説明

積層体

【課題】
加熱処理を行うだけで容易に製品外観、機械物性、耐熱性に優れる積層体を得ることができる積層体を提供する。
【解決手段】
少なくとも(A)層と(A)層に隣接する(B)層の2層からなる積層体であって、(A)層がエチレン・酢酸ビニル共重合体(a)、(B)層が低圧法エチレン単独重合体、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・α−オレフィン3元共重合体、α−オレフィン単独重合体から選ばれる少なくとも1種から成るオレフィン系重合体(b)及び金属キレート化合物(c)から成る組成物から構成されることを特徴とする積層体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱処理を行うだけで容易に製品外観、機械物性、耐熱性等に優れる積層体を得ることができる積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレン系重合体やプロピレン系重合体などのオレフィン系重合体の成形体は、食品分野、医療分野、建築分野、自動車分野、電子材料分野などに広く用いられている。近年のオレフィン系重合体に対する要求物性は高度化し、更なる耐熱性、耐久性、耐薬品性、透明性、電気絶縁性等の向上が求められるようになってきた。このような要求物性を満たすため、従来よりオレフィン系重合体を架橋させる方法が用いられてきた。
【0003】
これまで、オレフィン系重合体の架橋方法としては、オレフィン系重合体に有機過酸化物及び架橋助剤を添加する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。また、ヒドロキシル基、若しくはアセトキシ基を有する樹脂に金属有機化合物を添加する方法が提案されている(例えば特許文献2、非特許文献1参照)。更に、エチレンと不飽和カルボン酸、若しくは不飽和酸無水物との共重合体に多価アルコール化合物やイソシアネート化合物を添加する方法が提案されている(例えば特許文献3〜4参照)。しかし、これらの方法は、押出成形時に架橋反応が進行し、成形性の悪化やフィルムなどの製品外観の悪化が起こるといった問題があった。
【0004】
また、オレフィン系重合体の成形体に放射線、または電子線を照射する方法が提案されている(例えば、特許文献5〜6参照。)。この方法は成形性や製品外観に優れるものの、コストが高いといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−192850号公報
【特許文献2】特許第4077927号公報
【特許文献3】特許第3386887号公報
【特許文献4】特開平11−228665号公報
【特許文献5】特許第3760489号公報
【特許文献6】特開平8−283428号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.App.Polym.Sci.1971,15,589.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような状況を鑑みなされたものであって、加熱処理を行うだけで容易に製品外観、機械物性、耐熱性等に優れる積層体を得ることができる積層体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の積層体が、加熱処理を行うだけで容易に製品外観、機械物性、耐熱性等に優れる積層体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、少なくとも(A)層と(A)層に隣接する(B)層の2層からなる積層体であって、(A)層がエチレン・酢酸ビニル共重合体(a)、(B)層が低圧法エチレン単独重合体、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・α−オレフィン3元共重合体、α−オレフィン単独重合体から選ばれる少なくとも1種から成るオレフィン系重合体(b)及び金属キレート化合物(c)から成る組成物から構成されることを特徴とする積層体に関するものである。
【0010】
さらに、本発明は(B)層に混合する金属キレート化合物(c)が、下記一般式(1)に表される化合物であることを特徴とする積層体に関するものである。
【0011】
MR (1)
(式中、Mは金属、Cはキレート剤、Rはアルコキシ基を除く置換基を表す。n及びmはそれぞれC及びRの置換数であり、nは1〜8であり、mは0〜16である。また、Mの配位数をN、Cの配位数の総和をN、Rの価数の総和をNとすると、N=N+Nを満たすような組合せとなる。)
また、本発明は(B)層に混合する金属キレート化合物(c)に含まれる金属Mがジルコニウム、チタン、若しくアルミニウムであることを特徴とする積層体に関するものである。
【0012】
また、本発明は(B)層に混合する金属キレート化合物(c)に含まれるキレート剤Cがβ−ジケトン型の配位子、若しくはケトエステル型の配位子であることを特徴とする積層体に関するものである。
【0013】
