説明

積層回路基板の製造方法、積層回路基板、および電子機器

【課題】ビアの接続不良を抑制可能な積層回路基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】積層回路基板の製造方法は、第1基板と第2基板とが積層された積層回路基板の製造方法であって、第1基板上に、一の面の開口面積が他の面の開口面積よりも大きい複数の異形ビアホールを有する接着樹脂シートを、一の面を第1基板に向けて配置する第1の配置工程と、ビアホールに導電性ペーストを充填する充填工程と、導電性ペーストが充填された後、接着樹脂シートの他の面上に第2基板を配置する第2の配置工程と、加熱下で第1基板と第2基板の積層方向に加圧する熱プレス処理を行う熱プレス工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層回路基板の製造方法、積層回路基板、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
積層回路基板には、積層された複数の基板が含まれている。通常、これらの基板にはそれぞれ配線層に接続された導体パッドが設けられている。これらの基板を積層する方法として、基板間に介在させる絶縁層にビアを形成し、ビアを介して基板の導体パッド同士を電気的に接続する方法が知られている。具体的には、例えばレーザやドリル等によって、プリプレグ等の接着樹脂シートに対して、その厚さ方向に貫通する複数のビアホールを形成する。そして、これら複数のビアホールに導電性ペーストを充填し、導電性ペーストが充填された接着樹脂シートを基板(第1基板及び第2基板)の間に配置する。その後、加熱下で積層方向に加圧する処理(以下、「熱プレス処理」という。)を行う。これにより、第1基板および第2基板の各々に形成された導体パッドがビアを介して電気的に接続されるとともに、第1基板と第2基板とが互いに積層される。
【0003】
図21は、従来の積層回路基板を示した図である。図21に示すように、従来の積層回路基板は、ビアホールに導電性ペースト2を充填した接着樹脂シート3が使用されている。この接着樹脂シート3が一組の基板4の間に配置されている。図21は、熱プレス処理を行う前の状態を表している。各基板4の貼り合わせ面5に形成される導体パッド6は、その厚みの分だけ貼り合わせ面5から突出する。そのため、基板4の平面方向(面内方向)において互いに隣接する導体パッド6間には導体間隙部7が形成される。
【0004】
導体間隙部7は、熱プレス処理を行う際に、軟化した接着樹脂シート3の樹脂が移動可能な空間として機能する。熱プレス処理において接着樹脂シート3に含まれる樹脂が軟化して導体間隙部7に流れ込むことで、接着樹脂シート3が潰れ易くなる。その結果、導電性ペースト2に含まれる金属粒子が加圧され易くなり、金属粒子の凝集状態が良好となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−176846号公報
【特許文献2】特開昭62−243395号公報
【特許文献3】特開2005−310871号公報
【特許文献4】特開2007−335701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、積層回路基板において、単位面積当たりにおける導体部分の占有面積(以下、「導体面積率」という。)は、基板平面内において均一になるとは限らない。なお、上記導体部分には、導体パッドの他、配線パターン等を含む。図21の例では、B領域は、A領域に比べて、導体パッド6間のピッチが同一であるが、導体パッド6のサイズが大きい。C領域は、A領域に比べて、導体パッド6のサイズが同一であるが、導体パッド6間のピッチが狭い。その結果、B領域およびC領域はA領域に比べて、導体面積率が高くなる。
【0007】
基板の平面方向において、導体面積率が高い領域では、導体面積率の低い領域に比べて相対的に軟化した樹脂が移動可能な導体間隙部7の容積が少ない。そのため、熱プレス処
理時に接着樹脂シート3を充分に潰すことが困難となる。一方、導体面積率が低い領域では、軟化した樹脂が移動可能な導体間隙部7の容積が大きくなり、熱プレス処理時に接着樹脂シート3を潰し易くなる。このように、基板平面方向において、潰し易い領域と潰し難い領域とが混在することになる。その結果、熱プレス時に、導体面積率が低い領域では、導電性ペースト2に含まれる金属粒子が凝集不足となり、ビアのオープン不良を招く虞がある。
【0008】
本件は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ビアの接続不良を抑制可能な積層回路基板およびその製造方法に関する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本件の一観点による積層回路基板の製造方法は、第1基板と第2基板とが積層された積層回路基板の製造方法であって、前記第1基板上に、一の面の開口面積が他の面の開口面積よりも大きい複数の異形ビアホールを有する接着樹脂シートを、前記一の面を前記第1基板上に向けて配置する第1の配置工程と、前記ビアホールに導電性ペーストを充填する充填工程と、導電性ペーストが充填された後、前記接着樹脂シートの前記他の面上に前記第2基板を配置する第2の配置工程と、加熱下で、前記第1基板と前記第2基板の積層方向に加圧する熱プレス処理を行う熱プレス工程とを有する。
【0010】
また、本件の一観点による積層回路基板は、基材を含んだ状態で絶縁樹脂が硬化している絶縁層と、前記絶縁層を介して互いに貼り合わせ面同士が接着された第1基板および第2基板と、前記絶縁層内に配置され、前記第1基板の貼り合わせ面に形成された第1の導体パッドと、前記第2基板の貼り合わせ面に形成された第2の導体パッドとの間を電気的に接続するビアとを備え、導体面積率が所定の基準比率以上となる第一領域の前記絶縁層の一部に、前記絶縁樹脂のみが硬化した部位が形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本件によれば、ビアの接続不良を抑制可能な積層回路基板およびその製造方法に関する技術を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態1に係る積層回路基板の部分断面図である。
【図2】実施形態1に係る導体パッドの配置パターン例を模式的に示す図である。
【図3】実施形態1に係る積層回路基板の製造方法において、第1基板の上に接着樹脂シートを配置した状態を示す図である。
【図4】実施形態1に係る積層回路基板の製造方法において、ビアホールに導電性ペーストを充填した状態を示す図である。
【図5】実施形態1に係る積層回路基板の製造方法において、接着樹脂シートの上に第2基板を配置した状態を示す図である。
【図6】実施形態1に係る積層回路基板の製造方法において、熱プレス処理を行った状態を示す図である。
【図7】実施形態1に係る積層回路基板において、導体面積率Rcpの算出手法を説明する説明図である。
【図8】実施形態1に係る積層回路基板において、ビアの周辺構造を模式的に示す図である。
【図9A】実施形態2に係る接着樹脂シートを説明するための説明図であり、接着樹脂シートのビアホールに導電性ペーストを充填する前の状態を示す図である。
【図9B】実施形態2に係る接着樹脂シートの変形例を説明するための説明図であり、接着樹脂シートのビアホールに導電性ペーストを充填した後の状態を示す図である。
【図10A】実施形態2に係る接着樹脂シートの変形例を説明するための説明図であり、接着樹脂シートのビアホールに導電性ペーストを充填する前の状態を示す図である。
【図10B】実施形態2に係る接着樹脂シートを説明するための説明図であり、接着樹脂シートのビアホールに導電性ペーストを充填した後の状態を示す図である。
【図11】実施形態3に係る接着樹脂シートの上面の一部を示す図である。
【図12】実施形態3に係る積層回路基板の製造方法において接着樹脂シートの上に第2基板を配置した状態を示す図である。
【図13】実施形態3に係る積層回路基板においてビアの周辺構造を模式的に示す図である。
【図14】実施形態4に係る積層回路基板の製造方法において、第1基板の上に接着樹脂シートを配置した状態を示す図である。
【図15】実施形態4に係る積層回路基板の製造方法において、接着樹脂シートの上にマスク部材を配置した状態を示す図である。
【図16】実施形態4に係る積層回路基板の製造方法において、ビアホールに導電性ペーストを充填する状態を示す図である。
