酸エステル化合物、シアン化ビニル化合物、マレイミド化合物等から選ばれた少なくとも1種から構成される。また、本発明の組成物の木目調模様の着色性、鮮映性を向上させるために、上記ビニル系単量体成分(b)は、(メタ)アクリル酸エステル化合物を含むことが好ましく、メタクリル酸メチルを含むことが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル化合物の使用量は、ビニル系単量体成分(b)全体100質量%に対して、20〜95質量%が好ましく、40〜90質量%が更に好ましい。
【0020】
また、本発明の目的を損なわない範囲で、ビニル系単量体成分(b)として、更に以下の単量体化合物を使用することができる。その例としては、エポキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、カルボン酸基、オキサゾリン基等の群から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有するビニル化合物が挙げられる。その例としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。
【0021】
ゴム強化ビニル系樹脂は、通常、下記成分(A1)、または成分(A1)及び成分(A2)とからなる。
成分(A1):ゴム質重合体(a)の存在下にビニル系単量体成分(b)を重合して得られたゴム変性ビニル系樹脂。
成分(A2):ゴム質重合体(a)の非存在下にビニル系単量体成分(b)を重合して得られた(共)重合体。
上記成分(A1)は、通常、ビニル系単量体成分(b)がゴム質重合体(a)にグラフト(共)重合してなるグラフト共重合体と、ゴム質重合体にグラフトしていない未グラフト共重合体(上記成分(A2)と実質的に同じ)とを含む。
しかし、上記成分(A2)は、上記未グラフト共重合体と同一成分から構成される必要はなく、上記成分(A1)の形成に用いたビニル系単量体成分(b)と全く同じ組成の成分を重合して得られる重合体であってもよいし、上記成分(A1)の形成に用いたビニル系単量体成分(b)と異なる組成の成分を重合して得られる重合体であってもよい。更には、上記成分(A1)及び成分(A2)は、それぞれ2種以上の異なる組成のものを組み合わせたものであってもよい。
【0022】
上記ゴム強化ビニル系樹脂が、上記成分(A1)単独からなる場合、及び、上記成分(A1)と上記成分(A2)とからなる場合のいずれにおいても、本組成物中のゴム質重合体(a)の含有量は、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは5〜35質量%である。ゴム質重合体(a)の含有量が少なすぎると、耐衝撃性が劣る傾向にあり、多すぎると、硬度、剛性が劣る傾向にある。また、上記成分(A1)製造時のゴム質重合体(a)の使用量は、ゴム質重合体(a)のビニル系単量体成分(b)に対する質量比(ゴム質重合体(a)/ビニル系単量体成分(b)、両者の合計100質量%)で、5〜80/95〜20が好ましく、10〜75/90〜25が更に好ましい。
【0023】
上記成分(A1)は、ゴム質重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体成分(b)を、好ましくは乳化重合、溶液重合、塊状重合による方法で製造することができる。
乳化重合により製造する場合には、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水等が用いられる。
尚、上記成分(A1)を製造するために用いられるゴム質重合体(a)及びビニル系単量体成分(b)は、反応系において、ゴム質重合体全量の存在下に、単量体成分を一括添加してもよいし、分割又は連続添加してもよい。また、これらを組み合わせた方法でもよい。更に、ゴム質重合体の全量又は一部を、重合途中で添加して重合してもよい。
【0024】
上記重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド等で代表される有機ハイドロパーオキサイド類と含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方等で代表される還元剤との組み合わせによるレドックス系、または過硫酸カリウム等の過硫酸塩、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレイト、t−ブチルパーオキシモノカーボネート等の過酸化物等が挙げられ、これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。更に、上記重合開始剤は、反応系に一括又は連続的に添加することができる。また、上記重合開始剤の使用量は、上記ビニル系単量体成分(b)全量に対し、通常、0.1〜1.5質量%、好ましくは0.2〜0.7質量%である。
【0025】
上記連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類、ターピノーレン、α−メチルスチレンのダイマー等が挙げられ、これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記連鎖移動剤の使用量は、上記ビニル系単量体成分(b)全量に対して、通常、0.05〜2.0質量%である。