また、本発明はエチレン・酢酸ビニル共重合体(A)のJIS K6924−2(1997年)により測定された融点及びポリオレフィン(B)のJIS法に準拠した手法により測定された融点のいずれか高い温度以上で接着せしめたことを特徴とする積層体に関するものである。
【0014】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の積層体を構成するエチレン・酢酸ビニル共重合体(a)は本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はない。
【0016】
本発明の積層体を構成するエチレン・酢酸ビニル共重合体(a)のJIS K6924−1により測定された酢酸ビニル含有量は1〜50重量%の範囲であることが好ましく、5〜40重量%の範囲であると積層体を成形する際に加工が容易になり、かつ加熱後の物性に優れるため、更に好ましい。
【0017】
本発明の積層体を構成するエチレン・酢酸ビニル共重合体(a)のJIS K6924−1(1997年)により測定されたMFRが0.1〜100g/10分の範囲であると積層体を成形する際に加工が容易になるため好ましく、より好ましくは3〜50g/10分の範囲である。
【0018】
本発明の積層体を構成するエチレン・酢酸ビニル共重合体(a)のJIS K6924−2(1997年)により測定された密度が930〜960kg/mの範囲であると、積層体の加工性に優れるため好ましい。
【0019】
このようなエチレン・酢酸ビニル共重合体(a)を得るための方法は特に限定するものではなく、従来公知の高圧法ラジカル重合法やイオン重合法などが例示できるが、加工性に優れることから、高圧法ラジカル重合法が好ましい。
【0020】
また、本発明を構成するエチレン・酢酸ビニル共重合体(a)には、高圧法低密度ポリエチレンやポリプロピレンなどの他のポリオレフィンを配合してもよく、これらの他のポリオレフィンの配合比は1〜50重量%の範囲が成形性の点から好ましい。
【0021】
さらに、本発明を構成するエチレン・酢酸ビニル共重合体(a)には、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等、ポリオレフィン樹脂に一般に用いられている添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもかまわない。
【0022】
本発明の(A)層の厚みは、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はなく、柔軟性に優れ、破損などの問題が小さいことから、1μm〜5mmの厚みであることが好ましく、経済性の観点から、5μm〜300μmの範囲が最も好適である。
【0023】
本発明の積層体を構成するオレフィン系重合体(b)は、低圧法エチレン単独重合体、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・α−オレフィン3元共重合体、α−オレフィン単独重合体から選ばれる少なくとも1種からなる。この中で、高圧法低密度ポリエチレンを用いると成形性に優れることから、特に好ましい。
【0024】
オレフィン系重合体(b)は、ラジカル重合法、イオン重合法などの公知の重合法により得ることができる。
【0025】
オレフィン系重合体(b)のJIS法に準拠した手法により測定されたMFRは、0.1〜100g/10分の範囲であると、成形性に優れるため好ましく、より好ましくは、3〜50g/10分の範囲である。また、オレフィン系重合体(b)のJIS法に準拠した手法により密度は、成形性に優れるため、880〜970kg/mの範囲であることが好ましく、より好ましくは880〜970kg/mの範囲である。
【0026】
本発明の積層体を構成する金属キレート化合物(c)とは、配位数が2以上である配位子を少なくとも1つ有し、キレート環を形成している有機金属化合物であり、一般式(1)に表される化合物を用いることができる。
【0027】
MR (1)
一般式(1)におけるMは金属であり、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はなく、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、ストロンチウム等のアルカリ土類金属、マグネシウム、アルミニウム、錫などのその他の典型金属、更にマンガン、亜鉛、チタン、コバルト、ジルコニウム、ハフニウム等の遷移金属などを例示することができるが、架橋効率に優れることからアルミニウム、チタン、ジルコニウムが好ましい。
【0028】
アルミニウム、チタン、ジルコニウムを除く金属Mは、一般式(2)に表されるエステルとアルコールのそれぞれの置換基が入れ替わる反応であるエステル交換反応を促進する物質であるエステル交換反応触媒として、アルミニウム、チタン、ジルコニウムと類似の触媒効果を示すことから、本発明においてもアルミニウム、チタン、ジルコニウムと類似の効果を示すと予測できる。
【0029】
RCOOR’ + R”OH → RCOOR” + R’OH (2)