【図17】実施形態4に係る積層回路基板の製造方法において、マスク部材を取り外した状態を示す図である。
【図18】実施形態4に係る積層回路基板の製造方法において、接着樹脂シートの上に第2基板を配置した状態を示す図である。
【図19】実施形態4に係る積層回路基板の製造方法において、熱プレス処理の状態を示す図である。
【図20】実施形態に係る積層回路基板を内蔵した電子機器を示す図である。
【図21】従来の積層回路基板の積層工程において、ビアホールに導電性ペーストを充填した接着樹脂シートを一組の基板の間に配置した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)に係る積層配線基板およびその製造方法について説明する。
【0014】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係る積層回路基板1の部分断面図である。積層回路基板1は、第1基板11、第2基板12、およびこれら各基板11,12の間に介在する絶縁層13を備える。第1基板11および第2基板12の各々は、表面に配線パターン102を形成した絶縁基板を複数積層した多層基板である。第1基板11および第2基板12に係る絶縁基板は、例えばガラス繊維クロスなどといった基材にエポキシ樹脂などの絶縁樹脂を含浸させた半硬化状(Bステージ)のプリプレグを、熱プレス等によって硬化させたものである。プリプレグに用いる基材と絶縁樹脂の組み合わせは上記例に限られず、種々のものを用いることができる。
【0015】
配線パターン102は、例えば銅といった導体により形成されており、各々所望の形状を有している。また、第1基板11および第2基板12の表面には、導体パッド103(「ランド」と称呼される場合もある。)が形成されている。導体パッド103は、配線パターン102と同様に、例えば銅といった導体により形成される。
【0016】
第1基板11および第2基板12の各々における配線パターン102は、その導体パッド103、スルーホールビア104を介して相互に電気的に接続される。スルーホールビア104は、絶縁基板101を貫通するスルーホールの内壁に、例えば銅めっきを施すことで配線パターン102同士を立体接続しているが、これに限られない。例えば、銅めっきに代えて、もしくは銅めっきに加えて、銀粉末や銅粉末を含有する導電性ペーストをスルーホールに充填することによってスルーホールビア104を形成してもよい。
【0017】
図1の例では、第1基板11の上に第2基板12が絶縁層13を挟んで積層されている。以下、第1基板11および第2基板12の各表面のうち、絶縁層13に近い方の表面を貼り合わせ面111,121と称する。第1基板11の貼り合わせ面111と第2基板12の貼り合わせ面121は、絶縁層13を介して互いに接着される。一方、第1基板11および第2基板12の各表面のうち、絶縁層13から離れた方の表面には、配線パターン102を被覆するようにオーバーコート層としてソルダーレジスト105が形成されている。ソルダーレジスト105は、例えば、エポキシ系、アクリル系、ポリイミド系等の絶縁性の樹脂又はこれらの混合樹脂等である。ソルダーレジスト105は、感光性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよい。
【0018】
次に、第1基板11および第2基板12の間に介在する絶縁層13について説明する。絶縁層13は、ガラス繊維クロス等といった基材にエポキシ樹脂等の熱硬化性の絶縁樹脂を含浸させた半硬化状(Bステージ)の接着樹脂シートを熱プレスにて硬化させることにより形成される。絶縁層13の所定位置にはビア14が形成されている。ビア14は、第1基板11の貼り合わせ面111に形成された導体パッド103(第1の導体パッド)と、第2基板12の貼り合わせ面121に形成された導体パッド103(第2の導体パッド)との間を電気的に接続する。ビア14の形成にあたっては、後述するように、接着樹脂シートを厚さ方向に貫通する貫通孔であるビアホールを形成し、このビアホールに充填した導電性ペーストを硬化(固化)させる。
【0019】
図1から判るように、積層回路基板1の基板平面方向(面広がり方向)において、第1基板11および第2基板12の各貼り合わせ面111,121に形成される導体パターン(導体部分)は均一となっていない。ここで、積層回路基板1の基板平面方向とは、積層回路基板1の積層方向と直交する方向を指す。本明細書において、上記導体パターンには、貼り合わせ面111,121に形成される導体パッド103および配線パターン102が含まれる。
【0020】
貼り合わせ面111,121に係る平面領域のうち、当該貼り合わせ面111,121の単位面積当たりにおける導体パターンの占有面積である導体面積率Rcpが所定の基準比率Rcpb以上となる領域を導体高密度領域Hcpと定義する。また、貼り合わせ面111,121に係る平面領域のうち、導体面積率Rcpが基準比率Rcpbより低い領域を導体低密度領域Lcpと定義する。導体面積率Rcpは、貼り合わせ面111,121の全体、もしくは所定領域を導体パターンが占有する面積比率と言い換えることができる。
【0021】
図2は、積層回路基板1の基板平面方向における導体パッド103の配置パターン例を模式的に示す図である。図2に示すように、破線で囲まれた領域A〜Cを比較すると、B領域は、A領域に比べて導体パッド103のピッチが同一で且つ導体パッド103一つ当たりの面積(以下、「パッドサイズ」という。)が大きい。また、C領域は、A領域に比べて導体パッド103のパッドサイズが同一で且つ導体パッド103のピッチが狭い。その結果、B領域およびC領域は、A領域に比べて、導体面積率Rcpが高くなっている。積層回路基板1の基板平面方向において、貼り合わせ面111,121の導体面積率Rcpが高い領域と低い領域が混在すると、第1基板11および第2基板12を積層する際に、ビア14に電気的な接続不良が発生し易くなる。これは、導体高密度領域Hcpでは、熱プレス時に接着樹脂シートが潰れ難く、導電性ペーストに係る金属粒子の結合不足によるビア14のオープン不良が生じ易い。一方、オープン不良を回避すべく導電性ペーストの充填量を増やすと導体低密度領域Lcpでのビア14にショート不良が生じ易くなるからである。尚、図2に示す導体パッド103の配置パターンは導体面積率Rcpを説明するために例示として示したものであり、配置パターンの形状は図2の構成に限定されない。
【0022】
次に、図面を参照して、実施形態1に係る積層回路基板1の積層工程について詳しく説明する。積層回路基板1の積層工程では、第1基板11および第2基板12を接着して積層する。図3〜図6は、積層回路基板1の積層工程を説明するための説明図である。図3は、第1基板11の上に接着樹脂シート20を配置した状態を示す図である。図4は、ビアホールに導電性ペーストPを充填した状態を示す図である。図5は、接着樹脂シート20の上に第2基板12を配置した状態を示す図である。図6は、熱プレス処理を行った状態を示す図である。まず、積層配線基板1の製造に際して、上述した第1基板11および第2基板12が用意される。第1基板11および第2基板12は、例えば一括積層法等、公知の種々の方法を採用して作製することができる。
【0023】
図3に示すように、接着樹脂シート20は絶縁樹脂を用いた接着シートであり、夫々別体として用意された第1接着樹脂シート21および第2接着樹脂シート22が互いに貼り合されることで形成される。第1接着樹脂シート21の厚さは、第2接着樹脂シート22の厚さに比べて大きい。
【0024】
第1接着樹脂シート21および第2接着樹脂シート22は、例えばガラス繊維クロス等といった基材にエポキシ樹脂等の熱硬化性の絶縁樹脂を含浸させた半硬化状(Bステージ)のプリプレグである。但し、第1接着樹脂シート21および第2接着樹脂シート22は、必ずしも基材を含む必要は無い。例えば、第1接着樹脂シート21を上記プリプレグとし、第1接着樹脂シート21に比べて薄い第2接着樹脂シート22を熱硬化性の絶縁樹脂を半硬化状に成形したシート部材としてもよい。例えば、第1接着樹脂シート21の厚さは50μm程度であり、第2接着樹脂シート22の厚さは20μm程度である。但し、各接着樹脂シート21,22の厚さはこれらに限らず、他の値であってもよい。更に、第2接着樹脂シート22も、第1接着樹脂シート21と同様、基材に熱硬化性の絶縁樹脂を含浸させた半硬化状のプリプレグであってもよい。
【0025】