【0026】
乳化重合の場合に使用する乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族スルホン酸塩、高級脂肪族カルボン酸塩、リン酸系等のアニオン性界面活性剤、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型等のノニオン系界面活性剤等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記乳化剤の使用量は、通常、上記ビニル系単量体成分(b)全量に対して、0.3〜5.0質量%である。
【0027】
乳化重合により得られたラテックスは、通常、凝固剤により凝固させ、重合体成分を粉末状とし、その後、これを水洗、乾燥することによって精製される。この凝固剤としては、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム等の無機塩や、硫酸、塩酸等の無機酸、酢酸、乳酸等の有機酸等が用いられる。
溶液重合、塊状重合による製造方法は、公知の方法を採用することができる。
【0028】
上記成分(A1)のグラフト率は、好ましくは10〜200%、更に好ましくは15〜150%、特に好ましくは20〜100%である。上記成分(A1)のグラフト率が10%未満では、本発明の低蓄熱性樹脂組成物を用いて得られる木目調模様の層の外観不良、衝撃強度の低下を招くことがある。また、200%を超えると、加工性が劣る。
尚、グラフト率は、以下に示す方法により求めることができる。
グラフト率(質量%)={(T−S)/S}×100…(2)
上記式(2)中、Tは成分(A1)1gをアセトン(ただし、ゴム質重合体(a)がアクリル系ゴムを使用したものである場合、アセトニトリル)20mlに投入し、振とう機により2時間振とうした後、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Sは成分(A1)1gに含まれるゴム質重合体の質量(g)である。
【0029】
また、上記成分(A1)のアセトン可溶分(ただし、ゴム質重合体(a)がアクリル系ゴムを使用したものである場合、アセトニトリル可溶分)の極限粘度〔η〕(メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜1.0dl/g、更に好ましくは0.2〜0.9dl/g、特に好ましくは0.3〜0.7dl/gである。この範囲とすることにより、本発明の低蓄熱性樹脂組成物は成形加工性(流動性)に優れ、該組成物を用いて得られる木目調模様の層も耐衝撃性に優れる。
尚、上記グラフト率(%)及び極限粘度〔η〕は、上記成分(A1)を重合するときの、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤等の種類や量、更には重合時間、重合温度等を変えることにより、容易に制御することができる。
【0030】
上記成分(A2)は、ビニル系単量体成分(b)をゴム質重合体(a)の非存在下に重合させる以外、上記成分(A1)と同様の方法で得ることができ、例えば、バルク重合、溶液重合、乳化重合及び懸濁重合等により得ることができる。成分(A2)の重合に用いられる好ましいビニル系単量体成分(b)の種類及び組合せも、上記成分(A1)について記述したものがそのまま当てはまる。
上記成分(A2)の極限粘度〔η〕(メチルエチルケトン中、30℃で測定)は、好ましくは0.1〜1.0dl/g、より好ましくは0.15〜0.9dl/gである。極限粘度〔η〕が上記範囲内であると、木目調模様の層の成形加工性と耐衝撃性の物性バランスに優れる。尚、極限粘度〔η〕は、上記成分(A1)と同様にして制御することができる。
本発明で使用されるゴム強化ビニル系樹脂は、共重合成分として(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有するものである場合、鮮明な木目調模様の着色性が得られ、耐候性、ポリ塩化ビニル樹脂との接着性にも優れるので好ましい。(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、メタクリル酸メチルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル化合物の含有量は、本発明の低蓄熱性樹脂組成物全体に対して、好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは10〜50質量%、特に好ましくは10〜40質量%である。(メタ)アクリル酸エステル化合物の含有量が少ないと、鮮明な木目調模様の着色性、耐候性、ポリ塩化ビニル樹脂との接着性等の改良効果が十分でない場合がある。(メタ)アクリル酸エステル化合物の含有量が多すぎると、耐衝撃性が劣る場合がある。共重合成分として(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有するゴム強化ビニル系樹脂は、共重合成分として(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有する成分(A1)及び共重合成分として(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有する成分(A2)のいずれか一方又は両者を含有するものであってよい。