一般式(1)におけるCはキレート剤であり、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はなく、カルボン酸型の配位子、β−ジケトン型の配位子、ケトエステル型の配位子、ヒドロキシカルボン酸型の配位子、該ヒドロキシルカルボン酸のエステル型の配位子、または該ヒドロキシルカルボン酸の塩型の配位子、ケトアルコール型の配位子、ジオール化合物型の配位子、ジアミン化合物、ジエステル化合物、アルコールアミン型の配位子、ジホスフィン化合物、ジエーテルなどに例示される二座配位子、ジエチレントリアミン、メチロールメラミン、イミノ二酢酸などの三座配位子、トリエチレンテトラミン、ニトリロ三酢酸などの四座配位子、エチレンジアミン四酢酸などの六座配位子などが例示できる。
【0030】
カルボン酸型の配位子としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸など、β−ジケトン型の配位子としては、アセチルアセトンなど、ケトエステル型の配位子としてはアセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルなど、ヒドロキシカルボン酸型の配位子としては、乳酸、乳酸エステル、乳酸アンモニウム塩など、ケトアルコール型の配位子としては、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなど、ジオール化合物型の配位子としては、プロピレングリコール、オクチレングリコールなど、ジアミン化合物としては、エチレンジアミン、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリンなど、ジエステル化合物としては、マロン酸ジメチル、フタル酸ジメチルなど、アルコールアミン型の配位子としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルモノエタノールアミンなど、ジホスフィン化合物としては、ビス(ジメチルホスフェノン)エタン、ビス(ジフェニルホスフェノ)エタンなど、ジエーテルとしては、グライムなどが例示される。
【0031】
このようなキレート剤は反応性、経済性、安定性に優れることから、β−ジケトン型の配位子、若しくはケトエステル型の配位子が好ましい。また、本発明の樹脂組成物が複数のキレート剤を有する時、同種のキレート剤を用いてもよく、若しくは異なるキレート剤を用いてもよい。
【0032】
一般式(1)におけるRはアルコキシ基を除く置換基であり、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はなく、酸素、ヒドロキシル基、アルキル基、クロロ基、シアノ基、アミノ基、チオシアナート基、ブロモ基、イミノ基、ニトロ基、ニトリル基、フェニル基、ホスファイト基、ホスフェート基、チオール基、スルホン酸基、硝酸基、フルオロ基、N−オキシド基、N−ヒドロキシ基、ニトロソ基、イソニトリル基、ビニル基、アリル基、ナフチル基、ベンジル基などが例示できる。
【0033】
一般式(1)におけるn及びmはそれぞれC及びRの置換数であり、本発明を構成する金属キレート化合物(B)では、nは1〜8であり、mは0〜16である。また、Mの配位数をN、Cの配位数の総和をN、Rの価数の総和をNとすると一般式(3)を満たすような組合せとなる。
【0034】
=N+N (3)
ここで、Nが2である金属Mとしては銅、銀、金など、Nが3である金属Mとしては銅など、Nが4である金属Mとしてはリチウム、鉄、コバルト、鉛、ニッケルなどとしては、Nが5である金属Mとしてはニッケルなど、Nが6である金属Mとしてはアルミニウム、チタン、鉄、コバルト、鉛など、Nが8である金属Mとしてはチタン、ジルコニウムなどが例示される。
【0035】
このような金属キレート化合物(B)は、金属がNが2である銅の場合、銅アセテート、銅プロピレート、銅オクチレート、銅ラクテート、銅メチルラクテート、銅ラクテートアンモニウム塩、銅アセチルアセテート、銅メチルアセチルアセトナート、銅エチルアセチルアセトナート、銅(4−ヒドロキシ−2−ペンタナート)、銅(オクチレングリコレート)、銅(エチレンジアミン)、銅(モノエタノールアミナート)、銅[ビス(ジメチルホスフェノン)エタン]などが例示できる。また、これらの例示したキレート化合物のMを銀原子、金原子などのNが2である金属に置換した化合物も例示することもできる。
【0036】
また、このような金属キレート化合物(B)は、金属がNが4であるニッケルの場合、ニッケルジアセテート、ニッケルジプロピレート、ニッケルジオクチレート、ニッケルオクチレートオキシド、ニッケルヒドロキシオクチレート、ニッケルジラクテート、ニッケルビス(メチルラクテート)、ニッケルビス(ラクテートアンモニウム塩)、ニッケルビス(アセチルアセテート)、ニッケルビス(メチルアセチルアセトナート)、ニッケルビス(エチルアセチルアセトナート)、ニッケルジヒドロキシモノ(メチルアセチルアセトナート)、ニッケルジクロライドモノ(メチルアセチルアセトナート)、ニッケル(メチルアセチルアセトナート)オキシド、ニッケルモノ(アセチルアセテート)モノ(エチルアセチルアセトナート)、ニッケルビス(4−ヒドロキシ−2−ペンタナート)、ニッケルビス(オクチレングリコレート)、ニッケルビス(エチレンジアミン)、ニッケルビス(モノエタノールアミナート)、ニッケルビス[ビス(ジメチルホスフェノン)エタン]などが例示できる。また、これらの例示したキレート化合物のMを鉄原子、コバルト原子などNが4である金属に置換した化合物も例示することもできる。