接着樹脂シート20の基材としては、クロス、メッシュ、不織布等といった種々の形態を有することができ、また、ガラス繊維クロスに限られず、他の材料、例えばアラミド繊維クロスなどを使用してもよい。また、接着樹脂シート20における絶縁樹脂は、エポキシ樹脂に限られず、例えば、ポリイミド樹脂等を採用してもよい。第1接着樹脂シート21に用いる絶縁樹脂と、第2接着樹脂シート22に用いる絶縁樹脂は同種であってもよいし、異種であってもよい。
【0026】
次に、接着樹脂シート20には、接着樹脂シート20を厚さ方向に貫通する貫通孔であるビアホールが形成される。接着樹脂シート20は、別体としての第1接着樹脂シート21および第2接着樹脂シート22が積層されることで形成される。第1接着樹脂シート21には第1ビアホール21aが形成され、第2接着樹脂シート22には第2ビアホール22aが形成される。本実施形態では、第1ビアホール21aおよび第2ビアホール22aの平断面形状を円形としているが、これには限定されず、他の形状を採用してもよい。なお、本明細書内において「平断面」とは、積層回路基板1の平面方向(面広がり方向)に沿う方向の断面を指す。
【0027】
第1ビアホール21aおよび第2ビアホール22aを形成する孔開け手法としては、例えばレーザによるアブレーション加工、ドリルによる切削加工、パンチング金型による打ち抜き加工等を適宜採用することができる。また、レーザの種類としては、例えばUV−YAGレーザ、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ等を挙げることができる。
【0028】
図3に示すように、接着樹脂シート20は、第1接着樹脂シート21および第2接着樹脂シート22が、これらの順に第1基板11の上に配置される。具体的には、まず、第1
接着樹脂シート21が第1基板11の上に位置決めされた上で仮付けされ、更に第1接着樹脂シート21の上に第2接着樹脂シート22が位置決めされた上で貼り合される。接着樹脂シート20が第1基板11上に配置された際に、第1ビアホール21a、第2ビアホール22a、および第1基板11の導体パッド103が同心状に配置されるように各ビアホール21a,22aの形成位置が調節される。
【0029】
第1基板11および第2基板12の各貼り合わせ面111,121に挟まれた状態における接着樹脂シート20の平面領域のうち、上述の導体高密度領域に対応する領域を「第一領域Arf」と定義する。一方、接着樹脂シート20の平面領域における第一領域Arf以外の領域、つまり導体低密度領域に対応する領域を「第二領域Ars」と定義する。なお、上述の「導体高密度領域Hcp(導体低密度領域Lcp)に対応する」とは、接着樹脂シート20が各貼り合わせ面111,121の間に挟まれた際に、導体高密度領域Hcp(導体低密度領域Lcp)と上下方向に重なる状態を指す。
【0030】
次に、第1接着樹脂シート21に形成する第1ビアホール21aの開口径(以下、「第1ビア径」という。)と、第2接着樹脂シート22における第2ビアホール22aの開口径(以下、「第2ビア径」という。)について説明する。まず、第2ビア径は、第2接着樹脂シート22における第一領域Arfおよび第二領域Arsの何れにおいても所定の第1設定値Rv1に設定される。この第1設定値Rv1は、積層回路基板1に形成されるビア14の直径に対する設計値である。ここでは便宜上、何れの箇所に形成されるビア14においてもビア径の設計値は等しいものとする。そのため、第2接着樹脂シート22では、全ての第2ビアホール22aに関して第2ビア径が同一となる。第1設定値Rv1は、例えば0.15mm程度であるが、これに限らず、他の値であってもよい。また、第2接着樹脂シート22における平面的な位置に応じて、第1設定値Rv1の数値を変更してもよい。
【0031】
次に、第1ビアホール21aの第1ビア径について説明する。第1接着樹脂シート21への第1ビアホール21aの孔開け加工は、第1ビアホール21aの位置が第一領域Arfと第二領域Arsの何れに属するかによって第1ビア径が相違する。例えば、接着樹脂シート20の第二領域Arsでは、第1ビア径が上述した第1設定値Rv1に設定される。したがって、第1接着樹脂シート21の第二領域Arsには、第1ビアホール21aと第2ビアホール22aが同径の貫通孔として形成される。一方、第1接着樹脂シート21の第一領域Arfでは、第1ビア径が、第1設定値Rv1よりも大きな第2設定値Rv2に設定される。その結果、第1接着樹脂シート21(下層シート部)の第一領域Arfには、第2接着樹脂シート22(上層シート部)の第2ビアホール22a(第2貫通孔)に比べてビア径が大きな第1ビアホール21a(第1貫通孔)が形成される。言い換えると、第1接着樹脂シート21(下層シート部)は、第一領域Arfに、第2設定値Rv2(第1の断面積)を有する複数の第1ビアホール21a(第1貫通孔)を有する。そして、第2接着樹脂シート22(上層シート部)は、第一領域Arfに、第2設定値Rv2よりも小さな第1設定値Rv1(第2の断面積)を有する複数の第2ビアホール22a(第2貫通孔)を有する。第2設定値Rv2は、例えば0.30mm程度であるが、これに限らず、他の値であってもよい。
【0032】
以上より、接着樹脂シート20には、一の面(第1接着樹脂シート21の下面)の開口面積が、他の面(第2接着樹脂シート22の上面)の開口面積よりも大きい複数の異形ビアホールが第一領域Arfに形成される。ここでいう異形ビアホールとは、第2ビアホール22aと、この第2ビアホール22aよりもビア径の大きな第1ビアホール21aとを含んで形成されている。第1ビアホール21aは第1貫通孔の一例であり、第2ビアホール22aは第2貫通孔の一例である。また、第1接着樹脂シート21は下層シート部の一例であり、第2接着樹脂シート22は上層シート部の一例である。
【0033】
次に、第1接着樹脂シート21および第2接着樹脂シート22が、順次、第1基板11の上に配置される(図3を参照)。その際、第1接着樹脂シート21の第1ビアホール21aと、第2接着樹脂シート22の第2ビアホール22aとにおける中心同士が上下に重なるように、第1接着樹脂シート21および第2接着樹脂シート22が重ねて配置される。これによって、接着樹脂シート20全体で考えると、その第一領域Arfにおいては、ビア径の相対的な大きな面が、第1基板の貼り合わせ面111に向けて配置される。そして、第2接着樹脂シート22に設けられた第2ビアホール22aの上端には、導電性ペーストPの投入口22dが形成されており、この投入口22dからビアホール21a,22aに導電性ペーストPが充填される(図4を参照)。本実施形態においては、スキージ(図示省略)を用いたスクリーン印刷法を採用して導電性ペーストPを充填するが、これには限定されない。また、導電性ペーストPの充填時に第2接着樹脂シート22表面の汚れを防止するため、第2接着樹脂シート22の上面には例えばシリコーン系等の剥離剤を塗布したPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムが貼り付けられている。このPETフィルムは、導電性ペーストPの充填が終了した後に剥離されるとよい。
【0034】
導電性ペーストPは、金属粒子(導電性フィラー)およびこの金属粒子が分散する液状のバインダー樹脂を含む。実施形態1では、金属粒子として銅粉末を用いているが、これには限定されない。例えば、金属粒子としては、銅の他、金、銀、パラジウム、ニッケル、錫、鉛等を用いてもよいし、二種以上の金属粒子を併用してもよい。バインダー樹脂としては、例えばエポキシ樹脂等といった熱硬化性樹脂が用いられる。但し、バインダー樹脂はこれに限られず、例えばポリイミド樹脂等、他の樹脂であってもよい。導電性ペーストPは、液状のバインダー樹脂および金属粒子を混練することで得られる。導電性ペーストPは、バインダー樹脂および金属粒子の他、例えばフラックス等を含むことができる。
【0035】
ところで、導電性ペーストPはある程度の粘度を有するため、例えばスキージのスキージング動作に伴い、一の投入口22dから充填される導電性ペーストPの充填量は、投入口22d(第2ビアホール22a)の平断面積に依存する。
【0036】
接着樹脂シート20の第二領域Arsでは、第1ビアホール21aの第1ビア径が、第2ビアホール22aの第2ビア径と等しい。そのため、図4に示すように、第二領域Arsでは、一組のビアホール21a,22a(以下、これらを総称する場合には単に「ビアホール20a」ともいう。)の内部空間は導電性ペーストPによって満たされる。
【0037】