【0031】
本発明に係わる赤外線反射特性を有する無機顔料(B)は、熱可塑性樹脂(A)に低蓄熱特性を付与するためのみならず、熱可塑性樹脂(A)に木に類似した色彩および木目調の模様を付与するために用いられる。なお、本発明において、木目調模様とは、木目模様のみならず、大理石模様なども含む概念である。
かかる無機顔料(B)としては、赤外線を吸収しにくい性質を有するものであれば特に限定されず、Fe、Cr、Mn、Cu、Co及びNiから選ばれる少なくとも1種の元素を含む化合物が好ましい。特に、上記元素の酸化物、複合酸化物等が好ましく、具体的には、FeO、FeO(OH)、Fe、CrO、Cr、Cr・2HO、MnO、Mn、MnO、CuO、CuO、CoO、CoO・Al、Fe(Fe,Cr)、(Co,Fe)(Fe,Cr)、Cu(Cr,Mn)、(Cu,Fe,Mn)(Fe,Cr,Mn)、(Fe,Zn)(Fe,Cr)、(Fe,Zn)Fe、CoAl、Co(Al,Cr)、Cr:Fe、(Ni,Co,Fe)(Fe,Cr)等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、Cr:Fe、(Cu,Fe,Mn)(Fe,Cr,Mn)、Fe(Fe,Cr)、(Co,Fe)(Fe,Cr)、Cu(Cr,Mn)、(Ni,Co,Fe)(Fe,Cr)が挙げられる。また、上記例示した酸化物及び複合酸化物は、それぞれ1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができ、所望の色に着色された成形品とすることができる。
尚、上記例示した中で、CoOは、単独で用いた場合、太陽光が当たったときに赤外線の強度等によって成形品の表面に白化が発生したり、紫外線によって揮散したりすることがあるため、CoOを用いる場合は、他の無機顔料と組み合わせて用いることが好ましい。本発明の低蓄熱性樹脂組成物においては、黒系、深緑系等の暗色系の色の層を得る場合、無機顔料(B)としてFe、Cr及びMnから選ばれる少なくとも2種の元素を含む酸化物を用いることが好ましい。その例としては、Fe(Fe,Cr)、(Co,Fe)(Fe,Cr)、Cu(Cr,Mn)、(Cu,Fe,Mn)(Fe,Cr,Mn)、(Fe,Zn)(Fe,Cr)、Cr:Fe等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、黒系、深緑系等の暗色系の色の層を得るためには、上記例示した無機顔料は、その合計が、無機顔料(B)全体に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは80〜100質量%となるように含有させることが必要である。100質量%でない場合の残部は、他の顔料(無機顔料、有機顔料、カーボンブラック等)を本発明の目的を損なわない範囲で使用することができる。また、黒系、深緑系のみならず、青系、茶系等の暗色系の色についても、所望の色に応じて、1種単独でまたは色の三原色を利用した複数種の無機顔料の組み合わせによって得ることができる。従来の着色剤は、有機顔料または染料を組み合わせるものであり、成形品が退色、変色する等耐候性に劣っていたのに対し、本発明においては、無機顔料を用いているため、成形品の退色、変色等を引き起こすことがない。そして、無機顔料に由来する色を鮮やかに呈し続ける成形品とすることができる。また、黒系、深緑系等の暗色系の色の層を得るための他の好ましい態様としては、上記無機顔料(B)としてCo元素及びNi元素を含む酸化物を用いることが挙げられる。その例としては、(Ni,Co,Fe)(Fe,Cr)等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、他の無機顔料と組み合わせて用いることもできる。
また、上記無機顔料(B)としてCo元素及びNi元素を含む酸化物を用いる場合、本組成物中のCo元素及びNi元素の含有量の比Co/Niが5/95〜95/5であることが好ましい。より好ましくは10/90〜90/10であり、更に好ましくは15/85〜85/15である。上記範囲とすることによって、暗色系着色性及び低蓄熱性に一段と優れた熱可塑性樹脂組成物とすることができる。
黒系、深緑系等の暗色系の色の層とするためには、上記例示した無機顔料は、その合計が、無機顔料(B)全体に対して、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20〜100質量%、更に好ましくは25〜100質量%となるように含有させることが必要である。100質量%でない場合の残部は、本発明の目的を損なわない範囲で、他の顔料(無機顔料、有機顔料、カーボンブラック等)とすることができる。また、黒系、深緑系のみならず、青系、茶系等の暗色系の色についても、所望の色に応じて、1種単独でまたは色の三原色を利用した複数種の無機顔料の組み合わせによって得ることができる。
尚、上記いずれの態様においても、無機顔料(B)の1つにCoOを用いる場合は、無機顔料全体を100質量%とすると、CoOの含有割合は好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。残部は、他の無機顔料であり、例えば、Fe(Fe,Cr)等である。