【0037】
また、このような金属キレート化合物(B)は、金属がNが6であるアルミニウムの場合、アルミニウムトリアセテート、アルミニウムトリプロピレート、アルミニウムトリオクチレート、アルミニウムオクチレートオキシド、アルミニウムジヒドロキシオクチレート、アルミニウムトリラクテート、アルミニウムトリス(メチルラクテート)、アルミニウムトリス(ラクテートアンモニウム塩)、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)、アルミニウムトリス(メチルアセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセチルアセトナート)、アルミニウムジヒドロキシビス(メチルアセチルアセトナート)、アルミニウムジクロライドビス(メチルアセチルアセトナート)、アルミニウムビス(メチルアセチルアセトナート)オキシド、アルミニウムモノ(アセチルアセテート)ビス(エチルアセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(4−ヒドロキシ−2−ペンタナート)、アルミニウムトリス(オクチレングリコレート)、アルミニウムトリス(エチレンジアミン)、アルミニウムトリス(モノエタノールアミナート)、アルミニウムトリス[ビス(ジメチルホスフェノン)エタン]などが例示できる。また、これらの例示したキレート化合物のMをチタン原子、鉄原子、コバルト原子などNが6である金属に置換した化合物も例示することもできる。
【0038】
また、このような金属キレート化合物(B)は、金属がNが8である金属ジルコニウムの場合、ジルコニウムテトラアセテート、ジルコニウムテトラプロピレート、ジルコニウムテトラオクチレート、ジルコニウムジオクチレートオキシド、ジルコニウムジヒドロキシジオクチレート、ジルコニウムテトララクテート、ジルコニウムテトラキス(メチルラクテート)、ジルコニウムテトラキス(ラクテートアンモニウム塩)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセテート)、ジルコニウムテトラキス(メチルアセチルアセトナート)、ジルコニウムテトラキス(エチルアセチルアセトナート)、ジルコニウムジヒドロキシトリス(メチルアセチルアセトナート)、ジルコニウムジクロライドトリス(メチルアセチルアセトナート)、ジルコニウムトリス(メチルアセチルアセトナート)オキシド、ジルコニウムモノ(アセチルアセテート)トリス(エチルアセチルアセトナート)、ジルコニウムテトラキス(4−ヒドロキシ−2−ペンタナート)、ジルコニウムテトラキス(オクチレングリコレート)、ジルコニウムテトラキス(エチレンジアミン)、ジルコニウムテトラキス(モノエタノールアミナート)、ジルコニウムテトラキス[ビス(ジメチルホスフェノン)エタン]などが例示できる。また、これらの例示したキレート化合物のMをチタン原子Nが8である金属に置換した化合物も例示することもできる。
【0039】
これらの金属キレート化合物は、マツモトファインケミカル株式会社、川研ファインケミカル株式会社、ホープ製薬株式会社、三菱ガス化学株式会社、新興化学工業株式会社、デュポン株式会社などより販売されている。
【0040】
これらの金属キレート化合物(c)は、1種単独又は2種以上の組合せで用いてもよい。
【0041】
本発明を構成する金属キレート化合物(c)のオレフィン系重合体に対する混合量は、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はなく、加熱後の物性及び経済性の観点から0.01〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量%、最も好ましくは0.5〜5重量%である。
【0042】
本発明を構成する(B)層には、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等、ポリオレフィン樹脂に一般に用いられている添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもかまわない。
本発明の(B)層の厚みは、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はなく、柔軟性に優れ、破損などの問題が小さいことから、1μm〜5mmの厚みであることが好ましく、経済性の観点から、5μm〜300μmの範囲が最も好適である。
【0043】