一方、接着樹脂シート20の第一領域Arfでは、第1ビアホール21aの第1ビア径が、第2ビアホール22aの第2ビア径に比べて大きい。よって、第1接着樹脂シート21に形成された第1ビアホール21aのうち、第2接着樹脂シート22の第2ビアホール22aに形成される投入口22dと上下に重ならない部分に、導電性ペーストPが充填されない空間21dが形成される。この空間21dは、投入口22dから導電性ペーストPが投入された際に、その導電性ペーストPが充填されないことで形成される空間であり、以下「空洞部」と称する。空洞部21dは、後述するように、熱プレス処理時に軟化する接着樹脂シート20の絶縁樹脂を移動させる(逃がす)ための空間として機能する。空洞部21dは、接着樹脂シート20における平面領域のうちの第一領域Arfに設けられ、第二領域Arsには設けられない。
【0038】
ビアホール20aへの導電性ペーストPの充填が終了すると、図5に示すように、接着樹脂シート20(具体的には、上層の第2接着樹脂シート22)の上に第2基板12が位置合わせされた上で配置される。その際、第2基板12の貼り合わせ面121に形成された導体パッド103が、第2接着樹脂シート22の第2ビアホール22aと上下に重なるように(例えば、同心状となるように)、第2基板12の位置合わせがなされる。
【0039】
次いで、接着樹脂シート20を第1基板11および第2基板12に挟んだ状態で加熱下にて積層方向にプレスする熱プレス(以下、「熱プレス処理」ともいう。)を行う。この熱プレス処理は、図示しない公知の熱プレス機(例えば、真空プレス装置)を用いて行うことができる。熱プレス処理に際しての加熱温度や圧力は適宜、例えば接着樹脂シート20の特性等を考慮して決定される。
【0040】
熱プレス処理が開始されると、第1基板11、接着樹脂シート20、および第2基板12を有する積層体が加熱される。その結果、まず、第2接着樹脂シート22を形成する熱硬化性の絶縁樹脂、および第1接着樹脂シート21の基材に含浸される熱硬化性の絶縁樹脂が溶解することで軟化する。軟化によって粘度が低下した接着樹脂シート20に係る絶縁樹脂は、その周囲に存在する隙間空間へと流れ込む(図6を参照)。本実施形態では、熱プレス処理に際して、導電性ペーストPのバインダー樹脂が接着樹脂シート20に含まれる熱硬化性の絶縁樹脂よりも遅れて軟化するように、双方における絶縁樹脂の粘度および温度の関係を示す動的硬化特性が調整されている。
【0041】
図5の符号S(S1,S2)は、貼り合わせ面111,121の導体パッド103同士の間、導体パッド103と配線パターン102の間に形成された空間、或いは配線パターン102同士の間に形成された空間を包括する「導体間隙部」を表す。貼り合わせ面111,121の導体高密度領域Hcpに設けられる導体間隙部を「S1」で表し、導体低密度領域Lcpに設けられる導体間隙部を「S2」で表す。
【0042】
熱プレス処理によって接着樹脂シート20が軟化した際、導体間隙部S1,S2に熱硬化性樹脂が流れ込むためのスペースが充分であれば、接着樹脂シート20が潰れやすく、その潰れ量が確保される。これに伴い、接着樹脂シート20のビアホール20aに充填された導電性ペーストPが充分に加圧されるため、金属粒子同士の凝集性が向上してこれらが良好に結合する。その後、導電性ペーストPのバインダー成分である熱硬化性の絶縁樹脂および接着樹脂シート20を形成する熱硬化性の絶縁樹脂が硬化して一体化し、絶縁層13を形成する。このようにして、ビアホール20aおよびその内部において互いに凝集、結合した導電性ペーストPの金属粒子は、硬化したバインダー成分とともにビア14を形成する。
【0043】
図5に示す導体間隙部S1およびS2の容積を対比すると、導体低密度領域に形成される導体間隙部S2に比べて導体高密度領域Hcpに形成される導体間隙部S1の方が小さい。これに起因して、導体高密度領域Hcpにおいては、熱プレス処理時に溶解して軟化した接着樹脂シート20の絶縁樹脂を移動させる(逃がす)隙間空間の容積が不足し、接着樹脂シート20を充分に潰すことが難しくなる。その結果、導電性ペーストPに上下から与えられる加圧力が減少してしまい、導電性ペーストPに含まれる金属粒子同士の凝集不足、結合不足が起こり易くなる。
【0044】
これに対して本実施形態に係る積層回路基板1によれば、接着樹脂シート20の第一領域Arfにおいて第1ビア径を第2ビア径より大きくすることで、熱プレス処理を開始する前に予め導電性ペーストPの周囲に空洞部21dを形成することができる。そのため、熱プレス処理を行うことで軟化した第一領域Arfにおける接着樹脂シート20の絶縁樹脂は、導体間隙部S1と空洞部21dの双方に充填される(図6を参照)。これによって、導体間隙部S1だけでは不足なりがちな、軟化した絶縁樹脂を流し込むための隙間空間を、接着樹脂シート20の第一領域Arfに形成される空洞部21dによって補うことができる。
【0045】
その結果、貼り合わせ面111,121に形成される導体パッド103および配線パタ
ーン102等の導体部分が高密度となっても、熱プレス処理時での接着樹脂シート20が潰れやすくなる。よって、導電性ペーストPに含まれる金属粒子が加圧され易くなり、金属粒子同士の凝集性が高まる。その結果、金属粒子同士が良好に結合するため、導体高密度領域Hcpに形成されるビア14がオープン不良となることを抑制できる。そして、導体高密度領域Hcpにおけるビア14のオープン不良を抑制できるが故に、一箇所のビア14当たりに供給する導電性ペーストPの供給量を過剰に増やす必要が無い。そのため、積層回路基板1の製造コストを低減でき、しかも導体低密度領域Lcpに対する導電性ペーストPの供給過多を回避できる。したがって、導体低密度領域Lcpにおいては、ビアホールに供給された導電性ペーストPが他の隣接するビアホールに流れ出すことがなく、それに起因するビア14のショート不良も抑制できる。
【0046】
また、積層回路基板1によれば、基板平面方向に導体面積率の高い領域と低い領域が混在してもビア14の接続不良を防ぐことができるため、積層回路基板1の歩留まりが高まり、積層回路基板1の生産性の向上に寄与することができる。よって、積層回路基板1の製造コストの低減を図ることができる。
【0047】
以上述べた積層回路基板1の製造方法につき、例えば積層回路基板1に関するCAD(Computer Aided Design)設計データを利用して導体面積率Rcpを求めることができる
。例えば、図7に示すように、第1基板11(第2基板12)の貼り合わせ面111(121)の平面領域を複数の区分領域D1,D2,D3,D4,・・・に区分し、その区分領域毎に導体面積率Rcpを夫々算出してもよい。例えば、区分領域D1においては、当該区分領域D1に形成される導体パッド103および配線パターン102の面積の和を、区分領域D1の面積で除すことで導体面積率Rcpが算出される。図中では、区分領域D1〜D4に基板平面領域を区分したが、その区分数は特に限定されない。また、図中では、配線パターン102の図示を省略している。
【0048】
このようにして、積層回路基板1の平面領域を複数の区分領域に分け、この区分領域毎に、第1基板11における貼り合わせ面111および第2基板12における貼り合わせ面121の夫々について導体面積率Rcpを算出する。例えば、貼り合わせ面111および121の少なくとも何れかにおいて導体面積率Rcpが基準比率Rcpb以上となる区分領域を導体高密度領域とし、そうでない区分領域を導体低密度領域として判別してもよい。
【0049】
基準比率Rcpbは、熱プレス時における接着樹脂シート20の潰れ量が不足して、導電性ペーストPに含まれる金属粒子同士の結合不良が発生する確率が高くなると判断される導体面積率Rcpの閾値であり、本実施形態では70%に設定している。そして、接着樹脂シート20における平面領域のうち、貼り合わせ面111又121における導体面積率Rcpが70%以上となる区分領域については、それに対応する第一領域Arfにおける少なくとも何れかの部位に空洞部21dを形成する。これにより、積層回路基板1において、ビア14の接続不良を抑制することができる。なお、本実施形態において基準比率Rcpbの具体的数値は必ずしも70%に限定されず、適宜変更することができる。
【0050】
本実施形態においては、接着樹脂シート20の導体面積率Rcpの値に応じて、接着樹脂シート20の第一領域Arfに形成される第1ビアホール21aの第1ビア径(一の面の開口面積)と、第2ビアホール22aの第2ビア径(他の面の開口面積)との比を変えるようにした。より詳しくは、接着樹脂シート20の導体面積率Rcpが高い領域ほど、異形ビアホールを形成する第1ビアホール21aの第1ビア径と第2ビアホール22aの第2ビア径との差を大きくする。これにより、導体高密度領域Hcpにおける導体面積率Rcpが高いほど、接着樹脂シート20の第一領域Arfに形成される空洞部21dの総容積をより多く確保することができる。接着樹脂シート20の第一領域Arfに形成され