【0032】
上記無機顔料(B)は粉末であることが好ましく、更に好ましくは微粉末である。形状は特に限定されないが、粉末の最大長さは、好ましくは5nm〜40μm、より好ましくは15nm〜30μmである。上記範囲とすることによって、取扱い性と耐衝撃性のバランスに優れる。
【0033】
本発明で用いる低蓄熱性樹脂組成物における上記無機顔料(B)の含有量は、無機顔料(B)の種類によって異なるが、該低蓄熱性樹脂組成物全体に対して、0.5〜13質量%、好ましくは1.0〜10質量%、より好ましくは1.0〜8質量%である。無機顔料(B)の含有量が少なすぎると、十分な低蓄熱性を得ることができず、着色性も劣る傾向にあり、一方、多すぎると、成形加工性、耐衝撃性が劣る傾向にある。また、本発明においては、上記無機顔料(B)を用いることで耐候性が一段と向上するという効果が得られる。
【0034】
本発明で用いる低蓄熱性樹脂組成物は、下記試験条件で得られる成形品の温度上昇が73℃以下であることを特徴とし、この試験条件によって、蓄熱性を評価することができる。この温度上昇は、好ましくは68℃以下、更に好ましくは65℃以下である。したがって、各無機顔料(B)の具体的な含有量は、この温度上昇の要求を満たすように決定される。
〔試験条件〕
前記低蓄熱性樹脂組成物からなる成形品(長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mm)を、温度25±2℃、湿度50±5%RHに調節された室で60分間状態調節した後、高さ200mmからその表面に赤外線ランプ(出力100W)を60分間照射した後の成形品の表面温度を測定し、赤外線ランプ照射前の初期温度との差を温度上昇とする。
【0035】
該低蓄熱性樹脂組成物は、所望の色彩を備えるために、該組成物の温度上昇が本発明における上記範囲を逸脱しない限り、上記無機顔料(B)以外に他の顔料及び/又は染料を含有することができる。なお、本明細書において、上記無機顔料(B)及び他の顔料及び/又は染料を総称する場合、「染料及び/又は顔料(B´)」と記載する。
上記の他の顔料としては、公知の無機顔料及び有機顔料が使用できる。かかる公知の無機顔料としては、亜鉛華、チタンイエローなどの酸化亜鉛、チタン白などの酸化チタン系、焼成系、群青系、コバルトブルー系、ベンガラなどの酸化鉄系、カーボンブラック系、硫化鉄、硫化カドミウムなどの硫化物系、クロム酸鉛、クロム酸亜鉛などのクロム酸塩系、炭酸塩系、金属粉系などが挙げられ、これらの中では、酸化鉄系、カーボンブラック系、群青系などが好ましく使用できる。但し、これらの無機顔料のうち、上記無機顔料(B)に属するものは除く。有機顔料としては、ペリノン系、蛍光増白剤、フタロシアニン系、キナクリドン系、パーマネントレッド、レーキレッド、ファーストイエローなどのアゾ系、ニトロソ系、ニトロ系などが挙げられ、これらの中では、アゾ系やフタロシアニン系などが好ましく使用できる。上記の染料としては、複素環系、アンスラキノン系、アゾ系、ペリノン系、ローダミンレーキなどの塩素性染料系レーキなどが挙げられる。
【0036】
本発明で用いる低蓄熱性樹脂組成物は、公知の方法で成形及び加工することにより、上記無機顔料(B)及びその他の着色剤の着色に由来する木目調模様を発現させることができる。好ましくは、かかる木目調模様が成形時に容易に発現されるよう、上記染料及び/又は顔料(B´)の一部又は全てを熱可塑性樹脂(A´)に予め混合したマスターバッチ(「組成物(II)」)として本発明で用いる低蓄熱性樹脂組成物に含有させる。マスターバッチに含有させる染料及び/又は顔料(B´)としては、上記無機顔料(B)を用いることが低蓄熱性を効果的に付与する観点から好ましい。この場合、染料及び/又は顔料(B´)の含有量は、マスターバッチ(「組成物(II)」)全量100質量%に対して、1〜70質量%とすることが好ましい。
【0037】
かかる成分(B´)のマスターバッチを構成する熱可塑性樹脂(A´)としては、公知の熱可塑性樹脂がすべて使用でき、上記ゴム強化ビニル系樹脂の他、スチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1などのポリオレフィン系樹脂、ナイロン6,6、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン4,6などのポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、全芳香族ポリエステル、ポリカーボネート樹脂、ポリオキシメチレンなどのポリエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドエラストマーなどが挙げられ、これらは、1種単独で、または2種以上を併用することができる。好ましい熱可塑性樹脂(A´)は、上記ゴム強化ビニル系樹脂、とりわけゴム強化スチレン系樹脂、その他のスチレン系樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート樹脂であり、特に好ましい熱可塑性樹脂(A´)は、上記ゴム強化ビニル系樹脂及びスチレン系樹脂であり、とりわけ、該熱可塑性樹脂(A´)の全体に対して10〜90質量%のα―メチルスチレンを共重合成分として含むものが木目調模様の鮮映性の点から好ましい。上記成分(A)がゴム強化ビニル系樹脂を含むものである場合、熱可塑性樹脂(A´)を構成するゴム強化ビニル系樹脂の組成は、前者のゴム強化ビニル系樹脂の組成と同一でも異なってもよい。