(B)層を構成するオレフィン系重合体(b)と金属キレート化合物(c)の混合方法は任意であり、溶融混合法、オレフィン系重合体(b)のペレットと金属キレート化合物(c)を常温で混合するドライブレンド法のいずれでもよい。ただし、品質の安定を求める場合には、溶融混合方法が好ましい。溶融混合は、例えば、バンバリーミキサーなどのインターナルミキサー、加圧ニーダー、ロール混練機などのバッチ式混合機、単軸/二軸押出機などの連続式混合機によって行われる。溶融混合法における混合温度は、使用する材料の溶融温度以上であれば特に限定を受けないが、熱劣化を抑制し、安定した品質の樹脂組成物を得るためにオレフィン系重合体(b)のJIS法に準拠した手法により測定された融点以上250℃以下で行うことが望ましい。
【0044】
本発明の積層体を得る手法としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体(a)のJIS K6924−2(1997年)により測定された融点及びオレフィン系重合体(b)のJIS法に準拠した手法により測定された融点のいずれか高い温度以上〜340℃で接着する手法が好ましく、より好ましくは140〜300℃であり、最も好ましくは140〜240℃である。。このような手法は、プレス成形法や押出成形法により成形されたエチレン・酢酸ビニル共重合体(a)からなる(A)層及びオレフィン系重合体(b)及び金属キレート化合物(c)からなる(B)層の成形体を熱圧着する熱プレス法や各層を構成する樹脂を続けてラミネート成形する押出ラミネート成形法、共押出インフレーション成形機や共押出Tダイ成形機などを使用した共押出成形法などが例示できる。
【0045】
本発明の積層体を得る際の(A)層及び(B)層の接着時間は、生産性の観点から0.01〜60分が好ましく、より好ましくは5〜30分である。ここで、(A)層及び(B)層の接着時間とは、例えばプレス成形法では熱圧着時間であり、共押出成形法では、(A)層及び(B)層の合流後から共押出フィルムが冷却されるまでの時間である。
【0046】
本発明の積層体は、機械物性、耐熱性、透明性、耐薬品性等が向上することから、成形加工後に更に加熱処理を行なうことが特に好ましい。ここで加熱処理とは、エチレン・酢酸ビニル共重合体(a)のJIS K6924−2(1997年)により測定された融点及びオレフィン系重合体(b)のJIS法に準拠した手法により測定された融点のいずれか高い温度以上での熱処理を指す。
【0047】
本発明の積層体への加熱温度については、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はないが、経済性の観点からエチレン・酢酸ビニル共重合体(a)のJIS K6924−2(1997年)により測定された融点及びオレフィン系重合体(b)のJIS法に準拠した手法により測定された融点のいずれか高い温度〜220℃が好ましく、より好ましくは140〜200℃である。
【0048】
本発明の積層体への加熱時間については、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はないが、生産性の観点から0.1〜60分が好ましく、より好ましくは5〜30分である。
【0049】
本発明の積層体への加熱方法としては、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はなく、オーブン、熱プレス法などを用いた加熱が例示できる。
【0050】
本発明の積層体は、少なくとも(A)層と、(A)層と隣接する層に(B)層が積層されてなることを特徴とするものであり、(A)層と(B)層の2成分のみからなるものだけでなく他の成分、例えば(C)層を含んでいてもよい。具体的には、(A)層/(B)層、(A)層/(B)層/(A)層、(B)層/(A)層/(B)層、(A)層/(B)層/(B)層、(A)層/(A)層/(B)層、(A)層/(B)層/(C)層、(B)層/(A)層/(C)層、(C)層/(B)層/(A)層/(B)層/(C)層、(A)層/(B)層/(C)層/(B)層/(A)層、(B)層/(A)層/(C)層/(A)層/(B)層などが例示される。
【0051】
(C)層としては、合成高分子重合体から形成される層や織布、不織布、金属箔、紙類、セロファン等が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アイオノマー等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、セルロース系樹脂など合成高分子重合体から形成される層等が挙げられる。更に、これらの高分子重合体フィルム及びシートはさらにアルミ蒸着、アルミナ蒸着、二酸化珪素蒸着、アクリル処理されたものでもよい。また、これらの高分子重合体フィルム及びシートはさらにウレタン系インキ等を用い印刷されたものでもよい。金属箔としては、アルミ箔、銅箔などが例示でき、また、紙類としてはクラフト紙、上質紙、伸張紙、グラシン紙、カップ原紙や印画紙原紙等の板紙などが挙げられる。
【0052】
