説明

積層包装材料

【課題】本発明の解決しようとする課題は、簡単な構造であり、製袋時には必要十分なスリップ性を有し、しかもスリップ剤が裏移りしにくいために、包装体表面の過度のすべり性を抑えることができる積層包装材料を提案しようとするものである。
【解決手段】基材と、シーラント層を少なくとも有する積層包装材料において、前記基材の表面には、表面に凹凸を有する透明ニス層が設けられており、前記シーラント層にはスリップ剤が添加されていることを特徴とする積層包装材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層包装材料に関し、特にこれを用いた包装体の表面のすべり性を抑えることができる積層包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
積層包装材料を用いて製袋したパウチ類は、食品、トイレタリー用品、医薬品などさまざまな内容物を収納する容器として広く用いられている。
【0003】
これらの用途に用いられる積層包装材料の構成としては、包装袋の形状や大きさ、内容物の種類等に応じて、それぞれに適した構成の積層材料が用いられるが、一般的な層構成としては、基材層/シーラント層の組合わせや、基材層/中間層/シーラント層の組合わせ、あるいは基材層/ガスバリア層/シーラント層、基材層/中間層/ガスバリア層/シーラント層、等の層構成が一般的である。
【0004】
シーラント層は、包装袋の最内層となる層であり、製袋機において積層材料のシーラント層同士をヒートシールによって熱融着することにより包装袋が製造される。
【0005】
シーラント層としては、ポリオレフィン系の材料が用いられることが多いが、製袋機における製袋適性の観点から、シーラント層面には、ある程度のすべり性が要求される。このためにシーラント層には、スリップ剤を添加することが一般的に行われている。
【0006】
シーラント層に添加されたスリップ剤は、シーラント層の表面すなわち積層包装材料の裏面に滲出してすべり効果を発揮するが、巻取られた積層包装材料において、この裏面に滲出したスリップ剤が、積層包装材料の表面に移行するいわゆる裏移り現象が発生することがあった。スリップ剤の裏移りが発生すると、内容物を充填した包装体の段階において、包装体の表面が不必要に滑りやすくなり、コンベアーによる搬送に支障が出るなどの不具合が発生することがあった。
【0007】
スリップ剤の裏移りを防止する手段として、積層包装材料の巻取時に、パウダーを散布する方法があるが、散布したパウダーが包装袋の内側に混入することがあるため、内容物によっては、パウダーを使用することができないものもあった。
【0008】
特許文献1に記載されたポリエチレン系無延伸フィルム、ラミネートフィルム及び袋は、上記の粉ふりによる問題を解決し、スリップ性、耐ブロッキング性、開口性を改善したシーラントフィルムに関するものであり、アンチブロッキング剤やスリップ剤を含有する内層と、これらを含有しない外層との間に、密度勾配を設けたシーラントフィルムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8-300581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載されたポリエチレン系無延伸フィルムは、スリップ性、耐ブロッキング性、開口性等の相反する性質を両立するために、フィルムの厚さ方向に密度勾配を設けるという複雑な方法を採用したものであり、このため当然のことながら、高価なフィルム
とならざるを得ない。
【0011】
本発明の解決しようとする課題は、簡単な構造であり、製袋時には必要十分なスリップ性を有し、しかもスリップ剤が裏移りしにくいために、包装体表面の過度のすべり性を抑えることができる積層包装材料を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、基材と、シーラント層を少なくとも有する積層包装材料において、前記基材の表面には、表面に凹凸を有する透明ニス層が設けられており、前記シーラント層にはスリップ剤が添加されていることを特徴とする積層包装材料である。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、前記基材と前記シーラント層の間に、ガスバリア層を有することを特徴とする請求項1に記載の積層包装材料である。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、前記表面に凹凸を有する透明ニス層が、透明ワニスに微粒子を添加した塗工剤を塗布したものであることを特徴とする請求項1または2に記載の積層包装材料である。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、前記表面に凹凸を有する透明ニス層が、透明ワニスをパターン状に印刷形成したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層包装材料である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る積層包装材料は、基材の表面に、表面に凹凸を有する透明ニス層を設けたので、巻取にした際に、シーラント層に添加されたスリップ剤が基材の表面に転移しにくく、従って最終製品である包装体の表面の過度のすべり性を抑制する効果がある。
【0017】
また、基材の表面に、表面に凹凸を有する透明ニス層を設けたので、独特の意匠感と質感を有する包装袋が得られる。
【0018】
また基材とシーラント層の間にガスバリア層を有する場合においては、包装袋のガスバリア性が向上し、内容物の保存性、保香性等を高める効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明に係る積層包装材料の基本的な実施態様を示した断面説明図である。
【図2】図2は、本発明に係る積層包装材料の他の実施態様を示した断面説明図である。
【図3】図3は、本発明に係る積層包装材料の他の実施態様を示した断面説明図である。
【図4】図4は、巻取状態における従来の積層包装材料の断面説明図である。