【0038】
本発明で用いる低蓄熱性樹脂組成物は、木目調模様を良好に発現するように、さらに、滑剤(C)を含有することが好ましい。滑剤(C)としては、公知の滑剤を使用することができる。具体的には、長鎖のアルキル基と官能基とを有する化合物、エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン(共)重合体、ジメチルポリシロキサンなどのシリコン含有重合体、α−オレフィンと官能基含有不飽和化合物との共重合体、エチレン系共重合体、プロピレン系共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、シリコン含有重合体などの重合体に官能基含有不飽和化合物を付加した重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などを酸化し、カルボキシル基などを付加する方法によって得られる重合体などが挙げられる。
【0039】
ここで、上記官能基としては、カルボキシル基またはその金属塩、水酸基、オキサゾリン基、酸無水物基、エステル基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、イソシアネート基、ウレタン基、ユリア基などが挙げられる。好ましい官能基としては、カルボキシル基またはその2価の金属塩、エステル基、アミド基である。カルボキシル基の塩としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、バリウム、カドミウム、マンガン、コバルト、鉛、スズなどの金属塩が挙げられる。上記官能基含有不飽和化合物としては、上記したものがすべて使用される。好ましくは、長鎖のアルキル基と官能基とを有する化合物、エチレン系共重合体である。
【0040】
本発明で用いる低蓄熱性樹脂組成物における滑剤(C)の使用量は、該低蓄熱性樹脂組成物全体に対して1〜12質量%、好ましくは2〜8重量%である。1重量%未満では、鮮明な木目調模様が得られない場合があり、一方、12重量%を超えると、溶融混練り時にサージングを生じ混練りできない場合がある。滑剤(C)は、上記成分(A)及び成分(A´)の何れか一方に含有させてもよいし、両方に含有させもよい。
【0041】
上記のように染料及び/又は顔料(B´)を熱可塑性樹脂(A´)に含有させて用いる場合、本発明で使用する低蓄熱性樹脂組成物は、下記組成物(I)100質量部と、下記組成物(II)0.1〜30質量部とをドライブレンドしてなる組成物であり、かつ、該低蓄熱性樹脂組成物中に含まれる滑剤(C)の量が、該組成物全体に対して1〜12質量%となるように構成することが好ましい。
【0042】
組成物(I):熱可塑性樹脂(A)としてゴム強化ビニル系樹脂75〜99質量%、赤外線反射特性を有する無機顔料(B)0〜13質量%、及び、滑剤(C)0〜12質量%を溶融混練してなる熱可塑性樹脂組成物(但し、上記成分(A)、(B)及び(C)の合計は100質量%)。
組成物(II):熱可塑性樹脂(A´)18〜99質量%、染料及び/又は顔料(B´)1〜70質量%、並びに、滑剤(C)0〜12質量%を溶融混練してなる熱可塑性樹脂組成物(但し、上記成分(A´)、(B´)及び(C)の合計は100質量%)。
なお、上記の場合でも、無機顔料(B)は、組成物(I)及び組成物(II)の合計100質量%に対して0.5〜13質量%の範囲で含有されていなければならない。
【0043】
本発明の低蓄熱性樹脂組成物には、必要に応じて、種々の添加剤を含有させることができる。例えば、酸化防止剤、可塑剤、着色剤、難燃剤、充填剤、滑剤、帯電防止剤等である。
【0044】
本発明の低蓄熱性樹脂組成物は、各種押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を用い、各成分を混練りすることによって得られる。混練りするに際しては、各成分を一括して混練りしてもよく、多段添加方式で混練りしてもよい。本発明の低蓄熱性樹脂組成物が上記組成物(I)および組成物(II)からなる場合は、各組成物を上記方法で別個に混練りして得た後、両組成物をドライブレンドすることによって得られる。
【0045】
このようにして得られた本発明の低蓄熱性樹脂組成物は、射出成形、シート押出、真空成形、発泡成形等によってシート、フィルム等の各種成形品を作ることができる。本発明の低蓄熱性樹脂組成物を用いて木目調模様のシート、フィルム等の成形品又は積層体を成形する方法としては公知の各種の方法を採用することができるが、上記組成物(I)および組成物(II)のドライブレンド形態の組成物をそのまま成形機に供給して成形すると、きれいな木目調模様が得られるので好ましい。かくして得られた成形品を基材に積層することによって本発明の積層体を得ることができる。積層方法としては、接着剤を用いた接着、熱接着などが挙げられるが、最も好ましくは、本発明の低蓄熱性樹脂組成物の層と基材とを同時に共押出する方法である。本発明の低蓄熱性樹脂組成物の層は、通常、積層体の日光の照射される部位に積層することが好ましい。
【0046】