本発明の積層体は、太陽電池や液晶等の電子材料封止材、スープ、味噌、漬物、ソース、飲料等の水物飲食品包装、薬、輸液バッグ等の医薬用製品、シャンプー、化粧品、おむつのバックシートなどのトイレタリー用品、離型紙及び離型テープ、易解離性フィルムなど広範囲にわたりフィルム、容器、テープ、支持体として用いることができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明の積層体は、加熱処理を行うだけで容易に製品外観、機械物性、耐熱性に優れる積層体を得ることができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
実施例におけるエチレン系重合体及び積層体の諸物性は、以下に示す方法により測定した。
(1)EVAの密度(dEVA
EVAは、JIS K6924−2(1997年)に準拠して測定した。
(2)EVAのメルトマスフローレート(MFREVA
MFREVAは、JIS K6924−1(1997年)に準拠して測定した。
(3)EVAの酢酸ビニル含有量
EVAの酢酸ビニル含有量は、JIS−K6924−1(1997年)に準拠して測定した。
(4)低密度ポリエチレン(以下LDPEと略記する)の密度(dLDPE
LDPEは、JIS K6922−1に準拠して測定した。
(5)LDPEのメルトマスフローレート(MFRLDPE
MFRLDPEは、JIS K6922−1に準拠して測定した。
(6)引張試験
実施例により得られた積層体の引張破断応力を引張試験機(ORENTEC製 テンシロンRTE−1210)にて測定した。引張速度は300mm/分、チャック間距離は50mm、試験片の長さ及び巾はそれぞれ70mm及び15mmとした。
【0056】
実施例1
エチレン・酢酸ビニル共重合体(a)として、MFREVAが20g/10分、dEVAが940kg/m、酢酸ビニル含有量が20重量%であるエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製 商品名ウルトラセン 633)(a1)を、オレフィン系重合体(b)として、MFRLDPEが8g/10分、密度が918kg/mである低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン 213)(b1)を、金属キレート化合物(c)としてジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)(マツモトファインケミカル製 商品名オルガチックス ZC−150)(c1)を用いた。
【0057】
まず、(a1)を直径25mmφのスクリューを有する単軸押出ラミネーター((株)プラコー製)へ供給し、220℃の温度でTダイより押し出し、25μmであるPET基材上に4m/分の引き取り速度、60mmのエアギャップ長さで、(a1)の厚みが100μmとなるように押出ラミネート成形を行い、その後PET基材を剥すことにより(A)層を得た。次に、(b1)96重量%、(c1)4重量%となるように溶融混練した混合樹脂を直径25mmφのスクリューを有する単軸押出ラミネーター((株)プラコー製)へ供給し、220℃の温度でTダイより押し出し、25μmであるPET基材上に4m/分の引き取り速度、60mmのエアギャップ長さで、(b1)及び(c1)から成る混合樹脂の厚みが25μmとなるように押出ラミネート成形を行い、その後PET基材を剥すことにより(B)層を得た。そして、(A)層及び(B)層を180℃で10分間熱圧着し2層の貼合及び加熱処理を同時に行なうことにより、加熱処理後の積層体を得た。この積層体の引張破断応力を評価した。引張試験評価の結果を表1に示す。
【0058】
実施例2
金属キレート化合物(c)として、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)(マツモトファインケミカル製 商品名オルガチックス TC−401)(c2)を使用した以外は実施例1と同様にして、成形を行い、積層体の引張破断応力を評価した。引張試験評価の結果を表1に示す。
【0059】
実施例3
金属キレート化合物(c)として、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)(川研ファインケミカル製 商品名アルミキレートA)(c3)を使用した以外は実施例1と同様にして、成形を行い、積層体の引張破断応力を評価した。引張試験評価の結果を表1に示す。
【0060】
実施例4
金属キレート化合物(c)として、アルミニウムモノ(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)(川研ファインケミカル株式会社製 商品名アルミキレートD)(c4)を使用した以外は実施例1と同様にして、成形を行い、積層体の引張破断応力を評価した。引張試験評価の結果を表1に示す。
【0061】
実施例5
金属キレート化合物(c)として、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)(川研ファインケミカル株式会社製 商品名ALCH−TR)(c5)を使用した以外は実施例1と同様にして、成形を行い、積層体の引張破断応力を評価した。引張試験評価の結果を表1に示す。
【0062】
実施例6