る空洞部21dの総容積を増やすことで、導体高密度領域Hcpにおけるビア14の接続不良を好適に抑止できる。
【0051】
本実施形態では、第1接着樹脂シート21(下層シート部)の厚さが第2接着樹脂シート22(上層シート部)の厚さに比べて厚く設定されており、これら各接着樹脂シート21,22が積層されて接着樹脂シート20が形成されている。そのため、接着樹脂シート20の厚さ全体に対して第2接着樹脂シート22の厚さが占める比率よりも、第1接着樹脂シート21の厚さが占める比率が高くなる。第一領域Arfにおいて、接着樹脂シート20の厚さ全体に対して第1接着樹脂シート21の厚さが占める比率を高くすることで、空洞部21dの容積を増やすことができるので、導体高密度領域Hcpにおけるビア14の接続不良の抑制に有利である。
【0052】
なお、実施形態1では、接着樹脂シート20の第一領域Arfにおいて第1ビア径を第2ビア径より大きくすることで空洞部21dを形成するようにしたが、接着樹脂シート20のビアホールの形成とは別工程として空洞部21dを形成してもよい。
【0053】
(積層後における積層回路基板)
実施形態1に係る製造方法により製造された積層回路基板1の構造的な特徴について述べる。絶縁層13は、半硬化状の接着樹脂シート20が熱プレス処理によって硬化することで形成され、ビアホール20aに充填された導電性ペーストPが硬化してビア14が形成される。図8は、実施形態1に係る積層回路基板1においてビア14の周辺構造を模式的に示す図である。図示の状態は、熱プレス処理が終了した後の状態を示す。図中左側は、絶縁層13の第一領域Arfに属するビア14(図中、14Aにて表す。)を示し、右側は第二領域Arsに属するビア14(図中、14Bにて表す。)を示す。
【0054】
上述のように、積層回路基板1の製造方法では、貼り合わせ面111,121に係る導体低密度領域Lcpに対応する第二領域Arsに対しては空洞部21dが形成されない。よって、絶縁層13の第二領域Arsは、ビアを横断する高さにおけるビア横断面Scにおいて、ビア14Bが形成される領域と、接着樹脂シート20Cのガラス繊維クロスGCと硬化した絶縁樹脂REが一体化した領域とに区画される。図示の例では、接着樹脂シート20のビアホール20a(21a,22a)の壁面を境として、内側に形成されるビア14Bの領域と、外側に形成される接着樹脂シート20のガラス繊維クロスGCと硬化した絶縁樹脂REが一体化した領域とが画定される。図中の符号RE´は、熱プレス処理において接着樹脂シート20から導体間隙部Sへと移動した後、硬化した絶縁樹脂を指す。
【0055】
一方、接着樹脂シート20における第一領域Arfでは、その一部に空洞部21d(図6を参照)が形成される。熱プレス処理の際に軟化する接着樹脂シート20の絶縁樹脂は、その一部が空洞部21dに移動した後(流れ込んだ後)に硬化する。空洞部21dには、接着樹脂シート20の基材であるガラス繊維クロスGCが存在しないため、ビア14の外周部(周囲)に隣接してガラス繊維クロスGCを含まず且つ硬化した絶縁樹脂のみが存在する部分(以下、「樹脂単独存在部」という)RE´´が形成される。更に、この樹脂単独存在部RE´´の外周部に隣接して、ガラス繊維クロスGCおよび硬化した絶縁樹脂が一体化した領域が形成される。言い換えると、樹脂単独存在部RE´´は、第2ビアホール22aの壁面を境として内側に形成されるビア14と、第1ビアホール21aの壁面を境として外側に形成されるガラス繊維クロスGCとの間に挟まれた領域に形成される。
【0056】
以上より、熱プレス処理が開始される時点で空洞部21dが形成されていた部分は、熱プレス処理を経て、接着樹脂シート20のガラス繊維クロスGCが存在せずに且つ硬化した絶縁樹脂が存在する樹脂単独存在部RE´´を形成する。よって、絶縁層13の第一領域Arfの一部に形成される硬化樹脂部RE´´は、熱プレス処理前に接着樹脂シート2
0に空洞部21dが存在していたこと、即ち、本製造方法にて積層回路基板1が製造されたことを裏付ける証拠となり得る。
【0057】
<実施形態2>
次に、実施形態2について説明する。図9Aおよび図9Bは、実施形態2に係る接着樹脂シート20Aを説明するための説明図である。接着樹脂シート20Aは、ガラス繊維クロス等といった基材にエポキシ樹脂等の熱硬化性の絶縁樹脂を含浸させた半硬化状(Bステージ)のプリプレグである。図9Aにおいて、左側に接着樹脂シート20Aの第一領域Arfに形成されたビアホール201を示し、右側に第二領域Arsに形成されたビアホール202を示す。両図に示す接着樹脂シート20Aは、第1基板11の上に配置された状態を示す。図9Aは、接着樹脂シート20Aのビアホール201,202に導電性ペーストPを充填する前の状態を示し、図9Bは、同ビアホール201,202に導電性ペーストPを充填した後の状態を示す。
【0058】
まず、接着樹脂シート20Aの第二領域Arsについて説明する。第二領域Arsに形成されたビアホール202は、接着樹脂シート20Aを厚さ方向に貫通する貫通孔である。ビアホール202における平断面積は、接着樹脂シート20Aの厚さ方向に一定である。図示の例では、ビアホール202の平断面形状を円形としているが、これには限定されず、他の形状を採用してもよい。ビアホール202の直径(ビア径)は、例えば、実施形態1におけるビアホール202のビア径と同様に、第1設定値Rv1に設定してもよい。
【0059】
接着樹脂シート20Aの第一領域Arfには、ビアホール201におけるビア径が互いに相違する、下層シート部203および上層シート部204が接着樹脂シート20Aの厚さ方向に並んで形成されている。接着樹脂シート20Aが第1基板11の上に配置された状態で、下層シート部203は、接着樹脂シート20Aの下層部分を形成し、上層シート部204は接着樹脂シート20Aの上層部分を形成する。図示のように、接着樹脂シート20Aは、第1基板11に向かって配置される方の面の開口面積が他方の開口面積よりも大きな異形ビアホールを有する。
【0060】
ビアホール202の平断面形状は、上層シート部204に形成される部分(以下、「上層ビアホール部」という。)と、下層シート部203に形成される部分(以下、「下層ビアホール部」という。)とで同心状且つ直径の異なる円形をなしている。上層ビアホール部および下層ビアホール部は、双方の境界部分でビア径に段差が設けられており、上層ビアホール部よりも下層ビアホール部のビア径が大きい。例えば、ビアホール201の上層ビアホール部はビアホール202と同様にビア径が第1設定値Rv1に設定され、下層ビアホール部のビア径は上述した第2設定値Rv2に設定されてもよい。
【0061】
第二領域Arsにおけるビアホール202の孔開け手法については、実施形態1と同様に例えばレーザ、ドリル、打ち抜き加工の手法を適宜選択するとよい。第一領域Arfにおけるビアホール201では、互いにビア径の異なる下層ビアホール部および上層ビアホール部を同心状に形成するため、レーザを用いると孔開け加工が容易となるので好ましい。
【0062】
図9Bに示すように、接着樹脂シート20Aの第二領域Arsでは、ビアホール202のビア径が厚さ方向に一定である。そのため、ビアホール202の開口端から導電性ペーストPを例えばスクリーン印刷法によって供給した際に、ビアホール202の全体に導電性ペーストPが充填される結果、空洞部が形成されない。一方、接着樹脂シート20Aの第一領域Arfでは、下層ビアホール部のビア径が、上層ビアホール部のビア径よりも大きい。したがって、下層ビアホール部のうち上層ビアホール部の開口端に形成される投入口205と上下に重ならない部分に、導電性ペーストPが充填されない空洞部206が形
成される。これにより、熱プレス処理の際に、積層回路基板1の導体高密度領域Hcpにおいても、接着樹脂シート20Aに係る絶縁樹脂が空洞部206に充填されるので、接着樹脂シート20Aが厚さ方向に潰れ易い。これにより、熱プレス処理に際して、導電性ペーストPに含まれる金属粒子同士を良好に結合させることができ、ビア14の接続不良を抑制できる。
【0063】