【図5】図5は、巻取状態から取り出した従来の積層包装材料の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図面を参照しながら、本発明に係る積層包装材料について説明する。
図1は、本発明に係る積層包装材料の基本的な実施態様を示した断面説明図である。
本発明に係る積層包装材料(1)は、基材(2)と、シーラント層(4)を少なくとも有
する積層包装材料であり、基材(2)の表面には、表面に凹凸を有する透明ニス層(以下凹凸ニス層(5)と略す)が設けられており、シーラント層(4)にはスリップ剤(6)が添加されていることを特徴とする。
【0021】
シーラント層(4)に添加されたスリップ剤(6)の一部は、シーラント層(4)の表面に滲出してシーラント層表面すなわち積層包装材料(1)の裏面にすべり効果を与える。6aは、滲出したスリップ剤を模式的に示したものである。
【0022】
図4は、巻取状態における従来の積層包装材料の断面説明図である。また図5は、巻取状態から取り出した従来の積層包装材料の断面説明図である。巻取状態においては、積層包装材料(1)が同じ向きに多数重ねられるため、シーラント層(4)の表面すなわち積層包装材料(1)の裏面に滲出したスリップ剤(6a)は、重なり合う積層包装材料(1)の表面側に転移して、転移したスリップ剤(6b)となる。
【0023】
転移したスリップ剤(6b)は、最終製品である包装体の表面に、必要以上のすべり性を与える結果、包装体がベルトコンベアー上で滑ってうまく搬送できない等の不具合を生じる原因となっていた。
【0024】
図1に示したように、本発明に係る積層包装材料(1)においては、基材(2)の表面に、凹凸ニス層(5)が設けられているため、滲出したスリップ剤(6a)の表面側への転移が少なくなり、最終製品である包装体の表面に、必要以上のすべり性を与えることを抑制する効果がある。
【0025】
基材(2)の表面に、凹凸ニス層(5)を設けると、なぜスリップ剤(6)の転移量が減少するかという作用機序は、必ずしも明確ではないが、パウダーの散布と同様に、接触面積が減少することに起因するものと考えられる。
【0026】
凹凸ニス層(5)の材質としては、特に制約されるものではないが、基材(2)の材質に応じて、基材(2)に対して接着性を有するものであることは、必須の条件である。
【0027】
凹凸ニス層(5)の組成としては、基材(2)に対して接着性を有する透明ワニスに、無機系または有機系の微粒子を添加した樹脂組成物を用いることができる。さまざまな基材に対して広く接着性を有する透明ワニスとして、アクリルウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂等のウレタン樹脂系の透明ワニスは、好適に使用できる。
【0028】
透明ワニスに添加する無機系の微粒子としては、シリカ、沈降性炭酸バリウム、沈降性炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ゼオライト、クレー、珪藻土、タルク、石膏等、一般的に塗料や印刷インクの体質顔料として用いられる無機顔料を用いることができる。
【0029】
また透明ワニスに添加することができる有機系の微粒子としては、各種ポリマービーズを挙げることができる。
【0030】
凹凸ニス層(5)に用いられる微粒子の粒径としては、1〜20μm程度が好ましく、5〜15μmがより好ましい。あまり細かいと、隠蔽性が増す結果、凹凸ニス層(5)の透明性を損うので、好ましくない。粗すぎると、表面の手触り感が悪くなる。添加量としては、透明ワニスの固形分100重量部に対して、1〜200重量部が適当である。
【0031】
図2は、本発明に係る積層包装材料の他の実施態様を示した断面説明図である。
図2に示した実施態様においては、凹凸ニス層(5)が、透明ワニスをパターン状に印刷
形成したものであることを特徴とする。パターンの種類は特に制約されない。ドット状、斜線状、格子状、砂目状等任意である。透明ワニスをパターン状に印刷することにより、表面に凹凸が賦与されるため、接触面積を減らし、スリップ剤の移行を少なくする効果がある。なおこの場合の凹凸ニス層(5)にも、微粒子を添加してもかまわない。微粒子を添加することにより、スリップ剤の移行を防止する効果は、さらに高まる。
【0032】
本発明に係る積層包装材料(1)に用いる基材(2)としては、各種の合成樹脂フィルムや、紙が使用できる。合成樹脂フィルムの材質としては、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリオレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂等のポリエステル系樹脂、セロハン、三酢酸セルロース(TAC)樹脂等のセルロース系樹脂、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂(EVA)、アイオノマー樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアミド系樹脂(ナイロン)、ポリスチレン(PS)系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂等の合成樹脂フィルムが挙げられる。
【0033】
上記の中で、基材(2)として、最も一般的に用いられるフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(PET)、延伸ポリプロピレン樹脂フィルム(OPP)、延伸ナイロンフィルム(ONy)など、各社から上市されている包装材料用延伸フィルムが使用可能である。各種フィルムの厚さに関しては特に制限はないが、PETフィルムであれば30μm以下、OPPフィルムであれば20〜40μm程度、ONyフィルムであれば10〜30μm程度が適当である。基材(2)の表面または裏面には、内容物に関する絵柄や情報などを表す印刷を施すことができる。
【0034】
本発明に係る積層包装材料(1)に用いるシーラント層(4)としては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・αオレフィン共重合体、エチレン−メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等が使用される。