(B)層を形成する樹脂として、(b1)99重量%、(c5)1重量%となるように溶融混練した混合樹脂を使用した以外は実施例5と同様にして、成形を行い、積層体の引張破断応力を評価した。引張試験評価の結果を表1に示す。
【0063】
実施例7
エチレン・酢酸ビニル共重合体(a)として、MFREVAが2.5g/10分、dEVAが925kg/m、酢酸ビニル含有量が6重量%であるエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製 商品名ウルトラセン 515)(a2)を使用した以外は実施例5と同様にして、成形を行い、積層体の引張破断応力を評価した。引張試験評価の結果を表1に示す。
【0064】
実施例8
エチレン・酢酸ビニル共重合体(a)としてMFRLDPEが14g/10分、dEVAが935kg/m、酢酸ビニル含有量が15重量%であるエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製 商品名ウルトラセン 625)(a3)を使用した以外は実施例5と同様にして、成形を行い、積層体の引張破断応力を評価した。引張試験評価の結果を表1に示す。
【0065】
実施例9
エチレン・酢酸ビニル共重合体(a)としてMFRLDPEが5.7g/10分、dEVAが952kg/m、酢酸ビニル含有量が28重量%であるエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製 商品名ウルトラセン 751)(a4)を使用した以外は実施例5と同様にして、成形を行い、積層体の引張破断応力を評価した。引張試験評価の結果を表1に示す。
【0066】
実施例10
金属キレート化合物(c)として、アルミニウムトリオクチレート(ホープ製薬(株)製 商品名8%オクトープ アルミ)(c6)を使用した以外は実施例9と同様にして、加熱処理を行い、架橋せしめた樹脂組成物の架橋効率及び耐熱性を評価した。評価の結果を表1に示す。
【0067】
実施例11
金属キレート化合物(c)として、チタンジヒドロキシジラクテート(マツモトファインケミカル製 商品名TC−310)(c7)を使用した以外は実施例9と同様にして、加熱処理を行い、架橋せしめた樹脂組成物の架橋効率及び耐熱性を評価した。評価の結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

比較例1
金属キレート化合物(c)を混合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、成形を行い、積層体の引張破断応力を評価した。引張試験評価の結果を表2に示す。実施例1〜9と比較し、引張破断応力が劣っていた。
【0069】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも(A)層と(A)層に隣接する(B)層の2層からなる積層体であって、(A)層がエチレン・酢酸ビニル共重合体(a)、(B)層が下記(i)に示す重合体から選ばれる少なくとも1種から成るオレフィン系重合体(b)及び金属キレート化合物(c)からなる組成物から構成されることを特徴とする積層体。
(i)低圧法エチレン単独重合体、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・α−オレフィン3元共重合体、α−オレフィン単独重合体
【請求項2】
金属キレート化合物(c)が、下記一般式(1)に表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
MR (1)
(式中、Mは金属、Cはキレート剤、Rはアルコキシ基を除く置換基を表す。n及びmはそれぞれC及びRの置換数であり、nは1〜8であり、mは0〜16である。また、Mの配位数をN、Cの配位数の総和をN、Rの価数の総和をNとすると、N=N+Nを満たすような組合せとなる。)
【請求項3】
金属キレート化合物(c)に含まれる金属Mがジルコニウム、チタン又はアルミニウムであることを特徴とする請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
金属キレート化合物(c)に含まれるキレート剤Cがβ−ジケトン型の配位子又はケトエステル型の配位子であることを特徴とする請求項2又は3に記載の積層体。
【請求項5】
エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)のJIS K6924−2(1997年)により測定された融点及びポリオレフィン(B)のJIS法に準拠した手法により測定された融点のいずれか高い温度以上で接着せしめたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。

【公開番号】特開2011−161801(P2011−161801A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27418(P2010−27418)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】