次に、図10Aおよび図10Bを参照して、接着樹脂シートの変形例について説明する。図10A,10Bに示す接着樹脂シート20Bは、第一領域Arfに形成されるビアホール210の形状が図9A,9Bに示すものと相違する。第二領域Arsに形成されるビアホール202は接着樹脂シート20Aと共通であり、その詳しい説明を割愛する。図10A,10Bに示す接着樹脂シート20Bは、第1基板11の上に配置されている。図10Aは、接着樹脂シート20Bのビアホールに導電性ペーストPを充填する前の状態を示し、図10Bは、同ビアホールに導電性ペーストPを充填した後の状態を示す。
【0064】
接着樹脂シート20Bの第一領域Arfに形成されたビアホール210は、接着樹脂シート20Bが第1基板11の上に配置された状態で、第1基板11と面する接着樹脂シート20Bの下面(一の面)から上面(他の面)に向かってビア径が徐々に狭まるテーパ形状を有する。図中、破線で示す仮想線によって、接着樹脂シート20Bの下層を形成する下層シート部203と、上層を形成する上層シート部204とが画定される。
【0065】
接着樹脂シート20Bの第一領域Arfでは、図示のようにビアホール210をテーパ形状としても、上層シート部204に係る上層ビアホール部に比べて下層シート部203に係る下層ビアホール部のビア径を大きくすることができる。その結果、接着樹脂シート20Aの場合と同様に、下層ビアホール部のうち上層ビアホール部の開口端に形成される投入口205と上下に重ならない部分に空洞部206が形成される。これにより、熱プレス処理の際に、積層回路基板1の導体高密度領域においても導電性ペーストPに含まれる金属粒子同士を良好に結合させることができ、ビア14の電気的な接続不良を抑制できる。
【0066】
以上のように、積層回路基板1に適用する接着樹脂シートは、実施形態1のように夫々別体としての第1接着樹脂シート21および第2接着樹脂シート22を積層せずに、一体的に成形してもよい。但し、実施形態1に係る接着樹脂シート20によれば、第1接着樹脂シート21および第2接着樹脂シート22の夫々に貫通孔を形成するだけで足りるので、孔開け加工の容易性、加工精度の向上という観点から優れている。
【0067】
<実施形態3>
次に、実施形態3について説明する。実施形態3では、絶縁層13を形成する接着樹脂シートに形成する空洞部206を、互いに隣接するビアホール同士の間に双方のビアホールから離間した状態で設けられる貫通孔として形成する。
【0068】
図11は、実施形態3に係る接着樹脂シート20Cの上面の一部を示す図である。図11に示す例では、接着樹脂シート20Cの左側が第一領域Arfに該当し、右側が第二領域Arsに該当する。接着樹脂シート20Cは、実施形態2に係る接着樹脂シート20A,20Bと同様、ガラス繊維クロス等といった基材にエポキシ樹脂等の熱硬化性の絶縁樹脂を含浸させた半硬化状(Bステージ)のプリプレグである。図12は、接着樹脂シート20Cの上に第2基板12を配置した状態を示す図である。図12の例において、図中左側の領域(導体高密度領域Hcp)は、右側の領域(導体低密度領域Lcp)に比べて導体パッド103のパッドサイズが大きい。図11に示す接着樹脂シート20Cのうち、第一領域Arfの部分が図12に示す導体高密度領域Hcpに配置され、第二領域Arsの部分が導体低密度領域Lcpに配置される。
【0069】
図11に示すように、接着樹脂シート20Cには、導電性ペーストPを充填するためのビアホール220(図中、実線円にて示す)が、接着樹脂シート20Cを厚さ方向に貫通して形成される。ビアホール220は、例えばビア径が第1設定値Rv1に設定されており、接着樹脂シート20Cの厚さ方向にビア径が一定となっている。接着樹脂シート20Cでは、その第一領域Arfに空洞部206(図中、破線円にて示す)が、ビアホール220と独立して設けられている。
【0070】
空洞部206は、ビアホール220と同様、接着樹脂シート20Cを厚さ方向に貫通する貫通孔であり、導電性ペーストPは充填されない。図11に示す例では、空洞部206は、互いに隣接するビアホール220に離間した状態(連通せずに独立した状態)で、当該隣接するビアホール220同士の間に形成される。但し、空洞部206の配置例は、図示のものに限られず、例えば、接着樹脂シート20Cにおける第一領域Arfの少なくとも何れかの部位に設ければよい。また、ビアホール220の平面的な形成パターンに関しても、図11に示すパターンに限定されるものではない。また、図11に示す例では、空洞部206に係る貫通孔はビアホール220のビア径に比べて小さいが、これに限られず、当該ビア径と同等、或いはビア径よりも大きくてもよい。
【0071】
接着樹脂シート20Cに対して空洞部206に係る貫通孔を形成するタイミングは、ビアホール220を形成する工程と同時に実施されてもよいし、別工程として行われてもよい。ビアホール220に導電性ペーストPを充填する前に空洞部206に係る貫通孔を形成する場合、例えば空洞部206の開口端を一時的にPETフィルム等によって塞いで、空洞部206に導電性ペーストPが充填されることを防止するとよい。或いは、導電性ペーストPが空洞部206に充填されないように、例えば図示しないノズル等によって導電性ペーストPを吐出させることでビアホール220に導電性ペーストPを充填してもよい。
【0072】
また、ビアホール220に導電性ペーストPを充填した後、接着樹脂シート20Cに空洞部206を形成してもよい。例えば、まず、ビアホール220が形成された接着樹脂シート20Cを第1基板11の上に配置し、ビアホール220に導電性ペーストPを充填する。その後、ビアホール220に導電性ペーストPが充填された状態の接着樹脂シート20Cに対して、空洞部206に係る貫通孔を例えばレーザ等によって形成してもよい。
【0073】
次に、図12に示すように、接着樹脂シート20Cを第1基板11および第2基板12の間に挟んだ状態で熱プレス処理が行われる。熱プレス処理が開始されると、接着樹脂シート20Cの第一領域Arfに形成された空洞部206に対し、軟化した接着樹脂シート20Cの絶縁樹脂が移動する。よって、熱プレス処理時において軟化する接着樹脂シート20Cの絶縁樹脂を移動させるための空間が充分に確保される。これにより、積層回路基板1の導体高密度領域Hcpにおいても、熱プレス処理の際に、接着樹脂シート20Cを厚さ方向に潰し易く、その潰し量を充分に確保できる。したがって、導電性ペーストPに含まれる金属粒子同士の結合性が高まり、ビア14の接続不良を抑制できる。
【0074】
(積層後における積層回路基板)
次に、実施形態3に係る製造方法により製造された積層回路基板1の構造的な特徴について述べる。実施形態3に係る積層回路基板1の製造方法では、空洞部206をビアホール220と独立した空間として設けるようにした。そのため、熱プレス処理の実施後に形成される硬化樹脂部RE´´の平面的な位置が実施形態1と相違する。
【0075】
図13は、実施形態3に係る積層回路基板1においてビア14の周辺構造を模式的に示す図である。図示の積層回路基板1は、熱プレス処理が終了した後の状態を示す。図13
中左側には、絶縁層13の第一領域Arfに属するビア14(図中、14Aにて表す。)を示し、図13中右側には第二領域Arsに属するビア14(図中、14Bにて表す。)を示す。ビア横断面Scにおいて、絶縁層13の第二領域Arsは、ビア14Bが形成される領域と接着樹脂シート20Cのガラス繊維クロスGCと硬化した絶縁樹脂REが一体化した領域とに区画される。図示の例では、接着樹脂シート20のビアホール220の壁面を境として、内側に形成されるビア14Bの領域と、外側に形成される接着樹脂シート20Cのガラス繊維クロスGCと硬化した絶縁樹脂REが一体化した領域と、が画定される。
【0076】
一方、絶縁層13の第一領域Arfでは、熱プレス処理が開始される時点で空洞部206(図12を参照)が形成されていた部位に、熱プレス処理の際に軟化した接着樹脂シート20Cに係る熱硬化性の絶縁樹脂の一部が移動してから(流れ込んでから)硬化する。したがって、熱プレス処理が開始される時点で空洞部206が形成されていた部分は、熱プレス処理を経て、接着樹脂シート20Cのガラス繊維クロスGCが存在せずに且つ硬化した絶縁樹脂が存在する樹脂単独存在部RE´´を形成する。図示の例では、樹脂単独存在部RE´´が、互いに隣接するビア14A同士の間に双方のビアから離間した状態で独立して形成される。以上述べた積層回路基板1に関する構造上の特徴は、積層回路基板1が実施形態3に係る製造方法によって製造されたことを裏付ける特徴となる。
【0077】
<実施形態4>