基材としては、いかなる材料からなるものであっても良いが、上記共押出可能な熱可塑性樹脂からなるものが好ましい。かかる熱可塑性樹脂としては、例えば、ゴム強化ビニル系樹脂;ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン・α−オレフィン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;ポリ酢酸ビニル樹脂;飽和ポリエステル系樹脂;(メタ)アクリル酸エステル化合物の(共)重合体等のアクリル系樹脂;フッ素樹脂;アクリロニトリル・スチレン樹脂、芳香族ビニル化合物等の(共)重合体などのスチレン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。これらの内、本発明の低蓄熱性樹脂組成物は、ポリ塩化ビニル樹脂からなる基材の表面に積層して用いるのに好適であり、かくして、ポリ塩化ビニル樹脂の成形品を本発明の低蓄熱性樹脂組成物からなる層で熱を遮断することにより、ポリ塩化ビニル樹脂の低コスト性を維持したまま、その耐熱性の不足を補完し、積層体全体としての価値を高めることができる。
【0047】
本発明の低蓄熱性樹脂組成物からなる木目調模様の層の厚さは、要求される熱の遮断特性に応じて適宜選択されるが、通常、シート又はフィルムの形態で基材に積層される。該層の厚さは50〜800μmの範囲とすることが好ましい。
【0048】
本発明で使用する低蓄熱性樹脂組成物は、成形加工性に優れ、上記成形方法によって得られる積層体は、蓄熱が防止され、寸法の変化が抑制され、耐候性及び耐衝撃性も改善されるので、窓枠等の屋内家屋の構造部材、雨どい等の屋外家屋の構造部材、自動車内装部品等に好適に使用することができる。
【実施例】
【0049】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、実施例及び比較例において、部及び%は特に断らない限り質量基準である。
1.評価方法
本実施例において用いられる評価方法は以下の通りである。なお、試験片I及びIIの作製方法は後述のとおりであり、以下の評価において、試験片IIについては表層面を評価した。
(1)蓄熱性
温度25±2℃、湿度50±5%RHに調節された室において、長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mmの試験片I及びIIの表面に、高さ200mmから赤外線ランプ(出力100W)を照射して、60分後の試験片I及びIIの表面温度を、表面温度計を用いて測定した。単位は℃である。
【0050】
(2)耐候性
長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mmの試験片IIを、サンシャインウェザーオメーター(スガ試験機社製)を用いて、降雨サイクル18分/120分、ブラックパネル温度63℃として3000時間暴露し、暴露前後の色調変化値ΔEを算出した。
ΔEは、多光源分光測定計(スガ試験機社製)を用いて変色度Lab(L;明度、a;赤色度、b;黄色度)を測定し、次式により算出した。
ΔE=√〔(L−L+(a−a+(b−b
(式中、L、a、bは、暴露前の値を、L、a、bは暴露後の値を示す。)
ΔEの値は、小さい方が色の変化が小さく、色調が優れていることを示す。評価基準は以下の通りである。
○;ΔEが5以下である。
△;ΔEが5を超えて10未満である。
×;ΔEが10以上である。
【0051】
(3)木目模様の着色性
長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mmの試験片IIを目視で評価した。評価基準は以下の通りである。
○;鮮やかな木目調模様である。
△;○印に比べてやや劣る。
×;不良。
【0052】
(4)耐熱性
長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mmの試験片IIの表面に上記蓄熱性評価と同一の条件で照射を行い、試験片IIの変形の程度を目視評価した。評価基準は以下のとおりである。
○;変形がなかった。
×;変形がみられた。
【0053】
2.熱可塑性樹脂の調製
2−1.成分(A−1)
製造例1〔アクリル系ゴム強化ビニル系樹脂(A−1)の製造〕
(1)アクリル系ゴム質重合体ラテックス(aラテックス)の製造
容量5Lの反応器に、水140部、不均化ロジン酸カリウム1部、β―ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩1.5部、炭酸水素ナトリウム1部を仕込み、撹拌しつつ窒素気流下で内温を60℃まで昇温した。この時点で、アクリル酸n―ブチル9部とアリルメタクリレート0.1部の混合物、過硫酸カリウム0.025部および水2部からなる水溶液を添加し、75℃に昇温させ、1時間反応を行なった。次いで、高級脂肪酸ナトリウム石けん0.5部と水12部からなる水溶液、過硫酸カリウム0.15部と水80部からなる水溶液を添加し、その後、75℃に保ちながらアクリル酸n―ブチル90部とアリルメタクリレート0.9部の混合物を2時間にわたって連続的に添加し、添加後30分間75℃で保持し、重合反応を終了した。得られたaラテックスのアクリル系ゴム質重合体粒子の重量平均粒子径は290nm、ゲル含量94%であった。