【0035】
シーラント層(4)に配合されるスリップ剤(6)としては、公知のものを使用することができる。例を挙げれば、流動パラフィン、ポリエチレンワックス等の炭化水素系スリップ剤や、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の金属セッケン系スリップ剤、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等のアミド系スリップ剤、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド等の低ブリード性スリップ剤等が挙げられる。
【0036】
図3は、本発明に係る積層包装材料の他の実施態様を示した断面説明図である。
図3に示した実施態様においては、基材(2)とシーラント層(4)の間に、ガスバリア層(3)を有することを特徴とする。ガスバリア層(3)が存在することにより、積層包装材料全体としてのガスバリア性が高まるので、包装体の保存性や保香性が高まる。図3に示した実施態様においては、ガスバリア層(3)として蒸着層(7)を有するフィルムが用いられている。
【0037】
ガスバリア層(3)としては、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフ
ィルム、エチレンビニルアルコール共重合体フィルム、ガスバリア性ナイロンフィルム、ガスバリア性ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のガスバリア性フィルムや、PETフィルム等にアルミニウム等の金属を蒸着した金属蒸着フィルムや、PETフィルムに酸化アルミニウムや酸化珪素等の無機酸化物を蒸着させた無機酸化物蒸着フィルム、あるいは、ポリ塩化ビニリデンコーティング、水溶性樹脂と無機層状化合物を含有する被膜や金属アルコキシドあるいはその加水分解物とイソシアネート化合物を反応させた被膜からなる樹脂層などのガスバリアコーティング層、あるいはアルミニウム箔等の金属箔を用いることができる。
以下実施例に基づき、本発明に係る積層包装材料について具体的に説明する。
【実施例】
【0038】
基材として、厚さ15μmの延伸ナイロンフィルムを用いた。ガスバリア層として厚さ12μmのアルミニウム蒸着PETフィルムを用いた。シーラント層としては、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)に、スリップ剤として比較的ブリードしやすいスリップ剤であるエルカ酸アミドを樹脂100重量部に対して0.05重量部添加したフィルムを使用し、厚さを120μmとした。凹凸ニス層としては、2液硬化型アクリルウレタン樹脂に、平均粒径5μmのシリカを樹脂固形分100重量部に対して5重量部添加したものを使用した。
【0039】
基材である延伸ナイロンフィルムの裏面にグラビア印刷法により絵柄を印刷し、同時に基材の表面に凹凸ニス層を乾燥重量で5g/mの塗布量となるように全面に設けた。基材フィルムの印刷面と蒸着PETの蒸着面を2液硬化型ウレタン系接着剤を用いたドライラミネート法により貼り合せ、次いでPET面とシーラント層であるLLDPEフィルムを同様にドライラミネート法により貼り合せ、巻取った後、50℃2日間の温間養生を行い、積層包装材料とした。
【0040】
得られた積層包装材料を用いて、容量400mlのスタンディングパウチを作成し、液体シャンプーを充填して試験用包装体とした。
【0041】
<比較例>
凹凸ニス層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、試験用包装体を作成し、比較例とした。
【0042】
実施例と比較例の包装体について比較したところ、実施例の包装体では、傾斜したベルトコンベアーにおける搬送適性において、何ら問題が生じなかったが、比較例の包装体においては、滑ってうまく搬送できないものがあった。
【0043】
実施例と比較例の積層包装材料について、表裏面のすべり性を測定した。
すべり性の測定は、JIS P8147に準拠した紙及び板紙の静摩擦係数の測定方法(傾斜法)に従い、tanθを測定した。
その結果、裏面(シーラント層面)のすべり性は、いずれも0.5以下であり、製袋適性上問題のない数字であった。表面のすべり性は、実施例では0.30であるのに対して、比較例では、0.17であり、この差が搬送適性の差となって現れたものと考えられる。
【符号の説明】
【0044】
1・・・積層包装材料
2・・・基材
3・・・ガスバリア層
4・・・シーラント層
5・・・凹凸ニス層
6・・・スリップ剤
6a・・・滲出したスリップ剤
6b・・・転移したスリップ剤
7・・・蒸着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、シーラント層を少なくとも有する積層包装材料において、前記基材の表面には、表面に凹凸を有する透明ニス層が設けられており、前記シーラント層にはスリップ剤が添加されていることを特徴とする積層包装材料。
【請求項2】
前記基材と前記シーラント層の間に、ガスバリア層を有することを特徴とする請求項1に記載の積層包装材料。
【請求項3】
前記表面に凹凸を有する透明ニス層は、透明ワニスに微粒子を添加した塗工剤を塗布したものであることを特徴とする請求項1または2に記載の積層包装材料。
【請求項4】
前記表面に凹凸を有する透明ニス層は、透明ワニスをパターン状に印刷形成したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層包装材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−250520(P2012−250520A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127145(P2011−127145)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】