次に、実施形態4について説明する。実施形態4では、接着樹脂シートに形成されたビアホールとマスク部材の開口との開口径の差を利用して、熱プレス処理時に軟化する接着樹脂シートに係る絶縁樹脂を移動させる(逃がす)ための空洞部を接着樹脂シートに形成する。
【0078】
図14は、第1基板11の上に接着樹脂シート20Dを配置した状態を示す図である。図15は、接着樹脂シート20Dの上にマスク部材31を配置した状態を示す図である。図16は、接着樹脂シート20Dのビアホールに導電性ペーストPを充填する状態を示す図である。図17は、マスク部材31を取り外した状態を示す図である。図18は、接着樹脂シート20Dの上に第2基板12を配置した状態を示す図である。図19は、熱プレス処理の状態を示す図である。
【0079】
まず、図14を参照して実施形態4における接着樹脂シート20Dを説明する。接着樹脂シート20Dは、例えば接着樹脂シート20Cと同様、ガラス繊維クロス等といった基材にエポキシ樹脂等の熱硬化性の絶縁樹脂を含浸させた半硬化状(Bステージ)のプリプレグである。接着樹脂シート20Dには、導電性ペーストPを充填するためのビアホール240が所定位置に接着樹脂シート20Dを厚さ方向に貫通して形成される。図14では、図中左側の領域が第一領域Arfに該当し、図中右側の領域が第二領域Arsに該当する。接着樹脂シート20Dに形成されるビアホール240は、第1基板11の貼り合わせ面111に形成される導体パッド103と対応する位置に形成される。
【0080】
次に、ビアホール240のビア径について説明する。ビアホール240のうち、接着樹脂シート20Dの第一領域Arfに形成されるものを第1ビアホール240a、第二領域Arsに形成されるものを第2ビアホール240bとする。例えば、第2ビアホール240bのビア径は第1設定値Rv1に設定され、第1ビアホール240aのビア径は第1設定値Rv1よりも大きな第2設定値Rv2に設定される。第1設定値Rv1および第2設定値Rv2については実施形態1と共通であり、ここでの詳しい説明は割愛する。なお、接着樹脂シート20Dにおけるビアホール240(240a,240b)の孔開け加工は、接着樹脂シート20Dを第1基板11の上に配置する前に行ってもよいし、第1基板11の上への配置後に行ってもよい。また、図14に示す例では、接着樹脂シート20Dの
第1ビアホール240aにおける下端と上端との開口面積が等しくなっているが、下端の開口面積が上端の開口面積よりも大きく形成されてもよい。
【0081】
次いで、第1基板11の上に配置された接着樹脂シート20Dの上面に図示しないペースト供給装置(印刷装置)のマスク部材31の下面(裏面)が重ね合わせられる(図15を参照)。マスク部材31は、例えばステンレス鋼板から構成されているが、例えばウレタンやプラスチック等、他の材料を用いてもよい。マスク部材31には、ビアホール240を露出させる開口32がビアホール240(240a,240b)の位置に対応するように設けられる。ここでは、ビアホール240および開口32の形状が円形状である場合を例に説明するが、他の形状を採用してもよい。マスク部材31は、接着樹脂シート20Dの上面に載置された際に、接着樹脂シート20Dの各ビアホール240(240a,240b)の中心と開口32の中心とが一致するように作製されている。
【0082】
次に、接着樹脂シート20Dのビアホール240に対する導電性ペーストPの充填について説明する。本実施形態における導電性ペーストPの充填工程では、マスク部材を使用したスキージ法にて導電性ペーストPをビアホール240に供給する。マスク部材31は、その開口32が各ビアホール240の位置に対応するように位置合わせされた状態で接着樹脂シート20Dの上面に載置されている。ペースト充填装置は、スキージ33と、このスキージ33の下端をマスク部材31の表面に突き当てた状態で、スキージ33をマスク部材31の表面に沿って移動可能な可動ユニット(図示省略)を備える。ペースト充填装置は、スキージ33の表面およびマスク部材31の表面の間に導電性ペーストPを供給した状態で、スキージ33をマスク部材31の表面に沿って印刷方向に移動させる。その結果、図16に示すように、導電性ペーストPがマスク部材31の表面に沿って運搬され、導電性ペーストPが開口32からビアホール240へと供給される。
【0083】
マスク部材31における開口32の開口径は、接着樹脂シート20Dの第二領域Arsに形成される第2ビアホール240bのビア径と等しい。その結果、第二領域Arsにおける第2ビアホール240bの開口面積はマスク部材31の開口32の開口面積と等しくなっている。接着樹脂シート20Dの第二領域Arsでは、第2ビアホール240bにおける内部空間の全体が導電性ペーストPによって満たされる結果、空洞部206は形成されない。一方、接着樹脂シート20Dの第一領域Arfに形成される第1ビアホール240aのビア径(開口面積)が、マスク部材31の開口32に係る開口径(開口面積)よりも大きい(図15を参照)。その結果、第1ビアホール240aのうちマスク部材31の開口32と上下に重ならない部分には、導電性ペーストPが充填されない空間、即ち空洞部206が形成される(図16を参照)。
【0084】
その後、マスク部材31を接着樹脂シート20Dの上から取り外した後、接着樹脂シート20Dの上に第2基板12を配置する(図17、18を参照)。そして、第1基板11および第2基板12の間に接着樹脂シート20Dを挟んだ状態でこれらを加熱加圧することにより熱プレス処理が行われる(図19を参照)。その際、接着樹脂シート20Dの第一領域Arfには空洞部206が形成されているので、熱プレス処理時に溶解して軟化する接着樹脂シート20Dの絶縁樹脂を移動させるための空間を充分に確保できる。したがって、積層回路基板1の導体高密度領域Hcpにおいても、導電性ペーストPに含まれる金属粒子同士が良好に結合され、以ってビア14の電気的な接続不良を抑止することが可能となる。
【0085】
<電子機器>
上述までの各実施形態に係る製造方法で形成された積層回路基板1は、種々の電子機器に適用されることができる。図20は、実施形態に係る積層回路基板1を内蔵した電子機器100の一例を示す図である。図20に示す電子機器100は、携帯電話を例として挙
げているが、これに限定されず、パーソナルコンピュータ、サーバー、情報処理端末(PDA)、デジタルカメラ等、種々の電子機器に適用することができる。積層回路基板1は、電子機器100の筐体101の内部に収容されている。また、積層回路基板1の表面には、例えば、半導体チップパッケージ等の電子部品が実装されている。
【0086】
上述のように、積層回路基板1は、例えば実施形態1に係る図8で説明したように、基材を含んだ状態で絶縁樹脂が硬化している絶縁層13と、絶縁層13を介して互いに貼り合わせ面同士が接着された第1基板11および第2基板12と、ビア14とを備える。ビア14は、絶縁層13内に配置され、第1基板11の貼り合わせ面に形成された導体パッドと、第2基板12の貼り合わせ面に形成された導体パッドとの間を電気的に接続する。そして、導体面積率Rcpが基準比率Rcpb以上となる第一領域Arfにおける絶縁層13の一部に、絶縁樹脂のみが硬化した部位が形成されている。このような積層回路基板1によれば、基板平面方向に導体面積率の高い領域と低い領域が混在してもビア14の接続不良を防ぐことができるため、積層回路基板1を備える電子機器100の品質上の信頼性を担保することができる。また、ビア14の接続不良を防ぐことで積層回路基板1の歩留まりが向上する。よって、積層回路基板1を適用する電子機器100の生産性を高めることができ、電子機器100の製造コストの低減に寄与することができる。
【0087】
以上の各実施形態は、可能な限りこれらを組み合わせて実施する事ができる。また、以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
第1基板と第2基板とが積層された積層回路基板の製造方法であって、
前記第1基板上に、一の面の開口面積が他の面の開口面積よりも大きい複数の異形ビアホールを有する接着樹脂シートを、前記一の面を前記第1基板に向けて配置する第1の配置工程と、
前記異形ビアホールに導電性ペーストを充填する充填工程と、
前記導電性ペーストが充填された後、前記接着樹脂シートの前記他の面上に前記第2基板を配置する第2の配置工程と、
加熱下で、前記第1基板と前記第2基板の積層方向に加圧する熱プレス処理を行う熱プレス工程とを有することを特徴とする積層回路基板の製造方法。
(付記2)
前記接着樹脂シートは、前記一の面の開口面積が前記他の面の開口面積と同じ複数のビアホールを更に有し、