【0054】
(2)アクリル系ゴム強化ビニル系樹脂(A−1)の製造
容量5Lの反応器にaラテックス100部(固形分換算)、水180部(但し、ラテックスの水を含む)を仕込み、撹拌しつつ窒素気流下、40℃に昇温させた。この時点で、ブドウ糖0.3部とピロリン酸ナトリウム1.2部と硫酸第1鉄0.01部と水20部からなる水溶液、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.12部、不均化ロジン酸カリウム0.72部と水9部からなる水溶液を添加した。次いで、75℃まで昇温させ、この時点でスチレン73部とアクリロニトリル27部の混合物、及び、t−ブチルハイドロパーオキサイド2.8部と不均化ロジン酸カリウム1.7部と水20部からなる水溶液の添加を開始し、75℃に保持しながら、前者は3時間、後者は3.5時間にわたって連続的に添加した。後者の添加終了後、75℃で60分間保持し、重合を終了した。重合転化率は95%であった。この共重合体ラテックスを凝固、水洗、乾燥し、粉末状のアクリル系ゴム強化ビニル系樹脂(A−1)を得た。グラフト率は79%、ゴム成分含有量は53%であった。
【0055】
2−2.成分(A−2)
製造例2〔スチレンーアクリロニトリルーメタクリル酸メチル共重合体(A−2)の製造〕
内容積30Lのリボン翼を備えたジャケット付重合反応容器を2基連結し、窒素置換した後、1基目の反応容器にスチレン23部、アクリロニトリル18部、メタクリル酸メチル59部、トルエン20部を連続的に添加した。同時に、tert−ドデシルメルカプタン0.12部とトルエン5部からなる溶液及び1,1´―アゾビス(シクロヘキサンー1−カーボニトリル)0.1部とトルエン5部からなる溶液を連続的に供給した。1基目の重合温度は110℃にコントロールし、平均滞留時間2時間、重合転化率57%であった。得られた共重合体溶液は、1基目の反応器の外部に設けたポンプにより、1基目供給量と同量を連続的に取出し、2基目に供給した。2基目の反応容器の重合温度は130℃で行い、重合転化率は70%であった。2基目の反応容器で得られた共重合体溶液は、2軸3段ベント付き押出機を用いて、200〜250℃、真空度−600mmHgの条件で未反応単量体と溶剤を脱揮し、結合メタクリル酸メチル含量72%、結合スチレン含量21%、結合アクリロニトリル含量7%、極限粘度〔η〕0.5dl/gの共重合体(A−2)をペレットとして得た。
【0056】
2−3.成分(A−3)
AES樹脂(テクノポリマー(株)製、「テクノAES W270」(商品名))を用いた。
2−4.成分(A−4)
α―メチルスチレンーアクリロニトリル共重合体(α―メチルスチレン単位/アクリロニトリル単位=73/27(%))を用いた。極限粘度〔η〕は0.8dl/gであった。2−5.成分(A−5)
下記成分からなる組成物を用いた。
ポリ塩化ビニル樹脂(分子量1000)100重量部、
安定剤(Ca/Zn、ワンパック品)4.2重量部、
PMMA(分子量:200万)2重量部、
強化剤(アクリル系ゴム)4重量部、
炭酸カルシウム10重量部
【0057】
3.無機顔料(低蓄熱付与剤)
成分(B−1);商品名「フェローカラー42−703A」、日本フェロー社製、Fe及びCrの複合酸化物(化学組成は、Cr;88〜91%、Fe;7〜10%であり、色は黒色である。)。
成分(B−2);商品名「フェローカラー42−350A」、日本フェロー社製、Fe及びMnの複合酸化物で、色は黄色である。
成分(B−3);商品名「フェローカラー42−303B」、日本フェロー社製、Cu、Cr及びMnの複合酸化物、色は茶色である。
成分(B−4);カーボンブラック。
【0058】
4.滑剤
成分(C−1);ステアリン酸マグネシウム。
【0059】
5.実施例1〜3、及び比較例1〜3
5−1.試験片I(単層シート)、試験片II(2層シート)の作製
(1)ペレットIの作製
表1のペレットI欄に示す成分を、同表に示す配合割合で、ヘンシェルミキサーを用いて3分間混合し、次いで、シリンダー設定温度200℃の50mmφ押出機を用いて溶融混練りしてペレットIを得た。
(2)ペレットIIの作製
表1のペレットII欄に示す成分を、同表に示す配合割合で、ヘンシェルミキサーを用いて3分間混合し、次いで、シリンダー設定温度200℃の50mmφ押出機を用いて溶融混練りしてペレットIIを得た。
(3)ペレットIとペレットIIの混合ペレットの作製
表1に示す配合割合のペレットIとペレットIIとを、タンブラーを用いて3分間混合し混合ペレット得た。次いで、この混合ペレットを80℃で1時間乾燥した。
【0060】
(4)試験片I(単層シート)の作製
Tダイを備えた40mmφ押出機を用い、そのシリンダー設定温度200℃とし、スクリュー回転数と引取速度を適宜調節することで、上記混合ペレットから幅55mm厚さ2.5mmのシートを得た。このシートから長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mmの試験片Iを得た。
(5)試験片II(2層シート)の作製