前記接着樹脂シートの導体面積率が所定の基準比率以上となる第一領域にのみ、前記異形ビアホールが形成されることを特徴とする付記1に記載の積層回路基板の製造方法。
(付記3)
前記接着樹脂シートは、下層シート部の上に上層シート部が貼り合わされたシートであり、
前記下層シート部は、前記第一領域に、第1の断面積を有する複数の第1貫通孔を有し、
前記上層シート部は、前記第一領域に、第1の断面積よりも小さな第2の断面積を有する複数の第2貫通孔を有し、
前記異形ビアホールは、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とを含むことを特徴とする付記2に記載の積層回路基板の製造方法。
(付記4)
前記下層シート部の厚さは、前記上層シート部の厚さに比べて厚いことを特徴とする付記3に記載の積層回路基板の製造方法。
(付記5)
前記異形ビアホールは、前記一の面から前記他の面に向かってビア径が徐々に狭まるテーパ形状を有することを特徴とする付記1に記載の積層回路基板の製造方法。
(付記6)
前記接着樹脂シートの導体面積率の値に応じて、前記異形ビアホールにおける前記一の面の開口面積と前記他の面の開口面積との比を変えることを特徴とする付記1に記載の積層回路基板の製造方法。
(付記7)
前記接着樹脂シートの導体面積率が高い領域ほど、前記異形ビアホールにおける前記一の面の開口面積と前記他の面の開口面積との差を大きくすることを特徴とする付記6に記載の積層回路基板の製造方法。
(付記8)
第1基板と第2基板とが積層された積層回路基板の製造方法であって、
前記第1基板上に、複数のビアホールを有する接着樹脂シートを配置する第1の配置工程と、
マスク部材を使用したスキージ法にて前記ビアホールに導電性ペーストを充填する充填工程と、
導電性ペーストが充填された後、前記接着樹脂シート上に前記第2基板を配置する第2の配置工程と、
加熱下で、前記第1基板と前記第2基板の積層方向に加圧する熱プレス処理を行う熱プレス工程とを有し、
前記ビアホールの開口面積は、対応する前記マスク部材の開口面積よりも大きいことを特徴とする積層回路基板の製造方法。
(付記9)
前記接着樹脂シートの導体面積率が所定の基準比率以上となる第一領域においては、前記ビアホールの開口面積が対応する前記マスク部材の開口面積よりも大きく、
前記導体面積率が前記基準比率未満となる第二領域においては、前記ビアホールの開口面積が対応する前記マスク部材の開口面積と等しいことを特徴とする付記8に記載の積層回路基板の製造方法。
(付記10)
基材を含んだ状態で絶縁樹脂が硬化している絶縁層と、
前記絶縁層を介して互いに貼り合わせ面同士が接着された第1基板および第2基板と、
前記絶縁層内に配置され、前記第1基板の貼り合わせ面に形成された第1の導体パッドと、前記第2基板の貼り合わせ面に形成された第2の導体パッドとの間を電気的に接続するビアとを備え、
導体面積率が所定の基準比率以上となる第一領域の前記絶縁層の一部に、前記絶縁樹脂のみが硬化した部位が形成されていることを特徴とする積層回路基板。
(付記11)
前記絶縁樹脂のみが硬化した部位は、前記ビアの外周部に隣接して形成されることを特徴とする付記10に記載の積層回路基板。
(付記12)
積層回路基板を有する電子機器であって、
前記積層回路基板は、
基材を含んだ状態で絶縁樹脂が硬化している絶縁層と、
前記絶縁層を介して互いに貼り合わせ面同士が接着された第1基板および第2基板と、
前記絶縁層内に配置され、前記第1基板の貼り合わせ面に形成された第1の導体パッドと、前記第2基板の貼り合わせ面に形成された第2の導体パッドとの間を電気的に接続するビアとを備え、
導体面積率が所定の基準比率以上となる第一領域の前記絶縁層の一部に、前記絶縁樹脂のみが硬化した部位が形成されていることを特徴とする電子機器。
【符号の説明】
【0088】
1 積層回路基板
11 第1基板
12 第2基板
13 絶縁層
14 ビア
20 接着樹脂シート
21 第1接着樹脂シート
22 第2接着樹脂シート
21a 第1ビアホール
22a 第2ビアホール
102 配線パターン
103 導体パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と第2基板とが積層された積層回路基板の製造方法であって、
前記第1基板上に、一の面の開口面積が他の面の開口面積よりも大きい複数の異形ビアホールを有する接着樹脂シートを、前記一の面を前記第1基板に向けて配置する第1の配置工程と、
前記異形ビアホールに導電性ペーストを充填する充填工程と、
前記導電性ペーストが充填された後、前記接着樹脂シートの前記他の面上に前記第2基板を配置する第2の配置工程と、
加熱下で、前記第1基板と前記第2基板の積層方向に加圧する熱プレス処理を行う熱プレス工程と
を有することを特徴とする積層回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記接着樹脂シートは、前記一の面の開口面積が前記他の面の開口面積と同じ複数のビアホールを更に有し、
前記接着樹脂シートの導体面積率が所定の基準比率以上となる第一領域にのみ、前記異形ビアホールが形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の積層回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記接着樹脂シートは、下層シート部の上に上層シート部が貼り合わされたシートであり、
前記下層シート部は、前記第一領域に、第1の断面積を有する複数の第1貫通孔を有し、
前記上層シート部は、前記第一領域に、第1の断面積よりも小さな第2の断面積を有する複数の第2貫通孔を有し、
前記異形ビアホールは、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とを含む
ことを特徴とする請求項2に記載の積層回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記下層シート部の厚さは、前記上層シート部の厚さに比べて厚い
ことを特徴とする請求項3に記載の積層回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記異形ビアホールは、前記一の面から前記他の面に向かってビア径が徐々に狭まるテーパ形状を有することを特徴とする請求項1に記載の積層回路基板の製造方法。
【請求項6】
前記接着樹脂シートの導体面積率の値に応じて、前記異形ビアホールにおける前記一の面の開口面積と前記他の面の開口面積との比を変えることを特徴とする請求項1に記載の積層回路基板の製造方法。
【請求項7】
前記接着樹脂シートの導体面積率が高い領域ほど、前記異形ビアホールにおける前記一の面の開口面積と前記他の面の開口面積との差を大きくすることを特徴とする請求項6に記載の積層回路基板の製造方法。
【請求項8】
基材を含んだ状態で絶縁樹脂が硬化している絶縁層と、
前記絶縁層を介して互いに貼り合わせ面同士が接着された第1基板および第2基板と、
前記絶縁層内に配置され、前記第1基板の貼り合わせ面に形成された第1の導体パッドと、前記第2基板の貼り合わせ面に形成された第2の導体パッドとの間を電気的に接続するビアと
を備え、
導体面積率が所定の基準比率以上となる第一領域の前記絶縁層の一部に、前記絶縁樹脂のみが硬化した部位が形成されていることを特徴とする積層回路基板。
【請求項9】
前記絶縁樹脂のみが硬化した部位は、前記ビアの外周部に隣接して形成されることを特徴とする請求項8に記載の積層回路基板。
【請求項10】
積層回路基板を有する電子機器であって、
前記積層回路基板は、
基材を含んだ状態で絶縁樹脂が硬化している絶縁層と、
前記絶縁層を介して互いに貼り合わせ面同士が接着された第1基板および第2基板と、
前記絶縁層内に配置され、前記第1基板の貼り合わせ面に形成された第1の導体パッドと、前記第2基板の貼り合わせ面に形成された第2の導体パッドとの間を電気的に接続するビアと
を備え、
導体面積率が所定の基準比率以上となる第一領域の前記絶縁層の一部に、前記絶縁樹脂のみが硬化した部位が形成されていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−110230(P2013−110230A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253326(P2011−253326)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】