基材層として塩化ビニル樹脂(A−5)を使用し、表層として上記混合ペレットを使用し、基材層用には40mmφ押出機を用い、そのシリンダー設定温度を170℃とし、表層用には20mmφ押出機を用い、そのシリンダー設定温度200℃とし、スクリュー回転数と引取速度を適宜調節することで共押出し、幅55mm厚さ2.5mm(基材層の厚さ2.3mm、表層の厚さ0.2mm)の2層シートを得た。この2層シートから長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mmの試験片IIを得た。
【0061】
(6)評価
得られた試験片I及びIIを上記記載の方法で評価した。評価結果を表2に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
実施例1〜3の場合、木目調模様を有する層が本発明の所定の範囲の量の無機顔料(B)を含有し、かつ、本発明の所定の蓄熱性を満たす樹脂組成物から形成されているため、耐候性、木目模様の着色性、耐熱性の何れにおいても優れている。
これに対し、比較例1の場合、無機顔料(B)の使用量が本発明の範囲未満であるため、耐候性、木目模様の着色性に劣る。比較例2の場合、無機顔料(B)の代わりにカーボンブラックを使用しているため、蓄熱性(温度上昇)が大きく、耐候性、木目模様の着色性、耐熱性に劣る。比較例3の場合、カーボンブラックを含有する塩化ビニル樹脂層であり、蓄熱性(温度上昇)が大きく、耐候性、木目模様の着色性、耐熱性の何れも劣る。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の積層体は、木目調の外観を備え、蓄熱性が低く、耐候性、木目調模様の着色性、耐熱性等に優れているので、太陽光の照射時の温度上昇が問題となる建築材料分野、車両分野等の各種成形品に利用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、それに積層された木目調模様を有する層とを備えてなる積層体であって、前記木目調模様を有する層は熱可塑性樹脂(A)を含む低蓄熱性樹脂組成物からなり、該組成物は、赤外線反射特性を有する無機顔料(B)を該組成物全体に対して0.5〜13質量%含有し、かつ、該組成物の下記試験条件で得られる温度上昇が73℃以下であることを特徴とする積層体。
〔試験条件〕
前記低蓄熱性樹脂組成物からなる成形品(長さ80mm、幅55mm、厚さ2.5mm)を、温度25±2℃、湿度50±5%RHに調節された室で60分間状態調節した後、高さ200mmからその表面に赤外線ランプ(出力100W)を60分間照射した後の成形品の表面温度を測定し、赤外線ランプ照射前の初期温度との差を温度上昇とする。
【請求項2】
前記低蓄熱性樹脂組成物は熱可塑性樹脂(A)としてゴム強化ビニル系樹脂を含む請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記ゴム強化ビニル系樹脂はゴム質重合体(a)として非ジエン系ゴム質重合体を含有する請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記ゴム強化ビニル系樹脂はゴム質重合体(a)としてアクリル系ゴムを含有する請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記ゴム強化ビニル系樹脂は、共重合成分として(メタ)アクリル酸エステル化合物を含有する請求項2〜4の何れか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記低蓄熱性樹脂組成物は、下記組成物(I)100質量部と、下記組成物(II)0.1〜30質量部とをドライブレンドしてなる組成物であり、かつ、該低蓄熱性樹脂組成物中に含まれる滑剤(C)の量が、該組成物全体に対して1〜12質量%である請求項1に記載の積層体。
組成物(I):熱可塑性樹脂(A)としてゴム強化ビニル系樹脂75〜99質量%、赤外線反射特性を有する無機顔料(B)0〜13質量%、及び、滑剤(C)0〜12質量%を溶融混練してなる熱可塑性樹脂組成物(但し、上記成分(A)、(B)及び(C)の合計は100質量%)。
組成物(II):熱可塑性樹脂(A´)18〜99質量%、染料及び/又は顔料(B´)1〜70質量%、並びに、滑剤(C)0〜12質量%を溶融混練してなる熱可塑性樹脂組成物(但し、上記成分(A´)、(B´)及び(C)の合計は100質量%)。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂(A´)は、該熱可塑性樹脂(A´)の全体に対して10〜90質量%のα―メチルスチレンを共重合成分として含むスチレン系樹脂である請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
基材がポリ塩化ビニル樹脂からなる請求項1乃至7の何れか1項に記載の積層体。
【請求項9】
前記木目調模様を有する層が日光の照射される部位に積層されている請求項1乃至8の何れか1項に記載の積層体。
【請求項10】
前記木目調模様を有する層がシート又はフィルムの形態で基材に積層されている請求項1乃至9の何れか1項に記載の積層体。


【公開番号】特開2007−168176(P2007−168176A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366628(P2005−366628)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】